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Transcription:

アメリカの継承日本語教育 ダグラス昌子 知念聖美 1. はじめに 1776 年の建国以来 230 年余りが経つアメリカは 移住者の国として言語的にも文化的にも多様性に富んでいる その多様性を構成しているものとして, 移住者の文化と言語 ( 継承語 ) がある 一般的に継承語とは, 外国にルーツを持つ者が親や祖父母から継承した言語を指す 今日のアメリカは, 過去に例を見ないほど言語的な多様性に富み 継承語への関心が高まりつつある (Peyton, Ranard, McGinnis, 2001) また 21 世紀に入り グローバル化がさらに進むアメリカでは 経済 政治 商業などの専門分野において 高度な言語レベルでコミュニケーションが図れる継承語話者への期待が高まっている それと同時に 継承語教育についての議論も活溌に行われるようになってきている 本稿では, アメリカにおける継承語とは何か, 継承語学習者とは誰か, そして継承語教育はどのような歴史的変遷をたどってきたかについての概観を述べ アメリカの継承日本語教育と研究に焦点をあてて その歴史, 現状, 課題などを論じ, 最後に, 今後の継承日本語教育の展望を視野にいれた活動を紹介する 2. 継承語と継承語学習者とは 継承語研究の第一人者で社会言語学者の Fishman は アメリカにお ける継承語を次の 3 つに分類している (1) Indigenous heritage 1

languages ( アメリカ合衆国が建国される以前から居住していたアメリカ原住民の言語 ),( 2)Colonial heritage languages ( アメリカ合衆国として建国される以前の 17 世紀に, 主に北ヨーロッパから移住してきた少数の民族の言語 オランダ語 スウェーデン語 フィンランド語など ), そして (3) Immigrant heritage languages の3つである (Fishman, 2001) Immigrant heritage languages とは 19 世紀から 20 世紀前半の南ヨーロッパや東ヨーロッパからの移住者の言語, さらにそれ以後のラテンアメリカとアジアからの移住者の言語を指す この 3 つの分類がアメリカにおける継承語の大きな枠組みと言えるが, 本稿が考察の対象とするのは (3) の Immigrant heritage language である 継承語学習者の定義は研究者によって異なるが, ここでは最も広く知られている定義の一つである Valdés (2000, 2002) の定義をまず紹介する Valdés は継承語学習者に関して, 二つの定義をしている 一つは学習者個人の関心に基づくもので, 継承語学習者とは, 親から子へと代々受け継がれてきた言語に関心を持つ者, またはその言語に携わっている者であること, そしてもう一つは学習者個人の継承語の能力に基づくもので, 継承語話者とは 英語以外の言語を話す家庭で育ち 当の継承言語を話す力または聞いて理解できる力があり 英語と継承言語がある程度まで発達したバイリンガルをさす 一方, 継承語の言語力とは関係なく また家庭言語として継承語が使われていない場合でも そのエスニックコミュニティーに属し, そのエクニックグループが話す言語を学習している者を継承語学習者とする定義 (Kelleher, 2010) もある さらには 継承語学習者の定義を論じる上で, 教育的プログラム, コミュニティー, 言語の三つの観点から考察すべきだという提言もある (Wiley, 2001) このように継承語学習者の定義づけは実に様々で, 継承日本語学習者の定義についても, 現在統一されたものはない 3. アメリカにおける継承語教育の歴史と現状 アメリカは歴史的にみて 原住民の言語以外の言語に対する連邦政 府及び州政府の言語政策がなく 継承語 継承語話者は アメリカ国家 2

の言語に対するイデオロギーと社会の動静に大きな影響を受けてきた 例えば 第一次世界大戦をきっかけに アメリカ文化 への同化が強く押し出され 戦前にあった継承語学校 ( とくにドイツ語の学校 ) は その数が激減した しかし ソ連のスプートニクの打ち上げにより アメリカ政府は科学 数学 外国語教育に国の予算を割くようになった とはいえ アメリカの言語教育は どの時代も共通してマジョリティーグループのための外国語教育であり 移住者の言語である継承語教育には財政援助も言語政策も打ち出されなかった さらに マイノリティーである継承語話者は 学業不振や退学率の高さなどで常に問題視され 社会のお荷物 という見方がされてきた この継承語が初めて公の注目を浴び 社会のお荷物 から 国の資源 と見られるようになったのは 1980 年以降 とくに2001 年の同時多発テロ以降のことである 継承語学習者は, 外国語学習者と比べ 比較的少ない学習時間で 専門分野で必要とされる高度な言語力を習得することが可能だと言われている そのため, 政治や経済がグローバル化している現在, アメリカにおいて継承語話者に対する関心がより高まりつつある そして2001 年 9 月に起きたアメリカ同時多発テロ以来, そのような関心が一層強くなった 継承語が話せる高校生や大学生が注目を浴び その即戦力が国の言語資源としてみなされているのである ( 中島,2010) Brecht & Ingold (2002) によると,2001 年の同時多発テロ以前にも, アメリカ連邦議会では, 政府関連の幅広い任務を遂行できる高度な言語運用能力を持った人材が不足していることが指摘され始めていたが,2001 年以降, そのような有能な人材不足の状況が, あらゆる行政機関の任務遂行に悪影響を与え 支障をきたしたということである このような経済的, および政治的な理由で, 継承語話者, 継承語学習者, そして継承語教育の重要性がアメリカでさらに強く認識されるようになった 継承語教育を担う機関としてまず挙げられるのが, 継承語学校である アメリカにおける継承語学校は 継承言語と文化の学習を支援する目的で, その言語を話すエスニックグループによって設立された (Fishman, 2001) また継承語学校は公的支援を受けず, 親を含めたコ 3

