学校給食摂取基準の活用 学校給食摂取基準は 平成 30 年 8 月 1 日から施行された 本基準は全国平均を示したものであるから その 考え方を踏まえた上で 各学校の実態に応じた摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) を作成する必要がある EER 算出シートに数字を打ち込めば EER( 推定エネルギー必要

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2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

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学校給食摂取基準の策定について(報告)

学校給食実施基準施行通知

平成19年度学校保健統計調査結果

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

平成19年度学校保健統計調査結果

スライド 1

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発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) を前年度と比較すると 男子は 5~8,10,11,16 歳で 女子は 7~12,15,17 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 7 減少 4 女子は増加 8 減少 3) 全国平均と比較すると 男子は全ての年齢で 女子は 9~11 歳を除

小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

発育状態調査 身長 身長 ( 平均値 ) は 前年度と比較すると 男子は 12~15 歳で前年度を上回り 女子は 5,6,8,9,14,16 歳で前年度を上回っている (13 年齢区分中 男子は増加 4 減少 6 女子は増加 6 減少 5) との比較では 男子は全ての年齢で 女子は 5,9 歳を除い

(2) 体重 平成 25 年度の幼稚園 小学校 中学校及び高等学校における幼児 児童及び生徒の体重 ( 県平均値 以下同じ ) については次のとおりである 1 前年度との比較 ( 表 2) 男子の体重は 6 歳 11 歳 13~17 歳で 前年度の同年齢より.2~2. kg増加しており 最 も増加し

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1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

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保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

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目次 第 Ⅰ 章 割合計算の基礎 割合計算の演習 Ⅰ 3. 例題 2 < 練習問題 (1)> 4. 割合計算演習 Ⅱ( 割合を求める ) 3 < 練習問題 (2)> 4 5. 割合計算の演習 Ⅲ 5 < 練習問題 (3)> 6 割合計算の基礎まとめ 7 第 Ⅱ 章 栄養士のための割合

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日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

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学校給食摂取基準の策定について(報告)

カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1


4 給食従事者数 (11 月 1 日現在 ) 11/1 現在の給食に従事する職員 ( 育休等による代替職員の場合は 11/1 時点で勤務している者 ) について 施設側 委託先別に 職種ごと 常勤 / 非常勤の員数を記入してください 常勤とは 当該施設において他の正規職員と同様な勤務形態にある場合を

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栄養管理報告書 ( 保育所 幼稚園等 ) 保健所長 殿 年 月分 施設名所在地管理者名電話番号 Ⅰ 施設種類 Ⅱ 食事区分別 1 日平均食数及び食材料費 Ⅲ 給食従事者数 1 幼稚園 2 保育所 ( 認可 ) 3 認定こども園 4 その他 ( 認証保育所等 ) 食数及び食材料費 施設側 ( 人 )

Ⅲ データの入力 栄養報告 ( 週報 ) ファイル を構成する入力シートとデータの入力について説明します 1 シートの構成メニュー入力シート (1 日目 ) ~ 入力シート (5 日目 ) 1 日目 ~ 5 日目 報告年月 報告対象学校名等の基本情報を入力するシートです また 入力データの集計や報告

4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

3 12 西中学校給食予定献立表 冬野菜のオムレツ味噌ドレッシングサラダじゃこ豆ぶどうゼリー TEL: kcal トンテキほうれん草ゅうまい春雨とひじきの和え物レモンゼリー ニラ玉焼き枝豆とコーンのサラダフルーツヨーグルト 39.g 2.g キャベツのイタリアンサラダりんご缶 キャベ

2214kcal 410g 9.7g 1 Point Advice

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食育って, ご存知ですか? 食育とは 生きる上での基本であって, 知育, 徳育及び体育の基礎となるべきもの 様々な経験を通じて 食 に関する知識と 食 を選択する力を習得し, 食育の推進に取り組んでいます! 28 年 ( 平成 2 年 )3 月に 福山市食育推進計画,213 年 ( 平成 25 年

