マルサス,ミル,そしてマーシャル 貧 困 と 人 口 について 小 沼 宗 一 Ⅰ はじめに Ⅱ マルサスにおける 貧 困 と 人 口 1.フランス 革 命 とマルサス 2. 下 層 階 級 の 貧 困 の 原 因 は 何 か 3.マルサスの 複 合 原 因 論 Ⅲ J.S.ミルにおける 貧 困 と 人 口 1. 生 産 と 分 配 の 二 分 法 2. 原 理 と 応 用 3. 人 口 制 限 の 必 要 性 Ⅳ マーシャルにおける 貧 困 と 人 口 1.1870 年 代 とは 何 か 2. 貧 困 と 産 業 上 の 主 導 権 との 同 時 解 決 3.マーシャルによるミル 賃 金 基 金 説 への 批 判 Ⅴ むすび Ⅰ はじめに マルサス(Thomas Robert Malthus,1766-1834),J.S.ミル(John Stuart Mill, 1806-73),そし てマーシャル(Alfred Marshall, 1842-1924)において, 貧 困 問 題 と 人 口 増 加 との 関 係 は,どの ように 理 解 されていたのであろうか 貧 困 と 人 口 との 関 係 について,マルサス,J.S.ミル,そし てマーシャルを 取 り 上 げて,それぞれの 経 済 思 想 の 特 質 とその 現 代 的 意 義 について 考 察 したいと 思 う 本 稿 の 課 題 は 次 の2 点 である 第 1は, 穀 物 の 高 価 格 を 擁 護 したマルサスの 論 理 を, 人 口 原 理 との 関 連 において 考 察 することである リカードウ(David Ricardo, 1772-1823)との 穀 物 法 論 争 において,マルサスは 穀 物 法 を 擁 護 し, 低 廉 な 外 国 穀 物 の 輸 入 を 阻 止 して, 穀 物 の 高 価 格 政 策 を 支 持 した 穀 物 の 高 価 格 は 下 層 階 級 の 経 済 的 厚 生 を 高 めるというマルサスの 論 理 を,かれの 方 法 論 的 特 質 に 注 目 しつつ, 人 口 原 理 との 関 連 において 明 らかにする 第 2は, 人 口 制 限 政 策 によって 高 賃 金 という 望 ましい 結 果 は 実 現 するであろうか,という 論 点 である マルサスは 人 為 的 な 産 児 制 限 を 主 張 することはなかったが,ミルは 停 止 状 態 を 実 現 する ためには 人 口 制 限 が 必 要 であると 主 張 した ミルもマーシャルも, 貧 困 問 題 解 決 のためには 高 賃 39
東 北 学 院 大 学 経 済 学 論 集 第 175 号 金 が 必 要 であるという 点 では 同 じであった しかし,ミルが 高 賃 金 のためには 人 口 制 限 が 必 要 で あると 主 張 したのに 対 して,マーシャルは 人 口 制 限 の 即 時 的 効 果 とその 永 続 的 効 果 との 区 別 を 強 調 した 以 下, 順 次 検 討 する Ⅱ マルサスにおける 貧 困 と 人 口 1.フランス 革 命 とマルサス マルサス 人 口 論 (An Essay on the Principle of Population, London, 1798)は,1789 年 のフ ランス 革 命 を 批 判 するという 意 図 を 持 って 出 版 された マルサスの 生 きたイギリスは,1688 年 の 名 誉 革 命 によって 議 会 制 民 主 主 義 を 確 立 していた フランス 革 命 が 発 生 した 当 初, 首 相 ピットを はじめとして 多 くのイギリス 知 識 人 はフランス 絶 対 王 政 の 終 焉 を 歓 迎 した しかし,やがて 国 王 の 処 刑,ジャコバンの 独 裁 という 革 命 の 急 進 化 に 直 面 したイギリスは,1793 年 になると,プロイ セン,スペイン,ポルトガル,スウェーデン,ドイツ 諸 国 と 共 に, 対 仏 大 同 盟 を 組 織 して, 国 際 的 な 反 革 命 戦 争 に 乗 り 出 した バーク(Edmund Burke, 1729-97)は,1790 年 に フランス 革 命 の 省 察 (Reflection on the Revolution in France,London)を 出 版 し, 保 守 主 義 の 立 場 からフランス 革 命 を 批 判 した これ に 対 して,トマス ペイン(Thomas Paine, 1737-1809)は,バーク 批 判 を 意 図 した 人 間 の 権 利 (The Rights of Man, London, 2vols., 1791-92)を 著 わしてフランス 革 命 を 支 持 した ペインは かつて コモン センス (Common Sense, 1776)を 出 版 して,アメリカ 独 立 戦 争 を 支 持 した 人 物 である バークの 著 作 はイギリス 地 主 支 配 階 級 によって 歓 迎 され,ペインの 著 作 はイギリス 労 働 者 階 級 によって 支 持 された 2. 下 層 階 級 の 貧 困 の 原 因 は 何 か ゴドウィン(William Godwin, 1756-1836)は,1793 年 に 政 治 的 正 義 に 関 する 研 究 (An Enquiry Concerning Political Justice, and its Influence on General Virtue and Happiness, London) を 出 版 し, 下 層 階 級 の 貧 困 と 悪 徳 の 原 因 は 私 有 財 産 制 度 と 専 制 政 治 にあると 主 張 した ゴドウィ ンは,フランスのコンドルセと 共 に, 人 間 精 神 には 進 歩 する 可 能 性 があり, 人 間 とは 本 来 理 性 的 であるとした しかし 現 実 には, 私 有 財 産 制 度 と 専 制 政 治 とが 存 在 し,それらが 人 間 本 来 の 理 性 的 行 為 を 妨 げている したがって,それらを 撤 廃 すれば 本 来 の 理 性 的 人 間 が 実 現 できるはずであ る 理 性 の 力 は 結 婚 の 欲 望 さえ 打 ち 消 すことができるであろう 財 産 の 不 平 等 こそは 貧 困 と 悪 徳 の 主 たる 原 因 である,というのがゴドウィンの 考 え 方 であった マルサスが 人 口 の 原 理 についての 一 論 それが 社 会 の 将 来 の 改 善 に 影 響 を 与 えることを 論 じ,ゴドウィン 氏,コンドルセ 氏,その 他 の 著 者 たちの 諸 説 に 対 する 所 見 を 付 す を 匿 名 で 出 版 したのは,1798 年 であった 人 口 論 が 直 接 の 批 判 対 象 としたのは, 当 時 のイギリスにおいて 影 響 力 のあったゴドウィンの 平 等 思 想 であった 果 たして 階 級 区 分 さえ 撤 廃 されれば 下 層 階 級 の 40
