8- 次の 標 : 複素関数 ( 正則関数 ) の積分 8- 実関数 : 定積分 講義内容 名城 学理 学部材料機能 学科岩 素顕 複素関数の積分について学ぶ 複素関数の積分 複素積分の性質 周回積分の解法 コーシーの積分定理 コーシーの積分公式 グルサーの公式 - 定義 複素関数の積分 : 線積分 今後の内容 区分的に滑らかな曲線に沿って複素関数の積分を計算する 複素関数の積分の性質に関して議論する 特殊な場合 コーシーの積分定理 グルサーの公式 留数定理 実関数の積分とは 積分の定義 : 積を求める 法 ) ) =6 ) = =() =() =() a a a 関数 () に関して定積分 a lm k ( ) k 8- 実関数の積分と複素関数の積分の違い 実関数の積分 a 複素関数の積分 複素平 上を様々な経路で変化する 始点 t=a 平 8- 虚軸 は実軸上の変数 a 実軸 平 終点 t= t の取り の取り を定義する必要がある
線積分 : 複素数で表された曲線は曲線 と呼ぶ 8-5 例題 / 演習 : 以下の複素平 上の曲線を t の関数で表せ. 8-6 例 : 下図のような t = a を始点 t = を終点とした t をパラメーターとした曲線 これを複素数で表すと (t)=(t)+(t) 始点 t=a 平 t 終点 t= (a t ) 実部 (t) も 虚部 (t) も t の関数にする を t の関数とおく () () c a a =t (a t ) = なので (t)=t (a t ) なる =t (a t ) =c と なので (t)=t+c (a t ) となる 演習 () 6 以下の複素平 上の曲線を t の関数で表せ =t ( t ) =t 8-7 曲線の名称 a t で定義された関数 (t)=(t)+(t) において (t) (t) が連続であるとき その像 { =(t),a t } を 平 上の曲線という (a) () の時を開曲線 (a)=() の時を閉曲線という また t t の時を単 曲線と呼ぶ 8-8 なので (t)=t+t ( t ) となる () () -r r r =r cos t ( t ) =r s t より (t) = r cos t + r s t ( t ) となる (a) 開曲線 (a)=() 閉曲線 (a) () 単 開曲線 単 閉曲線
複素積分 8-9 複素積分の例題 / 演習 8- 定義 : 複素関数の積分は 複素平 上の線積分 複素積分を定義にしたがって解きましょう 複素平 上の 点を結ぶ曲線 を (t)=(t)+(t)(a t ) と表すことができる この時 複素関数 () の曲線 にそった積分を a t で定義する a t ポイント : * を t で表した関数を求める */ を求める *((t)) を求める ポイント : =(t) は t の関数であるから のままでは積分できないのでこのように変形して積分を う ここで は複素積分の積分路と呼ばれ 積分の端点と曲線を同時に指定する 複素積分の値は積分路の取り によって変わることがある 例題 8- 例題 8- 曲線 を積分路として ()= の積分 積分路 : を求めよ 与えられた積分路 は以下のようにおける :=t ( t ) =(t-)+ ( t ) よって () / はそれぞれ t t t ( t ) ( t ) 以上より求める積分は t t t t t t t t t t t 8 t t t
演習 下記の曲線 を積分路として ()= の積分を求めよ 8- 演習 以下の つの線分 にしたがって から + まで積分を解きなさい 8- =t ( t ), =+(t-) ( t ) ( t ) ( t ) t ( t ) t ( t ) Im = 積分路 : 積分路 : 積分路 : t t t t t t t t t t t t t t t t 8 t t 積分路 : =t+t ( t ), :=t+t ( t ) となる に沿った積分 =t+t Im t t t に沿った積分 =t+t ( t ) t Im t t t t t 複素積分の性質 8-5 複素積分の性質 8-6 複素積分の計算 法を った 次に a t についての基本的な性質を つ挙げる () α,β を任意の複素定数とするとき g g () 曲線を逆の 向に積分すれば積分値はマイナスになる - () 曲線を つに分けて積分しても積分値は変わらない () 複素積分の絶対値については 不等式 t が成り つ ただし は =(t) (t t t ) また曲線 上で定義された連続関数 () が 上で () M を満たすとした場合 の さを L とすれば t ML t t -
