第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

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ており 土地の個別的要因に係る補正が全て考慮されたものとなっていることから 土地の形状 道路との位置関係等に基づく個別的要因に係る補正 すなわち評価通達 15(( 奥行価格補正 )) から 20(( 不整形地の評価 )) まで及び 20-3(( 無道路地の評価 )) から 20-6(( 容積率の異な

相続財産の評価P64~75

「公売不動産の購入業者の        視点について」

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相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

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144 第 2 章宅地等の評価第 3 個別事情のある宅地の評価 このような過小宅地を評価する場合 財産評価基本通達における原則評価 ( 奥行価格補正率や奥行長大補正率等 ) のみでは上記の要因が十分に考慮されているとは言い難く 市場価値である時価と大きく乖離しているケースが見受けられます よって 本

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東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

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『知っておきたい 不動産所有コストの中身と抑えるコツ』

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( 図表 1-2) 課税割合 ( 課税対象被相続人数 / 被相続人全体 100(%) ( 注 ) 財務省公表資料による こうした中で 多くの相続税納税者にとって評価額が高額で相続税納税上の負担増が大きい一定の小 規模宅地については 課税強化への影響を緩和するため 相続税強化が行われた 2015 年に

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平成16年版 真島のわかる社労士

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

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市税のしおり2016表紙再3

計算式 1 1 建物の価額 ( 固定資産税評価額 ) =2 長期居住権付所有権の価額 +3 長期居住権の価額 2 長期居住権付所有権の価額 ( 注 1) =1 固定資産税評価額 法定耐用年数 ( 経過年数 + 存続年数 ( 注 3)) 法定耐用年数 ( 注 2) 経過年数 ライプニッツ係数 ( 注

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自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人のデータ 自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人の 法定相続人の数と相続財産および債務のデータから相続税を試算します 賃貸マンションについては全室が賃貸用かどうか 駐車場については舗装がしてあるかどうかで評価額が違ってくることがあります また

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配偶者居住権の相続税評価額について 2018/12/28 田口税理士事務所 平成 30 年の民法改正により 配偶者の居住権を保護するために配偶者居住権が新設されましたが 相続税の評価にどう影響させるかについて 今回の税制改正大綱に記載されています まず 前提となる配偶者居住権について 説明します 1

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

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2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

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平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

資産運用として考える アパート・マンション経営

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住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

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13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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例題 B さんは 被相続人 A から H22 年 7 月 7 日に C 社上場株式 50,000 株を相続した この年の C 社株式の株価推移は以下の通りである このとき C 社株式の相続税評価額は? ( 終値月平均値 ) 4 月平均 5 月平均 6 月平均 7 月平均 7/7 終値 500 円 5

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販売用不動産の時価評価の基準(案)と論点

資料 以下 原文に筆者の強調 コメントを追加 租税特別措置法による定義 租法 ( 昭和三十二年三月三十一日法律第二十六号 ) 最終改正 : 平成二六年五月三〇日法律第四六号 ( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ) 第六十九条の四個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに 当該相

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2.配偶者控除の特例の適用を受ける場合(暦年課税)編

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

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2.配偶者控除の特例の適用を受ける場合(暦年課税)編

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

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筑豊広域都市計画用途地域の変更 ( 鞍手町決定 ) 都市計画用途地域を次のように変更する 種類 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域 面積 約 45ha 約 29ha 建築物の容積率 8/10 以下 8/10 以下 建築物の建蔽率 5/10

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相続対策としての土地有効活用

ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

第 1 基本的事項 1 業務内容についての順守事項本業務を行う不動産鑑定士又は不動産鑑定士補 ( 以下 不動産鑑定士等 という ) は 本業務が単に個別地点について行う鑑定評価と異なり 同一価格時点で大量に行う鑑定評価であり 特に面的な価格の均衡が求められる固定資産税評価のための基礎資料を作成するも

鹿嶋市都市計画法の規定による市街化調整区域における

生産緑地制度の概要 市街化区域内の農地で 良好な生活環境の確保に相当の効用があり 公共施設等の敷地に供する用地として適している 500 m2以上 *1 の農地を都市計画に定め 建築行為や宅地の造成を許可制により規制し 都市農地の計画的な保全を図る 市街化区域農地は宅地並み課税がされるのに対し 生産緑

等調整都市計画税額が 当該商業地等に係る当該年度分の都市計画税の課税標準となるべき価格に 10 分の 6 を乗じて得た額 ( 当該商業地等が当該年度分の固定資産税について法第 349 条の 3( 第 20 項を除く ) 又は法附則第 15 条から第 15 条の 3 までの規定の適用を受ける商業地等で

2.配偶者控除の特例の適用を受ける場合(暦年課税)編

平成 26 年 10 月 3 日 元国税の税理士 不動産鑑定士が教える 税理士が誤りやすい資産税の論点 税理士 不動産鑑定士 西川浩二

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金融商品と資金運用

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第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) 1

