認知症者の介護サービスのあり方に関する研究 HSR( 第 15 回 ) 研究進捗状況報告古城隆雄中島民恵子 2006 年 4 月 20 日 1
今日の内容 研究目的 研究手法 レビュー状況 ディスカッション 2
ディスカッション 研究方法への提案 レビューに対する提案 レビュー方法に対する意見 認知症者が抱える課題 & 対応する政策に関する意見 質疑応答 3
研究目的 認知症を患う本人とその家族 地域が抱える問題を明確にすること 一般の要介護高齢者と比較して認知症者が抱える問題の特異性を明確にすること 社会的に援助が必要な課題 特に現行の政策では対応仕切れていない課題について明確にすること 4
研究手法 先行研究のレビューを通じて 研究目的を明らかにする レビュー方法 MAGAGINEPLUSと医中誌で 論文検索 キーワード ; 認知症 痴呆症 若年認知症 若年痴呆症 期間 :2000 年以降 参考文献の中から関係論文を収集 対象外 : 座談会 シンポジウムの報告 体験談など 5
検索結果の概要 ヒット件数 : 約 750 件 取り寄せ候補件数 : 約 204 件 医学 看護学 薬学の研究で研究目的と合致しないもの 座談会 シンポジウムの報告 体験談 議事録など 研究論文としての体裁をとっていないもの 認知症に関する特集記事は取り寄せ候補とした チェック済み件数 : 約 150 件 引用対象候補件数 : 約 51 件 研究目的に有用な知見を提供するもの 根拠に乏しいもの 単一事例のみを扱ったもの 研究方法に不備があると考えられるもの その他特集記事など研究論文ではないもの 6
論文の構成 1. はじめに 2. 認知症とは何か 定義 診断方法 原因と種類 症状 治療と予防 3. 認知症者の現状 有病率 人数と居住地 4. 認知症がもたらす問題 本人から見た問題 家族から見た問題 地域から見た問題 介護サービス提供者から見た問題 5. 現在の政策実施状況 6. 現状の課題 7
本人から見た問題 Bryden, Christine Dancing with dementia( 痴呆とダンスを )(2004) Who will I be when I die? ( 私は誰になっていくの?) (2003) 沖田裕子 永田久美子 痴呆の人の体験に基づいたケア (2004) 松本一生 (2005) 初期認知症者本人に直接聞き取り調査 8
本人から見た問題 沖田 永田 (2004) 家族全体の生計問題 財産管理が必要 記憶の不安定さ 表現が困難になる 痴呆ケア 出典参照 松本 (2005) 相談相手がいない (87 例 ) 相談に乗ってもらえない (46 例 ) 144 人から回答 9
家族介護者が抱える問題 認知症の判断と受容 認知症の判断が難しい 認知症の判断が遅れる 認知症であることを受け入れられない 介護することを受け入れられない 介護方法 介護方法がわからない 社会的な支援サービスに関する知識がない 介護の負担感と介護の継続 介護負担が重い ストレスに対する対処方法がわからない 適切なサポートがない 在宅で続けられない 虐待 心理的虐待をする 身体的虐待をする 無視をする 経済的虐待をする 10
介護の負担感に関連する研究の概要 Ⅰ 介護の負担感 ストレス研究介護のQOL 介護評価 ( 肯定感 否定感 ) 虐待 Ⅱ 介護者の意識 介護者の状況 ( 属性 代替介護者 ) 要介護者の状況 ( 属性 ADL 自立度 問題行動 ) 家族の状況 介護サービス 11
虐待に関する状況 12
13
14
15
16
17
18
認知症とは何か ( 定義と診断方法 ) 定義 いったん発達した知的機能が後天的な脳の器質障害による持続的に低下し 日常生活や社会生活が営めなくなっている状態 認知症とは 記憶 思考 見当識 理解 計算 学習 言語および判断力など多くの高次皮質機能の障害であり 慢性的 進行性の経過をたどる脳疾患による症候群である (WHO) 診断方法 神経心理学的テストの実施 ( 長谷川式 MMSE など ) CT MRI 脳 SPECT などの画像診断 せん妄やうつ病との鑑別 治療可能な認知症との鑑別等のため 早期診断が大切 19
