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5 教5-1 教員の勤務時間と意識表 5 1 ( 平均時間 経年比較 教員年齢別 ) 中学校教員 調査年 25 歳以下 26 ~ 30 歳 31 ~ 40 歳 41 ~ 50 歳 51 ~ 60 歳 7:22 7:25 7:31 7:30 7:33 7:16 7:15 7:23 7:27 7:25

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

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2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

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受付番号 宮城県小牛田農林高等学校長殿 平成 年 月 日 志願する課程, 学科, コース 部 : 全日制課程農業技術科農業科学コース 次の 1,2 のうち, 満たしている条件の にチェックをすること 2 の場合 (1)~(3) のいずれか 1 1~3 年生の全教科の評定平均値が4.0 以上の者 2

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第5回「仕事・会社に対する満足度」調査  

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3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

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(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

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(2) あなたは選挙権年齢が 18 歳以上 に引き下げられたことに 賛成ですか 反対ですか 年齢ごとにバラツキはあるものの概ね 4 割超の人は好意的に受け止めている ここでも 18 歳の選択率が最も高く 5 割を超えている (52.4%) ただ 全体の 1/3 は わからない と答えている 選択肢や

この章のポイント 高校での指導の実態からみる高校教育の課題 Benesse 教育研究開発センター研究員 岡部悟志 解説の時間 が中心の高校での授業中学校から高校にかけて生徒が様々なとまどいを感じていることは第 1 章で確認した通りだが その背景には中学校と高校とで大きく異なる指導の実態がありそうだ

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孫のために教育資金を支援するならどの制度?

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4 選抜方法 ( 1 ) 選抜の方法 学力検査の成績 調査書の得点 第 2 日の検査 ( 面接 ) の得点 を全て合計した 総得点 により順位をつけ 各選抜資料の評価等について慎重に審議しながら 予定人員までを入学許可候補者として内定する < 総得点の満点の内訳 > 調査書の得点第 2 日の検査学力

世の中の人は信頼できる と回答した子どもは約 4 割 社会には違う考え方の人がいるほうがよい の比率は どの学年でも 8 割台と高い 一方で 自分の都合 よりみんなの都合を優先させるべきだ は 中 1 生から高 3 生にかけて約 15 ポイント低下して 5 割台にな り 世の中の人は信頼できる も

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(3) その他 全日制高校進学率の向上を図るため 更に公私で全体として進学率が向上するよう工夫する そのための基本的な考え方として 定員協議における公私の役割 を次のとおり確認する 公立 の役割: 生徒一人ひとりの希望と適性に応じて 多様な選択ができるよう 幅広い進路先としての役割を担い 県民ニーズ

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学術資料 高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 Living Cost assistance and Savings for College in Part-Time Job of High School Students 小島俊樹 Toshiki KOJIMA Studies in Humanities and Cultures No.16 名古屋市立大学大学院人間文化研究科 人間文化研究 抜刷 16 号 2011 年 12 月 GRADUATE SCHOOL OF HUMANITIES AND SOCIAL SCIENCES NAGOYA CITY UNIVERSITY NAGOYA JAPAN DECEMBER 2011

名古屋市立大学大学院人間文化研究科高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金人間文化研究第 16 号 ( 小島 2011 ) 年 12 月 学術資料 高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 Living Cost assistance and Savings for College in Part-Time Job of High School Students 小島俊樹 Toshiki Kojima 1. 前報告の課題 2. アルバイト代使途の生活費補助 3. アルバイト代使途の進学用貯金 4. アルバイト代使途が生活費補助と進学用貯金の両方 5. アルバイト代使途の生活費補助 進学用貯金と母子家庭 6. まとめ 要旨紀要 15 号 拡大する貧困世帯の高校生とアルバイトとの関連性 ( 以下前報告 ) では 貧困化とアルバイトとの関連性を一定示したが 十分なものとはいえないため 貧困世帯の高校生はアルバイト代を生活費補助や進学用貯金に使用すると予想して分析をした アルバイト代使途が生活費補助の場合 その関連性を強く示している 家庭の暮らし向き について 苦しく 感じている高校生の割合がアルバイト経験の有無では13ポイントの差であったが 使途生活費補助の場合さらに35ポイントと差が2 倍以上拡大した また 小遣いの有無 についても 無し がアルバイト経験の有無では44ポイントの差であったが 使途生活費補助では60ポイントに差が拡大している さらに 前報告でアルバイト経験の有無ではほとんど差がなかった 小学校習い事 や 中高生宿泊家族旅行 の有無についても 生活費補助との場合は差が13ポイントまで拡大している 生活費補助のためのアルバイトの実態は 職場をかけもちして週 20 時間以上働き 月 6 万円以上の収入を得て 家にお金を入れており 生活費補助にしていない人より労働時間も収入も多い アルバイト代使途が進学用貯金の場合も 生活費補助の場合ほどではないが 関連性を前報告よりは強く示している もっとも 家庭の暮らし向き や 小遣いの有無 の場合は アルバイト経験の有無のポイント差は拡大しているが 小学校習い事 や 中高生宿泊家族旅行 の有無の場合は ほとんどポイント差はない また 進学用貯金のためのアルバイトの実態は 平均的な実態より若干月収入が多い以外ほとんど変化はない アルバイト代使途が生活費補助と進学用貯金の両方か どちらかの人は合計 246 人となる この人数は回答者全体の14% であり アルバイト経験者の30% にあたる 母子家庭の場合 アルバイト代の使途が生活費補助や進学用貯金である場合でも 前報告の場合と同様 関連性を強く示している 187

