2002 年 9 月 30 日 105 (53) 特集マルチスライス CT の有用性 原著論文 気管支動脈描出におけるマルチスライス CT の有用性 宮崎真本荘浩橋本直人五十嵐康弘 森谷浩史宍戸文男 福島県立医科大学医学部放射線科 Miyazaki, Honjou, Hashimoto, Moriy

Similar documents

2002 年 9 月 30 日 129 ー (77) 原著論文 各肺葉の解剖学的特徴を応用した切除肺葉の CT 診断法 尾辻秀章夫 1 甲川佳代子夫 1 西本優子女 2 大阪府済生会吹田病院放射線科 H 奈良県立医科大学放射線科 d Koukawa 刈 Yuuko Nishimoto 叫 はじめに肺

1-A-01-胸部X線写真の読影.indd

1)表紙14年v0

連続講座 画像再構成 : 臨床医のための解説第 4 回 : 篠原 広行 他 で連続的に照射する これにより照射された撮像面内の組織の信号は飽和して低信号 ( 黒く ) になる 一方 撮像面内に新たに流入してくる血液は連続的な励起パルスの影響を受けていないので 撮像面内の組織よりも相対的に高信号 (

32 臨床研究 高松赤十字病院紀要 Vol. 4:32-37,2016 汎用型ワークステーション ( 肝臓解析 ) を応用した TACE 塞栓領域予測と腫瘍栄養血管の自動抽出に関する検討 1) 高松赤十字病院放射線科部 2) 消化器内科 1) 1) 1) 2) 2) 須和大輔, 坂東誠, 安部一成,

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

スライド タイトルなし

症例_一ノ瀬先生.indd

P001~017 1-1.indd

本日の内容 1.CT 2.MRI 3. 血管造影

肺気腫の DUAL ENERGY CT像について

PowerPoint Presentation

IVR22-3本文.indb

2014年4月改定対応-画像診断

外来在宅化学療法の実際

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

A型大動脈解離に対する弓部置換術の手術成績 -手術手技上の工夫-

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

1 999 年 9 月 30 日 Leiomyomatosis の一例 早坂和正 田中良明 矢野希代志 藤井元彰 奥畑好孝 氷見和久 根岸七雄 * 日本大学医学部放射線医学教室 * 第二外科学教室 Hayasaka, T anaka, Yano, Fujii, Okuhata, Himi, Negi

症例_佐藤先生.indd

Microsoft Word - 肺癌【編集用】

第71巻5・6号(12月号)/投稿規定・目次・表2・奥付・背

Microsoft Word - 要旨集 医乙044_山本.doc

<4D F736F F F696E74202D2088F38DFC B2D6E FA8ECB90FC8EA197C C93E0292E B8CDD8AB B83685D>

_目次-修正.indd

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

Vol.42 No.10( 2010)

<4D F736F F F696E74202D2091E F18ACC919F8BB38EBA95FA8ECB90FC205B8CDD8AB B83685D>

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D208ACC919F8BB38EBA91E63889F196DA814095FA8ECB90FC B8CDD8AB B83685D>

頭頚部がん1部[ ].indd

FLONTA Vol.2 FlowGate 2 Balloon Guide Catheter technical assistant FlowGate 2 Balloon Guide Catheter を使用した臨床経験 佐世保市総合医療センター脳神経外科 林健太郎先生 FlowGate 2 Bal

3次元量子ノイズ除去フィルタ併用ヘリカルスキャンによる頭部単純CTの画質向上

2005 年 9 月 30 日 特集肺癌画像診断 2005 年一肺結節の良悪性鑑別の進歩 図 1 肺過誤腫 70 歳代女性 HRCT 肺野条件 右下葉肺底部に 15mm 大 辺縁整で一部わずかに分葉状の形態を呈する結節あり b,c: HRCT 縦隔条件 結節内に明らかな石灰化は見られないが 内部の

1999ifô6 月 30EI 臓側胸膜および壁側胸膜胸膜外脂肪層胸内筋膜および最内肋間筋肋間筋間脂肪層内肋間筋外肋間筋 図 1 正常胸壁の CT 像 : 肋間では 1-2mm の厚さの線状 構造が認められる ( ) 図 2 胸膜 胸壁解剖の模式図 ( 文献 1 ) より改変 ) 図 3 びまん性胸

