船舶事故調査報告書 平成 30 年 12 月 19 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員佐藤雄二 ( 部会長 ) 委員田村兼吉委員岡本満喜子 事故種類発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過 衝突 平成 29 年 12 月 23 日 19 時 15 分ごろ 京浜港東京第 2 区 晴海信号

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その他の事項 という ) を乗せ ウェイクボーダーをけん.. 引して遊走する目的で 平成 30 年 8 月 13 日 14 時 00 分ごろ土庄町室埼北東方にある砂浜 ( 以下 本件砂浜 という ) を出発した 船長は 自らが操船し 操縦者 同乗者 E の順にウェイクボードに 搭乗させ 本件砂浜北東

おお航海士 Aは 22 時 00 分ごろ福岡県宗像市大島東方沖で船長から 船橋当直を引き継ぎ レーダー 1 台を 6 海里 (M) レンジとして 電 子海図表示装置及び GPS プロッターを 12M レンジとしてそれぞれ 作動させ 操舵スタンド後方に立って単独で操船に当たった 本船は 航海士 A が

本船は 船長が1 人で船橋当直につき 主機を回転数毎分約 1,2 00( 出力約 20%) とし 約 5ノットの対地速力で 早岐港南東方沖を手動操舵により南南東進中 11 時 07 分ごろ主機が突然停止した 機関長は 温度計測の目的で機関室出入口の垂直はしごを降りていたところ ふだんと違う同室の音を

船尾部の便所 スパンカーマスト及び操舵室上部が脱落した 大浦丸は 左舷船首部 のハンドレールに曲損を 前部マストに折損を 船底部に破口及び擦過痕をそれぞれ 生じた < 原因 > 本事故は 洲埼北西方沖において 大浦丸が北進中 第五育丸が漂泊して釣り中 両船長が見張りを適切に行っていなかったため 両船

操舵室 船室 本件倉庫の通気口 本件倉庫 船尾側 写真 1 本船本船は 船長ほか甲板員 1 人が乗り組み コンベンション協会が企画する地域興し企画の目的で 参加者 11 人及び知人 1 人を乗せ 船体中央部にある船室の各窓を閉めてエアコンを運転し 18 時 40 分ごろ檮原川津賀ダム上流の北岸の係留

免許登録日平成 26 年 7 月 3 日免許証交付日平成 26 年 7 月 3 日 ( 平成 31 年 7 月 2 日まで有効 ) 釣り客 A 男性 54 歳釣り客 B 男性 51 歳釣り客 C 男性 74 歳死傷者等重傷 3 人 ( 釣り客 A 釣り客 B 及び釣り客 C) 損傷 なし 気象 海象

船舶事故調査報告書 平成 25 年 8 月 22 日 運輸安全委員会 ( 海事部会 ) 議決 委員長 後藤昇弘 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 石川敏行 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所船舶事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名船籍港総トン数 IMO 番号船舶

Japan Transport Safety Board 1 コンテナ船 ACX CRYSTAL ミサイル駆逐艦 USS FITZGERALD 衝突事故 運輸安全委員会令和元年 8 月

船舶事故調査報告書 平成 26 年 9 月 4 日 運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決 委 員 横山鐵男 ( 部会長 ) 委 員 庄司邦昭 委 員 根本美奈 事故種類発生日時発生場所事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進水等乗組員等に関

MA 船舶事故調査報告書 平成 24 年 4 月 27 日 運輸安全委員会 Japan Transport Safety Board

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MI 船舶インシデント調査報告書 ( 地方事務所事案 ) 横浜事務所 1 引船第二十一管洋運航不能 ( 絡索 ) 2 漁船末廣丸運航不能 ( 機関損傷 ) 3 貨物船鹿児島エキスプレス運航不能 ( 機関損傷 ) 神戸事務所 4 貨物船東翔丸運航不能 ( 船体傾斜 ) 5 ヨット朝鳥運航

