高精度全方位移動ロボットの実運用のための 障害物の画像認識技術およびリアルタイム経路探索技術の開発 東京ロボティクス株式会社岡弘之 高木崇光 松尾雄希 坂本義弘 本研究は 人工知能研究振興財団の助成によって実施されたものです 1

Similar documents
高精度全方位移動ロボットの実運用のための 人工知能研究振興財団第 24 回成果発表会 東京ロボティクス株式会社 坂本義弘 岡弘之 1 弊社の紹介 所在地 東京都新宿区西早稲

Microsoft PowerPoint - H24全国大会_発表資料.ppt [互換モード]

円筒面で利用可能なARマーカ

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

コンピュータグラフィックス第8回

Microsoft PowerPoint - pr_12_template-bs.pptx

2008 年度下期未踏 IT 人材発掘 育成事業採択案件評価書 1. 担当 PM 田中二郎 PM ( 筑波大学大学院システム情報工学研究科教授 ) 2. 採択者氏名チーフクリエータ : 矢口裕明 ( 東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻博士課程三年次学生 ) コクリエータ : なし 3.

人間の視野と同等の広視野画像を取得・提示する簡易な装置

画像類似度測定の初歩的な手法の検証

カメラレディ原稿

デジカメ天文学実習 < ワークシート : 解説編 > ガリレオ衛星の動きと木星の質量 1. 目的 木星のガリレオ衛星をデジカメで撮影し その動きからケプラーの第三法則と万有引 力の法則を使って, 木星本体の質量を求める 2. ガリレオ衛星の撮影 (1) 撮影の方法 4つのガリレオ衛星の内 一番外側を

画像処理工学


Microsoft Word - 卒論レジュメ_最終_.doc

de:code 2019 CM04 Azure Kinect DK 徹底解説 ~ 進化したテクノロジーとその実装 ~ 技術統括室 千葉慎二 Ph.D.

Microsoft PowerPoint - document pptx

Microsoft Word - NJJ-105の平均波処理について_改_OK.doc

リソース制約下における組込みソフトウェアの性能検証および最適化方法

スライド 1

Microsoft Word - NumericalComputation.docx

000

実験題吊  「加速度センサーを作ってみよう《


Microsoft Word - AutocadCivil3D.doc

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

MATLAB EXPO 2019 Japan プレゼン資料の検討

関係各位 2019 年 1 月 31 日 ヴイストン株式会社 4 軸独立ステアリング駆動方式の ROS 対応台車ロボット 4WDS ローバー Ver2.0 を発売 ヴイストン株式会社 ( 本社 : 大阪府大阪市 代表取締役 : 大和信夫 ) は 4 輪独立ステアリング駆動式全方位移動台車ロボット 4

21 e-learning Development of Real-time Learner Detection System for e-learning

投写距離カリキュレーター シンプルモードとアドバンスモードを切り替えることができます シンプルモード アドバンスモード

Microsoft PowerPoint - 写測学会.pptx

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D20837E836A837D E82CC88D98FED E12E646F63>

センサーライト型カメラ LC002 取扱説明書 ご使用前に 正しくご使用いただくために この取扱説明書を必ずお読みください 必要に応じてダウンロードをして保管下さい 最終更新 :2016 年 2 月 5 日 - 1 -

Microsoft Word - 犬飼.doc

PowerPoint Presentation

する距離を一定に保ち温度を変化させた場合のセンサーのカウント ( センサーが計測した距離 ) の変化を調べた ( 図 4) 実験で得られたセンサーの温度変化とカウント変化の一例をグラフ 1 に載せる グラフにおいて赤いデータ点がセンサーのカウント値である 計測距離一定で実験を行ったので理想的にはカウ