青年期を対象とした携帯食事手帳システムの提供 目 次 1. 目的 1 2. 携帯食事手帳システムの概要 1 (1) システムの基礎データ 1 (2) 利用方法 1 (3) 確認できる情報 1 3. 携帯食事手帳利用の手引き 2 (1) 携帯食事手帳 (QRコード) 3 (2) 料理選択の仕方 4 (

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結果の概要 1 栄養 食生活に関する状況 (1) 野菜の摂取状況 20 歳以上における 1 日の野菜摂取量の平均値は 288.1g 性別にみると男性 297.1g 女性 281.1g 年齢階級別にみると 男女ともに 40 歳代で最も少ない 図 1 野菜摂取量の平均値 (20 歳以上 性 年齢階級別

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平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(概要)

私の食生活アセスメント

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1カップ 74gあたり エネルギー (kcal) 57 ビタミンE(mg) 14 ブイ クレスゼリーカップタイプりんご水分 (g) 59 ビタミンB1(mg) 2.1 たんぱく質 (g) 0.5 ビタミンB2(mg) 2.1 脂質 (g) 0 ナイアシン (mg) 10.5 炭水化物 (

次世代ヘルスケア産業協議会第 17 回健康投資 WG 資料 6 職場における食生活改善の質の向上に向けて 武見ゆかり第 6 期食育推進評価専門委員会委員 ( 女子栄養大学教授, 日本栄養改善学会理事長 )

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結果の概要

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1カップ 74gあたり 6311 エネルギー (kcal) ブイ クレスゼリーカップタイプりんご水分 (g) たんぱく質 (g) 脂質 (g) ナイアシン (mg) 1.5 炭水化物 (g) ナトリウム (mg) 22 ビタミンB12(μg)


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調査結果の概要

第 4 章 地域における食育の推進 1 栄養バランスに優れた 日本型食生活 の実践 ごはんを中心に 魚 肉 牛乳 乳製品 野菜 海藻 豆類 果物 茶など多様な副食などを組み合わせて食べる 日本型食生活 は 健康的で栄養バランスにも優れている 農林水産省では 日本型食生活 の実践等を促進するため 消費

平成25~27年度間

Ⅰ 調査の概要

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2.調査結果の概要

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スライド タイトルなし

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Microsoft Word - P  第1部(第1表~第6表)

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2.調査結果の概要

実践内容 (1) 視点 1 教育活動全体で推進できるよう 指導体制を整備し 食に関する指導の充実 を図る 1 食育全体計画の整備既存の食育全体計画を見直し 教科 学級活動における食に関する指導の時間を確保するとともに 栄養教諭とのティーム ティーティング ( 以下 TT) についても明記した また

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(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

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目次 < 栄養表示の特徴 > 栄養表示の特徴 1 < 健康 栄養政策と栄養表示の関係 > 健康 栄養政策と栄養表示基準 2 健康 栄養政策と栄養表示 3 健康 栄養政策と栄養表示の関係 4 21 世紀における国民健康づくり運動 ( 健康日本 21) の具体的な推進について 5 < 栄養表示の重要性の

平成11年度学校保健統計調査結果(愛知県分)

ちゃんと (450~650kcal 未満 ) 栄養バランスを考えて ちゃんと 食べたい女性や中高年男性の方向けしっかり (650~850kcal) 栄養バランスを考えて しっかり 食べたい男性や身体活動量の高い女性の方向け スマートミールの基準 1 エネルギー量 ( カロリー ) は 1 食あたり

平成 27 年度全国体力 運動能力 運動習慣等調査愛媛県の結果概要 ( 公立学校 ) 調査期間 : 調査対象 : 平成 27 年 4 月 ~7 月小学校第 5 学年 ( 悉皆 ) 中学校第 2 学年 ( 悉皆 ) 男子 5,909 人男子 5,922 人 女子 5,808 人女子 5,763 人 本

