この 公 表 資 料 は 当 店 ホームページに 掲 載 しています ホームヘ ーシ アト レス http://www3.boj.or.jp/kagoshima/ 214 年 4 月 9 日 日 本 銀 行 鹿 児 島 支 店 焼 酎 業 界 の 現 状 と 課 題 ( 下 ) ~ 価 格 動 向 および 海 外 展 開 について~ 前 編 では 近 年 の 焼 酎 1 の 需 給 動 向 について 概 観 した 続 編 となる 本 稿 では こうした 需 給 環 境 の 変 化 が 小 売 価 格 や 酒 造 メーカーの 収 益 面 へどのように 影 響 したかをみた 後 業 界 全 体 における 今 後 の 課 題 の 一 例 として 焼 酎 の 海 外 展 開 について 取 り 上 げたい < 概 要 > 焼 酎 の 小 売 価 格 動 向 および 酒 造 メーカーの 収 益 環 境 焼 酎 の 小 売 価 格 は 他 の 酒 類 と 比 べると 一 定 の 価 格 水 準 を 維 持 しているも のの 消 費 者 の 低 価 格 志 向 や 酒 類 販 売 業 者 間 での 競 争 激 化 などを 背 景 として 近 年 低 下 傾 向 にある この 間 燃 料 代 や 原 材 料 費 などの 製 造 コストは 上 昇 し ており 出 荷 価 格 の 引 き 上 げが 困 難 な 中 中 小 メーカーを 中 心 に 収 益 が 圧 迫 されている 先 も 少 なくない こうした 状 況 の 下 各 社 ともにコスト 抑 制 に 努 めているほか 大 規 模 メー カーにおいては 高 付 加 価 値 商 品 の 開 発 等 を 通 じて 利 益 を 確 保 する 動 きが ある また 中 小 メーカーでも ブランド 化 やコスト 抑 制 などによって 利 益 を 確 保 している 先 も 相 応 にあるほか 複 数 社 が 互 いに 協 力 し 商 品 開 発 に 取 り 組 んだり 試 飲 会 を 開 催 したりする 動 きもみられている 焼 酎 の 海 外 展 開 清 酒 が 和 食 ブーム 等 に 乗 じて 年 々 輸 出 量 を 伸 ばしている 中 焼 酎 の 輸 出 量 は 近 年 横 ばい 圏 内 で 推 移 している 海 外 における 焼 酎 の 知 名 度 が 低 いほ か 日 本 と 海 外 との 間 での 蒸 留 酒 に 対 する 捉 え 方 の 違 いなどの 影 響 もあって 焼 酎 の 輸 出 は 伸 び 悩 んでいる 状 況 にある こうした 中 本 格 焼 酎 業 界 でも 輸 出 に 対 する 前 向 きな 動 きもみられてい る その 際 には 1 輸 出 相 手 国 に 応 じた 対 応 2 現 地 の 食 習 慣 なども 踏 まえ た 飲 み 方 の 提 案 3ブランディングなどの 販 売 戦 略 が 重 要 となるであろう また 酒 造 メーカー 間 だけでなく 第 一 次 産 業 食 品 メーカー 外 食 産 業 や 酒 類 販 売 業 者 などとの 幅 広 い(4)コラボレーションも 有 効 ではないだろう か 1 焼 酎 は 旧 甲 類 焼 酎 と 本 格 焼 酎 の2 種 類 に 大 別 でき 鹿 児 島 宮 崎 両 県 では 主 に 後 者 の 本 格 焼 酎 を 生 産 している( 詳 細 は 上 巻 参 照 ) 1
1. 小 売 価 格 動 向 および 酒 造 メーカーの 収 益 環 境 (1) 小 売 価 格 動 向 1 酒 類 別 にみた 小 売 価 格 の 推 移 2 年 度 以 降 における 各 酒 類 の 小 売 価 格 の 推 移 を 消 費 者 物 価 指 数 を 用 いて みると 全 体 として なだらかに 低 下 してきたことがわかる これは 景 気 の 低 迷 や 嗜 好 の 変 化 に 伴 う 消 費 量 の 減 少 などのほか 後 述 する 酒 販 自 由 化 の 影 響 も 受 けていると 考 えられる 個 別 にみると 清 酒 は 一 貫 して 価 格 が 低 下 している 清 酒 以 外 は 7 年 度 ま でなだらかに 価 格 を 下 げた 後 8 年 度 に 原 材 料 価 格 高 騰 に 伴 う 値 上 げに 踏 み 切 って 価 格 が 上 昇 したが その 後 再 びなだらかに 価 格 を 下 げている 足 許 の 価 格 の 水 準 を 比 べてみると 清 酒 は 2 年 度 対 比 で 約 2 割 弱 ビール 発 泡 酒 は 約 5% 程 度 下 落 している 一 方 で 焼 酎 は 28 