マップマッチングのアルゴリズム

取り組みの背景目的計測点群処理の課題とポリゴン活 体制機能概要と本システムの特徴機能詳細システム構成問合せ先

小型移動ロボット

Coding theorems for correlated sources with cooperative information

高度交通システムの 研究

dji.htm - 無題 <標準モード>

情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 被写界深度に存在する主体物体の自動検出法の提案 萩原健太, 小枝正直 1 本研究では被写界深度に存在する物体の自動検出法の提案を提案する. 本手法を用いることにより,1 枚の静止画像中にある主体物体と非主体物体の分別が可能にな

1.民営化

連続講座 断層映像法の基礎第 34 回 : 篠原 広行 他 放射状に 線を照射し 対面に検出器の列を置いておき 一度に 1 つの角度データを取得する 後は全体を 1 回転しながら次々と角度データを取得することで計測を終了する この計測で得られる投影はとなる ここで l はファンビームのファンに沿った

インターリーブADCでのタイミングスキュー影響のデジタル補正技術

物性物理学 I( 平山 ) 補足資料 No.6 ( 量子ポイントコンタクト ) 右図のように 2つ物質が非常に小さな接点を介して接触している状況を考えましょう 物質中の電子の平均自由行程に比べて 接点のサイズが非常に小さな場合 この接点を量子ポイントコンタクトと呼ぶことがあります この系で左右の2つ

Microsoft PowerPoint - mp11-06.pptx

目次 1: スペック 2 ページ 2: 付属品を確かめる 3 ページ 3: 時間設定 接続方法 3 ページ 3-1: 時間設定の方法について 3 ページ 3-2: カメラ本体に microsd カードを装着 3 ページ 3-3: カメラ本体に付属アダプタを接続 4 ページ 4: 録画 & 録音方法と

CSM_FZ5_SDNB-031_10_3

(Microsoft PowerPoint -

Vectorworks 投影シミュレーションプラグイン

News Release 国立研究開発法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 福島県 南相馬市 株式会社 SUBARU 日本無線株式会社 日本アビオニクス株式会社 三菱電機株式会社 株式会社自律制御システム研究所 世界初 無人航空機に搭載した衝突回避システムの探知性能試験を実施

スライド 1

Chap2.key

【3Dプレゼン拡張機能】トレーニングマニュアル1_vol2

コンピュータグラフィックス演習 I 2012 年 5 月 21 日 ( 月 )5 限 担当 : 桐村喬 第 7 回モデリングの仕上げ 1 カメラワークとアニメーション 今日の内容 1. カメラワーク 2. シーンの設定 3. アニメーション 前回のテクスチャの紹介 1 / 10

ADS-win ご利用の皆様へ 平成 25 年 2 月 14 日 生活産業研究所株式会社 ADS-win の天空率計算における注意事項 この度 ADS-win の天空率算定時における注意事項を以下の通りまとめましたので ご利用の際にはご 確認くださいますようお願いいたします (ads-lax 及び

Microsoft PowerPoint - ip02_01.ppt [互換モード]

3) 撮影 ( スキャン ) の方法 撮影( スキャン ) する場合の撮影エリアと撮影距離の関係を調査の上 おおよその撮影距離を定める - 今回調査を行った代表的なスマホの画角では 30cm 程度の距離であった これより離れた距離から撮影すると解像度規定を満足しない事より この 30cm 以内で撮影

<4D F736F F D DC58F498D5A814091E6318FCD814089E6919C82C682CD89BD82A92E646F63>

FLIRTools+デモ手順書

構造力学Ⅰ第12回

Microsoft PowerPoint - SPECTPETの原理2012.ppt [互換モード]

Microsoft Word - 要領.doc

コンピュータグラフィックス第6回

加振装置の性能に関する検証方法 Verification Method of Vibratory Apparatus DC-X デジタルカメラの手ぶれ補正効果に関する測定方法および表記方法 ( 光学式 ) 発行 一般社団法人カメラ映像機器工業会 Camera & Imaging Pr

