京都大学大学院経済学研究科 企業戦略論 A シラバス 2012/10/09 改訂 2012 年度後期火曜日 10:30-12:00 103 演習室 武石彰大学院経済学研究科教授 研究室 : 法経済学部東館 607 電話 :075-753-3426 ファックス :075-753-3492 電子メール :takeishi@econ.kyoto-u.ac.jp 1. 講義内容 本講義では イノベーションをめぐる企業と戦略の問題をとりあげる イノベーションとは何か イノベーションに企業はどのように関わり また企業はイノベーションからどのような影響を受けるのか イノベーションで成功し その果実を享受するために企業はどのように取り組んでいけばよいのか これらの問題を扱っている基礎的な学術文献を読み 議論していく 本講義の目標は とりあげる基礎的な文献で示されている概念 視点 理論 方法を理解し またそうした様々な概念 視点 理論 方法がお互いにどのような関係にあるのかを考えながら イノベーションをめぐる企業と戦略に関する理論的 実証的研究に取り組む上での基礎知識を身につけることである 2. 文献 テキスト 本講義でとりあげる文献は添付の通り なお 講義の中で直接とりあげることはないが 一橋大学イノベーション研究センター編 イノベーション マネジメント入門 ( 日本経済新聞社 ) がいささかの道案内として参考になるかもしれない 3. 講義の方法 毎回の講義では とりあげる文献の要約 評価について事前に割り当てられた学生が報告し ディスカッションの材料を提供する 報告に際しては報告メモ ( レジメ ) を用意し クラスで配付する 他の学生は事前に文献を読んだ上で講義に出席し ディスカッションに参加する 報告を担当する文献は 履修者の希望を可能な限り優先しながら 履修人数に基づき 均等に割り振る また 8 本以上の文献 ( 報告を割り当てられた文献を除く ) について 事前に簡単なコメントを電子メールで提出し ディスカッションで議論したい問題を提起する -1-
4. 文献報告 報告担当者は 以下の内容を含む 簡潔な報告メモ ( レジメ ) を用意し クラスで配布し ( 履修者数 + 教員分のコピーを用意する ) 報告する :(1) 文献の目的 ( できるだけ 文献の問いは何かを示す ) (2) 要旨 ( ごくごく簡潔にその文献の主張 ( 主題ではない ) の要点を示す ) (3) 内容の要約 (4) 貢献 重要な指摘 (5) 問題点 疑問 議論したい点 ( 6) 他の学生から提出されたコメント ( 下記 ) レジメの分量は 最大 A4 二枚とする ( サイズ 枚数厳守のこと ただし 付属資料をつけることは可 ) 報告に費やす時間は 講義時間の最大三分の一に収めることとする ( 三分の二はディスカッションに費やす ) 5. コメントメモ 最大 400 字程度 ( 目安 ) で当該文献についてクラスで議論したい問題を提起する メモに論文の要約は含めないこと 提出は電子メールで教員と履修者全員に送付 合計 8 本以上 ( 報告担当文献を除く ) の文献についてコメントを提出する 文献の選択は自由 ( 報告担当文献を除く ) 提出期限は当該文献をとりあげるクラス前日 16:00( 時間厳守 ) とする コメントは メールの本文として送る ( 添付ファイルでの送付は極力避ける ) 文献報告者は 他の学生から事前に提出されたコメントをレジメに転載し コメントに対する自分の回答 / 考えを用意しておく 6. 文献の入手 可能なものは各自オンラインでダウンロードし それ以外のものについての入手方法については初回の講義の際に説明する 7. 成績評価 報告内容 (50%) ディスカッションへの貢献 ( 出席 発言内容 )(30%) コメントメモ内容 (20%) 原則として 毎回出席すること やむをえない理由で欠席する者は 電子メール等で事前に教員に連絡すること 単位を履修しない者も 履修する者と同等の課題を満たさなくてはならない 8. オフィスアワー 原則として 講義終了後に面会することとする 面会を希望するものは電子メールで事前に連絡すること -2-
講義スケジュールと文献 クラス 1. 講義概要説明 10/02 講義概要説明 論文割り当て クラス 2. イノベーションの特質とパターン : 新結合 創造的破壊 10/09 Schumpeter, J. A. (1934). The Theory of Economic Development. Cambridge, MA, Harvard University Press: Chapter 2.( 塩野谷祐一 中山伊知郎 東畑精一訳 経済発展の理論 : 企業者利潤 資本 信用 利子および景気の回転に関する一研究 岩波文庫 1977 年 ) Schumpeter, J. A. (1942). Capitalism, Socialism and Democracy. New York, NY, Harper & Row: Chapters 5, 6, 7, 8, 9. ( 中山伊知郎 東畑精一訳 資本主義 社会主義 民主主義 東洋経済新報社 1962 年 ) 10/16 休講 クラス 3. イノベーションの特質とパターン : パラダイム 10/23 Kuhn, T. (1970). The Structure of Scientific Revolutions. Chicago, IL, University of Chicago Press: Chapters 2, 3, 6, 7, 9, 10, 12, 13.( 中山茂訳 科学革命の構造 みすず書房 1971 年 ) Dosi, G. (1982). Technological Paradigms and Technological Trajectories: A Suggested Interpretation of the Determinants and Directions of Technical Change. Research Policy 11(3): 147-162. クラス 4. イノベーションの特質とパターン : 普及 リード ユーザー 10/30 Rodgers, E. (1983). Diffusion of Innovations. New York, NY, Free Press: Chapter 1. ( 青池愼一 宇野善康訳 イノベーション普及学 産能大学出版部 1990 年 ) von Hippel, E. (1986). Lead Users: A Source of Novel Product Concepts. Management Science 32(7): 791-805. クラス 5. イノベーションの特質とパターン : 技術進歩 S 字カーブ 11/06 Foster, R. N. (1986). Timing Technological Transitions. in Readings in the Management of Innovation. M. L. Tushman and W. L. Moore (eds.). New York, NY, Harper Business: 215-227. Henderson, R.(1991) Of Life Cycle Real and Imaginary: The Unexpectedly Long Old Age of Optical Lithography. Research Policy 24: 631-643. -3-