台風による外国船の 走錨衝突事故防止に向けて 平成 24 年 9 月 6 日 運輸安全委員会事務局横浜事務所

( 東京事案 ) 1 旅客船龍宮城乗組員死亡 2 プレジャーボートかいきょう丸プレジャーボートこくら丸衝突 3 遊漁船しぶさき10 号沈没 4 遊漁船はなぶさ釣り客負傷 5 モーターボートKaiser 衝突 ( 係船杭 ) 6 漁船若栄丸小型兼用船福寿丸衝突 7 遊漁船一福丸モーターボート可奈丸衝突

( 東京事案 ) 1 貨物船 MAY STAR 漁船明神丸衝突及び貨物船 MAY STAR 乗揚 2 旅客船 DANS PENTA 1 乗揚 3 釣船うしお丸転覆 4 貨物船第七住力丸漁船大業丸衝突 5 油送船第八豊栄丸乗組員死亡 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 6 漁船西山丸転覆 7 遊漁船第

目 次 はじめに 1 1 立入検査の状況 2 2 命令に係る事項 3 3 その他輸送の安全に重大な関係を有する事項 (1) 船舶事故等の発生状況 6 (2) 船種別事故等の発生状況 7 (3) 主な指導内容 9

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その他の事項 約 200 であり 船首の作業灯がついていて 船長が投錨する旨を指 示したので 機関室に移動して発電機を起動し いつでも主機を中立 運転にできるように準備した後 自室に戻った 航海士 A は 20 時 00 分ごろ本船が減速していることに気付いて 昇橋したところ 船長から船位が分からな

船舶事故調査報告書 船種船名 LNG 船 PUTERI NILAM SATU IMO 番号 総トン数 94,446トン 船種船名 LPG 船 SAKURA HARMONY IMO 番号 総トン数 2,997トン 事故種類衝突発生日時平成 25 年 1 月 10 日 1

同船は沈没した NIKKEI TIGER に死傷者はなく また 船体に大きな損傷はなかった < 原因 > 本事故は 夜間 金華山東方沖 930km 付近において NIKKEI TIGER が北東進中 堀栄丸が南南西進中 両船の進路が交差する態勢で接近する状況となった際 NIKKEI TIGER が左

船舶事故調査報告書 船種船名コンテナ船 WAN HAI 162 I M O 番号 総トン数 13,246 トン 船種船名漁船第七盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 船種船名漁船第八盛南丸 漁船登録番号 OS 総トン数 9.7 トン 事故種類衝突

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船舶プロダクト検討について 背景 船舶の情報はユーザーの注目が高く その情報は主に AIS( 後述 ) や衛星画像 ログ情報等から得られる そして海象 気象情報との連携や統計情報等の大量データから得られる情報等から新しい価値の創出も期待できる このことからコアサービスから提供するプロダクト検討の一環

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別紙第 1 職員の給与 ( 海事職給料表の導入等 ) に関する報告 本委員会は 船舶に乗り組む職員 ( 以下 船舶乗組員 という ) の給与について 昨年 10 月 9 日の職員の給与に関する報告でも言及したとおり 勤務の特殊性から見直す必要があると考え 検討を重ねてきた その結果は 次のとおりであ

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PDF変換用(報告書)帯広市新エネルギービジョ

平成24年

本報告書の調査は 本件航空重大インシデントに関し 運輸安全委員会設置 法及び国際民間航空条約第 13 附属書に従い 運輸安全委員会により 航空事 故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり 本事案の責任を 問うために行われたものではない 運輸安全委員会 委員長後藤昇弘

( 東京事案 ) 1 コンテナ船 SONG CHENG 乗揚 2 漁船第八浦郷丸火災 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船日正丸転覆仙台事務所 4 モーターボート三王丸転覆 5 モーターボートムスタング乗組員行方不明横浜事務所 6 モーターボート Ever Free Ⅱ 同乗者負傷 7 漁船

( 東京事案 ) 1 モーターボート建友爆発 2 貨物船 AQUAMARINE 漁船平新丸衝突 ( 地方事務所事案 ) 函館事務所 3 漁船第五十一萬漁丸火災 4 漁船第 18 勝丸火災 5 プレジャーボート第十八栄海丸乗揚 6 漁船第六十八廣洋丸衝突 ( 消波ブロック ) 7 漁船第五十五富丸衝突

