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第 章関数とグラフ キーワード関数 座標 独立変数 従属変数 グラフ 陰関数 陽関数 逆関数 関数の連続性 関数とグラフの例 曲線 曲面. 関数関数とは数の集合の対応関係である 例えば実数の集合 X の要素 と実数の集合 Y の要素 の間に 対 の対応が成り立つとする 例えば -5 - - -4 4 5 のような対応を考えると 集合 X の任意の要素 に対し集合 Y の要素 が次の関係で関連付けられている = (.) この関係は実数集合 X の任意の要素に対し 実数集合 Y のある要素 つまり の 倍した数を対応付ける あるいは別の言い方をすると 倍の数を返す作用と見ることができる この関係のことを関数 あるいは写像 あるいは作用 (Opertion) といい を独立変数 ( 独立に決められるから ) を従属変数 ( 関数により決められるから自由ではない ) とい う また 独立変数の取りうる値の範囲を変域 従属変数の取りうる値の範囲を値域という また 次の関数を考えてみる = (.) = (.3) = (.4) (.) の関数では独立変数の変域は任意に取れる つまり- から+ の任意の実数が取れ 変域は < < である しかしながら 従属変数の値域は < であり すべての実数というわけではない また (.3) では独立変数 は負の値をとれない つまり変域が < の任意の実数であり それに応じて が決まる つまり値域が < である 次に関数 (.4) では は 以外の実数であり に応じて は を除く全ての実

数を取る このように 独立変数の取りうる値の領域 ( 変域 ) と独立変数に対応した従属変数の領域 ( 値域 ) は必ずしも全ての実数というわけではなく 制限がついていることがあることに注意されたい 独立変数 と従属変数 の関係をシンボル的に = f ( ) (.5) と書く ここに の問題を考える f は から への対応づけの手続きを与える この形に慣れるために次 ( ) f = に対し 6 = 6 = f ( ) = に対し f () f ( ) 36 f ( ) = に対し f ( 7 ) = 7 8 = 8. 逆関数 次に = f の関係から逆に について解いてみる このとき は で表せて次の 形に書ける ( ) ( ) = g (.6) ここで g は から へ対応づける手続きを示す つまり 独立変数 の関数として従属 変数 が決まる 一般に f と g は手続きが異なるため関数の形が違う 例えば = か ら = として を で表すことができる したがって f ( ) g であり 関数の形が違う このようにして求められた g を関数 f の逆関数といい g = = f = であるが ( ) と書く これをエフインバースと読む = f ( ) = に対しては = g( ) = ± で あるので独立変数を 従属変数を と書くなら 逆関数は = ± と書ける また f ( ) = の逆関数を求めるには = とおいて について解けば良い つまり = なので と の役割を交換して = = g( ) であるから 逆関数 g( ) はもとの 関数 f と同じ形をしている ( ) 練習次の関数の逆関数を求める n () = + b (b) = ; n は整数

3.3 グラフ関数の可視化について考える 平面に直行する つの座標軸を書き それぞれ 軸と 軸と呼ぶ 軸上の位置で独立変数の値を与え また 軸上の位置で従属変数の値を与え (, ) を座標点とする点の集合を考える 独立変数 が連続的に変域で変化するとき に対応する の値を求め 座標 (, ) の集合を図示すると この平面上の曲線となる この曲線を関数 = f () のグラフという 上述の関数および次の関数のグラフを描いてみよう 練習ガウス型関数 (Gussin Function)( 釣鐘型 ): b = e ;,b は正の数 ローレンツ型関数 (Lorentin Function)( 山頂を丸くした富士山型 ): = ;,b は正の数 + b 次に 逆関数をグラフとして表すとどのように描けるだろうか.4. = = = = = f ( ) g( ).8.6.4. B A C C A O B..4.6.8. 図. 逆関数の可視化 図. に示すように関数 = f () は 軸上の値 に対し 軸上の値を与える 逆関数の グラフは について解いた = g() により 軸上に の値を持ってきて 軸上に対応す る の値を持ってきてプロットしたものである この図において 三角形 AOC と A OC は直角三角形で合同である したがって 座標 ( ( ) ( f ( )), = で与えられる A 点と座標, = g ) で与えられる A 点は原点を通る直線 = に対して対象な位地にある つ

