Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd. がんに対する核酸医薬品の開発 Current status of development of oligonucleotide therapeutics for cancer 井上貴雄 1 2 / 柴田識人 Takao Ino

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するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

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Current status of development of oligonucleotide therapeutics for cancer 井上貴雄 1 2 / 柴田識人 Takao Inoue Norihito Shibata 国立医薬品食品衛生研究所遺伝子医薬部部長 1 国立医薬品食品衛生研究所生化学部室長 2 核酸医薬品 sirna oligonucleotide therapeutics antisense oligonucleotides sirna therapeutics アプタマー CpGオリゴ aptamer CpG oligodeoxynucleotides がんゲノム医療の推進を背景に, がん年, 修飾核酸技術の進展などにより難治性疾患や遺伝性疾治療の新たなモダリティとして核酸医薬患を対象にした核酸医薬品が次々と承認されており, 高い品が注目されている 現在のがん治療薬開発は低分子医薬治療効果が得られていることから, アンメットメディカル品や抗体医薬品が主流であるが, これらのモダリティでは, ニーズの高い疾患に対する有望なモダリティとして認知さたとえば酵素活性のない細胞内分子を標的にすることは困れつつある がんを対象にした核酸医薬品も盛んに開発さ難であり, 有望と考えられるターゲット分子があっても創れており, 臨床段階にあるものも多数存在する 今後, 核薬が難しいケースがあった 一方, やsiRNA 酸医薬品が主要ながん治療薬として治療成績の向上に貢献に代表される核酸医薬品はRNAを標的にすることから, すると期待される 原理的にすべての分子を標的にすることが可能である 近 ligonucleotide therapeutics have been developed extensively over the past few decades and are emerging as the third platform (after small molecules and biologics) for drug development. So far, eleven oligonucleotide therapeutics have been approved for clinical use and more than 200 oligonucleotide therapeutic candidates are currently in clinical development. In this review, we would like to introduce the current status of development of oligonucleotide therapeutics, such as antisense oligonucleotides, sirna, mirna, aptamer, and CpG oligodeoxynucleotides, and discuss the usefulness and superiority of oligonucleotide therapeutics for cancer therapy. はじめに 核酸医薬品の分類 表 1 78 がん分子標的治療 Vol.18 No.1

表 1 2 表 1 2 表 1 核酸医薬品の分類 ( 臨床試験以降の段階にある核酸医薬品を抜粋 :2020 年 2 月現在 ) sirna mirna デコイアプタマー CpG オリゴ 構造 1 本鎖 DNA/RNA 2 本鎖 RNA 2 本鎖 RNA 2 本鎖 DNA 1 本鎖 DNA/RNA 1 本鎖 DNA 塩基長 14-25 20-25 20-25 20 程度 26-45 20 程度 標的 pre- mirna 蛋白質 ( 転写因子 ) 蛋白質 ( 細胞外 / 細胞表層蛋白 ) 蛋白質 (TLR9) 作用部位 細胞内 ( 核内, 細胞質 ) 細胞内 ( 細胞質 ) 細胞内 ( 細胞質 ) 細胞内 ( 核内 ) 細胞外 細胞外 ( エンドソーム内 ) 作用機序 RNA 分解スプライシング制御 mirna 阻害 分解 mirna の補充転写阻害蛋白質の機能阻害自然免疫の活性化 表 2 これまでに上市された核酸医薬品 (2020 年 2 月現在 ) 商品名一般名分類 塩基長 (DDS など ) 化学修飾など承認国 / 年標的適応投与 Vitravene fomivirsen 21 US 1998 EU 1999 CMV IE2 CMV 性網膜炎 (AIDS 患者 ) 硝子体内 Macugen pegaptanib アプタマー 28 (PEG) 2 -F 2 -Me US 2004 EU 2006 JP 2008 VEGF165 ( 蛋白質 ) 滲出型加齢黄斑変性症 硝子体内 Kynamro mipomersen (Gapmer) 20 US 2013 ApoB-100 ホモ接合型家族性高コレステロール血症 皮下 Exondys 51 eteplirsen (SS) 30 モルフォリノ核酸 US 2016 Dystrophin pre- デュシェンヌ型筋ジストロフィー 静脈内 Spinraza nusinersen (SS) 18 US 2016 EU 2017 JP 2017 SMN 2 pre- 脊髄性筋萎縮症 髄腔内 HEPLISAV-B (CpG1018) CpG オリゴ 22 US 2017 TLR9 ( 蛋白質 ) B 型肝炎 ( 予防 ) 筋肉内 Tegsedi inotersen (Gapmer) 20 US 2018 EU 2018 TTR 遺伝性 ATTR アミロイドーシス 皮下 npattro patisiran sirna 21 (LNP) 2 -Me US 2018 EU 2018 JP 2019 TTR 遺伝性 ATTR アミロイドーシス 静脈内 Waylivra volanesorsen (Gapmer) 20 EU 2019 ApoCⅢ 家族性高カイロミクロン血症 皮下 Givlaari givosiran sirna 23 (GalNac) 2 -me 2 -F US 2019 ALAS1 急性肝性ポルフィリン症 皮下 Vyondys 53 golodirsen (SS) 25 モルフォリノ核酸 US 2019 Dystrophin pre- デュシェンヌ型筋ジストロフィー 静脈内 がん分子標的治療 Vol.18 No.1 79

表 2 表 2 表 2 図 1B 医薬品の特徴と開発状況 図 1A 図 1A 表 2 1.RNA 分解型 (Gapmer) 図 1B 図 1B 図 1B 表 2 図 2 図 1 A 80 がん分子標的治療 Vol.18 No.1

