第 24 回日本緩和医療学会学術大会 SY20 看護ケアの最新エビデンス up to date ~ 疼痛看護 ~ がん看護専門看護師 森川みはる
第 24 回日本緩和医療学会学術大会 COI 開示 演題名 : 看護ケアの最新エビデンス up to date~ 疼痛看護 ~ 発表者名 : 森川みはる 演題発表内容に関連し 主発表者及び発表責任者には 開示すべき COI 関係にある企業等はありません
進行がん患者の身体機能および疼痛に対する遠隔リハビリテーションの効果
進行がん患者の身体機能および疼痛に対する遠隔リハビリテーションの効果 対象 :Stage3c~4 固形がんまたは血液腫瘍患者 516 名 コントロール群 遠隔リハビリ 遠隔リハビリ + 遠隔疼痛管理の 3 群に無作為化 ( 各群 172 名平均年齢 65.6 歳 ) コントロール群 遠隔リハビリテーション群 遠隔リハビリテーション + 遠隔疼痛管理群 介入 1 身体機能 疼痛の定期的モニタリング ( 身体機能 疼痛を電話または Web を定期的に報告し 治療チームが対応 ) 1 身体機能 疼痛の定期的モニタリング + 2 理学療法士による電話でのリハビリテーション指導 ( 歩数計に基づく歩行プログラムと筋力運動プログラム ) 痛みに対処するための的を絞った運動 1 身体機能 疼痛の定期的モニタリング + 2 理学療法士による電話でのリハビリテーション指導 + 3 疼痛ケアの専門看護師による疼痛管理 * 疼痛増悪ジには治療担当チームに対応を促す連絡
進行がん患者の身体機能および疼痛に対する遠隔リハビリテーションの効果 歩数計に合わせたリハビリテーションの例 リハビリテーション群の患者に提供 リハビリメニューが書かれたリングファイル エクササイズ DVD 歩数計 ラテックスフリーの弾性ゴムバンド 一日記録のステップカレンダー 体力レベルが認識できるカード
身体機能の変化 遠隔リハビリ + 定期モニタリング 遠隔リハビリ + 疼痛管理 + 定期モニタリング 定期モニタリング か月後 か月後 定期的モニタリング 遠隔リハ + 定期モニタ 遠隔リハ + 疼痛管理 + 定期モニタ
身体機能 AM-PAC-CAT EQ-5D EQ-5D Total pain interfence 痛みの平均値 遠隔リハビリ + 定期モニタリング 遠隔リハビリ + 疼痛管理 + 定期モニタリング
コントロール群 遠隔リハビリテーション群 遠隔リハビリテーション + 遠隔疼痛管理群 入院期間 7.4 日 3.5 日 5.0 日 自宅退院率 44.4% 73.8% 71.9% がん治療の入院率 8% 24% 17%
パクリタキセルによる末梢神経障害の主観的 客観的症状に対する冷却療法の効果の検討 ~ 並行群間比較 ~
パクリタキセル療法投与時に冷却グローブ ソックスを装着し CIPN を予防できるか検証 対象 : 毎週パクリタキセル療法 (80 mg / m2を 1 時間かけて投与 ) し 累計 960 mg / m2以上施行予定の成人患者除外 : パクリタキセル投与前に NCI-CTCAE Grade2 以上の CIPN あり浮腫出現 またはレイノー現象など冷却禁忌 方法 : パクリタキセル投与 15 分前から終了 15 分後まで計 90 分間 効き側手足に冷却グローブ ソックスを装着 (45 分で交換 ) 非利き手足側を無介入コントロール群 主要評価項目 :960 mg / m2投与時点におけるの CIPN の発症副次評価項目 : 温感閾値 (PNQ) による自覚症状 grooved pegboard test による手指の巧緻性
結果 乳がん患者 40 名に実施 (36 名を主要解析 ) CIPN: 触覚異常 温感異常 冷感異常 27.8% 手 80.6% 8.8% 手 OR 9.0 34.2 % 2.8% 手 OR Inf 13.9 % 25% 足 63.9% 33.4 % 足 OR 5.0 57.6 % 12.6 % 足 OR 2.0 18.6 %
結果 Patient Neuropathy Questionnaire(PQN): 手指の巧緻性 : すべての釘差しを何秒でできるか介入群 -2.5 秒コントロール群 +8.6 秒 P=0.05
結果 PNQ D のしびれを自覚するまでの時期が有意に延長 手 ; ハザード比 0.13 足 ; ハザード比 0.13
まとめ パクリタキセル投与時 フローズングローブ ソックスを使用することで化学療法誘発性の末梢神経障害を予防しびれの自覚症状だけでなく 手指の巧緻性の悪化を予防 ( QOL 維持 ) フローズングローブを装着時は作業療法士によるモニタリングを行い 冷却時の不快感や疼痛が生じた際には附属の不織布で覆うケアをし 凍傷を予防
患者への癌性疼痛マネジメント教育は疼痛に関する誤解を修正し 痛みを軽減させ QOL を向上する