4 まり 曲線 = f () 上の全ての点に対応する逆関数グラフ上の点をプロットすると もと の関数を直線 = に対し 対象に移したものになる これが 逆関数を簡単に可視化する 方法である いくつかの逆関数の例を挙げる 関数 逆関数 n = n = ただし > = e e = = log ただし 逆関数では > log = log = log = sin = rcsin = cos = rccos = tn = rctn = cot = rc cot e e これらの逆関数を実際に使う場合 三角関数の逆関数が特にわかり辛い ここで = rcsin を例にとると この関数はsin の値が になるような の値であると考える π 例えば rcsin は sin の値をとする変数の値 つまりラジアン ( rd ) である 度数 6 法で言うと 3 である ラジアンと度の関係を思い出すこと.4 周期関数と多価関数次に 関数の周期性について考える 一定の値 ずつ異なる無数の独立変数値に対し 一つの従属変数値を与える場合は この関数を周期関数 をその周期という 簡単な表現をするなら 何回も繰り返して同じ値を取る関数のことである 身近な例としては三角関数がある sin と tn のグラフを図. に示した sin tn 3.5-6 -4-4 6 -.5-6 -4-4 6 - - - -3 図. 周期関数

5 一つの独立変数値 に対し 従属変数の値 = f ( ) が一つだけ対応するとき 関数 f ( ) は一価関数であるという ところで = の逆関数 = ± は > の値に対して つ の値が定まる この例のように 一つの独立変数値に対し従属変数が つ対応する場合は この関数は 価であるという さらに 従属変数がたくさん対応する場合はこの関数は多 価関数という 周期関数 sin および tn の逆関数である rcsin および rctn は図. と図.3 に示すように 一つの の値に対して無数の関数値を持つ ここで sin と tn はそれぞれ π とπ を周期とする周期関数なので その逆関数は一 つの の値に対して π あるいはπ ずつ異なる無数の値を与える多価関数になる これら の多価関数を実際に使う場合 関数の値域が独立変数の変域に 対 で対応する区間だけを使うことが多い この区間を関数の主値という 図.3 には rcsin と rctn の主値に対応する部分を太い線で示してある 4.5 4 3.5 3.5 = rcsin 4.5 4 3.5 3.5 = rctn.5.5.5 - -.5.5 -.5.5 - -5 5 -.5 - -.5 - -.5 - - -.5 -.5-3 -3-3.5-3.5-4.5-4.5 図.3 三角関数の逆関数.5 陽関数と陰関数関数の種類として = f () のように独立変数 から従属変数 の値への対応があからさまに明示された形 つまり を で表した形で与えることを陽関数という また 従属変数に対して解かれていない表現で関数関係を与える場合 この関数関係を陰関数と言う

6 例えば = は についての陽関数であるが を式 = を満足する の関数 として規定すると は陰関数である 独立変数 に対して従属変数 を陰関数として与 える例 + + = + = log = 問これらの例について を陽関数として表しなさい.6 関数の連続性 次に関数の連続性について考える 関数 f ( ) = について ある の値 の近傍での関 数値の変化の仕方を考える 図.4 の様に変数 を に対し 左側から に近づけるとき関数値 = f の値はある値 に近づく これを左極限値という また を に対し右 ( ) 側から に近づけるとき f ( ) + 図.4 不連続な関数 ( ) + = f の値はある値に近づく これを右極限値という このとき この つの値が 等しいとき関数 = f ( ) は = において連続であるという つまり この点において関数 はつながっている もし この つの値が異なれば 関数はこの点において不連続である という この状況は図.4 に示されている ここで 変数 が無限に に近づけたときの関数値と言ったが それを記号として と書く この値が 大きくなる場合 ( ) ( ) lim f (.7) ならば lim f ( ) = あるいは無限に小さくなる ( ) と書く 変数 が有限な値のみならず無限に 場合での関数 f ( ) が近づいていく値