核医学分科会誌

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

Multislice CT ECLOS(16列)の使用経験

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

第1章-めざせ血管エコー職人.indd

<4D F736F F D B8E968BC6816A955D89BF8C8B89CA95F18D908F9182CC8A E646F6378>

日産婦誌58巻9号研修コーナー

Kiyosue

K06_アウトライン前.indd

Japanese Journal of Lung Cancer-Vol 42, No 7, Dec 20,

<303491E592B BC92B08AE02E786C73>

表 1. 成人の各撮影部位の診断参考レベル (diagnostic reference level;drl) 撮影部位 CTDI vol (mgy) 2 DLP (mgy cm) 3 CTDI ファントム 1 スキャン回数日本のサイズ (cm) 25 th percentile 75 th perc


連続講座 画像再構成 : 臨床医のための解説第 6 回 : 篠原広行 他 画像再構成 : 臨床医のための解説第 6 回胸部 腹部 MRA - 非造影 MRA を中心に - 篠原 広行 1) 小島慎也 2) 橋本雄幸 3) 2) 上野惠子 2) 1) 首都大学東京東京女子医科大学東医療センター放射線科

北海道医療大学歯学部シラバス

臨床No208-cs4作成_.indd

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

01.PDF

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

IVR21-4本文.indb

中心静脈カテーテル (CVC:Central venous Catheter) とは・・・

狭心症と心筋梗塞 何を調べているの? どのように調べるの? 心臓の検査虚血チェック きょけつ の きょうさく狭窄のチェック 監修 : 明石嘉浩先生聖マリアンナ医科大学循環器内科

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

内臓脂肪評価目的による 腹部CT法における 再構成フィルタ関数の影響

が 6 例 頸部後発転移を認めたものが 1 例であった (Table 2) 60 分値の DUR 値から同様に治療後の経過をみると 腫瘍消失と判定した症例の再発 転移ともに認めないものの DUR 値は 2.86 原発巣再発を認めたものは 3.00 頸部後発転移を認めたものは 3.48 であった 腫瘍

スライド 1

1 Q A 82% 89% 88% 82% 88% 82%

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

肺採取術マニュアル

Philips iCT spを導入して ー循環器医の立場でー

H28_大和証券_研究業績_C本文_p indd

untitled

減量・コース投与期間短縮の基準

III 医療事故情報等分析作業の現況 (2) ガベキサートメシル酸塩の製品平成 21 年 12 月現在薬価収載品目は以下の通りである アガリット静注用 100mg アロデート注射用 100mg アロデート注射用 500mg 注射用エフオーワイ100 注射用エフオーワイ500 ソクシドン注 注射用パナ

肝臓がんの治療

投稿論文 16DAS MSCT を用いた透析内シャント血管 4D-CTA への試み Try of shunt blood vessel 4D-CTA in the dialysis using 16DAS MSCT. 前田 年彦 / 向井 正弘 / 伊藤 宏治 / 山田英之 下埜 嘉之 / 門脇 弘


ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

スライド 1

盗血症候群について ~鎖骨下動脈狭窄症,閉塞症~

Ø Ø Ø


3. 対象 2001 年より仁科記念サイクロトロンセンター ( 岩手県滝沢村 ) にて 18FDG-PET 検査を行なった良性悪性の鑑別の困難であった 8 例である ポジトロン断層撮影装置は Shimadzu Headtome IV を用いた 検査前 6-7 時間絶食とし トランスミッション撮像 (

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

_02戸沢.indd

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

エコーによる肺病変の診断

バイバルコロナリーステント 2015 年 1 月作成第 1 版本ステントは 非臨床試験において 条件付きで MRI 検査の危険性がない MR Conditional に該当することが立証されている 下記条件にて留置直後から MRI 検査を安全に施行することができる 静磁場強度 3 テスラ以下 空間勾

中医協総 再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて 再生医療等製品の保険適用に係る取扱いについては 平成 26 年 11 月 5 日の中医協総会において 以下のとおり了承されたところ < 平成 26 年 11 月 5 日中医協総 -2-1( 抜粋 )> 1. 保険適

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

鑑-H リンゼス錠他 留意事項通知の一部改正等について

3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

199 5 年 3 月 30 日 ( , Thro 町 bosed 分類した DeBakey 分類 3) (en 町 r と解離の進展範囲から 3 型に分類 ) と S 匂 nford 分類 4) ( 上行大動脈に解離が及 ぶか否かで 2 型に分類 ) がよく用いられるが

university of fukui hospital 163

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again

図 表 1 1,000 万 円 以 上 高 額 レセプト ( 平 成 25 年 度 ) 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷 病 名 順 位 月 額 医 療 費 主 傷