名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第 16 号 2011 年 12 月 キーワード : 高校生 貧困層 アルバイト 生活費補助 進学用貯金 1. 前報告の課題 (1) 貧困世帯とアルバイトを結ぶ項目紀要 15 号 拡大する貧困世帯の高校生とアルバイトとの関連性 ( 以下前報告 ) では アルバイト経験者割合の学科別は 全日制普通科が31% 全日制職業科が48% 定時制が65% となっている とくに 職業科と定時制では 紀要 14 号 高校生の世帯にどれほど貧困層が拡大しているか で推定した高校生世帯における貧困率と近似した数値 ( 職業科約 4 割 定時約制 5 割 ) を示している さらに 前報告では貧困化とアルバイトの関連性をつかむため 学校生活や家庭生活の項目を設定し アルバイト経験者と未経験者とを比較した その結果は 以下 1~5のようになった 1 学校関係 ( 満足度 進路希望 自立希望 ) の項目では 経験者と未経験者とではほとんど同じ結果となり 貧困化とアルバイトとの関連性は見あたらない 2 家庭生活関係 ( 小学校習い事 中高生宿泊家族旅行 自分用一人部屋 自分専用パソコン 自分専用電子辞書 ) の項目では 無し と回答した経験者が未経験者よりどれも数ポイント高く 貧困化とアルバイトとの関連性が若干見られる 3 経験者は 未経験者より家庭の暮らし向きを苦しく感じている (12ポイントの差) 4 小遣いをもらわない という割合が 未経験者の14% に対して 経験者は60% に達し アルバイトで働く理由となっている 5 とくに 母子家庭では非母子家庭より家庭の暮らし向きを苦しく感じており 経験者の割合が高くなっている (12ポイントの差) このように 家庭の暮らし向き 小遣いなし 母子家庭 といった項目では 貧困化とアルバイトとの関連性は一定の関連性を示した しかし 貧困化との関連で設定した家庭生活関係の項目では 若干見られるだけで 不十分なものであった これは プライバシーの問題があり 家庭の経済状況を詳しく聞く項目を設定できなかったためと考えられる (2) アルバイト代使途の生活費補助 進学用貯金の分析前報告では 貧困化とアルバイトとの関連性を一定示したが 十分なものとはいえない そこで アルバイト代使途の生活費補助と進学用貯金に注目する 表 1では 飲食代から本雑誌 CDDVDまでの生活費関係は 約 7 割のアルバイト経験者が支出している また 教材費実験実習費から文房具費問題集等までの学校生活費は 1~2 割の経験者が支出している さらに 生活費補助には18% 進学用貯金には16% の経験者がアルバイト代 188

高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 ( 小島 ) から支出している これは 経験者の 2 割程度が 自分の家庭が経済的に苦しいのを自覚し ア ルバイト代を生活費として家計の補助としたり 進学用の資金として貯金したりしいている よ って この点で貧困化とアルバイトとの関連性を示す重要な指標になると考える 表 1 アルバイト収入の使途 ( 複数回答割合はアルバイト経験者 842 人に対すもの ) 使途項目 回答数 ( 人 ) 割合 (%) 飲食代 578 69% 電話代 348 41% 交際費 663 79% 衣服雑貨 637 76% 本雑誌 CDDVD 597 71% 教材費実験実習費 75 9% 検定料 145 17% 定期代 103 12% 部活動費 84 10% 文房具問題集等 178 21% 塾予備校費 12 1% 進学用貯金 131 16% 生活費補助 152 18% とりあえず貯金 346 41% その他 58 7% 図 1 アルバイト収入の使途 2. アルバイト代使途の生活費補助 (1) 学校別分析アルバイト経験の有無に関係なく回答者全体におけるアルバイトで家計を助けている生徒の割合は 表 2からすると 全体 8.7% 職業科 6.8% 普通科 5.8% 定時制 25.3% となっている もっとも 普通科は回答数が少ないため あくまで参考の数値である 高校は1クラスの定員が40 人な 189

