福 島 第 一 原 発 事 故 を 受 けて 放 射 線 についての 教 育 現 状 とその 意 識 調 査 リスク 工 学 グループ 演 習 8 班 新 屋 樹 中 田 星 子 劉 陽 (アドバイザー 教 員 : 掛 谷 英 紀 ) 1.はじめに 11 年 3 月 11 日 の 東 日 本 大 震 災 により 福 島 第 一 原 発 事 故 が 発 生 し 放 射 性 物 質 が 漏 れ 出 した 事 故 当 時 福 島 原 子 力 発 電 所 の 近 隣 住 民 は 撤 退 を 余 儀 なくされ 現 在 でも 仮 設 住 宅 に 踏 み 続 けてい る 人 や 放 射 性 物 質 による 人 体 への 影 響 を 恐 れて いる 人 は 少 なくない そこで 放 射 線 についての 正 しいリスク 教 育 とリスク 認 知 は 現 代 社 会 の 重 要 な 課 題 である たとえば 福 島 第 一 原 発 事 故 から 約 5 カ 月 が 経 った 11 年 8 月 28 日 AERA の 福 島 の 子 ども たちからの 手 紙 という 記 事 では 福 島 市 の 小 学 五 年 生 の 女 の 子 が 総 理 大 臣 へ 宛 てた 手 紙 で ふつ うの 子 供 産 めますか? と 問 いかけたことが 報 道 さ れている[1] また 読 売 新 聞 では 12 年 5 月 17 日 被 曝 心 配 せず 出 産 3 年 以 上 後 という 見 出 し の 記 事 が 掲 載 されており 医 療 法 人 いわき 婦 人 科 ( 福 島 県 いわき 市 )に 不 妊 治 療 で 通 院 中 の 女 性 患 者 5 人 (27~46 歳 )にアンケート 調 査 を 行 った 結 果 7 割 が 放 射 線 被 曝 を 懸 念 している 21 人 が 周 りに 被 曝 を 心 配 して 妊 娠 を 控 えている 被 曝 の 心 配 を 全 くせずに 妊 娠 出 産 できる 時 期 いついて 33 人 が 3 年 以 上 後 と 回 答 した と 報 道 している[2] これらの 記 事 から 放 射 線 被 曝 による 不 妊 や 奇 形 児 の 出 産 を 懸 念 している 人 が 多 く 存 在 すると 考 え られる このような 反 応 は 人 体 に 影 響 の 出 うる 放 射 線 量 についての 知 識 不 足 から 放 射 線 を 過 剰 に 危 険 視 し ている 面 がある 実 際 放 射 線 の 影 響 を 恐 れて 妊 娠 引 き 延 ばしすることで 母 体 の 高 齢 化 に 伴 い 胎 児 の 染 色 体 異 常 や 流 産 不 妊 のリスクは 有 意 に 上 昇 することになる しかしながら 放 射 線 を 回 避 することで 新 たに 受 容 しなければならないリスク については 十 分 な 情 報 が 伝 わっていないことを 一 連 の 報 道 は 示 唆 する そこで 本 研 究 では 放 射 線 について 正 しく 理 解 するために 現 在 学 校 でどのような 教 育 が 行 われ ているかを 調 査 する さらに 放 射 線 のリスクに 対 する 過 剰 な 反 応 を 抑 制 するための 情 報 提 示 の 方 法 について 調 べるため 大 学 生 を 対 象 にしたアン ケート 調 査 を 行 う 2. 中 学 校 での 放 射 線 教 育 の 現 状 2-1. 調 査 内 容 放 射 線 についての 教 育 の 現 状 を 調 査 するため 比 較 的 放 射 線 量 の 高 い 地 域 ( 福 島 県 いわき 市 千 葉 県 柏 市 )の 中 学 校 で 放 射 線 教 育 を 担 当 している 教 員 を 対 象 に 取 材 を 行 った まず 生 徒 や 保 護 者 の 間 で 見 られる 放 射 線 被 曝 に 対 する 具 体 的 回 避 行 動 給 食 や 水 道 水 を 避 けている 生 徒 数 について 質 問 し た 次 に 放 射 線 教 育 をどの 教 科 で 何 時 間 程 度 行 っているか 文 部 科 学 省 から 配 布 されている 放 射 線 に 関 する 副 読 本 [3]をどの 程 度 利 用 しているか 教 育 前 後 で 生 徒 の 放 射 線 に 対 する 興 味 関 心 や 不 安 感 などに 変 化 は 見 られたかを 聞 き 取 った 最 後 に 放 射 線 リスクと 健 康 や 出 産 について 現 在 許 容 して いるリスクとを 比 較 して 教 育 する 有 用 性 を 具 体 的 なデータを 見 せた 上 で このような 試 みは 行 われ ているか また 有 意 義 な 教 育 方 法 であると 考 えら れるかどうかについて 意 見 を 聴 取 した ここでい
