薬剤性肺障害の診断・治療の手引き

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日本内科学会雑誌第98巻第12号

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短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き作成委員一覧 ( 五十音順 ) 委員長 久保惠嗣 信州大学医学部内科学第一講座 作成委員 吾妻安良太 日本医科大学内科学 ( 呼吸器 感染 腫瘍部門 ) 金澤 實 埼玉医科大学呼吸器内科 亀田秀人 慶応義塾大学医学部内科学教室リウマチ内科 楠本昌彦 国立がん研究センター中央病院放射線診断科 弦間昭彦 日本医科大学内科学 ( 呼吸器 感染 腫瘍部門 ) 西條康夫 新潟大学大学院医歯学総合研究科腫瘍内科学分野 酒井文和 埼玉医科大学国際医療センター共通部門画像診断科 杉山幸比古 自治医科大学内科学講座呼吸器内科学部門 巽浩一郎 千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学 土肥 眞 東京大学医学部アレルギー リウマチ内科 徳田 均 社会保険中央総合病院呼吸器内科 橋本 修 日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野 服部 登 広島大学大学院医歯学総合研究科分子内科学 花岡正幸 信州大学医学部内科学第一講座 福田 悠 日本医科大学解析人体病理学 作成協力者 大森 栄 信州大学医学部附属病院薬剤部 郡 美佳 埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科 小林朋子 日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野 斉藤好信 日本医科大学内科学 ( 呼吸器 感染 腫瘍部門 ) 高橋典明 日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野 坂東政司 自治医科大学内科学講座呼吸器内科学部門 丸山順也 信州大学医学部附属病院薬剤部 和田洋典 信州大学医学部内科学第一講座 i

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 目 次 短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 作成委員一覧 i 1. 定義と疾患概念 1 2. 臨床病型とその考え方 1 2.1. 発症時期と経過 1 2.2. 治療反応性 2 2.3. リスク因子と量反応関係 2 2.4. 臨床病型に関わる問題点 2 3. 発症機序 2 4. 疫学 2 5. 診断基準 4 6. 診断の手順と鑑別診断 6 6.1. 症状, 医療面接, 身体所見, 薬剤摂取歴 6 6.2. 診断 鑑別診断のためのフローチャート 6 6.3. 血液検査 6 6.4. 感染症の検査 8 6.5. 胸部画像所見 8 6.6. 気管支肺胞洗浄 9 6.7. 肺病理組織所見 9 6.8. 薬剤負荷試験 9 7. 薬剤性肺障害の治療の実際と治療反応性 9 7.1. 治療の実際 9 7.2. 治療の反応性 10 8. 薬剤性肺障害の臨床病型と主な原因薬剤 10 8.1. 間質性肺炎 10 8.2. 肺水腫 10 8.3. 薬剤性好酸球性肺炎 11 8.4. 気道系病変 11 8.5. 肺血管病変 12 8.6. 胸膜病変 12 ii

8.7. 呼吸中枢障害, 神経 筋障害 13 9. 各種の薬剤による肺障害 13 9.1. 抗悪性腫瘍薬 13 9.2. 抗悪性腫瘍分子標的治療薬 13 9.3. 関節リウマチ (RA) 治療薬 15 9.4.Interferon 16 9.5. 免疫抑制薬 16 9.6. 漢方薬 16 9.7. 抗菌薬 17 9.8. 抗循環器病薬 17 iii

