2006 王 F- 3 月 3 1 日 5-(5 原 著 副 鼻 腔 アスペルギルス 症 の M 悶 ~ 慢 性 副 鼻 腔 炎 との 鑑 別 加 療 につ いての 考 察 吉 田 敦 子 1) 浦 部 真 平 2 ) 石 川 浩 男 3 ) 小 野 伸 高 4 ) 宍 戸 文 男 1) 1 ) 福 島 県 立 医 科 大 学 医 学 部 放 射 線 科 2 ) 白 河 厚 生 総 合 病 院 政 射 線 科 3 ) 白 河 厚 生 総 合 病 院 耳 鼻 咽 喉 科, () 白 河 厚 生 総 合 病 院 病 理 検 査 室 Di 百 'e rential Diagno s Th Ats uk Yoshida1), Urabe 2), Ishikawa3), No On0 4, Shi shido D e 2 Genera 3D epa Oto! 4 Genera 抄 録 副 鼻 腔 真 菌 症 は 比 較 的 稀 な 疾 患 だが 近 年 増 加 傾 向 にある 浸 潤 型 では 眼 織 や 頭 蓋 内 に 浸 潤 性 に 進 行 するた め 迅 速 かつ 的 確 な 診 断 が 行 われるべきである 画 像 診 断 の 有 用 性 について 最 近 経 験 した 4 例 のアスペルギル ス 症 で 検 討 した MR1 は 全 例 でTl.T2 強 調 像 とも 低 信 号 を 呈 し T2 強 調 像 ではその 内 部 に 無 信 号 を 認 めた T2 強 調 像 で 認 められる 無 信 号 域 は 菌 体 が 産 生 する 鉄 やマンガンなどによるとされ 比 較 的 特 異 性 の 高 い 所 見 だ が 慢 性 炎 症 で も 粘 液 成 分 や 出 血 などによって 類 似 する 所 会 見 を 呈 することがあり アスペルギルス 症 との 鑑 別 が 難 しい 場 合 もある アスペルギルス 症 は 周 囲 に 慢 性 炎 症 を 伴 うことが 多 い 慢 性 炎 症 例 でも 内 部 にこの 所 見 を 認 め たら 真 菌 症 の 合 併 を 疑 って 積 極 的 な 外 科 的 治 療 を 考 えるべきで あろう 真 菌 症 の 診 断 あるいは 慢 性 炎 症 の 外 科 的 治 療 への 転 機 として 特 に MR1 は 非 常 に 有 用 と 考 えられた retrospective l im M asperg i10 a pati e Tl- a hypo-intens signa l imag es bhighl chroni hemorhage chro pati e w i signa l- shou afurth 巴 r surg ica sar 巴 very us 巴 ful acons id surg ica sinu aspergi l 別 AjliJ 請 求 先 : 干 960-1295 福 島 県 福 島 市 光 が 丘 l 番 地 福 島 県 立 医 科 大 学 医 学 部 放 射 線 科 吉 間 敦 子 024 -
6 (6) 断 層 映 像 研 究 会 雑 誌 第 33 巻 第 I 号 症 例 年 齢 性 別 主 訴 権 患 部 位 既 往 歴 菌 腫 57 歳 女 性 左 鼻 出 血 左 上 顎 洞 なし 左 上 顎 洞 内 に 軟 部 影 石 灰 化 様 の high T1 T2で 低 信 号 領 域 7"スペルギルス 53 歳 女 性 左 頬 部 痛 左 上 顎 洞 糖 尿 病 左 上 顎 洞 に 軟 部 影 T1 T2で 低 信 号 内 部 に 石 灰 化 争 責 t 或 アスペルギルス 45 歳 男 性 両 側 鼻 漏 右 上 顎 洞 緑 内 障 右 上 顎 洞 に 軟 部 影 T1.T2で 低 信 号 内 部 に 石 灰 化 領 域 アスペルギルス 骨 破 壊 なし T1 で 淡 い 高 信 号 65 歳 