第 25 回 鉄 道 総 研 講 演 会 東 京 工 業 大 学 特 命 教 授 ソリューション 研 究 機 構 先 進 エネルギー 国 際 研 究 センター 長 柏 木 孝 夫 1.はじめに 縮 原 発 に 向 かうことは 不 可 避 だとしても 一 次 エネ ルギーの 選 択 肢 を 減 らさず 安 定 供 給 を 維 持 するため に 一 定 の 割 合 で 原 発 を 維 持 すべきというのが 専 門 家 としての 筆 者 の 意 見 である 安 全 はもちろん 大 事 だ が 同 様 に 安 定 供 給 も 極 めて 重 要 であるということを 認 識 しなくてはならない 安 定 供 給 とは 必 要 な 時 に 必 要 な 量 を 適 切 な 価 格 で 供 給 することである 生 活 や 産 業 に 不 可 欠 なエネルギーを 安 定 供 給 できなくなれ ば 産 業 は 勿 論 のこと 日 本 国 憲 法 第 25 条 で 保 証 されて いる 生 存 権 が 脅 かされることにもなる 一 方 において 米 国 を 中 心 に 巻 き 起 こっている シェールガス 革 命 の 影 響 もあり 世 界 的 に 天 然 ガ スシフトが 急 激 に 進 んでいることは 周 知 のとおりで ある 天 然 ガスの 価 格 は 急 落 し その 需 要 が 増 大 する のとは 対 照 的 に 石 油 が 供 給 過 多 になり こちらも 価 格 が 急 落 している 供 給 調 整 等 によりいずれ 天 然 ガ スの 価 格 は 上 がり 需 要 も 抑 えられるだろう こうし た 価 格 変 動 は これからも 続 き やむことがないだろ う 資 源 を 持 たない 我 が 国 は 電 源 や 一 次 エネルギー を 自 由 に 選 べるような 状 況 にはない だからこそ 安 定 供 給 のためには 一 次 エネルギーの 選 択 肢 を 減 らすべ きではないと 筆 者 は 主 張 し 続 けている 我 が 国 は 東 日 本 大 震 災 に 伴 う 東 京 電 力 福 島 第 一 原 発 の 事 故 という 大 きな 危 機 に 直 面 した 被 災 した 方 々 をはじめ 多 くの 人 が もう 二 度 と 原 発 は 持 つべきでな いと 思 うのも 心 情 論 的 にはよく 理 解 できる しかし だからこそ 日 本 は この 原 発 事 故 を 乗 り 越 えるための 技 術 開 発 を 進 め その 上 でじっくり 方 向 性 を 見 定 める べきではないだろうか 危 機 を 表 す 英 語 crisis は 分 岐 点 という 意 味 も 持 つ このまま 何 もせずに 原 発 か ら 撤 退 するか 事 故 を 乗 り 越 える 技 術 開 発 によって 世 界 に 貢 献 するか その 分 岐 点 に 立 たされているのであ る 安 定 供 給 の 面 からも 世 界 への 貢 献 という 面 から も やはり 一 定 の 割 合 で 原 発 を 維 持 すべきと 考 える 2.グリーン イノベーション 筆 者 は21 世 紀 における 日 本 の 成 長 エンジンは 原 子 力 も 含 めた 低 炭 素 型 の 経 済 モデルを 逸 早 く 構 築 すること にあると 考 えている 科 学 的 分 析 的 に 理 論 武 装 され た 国 際 世 論 が 必 ず 低 炭 素 社 会 の 実 現 を 力 強 く 牽 引 す る 世 界 は 今 大 きな 転 換 点 にある 今 までのエネル ギー 社 会 の 延 長 に これからの 社 会 の 未 来 像 はない 低 炭 素 社 会 を 実 現 していくためのパラダイムシフトが 求 められている まずは 速 効 性 のある 省 エネルギー 省 電 力 であり 供 給 側 に 立 てば 化 石 から 非 化 石 へ の 燃 料 転 換 と 化 石 燃 料 のクリーン 化 や 高 度 利 用 技 術 の 確 立 が 必 要 になる 今 後 10 ~ 20 年 をかけてこ れらの 課 題 を 克 服 することで 新 たなエネルギーシス