ミュニティーの熱意で私的に行われてきているのがほとんどである (Kelleher, 2010) Fishmanが全米で1960 年から1963 年に行った初の調査では, 主として南ヨーロッパや東ヨーロッパの言語を継承語として教える学校が1,885 校確認された (Fishman, 2001) また1980 年初期に行った2 度目の調査では, 日本語や中国語や韓国語などのアジア言語を含む 145の言語を継承語として教える学校が6,500 以上確認された しかし, 調査にもれた学校も含めると 実際の数はこの数をさらに上回ったであろうとFishman は述べている 2 度目の調査が実施された時期は アジアからの移住者が急増した時期である 2 度目の調査では 初回と比べ継承語学校の数が228% の増加となったが これは1960 年代後半から1970 年代にかけてのアジア系アメリカ市民の市民権運動が影響したものと思われる 全米を対象に行われた調査は, この1980 年初期に行われたものを最後にその後行われていない 継承語学校の形態としては, 正規の学校 ( アメリカの正規の教育システム ) の放課後に開かれるプログラム, そして週末に行われる学校 ( 土曜日または日曜日の学校 ) などがある 現在でも継承語学校は, 言語能力の育成と文化的知識の伝授に重要な役割を果たしている (Liu, Musica, Koscak, Vinogradova, & Lopéz, 2011) が, 最近では, まだ数は限られているものの継承語教育を取り入れる正規の教育システム ( 公立や私立の学校 ) も増加している (Peyton, Ranard, & McGinnis, 2001) 長年に渡りコミュニティーベースで行われてきた継承語教育が, 正規の教育システムで行われるようになってきているのである 継承語教育支援の動きも広まってきている 継承語教育を支援する機関の一つに, National Heritage Language Resource Center (NHLRC) がある カリフォルニア大学ロサンゼルス校の管轄にあるこの機関は, アメリカの教育省からの助成金によって設立され, 継承語研究, カリキュラム作成, 教材開発, 教員研修を支援し, 効果的な継承語教育の推進活動を行っている (http://www.nhlrc.ucla.edu/) また, 外国語教育普及を促進させる機関に,National Foreign Language Center (NFLC) とCenter for Applied Linguistics (CAL) があり, この二つの 4

機関は 1999 年にHeritage Language Initiative を立ち上げ, 英語と英語以外での言語で高度なレベルで活躍できる人材を育成する教育システムを構築することを目的とした活動を始めた (Brecht & Ingold, 2002) 継承語が 経済的な理由と国土保安上の理由で, お荷物 的な扱いから 国の資源 という肯定的な扱いへと変化した今日, 継承語教育の重要性は高まりつつある しかし, 前述のように, 国の言語政策は未だ明確化されていない アメリカ教育省 (2010) は ブッシュ政権時に制定されたNo Child Left Behindという法律がテストの点数だけで教育の質を問うようになり 結果として教育の質の向上には役に立たなかったことの反省から 教育法の改正を行い 長期にわたって無視されてきた外国語教育や芸術分野の教育も広く行うという提案を行っている しかし この中でも言及されているのは外国語教育であって 英語以外の言語を第一言語にして育つ児童 生徒の継承語の維持発達についての言及はない 4. アメリカにおける継承日本語教育 4.1. 歴史的背景この章では, アメリカにおける継承日本語教育の歴史を, 継承日本語教育に携わる教育機関に焦点をあて, その設立の歴史を時間の流れに沿ってまとめる アメリカにおける継承日本語教育の始まりは, 第二次世界大戦以前にさかのぼる 1868 年に, 初めて日本からの移住者がアメリカに渡って以来, この移住の波は 1924 年のアメリカ政府の移住者規制法ができるまで続いた 移住者の第一世代, とくに英語が話せない世代は, 世代間の意思疎通に必須の日本語をアメリカ生まれの子ども達に学ばせるために, 日本語学校を設立しはじめた 初の日本語学校は,1895 年にハワイ州のマウイに開設され, 続いて 1896 年にホノルルに開設された アメリカ本土では,1902 年にシアトルにでき, その後サンフランシスコ, サクラメント, ロサンゼルスへと広がっていった (Yano, 2011) これらの学校のほとんどは, 日系のコミュニティーを基盤とした学校で, 仏教会そ 5