図 24 世界の高齢化率の推移 資料 :UN,World Population Prospects: The 2012 Revision ただし日本は 2010 年までは総務省 国勢調査 2015 年以降は国立社会保障 人口問題研究所 日本の将来推計人口 ( 平成 24 年 1 月推計 ) の出生中

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2 11. 脂肪 蓄 必 12. 競技 引退 食事 気 使 13. 日 練習内容 食事内容 量 気 使 14. 競技 目標 達成 多少身体 無理 食事 仕方 15. 摂取 16. 以外 摂取 17. 自身 一日 摂取 量 把握 18. 一般男性 ( 性. 一日 必要 摂取 把握 19. 既往歴 図

24013 パインアップルすりおろし パインアップルすりおろし エネルギー (kcal) 68 ナトリウム (mg) 10 水分 (g) 83 カリウム (mg) 81 たんぱく質 (g) 0.4 ビタミンC(mg) 48 炭水化物 (g) 16.3 食塩相当量 (g) 0 エネルギー

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(3) 生活習慣を改善するために

コラム授業力の向上について食育では 生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性を育んでいきます そのためには 教師の授業力が一つの鍵になることはいうまでもありません そこで どのような授業を行えば 子どもたちに望ましい生活習慣等が定着するのか 小学校 中学校授業評価システムガイドライン ( 平成

エネルギーの食事摂取基準 : 推定エネルギー必要量 (kcal/ 日 ) 男性 女性 年齢 身体活動レベル 身体活動レベル Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 15~17 2,450 2,750 3,100 2,000 2,250 2,500 18~29 2,250 2,650 3,000 1,700 1,95

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(5) 食事指導食事指導は 高血圧の改善 耐糖能障害の改善 代謝異常の改善について 各自の栄養状況 意欲などに応じて目標をたて これを達成できるよう支援する形で行った 開始時点で 食事分析を行い 3ヶ月ごとに 2 回進捗状況を確認する面接を行った 1 年後に終了時点の食事分析を行った 各項目の値の増

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

都市部中学 3 年生女子の食事調査 井ノ口美香子 * 今野はつみ * 德村光昭 * 川合志緒子 * 田中祐子 * 康井洋介 * 糸川麻莉 * 近年, 中学生女子における行動上の問題として やせ志向, 一方, 栄養上の問題ではやせ, および肥満の両面が指摘されている 食生活のあり方は生涯の健康づくりに

平成 28 年度全国体力 運動能力 運動習慣等調査愛媛県の結果概要 ( 公立学校 ) 調査期間 : 調査対象 : ( 悉皆 ) 平成 28 年 4 月 ~7 月 小学校第 5 学年 中学校第 2 学年 男子 5,688 人 女子 5,493 人 男子 5,852 人 女子 5,531 人 本調査は

講演

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目次 1, 研究背景 1-1, ダイエッに対する関心 1-2, 現代の食生活の問題 2, 肥満になる原因 2-1, 肥満になるメカニズム 2-2, 原因 3, 食事パターンによる比較 3-1, 食事パターンの構造と栄養素等の摂取状況の研究 4, 研究目的と分析手順 4-1, データ概要 4-2, 用