女 性 右 鼻 閉 右 上 顎 洞 子 宮 筋 腫 術 後 右 上 顎 洞 に 軟 部 影 T1 T 2で 低 信 号 骨 破 壊 なし 領 t 或 アスペルギルス はじめに 副 鼻 腔 真 菌 症 は 比 較 的 稀 な 疾 患 とされているが 近 年 増 加 傾 向 にあるといわれている その 発 症 要 因 として ステロイドや 抗 生 物 質 の 頻 用 糖 尿 病 勝 原 病 悪 性 腫 蕩 などの 基 礎 疾 患 の 関 与 などが 想 定 され ているが むしろ 明 確 な 基 礎 疾 患 を 持 たない 場 合 が ほとんどでJ) 副 鼻 腔 の 嫌 気 状 態 を 起 こすような 局 所 的 な 要 因 がより 重 要 とされている 2 ) 副 鼻 腔 真 菌 症 は 内 科 的 治 療 では 治 癒 しにくい 疾 患 である 周 囲 への 進 展 の 有 無 によって 浸 潤 型 と 非 浸 潤 型 にわけられるが 浸 潤 型 の 場 合 は 眼 簡 や 頭 蓋 内 に 浸 i 間 性 に 進 展 し 重 篤 な 状 態 に 至 る こともあるた め 迅 速 かつ 的 確 な 診 断 を 行 うことが 重 要 であるとさ れている])3 ) 我 々は 4 例 の 副 鼻 腔 アスペルギ lレス 症 を 経 験 し こ れらの CTおよびMRIの 画 像 所 見 について 検 討 したの で 慢 性 副 鼻 腔 炎 との 鑑 別 加 療 についての 考 察 を 加 え 報 告 する 対 象 2002 年 8 月 から 2003 年 1 月 の 5 ヶ 月 間 に 最 終 診 断 が 副 鼻 腔 アスペルギルス 症 で あ っ た 4 症 例 を 対 象 とし た 男 性 1 例 女 性 3 例 で 平 均 年 齢 は 55 歳 (45-65 歳 )である 発 生 部 位 は 全 例 片 側 上 顎 洞 ( 右 側 2 例 左 1J!IJ2 例 ) である 基 礎 疾 患 として 糖 尿 病 を 持 ってい た 症 例 は l 例 である (Table 1 ) 装 置 CT は 47 1j 検 出 器 CT 装 置 (Aqui li on. 東 芝 メデイカ ルシステムズ ) を 用 いた スライス 厚 は 1mm x 4 列 ス キャン 条 件 は 120kV. 150mAs テー ブル 移 動 速 度 0.5s ec /rotation ヘリカルピッチ 3 (- 3.5) 再 構 成 厚 は 5mm で ある MRI は1. 0T MR 装 置 ( MAGNETOM Impac Med ica So l utions ) を 用 いた 撮 { 象 条 件 は T1 強 調 像 問 1/ 15/2 (TRlTE/exci 凶 on s). T2 強 調 像 4( 削 -5( 削 / 112/2-3 (TRlTE/excitations ) スライス 厚 5-8mm ma 256 FOV220x 220mm で ある 結 果 4 例 の CT/MRI 所 見 のまとめを Table 1 に 示 す CT では 患 側 の 上 顎 洞 に 軟 部 組 織 濃 度 を その 内 部 に 石 灰 化 様 の 高 吸 収 域 を 認 めるものが4 例 中 3 例 であ った 骨 破 壊 像 は 明 らかでなく 全 例 が 非 浸 潤 型 と 思 われた MRIでは 患 側 の 上 顎 洞 にTl 強 調 像 で 低 信 号 T2 強 調 像 で 高 信 号 を 呈 する 慢 性 炎 症 によると 思 われる 所 見 を 認 め その 内 部 に T1 ' T2 強 調 像 とも 低 信 号 を 呈 す 領 域 を 認 めた 部 には T2 強 調 像 で 無 信 号 域 を 認 めた さらにその 低 信 号 の 内 全 例 の 病 理 組 織 で アスペルギルスの 菌 