年 度 の 価 格 引 き 上 げ 幅 が 比 較 的 大 きかったこともあって 2 年 度 とほぼ 同 水 準 で 相 対 的 にみれば 善 戦 し ていることがわかる( 図 表 1) 15 2 年 度 =1 ( 図 表 1) 酒 類 別 にみた 小 売 価 格 ( 消 費 者 物 価 指 数 )の 推 移 1 95 9 85 各 酒 類 の 年 平 均 価 格 (212 年 ) 東 京 都 区 部 鹿 児 島 市 宮 崎 市 焼 酎 ( 本 格 焼 酎 ) 紙 容 器 入 り 1.8L 1,61 円 1,499 円 1,566 円 清 酒 ( 普 通 酒 ) 紙 容 器 入 り 2L 1,2 円 1,15 円 963 円 ビール( 淡 色 ) 缶 <35mL> 入 り 6 缶 1,149 円 1,199 円 1,87 円 発 泡 酒 ( 麦 芽 使 用 率 25% 未 満 ) 缶 <35mL> 入 り 6 缶 793 円 823 円 748 円 清 酒 焼 酎 ビール 発 泡 酒 8 2 21 22 23 24 25 26 27 28 29 21 211 212 年 度 ( 出 所 ) 総 務 省 HP 消 費 者 物 価 指 数 から 日 本 銀 行 鹿 児 島 支 店 が 作 成 2 酒 販 自 由 化 2 年 度 以 降 の 酒 類 小 売 価 格 を 全 体 的 に 押 し 下 げた 一 つの 要 因 に 98~3 年 にかけて 行 われた 酒 販 自 由 化 ( 一 般 酒 類 小 売 業 免 許 の 規 制 緩 和 2 )が 考 えられる 酒 類 販 売 場 数 は 9 年 代 に 一 般 酒 販 店 の 数 が 減 少 したことを 主 因 に 減 少 した 後 98~3 年 の 酒 販 自 由 化 以 降 コンビニエンスストア 量 販 店 ドラッグス トアなどの 増 加 が 牽 引 するかたちで 一 貫 して 増 加 している( 次 頁 図 表 2) 2 具 体 的 には 酒 類 小 売 業 者 の 免 許 に 対 する 規 制 緩 和 を 目 的 として 1998 年 に 閣 議 決 定 され た 規 制 緩 和 推 進 3か 年 計 画 に 基 づき 従 来 存 在 していた 人 口 基 準 ( 販 売 地 域 の 人 口 に 応 じて 免 許 枠 を 決 定 )および 距 離 基 準 ( 申 請 販 売 所 と 直 近 販 売 所 との 間 の 距 離 が 一 定 以 上 離 れていないと 免 許 が 取 れないこと)が 廃 止 された 2
酒 販 自 由 化 に 伴 う 販 売 業 者 の 業 態 変 化 ( 主 に 一 般 酒 販 店 から スーパーマー ケットや 量 販 店 などへのシフト)に 伴 い 配 送 ロットが 大 きくなり 物 流 コス トが 大 幅 に 下 がった このため 販 売 業 者 は お 酒 をより 安 価 に 消 費 者 に 提 供 できるようになった 一 方 消 費 者 サイドも 長 引 く 景 気 低 迷 から 低 価 格 志 向 が 進 み さらなる 顧 客 獲 得 に 向 けて 小 売 業 界 での 値 下 げ 競 争 が 激 化 した 結 果 として 酒 類 全 体 の 販 売 価 格 の 下 落 を 招 いたと 考 えられる この 間 こうした 小 売 価 格 下 落 が 卸 商 社 への 価 格 引 き 下 げ 圧 力 となり さらに 酒 造 メーカー 側 の 出 荷 価 格 も 下 落 しているようである 18, 16, 14, 12, 1, 8, 単 位 : 場 数 4,741 9,956 ( 図 表 2) 酒 類 販 売 場 数 の 推 移 その 他 ( 量 販 店 ドラッグストア 百 貨 店 など) スーパーマーケット コンビニエンスストア 34,522 一 般 酒 販 店 2,142 5,7 5,785 16,548 2,218 14,43 6,14 7,36 36,897 17,164 47,853 6, 4, 2, 112,953 96,69 7,967 71,53 59,284 199 1995 2 25 21 年 度 ( 出 所 ) 国 税 庁 HP 酒 税 課 税 関 係 統 計 資 料 3 甲 乙 混 和 焼 酎 の 影 響 これまで 焼 酎 全 体 の 小 売 価 格 の 動 向 をみたが 当 地 で 主 に 生 産 されている 本 格 焼 酎 に 対 象 を 限 定 すると より 安 価 な 甲 乙 混 和 焼 酎 3 との 競 争 も 価 格 下 落 の 要 因 として 挙 げられることが 多 