名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第 16 号 2011 年 12 月 ので クラスに職業科では 2.7 人定時制では約 10 人が 家の生活費を助けるためアルバイトをし ていることになる 特に 夜間定時制 (K 定 L 定 ) ではクラスの生徒の 3 分の 1 が家計のために 働いており 以前として定時制には経済的に苦しい生徒が集まっていると思われる 表 2 アルバイト代使途生活費補助の学校別 全体の使途生活費補助 ( 人 ) アルバイト経験者の使途生活費補助 ( 人 ) 学校名 いいえ はい 合計 はい % いいえ はい 合計 はい % A 工 501 28 529 5.3% 203 28 231 12.1% B 工 209 20 229 8.7% 73 20 93 21.5% C 工 127 13 140 9.3% 57 13 70 18.6% D 工 36 3 39 7.7% 9 3 12 25.0% E 商 147 8 155 5.2% 74 8 82 9.8% F 商 212 21 233 9.0% 140 21 161 13.0% G 商 74 3 77 3.9% 19 3 22 13.6% 小計 ( 職業科 ) 1306 96 1402 6.8% 575 96 671 14.3% H 高 38 0 38 0.0% 0 0 0 0.0% I 高 125 10 135 7.4% 43 10 53 18.9% 小計 ( 普通科 ) 163 10 173 5.8% 43 10 53 18.9% J 定 50 4 54 7.4% 18 4 22 18.2% K 定 63 30 93 32.3% 37 30 67 44.8% L 定 23 12 35 34.3% 17 12 29 41.4% 小計 ( 定時制 ) 136 46 182 25.3% 72 46 118 39.0% 合計 1605 152 1757 8.7% 690 152 842 18.1% 次に アルバイト経験者におけるアルバイトで家計を助けている生徒の割合は 全体 18.1% 職業科 14.3% 普通科 18.9% 定時制 39% である 職業科では 工業科が20% 前後であるのに対して 商業科は13% 前後にとどまっている 定時制は やはり夜間定時制では40% と高い割合を示している (2) 性別 学年別分析 表 3 性別と使途生活費補助 表 4 学年と使途生活費補助 使途生活費補助 使途生活費補助 性別 いいえ はい 合計 はい の割合 学年 いいえ はい 合計 はい の割合 男 822 89 911 9.8% 1 年生 38 0 38 0.0% 女 780 63 843 7.5% 2 年生 630 65 695 9.4% 合計 1605 152 1754 8.7% 3 年生 929 83 1012 8.2% 4 年生以上 8 4 12 33.3% 合計 1605 152 1757 8.7% 性別については 表 3 からすると 男 9.8% 女 7.5% と 2.3 ポイントの差がある この傾向は 上記における男の多い工業科と女の多い商業科の相違を反映したものと考えられる 学年につい 190