テムを 構 築 していく 時 期 を 迎 えている そのためには 低 炭 素 社 会 へのパラダイムシフトを 促 すための 技 術 開 発 そしてイノベーションが 求 められ る ここで 重 要 なことは イノベーションとは 新 た な 知 や 技 術 が 牽 引 する 社 会 経 済 システムの 構 造 改 革 と 定 義 されるが まず 開 発 技 術 がもたらす 新 たな 価 値 創 造 を 明 確 に 示 す 必 要 がある 日 本 の 場 合 技 術 先 導 型 のアプローチを 取 るケースが 多 く この 面 では 欧 米 の 取 り 組 みに 学 ぶことが 多 い 太 陽 光 発 電 等 の 開 発 は 人 類 に 公 平 に 与 えられた 自 然 エネルギーをうまく 生 活 の 中 に 取 り 込 むことにより 豊 かな 暮 しの 実 現 とい う 価 値 を 創 造 するためのイノベーションである 3. 再 生 可 能 エネルギー 法 案 により 加 速 される 新 エネ 社 会 再 生 可 能 エネルギー( 再 エネ)の 固 定 価 格 買 取 法 案 が 成 立 したことは 喜 ばしい ただ 割 高 な 電 力 を 市 場 に 導 入 するわけだから 何 らかの 政 策 が 必 要 になり 本 法 は 全 ての 電 力 の 需 要 家 から 負 担 金 という 形 で 徴 収 する この 負 担 金 は 電 力 料 金 の 一 部 であり 負 担 金 拠 出 を 拒 否 すれば 電 力 供 給 が 停 止 されることになる 電 力 は 生 活 や 産 業 活 動 にとり 必 需 品 であるため 広 義 に 考 え れば 一 種 の 目 的 税 のようなものである 税 金 ぐらい 利 1
第 25 回 鉄 道 総 研 講 演 会 害 がからむものはなく 制 度 の 運 用 に 対 しては 国 民 的 議 論 が 必 須 である 本 法 は 菅 前 首 相 が 退 任 三 法 案 のひとつに 組 み 入 れ られたため 法 案 成 立 の 最 終 時 にはかなり 慌 ただし かったことは 否 めず かつ 当 初 筆 者 らが 考 えていた 骨 子 に 大 きな 修 正 が 加 えられた 固 定 価 格 買 取 法 は すでに 世 界 数 十 カ 国 で 採 用 して おり 我 が 国 では2009 年 にエネルギー 産 業 政 策 等 の 観 点 から 太 陽 光 発 電 の 余 剰 電 力 だけを 対 象 に 自 民 党 政 権 下 で 始 められた 今 回 は 買 い 取 り 対 象 を 風 力 中 小 水 力 地 熱 バイオマスにも 拡 大 した 上 で 非 住 宅 用 事 業 用 ソーラーも 含 め 全 量 を 買 い 取 ることになる すなわち これまでは 太 陽 光 発 電 の 自 家 発 自 家 消 費 を 対 象 に その 余 剰 分 だけを 買 い 取 り 対 象 にしてい たが 事 業 用 も 対 象 を 拡 張 した 太 陽 光 発 電 の 余 剰 だけ を 対 象 にした 背 景 には 国 民 負 担 をなるべく 低 減 し 国 際 的 にはげしい 競 争 を 行 っている 太 陽 光 発 電 を 増 大 さ せるという 産 業 政 策 上 の 理 念 があった エネルギー 自 給 率 の 向 上 やCO 2 排 出 の 低 減 を 考 えると 当 時 は 化 石 から 非 化 石 への 流 れを 加 速 させる 中 で 原 子 力 と 再 エネ が 双 璧 にあり 量 的 には 原 子 力 が 圧 倒 的 に 優 勢 だった しかし 福 島 原 発 事 故 により 事 態 は 一 変 し 原 子 力 代 替 として 再 エネの 拡 大 が 一 挙 に 注 目 を 集 め 今 回 の 法 案 成 立 が 急 がれたことは 言 うまでもない この 法 案 は 再 エネ 事 業 者 側 に 立 ったものであり 修 正 段 階 で その 感 が 一 層 強 まった 附 則 第 7 条 では 当 初 3 年 間 に 限 り 買 取 価 格 決 定 には 事 業 者 が 受 けるべき 