体 が 証 明 され 副 鼻 腔 真 菌 症 (アスペルギルス 症 )と 診 断 された また 3 例 で は 菌 体 の 近 傍 の 粘 膜 に 慢 性 炎 症 細 胞 の 浸 潤 を 認 め た 代 表 的 な 症 例 ( 症 例 1) の CT MR I 病 理 所 見 を 1 に 示 す 考 察 副 鼻 腔 真 菌 症 の 画 像 所 見 の 特 徴 として CT では 1 内 部 の 石 灰 化 様 の 高 吸 収 域 2 上 顎 洞 に 発 生 した 場 合 は 特 に 内 側 壁 の 骨 吸 収 像 などがあげられる MRI では 1Tl.T2 強 調 像 とも 低 信 号 領 域 を 認 め 2その 内 部 に T2 強 調 像 での 無 信 号 領 域 が 観 察 され ることがあるとされている 1 ) 4 ) 5 ) 9 ) CTで 認 められる 石 灰 化 様 の 高 吸 収 域 は 菌 のアミ ノ 酸 代 謝 により 生 じた 鉄 やマンガンなどの 重 金 属 カ ルシウムなどの 存 在 でみられるとされる しかし その
2006 11 三 3 月 31 口 7-(7 a(non-enhanced density, calcification - intensity, intensity, c areas, ( mucosa ) i (arowhead (stain e Histopatholog ic i aspergilus ( stain ー 他 にも 層 状 にな った 鵬 濃 縮 した 分 泌 物 血 栓 出 血 異 物 周 囲 に 炎 症 を 伴 う 骨 腫 場 肉 腫 に 対 する 反 応 性 変 化 内 反 性 乳 頭 腫 などでも 認 められる 所 見 なので 真 菌 症 に 特 異 的 な 所 見 ではない 6 ) 9) そのた め CTのみでは 真 菌 症 の 診 断 は 困 難 だが この 所 見 を 見 たときには 真 菌 症 の 存 在 も 念 頭 におくべきとされ ている T2 強 調 像 で 認 められる 無 信 号 域 は 菌 塊 内 で 凝 集 した 鉄 やマンガンなどを 見 ているとされる 4 ) 5 ) 6 ) 9 ) 今 回 の 4 症 例 全 例 にこの 所 見 を 認 め 真 菌 症 の 診 断 に 非 常 に 有 用 で あった これは 真 菌 症 に 比 i 肢 的 特 異 的 とされる 所 見 だが 濃 縮 された 分 泌 物 や 出 血 などでも 認 められることがある 6 ) たとえば 慢 性 炎 症 では これらの 存 在 によ っ て T2 強 調 像 で 無 信 号 域 を
断 層 映 像 研 究 会 雑 誌 第 33 巻 第 1 号 40 year-old image, T2 weighted T2 weighted 認 めることがある この 例 を Figure 2で 示 す Figure の 症 例 は 40 歳 女 性 T2 強 調 像 で 左 上 顎 洞 内 側 などに 無 信 号 に 近 い 領 域 を 認 め 読 影 時 には 真 菌 症 を 強 く 疑 うとするレポ ートを 提 出 した しかし 病 理 組 織 では 上 皮 の 剥 離 や 間 質 内 の 出 血 炎 症 細 胞 のみで 真 菌 塊 は 証 明 されず 最 終 診 断 は 慢 性 炎 症 で あ っ た こ の ように 慢 性 炎 症 の 中 に 出 血 などが 起 こると 真 菌 塊 と 類 似 する 所 見 を 呈 す ることがある Figure 2 の 症 例 と 真 菌 症 との 鑑 別 点 は T2 強 調 像 での 無 ~ 低 信 号 域 に 相 当 する 部 位 が Tl 強 調 像 では 高 信 号 を 呈 して いたことと 思 われる ( 真 菌 症 の 症 例 では 2 例 がTl 強 調 像 