【0513】12第3章第3節

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学校給食摂取基準の活用 学校給食摂取基準は 平成 30 年 8 月 1 日から施行された 本基準は全国平均を示したものであるから その 考え方を踏まえた上で 各学校の実態に応じた摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) を作成する必要がある EER 算出シートに数字を打ち込めば EER( 推定エネルギー必要量 ) は算出できるが 専門職 ( 管理栄養士 栄養士 ) である以上 算出方法をしっかりと理解しておく必要がある 以下の説明を参考に 適切な栄養管理に努 めていただきたい 1 学校給食摂取基準 1.1 従来の学校給食摂取基準との違い これまでの 学校給食摂取基準 との変更点は以下の通りである (1) 算出のエビデンスとして これまでは 文部科学省が行った 児童生徒の食生活等の実態調査 や独立行政 法人スポーツ振興センターが実施した 児童生徒の食事状況等調査 ( 有効回答数 4,662) 等が用いられてい たが 今回の改正では 厚生労働省科学研究費補助金により行われた循環器疾患 糖尿病等生活習慣病対 策総合研究事業 食事摂取基準を用いた食生活改善に資するエビデンスの構築に関する研究 及び 食事状 況調査 ( 有効回答数 910) が用いられた (2) 前回改正の 学校給食摂取基準 は 日本人の食事摂取基準 (2010 年版 ) を参考としていたが 今回は 日本人の食事摂取基準 (2015 年版 ) ( 以下食事摂取基準 ) の考え方を踏襲した (3) 推定エネルギー必要量の算出に当たっては これまでは 年齢区分 (6~7 歳 ) (8~9 歳 ) (10~11 歳 ) (12~14 歳 ) の各年齢の学校保健統計調査から得た平均身長から標準体重を算出し 生活活動レベル 6~7 歳以下は 1.65 それ以上の年齢区分では 1.7 を用いて算出していた 今回の改正では 年齢区分の内の高い 年齢である 7 歳 9 歳 11 歳 生徒は 13 歳の平均身長から求めた標準体重に食事摂取基準の生活活動レベ ル Ⅱ( ふつう ) を用いて算出された (4) たんぱく質はエネルギー比で 12~20% の範囲で示されていたが 13%~20% に 脂質は 25~30% が 20~ 30% と食事摂取基準の目標量となった (5) 各栄養素等の算出に当たっては 家庭において不足する栄養素の補填という従来の考え方から 昼食必要 摂取量 ( 昼食必要摂取量 = 食事摂取基準の目標量又は推奨量 - 昼食以外の栄養摂取量 ) を求め それを勘 案し 基準値が定められた (6) マグネシウムが配慮すべき栄養素から 学校給食摂取基準 の表中の栄養素となった 1.2 エネルギー及び栄養素の優先順位 単独調理場共同調理場等 ( 以下各学校等 ) における学校給食摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) 作成に当たっての 優先順位は次の通りである ❶ エネルギー ➋ たんぱく質 ➌ 脂質 ➍ その他の栄養素 ( 推定平均必要量 推奨量または目安量が策定さ れている栄養素 ) ビタミン A B 1 B 2 C カルシウム 鉄 マグネシウム 亜鉛等 ➎ その他の栄養素 ( 目標量 が策定されている栄養素 ) 食物繊維 ナトリウム ( 食塩 ) 等 1.3 各栄養素等の求め方 ❶ 推定エネルギー必要量の求め方 推定エネルギー必要量 (kcal/ 日 ) = 基礎代謝量 (kcal/ 日 ) 身体活動レベル 1 + エネルギー蓄積量 (kcal/ 日 ) 表 3 の A 基礎代謝量 (kcal/ 日 ) = 基礎代謝基準値 (kcal/kg 体重 / 日 ) 表 3 の B 体重 (kg) 2 給与エネルギー目標量 = 推定エネルギー必要量 (kcal/ 日 ) / 3 3 1 身体活動レベルは 日本人の食事摂取基準 の身体活動レベル Ⅱ( ふつう ) を用いる 2 体重は 平均体重を用いると集団の肥満 痩身者の割合に左右される可能性があるため 性 年齢別の身長の中央値から表 4 を用いて身長別標準体重を算出し使用する 3 学校給食は 1 日 3 食のうちの 1 食であるため 給与率は 1 日の 1/3 とする