い 甲 乙 混 和 焼 酎 は 旧 甲 類 焼 酎 ( 連 続 式 蒸 留 焼 酎 )と 本 格 焼 酎 をブレンドした 焼 酎 であり 一 般 に 旧 甲 類 焼 酎 より 高 価 で 本 格 焼 酎 より 安 価 な 場 合 が 多 い また 旧 甲 類 焼 酎 の 分 野 で 供 給 主 体 の 中 核 を 担 う 大 手 ビールメーカーを 中 心 に 販 売 されていることから 広 範 な 販 売 網 を 有 していることも 特 徴 である 焼 酎 の 第 3 次 ブーム(~4 年 ) 終 焉 後 8 年 のリーマンショック 後 の 景 気 低 迷 も 加 わり 消 費 者 の 低 価 格 志 向 が 強 まった この 頃 から 本 格 焼 酎 の 風 味 を 残 しつつ より 安 価 な 甲 乙 混 和 焼 酎 の 引 き 合 いが 強 まったといわれている 3 旧 甲 類 焼 酎 が 5% 以 上 95% 未 満 であれば 甲 類 乙 類 混 和 5% 以 上 5% 未 満 であれば 乙 類 甲 類 混 和 と 呼 称 される 業 界 内 では 25 年 1 月 から 表 示 の 自 主 規 制 が 設 けられており メーカーは ラベルや 容 器 の 見 えやすい 場 所 に 表 示 をする 必 要 がある 3
(2) 酒 造 メーカーの 収 益 環 境 1 製 造 コストの 上 昇 小 売 価 格 が 下 落 傾 向 にある 中 で 近 年 本 格 焼 酎 の 製 造 コストである 燃 料 代 原 材 料 費 はともに 上 昇 している 足 許 電 気 代 が 上 昇 しているほか 為 替 の 円 高 修 正 を 主 因 に 重 油 代 も 高 騰 し ている 各 焼 酎 メーカーは 節 電 に 努 めたり より 効 率 性 の 高 い 設 備 に 交 換 す るなど 自 助 努 力 をしているが コスト 増 を 完 全 には 吸 収 できていない 原 材 料 費 については そば 焼 酎 や 麦 焼 酎 を 製 造 している 多 くの 先 では 原 材 料 のそばや 麦 を 輸 入 に 頼 っているが 近 年 仕 入 価 格 が 上 昇 している なお 本 格 焼 酎 に 使 用 される 麹 の 多 くは 米 麹 であるが 年 によって 原 料 となる 加 工 用 米 の 仕 入 価 格 の 変 動 が 大 きく 酒 造 メーカーの 収 益 を 不 安 定 化 させる 一 因 と なっている( 図 表 3) ( 図 表 3) 燃 料 代 および 大 麦 価 格 ( 企 業 物 価 指 数 ) 為 替 レートの 推 移 18 16 21 年 1 月 =1 重 油 電 力 大 麦 ドル 円 相 場 ( 東 京 スポットレート 右 目 盛 ) 単 位 : 円 /ドル 11 1 14 9 12 1 8 8 21 年 1 月 21 年 7 月 211 年 1 月 211 年 7 月 212 年 1 月 212 年 7 月 213 年 1 月 213 年 7 月 214 年 1 月 ( 出 所 ) 日 本 銀 行 HP 長 期 時 系 列 データサイト ( 注 )ドル 円 相 場 は 月 末 値 2 出 荷 価 格 への 転 嫁 こうした 中 酒 造 メーカーの 多 くは 製 造 コストの 上 昇 分 を 出 荷 価 格 に 十 分 に 転 嫁 できていない 小 売 価 格 下 落 に 伴 うメーカー 出 荷 価 格 への 下 方 圧 力 や メーカー 間 での 厳 しい 競 争 が 理 由 として 挙 げられる メーカー 間 での 競 争 激 化 については 上 述 した 甲 乙 混 和 焼 酎 との 競 争 に 加 え 本 格 焼 酎 内 での 銘 柄 間 競 争 も 厳 しい その 結 果 単 位 当 たりの 製 造 コストが 高 くなりがちな 小 規 模 メーカーからは 市 場 全 体 として 価 格 下 落 圧 力 が 強 い 中 で 他 社 に 先 駆 けて 値 上 げするのは 難 し く じりじりと 収 益 が 圧 迫 されているとの 声 が 聞 かれている 実 際 製 成 数 量 規 模 別 4 に 収 益 状 況 をみると 大 規 模 メーカーと 比 べ 7 年 度 頃 から 小 規 模 メー 7 4 ここでは 年 間 製 成 数 量 が 2, キロリットルより 多 い 先 を 大 規 模 メーカー 1 キロリッ トルより 多 い 先 を 中 規 模 メーカー それ 以 外 を 小 規 模 メーカーと 分 類 ( 兼 業 休 業 を 除 く) また 低 収 益 は 税 引 前 純 利 益 が 5 万 円 未 満 の 先 とした 4