周回積分 : 積分路を単 閉曲線で取る : 得られる解は積分路に依存する ( 始点 終点が同じでも経路が変わると値が変わることがある ) 以下のような積分路 を考える?? 積分路を と取った周回積分を表す 普通に考えたら となるはず 8-7 例題 a (: 整数 ) を中 がa 半径 rの円周 に沿って積分せよ まず積分路は 下図に すとおりであるが 積分路としては反時計回りの と時計回りの があるの でそれぞれ場合わけして考える () A 点を始点 (t=) にして反時計回りに 周した (t=π) で終点となる積分路を考えると =a+r(cos t + s t) =a+re t ( t π) r A a t re より t t t a a re a re r e =-の場合 a r e t -の場合 a r e t r t e 8-8 演習 : 前例題において A 点を始点 (t=) にして時計回りに 周した (t=π) で終点となる積分路を考えるとどうなるか? 8-9 例題から得られた結果 8- =a+r(cos t - s t) =a+re -t ( t π) re t t t a re re r e t 例題のように 閉曲線 にそって 周する積分を特に周回積分とよび で表す 周回積分の値は 点の選び によらないが 閉曲線のまわる向きが逆になると その符号が変わる R =- の場合 a r e t - の場合 a r e t r t e 周回積分の積分路は反時計回りを正の向きと約束するのが 般的な習慣である 閉曲線 に囲まれた領域 をつの領域 と を囲む閉曲線をそれぞれ R, とすれば S が成り つ ではどういう場合が周回積分が にならないかを考える S S R
これから学ぶ周回積分の解き 8- 積分路の標記 法 8- 積分路内は全て正則 複数個の極が存在する コーシーの積分定理コーシーの積分公式グルサーの公式留数定理 極極 α 絶対値を 平 で書くとどうなるか? ={ + =} の意味は? これを複素平 で書くとどうなるか? - - - これらの公式を使って積分を解く コーシーの積分定理 8- 証明 8- コーシーの積分定理関数 () が 単 閉曲線 で囲まれる領域 で正則で 上で連続であるとき 公式 が成り つ ()=u(,)+v(,) としたとき u,v が偏導関数を持つ場合においてコーシーの積分定理が成り つことを証明する u v u v u v グリーンの公式 閉曲線 にそった ()= u(,)+v(,) の周回積分は が囲む領域 上の 重積分に書き直すことができる u v v u グリーンの公式より の内部を A とすると u v u v u v A A u v となる () は および A で正則だから コーシー リーマンの微分 程式が成り つので u v u v であるから が成り つ
例題右下図のような原点中 の半径 の円を積分路とするとき 下記の積分の値はどうなるかを求めよ () 関数 は全ての領域において正則なので 積分値はとなる - () 56 関数 56 は全ての領域において正則なので積分値は となる - - 8-5 演習 () () 8-6 右下図のような原点中 の半径 の円を積分路とするとき 下記の積分の値はどうなるかを求めよ s 関数 /(-) は = において正則ではない しかし 積分路領域において正則なので積分値は となる 関数 s は全ての領域において正則なので積分値は となる - - - 周回積分の性質 次に 箇所正則でない部分を含んだ領域 について考える この時 正則でない 箇所を囲んだ を持ち出したならば 領域 の積分値が領域 の積分値の総和になる すなわち 8-7 証明 = の時は と を曲線 Γ Γ ʼ を曲線で結び 内の つの単 閉曲線 L L ʼ を考えると コーシーの積分定理より L L 以上より L L Γ Γ ʼ の部分は反対の 向に 回積分されて打ち消されるから結局 般の場合も = の時と同様に考えれば となる L L 8-8