マルサス,ミル,そしてマーシャル 貧 困 と 悪 徳 の 問 題 は 解 決 されるのであろうか マルサスによれば, 人 口 増 大 の 圧 力 による 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 は,いかなる 人 間 の 制 度 の 下 でも 不 可 避 的 に 生 じる 普 遍 的 なものである マルサス 人 口 論 は, 階 級 区 分 さえ 撤 廃 されれば 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 は 自 ずと 解 決 されるという,ゴドウィ ンの 理 想 社 会 論 批 判 として 展 開 されたものである( 永 井 1992, 48-49) ゴドウィンは, 階 級 区 分 がなくなれば 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 は 解 決 すると 考 えた こうしたゴド ウィンの 平 等 思 想 を 批 判 するために,マルサスは 人 口 論 初 版 において, 二 つの 公 準 を 提 示 した(Malthus, 1798, p.11. 訳 22) 第 1 公 準, 食 料 は 人 間 の 生 存 に 必 要 であること 第 2 公 準, 両 性 間 の 情 念 は 必 然 であり,ほぼ 現 在 の 状 態 のままであり 続 けると 思 われること マルサスは,こうした 二 つの 公 準 から, 次 のような 三 命 題 からなる 人 口 原 理 を 演 繹 した (Malthus, 1798, p.37. 訳 36) 第 1 命 題, 人 口 は 生 存 手 段 なしに 増 加 できない 第 2 命 題, 生 存 手 段 があるところでは, 人 口 は 必 ず 増 加 する 第 3 命 題, 人 口 の 優 勢 な 力 は, 不 幸 あるいは 悪 徳 を 生 み 出 さないでは 抑 制 されない マルサスにおいては, 貧 困 問 題 とは, 人 口 原 理 という 自 然 法 則 に 関 わる 問 題 であって, 人 間 の 制 度 に 関 わる 問 題 ではない 人 口 は, 制 限 されなければ, 等 比 数 列 的 に 増 大 する 生 活 資 料 は, 等 差 数 列 的 にしか 増 大 しない (Malthus, 1798, p.14. 訳 23) 生 存 手 段 の 増 加 を 上 回 る 速 度 で 人 口 が 増 加 するために, 貧 困 が 生 じるとされたのである マルサスは, 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 を 制 度 の 改 善 によって 解 決 しようとする 考 え 方 に 反 対 した マルサスは, 平 等 化 のための 制 度 である,イングランドの 救 貧 法 を 批 判 した(Malthus, 1798, p.83. 訳 61-62) 第 1に, 救 貧 法 は 食 料 を 増 加 させることなしに 下 層 階 級 の 人 口 を 増 加 させる 第 2に, 救 貧 法 は 受 給 貧 民 の 食 料 消 費 を 増 加 させる 一 方 で, 非 受 給 労 働 者 の 生 活 状 態 を 悪 化 させ, 貧 民 を 増 加 させる( 渡 会 2002, 101) 救 貧 法 という 貧 民 に 対 する 寛 大 な 福 祉 政 策 の 客 観 的 帰 結 は,その 主 観 的 意 図 と 相 反 する 結 果 を もたらすであろう,というのがマルサスの 考 え 方 であった マルサスは, 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 の 発 生 を, 経 済 社 会 における 競 争 原 理 の 結 果 にすぎないとして, 競 争 的 な 経 済 社 会 像 を 提 示 した マルサスの 人 口 原 理 は, 生 存 競 争 を 容 認 するものであった マルサスの 生 存 競 争 の 理 論 は,ダー ウィン(Charles Robert Darwin, 1809-82)の 種 の 起 源 (1859 年 )における 自 然 選 択 の 理 論 形 成 に 影 響 を 与 えた( 橋 本 1990, 154) 自 然 は 飛 躍 しない は,ダーウィンの 愛 好 句 であった( 八 杉 1989, 114)が, 後 にマーシャルは, ダーウィンの 自 然 選 択 の 理 論 から 影 響 を 受 けて, 経 済 進 歩 論 を 形 成 することになる マルサスの 生 存 競 争 の 思 想 は,ダーウィンを 経 由 して,マーシャル 経 済 進 歩 論 の 中 に 復 活 することになる マルサスは, 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 は 自 然 法 則 としての 人 口 圧 力 によって 不 可 避 的 に 発 生 すると いう, 人 口 重 視 の 思 想 を 提 示 したのであった 41
東 北 学 院 大 学 経 済 学 論 集 第 175 号 3.マルサスの 複 合 原 因 論 マルサスとリカードウは,1813 年 8 月 段 階 において, 外 国 貿 易 の 拡 大 は 一 般 的 利 潤 率 を 上 昇 さ れるか,という 論 点 をめぐり 貿 易 利 潤 率 論 争 を 展 開 した 当 時 のマルサスとリカードウの 主 たる 関 心 は 通 貨 問 題 であったが,リカードウは,1813 年 8 月 10 日 付 けのマルサスへの 手 紙 にお いて, 外 国 貿 易 の 拡 大 が 一 般 的 利 潤 率 の 上 昇 をもたらすとは 限 らない,という 主 張 を 提 示 した リカードウは,1813 年 8 月 17 日 付 けのマルサスへの 手 紙 において, 利 潤 率 に 関 する 私 の 理 論 を 登 場 させたが,その 内 容 は,1814 年 3 月 8 日 付 けのリカードウから 友 人 トラワへの 手 紙 の 中 に 示 されている(Ricardo, Works, Ⅵ, pp.103-104) それによると,マルサスは, 利 潤 率 低 下 の 阻 止 要 因 として,3 要 因 を 並 列 的 に 考 慮 していた 3 要 因 とは,⑴ 低 廉 な 外 国 穀 物 の 輸 入,⑵ 農 業 技 術 の 改 良,⑶ 外 国 貿 易 の 拡 大 であった マルサスの 方 法 論 的 特 質 は, 利 潤 率 低 下 を 阻 止 する 諸 要 因 を 複 数 指 摘 し, 複 数 の 要 因 を 並 列 的 に 考 慮 する 点 にあったということができる リカードウは 単 一 原 因 論 をとったが,マルサスは 複 合 原 因 論 を 支 持 していた( 佐 々 木 2001, 70) マルサスにおいて, 利 潤 率 低 下 を 阻 止 するために, 低 廉 な 外 国 穀 物 の 輸 入 自 由 化 は 必 ずしも 必 要 ではなかったのである これに 対 してリカードウは, 利 潤 率 低 下 を 永 続 的 に 阻 止 しうる 主 たる 原 因 を 低 廉 な 外 国 穀 物 の 輸 入 に 求 めた リカードウにおいても,⑵の 農 業 技 術 の 改 良 や,⑶の 外 国 貿 易 の 拡 大 が, 一 時 的 に 利 潤 率 を 上 昇 させることはいうまでもない しかし, 持 続 的 な 利 潤 率 上 昇 のためには, 低 廉 な 外 国 穀 物 の 輸 入 が 不 可 欠 であるとされ,それがリカードウの 主 たる 原 因 は 何 かを 問 う という 因 果 論 的 分 析 方 法 の 特 質 であった マルサスは,リカードウとの 論 争 において,リカードウの 主 たる 原 因 は 何 かを 問 う 方 法 を 批 判 した マルサスの 複 合 原 因 論 の 方 法 は, 穀 物 の 自 由 貿 易 というリカードウの 主 張 を 批 判 する 際 の 論 