高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 ( 小島 ) ては 1 年生は H 高の数字であるため 参考にはならない 2 年生 9.4%3 年生 8.2% と 1.2 ポイ ントの若干の差があるが これは専門学校等は進学を希望する生徒が アルバイト代を生活費補 助から進学用貯金に振りかえるからではないかと推定される (3) 前報告と比較し 貧困化とアルバイトとの関連性が強まった家庭関係項目分析 1 家庭の暮らし向きとの関連性 表 51 家庭の暮らし向きと使途生活費補助 表 52 家庭の暮らし向きとアルバイト経験 使途生活費補助使途生活費補助 アルバイト経験 アルバイト経験割合 いいえ はい いいえ % はい % なし あり なし % あり % 家庭の暮未回答 127 3 7.9% 2.0% 家庭の暮未回答 83 47 9.1% 5.6% らし向き かなり豊か 64 7 4.0% 4.6% らし向き かなり豊か 32 39 3.5% 4.6% まあまあ豊か 747 30 46.5% 19.7% まあまあ豊か 445 329 49.0% 39.1% やや苦しい 535 71 33.3% 46.7% やや苦しい 275 328 30.3% 39.0% かなり苦しい 132 41 8.2% 27.0% かなり苦しい 74 99 8.1% 11.8% 合計 1605 152 100.0% 100.0% 合計 909 842 100.0% 100.0% 家庭の暮らし向きについては やや苦しい かなり苦しい の合計が アルバイト経験なしでは38.1% でアルバイト経験ありが50.8% と13ポイントの差であった これが 使途生活費補助では73.7% であるため アルバイト経験なしとでは35ポイントと差が2 倍以上拡大している 家庭の暮らし向きが苦しいと感じた高校生が アルバイトをしてその収入を家計に入れ 自分の世帯の生活費を補助している状況が調査結果に表れている ここに 貧困化とアルバイトとの関連性が明らかに見てとれる 2 小遣いの有無との関連性 表 61 小遣い有無と使途生活費補助 表 62 小遣い有無とアルバイト経験 使途生活費補助 使途生活費補助 アルバイト経験 アルバイト経験 いいえ はい いいえ % はい % なし あり なし % あり % 小遣い未回答 55 1 3.4% 0.7% 小遣い未回答 33 23 3.6% 2.7% 有無 定期的にもらう 727 20 45.3% 13.2% 有無 定期的にもらう 570 173 62.7% 20.5% 不定期にもらう 320 19 19.9% 12.5% 不定期にもらう 181 158 19.9% 18.8% いいえ 503 112 31.3% 73.7% いいえ 125 488 13.8% 58.0% 合計 1605 152 100.0% 100.0% 合計 909 842 100.0% 100.0% 小遣いの有無については いいえ がアルバイト経験なしが 14% でアルバイト経験ありが 58% と 44 ポイントの差であった これが 使途生活費補助では 74% であるため アルバイト経験 なしとの差は 60 ポイントに拡大している 191

名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第 16 号 2011 年 12 月 3 家庭関係項目 ( 小学校習い事 中高生宿泊家族旅行など ) との関連性 表 71 小学校習い事と使途生活費補助 表 72 小学校習い事とアルバイト経験 使途生活費補助使途生活費補助 アルバイト経験 アルバイト経験 いいえ はい いいえ % はい % なし あり なし % あり % 小学校習いいいえ 492 67 30.7% 44.1% 小学校習いいいえ 280 276 30.8% 32.8% 事 はい 1113 85 69.3% 55.9% 事 はい 629 566 69.2% 67.2% 合計 1605 152 100.0% 100.0% 合計 909 842 100.0% 100.0% 小学校の時に習い事をしたことがあるか については はい がアルバイト経験なしが 69% でアルバイト経験なしが 67% とわずか 2 ポイントの差しかなかった これが 使途生活費補 助では 56% であるため アルバイト経験なしとの差は 13 ポイントに拡大している 表 81 中高生宿泊家族旅行と使途生活費補助 表 82 中高生宿泊家族旅行とアルバイト経験 使途生活費補助使途生活費補助 アルバイト経験 アルバイト経験 いいえ はい いいえ % はい % なし あり なし % あり % 中高生宿泊いいえ 653 81 40.7% 53.3% 中高生宿泊いいえ 362 369 39.8% 43.8% 家族旅行 はい 952 71 59.3% 46.7% 家族旅行 はい 547 473 60.2% 56.2% 合計 1605 152 100.0% 100.0% 合計 909 842 100.0% 100.0% 中高生で家族と宿泊を伴う家族旅行をしたことがあるか については はい がアルバイト経験なしが60% でアルバイト経験ありが56% と4ポイントの差しかなかった これが 使途生活費補助では47% であるため アルバイト経験なしとの差は13ポイントに拡大している 以上のように 小学校習い事や中高生宿泊家族旅行における貧困化とアルバイトとの関連性は 前報告ではアルバイト経験のあるなしではほとんど差がなかったが アルバイト経験ありをさらに使途生活費補助に絞ると 浮き出てくると思われる (4) 生活費補助のアルバイト実態 1 複数かけもち 表 9 アルバイト経験者の複数かけもちと使途生活費補助 複数かけもち 使途生活費補助 使途生活費補助 いいえ 割合 はい 割合 1 種類 569 82.1% 109 71.7% 2 種類 112 16.2% 34 22.4% 3 種類以上 12 1.7% 9 5.9% 合計 693 100.0% 152 100.0% 同じアルバイト経験者でも アルバイト代を生活費補助にしていない人は アルバイトのかけ もちが 18% であるのに対して 生活費補助にしている人は 28% と 10 ポイント多い さらに 3 192