7 も lim f ( ) = α あるいは f ( ) = β などと書く 関数 f ( ) lim (.8) = について = において左極限値と右極限値が一致する場合 これらを単に極限値と言って区別はしない 例えば = という関数の での左極 限値と右極限値を求めてみよう ε を正の数とする 左極限値と右極限値をそれぞれ 左極限値 ( ε lim ε ) 右極限値 lim( + ε ) (.9) ε と書く ここで 極限の値を求めるために lim の中身を展開して ε としてみる lim ε = lim ε + ε = lim lim ε + limε = 左極限値 ( ) ( ) ε ε ε ε ε lim + ε = lim + ε + ε = lim + lim ε + limε = 右極限値 ( ) ( ) ε ε であり 両者は等しい したがってこの関数は = で左極限値と右極限値が等しく ここ で関数は連続である ε ε ε 次の例として関数 = について = での左極限値と右極限値を求めてみる 左極限値 lim = lim = ε ε ε ε 右極限値 lim = lim = ε + ε ε ε となり 両者は一致しない したがって この関数は = で不連続である また 別の例 として関数 = について = での左極限値と右極限値を求めてみよう 左極限 lim ε ( ε ) = lim = 右極限 ε ε lim ε ( ε ) = lim ε ε + であるので両者は一致する しかしこの場合関数は = で連続であるとは言わない 関数 の値が無限に大きくなる場合や一定の値に収束しない場合には連続とは言わない = 練習次の関数について = における左極限値と右極限値を求める 3 () = () = (3) + b ( ) = + c + b ( ).7 曲線関数 = f ( ) は横軸に を 縦軸に を取って座標点を連ねると曲線を与える ところで と が別の独立変数 例えばt の関数になっているとする つまり はもはや独立

8 変数ではなくt によって規定されるとする このとき t の値と座標点の位置 (, ) は対応している t の値が与えられた変域を変動するなら これに対応した点, は 平面上 で曲線を描く この点が描く曲線と = f ( ) られる ( ) で与えられる曲線は同じ形をしている と からt を消去して と の直接の関係を求め それを について解けば = f ( ) の形が得 具体例として 水平に 軸を 垂直に 軸をとって 質量 m の物体を水平面からθ の角 度で 速さ v で発射したときの軌跡を求めよう 時間 t を独立変数に取り t = のときに (, ) はt の値で決まり 物体を原点から発射する このとき物体の位置 = ( v cosθ ) t (.) = gt + ( v sinθ ) t (.) で与えられる 時刻 t が変化すれば と がそれに応じて変化し 点 (, ) が動き軌跡を描く (.) 式からt について解き それを (.) 式に代入すると と の直接の関係が得 られ 質点の軌跡は = f る ( ) の形で与えられる 今の場合 これは原点を通る放物線であ g = + ( tnθ ) (.) v cos θ 時々刻々と変化する質点の位置を時間を追って記述するには時刻 t で と を表示することが必要である これをt をパラメーターとして と を表示するという あるいは簡単にパラメータ表示という それに対して 質点の位置を時間的に追跡するのではなく 軌道を描いてみたいという場合は と の直接的な関係を使う 次の例として 角速度 ω (rd/s) で等速円運動している点の軌跡を表現してみよう 円運 動の半径を r 点の位置を (, ) とすると 時刻 t において回転した角度はω t rd であ る したがって 質点の (, ) 座標は = r cosωt (.3) = r sinωt (.4) π である これは t = を周期とする周期関数であり 粒子の軌道のt をパラメーターと ω したパラメーター表現を与える ここで 式 (.3) と (.4) を 乗して加えることでt を消去して と の関係が得られる + = r (.5) これは と をそれぞれ 乗したものが一定値 r であることを示し 半径 r の円軌道を 表す ここで更に 円軌道の中心が一定の速度 v で 軸方向に移動する場合の 点の軌跡を求め

9 ると t をパラメーターとした表現では = r cos ω t + v t (.6) = r sinωt (.7) となる この式を使って具体的に曲線を描くことは難しくは無いが t を消去して と の直接の関係を求めることは単純ではない この例のように と を一つのパラメータ この例ではt の関数で与えることで曲線を表示するほうがはるかにシンプルなことが多い 次に 3 次元空間での点の位置 (,, ) とパラメータt の値が対応しているとする つま り ( t) = ( t) ( t) =,, = (.7) のように,, 座標がそれぞれt の関数として与えられるとする このとき パラメータ t がいろいろな値をとることにより この点 (,, ) は 3 次元空間内に曲線を描く 例えば 水平方向に質量 m の物体を 軸から 6 の方向へ速さで発射したときの軌跡を求めよ う このとき t 秒後の物体の各座標値は v v = t t 3 = = gt であるので t にいろいろな値を入れれば物体の位置が刻一刻と変化していくことがわかり 軌道を描くことができる ここで t を で表し と に代入すれば 軌道を与える式を 得る この式では物体の位置が刻一刻と移動していくありさまは描けないが 運動すべき軌跡がわかる g = 3 = v この式から大雑把な軌道の様子を見ることができる まず 質点の軌道上の位置 (,, ) に ついて の値が 座標値により最初の式で与えられる この関係はこの質点の軌道を 平面に投影したときの影を与え これは直線であることが最初の式からわかる この 直線は = 3 であり 軸からの傾きが 3 である また 軌道を v 面に投影すると g この形は 番目の式から放物線 = であることがわかる この例でも 曲線は一つ v の独立な変数 今の場合は で与えれらることが分かる 次の例を考える = r cosωt = r sinωt = v t (.8)