理 的 基 礎 を 形 成 していた 注 目 すべきは,マルサスにおいて, 主 たる 原 因 は 何 かを 問 う 方 法 も 並 存 していた,という 点 である アイルランド 問 題 はその 典 型 的 な 例 である 従 来,マルサスは,1798 年 に 演 繹 的 な 人 口 論 初 版 を 出 版 した 後, 大 陸 旅 行 を 行 い, 諸 国 の 経 験 的 資 料 を 収 集 して,1803 年 に 帰 納 的 な 人 口 論 第 2 版 を 出 版 した,といわれることがあった しかし, 人 口 論 第 2 版 には, 帰 納 的 検 証 に 基 づいたものとは 思 えない 演 繹 的 な 推 論 が 展 開 されている 人 口 論 第 2~4 版 で は,アイルランド 人 が 安 価 なジャガイモを 主 食 としたことこそがアイルランドの 急 激 な 人 口 増 と その 貧 困 の 原 因 であると 随 所 で 断 片 的 に 断 言 されたこと ( 佐 藤 2005, 249-251)が 指 摘 されてい る マルサスは,アイルランド 人 の 貧 困 の 原 因 は 何 かと 問 い,その 主 たる 原 因 は 低 廉 なジャガイ モを 主 食 としていることとみなした しかも, 主 食 としてのジャガイモが 低 廉 なことが,アイル ランドの 急 激 な 人 口 増 加 をもたらし, 人 口 増 加 が 貧 困 の 原 因 であるというのである マルサスは, アイルランドについての 事 実 による 経 験 的 資 料 を 収 集 することはなかった マルサスは, 初 版 に おける 演 繹 的 な 人 口 原 理 を,2 版 以 降 も, 生 前 最 終 の1926 年 の 第 6 版 まで, 一 貫 して 保 持 してい た(Malthus, 1826) 42
マルサス,ミル,そしてマーシャル マルサス 人 口 論 初 版 における 貧 困 と 人 口 との 基 本 図 式 は, 次 のようなものである それは, 穀 物 が 低 廉 ならば, 下 層 階 級 は 怠 惰 に 陥 り, 人 口 が 増 加 し, 貧 困 になる,という 因 果 論 的 分 析 方 法 である そして,この 基 本 図 式 は, 晩 年 まで 一 貫 していたのではなかろうか マルサスにおい て, 外 国 穀 物 の 輸 入 自 由 化 は 低 廉 な 穀 物 価 格 をもたらすが, 低 廉 な 穀 物 価 格 は 下 層 階 級 の 経 済 的 厚 生 を 低 下 させる 要 因 に 他 ならない マルサスが 穀 物 法 擁 護 論 を 展 開 する 場 合 も,この 基 本 図 式 を 推 論 の 基 本 的 な 基 礎 としていたということができる リカードウの 場 合 は, 低 廉 な 外 国 穀 物 の 輸 入 自 由 化 賃 金 低 下 利 潤 率 低 下 の 阻 止,という 図 式 で 考 えられていた これに 対 して,マルサスの 基 本 図 式 は, 外 国 穀 物 の 輸 入 自 由 化 低 廉 な 穀 物 価 格 下 層 階 級 の 怠 惰 の 増 大 人 口 増 加 貧 困 の 増 大,というものであった イングランド 人 は 高 価 な 小 麦 を 主 食 とするのに 対 して,アイルランド 人 は 低 廉 なジャガイモを 主 食 とするが,それがアイルランドの 人 口 増 加 の 原 因 であり, 人 口 増 加 が 貧 困 の 主 たる 原 因 であ る,とマルサスは 想 定 していた 食 料 と 人 口 の 関 係 によって 貧 困 問 題 を 把 握 しようとする 人 口 論 初 版 の 人 口 原 理 を,マルサ スは 一 貫 して 保 持 した マルサスは, 主 たる 原 因 は 何 かを 問 う 方 法 の 持 ち 主 でもあった,と いうことができるであろう Ⅲ J.S.ミルにおける 貧 困 と 人 口 1. 生 産 と 分 配 の 二 分 法 マルサスは, 人 口 増 加 が 貧 困 の 主 たる 原 因 であると 想 定 していた 食 料 が 増 加 すれば 必 ず 人 口 が 増 加 するというマルサスの 人 口 法 則 を, 原 理 としては 継 承 しつつも, 人 口 制 限 によって 高 賃 金 は 可 能 であると 主 張 したのが,J.S.ミルであった J.S.ミルは 経 済 学 原 理 ( 初 版 1848 年, 第 7 版 1871 年 )において, 富 の 生 産 と 分 配 を 峻 別 す るという 二 分 法 を 提 示 した 生 産 の 法 則 と 異 なって, 分 配 の 法 則 は, 一 部 は 人 間 の 制 度 (human institution)に 属 する (Mill, 1848,p.21. 訳 162)と 富 の 生 産 に 関 する 法 則 や 条 件 は, 物 理 的 真 理 の 性 質 をもち,そこには 選 択 の 可 能 なないし 恣 意 的 なものは 何 もない しかし, 富 の 分 配 についてはそうではない それはもっぱら 人 間 の 制 度 (human institution)の 問 題 である(Mill 1848, p.199. 訳 213-14)と ミルの 生 産 と 分 配 の 二 分 法 は,アダム スミス(Adam Smith, 1723-90)やリカードウに は 見 られない 点 であり,ミル 経 済 学 の 特 徴 である 富 の 生 産 は, 収 穫 逓 減 の 法 則 という 自 然 法 則 によって 決 定 されるが, 富 の 分 配 は, 制 度 の 改 善 によって 変 更 可 能 である,とミルは 考 えた( 馬 渡 1997, 103) リカードウ 原 理 から 得 られる 結 論 は, 出 発 点 の 仮 定 を 認 める 限 り 真 であるが,その 仮 定 は 現 実 的 でないので 仮 説 的 な 意 味 でのみ 正 しい,とミルはいう リカードウ 氏 がこれから 引 き 出 して いるところの 結 論,すなわち 賃 金 というものは 結 局 は 恒 久 的 な 食 料 価 格 と 共 に 騰 貴 するものであ 43
東 北 学 院 大 学 経 済 学 論 集 第 175 号 るという 結 論 は, 同 氏 のほとんど 一 切 の 結 論 と 同 じように, 仮 説 的 には,すなわち 同 氏 が 出 発 点 とするところの 仮 定 を 承 認 するならば 真 理 である しかしながら,これを 実 際 に 当 てはめるに 当 っ ては, 同 氏 がいうところの 最 低 限 なるものは, 特 にそれが 肉 体 的 最 低 限 ではなくして, 道 徳 的 最 低 限 とも 名 付 けうるものである 時 には,それ 自 身 変 動 しがちのものであるということを 考 えてお く 必 要 がある (Mill, 1848, p.341. 