利 潤 に 配 慮 すべき( 具 体 的 に はIRR 6%になるような 価 格 設 定 )としており 事 業 創 生 を 促 している 確 かにメガソーラーなどが 普 及 すれば 太 陽 光 パネルの 価 格 は 急 激 に 低 減 し 最 終 的 には 設 置 工 事 の 割 合 が 大 きい 住 宅 用 への 導 入 も 一 気 に 加 速 されるメリットもある いずれにせよ 電 力 価 格 上 昇 という 悪 影 響 や 事 業 者 への 過 剰 な 利 益 付 与 の 回 避 を 考 えながら 事 業 参 入 意 欲 を 奮 起 させるような 買 取 価 格 の 設 定 が 今 後 最 重 要 課 題 であり この 点 に 関 しては 欧 州 での 試 行 錯 誤 を 十 分 に 参 考 にし それ 以 上 の 先 進 的 な 制 度 運 用 に 心 がけな ければならない これら 買 取 価 格 以 外 に 本 法 案 では 電 力 会 社 に 再 エ ネ 発 電 設 備 の 電 力 系 統 への 接 続 義 務 を 明 記 している が 電 力 会 社 が 円 滑 な 供 給 確 保 に 支 障 が 生 ずる 場 合 に は 拒 否 できることもある 支 障 に 対 する 開 放 的 か つ 透 明 性 に 富 んだ 議 論 を 通 じ 国 民 負 担 が 少 なく 再 生 可 能 エネルギーの 導 入 が 最 も 増 大 できるよう 電 力 会 社 と 再 エネ 事 業 者 の 双 方 が 納 得 できる 系 統 連 係 のルー ルを 明 らかにしなければならない このエネルギー 政 策 により 再 生 エネルギーが 活 用 され 新 エネ 社 会 が 加 速 されることになるが 再 度 強 調 したいことは 大 規 模 電 源 を 基 盤 に 我 が 国 として 一 次 エネルギー 源 の 選 択 肢 を 減 らさず 国 力 を 増 大 させ るための 需 給 構 造 に 対 し 複 眼 的 な 視 点 で 国 民 合 意 を 形 成 してゆくことが 最 も 重 要 であり 本 法 は 大 きな 一 石 を 投 じたことは 言 うまでもない 4. 化 石 燃 料 の 高 度 利 用 コージェネ レーションへの 期 待 化 石 燃 料 の 高 度 利 用 の 切 り 札 として 確 認 されたシス テムがコージェネレーションである 2030 年 に 向 け 全 電 力 の 約 15% 程 度 の 導 入 を 目 標 に 今 後 推 進 策 がとられることになる この 方 針 は 原 発 比 率 がどうなるにせよ 変 わらない これは 発 電 能 力 にすると2500 ~ 3000 万 キロワットに 達 することになる 3つのシナリオの 原 案 を 議 論 した 経 済 産 業 省 の 総 合 資 源 エネルギー 調 査 会 の 基 本 問 題 委 員 会 でも 原 発 比 率 に 関 しては 議 論 が 紛 糾 したのとは 対 照 的 に このコージェネの 比 率 に 関 しては 全 くと 言 っ ていいほど 異 論 が 出 なかった 原 発 だけでなく 発 電 効 率 の 悪 い 老 朽 火 力 発 電 所 の 代 替 としても 期 待 でき 熱 需 要 も 含 めた 総 合 エネルギー 効 率 に 優 れ 需 要 地 に 設 置 するので 上 位 系 の 電 力 システムへの 負 荷 が 小 さく て 済 むといったメリットを 各 委 員 が 高 く 評 価 した このコージェネシステムの 導 入 促 進 のための 体 制 強 化 として 新 たに8 月 1 日 付 で 資 源 エネルギー 庁, 電 力 ガス 事 業 部 政 策 課 に 熱 電 併 給 推 進 室 ( 通 称 :コ ジェネ 推 進 室 ) が 設 置 された コージェネ 導 入 促 進 の 具 体 策 は 大 きく 分 けて4つ ある (1)サポート 体 制 の 強 化 (2) 市 場 創 成 (3) 設 備 の 導 入 支 援 (4) 燃 料 価 格 の 低 減 である これら4 つの 大 きな 柱 を 促 進 策 