の他の独立した組織によって運営されていた (Igawa, 2003) 継承日本語学校は, 日本からの移住者が多く住んでいたハワイ, アメリカ本土ではカリフォルニア, およびコロラドとイリノイ州に集中していた これらの学校は, 戦時中の日系アメリカ人の強制収容で閉鎖され, 当時の日系人の言語 文化への弾圧とあいまって, 二世の日本語の喪失が急速に進んだ 戦後, これらの継承日本語学校は教育を再開するが, 日本語を喪失した二世から世代が三世, 四世になるにつれ, 家庭で日本語を話さない児童 生徒の数が増え, 現在の継承日本語学校には 日本語力はもはや継承語ではなく外国語にシフトしている児童 生徒が多く在籍している その一方で, 戦後の日本の高度経済成長とともに, 日本から商用あるいは留学 研究が目的で渡米しその後アメリカへの永住を決めた日本人, あるいは国際結婚で永住する日本人など, いわば 新一世 の数が増加したため, その子弟の日本語教育が必要となった 日本経済が高度成長を遂げた時期 (1955 年から 1964 年と,1966 年から 1972 年の二つの時期 ) に, 日本の企業から派遣された社員の子弟のために, 企業の出資で, 補習校が設立された 1958 年にワシントン D.C. にはじめての補習校が開設され, 続いて 1968 年にサンフランシスコに開設された (Chinen, Douglas, & Kataoka 2012) 日本経済の高度成長の第二期には, バブル経済が崩壊する 1991 年まで, 企業派遣の日本人家庭の数が増加し, それに伴って補習校の数も増加を続けた 文部科学省の調べでは, 義務教育年齢の日本人子弟でアメリカに居住する児童 生徒の数は,1992 年の 22,718 人をピークに減少するが,2006 年の時点で 20,218 人となり,83 校の補習校があった これらの補習校は児童 生徒の数, 日本政府からの派遣教師の有無, 教えている教科の数に関して学校間に違いはあるが, 設立当初の目的は, 帰国した際に日本での教育に軟着陸できるように日本と同じカリキュラムの内容を教えるというものである また文部科学省の定義でも補習校は在外教育施設として, 学校教育法( 昭和 22 年法律第 26 号 ) に規定する学校における教育に準じた教育を実施することを主たる目的とする ( 文部科学省 海外子女教育の概要 より ), つまり日本での教育と同じ内容の教育をする機関となっている 6

戦後の日本経済の成長期には補習校以外にも, 子どもに日本語を継承してもらいたいという新一世の親の熱意で, 新たに継承日本語学校がアメリカの各地に開設された これらの学校は, 全米の総数は不明ではあるが, 補習校がない地域に作られたり, また補習校があっても補習校とは異なる教育を希望する親によって作られたものである 学校としての歴史は, 戦前からの継承日本語学校や補習校に比べると短く, また児童 生徒数も数十名から 100 名前後と学校の規模も小さいものが多い 以上の教育機関は, アメリカの教育システムに属さず, 州政府からの援助を受けずに運営されている機関であるが, 教育システムの中, つまりアメリカの正規の学校教育の中で継承日本語話者の教育をしているプログラムとしては, イマージョンプログラムがある アメリカにおける日本語イマージョンプログラムは 1988 年にオレゴン州で始まり, 翌年には3 校が加わり,2000 年には全米で 12 の小学校が日本語イマージョンプログラムを実施していた ( ダグラス 片岡 知念 2012) 2011 年現在, CAL (Center for Applied Linguistics) によると, 日本語イマージョンプログラムは 31 校あるが, その中には日本語での授業時間が 50 パーセントに満たないプログラムや, 既に廃止されているプログラム, 日本語学校に英語話者の子どもたちが加わった形態のプログラムなども含まれており, 厳密にイマージョンと呼べるプログラムは,CAL のリストにはまだ含まれていない1 校を加えて, 小学校 16 校におけるプログラムだけではないかと思われ, このうち,4 校が双方向イマ ジョン ( 英語を第一言語とする児童 ( すなわち継承日本語学習者 ) と日本語を第一言語とする児童がほぼ半数の割合で在籍している ) プログラムである ( ダグラス 片岡 知念同上 ) アメリカの学校教育で外国語としての日本語教育の発展にともない, 中学, 高校, 大学では, 継承日本語学習者は外国語としての日本語教育のコースに在籍して日本語を学んでいる場合がほとんどである また小学校でも, 補習校や継承日本語学校がない地域では,Foreign Language at Elementary Schools (FLES) や,Foreign Language Experience(FLEX) といった小学校の外国語のクラスをとる児童もいる 2010 年にはサン 7

フランシスコ統一学校区が政府の外国語支援グラント (FLAP: Foreign Language Assistance Program) により,FLES のプログラムの中に継承日本語話者の児童のための特別プログラムを創設する準備を始めたとのことである (San Francisco Unified School District 2010) 4.2. 継承日本語教育の現状と課題および改善の試みアメリカの継承日本語学習者は, 双方向イマージョンプログラムや外国語としての日本語のコースのように幼稚園から大学までの学校教育に組み込まれたプログラムで日本語を学んでいる場合と, 週末補習校やコミュニティーを基盤として作られた学校のような私的機関で学んでいる場合がある 以下に, それぞれの教育機関での継承日本語教育の現状と課題および改善にむけての試みを述べる 筆者らは, 日本語と英語の双方向イマージョンプログラムの幼稚園から最終学年の 5 年生に在籍する継承日本語の児童を対象に, 日本語力の発達を調べるための一つの方法として, 物語を書く力を測定した その結果, 物語を書く力は, どの学年も日本語グループが英語グループを, 有意差をもって上回っていることがわかった さらに, 日本語グループの書いた物語を言語面から分析するため, 書いた量, 表現の複雑さ, 文法の正確度の 3 つの領域で評価したところ, 前者 2 つは学年が上がるにつれ順調な伸びをみせたが, 正確度については最終学年でも伸び悩みがみられた ( ダグラス 知念 片岡 2012) イマージョンプログラムにおける児童の言語力の伸び悩みという問題は, 他の言語でも指摘されており, 学習内容だけではなく, 言語形式の発達を体系的に指導する必要が指摘されている (Swain, 1985) これに加えて, 筆者らの授業観察, カリキュラムの分析から, 継承日本語の児童が多く在籍するプログラムでは, カリキュラム, 教材, 学習活動が日本語をゼロから始める英語グループに合わせたものになりがちで, 日本語グループは, 日本語力の発達が足踏み状態になっていることが分かった 上記の問題解決のために, 当プログラムでは, 継承日本語児童の言語力の面でのニーズを考慮し, 言語のプロフィシエンシー ( 運用能力 ) を伸 8