う 具 体 的 なデータとは 普 段 の 食 生 活 で 国 が 定 め た 放 射 性 セシウムの 規 制 値 を 上 回 る 放 射 性 カリウ ムを 摂 取 している 事 を 示 す 12 年 4 月 に 新 しく 定 められた 食 品 中 の 放 射 性 セシウムの 規 制 値 とそ れまでの 暫 定 規 制 値 と EU の 規 制 値 を 一 覧 にした 表 (データ 1)と 食 品 にもともと 含 まれる 放 射 性 カ リウムの 量 をベクレル/kg で 一 覧 にした 表 (データ 2)[4] および 母 体 の 高 齢 化 で 胎 児 の 染 色 体 異 常 や 流 産 が 著 しく 増 加 することを 示 す 体 年 齢 Down 症 児 出 生 頻 度 のグラフ(データ 3)[5]と 母 体 年 齢 別 自 然 流 産 率 のグラフ(データ 4)である 2-2. 調 査 結 果 放 射 線 量 が 比 較 的 高 い 福 島 県 いわき 市 千 葉 県 柏 市 茨 城 県 守 谷 市 の 教 育 委 員 会 に 対 し 地 元 中 学 校 での 取 材 協 力 を 申 し 入 れた いわき 市 におい ては 教 育 委 員 会 から 市 内 3 校 の 紹 介 を 受 けた 他 の 2 市 については 直 接 中 学 校 に 協 力 を 要 請 す るようにとの 指 示 を 教 育 委 員 会 から 受 け 柏 市 の 3 校 守 谷 市 の 2 校 に 取 材 要 請 を 行 った そのう ち 柏 市 の 中 学 校 1 校 には 電 話 での 取 材 協 力 を 得 た また 柏 市 の 別 の 中 学 校 1 校 からは 放 射 線 に 関 する 教 育 はこれまで 全 く 行 っていないので 現 時 点 では 回 答 できる 内 容 がないとの 返 答 を 得 た 以 下 では 取 材 で 得 られた 回 答 を 順 に 述 べる な お 取 材 対 象 の 学 校 はいずれも 約 名 かそれ 以 上 の 生 徒 が 通 う 規 模 を 持 つ まず 生 徒 の 具 体 的 な 放 射 線 被 曝 に 対 する 回 避 行 動 については どの 中 学 校 も 現 在 は 回 避 行 動 に 出 ている 生 徒 はほぼいない と 回 答 した 具 体 的 には A 校 (いわき 市 )では 面 談 取 材 時 に 放 射 線 含 有 量 を 理 由 にお 弁 当 を 持 ってきている 生 徒 は 全 生 徒 1 名 のみであった ただし A 校 ではこれ まで 約 名 が 放 射 線 恐 れて 転 校 している B 校 (いわき 市 )では 面 談 取 材 時 に 牛 乳 を 飲 まない 生 徒 は 全 生 徒 4 名 水 道 水 を 飲 まない 生 徒 が 1 名 と 回 答 した また 3 名 が 転 校 して 同 地 域 から 離 れているとのことである C(いわき 市 ) 校 では 放 射 線 量 を 気 にしてお 弁 当 を 持 ってきたり 水 道 水 を 飲 まない 生 徒 はほぼいないと 認 識 していると の 回 答 を 得 た また 放 射 線 を 理 由 にした 転 校 も ないとのことであった D 校 ( 柏 市 )は 給 食 は メニューや 産 地 を 公 表 しているため 特 別 不 安 感 をもつ 生 徒 や 保 護 者 はいないと 考 えていると 回 答 した 次 に 放 射 線 リスク 教 育 の 現 状 は 各 校 で 大 きく 差 があることがわかった A 校 では 県 や 市 の 教 育 委 員 会 の 方 針 に 従 い 副 読 本 に 沿 った 教 育 を 行 って いる 具 体 的 には 学 級 活 動 の 時 間 に 学 級 担 任 が 副 読 本 に 基 づいて 教 育 を 行 い 理 科 の 内 容 に 近 い 箇 所 は 理 科 の 時 間 に 理 科 の 教 員 が 教 