カーの 欠 損 企 業 や 低 収 益 企 業 の 割 合 が 高 まり 12 年 度 は 改 善 したものの 小 規 模 メーカーの 半 数 は 欠 損 企 業 低 収 益 企 業 となっている( 図 表 4) こうした 状 況 の 下 長 期 貯 蔵 酒 等 の 高 付 加 価 値 商 品 を 提 供 することで 利 益 を 確 保 しようとする 企 業 も 少 なくない 但 し こうした 商 品 の 製 造 には 追 加 的 な 設 備 投 資 や 長 期 間 の 製 造 工 程 などを 要 する 場 合 が 多 く 収 益 的 に 苦 しい 中 小 メーカーにとっては 困 難 な 面 がある だからといって 中 小 メーカーの 先 行 きが 必 ずしも 暗 いわけではない 実 際 一 企 業 平 均 損 益 計 算 書 (12 年 度 )を 規 模 収 益 別 にみると 黒 字 企 業 では 大 規 模 メーカーの 方 が 売 上 高 販 管 費 率 を 抑 えられている 一 方 で 売 上 高 原 価 率 は 小 規 模 メーカーのほうが 低 い すなわち 黒 字 企 業 に 限 定 すれば 収 益 性 に 規 模 の 差 はあまりなく 中 小 メーカーにおいても 販 売 価 格 の 維 持 やコスト 削 減 などに 成 功 し 利 益 を 確 保 している 先 も 相 応 にあるといえる 一 方 で 欠 損 企 業 や 低 収 益 企 業 においては 小 規 模 メーカーは 売 上 高 販 管 費 率 が 相 対 的 に 高 く 経 営 面 での 課 題 になっていることが 分 かる( 図 表 5) 当 地 の 小 さな 蔵 元 の 中 には 宣 伝 をほとんど 行 わないにもかかわらず 品 質 の 高 さや 製 法 へのこだわりが 地 元 から 大 消 費 地 へ 口 コミ で 伝 わり 供 給 量 が 限 られる 中 人 気 を 博 する 事 例 も 多 く 存 在 する また 中 小 メーカーの 一 部 先 には 互 いに 協 力 し 商 品 開 発 に 取 り 組 んだり 積 極 的 に 試 飲 会 を 開 催 し ているケースもみられている ( 図 表 4) 規 模 別 にみた 本 格 焼 酎 メーカー( 熊 本 国 税 局 管 下 4 県 )の 収 益 状 況 小 規 模 メーカー 中 規 模 メーカー 大 規 模 メーカー 6 先 欠 損 + 低 収 益 14 先 欠 損 + 低 収 益 4 先 欠 損 + 低 収 益 5 黒 字 12 黒 字 35 黒 字 3 1 4 25 8 3 2 6 15 2 4 1 1 2 5 25 26 27 28 29 21 211 212 年 度 25 26 27 28 29 21 211 212 年 度 25 26 27 28 29 21 211 212 年 度 ( 出 所 ) 熊 本 国 税 局 単 式 蒸 留 しょうちゅう 製 造 業 の 概 要 から 日 本 銀 行 鹿 児 島 支 店 が 作 成 ( 図 表 5) 規 模 収 益 別 にみた 一 企 業 平 均 損 益 計 算 書 ( 熊 本 国 税 局 管 下 4 県 12 年 度 ) 黒 字 企 業 欠 損 企 業 低 収 益 企 業 小 規 模 中 規 模 大 規 模 小 規 模 中 規 模 社 数 26 61 27 26 34 売 上 高 (A) 119,375 611,415 8,135,715 49,219 3,561 売 上 原 価 (B) 74,1 48,258 5,62,817 37,38 223,36 販 売 費 一 般 管 理 費 (C) 37,219 15,598 1,62,75 19,722 93,559 売 上 高 原 価 率 (B/A) 62% 67% 69% 76% 74% 売 上 高 販 管 費 率 (C/A) 31% 25% 2% 4% 31% ( 出 所 ) 熊 本 国 税 局 単 式 蒸 留 しょうちゅう 製 造 業 の 概 要 から 日 本 銀 行 鹿 児 島 支 店 が 作 成 ( 注 ) 表 中 の 金 額 の 単 位 は すべて 千 円 5