訳 2283-284)と ミルは,スミスやリカードウの 経 済 学 を 旧 経 済 学 派 と 呼 び, 旧 経 済 学 派 の 特 徴 として 次 の5 点 を 指 摘 する( 馬 渡 1997, 13-15) 第 1に, 根 深 い 利 己 心 の 制 度 依 存 性, 時 間 的 場 所 的 な 制 限 性, 将 来 の 変 化 の 可 能 性 を 理 解 していないということ 第 2に, 私 有 財 産 制 度 の 排 除, 土 地 の 共 有 財 産 化 の 可 能 性 について 考 慮 していないということ 第 3に, 競 争 の 制 度 依 存 性, 時 間 的 場 所 的 な 制 限 性, 将 来 の 変 化 の 可 能 性 を 考 慮 せず, 強 い 競 争 を 想 定 しているということ 第 4に, 三 階 級 社 会 を 最 終 的 なものとみて, 私 有 制 との 関 係,その 時 間 的 場 所 的 な 制 限 性, 将 来 の 変 化 の 可 能 性 を 考 慮 していないということ そして 第 5に, 資 本 蓄 積 と 人 口 増 加 の 停 止 状 態 を 望 ましくないとみる,という 点 である 旧 経 済 学 派 においては, 三 階 級 の 分 配 法 則 は 物 理 学 における 自 然 法 則 のように 永 続 的 な 必 然 性 を 持 つものと 見 なされていた しかし,ミルは, 三 階 級 間 における 分 配 法 則 は, 利 己 心, 私 有 財 産 制 度, 競 争, 三 階 級 社 会 という 制 度 的 諸 前 提 があるからこそ 可 能 なのである,という 点 を 強 調 した このようにミルは, 制 度 的 諸 前 提 やマルサス 人 口 法 則 について, 歴 史 貫 通 的 なもので も 不 変 的 なものでもなく, 人 間 の 選 択 によって, 変 更 可 能 なものであるという 考 え 方 を 提 示 した のであった( 小 沼 2007, 122) 2. 原 理 と 応 用 J.S.ミルは, 原 理 と 応 用 の 関 係 に 関 して,リカードウとは 異 なる 見 解 を 提 示 していた,という ことができる リカードウにおいては, 資 本 と 人 口 の 増 加 の 停 止 状 態 は 望 ましくないものとされ ていた これに 対 してミルは, 経 済 学 の 原 理 を 実 際 問 題 に 適 用 する 場 合 には, 経 済 的 非 経 済 的 な 具 体 的 事 情 を 十 分 に 考 慮 すべきであるという 考 え 方 を 提 示 した ミルは 経 済 学 原 理 第 4 編 第 4 章 第 4 節 において, 利 潤 率 低 下 の 傾 向 に 関 していう 人 口 が 資 本 の 増 加 とともに,かつそれに 比 例 して 増 加 したとしても,なお 利 潤 の 下 落 は 不 可 避 であろ う 人 口 の 増 加 は 農 業 生 産 物 に 対 する 需 要 の 増 加 を 意 味 する この 需 要 は, 産 業 上 の 改 良 が 行 な われない 場 合 には,より 劣 等 な 土 地 を 耕 作 するか,あるいは 従 来 からすでに 耕 作 されている 土 地 をより 入 念 に,かつより 多 大 の 費 用 をかけて, 耕 作 するかして, 生 産 費 を 増 大 させることによっ てのみこれを 満 たすことができる したがって, 労 働 者 の 生 計 を 維 持 する 費 用 は 増 大 する そし て 労 働 者 がその 生 活 状 態 の 低 下 に 甘 んずるのでない 限 り, 利 潤 は 低 下 せざるを 得 ないわけである (Mill, 1848, p.740. 訳 477)と ミルはいう イギリスのような 国 においては,もしも 年 々 現 在 のような 額 に 上 る 貯 蓄 が 続 く ものとし,かつこのような 貯 蓄 が 利 潤 を 低 下 させるうえに 有 する 自 然 的 影 響 を 阻 止 するところの 44
マルサス,ミル,そしてマーシャル 反 作 用 的 諸 事 情 がどれも 存 在 しなかったとすれば, 利 潤 率 は 速 やかにその 最 低 限 に 到 達 して,そ の 後 における 資 本 の 増 加 はさしあたり 一 切 停 止 してしまうであろう (Mill, 1848, p.741. 訳 478) と ミルの 利 潤 率 低 下 論 は 次 の 通 りである( 杉 原 1990, 105-106) 1 資 本 蓄 積 と 人 口 増 加 という 経 済 的 進 歩 の 過 程 においては, 食 料 需 要 が 増 加 する 2 食 料 需 要 が 増 加 すれば 劣 等 地 耕 作 が 進 展 す る 3 劣 等 地 耕 作 の 進 展 において, 土 地 収 穫 逓 減 の 法 則 が 作 用 するため, 食 料 の 生 産 費 が 増 大 する 4 食 料 の 生 産 費 の 増 大 は 食 料 価 格 を 上 昇 させる 5 食 料 価 格 上 昇 は 労 働 者 の 生 計 維 持 費 用 たる 賃 金 の 上 昇 をもたらす 6 賃 金 と 利 潤 との 間 には 相 反 関 係 があるので, 賃 金 上 昇 によって 利 潤 およ び 利 潤 率 は 低 下 せざるをえない 利 潤 率 = 利 潤 総 資 本 であり, 総 資 本 一 定 の 場 合, 利 潤 低 下 は 利 潤 率 低 下 となる 7 利 潤 率 は 低 下 し 続 け, 資 本 の 停 止 状 態 が 到 来 することは 不 可 避 的 である ミルは 原 理 第 4 編 第 4 章 第 5~8 節 において, 利 潤 率 低 下 を 阻 止 する 要 因 として 次 の4 点 を 指 摘 する 第 1に, 周 期 的 恐 慌, 第 2に, 農 業 技 術 の 改 良, 第 3に, 外 国 からの 低 廉 な 食 料 の 輸 入, 第 4に, 資 本 輸 出 である 利 潤 率 は 利 潤 額 を 総 資 本 で 割 った 値 であるので, 阻 止 要 因 2と 3は, 利 潤 額 を 増 大 させるために 賃 金 を 規 定 する 食 料 価 格 を 低 下 させようとするものである 2 と3はリカードウにおいても 考 えられていた 阻 止 要 因 1と4は, 資 本 それ 自 体 の 減 少 を 意 図 し たものであり,ミル 特 有 の 提 案 であった( 杉 原 1990, 105-106) 3. 人 口 制 限 の 必 要 性 J.S.ミルは 経 済 学 原 理 第 4 編 第 6 章 停 止 状 態 について の 中 で, 富 および 人 口 の 停 止 状 態 は,しかしそれ 自 身 としては 忌 むべきものではない (Mill, 1848, Ⅲ, p.753. 訳 4104)と 述 べ, 経 済 的 進 歩 と 人 間 的 進 歩 とを 区 別 し, 経 済 的 進 歩 は 必 ずしも 人 間 的 進 歩 をもたらすとは 限 らない とし, 経 済 的 進 歩 は 人 間 的 進 歩 のための 手 段 にすぎない,という 点 を 強 調 した ミルは, 実 践 的 政 策 を 導 出 する 場 合 には, 経 済 学 の 原 理 をそのまま 適 用 するのではなく, 具 体 的 な 諸 事 情 を 考 慮 すべきであるとした 利 潤 率 低 下 論 に 関 してミルは, 経 済 学 の 原 理 としてリカー ドウ 理 論 をほぼ 継 承 しつつも, 実 践 的 な 政 策 を 提 言 する 場 合 には, 経 済 的 および 非 経 済 的 な 諸 事 情 を 考 慮 すべきであるとするユニークな 考 え 方 を 提 示 した( 小 沼 2007, 125) 具 体 的 事 情 についてミルはいう 第 1に, 人 間 的 進 歩 には 安 全 で 美 しい 自 然 環 境 が 必 要 である が, 資 本 蓄 積 による 生 産 増 加 にはその 自 然 環 境 を 悪 化 させるというマイナス 面 がある( 経 済 的 事 情 ) 第 2に, 時 間 的 空 間 的 な 孤 独 こそは 人 間 の 思 想 を 育 てるゆりかごであるが, 過 度 な 人 口 増 加 にはその 大 切 なゆりかごとしての 孤 独 な 時 間 空 間 を 喪 失 させるというマイナス 面 がある( 非 経 済 的 事 情 )と ミルにおける 政 策 は 次 の 三 つである 第 1に,より 良 き 分 配 の 政 策, 第 2に, 厳 重 な 人 口 の 制 限 ( 四 野 宮 1997, 128-135), 第 3に, 組 織 的 な 植 民 政 策 による 資 本 輸 出 である( 馬 渡 1990, 52) このようにミルは, 資 本 蓄 積 による 生 産 増 加 には 自 然 環 境 を 悪 化 させるというマイナス 効 果 が ある 点 を 強 調 した ミルによれば, 都 市 における 人 口 過 密 は 人 間 の 思 想 を 育 てるゆりかごとして 45