例題 8-9 例題 ; 解法 8- 右図のような積分路にしたがって以下の周回積分を解きなさい は =± を除く全領域で正則である よって 右図に すような積分路を考えれば以下のように式変形が可能である - - また となるので よって 同様に よって 以上より は : =re t -(r: 円の半径 ) とすると t t re t re re t は : =re t +(r: 円の半径 ) とすると re t re t t re t 正則関数の積分に関して 8- 周回積分の変形 8- コーシーの積分定理を使う事によって 複素積分の積分路は その関数が正則な領域内で任意の形に変形できる事が される 積分路の変形について 点, を結ぶ曲線 にそった () の積分 () が つの閉曲線,ʼ で囲まれた領域 内で正則であれば にそった () の周回積分 と を考える 曲線 で囲まれる領域 内で () が正則ならば コーシーの積分定理により となるので が成り つ 関数が正則な領域内での積分 : * 始点 終点が決まれば積分の値は同じ * 積分路を任意に変形しても良い は と ʼ に挟まれた領域内の任意の閉曲線 にそった周回積分に等しい すなわち次の式が成り つ 複素積分を求めるためには 必ずしも与えられた積分路にそって積分する必要はなく 被積分関数が正則な領域内で積分が最も簡単に実 できるように積分路を適当に変形して 積分を実 すれば良いことが分かる
不定積分 8- コーシーの積分公式 8- 領域 で定義され そこで正則な関数 () を考えてみる 内の 点 と を に含まれる曲線 で結ぶと に沿う積分 ( ) F の値は もし積分の始点 を固定したとすれば 上式は だけの関数となる そこで これを ( ) と だけで決まる 曲線 の形にはよらない と書いたとき 関数 F() のことを () の不定積分または原始関数という このとき F() は で正則であり F が成り つ コーシーの積分定理とは ある領域内で関数が正則ならば 関数の積分値は であるが ある領域内で関数が正則 という条件があれば 次のような積分公式が得られる () は領域 で正則である 内に単 閉曲線 があり の内部は領域 に含まれているとする 任意の点 α が の内部にあれば次の等式が成り つ ( ) ( ) ただし 積分は が囲む領域に対して 正の向きに うものとする α 証明 αを中 とし 半径 rの正 向の閉曲線 をの内部に書くとは, の周およびそれで囲まれた領 域で正則だからコーシーの積分定理より なので α この時 () は =α で連続だから 任意の正数 e> に対して r を 分 さくとれば に対し ()-(α) <e とできる e r e r e r したがって r のとき 以上より ( ) が成り つ 8-5 コーシーの積分公式の使い コーシーの積分公式の使い としては つのステップを考えると使いやすい A) 領域 の中から正則にならない原因の点 ( 分 = となる点 ) を探す その点が α となる B) A) の項を除外して, 正則な関数 () を引っ張り出す ) 公式の α A) の点 公式の () B) の () として公式に代 ( ) ( ) 8-6
={ =} 積分路は右図の通り は積分路内に存在するので ()= とし α = として コーシーの積分公式を いると 例題次の積分の値を求めよ ただし 積分路は正 向とする - - 8-7 演習次の積分の値を求めよ ただし 積分路は正 向とする 7 ={ =} - - - - 7 とすると この関数は およびその内部で正則である α= としてコーシーの積分公式より 8 7 7 8-8 グルサーの公式 コーシーの積分公式の発展形 求める積分の形 8-9 α α は積分路内に存在するグルサーの公式の導出閉曲線 に囲まれた領域 で正則で かつ 上で連続な関数の 内の任意の点 における値 () は コーシーの積分公式から ) ( で与えられる 同様にして領域 内の点 +Δ で (+Δ) は ) ( となるから ) ( となる Δ の極限をとると ) ( lm で与えられる 同様に ʼʼ() ʼʼʼ() も 上の周回積分で表されることが される このことから以下のような公式が導かれる 8-
グルサーの公式 8- 例題 次の積分の値を求めよ ただし 積分路の 向は正とする 8- 領域 で () が正則ならば 内で () は何回でも微分可能で その 階導関数 () () は!! ={ =} 点 =- は円 の内部にある () = + とすると これは正則な関数である また ʼ() = ʼʼ() = 6 ʼʼʼ() = 6 - - で与えられる ただし は 内の閉曲線で 点 を正の向きに 周するものとする よりグルサーの公式を適 すると! ( ) ( ) 6! 演習 次の積分の値を求めよ ただし 積分路の 向は正とする 点 =は円 の内部にある とすると () は の内部では正則な関数なので ) ={ =} 5 5 5 () ( - - 8- 今 のまとめ 複素関数の積分 線積分で解く ( 積分の経路が重要 ) 周回積分の解き ( コーシーの積分定理 コーシーの積分公式 グルサーの公式 ) 次回はさらに発展形を勉強します 8-