は と の関係としては 半径 r の円を与え 平面内では半径 r の円軌道上を角速度 がω で回転する 更に 座標は一定速度 v で移動するので 回転させながら 方向に巻 くラセンを描く 問この例について 独立変数としてt の代わりに を用いればどのような式になるか 螺旋を 3 次元的に図示しなさい 空間の点の位置を直交する,, 軸の座標系で指定してきたが ( カーテシアン座標系 : Crtesin coordinte) 独立したほかの 3 つのパラメータで 3 次元空間の点の位置を決めることができる 頻繁に使われるのが円柱座標系と球座標系である.8 円柱座標 平面からある点までの高さ 点の影を真下に 平面上に落とした位置までの 原点からの距離 r および原点からこの影まで引いた動径と 軸との角度 ϕ で位置を与える 座標系 したがって 点の位置を ( r, ),ϕ という 3 種類の独立したパラメータで与える,, 座標系の各座標成分と円柱座標の各パラメータとの関係は = r cosϕ = r sinϕ = で与えられる この座標系を使えば たとえば 式 (.8) が与える 方向に巻くラセン運動 をおこなう点の位置を r ϕ で与えるならば (, ϕ, ) = ( r, ωt, v t) r と単純な形で書けて 一つの独立変数 t を変化させるとラセンを描くことができる (,, ) r ϕ 図.5 円柱座標

.9 極座標図の.6 に示すように 原点から空間の点まで引いた動径の長さを r 動径の天頂からの角をθ および動径の 軸からの方位角をϕ とし この 3 つの独立したパラメータで空間の位置を指定する座標系であり,, 座標系との関係は = r sinθ cosϕ = r sinθ sinϕ = r cosθ (.4) である これを球座標と呼ぶ π ここで θ = とすると 次元の極座標系における関係式が得られる, 座標値と 次 元極座標での r, ϕ の値との関係は で与えられる = r cosϕ = r sinϕ (.5) θ r (,, ) ( r,θ,ϕ) r ϕ (, ) ( r,ϕ) ϕ 図.6 球座標 図.7 二次元極座標 次元の極座標において = という放物線がどのように表されるであろうか および から r とθ への変換公式を適用すると r sinθ = r cos θ あるいは tnθ = cosθ r (.6) が得られる これは独立変数 θ の関数として r を与える と言って ピントくるだろうか 再考してみよう = というのは いろいろな の値に応じて の値が決まるというこ とであり 点 (, ) は放物線上に並ぶ ところで 式 (.6) の関係はいろいろなθ の値に 対して r が決まるということである したがって θ を決めて それに応じて r を (.6) で求め 軸からの角度が θ で原点からの距離が r の位置に点を打つ この位置が極座標で 表される位置になる θ にいろいろな値を入れ r を計算してプロットしていくと 同じ放

物線上にならぶ 実際に作図して曲線が放物線であることを確認すると理解が深まるであろう 極座標で表すとわかりやすい曲線としてアルキメデスのラセンとオイラーの対数ラセンがある アルキメデスのラセンはちょうどアリが回転する円盤 ( 昔はレコード もっと昔は音盤といった ) を動径方向に一定のスピードで進むときに描く軌道である アリの進む速さを v : 一定 円盤の角速度をω : 一定とすると r = vt および ϕ = ωt であるの で アリの位置の極座標表示は ( r, θ ) ( v t, ωt) の関係で与えるために t を消去すると v = で与えられる アリが描く曲線を r と ϕ r = θ (.7) ω となる つまり 原点からの距離 r が偏角 θ に比例している これを実際の極座標で描いてみるとわかりやすい 図.8 にアルキメデス螺旋 ( θ π ) の例を示す オイラーの ( 対数 ) ラセンでは原点からの距離と偏角が次の関係で与えられるものである θ r = re (.8) アルキメデス螺旋に比べて動径の長さが角度に応じて急速に増大する 図.9 に ( θ π ) に対応する例を示す θ = でも r = ではないことに注意すること θ でr である これらの座標系で曲線を表現することは馴染みがないかもしれない 座標系で表した曲線は 座標値から 座標値への対応 つまり = f ( ) であったが 他の座標系 例えば極座標では偏角 θ から動径長 r への対応 r = g( θ ) で曲線を与えることができる 結論としては 曲線は一つの独立なパラメータで与えられるということであり それがt でも良いし 空間座標を与える,,, r,θ,ϕ のどれか一つでもよい -5 5 - -4-6 -8-5 - -5 3 4 5 図.8 アルキメデスの螺旋 r = θ 図.9 オイラーの対数螺旋 θ r = e. 曲面 次に 3 次元空間で任意の実数の組み合わせ ( ) 考える 例えば = +, に対して別の実数 が対応する場合を.9)