ばすために, 言語面に焦点をあてた体系的な指導をめざして, カリキュラムと学習活動の見直し, および, 言語に焦点を当てた指導をするための教師トレーニングが行われている 新カリキュラムでの継承日本語児童の日本語力の伸びの測定結果が待たれるところである また, より効果的な教育のためにプログラム間で情報交換 情報共有をすることが必要で, 新カリキュラム作成にかかわった関係者が, その過程で得た知見を他の双方向日本語イマージョンプログラムに発信していくことも必要であると考える 2005 年には国際交流基金および North East Council of Asian Studies (NEAC) のグラントの援助で, 日本語イマージョンプログラムを卒業した生徒を教える高校の教員を対象にした日本語イマージョンネットワーク会議がロサンゼルスで開かれ, それぞれのプログラムの特徴や課題が話し合われた (Kataoka, 2002; Kataoka, Douglas, & Chinen 2006) この会議では イマージョンプログラムの中の継承日本語学習者に特化した話し合いはなかったが 今後このような情報交換の機会を定期的に持ち その中で継承語学習者の教育について話し合うことが必要である アメリカにおける日本語イマージョンプログラムは前述のように数が非常に限られており, また小学校教育より先の教育には継続したイマージョンプログラムが筆者らの知る限りでは無い このため, イマージョンプログラムの卒業生や後述の補習校, 継承日本語学校の児童は, 学校教育の中で日本語学習を継続するには, 一部の中学 高校にあるイマージョンプログラムの卒業生のための日本語のコースを除いて そのほとんどが外国語としての日本語のプログラムに入る以外に方法がないのが今のアメリカの現状である しかし, この状況は, 筆者らが見聞きした範囲ではあるが, 継承日本語学習者にとっては必ずしもいい環境とは言えない 高校の日本語プログラムでは, 継承日本語の生徒で日常会話がそこそこにできる生徒はほとんどが日本語の 3 年生,4 年生のクラスに入り, そこでは教師のアシスタントとして外国語としての日本語を学ぶ生徒の会話の相手をしたり, 宿題を手伝ったりすることが主なクラス活動となっている また大学では, 会話力からみると上級のクラスに入るこ 9

とができる学生でも漢字が書けないという理由で初級のクラスに入れられたり, 日本語ができすぎる ( どのようなアセスメントでこのように判断するのかは疑問であるが ) のでとるクラスがないという理由で履修を断られたりする 継承学習者は, ともすれば ~ができない というふうに引き算的に評価されたり, プログラムにとって お荷物 のように見られることが多く, コースに入れたとしても, すでに発達した日本語力をさらにのばすための適切な指導が受けられるかどうかは疑問である 継承学習者は子どもの頃に家庭で培った日本語力を年齢相応のレベルに発達させるというニーズを持っている 教師のアシスタントをするためにクラスにいたり, 漢字ができないからと初級のクラスに入れられ, 会話力の更なる発達は望めないままコースを終えたり, 日本語ができすぎる という理由で学習を拒否されるという状況は, 学びのための教育の理念に反するだけではなく, 学習動機の低下, ひいては学習放棄, さらには継承日本語の喪失を引き起こしかねない重大な問題である 外国語としての日本語のコースに継承日本語学習者が在籍する場合とは異なり 継承日本語学習者が比較的多い地域の大学には, 数は限られているが継承日本語話者のためのコースが開設されているプログラムがある ( 例, カリフォルニア州立大学ロングビーチ校, カリフォルニア大学サンディエゴ校, カリフォルニア大学ロサンゼルス校 ) しかしながら, スペイン語, 中国語の継承語学習者の数と比べると, 継承日本語話者の数ははるかに少なく, 大学の継承日本語コースは開設されたとしても, 一つか二つに限られていて,1 年生から 4 年生まで一貫した継承語学習者用のプログラムができる可能性はないに等しい そのため, 外国語としての日本語のコースに継承日本語学習者が入って日本語を学習するという状況は今後も続くであろう この状況で, 高校および大学の日本語のクラスが継承日本語学習者にとっても学びの場となるためには, 継承日本語学習者のすでに発達した日本語を土台としてそれをさらに発達させていく, 足し算的な教育が必要であると考える 従来の教育は一つのカリキュラムでクラスの学習者全員のニーズをまかなおうとするものであり, そのカリキュラムに合わ 10