として 具 体 的 に 打 ち 出 せたこと は 極 めて 大 きな 意 義 があると 考 える (1)のサポート 体 制 の 強 化 は 8 月 1 日 付 のコジェ ネ 推 進 室 の 設 置 などによる このコジェネ 推 進 室 は 具 体 的 な 施 策 を 企 画 立 案 するとともに コージェネ 導 入 に 関 する 総 合 的 な 相 談 窓 口 として 各 地 域 の 経 済 産 業 局 や 関 係 部 局 他 省 庁 電 力 会 社 ガス 会 社 など と 連 携 し ワンストップサービスを 提 供 する 各 経 済 産 業 局 にも 担 当 窓 口 を 設 置 し 地 方 における 案 件 など 2
第 25 回 鉄 道 総 研 講 演 会 も 発 掘 していく (2)では ネガワット 取 引 や 余 剰 電 力 の 売 電 など の 市 場 創 成 に 取 り 組 む ネガワット 取 引 は 需 要 家 に よる 節 電 量 を 供 給 量 として 見 立 てた ネガワット を 取 引 するものである 需 給 逼 迫 が 想 定 される 場 合 に 需 要 側 の 負 荷 抑 制 による 節 電 分 を 入 札 などによって 確 保 する すでに 関 西 電 力 などが 自 主 的 に 開 始 してい る 大 阪 ガスと 新 電 力 (PPS)のエネット( 東 京 港 ) による 取 り 組 みでは コージェネシステムを 対 象 とす るネガワット 取 引 が 試 行 されている 余 剰 電 力 の 売 電 に 関 しては 経 産 省 のアクションは 早 かった 電 力 システム 改 革 の 方 向 性 が 明 確 になると 卸 電 力 取 引 所 に 分 散 型 グリーン 売 電 市 場 を 創 設 し コージェネや 太 陽 光 発 電 などの 分 散 型 電 源 を 対 象 に 1000キロワット 未 満 の 小 口 の 余 剰 電 力 などを 取 引 でき るようにした さらに 電 力 システム 改 革 が 進 めば 個 々のコージェネの 発 電 電 力 を 束 ねて 商 品 価 値 を 高 め るアグリゲーションビジネスも 可 能 になるだろう 最 新 のコージェネ 機 器 は 発 電 効 率 が 高 まり 使 用 で きる 電 力 と 熱 の 比 率 は ほぼ1 対 1にまでなっている 旧 型 の 機 器 では その 比 率 は1 対 2と 電 力 が 小 さかっ た 発 電 効 率 の 向 上 により 熱 需 要 がそれほど 多 くな い 小 規 模 の 施 設 などでもコージェネで 十 分 に 電 力 を 賄 え 少 ないながらも 余 剰 電 力 が 得 られる これを 束 ね て 売 電 できれば エネルギーを 余 すことなく 使 い 尽 く せるようになる (3)の 設 備 の 導 入 支 援 は 補 助 金 やグリーン 投 資 減 税 などが 主 な 施 策 となる 補 助 金 の 適 用 に 関 しては 否 定 的 な 意 見 もあったが 基 本 的 に 地 産 地 消 で 上 位 系 の 電 力 システムへの 負 荷 を 低 減 でき 新 たな 送 配 電 網 の 整 備 コストを 抑 えられるというメリットを 評 価 し 拡 充 される 方 向 にある (4)の 燃 料 価 格 の 低 減 に 関 しては 一 企 業 一 業 界 にとどまることなく 共 同 購 入 など 広 くエネルギー 業 界 が 協 力 して 取 り 組 む 必 要 があろう さらには 外 交 として 政 府 レベルでの 交 渉 も 重 要 になってくる 例 えば 米 国 とFTA( 自 由 貿 易 協 定 )を 結 んでいない 我 が 国 は 安 価 なシェールガスを 米 国 から 輸 入 したく ても オバマ 大 統 領 の 承 認 なしには 実 現 しない 首 相 や 経 産 相 をはじめ 政 府 の 働 きかけが 極 めて 重 要 に なってくる 5. 