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認


0.45m1.00m 1.00m 1.00m 0.33m 0.33m 0.33m 0.45m 1.00m 2

Transcription:

2002 年 9 月 30 日 105 (53) 原著論文 気管支動脈描出におけるマルチスライス CT の有用性 宮崎真本荘浩橋本直人五十嵐康弘 森谷浩史宍戸文男 福島県立医科大学医学部放射線科 Miyazaki, Honjou, Hashimoto, Moriya, ofradiology, はじめに 気管支動脈は略血の主たる原因血管あるいは肺癌 の栄養血管であり それぞれ気管支動脈塞栓術 (BAE) あるいは気管支動脈内注入療法 (BAI) を施行する際 に カテーテルによる選択が必要となる Cauldwell や Botenga らは 気管支動脈の 70-83.3% が 下行大動脈の第 4 胸椎下縁レベルから第 6 胸椎上縁レ ベルの間で分岐すると報告している1. 2) しかし同レベ ル内の分岐で あっても 気管支動脈は左右とも 1 本ずつ 存在するものとは限らず その分岐形式はバリエーション が豊富であり かつもともとの血管径が細いこともあって 選択造影にあたっては 気管支動脈の同定自体が困難 であることが少なくない また このレベル外の部位から 分岐する気管支動脈は anomalous origin とされ BAAO) その分岐部位 頻度については様々な報告がなされて きた 1.5) さらに 繰り返す略血や BAE 後の再曙血 ある いは大きな腫癌を形成する肺癌の場合には 気管支動 脈のみならず 肋間動脈や内胸動脈 外側胸動脈など の関与がしばしば見られる BAE あるいは BAI 時に 事前に anomalous origin や他 の体循環動脈の関与を予測することは難しく このため 血管造影の際に 広範囲の探索が必要になること 使用 造影剤量が多くなること X 線透視時間が増大すること など患者の不利益になる可能性が高い 当院では 1999 年 7 月からマルチスライス CT を導入し 臨床における有用性の確認を行っているが そのーっ として 経静脈的な造影剤投与による気管支動脈の描 出を試み 気管支動脈の分岐形式を予測することから arteriography) の有用性を 検討してきた 本稿では これまで経験してきた症例を 示し CTBAG の至適撮影条件とその有用性について 報告する 2 1 対象 対象と方法 1999 年 9 月から 2002 年 5 月までに 17 人に対し CTBAG と BAG の双方を施行した 内訳は男性 13 例 女性 4 例で 年齢は 53~87 才 ( 平均 67.6 才 ) 臨床診断は非小細胞肺 癌が 9 例 略血が 7 例 肝細胞癌肺転移が 1 例である CT 装置は Aquilion ( 東芝メディカル ) を用い 造影剤は 20G 静脈留置針で確保された正中 肘静脈より投与した 撮影条件は 症例により異なるが スライス厚 2mm 再構成間隔 1mm ヘリカルピッチ 5.5 の 条件を一般的としている 造影剤は 全例で 350mg Il ml 以上の製剤を用いて いる CT の造影剤投与法は 2.5~3mlls の低速 4mlls の中速 6~8ml/ s の急速静注の群に分け 使用造影剤 総量も 40ml~100ml まで症例により様々な条件で注入 を行った CT 撮影の開始は 造影剤投与から 15~20 秒 後としている CT の撮影範囲は 最初の 11 例では大動脈弓頂部か ら腹側に約 10cm を 最近の 6 例では全肺を同じ条件で 撮影している なお 17 例全例とも頭尾方向のスキャンで また全ての患者で呼吸停止時聞は 15 秒以内で あった 2 3 BAG においては DSA 装置は東芝製 DFP-2000A を 用い 右大腿動脈を seldinger 法にて穿刺し 5F カテー テルにて目的とする気管支動脈を造影し 同定した 造影剤 (300mgl/ ml) は それぞれの造影に際し 用手 的に約 10ml を使用した 2 4 画像の評価 画像は評価の目標である縦隔を中心にズーミングして 再構成し まず横断像をページングにて観察することで 大動脈から分岐する血管を同定した 必要に応じ (VR) surface (SR) 別刷請求先 : 960-1295 福島市光が丘 I 福島県立医科大学医学部放射線科宮崎真 ( 内線 :CT 室 3588) ( 医局 )