概論 : 人工の爆発と自然地震の違い ~ 波形の違いを調べる前に ~ 人為起源の爆発が起こり得ない場所がある 震源決定の結果から 人為起源の爆発ではない事象が ある程度ふるい分けられる 1 深い場所 ( 深さ約 2km 以上での爆発は困難 ) 2 海底下 ( 海底下での爆発は技術的に困難 ) 海中や

G800

Chap3.key

CLEFIA_ISEC発表

EnSightのご紹介

2009 年 11 月 16 日版 ( 久家 ) 遠地 P 波の変位波形の作成 遠地 P 波の変位波形 ( 変位の時間関数 ) は 波線理論をもとに P U () t = S()* t E()* t P() t で近似的に計算できる * は畳み込み積分 (convolution) を表す ( 付録

Microsoft PowerPoint - 第3回2.ppt

Microsoft PowerPoint - chap8.ppt

モデリングとは

3Dプリンタ用CADソフト Autodesk Meshmixer入門編[日本語版]

SUALAB INTRODUCTION SUALAB Solution SUALAB は 人工知能 ( ディープラーニング ) による画像解析技術を通して 迅速 正確 そして使いやすいマシンビジョン用のディープラーニングソフトウェアライブラリーである SuaKIT を提供します これは 従来のマシン

ネットワークカメラ Edge Storage マニュアル ~SD / microsd で映像録画 再生 ~ ご注意このマニュアルは Firmware が Ver1.9.2 のカメラを対象としています Edge Storage 機能 (SD / microsd で映像録画 再生 ) をお使いになる 場

2.4GHz デジタル信号式一体型モニター ワイヤレスカメラ 4 台セット 取り扱い説明書 ~ 1 ~

国土技術政策総合研究所 研究資料

Microsoft Word - CMS_Colorgraphy_Color_Space_Calc.doc


空間光変調器を用いた擬似振幅変調ホログラムによる光の空間モード変換 1. 研究目的 宮本研究室北谷拓磨 本研究は 中心に近づく程回折効率が小さくなるホログラムを作製し 空間光変調器 (spatial light modulator SLM) を用いて 1 次のラゲールガウスビーム (LG ビーム )

<4D F736F F F696E74202D20836F CC8A C58B858B4F93B982A882E682D1978E89BA814091B28BC68CA48B E >

この演習について Autoware 演習 1: データの記録 再生 Autoware 演習 2: センサーキャリブレーション Autoware 演習 3:3 次元地図の作成 Autoware 演習 4: 自己位置推定 Autoware 演習 5: パラメータ調整 Autoware 演習 6: 物体検


2017年度 金沢大・理系数学

Microsoft PowerPoint - ARC-SWoPP2011OkaSlides.pptx

スライド タイトルなし

目次 ペトリネットの概要 適用事例

isai300413web.indd

PowerPoint プレゼンテーション

ホログラフィ ビームスプリッタ レーザ光 ミラー レーザ光 記録物体 ミラー 再生像 写真乾版 ホログラム 物体光 物体光 参照光 ミラー 再生光 ミラー ホログラムへの記録 ホログラムの再生 光の干渉を利用 光の回折を利用 2

tottori2013-print.key

文書番号 :PFA012 Revision :1.01 Photonfocus 社 PFRemote 機能 Window 株式会社アプロリンク

Microsoft Word - 卒業論文.doc

2/17 目次 I. はじめに... 3 II. 操作手順 (Controlの場合) 断面の作成 寸法測定 異なる断面間の寸法測定 繰り返し処理...11 III. 操作手順 (Verifyの場合) 断面の作成... 1

計算機シミュレーション

( ), ( ) Patrol Mobile Robot To Greet Passing People Takemi KIMURA(Univ. of Tsukuba), and Akihisa OHYA(Univ. of Tsukuba) Abstract This research aims a

Transcription:

高精度全方位移動ロボットの実運用のための 障害物の画像認識技術およびリアルタイム経路探索技術の開発 2018.09.26 東京ロボティクス株式会社岡弘之 高木崇光 松尾雄希 坂本義弘 本研究は 人工知能研究振興財団の助成によって実施されたものです 1