次 世 代 エネルギーとスマートグリッド 最 近 では スマートグリッド と 言 う 新 たなエネ ルギーインフラが 注 目 されている スマートグリッド とは 太 陽 電 池 や 風 力 発 電 などの 自 然 エネルギー 系 の 電 力 を 既 存 の 系 統 制 御 に 最 大 限 に 取 り 込 むことができ る 次 世 代 送 配 電 システムである 現 在 世 界 各 国 のい ずれにおいても 化 石 燃 料 系 や 原 子 力 などのメガインフ ラが 中 枢 を 成 している 中 国 では 電 力 全 体 の80%を 石 炭 火 力 が 占 め これら 系 統 からの 電 力 を 同 時 同 量 制 御 システムでディマンド 側 に 流 し 込 んでいる これから はその 系 統 制 御 が 変 わってくる 日 本 を 例 に 取 れば 現 状 では 電 信 柱 に6.6キロボル トの 送 配 電 システムを 設 け 引 き 込 み 線 で100ボルト 200ボルトに 分 けて 家 庭 に 送 り 込 んでいるが このシ ステムが 変 わる 各 家 庭 の 太 陽 電 池 などで 発 電 された 100ボルトの 電 源 が 系 統 制 御 に 入 り 込 み いわば 電 力 に 下 からの 噴 出 し 口 ができた 形 になってくる その 場 合 電 信 柱 にも( 情 報 通 信 技 術 )を 装 着 し どの 程 度 の 発 電 が 成 されているかを 検 知 する 必 要 が 生 ず る 各 家 庭 にもスマートメーターと 呼 ばれるの 計 器 をつけて 太 陽 電 池 などのディマンド 側 からの 逆 潮 流 をすべてチェックする を 活 用 することでメガ インフラとディマンド 側 を 双 方 向 で 管 理 する 電 力 の 新 しい 系 統 制 御 を 作 り 出 すことになる その 結 果 自 然 エネルギーを 最 大 限 取 り 込 むことでエネルギーコスト を 将 来 大 幅 に 削 減 できるシステムが 生 まれ 人 々に 豊 かさとゆとりのある 暮 らしがもたらされる 欧 州 ではさらに 進 んだシステムが 議 論 されている 例 えば オランダにナビゲーションの 専 門 会 社 がある この 会 社 は 全 世 界 のナビゲーションの 約 4 割 のシェ アを 握 っており 事 業 戦 略 としてナビゲーションによ る 高 度 情 報 処 理 を 活 かした 次 世 代 インフラの 構 築 を 目 指 している ナビゲーションの 端 末 は 日 本 が 優 れた 機 器 を 提 供 しているが システム 構 築 については 米 国 そして 欧 州 が 先 導 する 状 況 にある こうした 中 でその 企 画 は ナビゲーションを 核 とした 新 たなエネルギー システムの 構 築 を 狙 っている 想 定 しているシナリオは 次 のようなものである 今 までの 系 統 制 御 では メガインフラで 発 電 した 電 力 を 上 から 下 に 流 すだけだった ところが これからは 自 然 エネルギー 系 の 電 力 がディマンド 側 に 入 ってくる 技 術 開 発 が 進 み 太 陽 電 池 の 発 電 コストが 化 石 燃 料 並 み に 下 がれば 家 庭 用 電 源 として 標 準 装 備 され 住 宅 地 一 帯 の 多 くの 屋 根 に 太 陽 電 池 が 設 置 されるようにな る すなわち 各 住 宅 団 地 に 発 電 所 の 機 能 が 付 与 され る 団 地 は 電 力 の 消 費 地 でもあるので その 結 果 団 地 の 発 電 量 や 消 費 量 が 全 体 の 系 統 制 御 にかなりの 影 響 3