方法対象 : 入院 外来通院中のがんと診断されている 18 歳以上の方がん告知を受けている 慢性疼痛にオピオイド ( ベース 必要時レスキュー ) の処方あり精神 認知障害の方は除外 疼痛の強さ (NRS) 突発痛の回数レスキューの使用回数 QOL(7 項目 10 段階 ) 鎮痛剤に関する誤解 Ns による疼痛マネジメントについての患者教育 (30 分 ) 疼痛の強さ (NRS) 突発痛の回数レスキューの使用回数 QOL(7 項目 10 段階 ) 鎮痛剤に関する誤解
方法 教育内容 : 厚労省 国立がん研究センター発行の疼痛マネジメントガイドラインに基づいた小冊子を用い Ns が個室で 30 分以上実施 疼痛に関する一般的なこと 薬物療法 非薬物療法 痛みの要因 強さ 痛みについて医師とのコミュニケーションの取り方 がん性疼痛の影響 それによる懸念 疼痛マネジメントの目的とやり方 長時間 短時間作用性のオピオイドの安全な使用方法 鎮痛剤の種類とその効果 ( オキシコドン モルヒネ ヒドロもルフォン フェンタニル ) オピオイドについての真実と誤解 オピオイドの副作用及び対処方法 疼痛の種類に応じた対応方法 効果的な鎮痛のための鎮痛補助薬 マッサージ 心理学的治療 冷温法 日記などの疼痛モニタリング 放射線療法や神経ブロックの選択についてなど
結果 痛みの経験 教育前 Mean±SD 入院患者 N=102 N=93 教育 7 日後 Mean±SD P 値 強い痛み 5.58±2.70 4.69±2.46 0.002 中等度の痛み 3.75±2.06 2.91±2.01 <0.001 弱い痛み 1.77±1.93 1.40±1.76 0.135 外来患者 N=74 強い痛み 7.20±2.12 4.64±2.87 <0.001 中等度の痛み 4.75±1.99 2.64±2.02 <0.001 弱い痛み 2.20±2.31 1.16±1.58 <0.001 教育介入後すべての痛みの強さの分類で数値は減少 中等度の痛みを持つ入院患者 外来患者ではどの痛みの分類においても有意に減少した QOL においても 7 項目すべてにおいて有意に改善がみられた
結果 突発痛へのレスキュー使用 突発痛の経験ありなしレスキュー薬の使用ありなし 入院患者 外来患者 教育前 教育後 教育前 教育後 N=102 N=93 N=74 N=70 ガイドラインに基づく小冊子を用いた看護師による教育は患者の疼痛を減少させる短期的効果あり特に 適切なレスキュー使用を促すことで 外来患者の疼痛緩和に効果的
がん患者のアロディニアに対する 10% リドカイン塗布の効果 :RCT
方法 無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験 目的 : 癌性疼痛によるアロディニアに対する 10% リドカイン軟膏の短期的効果を評価 対象 : がん関連の神経障害性疼痛およびアロディアを有する患者 静的アロディニアが NRS4 以上 研究登録 2 日前までに全身投与の鎮痛剤の種類や量が変更された患者 介入 :10% リドカイン塗布群 (12 名 )vs プラセボ軟膏塗布群 (13 名 )
結果 皮膚症状心血管症状中枢神経症状みられず 眠気 1 名 ( 途中で消失 ) 10% リドカイン塗布群の方が 2~8 時間後に持続的に疼痛が減少 (NRS のベースラインとの比較では 2 時間後 4 時間後は有意に減少 )
疼痛アプリデータ評価による痛みの破局化の判断 ~ コンピューターによる分類の役割 ~
方法対象 :3 か月以上痛みが持続している 18 歳以上慢性疼痛患者 平均して NRS4 以上の疼痛がある スマートフォンが使える 認知 精神障害 視野運動障害がある方 薬物依存者は除外 App で基本情報入力ベースラインの疼痛評価疼痛管理の個別目標心理学 医学管理の興味あるトピックス The Pain Catastrophizing Scale, Pain Disability Index, HADS 毎日入力 (5 項目 ) 痛みの強さ活動の障害睡眠障害気分障害ものごとがどのように変化しましたか? 3 か月後 The Pain Catastrophizing Scale, Pain Disability Index, HADS
結果 144 名 (40 日以上継続 ): 年齢 52.0±13.8 歳 ベースライン 痛みの破局化の指標との相関 ( マルチモデリング ) 日々のアセスメントが 良い 悪い の回答していたグループに相関がみられた 日々の中で悪い状態を認識する人は概して否定的な見通しをもち 痛みの破局化の思考を持つことが示唆された
ご清聴ありがとうございました E-mail:morikawacns@gmail.com