3 の場合 (, ) の組み合わせに対して の値が決まる これを ( ) = f, (.) と書き を と の関数という (, ) の組み合わせが許される領域を と の変域とい い それに応じた の値の範囲を値域という 今 3 次元空間の 上にとる 指定された 平面上に点 (, ) を取り この と の値に対応する の値を 軸 平面上の領域における任意の点 (, ) に対応する点 (,, ) は曲 面を作る すなわち式 (.) は曲面を与える 式 (.9) で与える曲面は原点に頂点を持ち下に凸な回転放物面を与える 式 (.) は を と により陽に与える つまり曲面を陽に与 えるものであるが (,, ) = F (.) により が と の陰関数であるとして曲面を与えることもできる つまり 式 (.) か ら について解けて と により表せるはずだと考える 例えば + + r = (.) は を と の陰関数として規定し 点 (,, ) の集合は半径 r の球面を与える ところで を特別扱いする必要は無く 変数の別の組み合わせ 例えば と の値から を決めることで曲面を与えることもできる あるいは とにかく式 (.) で与えられる点 (,, ) の集合は曲面を作るのである 練習 + + = b c はどのような曲面を張るか さらにまた 独立な二つのパラメータ s およびt により ( s, t = ) = ( s, t) ( s, t) = (.3) により 3 次元空間での曲面を与えることができる 実際 最初の 式から s とt について解き つまり s とt を および で表し それを 3 番目の式に代入すれば を および によ り表せるので曲面を与える その例として 半径 r の球面を与えるために球面上における任意の点の座標 (,, ) を球座

4 標で与えるとする 具体的には = sin cos r θ φ = r sin θ sin φ = r cosθ (.4) である ここで r は定数であり θ と ϕ は任意に取れる変数で これにより球面上の任 意の点が表される つまり 任意の つのパラメータ θ と ϕ で半径 結論として 曲面は二つの独立したパラメータで与えられる r の球面が与えられる 陽に与えられた曲面の例 () = r および = r はそれぞれ半径が r の球の上半分と下 半分を表す ここで および は + r を満たす 平面上の任意の点である + b (b) = e はどのような曲面を表すだろうか + は 平面上の原点から位 置 (, ) までの距離であり これを + = r と置くと r はこの点までの原点からの距離 r b を与える このとき 曲面は = e と書け は r だけに依存して点 (, への方向には 依存しない この関数をガウス型関数といい 原点で最大値 を与える釣鐘型である と はそれぞれ から + まで取れるが r = b の位置で最大値 の e 倍の値となる 原点 からこの位置までの距離 b を e ( イー分のイチ幅 ) と呼び ガウス関数の広がりの目安を 与える ) (c) = + + b に付いて考える + = r と置くと r は 平面上で原点か らの位置 (, ) までの距離を与える このとき 曲面は = と書け は r だけに依 r + b 存して点 (, への方向には依存しない この関数をローレンツ型関数といい 原点で最大 ) 値 を与える 曲面の形は頂上を丸くした富士山のようである ガウス型との違いは裾野 b が遠くまで広がっていることである と はそれぞれ から + まで取れるが r = b の 位置で最大値 の 倍の値となる 原点からこの位置までの距離 b を半値幅と呼び ロ b ーレンツ型関数の広がりの目安を与える 問ガウス型関数の半値幅はどう表せるか

5 図. にガウス型曲面 ( + ) log = e を 図. にローレンツ型曲面 = + + をそれぞれ示す これらの曲面の差異がはっきりしない場合は + = r として r と の関係をプロットしてみると図. に示すように違いは明らかである.5 - - - 図. ガウス型曲面 = e - ( + ) log.5 - - - - 図.ローレンツ型曲面 = + +.8.6.4. 3 4 ローレンツ ガウス型 r = r = e + r log 図. ガウス型とローレンツ型 問上記のガウス型とローレンツ型の関数で半値幅を求めなさい