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海の安全情報 1 海の安全情報 インターネットホームページ 仙崎海上保安部のホームページの中に 海の安全情報がリンクされ 気象 海象のほか 港の工事 海難などの海上交通に関 する様々な安全情報を提供しています

目 次 Q 1 マリンレジャーはどのようなものがあるの? Q 2 水上オートバイって安全なの? Q 3 最近よく耳にするミニボートってどんなもの? Q 4 プレジャーボートを操縦するのに免許は必要? Q 5 小型船舶の免許はどのようにして取得するの? Q 6 小型船舶に乗るときは救命胴衣を着用しない

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裁決録

平成12年4月 日

既存の船舶に関する情報 1

(1) 船舶の堪航能力が不十分であるとき (2) 天候 本船の状態 積荷の種類又は水路等の状況に照らし 運航に危険 のおそれがあるとき (3) 水先船の航行に危険のおそれがあるとき (4) 水先人の乗下船に対する安全施設が不備であるとき (5) 水先人の業務執行に際し 身体及び生命に危険のおそれがあ

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海上自衛官の海技従事者国家試験の受験資格について(通知)

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2007/08年第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)

平成20年函審第24号

5 ii) 実燃費方式 (499GT 貨物船 749GT 貨物船 5000kl 積みタンカー以外の船舶 ) (a) 新造船 6 申請船の CO2 排出量 (EEDI 値から求めた CO2 排出量 ) と比較船 (1990~2010 年に建造され かつ 航路及び船の大きさが申請船と同等のものに限る )

P&I 保険 とは 船舶の運航に不可欠 船舶の運航に伴って生じる船主の法律上 契約上の責任を対象とする 賠償責任保険 です 例えば 船舶の運航中に港湾 漁業施設などの船舶以外の財物に与えた損害 および 費用をてん補します 非営利での運営 船舶の運航に欠かせない P&I 保険は 非営利で運営される組合

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1. 船舶事故の概要報告書 1 ページ 旅客フェリーさんふらわあだいせつは 船長ほか22 人が乗り組み 旅客 71 人を乗せ 車両等 160 台を積載し 北海道苫小牧市苫小牧港に向けて茨城県大洗港を出港し 苫小牧港南方沖を北進中 平成 27 年 7 月 31 日 17 時 10 分ごろ第 2 甲板で

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次の内容により各組合の保険約款に規定 普通損害保険 1 通常部分危険区分 ( 漁業種類 トン数区分 船質及び塡補範囲等 ) 毎に再保険料率 ( 告示 ) を下回らない範囲で基準率が定められ これに再保険と同率の各種割増引きが適用 2 異常部分 ( 危険部分であり 台風 風浪 低気圧及び突風による危険

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本書作成の目的について湘南海上保安署では 毎年発生しているプレジャーボートやヨット等による定置網等への乗揚げ絡網海難を防止するために 当保安署管内である相模湾にどの様な定置網等が設置されているかを 画像を利用して分かりやすく理解してもらうことを目的としている 本書使用上の留意点について 1 本書は

る重大事故となるところでした 本件のような船舶海難の操船者等には 衝突 乗揚げ等海難を避けるべき業務上の注意義務があるのに この注意義務を怠り 何らかの過失 ( 行為 ) によって事故に至ったものとして 業務上過失往来危険罪 が成立し 厳しい処分が下されることがあります また当該事故の結果によって

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さらに真値よりも遠い方に認識される特性があること などが報告されている (4) しかし 一般的に距離感とは 経験に基づく記憶や 学習に基づいて認知されて得られる認知距離と 単に大きさや物体の形状から得られる知覚距離の両方を総称したものと言え (5)(6) 船上での航海経験の多少や個人の特性によっても


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をガス専焼モードとして運転していたところ ガス燃料管のガスリークディテクタがガス濃度上昇の信号を発し LNGの蒸発ガスの燃焼が停止して主ボイラが失火したので 蒸気消費量を減少させようとして2 台のタービン発電機のうちの1 台の負荷をディーゼル発電機に移行させたが 1 台のタービン発電機の気中遮断器を