第 25 回 鉄 道 総 研 講 演 会 を 持 つようになる 太 陽 電 池 の 発 電 量 は 天 候 によって 左 右 される 雨 の 日 はほとんど 発 電 しないし 晴 れの 日 も 日 照 によって 発 電 量 が 変 わってくる このため 宇 宙 衛 星 のGPSを 経 由 したナビゲーションを 使 って 各 地 の 発 電 状 況 を 随 時 チェックし 最 適 な 予 測 を 可 能 とす るシステムが 欠 かせなくなり 電 力 需 給 制 御 全 体 の 鍵 を 握 るようになる ナビゲーションとスマートメー ターを 連 動 させれば 戸 別 の 発 電 出 力 も 把 握 できる 携 帯 電 話 などのと 組 み 合 わせることで 家 庭 内 の 電 力 を 無 駄 なく 使 う( 例 えば 冷 蔵 庫 など 常 時 必 要 な 電 力 を 上 回 った 発 電 が 得 られた 時 に 洗 濯 機 を 動 か す) 地 域 の 余 剰 電 力 を 他 の 地 域 に 回 す( 例 えば 日 照 の 強 い 地 域 から 雨 がふっている 地 域 に 電 力 を 融 通 す る) ことなども 可 能 になってくる つまり エネルギー システムそのものがスマート 化 する その 上 で 車 の 電 化 がスマート 化 に 拍 車 をかける プラグイン ハイ ブリッド 車 や 電 気 自 動 車 が 普 及 すると ガソリンでは なく 電 気 で 車 を 動 かすようになるため 運 輸 用 途 にも 余 剰 電 力 を 回 すルートが 拓 けるからである 特 に 鉄 道 用 電 力 需 要 と 民 生 用 電 力 とのマッチングは 極 めて 良 好 な 関 係 にあり システム 的 な 対 応 が 強 く 望 まれる 結 果 として 地 域 のエネルギーシステム 全 体 をナビ ゲーションで 予 測 制 御 しながら 最 適 化 するシステムが 生 まれてくる( 図 1) これは 新 たな 知 や 技 術 が 牽 引 する 社 会 経 済 システムの 構 造 改 革 を 可 能 とし 無 市 型 排 熱 が 有 効 利 用 できる 面 的 ネットワークインフ 電 化 村 図 も 1.コミュニティ エネルギーマネージメントシステムの 一 気 に 電 化 できる 可 能 性 すら 秘 めており 新 ラ いわば 循 環 型 静 概 脈 念 インフラの 図 整 備 が 成 されてこそ しい 価 値 の 創 造 をもたらす 6. 都 市 エネルギー 全 体 最 適 化 とスマー トエネルギー 我 が 国 は 低 炭 素 モデル 国 家 として 省 エネ 性 自 律 性 環 境 性 に 富 んだ 低 炭 素 エネルギー 需 給 構 造 のグランド デザインを 明 確 に 示 す 責 務 がある 私 は 科 学 的 検 証 から 電 力 に 関 して 言 えば 原 子 力 石 炭 天 然 ガスなどのメガインフラが 全 体 のベースを 担 い その 基 盤 の 上 に 燃 料 電 池 ヒートポンプなど 省 エネルギー 性 に 富 んだトップランナー 機 器 群 や 自 立 性 の 高 い 地 域 共 生 型 の 新 エネルギーが 適 切 な 規 模 でク ラスターを 形 成 してゆくことになると 確 信 している 低 炭 素 社 会 に 向 けた 都 市 エネルギーシステムのグラ ンドデザインには 例 えば 都 市 内 の 商 業 施 設 ビルな どを 良 質 な 拠 点 ストックとして 捉 え エネルギーマ ネージメントシステム(BEMS)などの 導 入 により 新 たな 省 エネルギーをネットワーク 的 に 達 成 してゆく ことが 必 要 となる これら 広 域 BEMSすなわちCEMS を 都 市 集 積 部 に 構 築 し 最 先 端 超 省 エネインフラ を 整 備 できれば 今 後 問 題 となる 既 存 の 中 小 規 模 施 設 への 双 方 向 遠 隔 制 御 インフラとしても 利 用 可 能 とな り CO₂ 削 減 ポテンシャルは 極 めて 大 きい また 都 市 部 のバイオマス 系 エネルギー 拠 点 である 清 掃 工 場 や 下 水 処 理 場 の 存 在 も 重 要 となる 膨 大 な 都 低 炭 素 都 市 が 機 能 する 今 後 太 陽 光 発 電 や 燃 料 電 池 グリーン コール ( 石 炭 ) 複 合 発 電 原 子 力 発 電 携 帯 (カーナビ) 天 然 ガス GPS 緊 急 時 電 源 システム マイクログリッド 都 市 エリア 急 速 充 電 システム 住 宅 コミュニティ コミュニティレベルでの 双 方 向 エネルギー 融 通 システム 夜 充 電 して 昼 利 用 系 統 メガインフラ 急 速 充 電 ステーション ( 郵 便 事 業 車 など) 夜 : 他 住 宅 のPHV/EVの 電 気 を 利 用 昼 : 他 住 宅 のPHV/EVに 充 電 携 帯 ( 課 金 ) 充 電 ステーション 図 1 夜 :PHV/EVの 電 気 を 住 宅 内 で 利 用 昼 : 余 剰 電 力 をPHV/EVに 充 電 携 帯 (スマートメータ) コミュニティ エネルギーマネージメントシステムの 概 念 図 kashiwagi Lab 4