クラス 6. イノベーションの特質とパターン : 市場と技術 技術不均衡 11/13 Mowery, D. and N. Rosenberg (1977). The Influence of Market Demand upon Innovation: A Critical Review of Some Recent Empirical Studies. Research Policy 8: 103-153. Rosenberg, N. (1976). Perspectives on Technology. New York, Cambridge University Press: Chapter 6 The Direction of Technological Change: Inducement Mechanisms and Focusing Devices: 108-125. クラス 7. イノベーションの特質とパターン : 支配的デザイン 階層性 11/20 Abernathy, W. J. and J. M. Utterback (1978). Patterns of Industrial Innovation. Technology Review 80(7): 40-47. Clark, K. B. (1985). The Interaction of Design Hierarchies and Market Concepts in Technological Evolution. Research Policy 14(5): 235-251. クラス 8. イノベーションの特質とパターン : 経路依存性 技術優位性 11/27 David, A. P. (1985). Clio and the Economics of QWERTY. American Economic Review 75: 332-337. Liebowits, S. and S. Margolis(1990) The Fable of the Keys. Journal of Law and Economics 33 (1): 1-26. クラス 9. イノベーションの特質とパターン : 社会的構成 12/04 Tushman, M. L. and L. Rosenkopf (1992). Organizational Determinants of Technological Change: Toward a Sociology of Technological Evolution. in Research in Organizational Behavior. L. L. Cummings and B. M. Staw (eds.). Greenwich, Conn., JAI Press 14: 311-347. Pinch, T. J. and W. E. Bijker (1987). The Social Construction of Facts and Artifacts: Or How the Sociology of Science and the Sociology of Technology Might Benefit Each Other. in The Social Construction of Technological Systems. W. E. Bijker, T. P. Hughes and T. J. Pinch (eds.). MIT Press: 17-50. クラス 10. イノベーションと企業 戦略 : 断続的 連続的革新 12/11 Abernathy, W. J. and K. B. Clark (1985). Innovation: Mapping the Winds of Creative Destruction. Research Policy 14: 3-22. Tushman, M. L. and P. Anderson (1986). Technological Discontinuities and Organizational Environments. Administrative Science Quarterly 31: 439-465. クラス 11. イノベーションと企業 戦略 : アーキテクチャ 12/18 Henderson, R. M. and K. B. Clark (1990). Architectural Innovation: The Reconfiguration of Existing Product Technologies and the Failure of Established Firms. Administrative Science Quarterly 35(1): 9-30. Baldwin, C. and K. Clark (1997) Managing in an Age of Modularity. Harvard Business Review Sept./Oct.: 84-93. -4-
クラス 12. イノベーションと企業 戦略 : 破壊的技術 専有可能性 12/25 Christensen, C. M. and J. L. Bower (1996). Customer Power, Strategic Investment, and the Failure of Leading Firms. Strategic Management Journal 17(3): 197-218. Teece, D. J. (1986). Profiting from Technological Innovation: Implications for Integration, Collaboration, Licensing and Public Policy. Research Policy 15(6): 285-306. クラス 13. イノベーションと企業 戦略 : 先行者の優位 01/08 ( 07/24 の講義時間はクラス 13 と 14 を合わせて行うため 通常より 30 分程延長する予定 ) Lieberman, M. B. and D. B. Montgomery (1988). First-Mover Advantages. Strategic Management Journal 9: 41-58. Cusumano, M., Y. Mylonadis and R. Rosenbloom (1992). Strategic Maneuvering and Mass-Market Dynamics: The Triumph of VHS over Beta. Business History Review 66 (spring): 51-94. クラス 14. 若干のまとめ 01/08 ( 07/24 の講義時間はクラス 13 と 14 を合わせて行うため 通常より 30 分程延長する予定 ) 01/15 授業なし ( 月曜授業日 ) 01/22 休講 -5-