東 北 学 院 大 学 経 済 学 論 集 第 175 号 の 孤 独 な 時 間 空 間 を 喪 失 させる 美 しい 自 然 の 中 での 落 ち 着 いた 生 活 こそは, 思 想 を 育 てるゆ りかごとされた ミルは, 生 産 の 増 加 が 引 き 続 き 重 要 な 目 的 となるのは,ただ 世 界 の 後 進 国 の 場 合 のみである (Mill, 1848, p.755. 訳 4106)として, 生 産 至 上 主 義 を 批 判 した ミルは, 自 らの 地 位 を 改 善 しようと 苦 闘 する 状 態 は, 文 明 の 進 歩 の 途 上 における 必 要 な 一 段 階 にすぎない(Mill, 1848, p.754. 訳 4105)として, 資 本 と 人 口 の 停 止 状 態 においてこそ, 知 的 道 徳 的 な 側 面 における 進 歩 すなわち 人 間 的 進 歩 は 可 能 となる,という 見 解 を 提 示 した ミルは, 資 本 および 人 口 の 停 止 状 態 なるものが, 必 ずしも 人 間 的 進 歩 (human improvement) の 停 止 状 態 を 意 味 するものでないことは,ほとんど 改 めていう 必 要 がないであろう (Mill, 1848, p.756. 訳 4109)と 述 べている 必 要 に 強 いられて 資 本 と 人 口 の 増 加 の 停 止 状 態 に 入 る 前 に, 先 進 国 の 人 々は 自 らの 選 択 において 資 本 と 人 口 の 増 加 の 停 止 状 態 に 入 ろうではないか,とミルは 提 案 したのであった( 前 原 1998, 第 1 章 ) ミルは, 食 料 が 増 加 すれば 必 ず 人 口 が 増 加 するとい うマルサスの 人 口 法 則 を, 原 理 としては 継 承 しつつも, 人 口 制 限 による 高 賃 金 政 策 という 考 え 方 を 提 示 した,ということができるであろう Ⅳ マーシャルにおける 貧 困 と 人 口 1.1870 年 代 とは 何 か J.S.ミルは, 食 料 増 加 人 口 増 加 という,マルサス 人 口 法 則 による 人 口 増 加 を, 原 理 としては 継 承 しつつも,その 応 用 としては, 人 口 制 限 政 策 の 実 施 によって 高 賃 金 は 可 能 となる,という 考 え 方 を 提 示 していた こうしたミルの 人 口 制 限 高 賃 金 という 考 え 方 を 批 判 したのが,マーシャ ルであった ミルの 場 合 には, 先 進 国 イギリスの 立 場 から, 安 心 して 人 口 制 限 による 高 賃 金 を 提 唱 すること ができた しかし,マーシャルの 時 代 になると, 人 口 制 限 政 策 の 効 果 に 対 する 疑 問 を 提 起 せざる をえないような, 状 況 変 化 が 生 じていた ナポレオン 戦 争 (1793-1815 年 ) 後 のウイーン 会 議 (1814-15 年 )からドイツ 統 一 の1871 年 までは, パックス ブリタニカ(イギリスによる 平 和 )の 時 代 であった リカードウが 批 判 した1815 年 穀 物 法 は,1846 年 になってようやく 廃 止 された 穀 物 法 の 撤 廃 は,イギリスの 自 由 貿 易 体 制 の 確 立 を 意 味 する 世 界 でいち 早 く 産 業 革 命 (1760 年 代 -1830 年 代 )を 経 験 したイギリスは,1860 年 代 には 世 界 の 工 場 と 呼 ばれるほどに 工 業 生 産 を 飛 躍 的 に 伸 ばしていた アメリカでは, 南 北 戦 争 (1861-65 年 )の 後 に 鉄 道 建 設 ブームを 迎 えた ドイツでは,1871 年 にビスマルクによって 待 望 の 国 家 統 一 が 達 成 された( 杉 本 1981, 上,44-47) 1860 年 代 のイギリスは, 世 界 の 工 場 として 世 界 経 済 における 産 業 上 の 主 導 権 を 握 って いたが,この 時 期 は 中 心 産 業 が 繊 維 から 鉄 鋼 への 移 行 期 であった 需 要 される 鉄 の 種 類 が,それ までの 練 鉄 から 鋼 鉄 に 切 り 換 わった 1880 年 から1930 年 までの 半 世 紀 は, 砲 艦 外 交 の 黄 金 時 代 な らぬ 鋼 鉄 時 代 であった(ホブズボーム 1984, 第 7 章 ) ところが,この 時 期 のイギリスは, 鋼 鉄 46
マルサス,ミル,そしてマーシャル 生 産 の 一 般 的 普 及 に 失 敗 してしまうのである その 理 由 としては,マーシャルの 時 代 のイギリス では, 所 有 と 経 営 の 一 致 する 個 人 合 名 合 資 会 社 形 態 が 支 配 的 であったという 点 が 指 摘 されて いる 株 式 会 社 の 多 くも, 同 族 内 で 株 式 を 保 有 するプライベート カンパニーが 優 位 を 占 めてい たからである( 井 上 1993,84-90) イギリスで 所 有 と 経 営 の 分 離 を 伴 う 今 日 的 な 株 式 会 社 が 支 配 的 となるのは, 第 一 次 世 界 大 戦 後 の1920 年 代 である 1870 年 代 とは, 当 時 後 進 国 であったアメリカとドイツとが, 先 進 国 イギリスが 持 っていた 世 界 経 済 における 産 業 上 の 主 導 権 に 対 して 挑 戦 を 開 始 した 時 期 であった 1871 年 に,W.S.ジェヴォ ンズは 経 済 学 の 理 論 を 出 版 して 限 界 効 用 価 値 説 を 提 示 する 1873 年,アメリカの 鉄 道 恐 慌 を 契 機 にして,イギリスは 大 不 況 の 時 期 を 迎 える 大 不 況 は1873 年 から1896 年 まで 続 き, やがて, 第 一 次 世 界 大 戦 (1914-1918 年 )となる こうした 中 で,マーシャルは 経 済 学 原 理 ( 初 版 1890 年, 第 8 版 1920 年 )を 出 版 したのであった( 小 沼 2007, 129) 2. 