断層映像研究会雑誌第 29 巻第 2 3 号 A~D に CTBAG 横断像および気管支動脈 肋間動脈造影像を示す 横断像にて 黒矢印が左右気管支 動脈および肋間動脈の起始部を示している 並べて供覧した血管造影にて それぞれの起始に対応した 動脈が描出されている A: 気管前面に分布する気管支動脈左右共通幹 B: 右気管支動脈 (a) および左上葉気管支動脈 (b) C: 左下葉気管支動脈 0: 左第 2~4 肋間動脈とその末梢の横断像 (a b) D-a b において 左肺尖背側胸膜に沿って 日客血の原因となった陳旧性結核病巣部が石灰化を伴う濃度 上昇として見られる 白矢印にて 左第 2~4 肋間動脈の末梢が病巣部に入っていく様子を示す (MPR) などを利用して 三次元的に観察を行った O 横断像の三次元化には inc.) を用いた 得られた事前情報は 実際の BAG 時に 同位置に目 的血管が存在するかどうかにてその有用性が評価され た 気管支動脈のみならず 全肺撮影の症例においては 他の体循環動脈の関与についても同様に評価を行って いる 結果と症例 3 1 CTBAG 撮影の至適条件 造影剤の投与法は 4mlls 総量 60ml が至適と考えら れた CT の撮影範囲は 呼吸停止時聞が 15 秒以内で 全肺を同じ条件で撮影し スライス厚 2mm 再構成間 隔 1mm ヘリカルピッチ 5.5 の条件で 十分に診断可能な 画像が得られている 撮影範囲に関しては他の体循環動脈の関与を検討 する場合は全肺撮影が有用で あった 3 2 CTBAG の描出能 (BAG との比較 ) CTBAG により 17 例すべてで胸部下行大動脈より分岐する左右両側の気管支動脈の予測が可能で あった 気管支動脈は全部で 39 本が描出され 右が 18 本 左が 17 本で 左右共通幹は 4 本存在した 右は単独分岐が 4 本 肋間動脈との共通幹から起始するものが 13 本で 左は 17 本すべてが大動脈壁より単独に分岐するものであった O 右の分岐のうち 1 本は右内胸動脈と共通幹をなす BAAO であることが CTBAG によって示唆され BAGによって確認されている (Fig.2) BAGでは 予測された 39 本の気管支動脈のうち 31 本を確認した BAIあるいは BAEのターゲットである患側の気管支動脈はすべて確認が可能であった O また CTBAGで描出されない気管支動脈がBAGで見つかることはなかった 以下 CTBAGがBAE BAIに非常に有用で あった

2002 年 9 月 30 日 A:CTSAG により得られた VR 像 S: 同 MIP 像 VR 像では 大動脈前壁から分岐する左気管支動脈と 右鎖骨下動脈から右内胸動脈と共通幹をなし 分岐する右気管支動脈の分岐が明らかである MIP 像では 右気管支動脈の末梢が右主気管支周囲 に網の目のように分布している様子がわかり もともと右気管支動脈として存在する構造 ( SAAO ) で あることが示唆された 横断像のページングでの観察では 大動脈壁から直接 あるいは肋間動脈と 共通幹をもって分岐する右気管支動脈は認められなかった C: 右鎖骨下動脈造影 0: 左気管支動脈造影 v 像に一致した構造をもって左右気管支動脈が確認され向 Al S I Clo 2 例を提示する 3 3 体循環の関与が予測された症例 ( 症例 1) Fig_1 は 左肺上葉 S 1+ 2 の陳旧性結核に伴う炎症性変 化を略血の原因とする症例である CTBAG で左気管支動脈が上葉枝 ( Fig_1 B-b ) と下 葉枝 ( Fig_1C ) の 2 本 右気管支動脈が肋間動脈の共通 幹を起始として 1 本 ( Fig. 1B-a ) また大動脈弓部を起始 として気管前面を走行する枝が 1 本 ( Fig. 1A ) と 計 4 本 の気管支動脈が描出された 4 本すべてが BAG( Fig. 1A, B, C ) にて確認され 略血の原因血管である左上葉 枝 および 末梢に stain を形成し 今後略血の原因となり うると考えられた左下葉枝をそれぞれ coil にて塞栓した また CTBAG の観察により 左第 2~ 第 4 肋間動脈が略 血に関与していることが示唆された ( Fig.10 ) 同血管 の確認 造影を行ったところ 肺内血管との短絡が認め られたため 同血管にも coilにて塞栓を行った また左 鎖骨下動脈より分岐する最上肋間動脈の関与も疑われ たが 血管造影を行った結果 明らかな関与の証拠が 見られなかったため 造影のみの手技で終了している 3 4BAAO が予測された症例 ( 症例 2 ) Fig.2 は 右肺上葉扇平上皮癌と縦隔リンパ節転移の症 例である 近い将来に SVC の狭窄が予測されたため 局所縮小効果を狙って BAI が施行された 事前の CTBAG では ( Fig.2A, B ) 下行大動脈前墜から 分岐する左気管支動脈と 右内胸動脈と共通幹を形成し 縦隔右側を下行して右主気管支周囲に末梢が分布する右気管支動脈と思われる血管が描出されること 等の所見が得られた また 大動脈から単独分岐 あるいは肋間動脈と共通幹を成す右気管支動脈と思われる血管の描出はなかった BAGでは 左気管支動脈および 内胸動脈と共通幹を作る右気管支動脈の描出が確認できた ( Fig.2C, D ) 肋間動脈は右の第 2~ 第 6 までを造影したが 右気管支動脈の分岐は確認 されなかった この症例では 腫蕩が右上葉を主座とし 縦隔リンパ節の腫大も著明にあったため 腫蕩への血流の増大がこの血管の増生を来したものとも考えられるが 末梢が通常の右気管支動脈の潅流領域を栄養していることから もとから右気管支動脈として存在した BAAO であると考える 同血管からの腫癌への血流が確認されたため マイクロカテーテルにて選択後 CDDP MMC の動注を施行し 手技を終了した 考察略血に対する気管支動脈塞栓療法は 様々な報告から 高い止血効果が得られる点で非常に有用な治療法として確立している 6-10) また肺癌に対する気管支動脈内注入療法も NSCLCに対しては局所制御が可能であり 放射線治療の組み合わせにより生存期間の延長が