ない学習者は放置されたままになっていた 足し算的教育をするためには, 個々のニーズを満たすための, 学習の個別化や区別化 ( 授業の区別化の原理については Tomlinson 2012 を参照されたい ) をし, 言語力の違いがある学習者全員が学習できるように, 教える側の工夫と努力が必要ではないかと思われる 既存の研究でも個別化授業での継承日本語大学生の漢字力の伸びが報告されている (Douglas, 2002) 以上は 外国語教育の枠内での継承日本語学習の問題点を述べたものであるが 最近では 外国語教育の一環として 正規の学校教育の中で日本語を学ぶ継承日本語の高校生にとって, プラスの要因になる動向もある それは 高校における Advanced Placement 日本語 日本文化の試験が 2007 年から実施されたことである この試験では, 継承日本語学習者は, 毎年大多数が最も高いスコアーの 5 で合格している 2012 年度の結果では, 継承日本語話者の高校生を含んだ場合, 全体の 44.7% がスコアー 5 で試験に合格している (Total Registration, 2012) この合格率は, 外国語としての日本語の学習者がスコアー 5 で合格する割合が 19.5% であることと比べると, 格段に高い率であることがわかる この試験では, スコアー 3 以上が合格となるが, 合格すると日本語の単位がもらえ, かつスコアー 5 でパスすると, 上級コースから日本語をとることが可能になる大学もある 年少時から毎週土曜日に日本語学習を続けてきた生徒には, その努力が報わることが具体的な形で実感でき, このことが, 日本語学習の動機を高めることにつながるのではないかと思われる 正規の学校教育における継承日本語学習者の状況のまとめに続き 以下では, 私的機関における継承日本語教育について述べる 公的な援助がない継承日本語教育では, 補習校と継承日本語学校が小 中等教育での継承日本語教育の牽引車の役割を担ってきた 既存の研究で, 継承日本語の生徒のアイデンティティーの形成に補習校が貢献しているという結果 (Chinen & Tucker, 2005) や, 補習校で学習を続ける限り日本語力はゆっくりではあるが伸びていくという結果 ( 片岡 越山 柴田 2005, 片岡 柴田 2011) からもわかるとおり, これらの学校の役割は大きい しかしその一方で, 児童生徒の言語背景が多様化している昨今, これらの 11

学校の設立当初の教育目標に合わない学習者の数が増加の一途をたどり, 既存の教育の改革が提言されている ( 片岡 2003, 藤岡 2002 ) 補習校では, 長期滞在者の数が短期滞在者の数を上回り, 帰国予定の児童 生徒のための母語としての日本語教育だけではなく, 永住する児童 生徒のための継承日本語教育が必要となっている 永住する児童 生徒のためのカリキュラムを開発している補習校もあるが ( カルダー 2008, 片岡 2003), 保護者が子どもの日本語力に合ったコースを選ぶよりも, 帰国予定の児童 生徒のためのクラスを希望するため, せっかく作ったコースも開設されてない学校もある また, 戦前から続く継承日本語学校では, 戦前の学校設立時の教育目標であった日本からの移住者家庭の子弟のための読み書き教育は, 世代が進み 3 世,4 世となり日本語が継承語から外国語にシフトしたため新たな教授法や教材が必要とされている ( ダグラス 片岡 岸本 (2003) さらに戦後に開設された継承日本語学校でも, 補習校や戦前の継承日本語学校と同様のカリキュラムと教授法および教材が, 永住する児童 生徒の教育に適したものではなくなっている 永住する児童 生徒のニーズに合う継承日本語教育を阻む一番の問題は, ほとんどの教師と保護者が国語教育から抜け出せないところにある ( ダグラス 2002, 中島 2002) 継承日本語学校の教師と保護者は, 日本で生まれ, 日本で教育を受けた人がほとんどである つまり自身が体験した日本語教育は母語話者のための国語教育であり, これは, アメリカという異なった社会 文化環境にあって, 英語と日本語という二つの言語が競合する中で育つ子ども達のための日本語教育とは異なるのだが, この点が認識されにくく, 継承日本語教育を国語教育と同一視するきらいがある 初期の読み書き教育つまりリテラシー教育を例にとって, 見てみよう 国語教育が対象とする学習者は, 生後からとぎれることなく日本語と接触する中で日本語を習得し, 学校教育に入る前にすでに基礎的な文法を習得し,6 歳で理解語彙の総量が, およそ 5000~6000 語ある児童 ( 森岡 1951) で, 主たる学習目標は音と字形を合わせる識字教育, 漢字教育, あるいは, 音読が上手にできるようになることである ( ダグラス 2002) 12

国語教育では, 児童が日常生活で日本語を聞いたり話したりする中で習得した語彙がかなりあり, 音で聞くと語の意味がわかるということを前提としている 一方, 継承日本語話者である児童は, 家庭での日本語環境の違いから, 基礎文法および音で聞くと意味がわかる語彙の量にかなりのばらつきがあり, これらをすでに習得したものとして国語の識字教育をすることには無理がある 読みの指導で物語や説明文などを読む時に, そこに出てくる知らない漢字の読み方を習っても, 音で習得している語彙が無ければ, その言葉の意味がわからず, 内容を理解することもできない 日本語を母語として習得した同年齢の児童なら音で習得している語彙でも, 継承日本語児童には音で聞いても意味がわからない語彙があり, またその量も個人差があることを前提として, 話す力, 聞く力を指導する中でこれらの語彙を発達させながら同時にリテラシーも発達させていくというアプローチが必要となる 継承語教育は, お金は無い, 先生は無い, 教室は無い, 教材は無い, ないないづくしの教育 ( 佐々木 2009) といわれてきたが, 最近では, 国語教育からの脱却も含めて, 継承日本語学習者のニーズにあったカリキュラム, 教授法, 教材開発などを含めた継承日本語教育の研究が始まっている 大学の継承日本語教育研究者と継承日本語学校との連携による種々の活動も行われている 筆者らが所属する大学では, 継承語教育のために大学が政府から得た助成金 (National Endowment for the Humanities) および国際交流基金の助成金によって, 継承日本語学校教員のための夏季研修 (2008 年,2009 年,2011 年実施 ) が行われ, 希望者には大学の単位が出された ( この教師研修に関する詳細は後述する ) さらに, 国語教育からの脱却をめざし, 新しいカリキュラム作りをめざしている継承日本語学校に筆者らがアドバイザーとして加わり, カリキュラムデザイン, 教科書作り, 教師研修, 児童 生徒の日本語力の評価に協力し, また保護者に継承日本語の特質と国語教育とは異なる教育の必要性の説明会を行っている このような, 継承日本語学校と大学の研究者との連携は, 一地域に限られた草の根レベルの活動ではあるが, 地域に密着した活動であるがゆえに, 毎週の授業観察を行い, それに基づくアドバイスや 13