資料 3 自動運航船に関する現状等 国土交通省海事局 平成 29 年 12 月 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

Transcription:

船舶事故調査報告書 平成 30 年 12 月 19 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員佐藤雄二 ( 部会長 ) 委員田村兼吉委員岡本満喜子 事故種類発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過 衝突 平成 29 年 12 月 23 日 19 時 15 分ごろ 京浜港東京第 2 区 晴海信号所から真方位 197 700m 付近 ( 概位北緯 35 38.4 東経 139 46.2 ) アウトバックプレジャーボートOUTBACK Ⅱは 南東進中 また プレジャーボー チックダックトCHIC DUCK 23 は 北東進中 両船が衝突した CHIC DUCK 23 は 同乗者 7 人が負傷し 左舷船首部外板の破損等を 生じ また OUTBACKⅡ は 同乗者 1 人が負傷し 右舷船首部外板に 破損を生じた 平成 29 年 12 月 25 日 本事故の調査を担当する主管調査官 ( 横 浜事務所 ) ほか 1 人の地方事故調査官を指名した 原因関係者から意見聴取を行った 事実情報 船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進水等乗組員等に関する情報 A プレジャーボート OUTBACKⅡ 4.4トン 230-55259 東京 株式会社アウトバック 7.76m(Lr) 2.65m 1.74m FRP ガソリン機関 220.70kW 平成 28 年 9 月 B プレジャーボート CHIC DUCK 23 3.2トン 230-53123 東京 本橋発動機株式会社 6.35m(Lr) 2.51m 1.46m FRP ガソリン機関 110.30kW 平成 25 年 4 月 A 船長 A 男性 55 歳一級小型船舶操縦士 特殊小型船舶操縦士免許登録日平成 29 年 2 月 10 日免許証交付日平成 29 年 2 月 10 日 ( 平成 34 年 2 月 9 日まで有効 ) B 船長 B 女性 37 歳一級小型船舶操縦士 特殊小型船舶操縦士 特定免許登録日平成 21 年 3 月 3 日免許証交付日平成 29 年 7 月 19 日 ( 平成 34 年 7 月 26 日まで有効 ) 死傷者等 A 軽傷 1 人 ( 同乗者 ) - 1 -

B 軽傷 7 人 ( 同乗者 7 人 ) 損傷気象 海象事故の経過その他の事項 A 右舷船首部外板に破損 B 左舷船首部外板に破損 船首部ハンドレールに曲損 左舷灯が脱 落 気象 : 天気晴れ 風なし 視界良好 海象 : 海上平穏 A 船は 船長 A が 1 人で乗り組み 船長 A の家族及び同乗者 4 人を 乗せ 花火大会を観覧した後 平成 29 年 12 月 23 日 19 時 10 分 ごろ 法定灯火を表示し 千葉県浦安市所在のマリーナに向けて芝浦 ふ頭東方海域を出発した 船長 A は 操舵室右舷側の操縦席に腰を掛けて操船に当たり 操縦 席の左側に立っていた船長 A の家族と共に目視で見張りを行い 北東 進した後 有明ふ頭北東側の水路を約 12~13 km /h の速力 ( 対地速 力 以下同じ ) で南東進した A 船は 船長 A が 船首方に北上する 10 数隻の屋形船を認め 航 行の支障となる船舶がいないか確認しながら航行していたところ 右 舷方至近に B 船を認め 機関操縦レバーを後進に操作したものの 1 9 時 15 分ごろ右舷船首部と B 船の左舷船首部とが衝突した A 船は 船長 A が 118 番通報を行い 晴海ふ頭の臨港消防署前の 桟橋に着桟した後 負傷した同乗者の 1 人が救急車で病院に搬送され て鼻骨骨折等と診断された B 船は 船長 B が 1 人で乗り組み 同乗者 7 人を乗せ 花火大会を 観覧した後 19 時 11 分ごろ 法定灯火を表示し 東京都中央区所 在のマリーナに向けて第 6 台場西方海域を出発した 船長 B は 豊洲ふ頭と晴海ふ頭との中間付近を船首目標に定め 操 舵室右舷側の操縦席に腰を掛けて操船に当たり 周囲に多数の船舶を 認め レインボーブリッジ付近までは徐行運転し レインボーブリッ ジ下を通過後 約 10 ノットの速力まで増速して北東進した 船長 B は 有明ふ頭北東側の水路など右舷方から接近する船舶がい れば避航しなければいけないので 主に右舷方から接近する船舶がい ないか注意し 目視で周囲の見張りを行いながら航行していたとこ ろ 衝撃を受けて A 船と衝突したことを知った B 船は 臨海消防署前の桟橋に着桟した後 負傷した同乗者 7 人が ろっ救急車で病院に搬送されて肋骨骨折 頭部裂傷 打撲等と診断され た ( 付図 1 事故発生経過概略図 写真 1 A 船 写真 2 B 船参 照 ) 船長 A は 北上する多数の屋形船の明かりに気を取られ B 船の灯 火を見落としたと本事故後に思った 船長 A は 北上する船舶が少なくなるまで待機しようと思ったが - 2 -