2. 海 外 進 出 上 巻 では ブーム 終 焉 後 も 国 内 の 焼 酎 需 要 は 概 ね 横 ばいで 推 移 していること がわかり 同 時 に 今 後 の 課 題 の 例 として 関 東 以 北 における 需 要 の 掘 り 起 こ しや 若 い 世 代 への 需 要 喚 起 の 必 要 性 を 指 摘 した 同 時 に 長 期 的 には 人 口 減 少 が 進 む 中 国 内 市 場 だけをターゲットに 据 えて 展 開 していくのは 厳 しい と 考 えられる ここからは テーマを 焼 酎 の 輸 出 に 転 じ 業 界 の 現 状 を 整 理 し 今 後 の 展 望 について 考 えたい (1) 年 間 酒 類 輸 出 量 の 推 移 まず 酒 類 全 般 の 年 間 輸 出 量 の 推 移 を 概 観 すると 近 年 はビールの 輸 出 増 加 を 主 因 に 増 加 傾 向 にある 個 別 にみると ビールの 輸 出 量 は 8 年 から 9 年 にかけてやや 減 少 したが 翌 1 年 に 増 加 に 転 じた 後 増 加 傾 向 が 続 いている 焼 酎 の 輸 出 量 は 概 ね 横 ば い 圏 内 で 推 移 している 一 方 で 清 酒 の 輸 出 量 は 緩 やかながらも 増 加 傾 向 にあ る( 図 表 6) なお ビールの 輸 出 量 の 増 加 は 東 アジア( 大 部 分 は 韓 国 向 け)を 中 心 に 日 本 産 ビールへの 需 要 が 高 まっていることに 起 因 している また 清 酒 の 輸 出 量 が 増 加 しているのは 世 界 的 な 健 康 志 向 にも 乗 った 和 食 人 気 に 相 俟 って 和 食 に 合 う 清 酒 需 要 が 高 まったためと 考 えられる ( 図 表 6) 年 間 酒 類 輸 出 量 の 推 移 8 単 位 : 千 キロリットル 7 焼 酎 リキュール 2.7 6.2 6 5 4 3 2 1 清 酒 2.3 2.8 12.2 23.5 ビール 2.1 2.6 11.9 2.9 2.4 3.5 13.8 24. 2.1 3.8 14. 31.1 2.8 5.1 14.1 38.4 16.2 46.5 28 29 21 211 212 213 年 ( 出 所 ) 財 務 省 HP 貿 易 統 計 (2) 清 酒 との 比 較 続 いて 近 年 輸 出 量 が 増 加 傾 向 にある 清 酒 との 比 較 を 通 じて 焼 酎 の 輸 出 に ついてみてみる 初 めに 焼 酎 および 清 酒 の 輸 出 量 (213 年 上 位 5か 国 )をみると いずれも 輸 出 量 上 位 5か 国 で 全 体 の 約 75%のシェアを 占 める また 上 位 5か 国 の 中 で 中 国 アメリカ 香 港 韓 国 の4か 国 はどちらにも 共 通 しているほか 焼 酎 清 酒 ともに 国 別 の 輸 出 量 ランキングは 年 によってあまり 変 動 していない 6
焼 酎 と 清 酒 との 大 きな 違 いは 輸 出 数 量 であり 焼 酎 の 輸 出 量 (213 年 : 2,656kl)は 清 酒 ( 同 :16,22kl)の2 割 にも 満 たない また 清 酒 は 継 続 的 に 輸 出 量 が 伸 びている 一 方 で 焼 酎 は 輸 出 先 によって 振 れがあり 全 体 としてみ れば 概 ね 横 ばい 圏 内 に 止 まっている( 図 表 7) 焼 酎 ( 図 表 7) 焼 酎 および 清 酒 の 輸 出 量 ( 上 位 5か 国 ) (キロリットル %) 焼 酎 (213 年 ) 清 酒 (213 年 ) 輸 出 先 数 量 シェア 輸 出 先 数 量 シェア 中 国 843 31.7 アメリカ 4,489 27.7 アメリカ 49 18.4 韓 国 3,52 21.6 香 港 336 12.7 台 湾 1,747 1.8 韓 国 211 8. 香 港 1,716 1.6 マレーシア 152 5.7 中 国 896 5.5 輸 出 計 2,656 1. 輸 出 計 16,22 1. 上 位 5カ 国 の 上 位 5カ 国 の 76.5 シェア 計 シェア 計 76.2 1,2 1, 単 位 :キロリットル 単 位 :% 中 国 香 港 マレーシア アメリカ 韓 国 清 酒 5, 4,5 4, 単 位 :キロリットル 単 位 :% アメリカ 台 湾 中 国 韓 国 香 港 8 3,5 3, 6 2,5 2, 4 1,5 2 1, 5 28 29 21 211 212 213 年 ( 出 所 ) 財 務 省 貿 易 統 計 28 29 21 211 212 213 年 清 酒 の 輸 出 増 加 の 背 景 には 上 述 のように 和 食 ブームと 結 び 付 いている 面 や SAKE としての 認 知 度 が 海 外 でも 定 着 していることが 考 えられる( 図 表 8) 一 方 で 焼 酎 の 輸 出 が 伸 び 悩 んでいる 理 由 としては 海 外 での 知 名 度 が 依 然 として 低 いほか 国 別 に 区 々の 事 情 が 存 在 する 例 えば アメリカでは 小 売 販 売 免 許 上 の 制 約 ( 詳 細 は 次 頁 )があるほか 韓 国 ではソジュという 地 元 産 の 焼 酎 との 競 合 等 の 影 響 が 指 摘 されることが 多 い ( 図 表 8) 清 酒 の 認 知 度 の 高 さを 示 すアンケート 結 果 好 きな 外 国 料 理 という 設 問 における 和 食 の 順 位 全 体 1 位 75.7% 53.