A Base Base Base 核酸 の構造 CH 3 図 2 =P-S - =P-S - =P-S - DNA 2,4 -BNA/LNA ( 糖部修飾 無 ) ( 糖部 2 位の修飾 ) ( 糖部 2,4 位の架橋型修飾 ) 図 2 表 2 相補結合の強さ 図 2 B 分類 RNA 分解型 (Gapmer) スプライシング制御型 (SS) オリゴ核酸 Gapmer の構造 Mixmer 立体障害 スプライシング 作用機構 標的 RNA 因子 RNase H 切断 標的 RNA 表 2 図 1 医薬品における修飾核酸の配置 ( 例 ) と作用機序 筋ジストロフィー患者 エクソン50の欠失変異 49 51 52 53 Pre- スプライシング 49 51 52 53 ut-of-frame ut-of-frame C 末側が欠失した変異ジストロフィン蛋白 不安定化により分解 筋ジストロフィー患者スプライシング因子 + (eteplirsen) ( 蛋白質 ) 49 51 52 53 スプライシング Pre- 49 52 53 In-frame In-frame 機能を保持した 短鎖 ジストロフィン蛋白 筋機能の回復 図 2 スプライシング制御型の作用機序 : エクソンスキップ療法の例 図 1B 図 1 2. スプライシング制御型 (SS) 図 1B 表 2 がん分子標的治療 Vol.18 No.1 81

sirna 医薬品の特徴と開発状況 表 2 図 3 表 2 表 2 呼吸器 2% 神経変性 3% 内分泌代謝 5% 循環器 6% 自己免疫 炎症 創傷 1% 疼痛 1% 感染症 9% 核酸医薬品 ( 全体 ) その他 眼科 12% がん 31% 遺伝性 希少 16% 神経変性 内分泌代謝 10% 循環器 12% 自己免疫 炎症 感染症 6% 医薬品 疼痛その他 2% 1% 眼科 9% がん 20% 遺伝性 希少 26% 創傷 4% 呼吸器 2% 自己免疫 炎症 4% 感染症 その他 20% sirna 医薬品 眼科 15% がん 26% 遺伝性 希少 15% 図 3 核酸医薬品の対象疾患領域 (2018 年 12 月現在 : 臨床試験以降 ) 82 がん分子標的治療 Vol.18 No.1

目数臨床以降品 140 120 100 80 60 mirna sirna TLR 関連 アプタマーその他 40 20 0 2016 2018 2016 2018 非臨床 + 臨床以降 図 3 図 4 図 4 がんを対象とした核酸医薬品の開発数 図 4 表 3 表 3 1. がんに対する医薬品およびsiRNA 医薬品の開発 表 3 がん分子標的治療 Vol.18 No.1 83

表 3 がんを対象とした核酸医薬品 ( 第 Ⅱ 相試験以降 :2018 年 12 月現在 ) 開発品名分類標的適応臨床試験 apatorsen (ME-Gapmer) HS7 非扁平上皮非小細胞肺がん, 再発性又は不応性転移性尿路上皮がん, 転移性膵臓がん進行性扁平細胞肺がん 終了 INIS-AR-2.5Rx (cet-gapmer) AR 前立腺がん P1/2 終了 danvatirsen (cet-gapmer) STAT3 膵臓がん, 非小細胞性肺がん, 結腸直腸がん 非小細胞性肺がん ( デュルバルマブとの併用 ) trabedersen TGF-b2 再発性または難治性多形神経膠芽腫, 進行性膵がん, 悪性メラノーマ /3 prexigebersen (LNP に封入 ) GRB2 慢性骨髄性白血病急性骨髄性白血病 P1/2 cobomarsen (mirna 阻害 ) mir-155(mirna) 皮膚 T 細胞リンパ腫 imetelstat Telomerase 複合体 ( に含まれる RNA 鎖 ) 骨髄線維症 sig12d-lder sirna KRAS(G12D) 膵臓がん b TargomiR mirna mir-15/107 の補充中皮腫 リンパ腫 P1/2 SD-101 CpG オリゴ TLR9( 蛋白質 ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫 ( 放射線療法との併用 ) 転移性メラノーマ, 頭頸部扁平上皮がん ( ペムブロリズマブとの併用 ) 前立腺がん ( ペムブロリズマブとの併用 ) P1/2 終了 P1/2 再発性および抵抗性の低悪性度濾胞性リンパ腫 ( イブルチニブおよび局所放射線療法との併用 ) P1/2 リンパ腫, 進行性固形がん (epacadostatおよび放射線療法との併用) P1/2 IM-8400 CpGオリゴ TLR9( 蛋白質 ) びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫, ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症 P1/2 終了 IM-2125 CpGオリゴ TLR9( 蛋白質 ) 転移性黒色腫 ( ペムブロリズマブまたはイピリムマブとの併用 ) P1/2 CMP-001 CpGオリゴ TLR9( 蛋白質 ) 悪性メラノーマ P1/2 lefitolimod CpGオリゴ TLR9( 蛋白質 ) 固形がん P3 NX-A12 アプタマー CXCL12( 蛋白質 ) 多発性骨髄腫, 慢性リンパ性白血病膵がん, 結腸直腸がん 終了 P1/2 表 3 84 がん分子標的治療 Vol.18 No.1

2. がんに対するmiRNA 関連医薬品の開発 表 3 表 3 3. がんに対するCpGオリゴの開発 表 3 おわりに がん分子標的治療 Vol.18 No.1 85

謝辞 文献 37 37 37 38 37 50 37 110 72 16 36 86 がん分子標的治療 Vol.18 No.1