高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 ( 小島 ) 種類以上のかけもちになると 生活費補助にしない人は 2% に対し 生活費補助にしている人は 6% と多い 2 1 週間あたりの労働時間 表 10 週平均時間と使途生活費補助 週平均時間 使途生活費補助 使途生活費補助 いいえ 割合 はい 割合 5 時間未満 110 15.9% 10 6.6% 5~10 時間未満 180 26.0% 32 21.1% 10~15 時間未満 147 21.2% 23 15.1% 15~20 時間未満 151 21.8% 27 17.8% 20~25 時間未満 76 11.0% 26 17.1% 25 時間以上 29 4.2% 34 22.4% 合計 693 100.0% 152 100.0% 週平均時間は アルバイト代を生活費補助にしていない人が 20 時間以上 15% であるのにたして 生活費補助にしている人が 40% と 25 ポイントもの差がつく さらに 生活費補助にしている人は 25 時間以上の割合が週平均時間の項目なかで一番多くなっている 3 アルバイト月収入 表 11 月収入と使途生活費補助 月収入 使途生活費補助 使途生活費補助 いいえ 割合 はい 割合 1 万円未満 6 0.9% 3 2.0% 1~2 万円未満 71 10.3% 1 0.7% 2~3 万円未満 120 17.4% 14 9.2% 3~4 万円未満 140 20.3% 12 7.9% 4~5 万円未満 130 18.8% 29 19.1% 5~6 万円未満 71 10.3% 11 7.2% 6~7 万円未満 60 8.7% 19 12.5% 7~8 万円未満 39 5.7% 20 13.2% 8~9 万円未満 19 2.8% 9 5.9% 9~10 万円未満 16 2.3% 13 8.6% 10 万円以上 18 2.6% 21 13.8% 合計 690 100.0% 152 100.0% 月収入では 6 万円以上の割合で見ると アルバイト代を生活費補助にしていない人は22% であるのに対して 生活費補助にしている人は54% と32ポイントの差がついている 生活費補助にしている人は アルバイトをかけもちして週 20 時間以上働き 月 6 万円以上の収入を得て 家にお金を入れており 生活費補助にしていない人より労働時間も収入も多いことが明らかとなった 193

名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第 16 号 2011 年 12 月 3. アルバイト代使途の進学用貯金 (1) 学校別分析 表 12 アルバイト代使途進学用貯金の学校別 全体の使途進学用貯金 ( 人 ) アルバイト経験者の使途進学用貯金 ( 人 ) 学校名 いいえ はい 合計 はい % いいえ はい 合計 はい % A 工 488 41 529 7.8% 190 41 231 17.7% B 工 219 10 229 4.4% 83 10 93 10.8% C 工 128 12 140 8.6% 58 12 70 17.1% D 工 36 3 39 7.7% 9 3 12 25.0% E 商 136 19 155 12.3% 63 19 82 23.2% F 商 216 17 233 7.3% 144 17 161 10.6% G 商 72 5 77 6.5% 17 5 22 22.7% 小計 ( 職業科 ) 1295 107 1402 7.6% 564 107 671 15.9% H 高 38 0 38 0.0% 0 0 0 0.0% I 高 124 11 135 8.1% 42 11 53 20.8% 小計 ( 普通科 ) 162 11 173 6.4% 42 11 53 20.8% J 定 51 3 54 5.6% 19 3 22 13.6% K 定 85 8 93 8.6% 59 8 67 11.9% L 定 33 2 35 5.7% 27 2 29 6.9% 小計 ( 定時制 ) 169 13 182 7.1% 105 13 118 11.0% 合計 1626 131 1757 7.5% 721 131 842 15.6% アルバイト経験の有無に関係なく回答者全体におけるアルバイトで進学用の貯金をしている生徒の割合は 表 12からすると 全体 7.5% 職業科 7.6% 普通科 6.4% 定時制 7.1% となっている もっとも 普通科は回答数が少ないため あくまで参考の数値である 高校は1クラスの定員が40 人なので クラスに職業科では約 3 人定時制では約 2.5 人が 進学用貯金ためアルバイトをしていることになる 高校生は進学希望であれば受験勉強に時間を割くのが普通であるため アルバイトで進学用の貯金をするというのは 自分の家庭が経済的に苦しく進学が困難であると感じているからである よって アルバイト代の進学用貯金も生活費補助同様 貧困化とアルバイトの関連性を示す指標となると解する 次に アルバイト経験者におけるアルバイトで進学用貯金をしている生徒の割合は 全体 15.6% 職業科 15.9% 普通科 20.8% 定時制 11% である 職業科では 工業科は約 16% であるのに対して 商業科では20% を超える学校もある 定時制で割合は 中間定時制では高いが夜間定時制では低い 194