% 中 国 1 位 (25.2%) 91.5% 86.% 香 港 1 位 (25.%) 73.8% 49.8% 台 湾 1 位 (19.2%) 79.8% 65.3% 韓 国 1 位 (25.7%) 66.% 47.3% アメリカ 3 位 (14.7%) 67.8% 45.3% フランス 1 位 (17.4%) 76.3% 36.% イタリア 1 位 (23.8%) 74.8% 41.5% ( 出 所 ) 日 本 貿 易 振 興 機 構 (ジェトロ) 日 本 食 品 に 対 する 海 外 消 費 者 意 識 アンケート 調 査 (213) ( 注 ) 好 きな 外 国 料 理 という 設 問 における 和 食 の 順 位 の 項 目 のカッコ 内 は 総 回 答 数 に 対 する 回 答 個 数 の 割 合 (3) 海 外 展 開 へのポイント 本 格 焼 酎 業 界 でも 輸 出 に 対 する 前 向 きな 動 きがみられ 始 めているが 海 外 に 売 り 込 むにあたって 重 要 となると 思 われる 事 柄 について 具 体 例 も 交 えつ つ 整 理 を 試 みる 清 酒 を 消 費 したこと のある 人 の 割 合 清 酒 を 購 入 したこと のある 人 の 割 合 7
1 輸 出 相 手 国 に 応 じた 対 応 輸 出 をする 際 には 相 手 国 に 応 じたきめ 細 かい 対 応 が 必 要 となる 国 ごとに 気 候 や 風 土 食 文 化 なども 様 々であるので 焼 酎 が 浸 透 しやすい 国 を 選 定 する 必 要 もあろう また 販 売 チャネル( 百 貨 店 やスーパーで 販 売 するのか 日 本 食 レストランで 提 供 するのかなど)やターゲット 顧 客 ( 現 地 の 大 衆 向 けか 富 裕 層 向 けか 駐 在 員 向 けかなど)によっても 商 品 の 内 容 やセールスの 仕 方 にも 修 正 が 必 要 となる 輸 出 で 焼 酎 よりも 一 歩 先 を 行 く 清 酒 については 例 えば 日 本 貿 易 振 興 機 構 ( 以 後 ジェトロと 略 記 )の HP 上 に 国 ごとの 特 徴 点 がかなり 詳 細 にまとめられており 市 場 調 査 の 際 に 焼 酎 にとっても 参 考 になる 面 がある のではないか 事 例 1 以 下 は ジェトロの 各 種 資 料 に 掲 載 されている 情 報 の 一 部 を 紹 介 する アメリカでは 清 酒 の7~8 割 が 日 本 食 レストランで 消 費 される 7 年 代 の 寿 司 ブーム 以 降 カリフォルニアロールを 食 べながら 熱 燗 を 飲 む= カッコいい という 風 潮 が 拡 がったが 近 年 は 冷 酒 文 化 も 浸 透 している 5 中 国 では 消 費 者 のほとんどが 中 国 人 であり 接 待 などに 使 われる 高 級 店 においては 高 価 な 地 酒 が 取 り 扱 われている 百 貨 店 やスーパーでは 清 酒 が 購 入 されるが ほとんどが 贈 答 用 で 化 粧 箱 がなければ 売 れない 6 香 港 では 商 用 で 出 張 する 人 が 多 く 日 本 食 レストランが 接 待 の 場 で 使 われる 場 合 が 多 い 高 級 店 では 希 少 な 清 酒 が 揃 えられている 場 合 も 多 い 7 韓 国 では 清 酒 購 入 時 に 最 も 重 視 する 点 についてのアンケートで 経 済 的 リーズナブルであること を 回 答 する 割 合 が 調 査 国 中 最 も 高 かった 8 なお 台 湾 でも 価 格 が 高 いため 清 酒 を 飲 まないとの 回 答 が 多 かった 9 このほか 輸 送 コストや 相 手 国 の 法 制 度 ( 酒 税 制 度 販 売 免 許 制 度 等 )といっ た 点 も 輸 出 をする 上 で 重 要 であり 事 前 の 丁 寧 な 市 場 調 査 