で 淡 い 高 信 号 域 を 認 めたものの T2 強 調 像 の 無 信 号 に 相 当 する 部 分 は 主 に 低 信 号 を 呈 していた ) 慢 性 炎 症 と 真 菌 症 は 合 併 しうるものである 今 回 我 々が 経 験 したアスペルギルス 症 では 全 例 で 患 側 の 上 顎 洞 粘 膜 に 慢 性 炎 症 と 思 われる 所 見 を 認 めてお り うち 3 例 では 病 理 組 織 でも 慢 性 炎 症 細 胞 の 浸 潤 が 明 らかで あっ た 真 菌 塊 の 有 無 によ って 基 本 的 な 治 療 方 針 が 異 なる 真 菌 症 で は 開 洞 による 病 巣 除 去 と 洞 内 洗 浄 が 一 般 的 で 3 ) 好 気 的 環 境 を つくる 目 的 で 鼻 副 鼻 腔 の 形 態 異 常 を 手 術 的 に 整 形 することが 目 的 となる 7 ) これに 対 しで 慢 性 炎 症 では 一 般 的 には 中 鼻 道 が 鼻 茸 で 閉 塞 している 難 治 例 が 手 術 適 応 となるが 基 本 的 には 薬 物 などによる 保 存 的 療 法 が 主 体 である 8 ) 先 に 述 べたように 真 菌 症 は 内 科 的 治 療 では 治 癒 しにくく 眼 簡 や 頭 蓋 内 へ 浸 潤 性 に 進 展 することもあ るため 早 急 な 診 断 加 療 が 必 要 とされる 慢 性 炎 症 として 保 存 的 に 加 療 されていた 症 例 で MRI を 撮 像 し T2 強 調 像 で 無 信 号 域 を 認 めた 場 合 出 血 などを 見 て いる 可 能 性 もあるが 真 菌 塊 の 可 能 性 を 否 定 できな い このような 場 合 は 真 菌 症 の 浸 潤 性 の 性 格 を 考 え 積 極 的 に 合 併 を 疑 うべきである T2 強 調 像 にお ける 無 信 号 域 の 存 在 は 慢 性 副 鼻 腔 炎 の 外 科 治 療 の 追 加 を 考 える 上 でも 非 常 に 有 用 な 所 見 と 考 えられ た 結 語 副 鼻 腔 アスペルギルス 症 の 診 断 に MRIは 非 常 に 有 用 で あ っ た また 慢 性 副 鼻 腔 炎 で 外 科 的 治 療 の 追 加 を 検 討 するさいにも MR I は 有 用 と 考 えられた
2006 年 3 月 31 日 参 考 文 献 菊 池 俊 彦 馬 場 明 子 高 野 潤 他 : 両 側 性 上 顎 洞 真 菌 症 の 1 例. 耳 鼻 と 臨 床 47 388-392,2001- 北 秀 明 朝 倉 光 司 石 川 忠 孝 氷 見 徹 夫 他 : 鼻 副 鼻 腔 真 菌 症 の 臨 床 的 検 討. 臨 床 耳 鼻 151-15.1 高 倉 大 匡 麻 生 伸 藤 坂 実 千 郎 他. 副 鼻 腔 真 菌 症 の 検 討. 耳 鼻 臨 床 92: 43~50.1 999. 矢 村 正 行 輿 椙 征 典 山 下 康 行 : 鼻 腔 副 鼻 腔 : 頭 頚 部 の 画 像 診 断 ( 秀 潤 社 ). 102-123,2002. 中 津 正 士 何 津 信 礼 久 保 滋 人 他 : 鼻 副 鼻 腔 炎 症 性 疾 患. 脳 頭 頚 部 の MRI (284-289,2000. L, Hawk M, a fung a literatur re view 104-10.1 高 木 実 松 根 彰 志 宮 之 原 郁 代, 他 : 当 科 に おける 上 顎 洞 真 菌 症 症 例 の 検 討. 日 鼻 誌 39 127-130, 2000. 永 田 博 史 : 副 鼻 腔 炎. 今 日 の 治 療 方 針 ( 医 学 書 院 ). 993, 2003 Zinr e JS, DW, Imaging Rad i169:439-444, 198