育 していると のことである 事 故 発 生 以 前 は 理 科 の 時 間 に 高 大 連 携 授 業 で 原 発 の 5 つの 壁 を 紹 介 しており 原 発 は 安 全 だと 指 導 していた 今 回 の 事 故 を 受 けて 生 徒 自 身 も 原 子 力 発 電 所 や 放 射 線 のリスクは 実 感 しているようである とのコメントがあった 放 射 線 について 熱 心 に 勉 強 している 家 庭 の 生 徒 は 放 射 線 について 詳 しいが そうでない 生 徒 もいるた め 学 校 での 放 射 線 教 育 では 一 定 レベルの 統 一 し た 認 知 を 促 しているとのことである B 校 では 校 長 をはじめ 学 校 全 体 として ただし い 情 報 ただしい 判 断 ただしい 行 動 の 3 つを 掲 げ 冷 静 に 自 分 の 力 で 放 射 線 リスクや 基 準 値 について 考 えることの 大 切 さを 教 えようという 方 針 で 教 育 を 行 っている 主 に 学 級 担 任 が 学 級 活 動 の 時 間 に 副 読 本 の 内 容 を 指 導 し 理 科 の 教 員 でな ければ 難 しい 内 容 については 学 級 活 動 の 時 間 を 利 用 して 理 科 の 教 員 が 全 3 クラスを 集 めて 教 えて いる 時 間 としては 1 年 生 は 5~6 時 間 2 年 生 は 2 時 間 3 年 生 は 3 時 間 を 使 っている また 霧 箱 を 使 って 放 射 線 を 見 る 実 験 も 行 っており 生 徒 の 反 応 は 放 射 線 が 怖 いというよりも 興 味 が 先 行 している 様 子 で 放 射 線 は 身 近 なものであると いう 認 識 が 高 まっているように 感 じる とのこと である C 校 では 学 校 全 体 で 放 射 線 教 育 に 関 する 方 針
を 定 めるなどはしていないと 回 答 した 学 級 担 任 が 学 級 活 動 の 時 間 最 低 1 コマを 利 用 して 放 射 線 教 育 を 行 う 事 と 促 してはいるが 副 読 本 をどの 程 度 活 用 しているかは 不 明 で 副 読 本 は 配 っただけと いうクラスもあるだろうという 率 直 なコメントを 得 た 学 年 によって 到 達 目 標 を 決 めたり 理 科 の 教 員 と 情 報 の 共 有 をしたり 連 携 したりといった 取 り 組 みはしておらず 学 級 担 任 の 放 射 線 に 対 する 認 識 の 違 いによって 教 える 内 容 や 程 度 に 差 があ るので 生 徒 の 受 け 取 り 方 や 反 応 もクラスや 個 人 で 差 があると 思 う という 回 答 だった D 校 では 3 年 生 の 理 科 の 課 程 にある 放 射 線 関 連 の 分 野 で 副 読 本 を 利 用 し 内 容 を 少 し 拡 張 して 教 育 しており 1,2 年 生 は 学 期 末 や 年 度 末 に 個 別 に 時 間 を 設 けて 教 育 しているとの 回 答 を 得 た 最 後 に 放 射 線 リスクと 健 康 や 出 産 について 現 在 許 容 しているリスクとを 比 較 教 育 する 試 みはな されているか このような 試 みは 有 意 義 な 教 育 方 法 であると 考 えられるかについて 意 見 を 聞 いた A 校 では 比 較 教 育 はしておらず 放 射 線 のリス クとその 他 のリスクを 比 較 して 放 射 線 のリスクが 軽 いものだと 教 えることが 重 要 かどうかは 疑 問 で ある との 回 答 を 得 た B 校 では 副 読 本 に 記 載 されているがんのリスクと 放 射 線 リスクについて は 比 較 教 育 する 予 定 とのことである また リ スク 比 較 をすることで 生 徒 が 自 分 の 力 で 考 える きっかけづくりができれば 理 想 的 な 教 育 ができる のではないか と 前 向 きな 姿 勢 を 示 した 高 齢 出 産 や 食 品 にもともと 含 有 されている 放 射 性 物 質 については 将 来 的 に 保 健 体 育 の 中 で 教 育 してい くのではなかろうか という 意 見 も 得 た C 校 で は 比 較 教 育 はしていない 事 