詳細な情報交換が行え, お互いが連携して継承日本語教育に当たることができるという利点がある また, ハワイやアメリカ本土の西海岸に比べ, 日本語学校の数が極端に少ない中西部の州では, 大学の継承日本語研究者が, 継承日本語教育を希望する家庭のために, 学習者の日本語力や学習目的に合わせ, オンライン教材を利用した学習者主導型の個人別日本語教育支援システムの構築を提唱している ( 桶谷 田伏 2003) 継承語教育には保護者の参加が不可欠であるといわれているが ( 中島 1998), 保護者を継承語教育のパートナーとする ( 中島 2009) ために, 保護者にアメリカで育つ継承語を日本語とする子どもたちを理解してもらうことを目的とした本 ( 佐藤 片岡 2008) や日系コミュニティー向けの雑誌の記事などの出版物も出てきている ( 片岡 2005, ダグラス 2005, 2009) 継承日本語教育を発展 向上させるためには 継承日本語を教えるための専門的知識を持った教師を育成することも急務の課題である Crandall (2000) は 全ての継承語の教師は 言語的にも文化的にも背景が多岐にわたる子どもたちへの指導法を心得ておかなければならず 教師トレーニングを受ける必要があると述べている しかし アメリカにおいてスペイン語以外の継承語教育研修は少なく (Kono & McGinnis, 2001) そのような研修を困難にさせる要因として Schwartz (2001) は 継承語教育の不十分な理論的基礎 効率的なカリキュラムと教材不足 そして指導法の欠如などをあげている 継承日本語教育に関しても例外ではない 日本語学校の教育的目的や教師研修の必要性を探るため 片岡 古山 越山 (2001) は 南カリフォルニアの日本語学校で教える教師を対象に日本語学園教師会議とアンケート調査を行い その結果を報告書にまとめた それには 多様化した学習者 新しい時代の教材や教え方の問題 あいまいなプロとしての教師像という 3 点についてのまとめがある 報告書の中で片岡ら (2001) は 非日本語環境の中で生活している子どもたちが増え 日本語の力のばらつきが大きくなっているが その子 14

どもたちへの対応は教師個人に任されていること 継承語を教えるための教材や教え方を学ぶ研修の機会が皆無に近いこと そして アンケートの回答からはプロの教育者としての意識が感じられなかったことを指摘している 中島 (2003) は,JHL 教育は学校教育枠外の課外授業であり JHL 教育の現場は専門家不在だということ, つまり 日本語学校の教師は留学生 父母兄妹 コミュニティーの年長者 一時滞在の母語話者などで 専門の知識とトレーニングを受けていない教師で その間で一貫した教育理念やカリキュラム 教授法などの共有は難しいということを述べている 片岡ら (2001) や中島 (2003) に報告されている状況を改善するためにも 教師研修は必須であるが 以下に教員研修に関する最近の動向を報告する 現在アメリカでは 日本語学校で教鞭をとる教員を対象とした研修会 講習会 勉強会 講演会などが開催されている 現在はまだ地域ごとの活動に限られているが, アメリカの西部と東部, 中西部での活動の一例を紹介する 戦前からの継承日本語学校が集中し, 継承日本語学習者が多い南カリフォルニアでは, 加州日本語学園協会 (CAJLS) が連盟加入校のために毎年教師研修会を行い, 外国語スタンダーズ, スタンダーズに基づく文化の教え方, 学習ゴールとオブジェクティブのたて方, 学習の区別化とその指導方法, 話す力を伸ばす指導, アセスメントなどのトピックが扱われ, また年に 2 度勉強会が開かれ, 研修会のトピックをさらに深めて学習したり, アメリカの他の地域での学会に参加したメンバーがその内容を報告したりと活発な活動がなされている (http:/www.cajls.org/07_activities. html より ) また,2003 年には,Northeast Asia Council(NEAC) からの助成金で初の土曜日本語学校会議が開催された (Kataoka & Douglas, 2003) アメリカ東部では, 北東部日本語教師会 (NECTJ) が, 外国語としての日本語または継承語としての日本語の教育に携わる会員のために, 年次学会, および勉強会を開き, 外国語教育のスタンダーズ, 内容重視の教育, 協働学習などのトピックに関する研修の場を提供している (http://www.nectj.com/id9.html) 中西部では, イリノイ州日本語教 15