弊社の紹介 http://robotics.tokyo 所在地 東京都新宿区西早稲田 事業内容 主にロボットアームを開発 製造 販売 国際ロボット展 (irex2017) に出展 Deep Learning を用いた 野菜のピッキングデモ を実演 2

高精度全方位移動ロボット Precise Omni 移動台車 構造 歯車の噛み合いと車輪のエンコーダにより 精密な位置決めを実現 床は特殊パネル 特徴 目標位置に 1mm の精度で到達可能 直線移動だけでなく曲線移動も可能 ただし 床面への特殊パネルの設置が必要 車輪と床の噛み合い に特徴を有する 車輪の回転方向 : 高精度な位置決めが可能 三角錐の突起を格子状に配置した歯車状特殊パネル 車輪の垂直方向 : 横滑りが可能 [ 動画 ] https://www.youtube.com/watch?v=qpnsxrx1kmc 3

Precise Omni の実運用に向けた課題 課題 1 特殊パネルの上に小さな障害物 ( ボルトやナット等 ) が落下すると 移動台車の車輪に引っかかってしまう なお 3mm 以上の大きな障害物であれば バンパーとの接触により検知できる 移動台車 バンパー 大きい障害物 バンパーにより接触を検知できるため引っ掛かりを回避可能 小さい障害物 バンパーでは接触を検知できない 4

課題 2 複数の移動台車の移動経路を探索する リアルタイムマルチエージェント経路探索技術が必要 経路探索だけでも一般に計算量が大きいが マルチエージェントかつ互いの衝突も回避するとなると 計算量が膨大となる 部屋 棚 棚 棚 移動台車 障害物 目標位置 棚 5

本研究の目的 障害物の画像認識技術を開発すること 要求スペック : 全方位の検出が可能であること 移動台車の安全停止距離 (1.0m) を確保できること 安価であること (Web カメラを採用 ) 検出した障害物の位置を特定できること リアルタイムマルチエージェント経路探索技術を開発すること 要求スペック 一度に複数の移動台車の経路探索が可能であること 障害物や移動台車同士の衝突を回避可能であること 6

1. 障害物の画像認識技術の開発 7

障害物の検出手法の概要 障害物の特徴量を用いた検出は難しい 現場では ネジやナットだけでなく ガラス破片や金属片などあらゆる物が障害物となり 限定できない 小さい障害物の場合 Web カメラに写るサイズが小さく十分な特徴量を取得できない 移動台車の前面に取り付けた Web カメラで撮影した画像 障害物 ( ボルト ナット ) 移動台車 パネル 8

そこで 特殊パネルの特徴を活かした障害物検出を行うアプローチを採用した タイルパターンを検出し その中の異常なセルを判定する タイルパターンの検出 ( キャリブレーション ) 画像処理 FFT クラスタリング 線形回帰 移動台車 移動台車はタイルパターンに対して常に一定の方向を向く 異常なセルの検出 ( 障害物検出 ) 特徴量判定 ( 統計処理 ) 9

ハードウェア構成 Web カメラを 4 方向に取り付けることで 全方位の検出を可能にした 移動台車 パネル -10deg 10cm Web カメラ 移動台車 水平視野角 制御 PC (Panasonic CF-SX1: Core i5 2.5GHz, 4GB DDR3 SDRAM) Web カメラ (Logicool HD Webcam C615) Web カメラのスペック Logicool HD Webcam C615 視野角画素数フォーカス露出白補正 水平 74.0 垂直 41.6 広角レンズ (Elecom Selfie Lens (x0.4) カメラの水平視野角は 128deg へ 210 万画素 (1920x1080) 手動 / 自動 (7cm~ ) 手動 / 自動 手動 / 自動 10