故 から 1 年 以 上 が 経 ち 放 射 線 被 曝 に 対 して 諦 め 感 や たぶん 大 丈 夫 だろうという 希 望 的 観 測 が 強 いように 感 じるため 今 まで 許 容 しているリスクと 比 較 して 放 射 線 の リスクを 考 えろといわれても 中 学 生 はなかなか 真 剣 になれないと 思 う 興 味 がわくような 見 せ 方 をして 放 射 線 教 育 をしていく 必 要 があるのかもし れない との 回 答 であった D 校 も 比 較 教 育 は 行 っていないと 回 答 した 教 育 課 程 というものがあ るので それを 超 える 範 囲 のことを 教 えるのは 限 界 があるとの 認 識 であった 3. 大 学 生 を 対 象 にしたアンケート 調 査 3-1. 調 査 内 容 既 に 受 容 している 健 康 や 出 産 に 関 するリスクと 放 射 線 が 健 康 や 出 産 に 及 ぼすリスクを 比 較 して 見 せることが 人 々のリスク 認 知 に 与 える 影 響 を 調 べるため 筑 波 大 学 の 学 生 を 対 象 としたアンケー ト 調 査 を 行 った アンケート 対 象 は 筑 波 大 学 もし くは 筑 波 大 学 大 学 院 に 所 属 する 134 名 の 学 生 とし た 収 集 においては 筑 波 大 学 教 員 に 依 頼 して 授 業 後 に 回 収 したものと 大 学 のサークル 等 で 回 収 する 方 法 を 併 用 した また 無 回 答 のものは 集 計 結 果 から 省 くこととした 男 女 比 は 男 42% 女 58% であった まず 福 島 県 に 住 む 女 性 は 妊 娠 出 産 を 先 延 ばし にした 方 がよい 福 島 県 産 の 食 品 は 食 べない 方 が よい 福 島 県 では 水 道 水 はできるだけ 飲 まない 方 がよい などの 放 射 線 被 曝 に 対 する 回 避 行 動 につ いてどの 程 度 同 意 するかを 1. 強 く 同 意 する 2. 同 意 する 3.どちらとも 言 えない 4. 同 意 しない 5. 全 く 同 意 しない の 5 段 階 から 選 択 させた 次 に 前 述 したデータ 1 とデータ 2 を 提 示 し 日 本 の 規 制 値 は EU に 比 べて 著 しく 厳 しいこと 普 段 の 食 生 活 で 放 射 性 セシウムの 規 制 値 を 上 回 る 放 射 性 カリウムを 摂 取 していることを 示 した さらに 前 述 のデータ 3 とデータ 4 を 提 示 し 高 齢 出 産 で は 胎 児 の 染 色 体 異 常 や 流 産 が 著 しく 増 加 すること 過 去 の 疫 学 調 査 では 放 射 線 による 胎 児 の 染 色 体 異 常 や 流 産 の 増 加 は ミリシーベルト 以 下 の 被 曝 では 見 られておらず 原 爆 を 投 下 された 広 島 長 崎 でも 奇 形 児 の 増 加 はなかったことを 示 した 最 後 に 上 記 データを 提 示 する 前 後 で 放 射 線 被 曝 に 対 する 回 避 行 動 に 同 意 する 程 度 が 変 化 するかどう かを 調 べるため 同 じ 質 問 にもう 一 度 回 答 させた
3-2. 調 査 結 果 アンケートにおいてデータを 提 示 する 前 後 で 同 じ 内 容 の 質 問 をした 項 目 を 以 下 に 示 す A. 福 島 第 一 原 発 事 故 による 影 響 を 考 えると 福 島 県 からできるだけ 離 れた 地 域 に 住 んだほうがよ い / B. 原 発 事 故 による 影 響 を 考 えると 福 島 の 女 性 は 妊 娠 出 産 を 先 延 ばしにしたほうがよい C. 市 販 されている 福 島 県 産 の 食 品 は 食 べない ほうがよい / D. 福 島 県 では 水 道 水 はできるだ け 飲 まないほうがよい / E. 原 発 事 故 の 影 響 で 将 来 日 本 で 癌 の 発 症 は 増 加 する / F. 