が 欠 かせない 事 例 2 アメリカでは レストラン 等 で 日 本 酒 やワインなどの 醸 造 酒 を 提 供 する 場 合 は ソフトリカー ライセンス を 必 要 とするが 焼 酎 やウイスキー などの 蒸 留 酒 を 提 供 する 場 合 は 取 得 の 難 易 度 がより 高 い ハードリカー ライセンス を 必 要 とする カリフォルニア 州 では 98 年 に 韓 国 レストラン 協 会 が 法 改 正 に 尽 力 した 結 果 24% 以 下 のソジュはソフトリカー ライセンス 店 でも 扱 えるように なった 2 年 に 日 本 の 焼 酎 にも 本 措 置 の 適 用 が 認 められた 結 果 焼 酎 の 対 米 輸 出 は 前 年 比 約 5 割 増 加 した 1 5 出 所 :ジェトロ 米 国 における 日 本 酒 と 焼 酎 の 輸 出 の 可 能 性 と 市 場 動 向 (26) 6 出 所 :ジェトロ 国 税 庁 日 本 酒 輸 出 ハンドブック~ 中 国 編 ~(213) 7 出 所 :ジェトロ 国 税 庁 日 本 酒 輸 出 ハンドブック~ 香 港 編 ~(213) 8 出 所 :ジェトロ 国 税 庁 日 本 酒 輸 出 ハンドブック~ 韓 国 編 ~(213) 9 出 所 :ジェトロ 国 税 庁 日 本 酒 輸 出 ハンドブック~ 台 湾 編 ~(213) 1 出 所 :ジェトロ 米 国 における 日 本 酒 と 焼 酎 の 輸 出 の 可 能 性 と 市 場 動 向 (26) 8
2 飲 み 方 の 提 案 海 外 では ウイスキーやブランデーなどの 蒸 留 酒 (スピリッツ)は 食 後 酒 で あることが 多 いが 焼 酎 は 食 中 酒 として 日 本 で 根 付 いており この 違 いが 輸 出 を 困 難 にしている 面 がある 例 えば 清 酒 は 醸 造 酒 であるため ライスワイン と 表 現 することで 馴 染 み 易 くなるが 焼 酎 の 場 合 これはワインなのかスピ リッツなのか と 消 費 者 を 惑 わせる 場 合 があるようである 食 中 酒 として 売 り 込 む 場 合 は どのような 和 食 や 現 地 の 食 事 と 組 み 合 わせ どのようなかたちで(お 湯 割 り 水 割 り ロック 等 ) 飲 むのが 良 いか 現 地 の 食 習 慣 も 踏 まえつつ 具 体 的 に 提 案 していくことが 必 要 になろう 重 要 なのは 日 本 流 の 飲 み 方 を 提 案 しつつも それを 押 し 付 けるのではなく 現 地 の 消 費 者 の 好 みなどを 盛 り 込 んでいくことであろう お 酒 を 水 等 で 割 る 文 化 がない 国 に は 一 部 の 先 が 既 に 行 っているように アルコール 度 数 を 調 整 した 焼 酎 を 提 供 することなども 効 果 的 であろう また 海 外 から 当 地 を 訪 れる 観 光 客 に 地 元 の 食 文 化 とともに 本 格 焼 酎 の 魅 力 を 伝 えていくことによって 海 外 における 鹿 児 島 宮 崎 と 本 格 焼 酎 の 知 名 度 を 高 めていく 工 夫 が 期 待 される 外 国 語 で 焼 酎 の 歴 史 原 材 料 による 味 の 違 いや 飲 み 方 を 説 明 できる 焼 酎 ソムリエ が 飲 食 店 やお 土 産 屋 さんにいても 面 白 いのではないか 各 メーカーから 個 性 の 異 なる 焼 酎 を 少 量 ずつ 集 めた 飲 み 比 べセット を 提 供 してもいいかもしれない 焼 酎 通 の 外 国 人 が 少 しずつ 増 えていけば 海 外 における 焼 酎 のすそ 野 が 拡 がっていくのではないだろうか 事 例 3 清 酒 では 外 国 人 の 清 酒 通 が 増 えつつある そういう 方 々が 書 籍 や インターネットなどで 清 酒 の 歴 史 や 製 法 についての 母 国 語 で 情 報 発 信 をし ているほか 現 地 で 清 酒 に 関 する 講 座 を 提 供 したり 日 本 でのテイスティ ングツアーを 用 意 するなど 日 本 人 以 外 の 方 々に 受 け 入 れられやすいかた ちで 清 酒 文 化 浸 透 に 一 役 買 っている 3ブランディング 焼 酎 自 体 がまだ 知 られていない 国 も 決 して 少 なくはない 輸 送 コストや 課 税 の 関 係 で 海 外 では 焼 酎 も 総 じて 高 額 になることを 踏 まえると それにふさわ しいブランド 化 が 必 要 