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Transcription:

Journal Club AF 患者における 消化管出血後の抗凝固療法の再開 聖マリアンナ医科大学西部病院後期研修医吉田稔指導医吉田徹 2016.04.05

本日の論文

背景 抗血栓療法を施行している心房細動の患者において 消化管出血は頻度の多い出血合併症であることが 知られている 消化管出血後に抗血栓療法を再開するべきかどうか 判断に迷うことが多いが そのデータは少ない

心房細動 (AF) の抗血栓療法に関して 歴史的背景も関係してくるので 1989 年に初めて以前までの AF の脳梗塞の予防に抗血小板療法でなく 抗凝固療法が有効であるという RCT が発表 (Lancet. 1989;1(8631):175.) 1990 年代初めから AF に対して抗凝固療法が行われるようになった その後 2009 年に高用量ダビガドランがワーファリンと比較して有意に心原性脳塞栓症を減らしたと発表 (Engl J Med. 2009;361(12):1139. )

AF に対する抗凝固療法 - 適応 の検討にあたり 2 つに分けて考える必要がある 非弁膜症性 AF 今回の対象 弁膜症性 AF( 僧帽弁狭窄症など ) 機械弁 (AVR MVR 後など ) 一般的に抗凝固療法の適応

非弁膜症性 AF CHADS2 acronym Score Congestive HF 1 Hypertension 1 Age 75 years 1 Diabetes mellitus 1 Stroke/TIA/TE 2 Maximum score 6 CHADS2 スコア 2 点以上抗凝固療法の適応 CHADS2 スコア 0or1 CHA2DS2-VASc スコア European Heart Journal (2010) 31, 2369 2429

From: Validation of Clinical Classification Schemes for Predicting Stroke: Results From the National Registry of Atrial Fibrillation JAMA. 2001;285(22):2864-2870. doi:10.1001/jama.285.22.2864 CHADS2 スコアを 2 倍した値がだいたい年間の脳梗塞発症率 Date of download: 3/25/2016 Copyright 2016 American Medical Association. All rights reserved.

CHA2DS2-VASc スコア CHA2DS2-VASc acronym Score Congestive HF 1 Hypertension 1 Age 75 years 2 Diabetes mellitus 1 Stroke/TIA/TE 2 Vascular disease (prior MI,PAD,aortic plaque) 1 Age 65 to 74 years 1 Sex category (ie, female sex) 1 Maximum score 9 CHA2DS2-VASc 2 点以上であれば抗凝固療法の適応 European Heart Journal (2010) 31, 2369 2429

CHA2DS2-VASc スコアと年間の脳梗塞発症率 Chest 2010;137:263 272. European Heart Journal (2010) 31, 2369 2429

ヨーロッパのガイドラインでは CHA2DS2VAS c が 2 以上 今回デンマークの論文であるので説明有意差はないがアスピリンがコントロールと比較して 20% 前後の Risk Reduction があると記載 European Heart Journal (2010) 31, 2369 2429

AHA2014 AF Guidline CHA2DS2VASc Score で脳梗塞リスクを評価すること勧める

January, CT et al. 2014 AHA/ACC/HRS Atrial Fibrillation Guideline

それとは別に日本のガイドラインでは 日本人は抗凝固療法による出血リスクが他人種より高いことや CHADS2 スコアですら普及していないので上記を使っている日本人を対象にした研究でアスピリン群と非投与群の RCT でアスピリン群の方が脳梗塞の発症率が高く 重篤な出血が 4 倍生じ途中で中止となった (Stroke 2006; 37: 447-51.) Guidelines for Pharmacotherapy of Atrial Fibrillation(JCS 2013)

HAS-BLED score と出血リスク Letter Clinical characteristic* Points H Hypertension (ie uncontrolled blood 1 HAS-BLED score (total points) Bleeds per 100 patient-years pressure) 0 1.13 A Abnormal renal and liver function (1 point each) 1 or 2 1 1.02 S Stroke 1 B Bleeding tendency or predisposition 1 2 1.88 3 3.74 L Labile INRs (for patients taking 1 4 8.70 warfarin) E Elderly (age greater than 65 years) 1 5 to 9 Insufficient data D Drugs (concomittant aspirin or NSAIDs) or alcohol abuse (1 point each) 1 or 2 毎回評価を行い赤字で示した可逆的なリスクを治療し出血リスクを下げることが重要である

今回の論文

論文の PICO P: 非弁膜症性 AF で抗血栓療法中に消化管出血を起こし 入院し退院した患者 I: 抗血栓薬を単独または 2 剤併用して再開した群 C: 再開しない群 O: 総死亡率 血栓塞栓症 major bleeding 消化管出血の再発リスク

方法 1 研究期間 :1996 年 ~2012 年 ( 死亡 5 年間 outcome 2012 年 12 月 31 日が来たら終了 ) 研究場所 : デンマーク全土 研究デザイン :cohort study 情報源 1 The Danish national patient registry 2 The Danish national prescription register 3 The Danish civil registration system

説明スライド 1 The Danish national patient registry( デンマークで全国民が登録されている1996-2010 年のレジストリー ) 2 The Danish national prescription register(1995 年以降 薬局から処方されるすべての薬の情報) 3 The Danish civil registration system( 国民の出生地や誕生日など個人情報が登録されているもの )

方法 2 除外基準 <30 歳 >100 歳弁膜症 5 週間以内での TKA THA 6 週間以内の PE or DVT 消化管出血前に抗血栓療法をしてない 退院後 90 日以内に下記が起こった例を除く 血栓塞栓症消化管出血の再発主要な出血死亡 follow up の開始前に研究期間が終わった 開始なし n=924 抗凝固単剤 n=725 抗血小板単剤 n=1314 抗凝固 + 血小板 n=384 抗血小板 2 剤 n=51 3 剤併用 n=11