表 1 学校給食のエネルギー算出 年齢 ( 歳 ) 身体活動レベル 5 1.45 身長 ( 平均値 )(H28 学校保健統計調査 ) 4 月 1 日現在の満年齢 5 歳 ( 幼稚園 ) 標準体重 基礎代謝量 推定エネルギー必要量 男子 110.4 18.9 1,037 1,513 女子 109.4 18.5 965 1,410 推定エネルギー 必要量男女平均 学校給食のエネルギー 1,461 490 6~ 7 1.55 7 歳 ( 小 2) 男子 122.5 24.0 1,062 1,661 女子 121.5 23.4 979 1,537 1,599 530 8~ 9 1.60 9 歳 ( 小 4) 男子 133.6 30.4 1,240 2,009 女子 133.4 30.0 1,148 1,867 1,938 650 10~11 1.65 11 歳 ( 小 6) 男子 145.2 38.4 1,438 2,412 女子 146.8 39.0 1,358 2,271 2,342 780 12~14 1.70 13 歳 ( 中 2) 男子 159.9 49.0 1,518 2,601 女子 154.8 47.2 1,396 2,398 2,499 830 15~17 1.75 16 歳 ( 高 2) 男子 169.9 59.6 1,610 2,828 女子 157.5 52.0 1,315 2,311 2,569 860 学校給食摂取基準策定に関する調査研究協力者会議報告 ( 平成 30 年 3 月 ) 表 1 は 男女の比率が 1:1 の場合であるが 各学校等で男女差が大きい場合は男女の比率も考慮する必要 がある < 留意事項 1> 給与エネルギー目標量の定め方 1 の (3) で記述した通り 表 1 において 8~9 歳の推定エネルギー必要量は 9 歳の男女の平均値のみで算出されており 8~9 歳の年齢区分のエネルギーは 650kcal となっている 一方 従来の学校給食摂取基準の算出方法に従い 8 歳の男女の平均値を加えて推定エネルギー必要量を算出すると以下の通り その値は 609kcal と 40kcal 少ない値となる 8 歳男子 (40.8( 基礎代謝基準値 kcal/ 体重 / 日 ) 27.0( 標準体重 kg)) 1.6( 身体活動レベル )+ 25( エネルギー蓄積量 kcal/ 日 ) = 1,788kcal 8 歳女子 (38.3( 基礎代謝基準値 kcal/ 体重 / 日 ) 26.4( 標準体重 kg)) 1.6( 身体活動レベル )+ 30( エネルギー蓄積量 kcal/ 日 ) = 1,648kcal 9 歳男子 2,009kcal 9 歳女子 1,867kcal 8~9 歳の平均 1,828kcal / 3 = 609kcal (8~9 歳の給与エネルギー目標量 ) このように 計算の方法の違いにより 40kcal の差が生じることとなり どちらに合わせたらよいか悩む栄養教諭等は多い 現状 650kcal 程度提供していて残食が少ないのなら 児童の活動量が高く 身体活動レベルは 1.7 程度と考えられることから 低い値に合わせるのではなく 児童の実態等に合わせることが望まれる 児童又は生徒一人一回当たりの学校給食摂取基準 の枠外には 注 2 この摂取基準は 全国的な平均値を示したものであるから 適用に当たっては 個々の健康及び生活活動等の実態並びに地域の実情等に十分配慮し 弾力的に運用すること と示されており 給与栄養目標量の設定は管理栄養士 栄養士の裁量に任せられている