断層映像研究会雑誌第 29 巻 第 2 3 号 見込める治療法である 11 ) これらの治療を確実に行い かっ患者に無用な負担 をかけないためには 出血あるいは腫蕩に寄与する気管 支動脈を手早く同定することが不可欠である 気管支動 脈は走行や分岐の変異が多く事前の予測が難しい 1-5) より安全に気管支動脈造影を行うためにも 探索範囲を できるだけ少なくし 造影剤使用量を減少し X 線透視 時間を短縮して 患者の不利益を減少させることが不可 欠であり CTBAG による事前情報を得ることが重要と 考えられる 症例で示したように CTBAG を BAG 前に施行する ことによって 気管支動脈の分岐が推定でき その同定 に有用であることが確認できた 更に 撮影法 造影剤 投与法の工夫により これまで大動脈弓頂部から第 8 胸 椎程度まで としていたスキャン範囲を全肺に拡大する ことで 病変に関与する血管を広範囲にわたって明らか にすることも可能であることが確認できた これは BAAO あるいは aberrant BA の存在を CTBAG で 予測できる可能性が高くなることも示唆している 提示 した 2 症例では それぞれ実際に略血に肋間動脈の関与 が示唆されたこと あるいは BAAO であろう右気管支 動脈の予測が可能で あったことから CTBAG を BAG 前 に行うことは非常に有用でると考えられる 症例によりさらに細やかな撮影タイミングを設定し スライス厚を厚くしてスキャン時間を短縮することで 造影剤の総使用量をさらに抑えることができる可能性 もある また逆に造影剤使用量を増やせば 得られる脈 管の情報はさらに多くなるのかもしれない この点では 目的に応じた検査法の更なる検討が必要と考えられた しかし われわれの考える CTBAG の最大の意義は 略血において緊急の止血が必要な状況下での BAG 前 の CT 検査で 失敗なく BAG に必要最低限な情報が得 られ さらに肺野全体のスクリーニングが出来ることに あると考える その際に最低で も 3mm 厚で 全肺を撮影 できること 造影剤使用量を 60m lに抑えられることは 緊急検査として 血管造影前にCTBAGを行い ヲ き続き BAG を行うという臨床的な場面を考えた時 非常に有用 であると思われる 患者個々の状態や循環動態の違いにかかわらず CTBAG の検査がルーチンで行えることには大きな意味 があると考えられ CT 装置の進歩も予測されることから 今後の更なる発展が期待される まとめ 我々が経験した 17 例の CTBAG と BAG の検査が可能 だ った症例について CTBAG 検査の条件と事前検査 としての CTBAG の有用性を検討した 本法は BAG に よる Interventional Radiology の事前情報を得る検査 法として重要な意義を持つことが確認された piぜ au Trea 出 lent emboliz 油 on ames 羽 TS therap 巴 utic 157:637 司 644