貧 困 と 産 業 上 の 主 導 権 との 同 時 解 決 マーシャル 経 済 学 の 政 策 的 課 題 は 次 の 二 つであった 第 1の 政 策 的 課 題 は, 社 会 の 大 多 数 を 構 成 する 労 働 者 階 級 の 貧 困 問 題 の 解 決 であり, 第 2の 政 策 的 課 題 は,1870 年 代 以 降 の 後 進 国 アメリ カやドイツによる 追 い 上 げという 時 代 背 景 の 中 で,イギリス 経 済 が 持 っていた 世 界 経 済 における 産 業 上 の 主 導 権 をいかに 確 保 するかという 問 題 であった マーシャルは, 経 済 的 な 貧 困 は 人 間 性 を 堕 落 させて 非 能 率 的 な 労 働 を 生 む 原 因 であるという 判 断 に 基 づき, 国 内 の 労 働 者 階 級 の 貧 困 問 題 こそは 解 決 すべき 社 会 の 最 大 の 課 題 であるとした 彼 は, 人 類 の 福 祉 の 増 大 を 願 うという 暖 かい 心 を 持 っていたけれども,その 一 方 で, 労 働 者 階 級 の 貧 困 問 題 を 解 決 するためには, 何 よりも 冷 静 な 頭 脳 による 科 学 的 な 分 析 が 必 要 であるという 態 度 を 堅 持 した 経 済 学 者 であった マーシャル 経 済 学 の 基 本 姿 勢 は, 冷 静 な 頭 脳 と 暖 かい 心 (cool heads but warm hearts)であった(marshall, 1985, 174, 訳 31) マーシャルは 経 済 学 原 理 において, 労 働 者 階 級 の 貧 困 問 題 を 解 決 して, 世 界 経 済 における 産 業 上 の 主 導 権 を 確 保 するという, 二 つの 政 策 的 課 題 を 同 時 に 解 決 するための 処 方 箋 として, 漸 進 的 な 経 済 進 歩 (economic progress)が 必 要 であり 可 能 でもある,という 見 解 を 提 示 した マーシャルは, 革 新 的 企 業 家 (undertaker)が 自 発 的 に 遂 行 するところの 産 業 組 織 (industrial organization)の 改 善 による 国 民 分 配 分 ( 国 民 所 得 )の 増 大 という, 経 済 進 歩 の 重 要 性 を 強 調 した 彼 は, 土 地 労 働 資 本 という 三 つの 生 産 要 素 の 他 に, 第 4の 生 産 要 素 として 組 織 を 導 入 し た マーシャルにおける 産 業 組 織 の 改 善 とは, 分 業, 機 械 化, 産 業 の 地 域 特 化, 企 業 経 営, 大 規 模 生 産 のことである 彼 は, 革 新 的 企 業 家 が 遂 行 する 産 業 組 織 の 改 善 を 伴 った 国 民 所 得 の 増 大 の ことを, 経 済 進 歩 の 過 程 と 呼 んだのである( 橋 本 1990, 第 5 章 ) 3.マーシャルによるミル 賃 金 基 金 説 への 批 判 労 働 者 の 高 賃 金 を 実 現 するためには, 何 よりも 革 新 的 企 業 家 が 遂 行 する 産 業 組 織 の 改 善 が 必 要 47
東 北 学 院 大 学 経 済 学 論 集 第 175 号 である,というのがマーシャル 賃 金 論 の 基 本 的 思 考 法 であった ところが, 一 方 では, 労 働 者 の 高 賃 金 は 労 働 人 口 の 制 限 によってもたらされるものだ,という 通 説 が 存 在 していた 通 俗 的 な 賃 金 基 金 説 から 導 出 された, 人 口 制 限 高 賃 金 という 通 説 を,マーシャルは 次 のように 批 判 した それは, ある 変 化 の 即 時 的 な 効 果 (immediate effect)と 永 続 的 な 効 果 (permanent effect) (Marshall, 1920, p.696. 訳 4279)とを 混 同 したものである,と マーシャルは 経 済 学 原 理 第 6 編 第 13 章 の 中 で 次 のようにいう 労 働 を 削 減 することによっ て 賃 金 を 永 続 的 に 高 めることができるという 議 論 は, 永 続 的 に 固 定 した 労 働 元 本 (work-fund) すなわち, 労 働 の 価 格 の 如 何 に 関 係 なく 行 われる 仕 事 の 一 定 量 が 存 在 するという 前 提 に 基 づいて いる そのような 前 提 には 何 らの 根 拠 も 存 在 しない 逆 に, 労 働 に 対 する 需 要 は 国 民 分 配 分 か ら 生 れる すなわち 労 働 から 生 れる ある 種 の 労 働 が 少 なくなれば, 他 の 種 類 の 労 働 に 対 して より 少 ない 需 要 しか 存 在 しなくなる 労 働 が 稀 少 であれば, 少 数 の 企 業 しか 起 らないであろう (Marshall, 1920, p.697. 訳 4280)と また,マーシャルは 次 のようにいう 生 産 量 を 制 限 するための 反 社 会 的 な 策 謀 によって 賃 金 を 引 き 上 げようとする 試 みは, 富 裕 階 級 一 般 を,そしてとくに 企 業 心 に 富 み, 困 難 を 克 服 するこ とを 喜 ぶ 精 神 によって, 労 働 者 階 級 にとっても 最 も 重 要 であるような 種 類 の 資 本 家 を, 海 外 に 追 いやることは 確 かである なぜなら, 彼 らのやむことを 知 らない 創 意 心 は, 国 民 の 指 導 的 地 位 の 確 立 に 役 立 ち, 人 々の 労 働 の 実 質 賃 金 を 高 めることを 可 能 にし, 他 方 において, 機 械 の 供 給 の 増 大 を 促 進 し,それによって 能 率 の 向 上 に 役 立 ち, 国 民 分 配 分 の 成 長 を 持 続 させるからである (Marshall, 1920, pp.699-700. 訳 4283)と このように,マーシャルは, 政 府 による 人 口 制 限 政 策 が 実 施 された 場 合 に,その 即 時 的 効 果 は 高 賃 金 であるが,その 永 続 的 効 果 は, 肝 心 要 な 革 新 的 企 業 家 の 海 外 流 出 による 国 民 所 得 それ 自 体 の 減 少 による 低 賃 金 である,という 考 え 方 を 示 した 彼 は, 創 意 心 を 持 った 革 新 的 企 業 家 が 遂 行 する 産 業 組 織 の 改 善 こそ, 労 働 者 階 級 の 貧 困 問 題 の 解 決 と 世 界 経 済 における 産 業 上 の 主 導 権 問 題 とを 同 時 に 解 決 しうる 有 効 な 方 法 である,という 考 え 方 を 提 示 した マーシャルは 経 済 学 原 理 の 付 録 J において, 経 済 学 者 の 通 俗 的 な 賃 金 基 金 説 を 取 り 上 げ, それに 対 して 次 のような 理 論 的 な 検 討 を 加 えている まずマーシャルは,J.S.ミルが 経 済 学 原 理 において 賃 金 の 理 論 を 需 要 供 給 の 説 明 の 前 におき, 賃 金 は 人 口 と 資 本 との 割 合 に 主 として 依 存 する と 述 べた 点 を 指 摘 する(Marshall, 1920, p.824. 訳 4322) 賃 金 の 大 きさは, 雇 われて 働 く 労 働 者 階 級 の 人 数 と 流 動 資 本 のうち, 労 働 の 直 接 の 雇 用 に 支 出 される 部 分 から 構 成 される 賃 金 基 金 と 呼 んでよいものの 総 額 との 割 合 によって 決 まるものである,というのがいわゆる 賃 金 基 金 説 である これは, 賃 金 の 大 きさは 資 本 の 大 きさによって 制 限 される (Marshall, 1920, p.823. 訳 4320)という 主 張 であった マ-シャルによれば, 賃 金 基 金 説 とは,1 年 に1 作 しか とれない 農 業 生 産 物 を 念 頭 に 置 いたものであった ところでミルは, 友 人 ソーントン(William Thomas Thornton, 1813-80)からの 批 判 を 受 け 入 れて,1869 年 に,フォーナント レビュー 誌 上 において, 賃 金 基 金 説 を 撤 回 した( 美 濃 口 1990, 48