認知症とは何か ( 原因と種類 1) 脳血管の疾患 高血圧 脳動脈硬化 脳梗塞などの脳血管障害が原因でおこる認知症 退行性の疾患 年齢が大きな要因となっている疾患で 脳変性疾患が原因でおこる認知症 加齢に伴い脳の神経細胞の脱落が病的な速さで起こり 脳全体に萎縮が起こるためと考えられている疾患で アルツハイマー型認知症と呼ばれる 脳萎縮がみられる 脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症で全体の約 7 ~8 割を占める 20
認知症とは何か ( 原因と種類 2) 感染性の疾患 進行麻痺 ( 中枢神経梅毒 ) 各種髄膜炎 各種脳炎 各種ウイルス性感染症など 中毒性の疾患 各種の薬物中毒 一酸化炭素中毒 慢性アルコール中毒など 内分泌性 代謝性の疾患 甲状腺機能低下症 低血糖症 肝性脳症 慢性低酸素血症 ビタミン B12 欠乏症など 脳外傷性疾患 頭部外傷後遺症 慢性硬膜下血腫など その他の疾患 脳腫瘍 正常圧水頭症 ( 脳髄液の循環障害 ) 多発性硬化症 など 21
認知症とは何か ( 症状 ) 中核症状 精神機能障害 ( 記憶障害 見当識障害 失語 失行 失認 実行機能障害など ) 周辺症状 中核症状が背景となり 周囲の状況 ( 介護者の対応 環境の変化など ) に対する事実誤認 勘違い 判断違い 身体の状況 ( 感染 脱水など ) 心理状態などをもとに起こる精神症状や行動障害 BPSD 22
認知症とは何か ( 治療と予防 ) 薬物療法と非薬物療法 薬物療法 アルツハイマー型認知症の場合 塩酸ドメペジル ( アリセプト ) により 2 年ほど遅延可能 BPSD に対しては グラマリールやリスパダースなどの抗精神病薬 ( 副作用に注意 ) 非薬物療法 回想法 運動療法 予防 認知症の発病遅延効果を証明する強力な証拠を提示するところまで至っていない 食習慣 運動習慣 知的行動習慣などの生活習慣の関連 住民活動教室等の取り組みが比較的見られる 23
認知症者の現状 ( 有病率 ) 国の指導による全国規模での調査は実施されていない 自治体単位で様々な方法で実施されてきたため 有病率にばらつきあり おおよぞ 在宅で65 歳以上人口の4-5% 病院 施設の認知症者を追加すると 6-7% % 35 30 25 20 15 10 5 0 老年期認知症の性別 年齢別有病率 29.8 15.6 22.1 7 12.8 3.9 2 1.1 7.1 3.3 65-69 70-74 75-79 80-84 85 以上 男性 女性 24
認知症者の現状 ( 人数と居住地 ) 要介護 ( 要支援 ) 認定者における認知症高齢者の推計 要介護 ( 要支援 ) 認定者 居宅 特別養護老人ホーム 認定申請時の所在 老人保健施設 介護療養型医療施設 その他 総数 314 210 32 25 12 34 自立度 Ⅱ 以上 149 73 27 20 10 19 自立度 Ⅲ 以上 79 (25) 28 (15) 20 (4) 13 (4) 8 (1) 11 (2) 居宅にいる要介護 ( 要支援 ) 認定者のおよそ3 人に1 人は 何らかの介護 支援を必要とする認知症がある高齢者 介護保険 3 施設にいる要介護 ( 要支援 ) 認定者のおよそ8 割は 何らかの介護 支援を必要とする認知症がある高齢者 今後の増加 2010 年 242 万人 2020 年 325 万人 2030 年 384 万人 2040 年 399 万人 25
地域 認知症者 介護サービス提供者 介護者 同居家族 26
虐待に関する研究 虐待の内容 虐待者の状況 ( 属性 代替者 ) 被虐待者の状況 ( 属性 ADL 自立度 問題行動 ) 27