内容 (1) 地積規模の大きな宅地の評価 (2) 複数人所有による画地の評価 (3) 市街化調整区域の雑種地評価 (4) 小規模宅地の評価減 2. 税理士と固定資産税 (1) 減税コンサルの実態 (2) 税理士業界は固定資産税をどのように位置付けているか? 2

(1) 地積規模の大きな宅地の評価 ( 規模補正 ) ( 財産評価基本通達 20-2 平成 30 年 1 月 1 日以後の相続等から適用 ) 規模の大きな宅地 ( 三大都市圏は500m2以上 それ以外の地域は1000m2以上 ) について 次のいずれかに該当するものを除く 1 市街化調整区域に所在する宅地 ( 一部地域を除く ) 2 都市計画法の工業専用地域に所在する宅地 3 容積率が400% 以上の地域に所在する宅地 ( 東京都の特別区においては300%) 4 財産評価基本通達 22-2に定める大規模工場用地は その宅地の地積の規模応じ 次の算式より求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価する ( 算式 ) A B + C 規模格差補正率 = 0.8 地積規模の大きな宅地の地積 (A) B 及び C は 地積規模が大きな宅地が所在する地域に応じ それぞれ次の掲げる表のとおりとする 3

イ ロ 三大都市圏に所在する宅地 地区区分 三大都市圏以外の地域に所在する宅地 普通商業 併用住宅地区 普通住宅地区 地積m2 B C 500 以上 1,000 未満 0.95 25 1,000 以上 3,000 未満 0.90 75 3,000 以上 5,000 未満 0.85 225 5,000 以上 0.80 475 地区区分 普通商業 併用住宅地区 普通住宅地区 地積m2 B C 1,000 以上 3,000 未満 0.90 100 3,000 以上 5,000 未満 0.85 250 5,000 以上 0.80 500 4

(1) 地積規模の大きな宅地の評価 ( 旧広大地の評価 ) 旧広大地制度 ( 財産評価基本通達 24-4 平成 29 年 12 月 31 日まで適用 ) 広大地とは その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で 都市計画法 第 4 条第 12 項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められる 宅地をいいます ただし 大規模工場用地に該当する宅地及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適し ている宅地は除かれます 具体的には下記の要件を検討することになります 1 大規模工場用地に該当しないこと 2マンション適地でないこと ( 戸建分譲が最有効使用であること ) 3 既にマンション等の敷地用地として開発を了していないこと 4その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく面積が広大であること 5 開発行為を行うとした場合 道路等の公共公益的施設用地の負担が必要であること 広大地補正率 = 0.6 ー 0.05 ( 広大地面積 1000 m2 ) 5

例 1 三大都市圏に所在する 右掲載の600m2の普通住宅地区内の宅地場合 1 規模補正 ( 平成 30 年以降 ) 間口 40m 600 0.95 + 25 600 = 規模格差補正率 0.79 0.8 600 m2 奥行 15m 2 広大地補正の場合 ( 平成 29 年以前 ) 間口が広いため 3 分割で1 画地 200m2の土地として利用でき 道路等の公共公益的施設用地の負担が必要ないため 広大地補正は適用出来ない 広大地の補正はゼロ! 6

例 2 三大都市圏に所在する 右掲載の 1800 m2の普通住宅地区内の宅地場合 1 規模補正 ( 平成 30 年以降 ) 間口 30m 間口 30m 分譲地 1 1,800 0.90 + 75 1,800 = 規模格差補正率 0.75 2 広大地補正の場合 0.8 奥行 6 0 開発道路 分譲地 2 奥行 6 0 0.6 ー 0.05 (1,800 1,000) m 分譲地 3 m = 広大地補正率 0.51 3 規模補正についての補足 分譲地 4 奥行価格補正 :0.86 奥行長補正大 :0.98 よって 規模補正 0.75 奥行価格補正 0.86 奥行長大補正 :0.98= 総補正率 0.63 実際の財産評価では 項目毎に土地単価を計算しますので 総補正率ではありません 7

(1) 規模格差率補正導入後における固定資産税と財産評価について 財産評価の規模補正は広大地とはことなり 補正の1つ であるので規模補正と奥行逓減 ( 奥行価格補正 ) や奥行長大補正との併用が可能 広大地とは異なり 適用要件が明確であるので 適用し易く格差率も大きい 固定資産税評価を大幅に下回る相続税評価が出ることも考えられる 通達であるので 改正される可能性に留意 広大地も通達であった 8

(2) 複数人所有による画地の評価 現況利用 (1 画地 ) されている土地が複数筆から構成されており 筆ごとの所有者が異なる場合の評価方法 道路 設例 F 所有地 土地所有者 A~F 所有地上にショッピング モールが建っており 土地所有とショッピ B 所有地 C 所有地 ングモール側で借地契約が行われ 利用されている場合において 所有 Eを評価する 店舗 α 所有地 A 所有地 D 所有地 店舗 β 所有地 E 所有地 9

