The Moving Pictures! 音楽に合わせて動く絵を描こう ~ プログラミング + 造形活動 = ~ 東三鷹学園三鷹市立第一小学校主任教諭﨑村紅葉 1 社会的背景と本校の課題 目標 2020 年から小学生でプログラミング教育が必修化されることになった プログラミング教育が必修化される背景のひとつとして 第 4 次産業革命やグローバル化に対応する人材を育てることがある 小学校段階においてプログラミング教育を行うことで 論理的思考や創造性 問題解決能力等の育成していく必要がある 本校の教育目標は ゆたかな心をもつ子どもすすんで学ぶ子ども健康でたくましい子ども を育成することである 図画工作の授業では 自分の思いをもって主体的に活動することで 感性を豊かにしたいと考えながら 指導を行っている 図画工作が好きで意欲的に取り組んでいる子どもが多いが 高学年になるにつれて 絵を描くよりも工作の方が好きだ 自分の作品に自信がない と考える子どもが増えてくる また 本校は地域との繋がりが大変強く 地域の方に支えられている しかし 地域の方に文化を教えてもらったり 農業体験をさせてもらったりすることはあるが 子どもたちが地域の方に何かを発信していく機会は殆どない これらの社会的背景と本校の課題から 子どもたちに ICT を活用して動く絵をプログラミングするという新しい描き方を経験させることで 苦手意識をもっている子どもでも絵を描く楽しさを感じさせたい そして 地域の方と協働で何かをつくりあげて発信する経験をすることで 社会と繋がる喜びを経験させ グローバル化が進む社会でも活躍できる人材を育てたいと考えた 2 実践の工夫音楽は同じ曲の中でも早さや音程が変化する 今回は三鷹市在住のピアニストの中川賢一さんの生演奏を聴いて感じたイメージをリアルタイムに表現するために プログラミングソフト viscuit を使用し 動く絵をを描くことに挑戦させた viscuit を使用して絵を描く活動をすることで 思い通りに絵を描いたり 消したりして つくりかえ
たりすることができる 絵を描くことが苦手で失敗を恐れてしまう子どもも 新しいアイデアが次々と浮かんで様々な表現方法を試したくなる子どもも 納得がいくまで何度もやり直すことができる また はっきりとしたアクリル絵の具のような色合いを表現できたり 透明度を高くして水彩絵の具のように描けたりと 様々な色合いを手軽に表現できる そして 何よりの魅力は 曲調の変化に合わせて絵の形や色 動き変えることができたり 友達の作品を PC 画面上でいつでも鑑賞できたりすることにある これらのことから viscuit を活用して動く絵をプログラミングすることで 子どもたちが自分のイメージを思い通りに表現したり 友達の作品のよさを見つけて共有したりすることで新しい価値を見つけることができると考えた 本学年の子どもたちは 第 5 学年の際にもピアニストの中川賢一さんの演奏を聴いている ( 参照 URL https://m.youtube.com/watch?v=tmwbnqz3hic ニューイヤー ファミリーコンサート 2018 展覧会の絵 神谷未穂 & 中川賢一インタビュー関連プログラム紹介 ( 三鷹市芸術文化センター )) ( 音楽を鑑賞して絵を描いている様子 ) ( コンサート会場に展示されている様子 ) その際には 中川賢一さんにその場で子どもが描いた絵を即興で曲にして演奏してもらったり 中川賢一さんの演奏を聴きながらイメージを膨らませて そのイメージを絵に表す ( 静止画 ) 活動をした 完成した作品は データ化して 三鷹市芸術文化センターで行われた ニューイヤーファミリーコンサート 2018 でアーティストの演奏に合わせて スクリーンに投影された また 描いた作品は全てコンサート会場に展示させてもらい コンサート来場者に鑑賞してもらった 音楽を鑑賞して絵に表す経験を踏まえた上で 今年度は動く絵を描くという発展的な活動を行った プログラミングソフトを扱ったことのない学年だったので 事前に viscuit で自由に動く絵を描く授業を行った 自由に描く活動を行ったことにより 水彩絵の具のような表現や 何かと何かがぶつかったら新しい絵が現れる表現など 多様な表現方法を自分たちで考えてプログラミングできるようになった 今年度 子どもたちは 5 年生での音楽を絵に表す経験と前時で様々なプログラミングの方法を学んだことを生かしながら 音楽に合わせて思い通りに動く絵を描くことができた
花瓶に入っている花が散って いく 背景には様々な生き物 や乗り物が動いている作品 音を抽象的な形で表現してい る 透明度を高くして水彩絵 の具の表現をしている作品 怖いイメージを墓地を描いて 表現している おばけに雨が 当たるとおばけが消える作品 3 実践の成果子どもたちは動く絵をプログラミングしながら描くことで 論理的に何かを表現する経験ができた また 図画工作の授業で viscuit を取り扱うことで 具体的な風景を動かしたり 物語のある動きをつくったり 抽象的な絵を描いたりする技術を身につけることができた 活動中は常に音楽を耳にしながらリアルタイムに絵を描くことで 感性を豊かにすることができた 授業の振り返り 振り返りでは下記のようなことが書かれていた 色を少しずつ変えたり 水彩絵の具のようにして重ねたりしました 思ったようにできないところも 最後にはできてよかったです 曲に合わせてビスケットで動かせたのでよかったです 演奏にのって想像力をアップさせられたのでよかったです 曲のイメージが 重い残酷な気持ちを何かでもみ消す というものだったので 消えるように青の渦巻きを装飾させるようにした 自分なりの絵を描いたり 曲に合わせて回したりして工夫しました 大きな円と周りに小さな円をつけて 曲のはずむ感じをイメージしながら ゆっくりのものと早いものと分けました 曲の速さや様子に合わせて色を変えたりして楽しかった 工夫したところは 色の重なりと色合いを意識してつくったところです 真ん中にある模様は花びらの色を薄く設定して 重なっていくことにより色が濃くなるようにしました
A さんのいろいろ混ぜ込んだ感じがいいと思った B さんの尺取虫の発想が面白かった 上記のような子どもたちの振り返りから プログラミングができたことへの達成感や充実感を味わっていることが見てとれる また 自分のイメージを明確にもって活動したり 友達の作品のよさを捉えたりしていることがわかる 3 今後について授業で子どもたちがつくった作品は 三鷹市在住のアーティストの手により 曲のスピードに合わせて作品が次々に変わるような動画になるよう編集してもらっている そして その動画は今年度の 12 月 22 日 ( 土 ) に三鷹市芸術文化センターで行われるクリスマスコンサートで 演奏に合わせてプロジェクターで壁面に投影される また 2 月 14 日 ( 木 ) 17 日 ( 日 ) に本校で行われる展覧会では 発泡スチロールでつくった共同作品に今回の動画を投影し プロジェクションマッピングにして保護者 地域の方に鑑賞してもらう このように 自分たちが聴いて描いた動く絵を 友達だけでなく コンサートや展覧会に来場する方々にも鑑賞してもらう機会を設ける 友達や教員だけでなく 保護者 地域の方など多くの人々 ( コンサート会場でのリハーサル ) に作品を鑑賞してもらうことにより 人との絆を深めることができると考える
クリスマスコンサートのパンフレットは三鷹市在住のアーティストにデザインしてもらった 子ども たちが描いた絵が三角形にトリミングされてクリスマスツリーの形が構成されているデザインとなっ た ( コンサートのパンフレット表面 ) ( コンサートのパンフレット裏面 )