マルサス,ミル,そしてマーシャル 103-104) ソーントンからの 批 判 とは, 貨 幣 資 本 は, 原 材 料 や 固 定 資 本 にも 当 てられるものであ るから, 貨 幣 資 本 のうち 賃 金 に 当 てられる 部 分 ( 賃 金 基 金 )は 予 め 決 まっているわけではないと いうことであり,また, 賃 金 基 金 はマクロ 的 にも 一 定 不 変 のものではない,というものであった マーシャルは,ミルの 賃 金 基 金 説 放 棄 は 性 急 であった とミルを 批 判 している マーシャルは, 賃 金 基 金 説 の 正 しい 部 分 と 誤 った 部 分 とを 区 別 し,むしろその 誤 った 部 分 を 批 判 的 に 検 討 するこ とによって, 動 態 的 な 所 得 分 配 論 としての 有 機 的 成 長 論 を 確 立 したのであった 賃 金 基 金 説 というのは, 資 本 の 大 きさが 賃 金 の 大 きさを 決 めるとする 点 で, 労 働 の 需 要 面 しか 見 ていなかった,ということができる それに 対 してマーシャルは, 労 働 の 供 給 態 度 が 賃 金 を 高 めるという, 労 働 の 質 的 側 面 をも 重 視 した マーシャルは, 産 業 組 織 の 改 善 によって 国 民 分 配 分 ( 国 民 所 得 )それ 自 体 が 増 大 しうるという 点 を 強 調 した マーシャルには, 国 民 所 得 の 決 定 理 論 こそはなかったものの, 彼 は 国 民 所 得 論 と 賃 金 論 とを 結 びつけて 考 えていた,ということができ るだろう マーシャルの 賃 金 論 は, 限 界 生 産 力 によって 労 働 の 需 要 を,また 限 界 負 効 用 (marginal disutility)によって 労 働 の 供 給 を 説 明 する,というものではなかった マーシャルの 賃 金 論 は, 労 働 の 質 的 側 面 を 重 視 したものであり, 時 間 の 要 素 を 重 視 した 動 態 的 な 分 析 であった マーシャ ルは, 長 期 分 析 を 重 視 する 立 場 から 労 働 の 需 給 を 分 析 した,ということができる 賃 金 基 金 説 に おいては, 資 本 が 産 業 活 動 (industry)を 制 約 する という 一 面 が 強 調 された この 点,マーシャ ルにおいては, 資 本 が 産 業 活 動 を 制 約 する という 側 面 ばかりではなく, 産 業 活 動 が 資 本 を 制 約 する というもうひとつの 側 面 も 重 視 されていたのである( 小 沼 2007, 136) このように,マーシャルによれば, 人 口 制 限 によって 高 賃 金 がもたらされるとしても,それは 即 時 的 効 果 にすぎない 人 口 制 限 を 実 施 すれば, 革 新 的 な 企 業 家 の 海 外 流 出 が 生 じるであろう 人 口 制 限 の 永 続 的 効 果 は, 高 賃 金 ではなくて 低 賃 金 となるであろう 人 口 制 限 政 策 は, 産 業 上 の 主 導 権 を 喪 失 させる 産 業 上 の 主 導 権 を 保 持 しつつの 高 賃 金 のために 必 要 なことは, 人 口 制 限 ではなくて, 産 業 組 織 の 改 善 であるというのが,マーシャルの 考 え 方 であった Ⅴ むすび 本 稿 では, 貧 困 問 題 と 人 口 増 加 との 関 連 を 中 心 にして,マルサス,J.S.ミル,マーシャルの 見 解 を 考 察 してきた それぞれの 経 済 思 想 が 示 唆 する 現 代 的 意 義 について, 若 干 の 考 察 を 行 うこと により,むすびとしたい マルサス,ミル,マーシャルは,それぞれ, 実 際 問 題 に 対 して 光 を 投 じるという 明 確 な 問 題 意 識 を 持 っていた マーシャルはそれを 暖 かい 心 と 表 現 したのである まず,マルサスは, 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 は 制 度 の 改 善 によって 改 善 できるとするゴドウィンの 考 え 方 を 批 判 した マルサスは, 貧 困 問 題 は 自 然 法 則 としての 人 口 圧 力 によって 不 可 避 的 に 発 生 するという, 人 口 重 視 の 思 想 を 提 示 した マルサスにおいて, 人 口 増 大 の 圧 力 による 下 層 階 級 の 貧 困 問 題 は,いかなる 人 間 の 制 度 の 下 でも 不 可 避 的 に 生 じる 普 遍 的 なものと 理 解 される マルサ 49
東 北 学 院 大 学 経 済 学 論 集 第 175 号 スは, 貧 困 問 題 は 制 度 の 改 善 によって 解 決 可 能 であるという 考 え 方 を, 人 口 原 理 によって 批 判 し たのであった 次 に,J.S.ミルは,マルサス 人 口 原 理 を 継 承 しつつも, 高 賃 金 のためには 人 口 制 限 が 必 要 であ るという 新 マルサス 主 義 の 見 解 を 提 示 した 先 進 国 の 人 々は, 人 間 的 進 歩 のために, 富 の 分 配 の 改 善 と 自 発 的 な 人 口 制 限 によって, 資 本 と 人 口 の 停 止 状 態 に 入 ろうではないか,とミルは 提 唱 し た ミルは, 貧 困 問 題 を 解 決 するための 有 効 な 政 策 として, 人 口 制 限 政 策 を 提 案 した ミルは, 自 らの 地 位 を 改 善 するために 苦 闘 している 状 態 は, 文 明 の 進 歩 の 途 上 における 必 要 な 一 段 階 にす ぎない,としたのであった そしてマーシャルは,こうしたミルの 人 口 制 限 政 策 を 批 判 した マーシャルにおいて, 同 時 に 解 決 すべき 政 策 的 課 題 は 次 の 二 つであった 第 1は, 労 働 者 階 級 の 貧 困 問 題 の 解 決, 第 2は, 世 界 経 済 における 産 業 上 の 主 導 権 の 確 保 である マーシャルは, 人 口 制 限 の 即 時 的 効 果 と 永 続 的 効 果 とを 区 別 した 上 で, 人 口 制 限 によって 企 業 家 精 神 が 衰 退 すれば, 高 賃 金 は 永 続 しないとい う 見 解 を 提 示 した マーシャルによれば, 人 口 制 限 政 策 は, 有 機 的 成 長 を 阻 止 する 要 因 である 労 働 者 が, 経 済 進 歩 の 成 果 である 高 賃 金 を, 浪 費 せずに 子 弟 の 教 育 費 として 活 用 すれば, 生 活 基 準 の 向 上 が 可 能 となるであろう 経 済 進 歩 と 生 活 基 準 の 向 上 とは, 相 互 依 存 的 な 関 係 に ある 経 済 社 会 が 有 機 的 成 長 を 持 続 する 鍵 は 労 働 者 教 育 にある 経 済 進 歩 の 成 果 である 高 賃 金 が 生 活 基 準 の 向 上 に 結 実 するためには, 労 働 者 教 育 が 決 定 的 に 重 要 である,とマーシャルは 考 えていたのである さて, 貧 困 問 題 解 決 のためには, 歴 史 的 背 景 を 理 解 し, 理 論 的 に 分 析 し, 未 来 の 政 策 をイメー ジする 力 が 必 要 である マルサス,J.S.