(2) 複数人所有による画地の評価 固定資産税評価の場合現況利用は ショッピングモールとして利用されているため 評価単位 (1 画地 ) はショッピングモール利用である よって A~Fの所有者毎の筆は無視して ショッピングモールとしての間口 奥行 形状 接面状況等を勘案して評価を行い 単価を求め この単価に面積を乗じてE 所有地の価格を査定する 固定資産税では 利用目的の同一性と連続性が重要であり 宅地の所有が同一か否かは問わない 財産評価の場合相続税等の評価単位の判定は 原則として所有者ごとでありA~Fの所有地ごとの評価となる 店舗の所有者が底地の所有者と異なり 借地契約がある場合は 底地の評価単位は所有者ごとなので E 所有地については この土地のみを抜き出して評価を行う 相続税は 時価評価であり 借地契約が終了した場合の状態や 現時点でE 土地のみを第三者へ売却した場合の価格という側面を重視している 10

(2) 複数人所有による画地の評価 鑑定評価の場合鑑定評価の依頼においては 承諾書 確認書が取り交わされることとなっており 多様な評価条件に対応出来る 想定上の条件設定により E 土地を一体の評価とすることも可能である 想定上の条件を設定しない場合は 単独の所有権価格 ( 底地評価 ) となるので 一体評価を前提としない 但し 借地契約の内容次第では 一体利用の評価額になる場合もありえる 想定上の条件設定は 実現性 合法性 第三者の権利を害することが出来ない 11

(2) 複数人所有による画地の評価 固定資産税と財産評価の問題点前記の設例において ショッピングモールが建設前の未利用地の状態であった場合 所有権 Eは固定資産税上の評価も無道路地評価となります ( 未利用地では 一体利用とは言えないため ) ここにおいて ショッピングモール地が 相続税の路線価地域であれば E 所有地は無道路地として 補正を行い金額を相当下げることが出来ますが 市街化調整区域や路線価地域で無い場合は固定資産税の評価額の倍率となるため 道路に接面した土地としての単価で評価することになります 12

(3) 市街化調整区域の雑種地の評価別紙参照のこと 周辺の状況に応じて 評価対象地と状況が類似する付近の土地の価額を基に評価 土地の価格に精通した不動産鑑定士でも この しんしゃく割合 の判定は容易ではない また 税理士は価格を低く出さないと訴えられる危険性がある 各市町村の税務課 資産税課へ税理士が相談へ行く 13

2. 固定資産課税評価と財産評価の異同と問題点 (4-1) 小規模宅地の評価減 小規模宅地等の特例とは 相続開始の直前において 被相続人及び生計を一にしていた被相続人の親族の 1 事業の用又は 2 居住の用に供されていた宅地等で 建物又は構築物の敷地の用に供されているものがある場合には 相続人等が取得したこれらの宅地等のうち限度面積まで 課税価格を減額させる特例です 事業用 居住用 宅地等限度面積減額割合 特定事業用宅地等 ( 上記 1 のうち一定の要件を満たすもの ) 貸付事業用宅地等 ( 不動産貸付業を営むのも ) 特定居住用宅地等 ( 上記 2 のうち一定の要件を満たすもの ) 400 m2 80% 200 m2 50% 330 m2 80% 注 1 上記の他に特定同族会社事業用宅地等もあります 注 2 2 以上の宅地等について特例を適用する場合には 面積調整をします 14

2. 固定資産課税評価と財産評価の異同と問題点 (4-2) 小規模宅地の評価減 (A) 特定居住用宅地の限度面積を 330 m2 ( 過去 240 m2 ) に拡充 適用開始 : 平成 27 年 1 月 1 日の相続開始から 特定居住用宅地とは 被相続人の自宅等 自宅の敷地特例対象範囲範囲拡大 被相続人の居住用宅地等で 以下の者が相続等した場合に 限度面積までの部分について 課税価格を 80% 減額する特例です 1 配偶者 2 同居親族 3 家なし子 (2 世帯の区分登記はダメ ) 240 m2の部分まで 330 m2 ( 約 100 坪 ) の部分まで (B) 特定事業用宅地 400 m2と特定居住用宅地 330 m2の両方適用 (730 m2 ) A + B 5/3 + C 2 400m2改正 A m2 個人事業者の店舗の敷地 B m2 自宅の敷地 C m2 アハ ート敷地 特例選択対象地が A B である場合 (C を選択しない場合 ) A 400 m2 B 330 m2 C を選択する場合 A + B 40/33 + C 2 400 m2 15

2. 税理士と固定資産税 (1) 減税コンサルの実態特に決まったコンサルのやり方がある訳では無い 相続税の更正の請求との共通点と相違点 (2) 税理士業界は固定資産税をどのように位置付けているか? 1 賦課課税方式と申告納税方式 2 顧問料と報酬について 3 法人税 所得税 相続税に対する固定資産税の位置づけ 16