原 発 事 故 の 影 響 で 将 来 日 本 で 奇 形 児 の 出 産 は 増 加 する 図 1はデータを 見 せる 前 と 後 での 上 記 質 問 の 回 答 の 平 均 と 分 散 を 比 較 したものである 質 問 A, B, E, F でデータを 見 せる 前 と 後 で 大 きな 変 化 が 見 ら れている 質 問 C で 変 化 が 見 られていない 要 因 と して データ 提 示 前 の 平 均 スコアが 4 に 近 いこと から 分 かるとおり 福 島 県 産 の 食 品 に 対 する 回 避 は 必 要 ないという 意 見 を 持 つ 人 が 多 いため デー タを 見 せることによって 回 避 すべきとの 意 見 が 増 える 余 地 があまりなかったことが 挙 げられる 検 定 で 調 べたところ 質 問 A, B, E, F でそれぞれ p =.27, p =.13, p =.13, p = 4.6X -6 と なり 有 意 差 があることが 確 認 された 以 下 では 有 意 差 がみられた 質 問 について 男 女 別 に 分 布 を 詳 しくみることにする 図 2 図 3に 示 す 通 り 設 問 A に 関 しては デ ータを 見 せる 前 は 男 性 の 方 が 福 島 からできるだ け 離 れた 地 域 に 住 んだ 方 がよいという 意 見 を 強 く 持 っていることが 分 かる 一 方 データを 見 せた 後 では 男 女 ともそのような 意 見 は 減 少 しているこ とが 分 かる 6 5 3 図 2 質 問 A に 対 する 男 性 の 回 答 分 布 5 4 3 2 1 A B C D E F [ 設 問 ] 6 5 3 図 3 質 問 A に 対 する 女 性 の 回 答 分 布 図 1 各 質 問 のデータ 提 示 前 後 の 平 均 分 散 の 変 化 質 問 A~F について データを 見 せる 前 後 で 回 答 の 分 布 が 有 意 に 変 化 しているか 否 かをカイ 二 乗 図 4 図 5に 示 す 通 り 設 問 B に 関 しては 事 前 に 男 女 で 大 きな 差 はなく 男 性 も 女 性 もデータ を 見 た 後 に 同 意 しないとの 回 答 が 増 えている つ まり 出 産 のリスクに 関 するデータを 見 せること で 男 女 とも 福 島 県 の 女 性 が 出 産 の 先 延 ばしにす
ることに 否 定 的 見 解 を 持 つに 至 ったことを 示 して いる 5 3 図 4 質 問 B に 対 する 男 性 の 回 答 分 布 5 3 図 5 質 問 B に 対 する 女 性 の 回 答 分 布 図 6 図 7に 質 問 E についての 回 答 を 示 す こ の 質 問 については データを 見 せる 前 段 階 におい ては 同 意 しないとする 意 見 が 男 性 に 多 く 女 性 に 少 ない 傾 向 がある これは 男 性 の 方 がガンは 増 えないという 見 解 を 持 つ 傾 向 が 事 前 にあったこ とを 意 味 する データを 見 せることで 男 女 ともガ ンの 発 症 が 増 えることに 同 意 しないとの 見 解 を 強 める 傾 向 を 見 て 取 ることができる 図 8 図 9に 質 問 F についての 回 答 を 示 す こ の 質 問 については データを 見 せる 前 段 階 におい ては 同 意 しないとする 意 見 が 女 性 に 多 く 男 性 に 少 ない 傾 向 がある つまり 事 前 においては 女 性 の 方 が 奇 形 児 増 加 は 起 きないという 意 見 を 強 く 持 っていたことが 分 かる データを 見 せることで 男 女 ともガンの 発 症 が 増 えることに 同 意 しないと の 見 解 を 強 める 傾 向 を 見 て 取 ることができる 6 5 3 図 6 質 問 E に 対 する 男 性 の 回 答 分 布 6 5 3 図 7 質 問 E に 対 する 女 性 の 回 答 分 布 以 上 の 結 果 により 既 に 受 容 しているリスクと 放 射 線 のリスクを 比 較 することで 放 射 線 のリス クを 過 大 評 価 する 傾 向 は 緩 和 されることが 分 かっ た しかしながら こうしたリスクコミュニケー ションには 一 つの 副 作 用 が 懸 念 される それは 放 射 線 のリスクとの 比 較 対 象 になったものに 対 し て その 後 過 剰 な 回 避 行 動 が 生 じる 危 険 性 である その 可 能 性 を 調 べるため 今 回 