ミル,マーシャルは,それぞれ, 当 時 の 支 配 的 な 理 論 を 批 判 し,それに 代 替 する 新 しい 理 論 を 提 示 した 経 済 思 想 史 を 学 ぶ 意 味 は,このような 考 え 方 の 違 いを 理 解 して, 創 造 的 批 判 の 眼 を 養 う 点 にある マーシャルは,それを 冷 静 な 頭 脳 と 表 現 したのであった 参 考 文 献 Malthus, T.R. 1798(1926)An Essay on the Principle of Population, Reprinted for the Royal Economic Society, London, Macmillan. 永 井 義 雄 訳 人 口 論 中 公 文 庫, 1973 年 Malthus, T.R. 1826 An Essay on the Principle of Population, 6th ed., 2vols., London. 南 亮 三 郎 監 訳 マル サス 人 口 の 原 理 [ 第 6 版 ] 中 央 大 学 出 版 部,1985 年 Malthus, T.R. 1820(1989)Principles of Political Economy, 2vols, variorum edition. Edited by J. Pullen, Cambridge U.P. 小 林 時 三 郎 経 済 学 原 理 ( 初 版 ) 全 2 巻, 岩 波 文 庫,1968 年 Mill, J.S. 1848(1965)Principles of Political Economy with some of their Applications to Social Philosophy, (1st ed., 1848, 7th ed., 1871), Collected Works of John Stuart Mill, Toronto, vol. Ⅱ Ⅲ. 末 永 茂 喜 訳 経 済 学 原 理 全 5 巻, 岩 波 文 庫,1959-1963 年 50
マルサス,ミル,そしてマーシャル Marshall, A. 1885 ʻʻPresent Position of Economicsʼʼ, in Pigou, A.C. ed., Memorials of Alfred Marshall, Macmillan, 1925. 長 澤 越 郎 訳 マーシャル 経 済 論 文 集 岩 波 ブックセンター,1991 年 Marshall, A. 1920 Principles of Economics,(1st ed., 1890), 8th ed., Macmillan. 永 澤 越 郎 訳 経 済 学 原 理 全 4 巻, 岩 波 ブックセンター 信 山 社,1985 年 邦 訳 には 原 典 のページ 数 も 記 されている Ricardo, D. 1951-73 The Works and Correspondence of David Ricardo, ed. P. Sraffa,(11vols.), Cambridge U. P. 日 本 語 版 リカードウ 全 集 刊 行 委 員 会 訳 リカードウ 全 集 全 11 巻, 雄 松 堂,1969 ~ 99 年 邦 訳 には 原 典 のページ 数 も 記 されている Ricardo, D. 1817 On the Principles of Political Economy, and Taxation(1st ed., 1817, 2nd ed., 1819, 3rd ed., 1821), Works, Ⅰ. 羽 鳥 卓 也 吉 澤 芳 樹 訳 経 済 学 および 課 税 の 原 理 上 下 巻, 岩 波 文 庫,1987 年 Whitaker, J.K.ed. 1990 Centenary Essays on Alfred Marshall, Cambridge University Press. J.K.ホイティカー 編 著 橋 本 昭 一 監 訳 マーシャル 経 済 学 の 体 系 ミネルヴァ 書 房,1999 年 E.J.ホブズボーム 1984 産 業 と 帝 国 浜 田 正 夫 神 武 康 四 郎 和 田 一 夫 訳, 未 来 社 E.J.ホブズボーム 1992 帝 国 の 時 代 Ⅰ 野 口 建 彦 野 口 照 子 訳,みすず 書 房 T.R.マルサス 稿 柳 田 芳 伸 訳 2008 ゴドウィンの 人 口 について を 評 す 長 崎 県 立 大 学 論 集 41⑷ 磯 川 曠 1989 マーシャルにおける 経 済 と 倫 理 橋 本 昭 一 編 近 代 経 済 学 の 形 成 と 展 開 昭 和 堂 井 上 琢 智 坂 口 正 志 編 著 1993 マーシャルと 同 時 代 の 経 済 学 ミネルヴァ 書 房 井 上 義 朗 1993 市 場 経 済 学 の 源 流 中 公 新 書 岩 下 伸 朗 2008 マーシャル 経 済 学 研 究 ナカニシヤ 出 版 小 沼 宗 一 2007 増 補 版 イギリス 経 済 思 想 史 創 成 社 斧 田 好 雄 2006 マーシャル 国 際 経 済 学 晃 洋 書 房 小 泉 仰 1997 J.S.ミル (イギリス 思 想 叢 書 10), 研 究 社 近 藤 真 司 1997 マーシャルの 生 活 基 準 の 経 済 学 大 阪 府 立 大 学 経 済 研 究 叢 85 佐 藤 有 史 2005 トマス ロバート マルサス 鈴 木 信 雄 編 経 済 思 想 4 経 済 学 の 古 典 的 世 界 1 日 本 経 済 評 論 社 佐 々 木 憲 介 2001 経 済 学 方 法 論 の 形 成 北 海 道 大 学 図 書 刊 行 会 佐 々 木 憲 介 2010 歴 史 学 派 における 帰 納 法 の 意 味 只 越 親 和 佐 々 木 憲 介 編 イギリス 経 済 学 における 方 法 論 の 展 開 昭 和 堂 四 野 宮 三 郎 1997 J.S.ミル 思 想 の 展 開 Ⅰ 御 茶 の 水 書 房 杉 原 四 郎 1990 西 欧 経 済 思 想 史 研 究 同 文 館 杉 本 栄 一 1981 近 代 経 済 学 の 解 明 ( 上 下 ) 岩 波 文 庫 千 賀 重 義 2006 D.リカードウとT.R.マルサス 大 田 一 廣 鈴 木 信 雄 高 哲 男 八 木 紀 一 郎 編 新 版 経 済 思 想 史 名 古 屋 大 学 出 版 会 中 澤 信 彦 2009 イギリス 保 守 主 義 の 政 治 経 済 学 ミネルヴァ 書 房 中 村 廣 治 2000 T.R.マルサス: 内 政 的 成 長 否 認 の 経 済 学 中 村 廣 治 高 哲 男 編 著 市 場 と 反 市 場 の 経 済 思 想 経 済 学 の 史 的 再 構 成 ミネルヴァ 書 房 51
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