第 25 回 鉄 道 総 研 講 演 会 などの 分 散 型 電 源 が 建 築 物 内 や 屋 根 などに 大 量 導 入 さ れてくると 既 存 電 力 系 統 のスマートグリット 化 はも とより これらのマネージメントシステムは 電 力 だけ でなく 熱 も 融 通 するスマートエネルギーネットワーク としてCO 2 を 削 減 するアドバンストシステムへと 発 展 させるための 新 しいインフラとなり 低 炭 素 社 会 の 実 現 には 欠 かせないものとなる( 図 2) 一 方 燃 料 電 池 を 見 据 えた 水 素 社 会 の 到 来 も 電 力 化 傾 向 の 高 まりと 共 に 必 ず 訪 れる 将 来 的 には 需 要 地 に 知 能 を 備 えた 各 種 分 散 型 システ ム 群 が 大 規 模 送 配 電 系 統 の 一 端 に 最 適 潮 流 制 御 を 可 能 とするスマートネットワークが 形 成 され 系 統 との 調 和 を 図 りつつ 既 存 の 空 間 インフラを 高 度 に 活 用 しな がら 電 力 だけでなく 熱 や 物 質 ( 例 えば 水 素 )までも 併 給 する 統 合 型 インフラを 適 切 に 整 備 することが 究 極 の 省 エネルギーを 実 現 し 再 生 可 能 エネルギーを 最 大 限 とり 込 める 低 炭 素 社 会 の 公 共 インフラそのものとな り 結 果 として 社 会 コストミニマムを 達 成 する 我 が 国 は 愛 知 万 博 をはじめとし すでにマイクログリッド という 型 で2030 年 の 低 炭 素 社 会 の 姿 を 世 界 に 先 駆 け 発 信 している 7.エピローグ これからのグラ ンドデザインとは? 2050 年 に 向 け 我 々が 目 指 すべき 未 来 エネルギーシ ステムのグランドデザインとはどのようなものか す でにおわかりと 思 うが 筆 者 はエネルギーシステム に 二 者 択 一 はないと 考 えている 今 回 の 原 子 力 発 電 の 事 故 を 乗 越 え 一 層 安 全 性 を 高 めることにより 原 子 力 を 選 択 する 国 も 多 く 出 てくるであろう 仮 に 日 本 が どうあれ 新 興 国 は 猛 烈 な 経 済 成 長 を 目 指 す 経 済 が 伸 びればエネルギー 消 費 が 伸 びるのは 不 可 避 だ その 場 合 苛 烈 な 資 源 争 奪 戦 も 抑 え 持 続 可 能 な 成 長 を 助 けるエネルギー 源 を 考 えれば 自 ずと 選 択 肢 は 限 られ る エネルギー 量 の 比 較 では ウラン1グラムに 対 して 石 炭 は3トン つまり300 万 倍 の 高 発 熱 量 を 誇 る わけで 世 界 が 原 子 力 を 手 放 すとは 考 えにくい 特 に 産 業 セクターにはどうしてもメガインフラが 必 要 とな り 現 状 化 石 燃 料 か 原 子 力 に 頼 る 以 外 にない 割 安 だと 判 断 されるうちは 世 界 では 今 後 も 原 子 力 は 伸 び る 確 率 は 高 い 世 界 が 原 子 力 を 捨 てない 以 上 彼 らに は 最 先 端 の 技 術 で 運 用 してもらわなければならない 現 在 : 樹 枝 状 ネットワーク CCS 海 洋 バイオマス クリーン コール ( 石 炭 ) 天 然 ガス 複 合 発 電 原 子 力 発 電 一 方 向 スマートグリッド 蓄 電 池 太 陽 熱 発 電 産 業 