高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 ( 小島 ) (2) 性別 学年別分析 表 13 性別と使途進学用貯金 表 14 学年と使途進学用貯金 性別 いいえ はい 合計 はい の割合 学年 いいえ はい 合計 はい の割合 男 855 56 911 6.1% 1 年生 38 0 38 0.0% 女 768 75 843 8.9% 2 年生 647 48 695 6.9% 合計 1623 131 1754 7.5% 3 年生 930 82 1012 8.1% 4 年生以上 11 1 12 8.3% 合計 1626 131 1757 7.5% 性別については 表 13からすると 男 6.1% 女 8.9% と2.8ポイントの差があり 表 3の使途生活費補助とは反対の結果となった この傾向も 上記における男の多い工業科と女の多い商業科の相違を反映したものと考えられる さらに 女は無理して進学しなくてもいい という女性差別が今だに残っており これに対抗して女子高生みずから進学資金を準備していると思われる (3) 前報告と比較し 貧困化とアルバイトとの関連性が強まった家庭関係項目分析 1 家庭の暮らし向きとの関連性 表 15 家庭の暮らし向きと使途進学用貯金 いいえ はい いいえ % はい % 合計 家庭の暮らし 未回答 124 6 7.6% 4.6% 130 向き かなり豊か 62 9 3.8% 6.9% 71 まあまあ豊か 742 35 45.6% 26.7% 777 やや苦しい 546 60 33.6% 45.8% 606 かなり苦しい 152 21 9.3% 16.0% 173 合計 1626 131 100.0% 100.0% 1757 家庭の暮らし向きについては やや苦しい かなり苦しい の合計が アルバイト経験なしでは38.1% でアルバイト経験ありが50.8% と13ポイントの差であった これが 使途進学用貯金では61.8% であるため アルバイト経験なしとでは24ポイントと差が拡大している 家庭の暮らし向きが苦しいと感じた高校生が アルバイトをしてその収入を進学用に貯金している状況が調査結果に表れている もっとも 使途生活費補助ほど家庭の暮らし向きを苦しく感じてはいない 195

名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第 16 号 2011 年 12 月 2 小遣いの有無との関連性 表 16 小遣い有無と使途進学用貯金 いいえ はい いいえ % はい % 小遣い有無 未回答 53 3 3.3% 2.3% 定期的にもらう 715 32 44.0% 24.4% 不定期にもらう 320 19 19.7% 14.5% いいえ 538 77 33.1% 58.8% 合計 1626 131 100.0% 100.0% 小遣いの有無については いいえ がアルバイト経験なしが14% でアルバイト経験ありが 58% と44ポイントの差であった これが 使途進学用貯金では59% であるため アルバイト経験 なしとの差は拡大していない 3 家庭関係項目 ( 小学校習い事 中高生宿泊家族旅行など ) との関連性 表 17 小学校習い事と使途進学用貯金 いいえ はい いいえ % はい % 小学校習い事いいえ 523 36 32.2% 27.5% はい 1103 95 67.8% 72.5% 合計 1626 131 100.0% 100.0% 表 18 中高生宿泊家族旅行と使途進学用貯金 いいえ はい いいえ % はい % 中高生宿泊家 いいえ 684 50 42.1% 38.2% 族旅行 はい 942 81 57.9% 61.8% 合計 1626 131 100.0% 100.0% 表 17と表 72 表 18と表 82を比較すると どちらも使途進学用貯金のためにアルバイトして いる人の方が数ポイント はい という割合が増えており 進学を希望する以上その世帯にはあ る程度の生活水準があったことを示している これらの項目では 貧困化とアルバイトとの関連 性が強まっているとは推定できないと思われる (4) 進学用貯金のアルバイト実態 1 複数かけもち 表 19 アルバイト経験者の複数かけもちと使途進学用貯金 いいえ 割合 はい 割合 複数かけもち 1 種類 578 80.4% 100 80.6% 2 種類 124 17.2% 22 17.7% 3 種類以上 17 2.4% 2 1.6% 合計 719 100.0% 124 100.0% 196