フローチャート キャリブレーション処理 (1 度だけ ) 障害物検出処理 ( 一定周期で繰り返し ) Start Start 1 不要な領域の除去 6 異常セルの検出 2 画像処理 7 距離の算出 3 奥行縞の検出 End 4 水平縞の検出 5 タイルパターンの再構築 End 11

1 不要な領域の除去 タイルでない画像領域を除去する 各ブロックの特徴量 (= 内部の HSV 値の平均 ) を算出 リファレンス領域はタイルであるとする 各ブロックの特徴量がリファレンスから許容範囲内に収まっているかを判定 ブロック毎に HSV 色空間を算出 変換 リファレンス領域 RGB 色空間 ( 画像信号 ) HSV 色空間 ( 知覚的信号 ) リファレンスから外れた特徴量を持つブロックを除去 12

2 画像処理 画像処理を用いて タイルパターンを強調させる ヒストグラム均等化処理 環境光の違いの影響を受けないよう 明るさを正規化 画像内で明るさの分布に偏りがある場合は さらに局所的ダイナミックレンジ圧縮処理を用いて補正する ガウシアンフィルター (σ=10) によるぼかし処理 後工程の 3 奥行縞の同定 を可能にするため ガウシアンフィルター (σ=4) によるぼかし処理 後工程の 4 水平縞の同定 を可能にするため ヒストグラム均等化処理 ガウシアンフィルター (σ=10) ガウシアンフィルター (σ=4) 13

ガウシアンフィルター (σ=10) ガウシアンフィルター (σ=4) 14

3 奥行縞の同定 画像の水平断面 ( 左図の黄線 ) の波形をFFTにかけて低周波成分のみ残す ( 左図のグラフ ) 次に 波の低い位置をプロットする ( 右図の青点 ) 最後に 近い青点をクラスタリングし その点群から回帰直線 ( 右図の緑線 ) を求める その際 回帰直線群が等間隔のタイルパターンになるように傾き 切片を調整する 輝度値 y 座標 [pix] x 座標 [pix] 交点 : 遠方 複数の水平断面を取得 x 座標 [pix] 15

4 水平縞の検出 3で取得した奥行縞 ( 左図の黄線 ) の波形をFFTにかけて低周波成分のみ残す ( 左図のグラフ ) 次に 波の低い位置から 水平縞間隔の距離を取得し プロットする ( 右図の青点 ) その点群の回帰直線を求める ( 右図の緑線 ) 上記回帰直線の2つの端点と 3で取得した 遠方の点とを結ぶ 2 次曲線を同定する ( 右図の赤線 ) 間隔 [pix] 間隔 [pix] y 座標 [pix] 次の点までの距離 検出した水平直線のプロットの両端 奥行き直線の交点 ( 遠方 ) チェックする断面 y 座標 [pix] 16

5 タイルパターンの再構築 奥行縞の再構築 3で求めた回帰直線の傾き 切片の値から 奥行縞の直線を求める 水平縞の再構築 4のグラフから 手前の水平線から奥に向かって水平線のy 座標を逐次求める グリッドセルの生成 奥行縞と水平縞の式から タイルパターンによるグリッドセル全ての4 点頂点の座標を算出して記憶する 再構築したタイルパターン ( 緑線 ) グリッドセル 17

6 異常セルの検出 5で得たグリッドセルの各セルについて 特徴量を算出する 特徴量 : グリッド内の画素のHSV( 色相 彩度 輝度 ) の平均値次に 特徴量のマップに対してフィルタをかけることで 特徴量が大きく変化する箇所を検出する 変化量の外れ値は 正規分布と仮定して3σで抽出 特徴量マップ タイル領域内の各グリッドについて 平均 HSV を求める 変換 RGB 色空間 HSV 色空間 障害物の検出結果 フィルタ処理 0-1 0-1 4-1 0-1 0 18