になる 知 名 度 の 低 い 国 々において 焼 酎 の 魅 力 を 理 解 し てもらうためには ワインのように 本 格 焼 酎 や 酒 蔵 の 歴 史 各 素 材 の 特 質 製 造 工 程 の 特 徴 点 などを ストーリーとして 分 かり 易 く 伝 えていくことが 重 要 に なろう 清 酒 の 成 功 事 例 11 から 学 べる 点 も 多 いのではないか 11 地 方 の 小 さな 清 酒 蔵 であっても 1 国 内 とは 異 なり 海 外 では 高 級 化 路 線 を 明 確 にする 2 輸 出 国 を 絞 り 込 み アルコール 度 数 を 下 げるなどして 対 象 国 の 人 に 合 った 商 品 を 製 造 販 売 する 3 現 地 の 有 名 なシェフとのコラボレーションを 行 う などの 取 り 組 みで 成 果 を 上 げている 事 例 がある 9
鹿 児 島 においては 5 年 WTO より 鹿 児 島 県 産 のさつま 芋 と 水 を 使 い 鹿 児 島 県 内 で 製 造 容 器 詰 めされた 本 格 焼 酎 であれば 薩 摩 焼 酎 と 名 乗 れる 地 理 的 表 示 の 認 可 を 受 けている 鹿 児 島 県 内 には ほかにも 奄 美 群 島 でしか 製 造 が 認 められていない 奄 美 黒 糖 焼 酎 があるなど ブランド 化 のための 環 境 は 整 っているともいえる また 日 本 酒 は 枡 や お 銚 子 とお 猪 口 で 飲 む 飲 み 方 が 国 内 外 で 定 着 している 例 えば 鹿 児 島 県 や 宮 崎 県 南 部 の 伝 統 酒 器 である 黒 千 代 香 (くろじょか) でまろやかなお 湯 割 りの 飲 み 方 の 提 案 を 行 うのも 効 果 的 ではないだろうか さらに 清 酒 の 輸 出 戦 略 で 参 考 になる 面 もある 一 方 清 酒 との 差 別 化 も 必 要 となってくる 世 界 的 に 飲 食 の 健 康 志 向 が 高 まる 中 本 格 焼 酎 は 他 の 酒 類 と 比 較 して 血 栓 症 ( 心 筋 梗 塞 や 脳 梗 塞 など)の 原 因 となる 血 栓 を 溶 かす 効 果 が 高 いと 発 表 されているほか 蒸 留 酒 であるため 糖 質 がなくダイエット 時 に 適 し ているなど 健 康 に 良 い 効 果 を 有 している 12 こうした 点 をセールスポイントと してより 強 調 していくことも 考 えられるだろう 4コラボレーション 酒 造 メーカー1 社 が 単 独 で 焼 酎 を 海 外 に 売 り 込 むのは ノウハウ コスト 生 産 力 といった 点 で 容 易 ではない 中 他 の 酒 造 メーカー 輸 出 商 社 などと 共 同 した 取 り 組 みを 進 めていることが 多 い 食 中 酒 として 日 本 食 とともに 海 外 に 出 ていくことを 展 望 した 場 合 第 一 次 産 業 食 品 メーカーや 外 食 産 業 とどのよう に 組 んでいくかも 大 事 な 要 素 になろう 実 際 酒 造 メーカーや 酒 類 販 売 業 者 らが 連 携 して 焼 酎 の 輸 出 を 試 みている 事 例 があるほか 当 地 の 特 産 品 と 合 わせて 焼 酎 を PR する 動 きもみられており こ うした 動 きが 拡 がっていくことが 期 待 される 事 例 4 昨 年 11 月 に 鹿 児 島 県 は 香 港 で 焼 酎 を 楽 しむ 夕 べ を 開 催 現 地 の 輸 入 業 者 らに 県 内 13 の 酒 造 メーカーが 焼 酎 をふるまったほか 黒 豚 やカンパ チなどを 使 った 料 理 も 提 供 した また 本 年 入 り 後 県 の 商 工 会 連 合 会 ら が 中 心 となって 黒 糖 焼 酎 をドイツで PR する 試 みもなされている 焼 酎 の 輸 出 は 清 酒 に 比 べると 遅 れている 状 況 にあるが これは 同 時 に 焼 酎 の 海 外 進 出 には 開 拓 の 余 地 が 大 きいということでもある 酒 造 メーカーをはじ めとした 関 係 者 の 今 後 の 取 り 組 みに 期 待 したい 本 かごしま みやざきノート( 上 下 ) は 2 社 以 上 の 酒 造 メーカーや 酒 類 販 売 業 者 などの 業 界 関 係 者 の 温 かいご 協 力 により 作 成 できました この 場 を 借 りて 御 礼 申 し 上 げます 以 上 12 出 所 : 日 本 酒 造 組 合 中 央 会 HP 1