のアンケートでは 各 種 食 品 に 対 する 摂 取 回 避 意 図 および 自 ら 出 産 し たい/パートナーに 出 産 して 欲 しい 年 齢 をデータ 提 示 前 後 で 回 答 させた 理 想 の 出 産 年 齢 に 関 しては データ 提 示 前 にお いても 回 答 が 26~3 歳 に 集 中 しており データ 提 示 後 も 変 化 が 見 られなかった これは 26~3 歳 は 高 齢 出 産 のリスクがあまり 上 昇 していない 時 期 であることによると 考 えられる 今 回 の 調 査 で は 歳 前 後 の 大 学 生 を 対 象 にしたが 3 代 の 独
身 の 男 女 に 同 じ 質 問 をすると データ 提 示 前 後 で ムを 多 く 含 む 食 品 について 強 くみられた これは 変 化 が 見 られる 可 能 性 もある しかし 中 学 校 や 高 校 での 学 校 教 育 にこうしたデータを 持 ち 込 む 場 合 大 学 生 の 場 合 と 同 様 に 過 剰 な 回 避 行 動 を 煽 る 危 険 性 は 少 ないと 予 想 される 4. 結 論 学 校 現 場 の 取 材 から ごく 一 部 の 学 校 を 除 いて 放 射 線 教 育 はまだまだ 浸 透 していないのが 現 状 で あり 文 部 科 学 省 の 副 読 本 も 十 分 活 用 されていな 6 5 3 図 8 質 問 F に 対 する 男 性 の 回 答 分 布 いことがわかった また 大 学 生 を 対 象 にしたア ンケート 調 査 から 既 に 受 容 しているリスクと 放 射 線 のリスクを 比 較 することで 放 射 線 に 対 する リスク 認 知 が 有 意 に 減 少 することが 示 された し かしながら 既 に 受 容 しているリスクを 正 しく 伝 えることによって 今 まで 受 容 していたリスクを 過 度 に 危 険 視 してしまう 可 能 性 もあることが 分 か った こうした 副 作 用 を 抑 えつつ リスクを 公 正 に 見 る 目 を 養 うための 教 育 方 法 を 検 討 する 必 要 が ある 6 5 3 1,2 3 4 5 [ 回 答 番 号 ] 参 考 文 献 [1] AERA, 福 島 の 子 どもたちからの 手 紙, 11 年 8 月 28 日 [2] 読 売 新 聞, 被 曝 心 配 せず 出 産 3 年 以 上 後, 12 年 5 月 17 日 [3] 文 部 科 学 省, 放 射 線 等 に 関 する 副 読 本 掲 載 データ (http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/ attach/13134.htm) 図 9 質 問 F に 対 する 女 性 の 回 答 分 布 [4] 西 澤 真 理 子,リスクコミュニケーションハンドブ ック, 第 3 版, 12 年 4 月 一 方 放 射 性 物 質 の 含 有 に 気 をつけている 食 品 はどれか? という 質 問 については データ 提 示 前 にはほうれん 草 や 牛 肉 魚 を 選 択 する 人 が 多 か った 集 計 の 結 果 33 人 の 人 が 何 らかの 食 品 に 対 して 放 射 性 物 質 含 有 の 懸 念 を 抱 いていることがわ かった しかし 食 品 に 元 から 含 まれる 放 射 性 カ リウムのデータを 提 示 したのちの 同 じ 質 問 の 集 計 結 果 では 44 人 が 何 らかの 食 品 に 対 して 今 後 放 射 性 物 質 の 含 有 に 懸 念 を 持 つという 意 識 に 変 化 し [5] Hecht and Earnest B. Hook, American Journal of Medical Genetics 62: 376-385, 1996 年. 謝 辞 本 研 究 を 進 めるに 当 たり 聞 き 取 り 調 査 に 協 力 していただいた 福 島 県 いわき 市 の 市 教 育 委 員 会 と 各 中 学 校 の 先 生 方 柏 市 の 中 学 校 の 先 生 方 およ びアンケートにご 協 力 いただいた 筑 波 大 学 の 海 後 宗 男 先 生 に 深 く 感 謝 致 します たことがわかった この 傾 向 は 特 に 放 射 性 カリウ