< 留意事項 2> 副食の配食量の定め方学校給食は 小学校は中学年 中学校は 2 学年の給与栄養目標量に基づき献立作成を行うため 主食 牛乳を除いたエネルギー量の率で案分し 副食材料の購入量及び配食量を決定する この倍率は 米飯やパンの量及び回数によって異なるので 各学校等の実態に合わせて計算する 副食の配食量 (kcal) = ( 年齢区分での給与エネルギー目標量 )-( 主食のエネルギー + 牛乳のエネルギー ) 中学年を 1 とすると 低学年 倍 高学年 倍 中学校 2 年を 1 とすると1 年 倍 3 年 を目安とする ( 学校等によって異なるが 倍の例示としては 低学年 0.85 倍 高学年 1.2 倍など ) ➋ たんぱく質 ➌ 脂質給与栄養目標量の求め方 推定エネルギー必要量から エネルギー比率でたんぱく質 脂質の給与量を定める < エネルギー産生バランス > P: たんぱく質 13~20% F: 脂質 20~30% C: 炭水化物 50~65% < 注意 > 脂質を抑えるために牛乳をカットしないこと! 脂質については 今回の改正でエネルギー比率が 20~30% となった 過去に 30% 以下 としたところ 牛乳を付けない学校等が増え 児童生徒のカルシウムの摂取不足が懸念された その反省から平成 7 年以降は 25~30% としてきている 成長期の児童生徒のカルシウム摂取のため 学校給食における牛乳の飲用は極めて重要性な役割を担っている 下の値に合わせるために牛乳をカットすることのないよう注意していただきたい ➍その他の栄養素 ( ビタミン A B 1 B 2 C カルシウム 鉄 マグネシウム 亜鉛) ➎その他の栄養素 ( 食物繊維 ナトリウム ( 食塩相当量 ) の給与栄養目標量の求め方 < 留意事項 3> 給与栄養目標量を定めるに当たっての配慮 1) 給与栄養目標量を算出するにあたっては 児童生徒の栄養摂取状況を把握したうえで 家庭で不足する栄養素を学校給食で補うように努める必要がある しかし 学校給食のみで補填することには限界があるため 家庭に対する啓発や連携に努める必要がある 2) 推奨量は 97~98% の人が充足する値であることや加熱による損耗等を考慮して 図 1 のとおり 推奨量よりやや高めの値を目指すこととする 耐用上限量は 過剰摂取によって健康障害のリスクが高まる値であるから なるべく近づかないようにする 図 1

1 ナトリウム ( 食塩相当量 ) 図 2 のとおり ナトリウム ( 食塩相当量 ) の摂取は調査した学年 男女を問わず目標量に適合しない者の率が極めて高い値を示しており 生活習慣病予防の観点からも 摂取減に努めることは重要である そのため 学校給食摂取基準では 男女の目標量を平均し その 33% 未満を基準値としている さらに家庭に対する摂取を抑制するための啓発が求められている 2 カルシウム家庭での摂取量が著しく少ないため 昼食必要摂取量を踏まえ 1 日の推奨量の 50% を基準値としている 可能な限り学校給食で補填するとともに 家庭に対するカルシウムの摂取増に向けた啓発が求められている 3 鉄鉄は摂取しづらい栄養素であり 昼食必要摂取量を充足するには限界があることから 男女の推奨量を平均し 1 日の推奨量の児童は 40% 生徒は 1/3 を基準値としている 更に可能な限り家庭の不足分を補うとともに 家庭に対する鉄の摂取増に向けた啓発が求められる なお 小学校高学年女子の鉄については月経なし 中学生以上の女子は月経ありの推奨量が用いられている 4 ビタミン A 推定平均必要量以下の者は 給食のある日は 30% 以下であるが 給食のない日は 40% 以上となっている このため幼児 児童 生徒共に1 日の推奨量の 40% を基準値としている 5 ビタミン B 1 推定平均必要量以下の不足者が多い上にビタミン B1 が日本人にとって欠乏しやすい栄養素であることを考慮し 1 日の推奨量の約 40% を基準値としている 6 ビタミン B 2 推定平均必要量以下の不足者は 給食のある日は 10% 程度であるが 給食のない日は 30~40% いるため 1 日の推奨量の約 40% を基準値としている 7 ビタミン C 推定平均必要量以下の不足者は 給食のある日は 25% 程度 給食のない日は 35~40% と不足傾向が見られる しかし 望ましい献立としての栄養バランスの観点から 1 日の推奨量の 1/3 を基準値としている 8 食物繊維目標量に適合していない者は 給食のある日で 45% 程度 給食のない日は 65% 程度と大幅に不足している このため 1 日の目標量の 40% 以上を基準値としている 9 マグネシウム推定平均必要量以下の不足者は 小学校においてはほとんど見られないが 中学校男子において若干見られるため 小学生は1 日の推奨量の 1/3 中学生は40% を基準値としている このことから 従来の 学校給食摂取基準 の摂取に配慮すべき栄養素から 表中の基準値とされた 10 亜鉛推定平均必要量以下の不足者は ほとんど見られないことから 1 日の推奨量の 1/3 を基準値とし 学校給食摂取基準 の摂取に配慮すべき栄養素としている