高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 ( 小島 ) アルバイト代使途が進学用貯金であるか否かでは かけもち の割合は同様である 2 1 週間あたりの労働時間 表 20 週平均時間と使途進学用貯金 週平均時間 いいえ 割合 はい 割合 5 時間未満 108 15.0% 12 9.7% 5~10 時間未満 181 25.2% 31 25.0% 10~15 時間未満 146 20.3% 24 19.4% 15~20 時間未満 144 20.1% 33 26.6% 20~25 時間未満 89 12.4% 12 9.7% 25 時間以上 50 7.0% 12 9.7% 合計 718 100.0% 124 100.0% アルバイト代使途が進学用貯金であるか否かでは 週労働時時間の割合に大きな変化は認めら れない 3 アルバイト月収入 表 21 月収入と使途進学用貯金 月収入 いいえ 割合 はい 割合 1 万円未満 8 1.1% 1 0.8% 1~2 万円未満 66 9.2% 6 4.9% 2~3 万円未満 113 15.8% 21 17.1% 3~4 万円未満 126 17.6% 26 21.1% 4~5 万円未満 133 18.6% 26 21.1% 5~6 万円未満 70 9.8% 12 9.8% 6~7 万円未満 71 9.9% 8 6.5% 7~8 万円未満 49 6.9% 9 7.3% 8~9 万円未満 24 3.4% 3 2.4% 9~10 万円未満 24 3.4% 4 3.3% 10 万円以上 31 4.3% 7 5.7% 合計 715 100.0% 123 100.0% アルバイト代使途が進学用貯金であるか否かでは 月収入の割合でも大きな変化は認められない ただ 5 万円以上の収入の割合では していない が28% であるのに対して している が35% と7ポイントほど高い 以上より 進学用貯金のアルバイト実態は生活費補助の場合と違い 若干月収入が多い以外ほとんど平均的なアルバイト実態と同じである もっとも 受験勉強など進学準備に時間が必要であり むしろ平均的なアルバイト実態と同じであること自体 生徒に大きな負担がかかっていると思われる 197

名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第 16 号 2011 年 12 月 4. アルバイト代使途が生活費補助と進学用貯金の両方 表 22 使途生活費補助と使途進学用貯金 使途進学用貯金 いいえ はい 合計 使途生活費補助 いいえ 1511 94 1605 はい 115 37 152 合計 1626 131 1757 アルバイト代の使途が生活費補助と進学用貯金の両方である人は 表 22から37 人いる また アルバイト代の使途が生活費補助だけである人は 表 22から115 人いる そして アルバイト代の使途が進学用貯金だけである人は 表 22から94 人いる このことから アルバイト代の使途が生活費補助と進学用貯金の両方か どちらかだけである人は 合計 246 人となる この246 人とは回答者 1757 人の14% であり アルバイト経験者 842 人の30% にあたる 表 23 週平均時間と使途生活費補助 進学用貯金 表 24 月収入と使途進学用貯金 進学用貯金 使途生活補助 進学用貯金 使途生活補助 進学用貯金 人数 割合 人数 割合 週平均時 5 時間未満 2 5.4% 月収入 1 万円未満 0 0.0% 間 5~10 時間未満 10 27.0% 1~2 万円未満 0 0.0% 10~15 時間未満 6 16.2% 2~3 万円未満 2 5.4% 15~20 時間未満 7 18.9% 3~4 万円未満 7 18.9% 20~25 時間未満 5 13.5% 4~5 万円未満 9 24.3% 25 時間以上 7 18.9% 5~6 万円未満 2 5.4% 合計 37 100.0% 6~7 万円未満 4 10.8% 7~8 万円未満 6 16.2% 8~9 万円未満 1 2.7% 9~10 万円未満 1 2.7% 10 万円以上 5 13.5% 合計 37 100.0% では アルバイト代の使途が生活費補助と進学用貯金の両方である 37 人のアルバイト実態はど のようなものであろうか 1 週間あたりの労働時間は 半数以上が 15 時間以上であり 月収入も 半数以上が 5 万円以上となっており 平均的なアルバイト実態よりも高くなっている 198