分析乗組員等の関与船体 機関等の関与気象 海象等の関与判明した事項の解析原因再発防止策 同乗者を早く帰宅させようと思い 無理をしてしまったと本事故後に思った 船長 Bは 周囲の見張りを行っていたつもりであったが A 船の灯火が陸岸の明かりに紛れてA 船の灯火を見落としたと本事故後に思った 両船は レーダーを装備していなかった A あり B あり A なし B なし A なし B なし A 船は 京浜港東京第 2 区を南東進中 花火大会終了直後の多数の小型船舶が帰航する状況下 船長 Aが 船首方を航行する多数の屋形船の明かりに注意を向け 右舷方の見張りを適切に行っていなかったことから 右舷方から接近するB 船に気付かず B 船と衝突したものと考えられる 船長 Aは 同乗者を早く帰宅させようと思ったことから 北上する船舶が多い中を航行したものと考えられる B 船は 京浜港東京第 2 区を北東進中 花火大会終了直後の多数の小型船舶が帰航する状況下 船長 Bが 右舷方から接近する船舶がいれば避航しなければいけないと思い 右舷方の見張りに注意を向け 左舷方の見張りを適切に行っていなかったことから 左舷方から接近するA 船に気付かずに航行し A 船と衝突したものと考えられる 船長 Bは A 船の灯火が陸岸の明かりに紛れたことから 接近する A 船に気付かなかったものと考えられる 本事故は 夜間 京浜港東京第 2 区において 花火大会終了直後の多数の小型船舶が帰航する状況下 A 船が 南東進中 B 船が 北東進中 船長 Aが 前方を航行する多数の屋形船の明かりに注意を向け 右舷方の見張りを適切に行っておらず また 船長 Bが 右舷方から接近する船舶がいれば避航しなければいけないと思い 右舷方の見張りに注意を向け 左舷方の見張りを適切に行っていなかったため 両船が衝突したものと考えられる 今後の同種事故等の再発防止に役立つ事項として 次のことが考えられる 都市部の夜間航海においては 陸上施設のライトアップ照明及び街灯等陸岸に多くの照明がある状況下 他船の灯火が屋形船など多くの明かりを点灯した船舶や陸岸の明かりに紛れて認識しづらいことに留意し 周囲の見張りを適切に行うこと 花火大会終了後 多数の船舶が航行を再開する場合 無理な航行を行わず 航行船舶が少なくなるまで待機することが望ましい - 3 -

付図 1 事故発生経過概略図 東 京 湾 臨港消防署 晴海ふ頭 京浜港東京第 2 区 晴海信号所 芝浦ふ頭 A 船 事故発生場所 ( 平成 29 年 12 月 23 日 19 時 15 分ごろ発生 ) 豊洲ふ頭 レインボーブリッジ B 船 第 6 台場 水有路明ふ 頭 - 4 -

写真 1 A 船 写真 2 B 船 - 5 -