図 2 習慣的な栄養摂取量の状況 出典 : 学校給食摂取基準策定に関する調査研究協力者会議報告 ( 平成 30 年 3 月 ) 注 : 図 2 は 率が高いほど食事摂取基準の目標量又は推定平均必要量に適合していない者が多いことを示している

2 各児童生徒に応じた配食の工夫 1で算出した推定エネルギー必要量 (EER) はあくまでも 各学校等の平均値であり 学年 学級が同じでも 児童生徒の性 体格 活動量は異なり 個々の児童生徒にとってエネルギーや栄養素の必要量は同一ではない このためEERによって児童生徒をグループ化し 主食の量で調節するなどの工夫が必要である ( 図 3) この際 たんぱく質 脂質はエネルギー比率で求めてあるため 目標量の範囲 ( たんぱく質 13~20% 脂質 20~ 30%) から外れる場合は主菜の量で調節する必要がある ( 表 2) 表 2 エネルギーの増減によりエネルギー比が増減する例 図 3 米飯の盛り付け例 3 ハイリスク者に対する個別対応および指導 学校保健安全法 9 条には児童生徒に 健康上の問題があると認めるときは 遅滞なく 当該児童に対して必要な指導を行うとともに 必要に応じ その保護者に対して必要な助言を行うものとする と示されている 身体測定の結果から 肥満 ( 肥満度 * 20% 以上 ) や痩身 ( 肥満度 * -20% 以下 ) または習慣的な給食の摂取状況から 食べ足りない や 食べ過ぎ の児童生徒を抽出し 成長曲線から大きく外れる児童生徒は個別指導の対象となる 児童生徒本人や保護者への改善指導および食育につなげ ハイリスク者の改善を図ることは 児童生徒の現在及び将来の健康を担う栄養教諭 学校栄養職員の重要な職務である * 体重の評価 :18 歳以上はBMIで行うが,17 歳以下は肥満度で行う ( 実測体重 (kg)- 身長別標準体重 (kg)) 肥満度 (%)= 100(%) 身長別標準体重 (kg) 図 4 児童の肥満度分布例