高校生アルバイトにおける生活費補助 進学用貯金 ( 小島 ) 5. アルバイト代使途の生活費補助 進学用貯金と母子家庭 表 25 母子家庭と使途生活費補助 表 26 母子家庭と使途進学用貯金 使途生活費補助 使途進学用貯金 いいえ はい 合計 はい の% いいえ はい 合計 はい の% 母子家庭はい 296 70 366 19.1% 母子家庭はい 328 38 366 10.4% いいえ 1309 82 1391 5.9% いいえ 1298 93 1391 6.7% 合計 1605 152 1757 8.7% 合計 1626 131 1757 7.5% 母子家庭の高校生は アルバイト代使途が生活費補助である割合が19.1% であるのに対して 非母子家庭の場合は5.9% である やはり 母子家庭の場合は経済的に苦しいのか 非母子家庭の3 倍の割合になっている つまり 母子家庭では高校生の5 人に1 人は 家計を助けるためにアルババイトをしていることになる アルバイト代使途が進学用貯金の場合は 母子家庭の場合の割合が10.4% であるのに対して 非母子家庭の場合は6.7% である 生活費補助の場合に比べるとその差は小さいが 母子家庭の高校生は むしろ進学そのものを断念してしまうことが多いため 一概に差が小さいとは言えないと思われる 前報告の場合と同様 母子家庭の場合 アルバイト代使途生活費補助 進学用貯金においても貧困化とアルバイトとの関連性を強く示していると解する 6. まとめ 前報告では 貧困化とアルバイトとの関連性を一定示したが 十分なものとはいえないため 貧困世帯の高校生はアルバイト代を生活費補助や進学用貯金に使用すると予想して分析をした アルバイト代使途が生活費補助の場合 貧困化とアルバイトとの関連性を強く示している 家庭の暮らし向き について 苦しく 感じている高校生の割合がアルバイト経験の有無では13ポイントの差であったが 使途生活費補助の場合さらに35ポイントと差が2 倍以上拡大した また 小遣いの有無 についても 無し がアルバイト経験の有無では44ポイントの差であったが 使途生活費補助では60ポイントに差が拡大している さらに 前報告でアルバイト経験の有無ではほとんど差がなかった 小学校習い事 や 中高生宿泊家族旅行 の有無についても 生活費補助との場合は差が13ポイントまで拡大し 貧困化とアルバイトとの関連性を見ることができる 生活費補助のためのアルバイトの実態は 職場をかけもちして週 20 時間以上働き 月 6 万円以上の収入を得て 家にお金を入れており 生活費補助にしていない人より労働時間も収入も多い 199

名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第 16 号 2011 年 12 月 ことが明らかとなった アルバイト代使途が進学用貯金の場合も 貧困化とアルバイトとの関連性を前報告よりは強く示している もっとも 生活費補助の場合ほどは強くないが これは貧困世帯が進学をめざすことは困難であり 家庭の経済が苦しければ苦しいほど その困難さは増していく よって 進学をめざす家庭がいくら貧困世帯であっても 高校生が家計を助けなければならないほど貧困である場合は少ない なぜなら そうした家庭の状況が理解できる生徒は進学を断念するからである よって 家庭の暮らし向き や 小遣いの有無 の場合は アルバイト経験の有無のポイント差は拡大しているが 生活費補助の場合ほどではない また 小学校習い事 や 中高生宿泊家族旅行 の有無の場合は ほとんどアルバイト経験の有無のポイント差はない 進学用貯金のためのアルバイトの実態も やはり平均的な実態より若干月収入が多い以外ほとんど変化はない アルバイト代使途が生活費補助 進学用貯金の両方の人は37 人 生活費補助だけの人は115 人 進学用貯金だけの人は94 人いる つまり アルバイト代使途が生活費補助と進学用貯金の両方か どちらかの人は合計 246 人となる この246 人とは回答者全体の14% であり アルバイト経験者の 30% にあたる これは クラスに5~6 人は自分の家庭の生活費か自らの進学資金を稼ぐため 放課後アルバイトをしていることになる 母子家庭の場合 アルバイト代の使途が生活費補助や進学用貯金である場合でも 前報告の場合と同様 貧困化とアルバイトとの関連性を強く示している 予想したとおり アルバイト代使途が生活費補助や進学用貯金の場合は 貧困化とアルバイトとの関連性とそのアルバイトの実態を明らかにすることができた 課題としては アルバイト代の使途を生活費補助や進学用貯金にしていなくても 多くの貧困世帯の高校生が存在していると思われ そのした生徒たちの貧困化とアルバイトとの関連性を調査分析することである ( 研究紀要編集部は 編集発行規程第 5 条に基づき 本原稿の査読を論文審査委員会に依頼し 本原稿を本誌に掲載可とする判定を受理する 2011 年 10 月 11 日付 ) 200