師会 (IATJ) が補習校, イマージョンプログラム, 日本語の幼稚園の教員のために, 継承日本語教育とはなにか, リテラシー教育, 継承日本語話者のアイデンティティーなどをトピックとして毎年春の研修会を行っている (http://www.cod.edu/people/faculty/satsutan/iatj.html) また 継承日本語教育に関するアプローチや教授法を体系づけて学ぶために 米国初の試みとして夏季日本語学校教員研修会が 南カリフォルニアで開かれた 現在進行している試みとして 以下に研修会の内容を紹介する この研修会は 初回の 2008 年は 7.5 日間 翌年の 2009 年は 6 日間 そして 2011 年には 3 日間に渡って開催された のべ 34 名の土曜日学校の教師が参加し 継承日本語教育の研究に携わっている大学教員が講師として参加した 参加者らの継承日本語教員歴は様々で 1 年未満から 11 年以上という幅広いものだったが 参加動機はほぼ共通して 子どもたちのニーズにあった指導法を学びたい というものだった 3 回の研修会で扱われたトピックは若干異なるが 外国語のスタンダーズとプロフィシエンシーにもとづく言語教育 内容重視 (CBI) のアプローチをもとにした継承日本語教育における学習目標とオブジェクティブのたて方を中心として様々なトピックが扱われた 参加者は講義 ディスカッション ハンズオンアクティビティなど通して 継承日本語教育に適した教え方や教材の作り方を学習した 2008 年と 2009 年に開かれたこの研修会の効果について検証した結果 保護者へのアドバイス CBI やプロフィシエンシーの考え方を応用した教材作り 4 技能を関連づけた学習活動作り 適切な評価方法の4 点において 参加者の自信のレベルが高くなったことが分かった また 継承語の特徴 継承日本語学校の目標 よみの指導 書きの指導 聞く指導 話す指導 漢字の指導 文化の指導の8 項目についての説明も 研修会前は漠然としていたが 研修会後はかなり具体的になり 言語教育の専門用語や概念を用いて それらの概念を使った説明になっていた (Chinen, Douglas, & Kataoka, 2010) また 2008 年の研修会が終わった5ヵ月後に行った追跡調査では CBI に関して 教案を作るときに まず内容から考えるようになった バラバラ感があったクラス 16

活動が いろいろな視野を広げたアプローチの方法をとりながら その課の目標を達成することができるようになった などのコメントがあった 区別化授業というトピックを扱った 2010 年度の研修会の追跡調査では 区別化がクラスの中で一番必要なことで 一人ひとりの子どもに向き合うとき いつも参考になった 日本語力のある生徒とない生徒を一括授業で教える際に それぞれの到達目標を設定できるようになった などのコメントがあった 3 回にわたって開かれたここの研修会は 継承日本語教育に適した教材作成の方法や教え方を学ぶ場を提供することができたといえるだろう しかし 専門知識を持つ教師の育成には 継承日本語教育を体系づけた研修会を今後も定期的に開くことが重要で 参加経験のある参加者のためのリフレッシュコースやさらに研修を積み上げていけるコースなども必要である 4.3. 継承日本語及び継承日本語教育の研究経済的な理由と国土保安上の理由で, 継承語が お荷物 的な扱いから 国の資源 という肯定的な扱いへと初めて変化し, 継承語話者が注目を浴びるようになり, 継承語の研究や教授法やカリキュラムの研究にも進展があった (Brinton, Kagan, & Baucks 2008;,Kondo-Brown & Brown 2008; Peyton, Ranard, & McGinnis, 2001; Heritage Language Journal http://www.heritagelanguages.org/ の諸論文 ) 継承日本語教育研究に関する情報交換の場として, 全米日本語教育学会 (AATJ, 前日本語 日本文学会 ) の中に継承日本語特別研究グループが設置され, オンラインジャーナルの発行や AATJ の学会での継承日本語研究と教育に関する発表のセッションを設けるなどの活動を続けている また継承日本語話者の大学生を対象として, 言語面の研究 ( ダグラス 2010, Kannno, Hasegawa,Ikeda,Ito, & Long 2008, Kuroki, 2005), 書く力の研究 (Takayama, 2011), 学習動機の研究 ( ダグラス 片岡 知念 2008, Nunn, 2006) が行われ, また継承日本語学習者のニーズにあった教育方 17

法や学習活動が提言されてきた (Douglas, 2008a; Kataoka & Douglas, 2003) 継承日本語学校に関しては 日本語教育のアプローチやカリキュラムデザインや学習活動の研究とその結果の発表も行われてきた プロジェクトベースのアプローチ, マルチレベルクラスの指導方法, スパイラルカリキュラム試案, 文化教育などがある ( カルダー 2008,Douglas 2004,2008b; 大山 2004, Schricker & Douglas, 2010) さらに継承日本語教育に必要な情報を提供するための関連分野の研究も広がりをみせている 言語力の発達に関する研究や, 児童 生徒の家庭における言語環境と言語力の関係の研究や継承日本語学習者の学習動機やアイデンティティーの研究や 日本での小学校への体験入学が日本語の発達におよぼす影響を調べた研究がある ( 片岡 越山 柴田 2005, 片岡 柴田 2011, 片岡 2008, 越山 2008, 柴田 2008, ダグラス 2005, ダグラス 片岡 岸本 2003, Chinen, Douglas, & Kataoka, 2011, Chinen & Tucker, 2005) 5. 今後の継承日本語教育にむけて以上現在までの継承日本語教育は 研究と実践面での進展がみられ, また諸地域での活動も増え, 徐々に前進してきているといえる しかしながら, これらは特定の地域, 特定の教育機関に限られているという印象は否めない 今後継承日本語教育がさら前進するためには, 教育の一貫性と, 研究の知見や教育実践の経験を共有していくことが必要ではないかと思われる そのためにはまず,K-16( 幼稚園から大学まで ) の教師間で 継承日本語教育とは何か という根本的な問題に対する共通の理解が必要である 継承日本語教育は, ともすれば日本における日本語母語話者のための国語教育と同一視され, 国語教育のカリキュラムがそのまま使われていることもめずらしくない 生後とぎれることなく日本語が話される環境で育つ日本語母語話者と, アメリカで英語と日本語のバイリンガル環境で育つ継承日本語話者とは, 言語環境や言語習得のプロセスが異なり 18