4 食品構成表について 食品構成表は 平成 15 年の改正以降 実施基準には示されず 調査研究協力者会議の報告書の中に参考として示されてきたが 今回は削除されている 食品構成表はあくまで 各地域や学校等の実態に合わせて作成されるべきものである上に 食品構成表を作成しなければ 学校給食費の算定も難しい 近年は 学校給食費の公会計化が求められており 給食費算定の基礎資料を策定する際に食品構成表は必須の資料となるはずである よって 次に食品構成表作成の手順を示すので参考にしていただきたい (1) 食品群別荷重平均栄養成分表を作成する 1 食品群別荷重平均栄養成分表の作成 1 年間に使用した食材料について 食品別に合計量を求める ( 小 中別献立の場合は別に作成 ) 2 食品別に純使用量 ( 可食部重量 ) を求める 3 食品群別に 純使用量 ( 可食部重量 ) の構成比を求める例 ) 緑黄色野菜 : にんじん 36% ほうれんそう 15% さやいんげん 8% こまつな 8% かぼちゃ 7% トマト 7% チンゲンサイ 6% ピーマン 5% こねぎ 4% ブロッコリー 2% サヤエンドウ 2% 4 食品別に栄養計算を行い その合計を求め 一覧表にする 例 ) 緑黄色野菜 100g: エネルギー〇 kcal たんぱく質〇 g 脂質〇 g (2) 食品群別使用量を定める 1 食品群別ごとの1 年間の総使用量を1 年間の延べ食数で割る 例 ) 緑黄色野菜年間純使用量 ( 可食部重量 )50,022kg 延食数 2,394,000 食 21g( 一人一回当たりの使用量 ) 2 一人一回当たりの使用量を (1) の4で栄養計算する 給与栄養目標量に合わない場合は 食品群別使用量や構成比を微修正する (3) 給食費を算定する 1 各食品群別の年間総購入金額を年間購入量で割る 例 ) 緑黄色野菜総購入金額 16,020,760 円 年間購入量 ( 廃棄量含む )55,244kg=kg 当たり購入単価 290 円 2 各食品群別の一人一回当たりの金額を計算する例 ) 緑黄色野菜一人一回当たりの使用量 ( 廃棄量含む )23.4g 6 円 70 銭 < 参考 > 純使用量の使用量への換算方法可食歩率 =100- 廃棄率使用量 =( 純使用量 可食部率 ) 100 3 食品群の総計が給食費となる給食費値上げの場合は想定される物価上昇率や 内容改善分を上乗せする 文責 田中延子

< 参考資料 > 表 3 基礎代謝基準値 エネルギー蓄積量 ( 年齢 性別 ) エネルギー蓄積量 A 基礎代謝基準値 B (kcal / 日 ) (kcal/kg 体重 / 日 ) 年齢 男性 女性 男性 女性 3~5 歳 10 10 54.8 52.2 6~7 歳 15 20 44.3 41.9 8~9 歳 25 30 40.8 38.3 10~11 歳 40 30 37.4 34.8 12~14 歳 20 25 31.0 29.6 15~17 歳 10 10 27.0 25.3 厚生労働省 日本人の食事摂取基準 2015 年版 表 4 身長別標準体重を求める係数と計算式 男子 女子 年齢 係数 a b 年齢 係数 a b 5 0.386 23.699 5 0.377 22.750 6 0.461 32.382 6 0.458 32.079 7 0.513 38.878 7 0.508 38.367 8 0.592 48.804 8 0.561 45.006 9 0.687 61.390 9 0.652 56.992 10 0.752 70.461 10 0.730 68.091 11 0.782 75.106 11 0.803 78.846 12 0.783 75.642 12 0.796 76.934 13 0.815 81.348 13 0.655 54.234 14 0.832 83.695 14 0.594 43.264 15 0.766 70.989 15 0.560 37.002 16 0.656 51.822 16 0.578 39.057 17 0.672 53.642 17 0.598 42.339 * 身長別標準体重 (kg)=a 実測身長 ( cm )-b : 文部科学省スポーツ 青少年局学校健康教育課監修 日本学校保健会編 児童生徒の健康 診断マニュアル ( 平成 27 年度改訂版 ) 表 5 ナトリウムの摂取量 ( 食塩相当量 g)(g/ 日 ) 目標量 (2015 年版 ) 給食のある日 給食のない日 性別 男子 女子 男子 女子 男子 女子 10 歳 6.5 未満 7.0 未満 8.6 8.4 8.4 8.3 13 歳 8.0 未満 7.0 未満 9.0 8.8 9.0 8.2 厚生労働省 日本人の食事摂取基準 2015 年版

表 6 児童又は生徒一人一回当たりの学校給食摂取基準 学校給食実施基準 ( 平成 30 年 7 月 31 日改正 ) 表 7 学校給食の標準食品構成表 ( 幼児 児童 生徒 1 人 1 回当たり 学校給食における児童生徒の食事摂取基準策定に関する調査研究協力者会議 ( 平成 23 年 3 月 )