Baseline を退院後 90 日と 定義した理由 デンマークでは 処方箋の最大日数が90 日となっている そのため 消化管出血で入院する前の古い処方箋で退院後も服用しているかもしれないので その可能性を排除するために退院後 90 日間のblanking periodを設定した つまり 仮に入院前の処方内容で服用したとしても 90 日後にはその薬はなくなり 退院時に出された処方を確実に内服するようになるため

Inclusion( 退院時 ) の患者背景

Baseline( 退院後 90 日後 ) における患者背景

入院前の内服と 90 日後の治療介入 90 日後の治療介入 再開なし 抗凝固単剤 抗血小板薬単剤 抗凝固 + 抗血小板 全体 入院前の内服 抗凝固単剤 219 (26%) 抗血小板単剤 抗凝固 + 抗血小板 589 (34%) 105 (15%) 511 (60%) 35 (2%) 173 (24%) 62 (7%) 1049 (60%) 150 (21%) 51 (6%) 47 (3%) 275 (39%) 846 1740 710 全体 924 725 1314 384 3409 もともとの n が少ないものに関しては わかりにくいので外して表を作成

その他 NSAIDS の使用が 5% 程度と減少しているが 実際に内服 が減っているのか 内服していた人が 90 日の間に死亡 などが起こり exclusion されたかわからない 手術症例が多く比較的重症の出血であると考えられる

結果

inclusion( 退院後 ) からの累積発生率 総死亡率 39.9% 血栓塞栓症 12.0% Major bleeding 17.7% 消化管出血 12.1% 血栓塞栓症を除くと退院後の1ヶ月での発生率が高い

総死亡率 血栓塞栓症 抗血栓薬を再開しない群 抗血小板薬単剤の総死亡率が有意に高かった 抗凝固薬単剤は血栓塞栓症が低い傾向にあった

Baseline 後の割合 (major bleeding 消化管出血再発 ) Major bleeding 消化管出血の再発に関して各群でに有意差を認めなかった

抗血栓療法開始によるハザード比 と合併症の結果 抗凝固薬単剤では総死 亡率と血栓塞栓の割合 が最も低かった 抗凝固薬単剤では major bleeding が有意に増加した どの治療法でも消化管出 血の再発に有意差はな かった

PPI 投与した患者のサブグループ解析 抗血栓薬の再開と関連リスクのハザード比 抗凝固薬 DAPT 使用による消化管出血患者には PPI を使うが PPI を投与した人に限っても 全体と同じ結果であった

退院から 90 日後を baseline と設定したが 30 日 60 日 120 日でも感度分析を行った

Table 5 のまとめ 青線を除き 90 日と同様の結果であった 青線 :90 日では有意差なしであったが 抗血小板薬 単剤で 60 日 120 日で major bleeding が増えた 入院前の薬の影響を無くすため 消化管出血で入院し退院後 90 日間と設定した しかし 合併症が多い期間であり 感度分析を行い30 日 60 日 120 日であってもほぼ同様の結論であったので 今回の結果を支持するものと評価している

筆者の結果と考察 1 Af を持ち抗血栓療法を施行されている人で消化管出血を一度起こすと 2 年以内に 39.9% もの人が死亡する 2 27.1% の人が抗血栓療法を再開されなかった 3 今回の患者群に対して抗凝固療法を単剤で再開することは 総死亡率と血栓塞栓症を最も減らした ( 感度分析を用いても変化しなかった 背景として CHA2DS2-VASc は各群で同様であったこともこれを支持すると考えられる ) 4 どの抗血栓療法での再開も消化管出血の再発を増やさなかった

Limitation(1) 1 全国民の処方薬がわかるが 実際にそれが服用されているかはわからないので 起きたイベントが過大評価される可能性がある 2 消化管出血を確実に拾いあげるために 病名として主要なものも些末なものも用いたが その詳細な情報は不明であり 上部か下部消化管出血かも評価できていない 3 INR ワーファリンのコントロールの程度 血清 Cr 濃度 腎機能 Hb 濃度およびその他の交絡因子の有無についてわからないのでそれらが結果に影響を与えているか評価できない

Limitation(2) 心房細動における消化管出血後の抗凝固療法再開と脳卒中及び出血の関係についてのRCTが考えられるが そのような研究の実行には倫理的に困難と考えらる

結論 Afに対して抗血栓療法中に消化管出血で入院し退院した場合 抗凝固療法単剤での再開は 総死亡率と血栓塞栓症を最も減少させた また 再開しない場合や他の抗血栓薬と比較しても消化管出血の割合は有意に増えなかった

批判的吟味 1 抗凝固療法単剤に関して利点を非常に強調してはいるが ハザード比に関して 唯一出血を増やしている 2 結果を見る限り 抗凝固療法単剤と抗凝固療法 + 抗血小板療法の 2 剤併用療法は 同じような効果を持ち 後者の方がハザード比に関して major bleeding を増やしていない しかし Discussion で 2 剤併用療法に関して言及がない 3 1 2 より抗血小板療法の評価に関して全く触れておらず作為的なものを感じる

当院での方針 AF で抗凝固療法中に 消化管出血を発症してしまった患者では どれだけ期間があいても 抗凝固療法を再開できるならば再開した方が良さそう ( 出血リスクはあるものの 全体の予後や血栓塞栓症の発症リスクは改善 ) いつ再開するかは個々の症例で検討すべき