コンビナート 産 業 原 子 炉 重 質 系 高 度 処 理 残 渣 IGCC 熱 電 併 給 エネルギー 物 質 ( 水 素 ) 併 産 型 コプロダクション 新 燃 料 石 油 グリーン リファイナリー 熱 輸 送 産 業 都 市 産 民 複 合 地 域 計 画 Heat Pump 熱 電 併 給 地 域 熱 供 給 エリア 図 2 H 2 融 通 グリーン 電 力 融 通 GPS PEFC SOFC - Heat Pump :ser H2 - PEFC タウン FCタウン EV FC スマートメーター & ナビゲーションシステム 清 掃 工 場 低 炭 素 型 エネルギー 需 給 ネットワーク FC FCV 蓄 電 池 スマートメーター EV/PHV スマートエネルギー ネットワーク 住 宅 コミュニティ 商 業 都 市 メガソーラー バイオマス 各 種 処 理 エリア kashiwagi Lab 5
第 25 回 鉄 道 総 研 講 演 会 その 時 日 本 の 技 術 経 験 上 の 蓄 積 も 大 きな 意 味 を 持 つことになる もっとも 原 子 力 も これまでのような 低 廉 なエネルギー との 単 純 な 認 識 は 改 めなければ ならない 既 存 設 備 も 含 めてより 強 固 な 災 害 安 全 対 策 が 不 可 欠 で これらはコスト 上 昇 要 因 となる 費 用 便 益 関 係 はもとより 市 民 感 情 も 踏 まえて 原 発 を 捉 え 直 す 必 要 がある 最 近 では 原 子 力 の 負 の 側 面 が 浮 き 彫 りになっているが 一 方 で 化 石 燃 料 は 安 定 的 だがCO 2 と 資 源 枯 渇 の 問 題 を 抱 える 自 然 エネルギーもランニ ングコストは 安 いが 不 安 定 なところがあることは 既 に 述 べてきた それぞれ 光 と 影 を 持 つ 原 子 力 化 石 燃 料 自 然 エネルギーは 互 いにコスト 上 昇 を 抑 制 する 関 係 にあり 時 々のベストミックスの 追 求 でしかエネル ギー 問 題 の 解 決 はなく スマートコミュニティ 構 想 は 極 めて 有 力 なソリューションを 与 える すなわち 革 新 的 システムとは 決 して 原 子 力 石 炭 天 然 ガスなどによる 既 存 のメガシステムをすべ て 太 陽 光 や 風 力 発 電 で 置 き 換 えるような 二 者 択 一 を 迫 るものではない 農 業 国 ならば 太 陽 光 や 風 力 だけで 国 内 需 要 に 応 えることも 不 可 能 ではない だが 工 業 国 や 商 業 国 においてその 産 業 を 動 かすには 自 然 エネル ギーの 利 用 だけではパワーが 不 足 する 原 子 力 石 炭 天 然 ガスなどによる 既 存 のメガインフラをグリーン 化 した 上 で 安 定 供 給 しながら 全 体 のエネルギー 構 造 を 低 炭 素 型 へと 変 革 させていく 必 要 がある 工 場 や 事 業 所 住 宅 といった 需 要 により 近 い 場 所 に 太 陽 光 や 風 力 発 電 燃 料 電 池 などのシステムを 導 入 すると 共 に 分 散 したエネルギー 供 給 源 をネットワーク 化 し 上 位 の 基 幹 系 統 と 融 合 させる その 際 ポイントとなる 点 は 情 報 インフラとしての の 活 用 である スマートグリッド 構 想 のようにグ リーンビジネスの 新 たなモデルを 情 報 通 信 で 創 造 して いく グリーン by を 積 極 的 に 展 開 することが 大 きな 効 果 を 発 揮 する エネルギーの 視 点 で 捉 えれば 鉄 道 ではじめとする 運 輸 部 門 と 民 生 産 業 部 門 との 一 体 化 の 中 に 世 界 を 牽 引 する 斬 新 なソリューションが 存 在 することを 強 調 し むすびとしたい 参 考 文 献 ⑴ 柏 木 孝 雄,スマート 革 命, 日 経 BP,2010 年 7 月 ⑵ 柏 木 孝 雄,エネルギー 革 命, 日 経 BP,2012 年 2 月 6