7 障害物までの距離の算出 画像の座標と実空間距離を換算する方法 焦点スクリーン θ( 垂直画角 )=41.6[deg] カメラ 2lcos(θ/2) 画面の下端 2lcos(θ/2)cos(θ/2) θ/2 l ( 既知 ) 画面の中央 画面の中央 画面の下端 この間の水平線の数を 4 水平縞のグラフから算出 タイルパターンの実寸は既知であるから l が求まる 19

評価結果 (1) 検出範囲 移動台車から 1.31m まで離れた障害物を検出可能であることが確認できた 移動台車は 1.0m あれば安全停止できるため 十分 (2) 検出精度 20 種類の障害物を用いてテストを行った 黒いボルトや銀色のナットなど パネル床面と異なる色の物体については 100% の精度で検出することができた 一方 パネル床面と同じ白い障害物については検出することができなかった そのため 色の影響を受けにくい近赤外線センサーなどを補完的に使用することを考える必要がある パネルの取り付け溝を障害物と誤検出してしまう 溝の位置やその特徴量を予めマップで記憶しておくなど 対応が必要 (3) 処理時間 グリッドパターン生成の所要時間は2.5 秒障害物検出時間は0.05 秒カメラの撮影周期は0.2 秒リアルタイム性を十分に確保できている 20

2. リアルタイムマルチエージェント経路探索技術の開発 21

手法 マルチエージェント経路探索アルゴリズムとして A* algorithm を採用 ただし 元のアルゴリズムのままでは計算量が多いため 様々な高速化手法が提案されている 今回は GPU ベースの下記の並列計算手法 ( 1) を参考に経路探索の実装を行った ( 1) GPU Accelerated Multi-agent Path Planning based on Grid Space Decomposition, Giuseppe Caggianese, Ugo Erra 実運用に近い状況での動作検証 移動台車を多数用意することは困難であったため 今回はシミュレーションで評価を行った 22

評価 シミュレーション環境 OS:Ubuntu 14.04 LTS (64bit) メモリ :15.7GB CPU:Intel Core i7-2700k @3.50GHz x 8 グラフィック :GeForce GTX 970 (a) 立体図シミュレーションデータ 縦横 20mの空間の倉庫 作業棚が7つ 移動台車が8 台存在 移動台車のタスク 作業棚に対して作業を行った後に 左上のカウンターまで移動する 経路探索の条件 100マス 100マスのグリッドを採用することで 滑らかな経路を生成することを可能とした 図 5 Precise Omni システムのシミュレーションの構築内容 図 5 Precise Omni システムのシミュレーションの構築内容 (a) 立体図 (b) 平面図 カウンター 移動台車 1 移動台車 2 青い領域は台車の移動可能領域を表す 移動台車 3 移動台車 4 移動台車 5 移動台車 8 移動台車 7 移動台車 6 (b) 平面図 移動 [ 動画 ] https://www.youtube.com/watch?v=6f1ub43b6bc 23

評価結果 シミュレーションを実行したところ 目に見える遅延は発生しなかった 移動台車が経路上で互いに衝突を回避する際に 衝突を避けることを優先した経路が選択され すれ違った後は目標地点への最短経路が選択された 図 6 2 つの移動台車がすれ違う前後の進行方向 (a) すれ違い前 : 衝突を回避するための方向を向いている (b) すれ違い後 : 目的地の方向を向いている 24

まとめ 25

まとめ 障害物検出について 障害物とその位置を検出するための基本技術を確立することができた 特徴量判定部において 機械学習などを用いることでさらに精度を改善することができると考えられる マルチエージェント経路探索について A* algorithm の改良を使用することで 実運用の要求を満たす経路探索 ( 衝突回避 リアルタイム性 ) を実現できることを確認できた 以上より 高精度全方位移動ロボット Precise Omni の実運用化の実現に向けて大きく前進できたと考える 26

謝辞 多くの方々にご支援頂きまして 大変感謝いたします 今後ともどうぞ宜しくお願い致します ご清聴ありがとうございました 27