言語教育のアプローチも異なってしかるべきである したがって教師は, 継承日本語教育と国語教育の違いを理解し, 学習者のニーズにあった教育を提供しなければならない これは, 継承日本語学校教師だけの課題ではない 日本語のイマージョンプログラム ( 幼稚園から高校まで ) や大学における外国語としての日本語プログラムに継承日本語学習者が在籍していることを考えると, 日本語教育に携わる多くの教師が共通して理解していなければいけない教育原理であると思われる また, 保護者の協力なくしては成り立たないといわれる継承語教育では, 保護者にも自身の母語学習経験とは異なる継承日本語教育とは何かということを常に説明し理解を促す必要があると思われる また, 小学校, 中学校, 高校そして大学までの一貫した継承日本語教育を実現するためには, アーティキュレーション ( 連携 ) が欠かせない 前述のように, 継承日本語教育は K-12( 幼稚園から高校まで ) は主に日本語学校や補習校で行われてきているが, 大学に入学した後も継続して日本語の力を伸ばしてく機会があることが望ましい 幼少時から青少年期まで時間をかけて伸ばしてきた日本語の力を, 大学でさらに発展させていく環境作りが必要である 教え方のアプローチや学習活動を工夫することで, 継承日本語学習者を受け入れる体制を整えることが望ましい 現在, 高校と大学の日本語プログラムで継承日本語学習者を受け入れる態勢がどの程度整っているかを調べるプロジェクトが筆者らによって進められている また, 継承日本語教育を発展させるためには, 研究と教育現場が一体となって取組んで行かなければならない つまり, 大学の研究者が研究結果を現場の教師と共有し, 有効的なカリキュラムデザインやアセスメントや教授法等を共同で検討していく体制を整えていく必要がある 日本語のみに限らず, 継承語教育一般においてもそのような共同態勢はまだ数少なく, 継承語教育を推進していく上でも急務とされている分野の一つである アメリカの日本語教育界では 2012 年に, 従来の初中等教育の教師を中心とした National Council of Japanese Language Teacher (NCJLT) 19

と, 高等教育機関の教師を中心とした Association of Teachers of Japanese (ATJ) が一つの組織となり,American Association of Teachers of Japanese (AATJ) が発足した それにより今後,K-16 の間の意見交換がさらに活溌に行われ, 日本語教育に一貫性が生まれることが期待されている AATJ の中の継承日本語特別研究グループも AATJ 発足とともに,K-16 の様々な教育機関で継承日本語教育に携わる教師や研究者に情報 意見交換への参加を促すことをその活動の目標の一つとしている 継承日本語教育に一貫性をもたらすため, このグループの今後の活動が期待される 6. おわりに 1895 年にアメリカ初の日本語学校がハワイ州のマウイに開設されてから 120 年近くが経過する その間に, 継承日本語教育をとりまく環境は大きく様変わりした 継承語が 社会のお荷物 的な扱いから 国の資源 と変化した現在, グローバル社会に貢献出来る継承語話者を育てる, より効果的な継承日本語教育が以前にも増して求められている 継承日本語教育を促進させるためには, 教師 (K-16 の正規の学校と日本語学校の教師 ), 親, 研究者が, 継承日本語教育を支える一つのコミュニティーを構築し, お互いのコミュニケーションを絶やさず, 根本的な継承日本語教育の理念に関して共通の理解を持ち, 学習者に適応した指導や環境作りを目指さなければならい そして, ないないづくし の継承日本語教育から, 少しでも改善された状況を作り出す必要がある それぞれの立場で貢献できる地道な努力が求められているのである Fishman (2001) は, 継承語教育は, 学習者の継承語の力を伸ばすだけではなく, 継承語を使用言語とするコミュニティーの尊厳, そして, その継承語が持つ文化的そして宗教的価値を高めるものであると述べている またさらに, アメリカは言語に長けた社会を築く上で, 言語能力 (competence in languages) を何よりも必要としており, アメリカの資源である多様な継承語がそのような社会構築に確実に一役かうであろうと述べている 20

その一方で, 過去も現在もアメリカには英語を唯一の言語とするというイデオロジーが歴然とあり 英語以外の言語に対する扱いは否定的な扱いと肯定的な扱いの間を振り子のように揺れ動いてきたことも事実である 継承語学校のように正規の教育と切り離されたところで行われてきた継承語教育がこの先マジョリティーの社会に根をはっていくためには, 継承語教育の質の向上が必要であることは言うまでもないことであるが, これに加えて, 正規の教育との接点を見出す必要があるとも考える 限られた例ではあるが 南カリフォルニアでは 加州日本語学園協会が日本語クレジットテストを実施し その協会に加盟している継承日本語学校で学ぶ生徒は, このテストに合格すると高校の外国語の単位を取得できるようになっている ただし これはそれぞれの高校がこのテストを認めることが前提になっていて, すべての高校が単位を出しているわけではない しかしながら, このような地道な努力も正規の学校教育との接点を作るという意味で非常に重要であると考える 今後はその他の方法でも接点を作り出せるように, 個々の学校が個別に試行錯誤するのではなく, 各継承語学校間, ひいては言語の異なる継承語学校間の情報交換も必要となるであろう 引用文献 井川チャールズ (2003) 南加日系社会における日本語教育の今日的課題 羅府新報桶谷仁美 田伏素子 (2003) アメリカ中西部における日本語継承語教育支援システムの構築 -オンライン教材を利用して Association of Teachers of Japanese, Japanese as a Heritage Language SIG 発表大山全代 (2004) 高校レベルのマルチレベル/ マルチエイジカリキュラム : 学習者の多様性を生かしたクラス環境作り Association of Teachers of Japanese 発表 21

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