定義と疾患概念 1 定義と疾患概念 薬剤性肺障害とは, 薬剤を投与中に起きた呼吸器系の障害のなかで, 薬剤と関連があるものと定義される. 薬剤は医師が処方したものだけでなく, 大衆薬, 生薬, サプリメント, 麻薬などを含む. 一般に, 薬剤を投与中に起きた生体にとって有害なすべての反応を有害事象 (adverse event:ae) と呼び,AE の中で薬剤と関連のあるものを副作用 ( 副反応,adverse drug reaction: ADR) と呼んでいる 1). ここで ADR とは, 薬剤本来の効能以外の予期せぬ有害な反応である. 薬剤性肺障害は, 呼吸器 ( 肺, 気管支, 肺血管, 胸膜など ) を場として起こる ADR である. 2 臨床病型とその考え方 薬剤性肺障害の臨床病型は, 特異的なものはなく一般の呼吸器疾患と同様に, 臨床所見, 画像所見と病理組織パターンとによって特徴づけられ, 基本的にそれら一般の呼吸器疾患との類似性に基づいて分類される. 表 1 は主な病変部位および臨床病型と, それらに対応する組織パターンを示したもので, 一般 ( 非薬剤性 ) の疾患名もしくは病態名を用いて示した. 2.1 発症時期と経過 薬剤投与から肺障害発症までの時間的経過は, hydrochlorothiazide による肺水腫のように投与後数分以内に発症するものから,amiodarone の間質性肺炎のよ 表 1 薬剤性肺障害の主な臨床病型および組織診断 ( 一般のびまん性肺疾患に対比している ) 主な病変部位 1. 肺胞 間質領域病変 臨床病型 ( 薬剤誘発性の病態であるが, 非薬剤性類似病態を示す ) 組織診断 ( 必ずしも臨床病型と 1 対 1 対応ではない ) 急性呼吸窮 ( 促 ) 迫症候群 / 急性肺損傷 (acute respiratory distress syndrome/acute lung injury:ards/ali) びまん性肺胞傷害 (diffuse alveolar damage :DAD) 特発性間質性肺炎 (Idiopathic interstitial pneumonias:iips)( 総称名 ) ( 臨床的に重篤 ) 急性間質性肺炎 (acute interstitial pneumonia:aip) 特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis:ipf) 非特異性間質性肺炎 (non-specific interstitial pneumonia:nsip) 剥離性間質性肺炎 (desquamative interstitial pneumonia:dip) 特発性器質化性肺炎 (cryptogenic organizing pneumonia:cop) リンパ球性間質性肺炎 (lymphocytic interstitial pneumonia:lip) 好酸球性肺炎 (eosinophilic pneumonia:ep) 過敏性肺炎 (hypersensitivity pneumonia:hp) 肉芽腫性間質性肺疾患 (granulomatous interstitial lung diseases) 通常型間質性肺炎 (usual interstitial pneumonia:uip)( 臨床的に重篤 ) 非特異性間質性肺炎 (non-specific interstitial pneumonia:nsip) 剥離性間質性肺炎 (desquamative interstitial pneumonia:dip) 器質化肺炎 (organizing pneumonia:op) リンパ球性間質性肺炎 (lymphocytic interstitial pneumonia:lip) 好酸球性肺炎 (eosinophilic pneumonia:ep) 過敏性肺炎 (hypersensitivity pneumonia:hp) 肉芽腫性間質性肺炎 (granulomatous interstitial pneumonia) 肺水腫 (pulmonary edema) capillary leak syndrome 肺水腫 (pulmonary edema) 肺胞蛋白症 (pulmonary alveolar proteinosis) 肺胞蛋白症 (alveolar proteinosis) 肺胞出血 (pulmonary alveolar hemorrhage) 肺胞出血 (alveolar hemorrhage) 2. 気道病変 気管支喘息 (bronchial asthma) 気管支喘息 (bronchial asthma) 閉塞性細気管支炎症候群 (bronchiolitis obliterans syndrome:bos) 閉塞性細気管支炎 (bronchiolitis obliterans:bo) 狭窄性細気管支炎 (constrictive bronchiolitis obliterans:cbo)( 臨床的に重篤 ) 3. 血管病変 血管炎 (vasculitis) 血管炎 (vasculitis) 肺高血圧症 (pulmonary hypertension) 肺高血圧症 (pulmonary hypertension) 肺静脈閉塞症 (pulmonary veno-occlusive disease) 肺静脈閉塞症 (pulmonary veno-occlusive disease) 4. 胸膜病変 胸膜炎 (pleuritis) 胸膜炎 (pleuritis) この表では薬剤性肺障害の臨床病型を, 非薬剤性疾患名もしくは病態名で示した. この分類はおおむね 2012 年 7 月発行 薬剤性肺障害の診断 治療の 手引き の p.27 表 Ⅱ-5 薬剤性肺障害の組織パターン に対応しているが,1 対 1 の対応といえるだけのエビデンスはない. 1

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き うに投与から数年を経て発症するものまで, 多様である. 通常, 投与開始後 2 3 週間から,2 3 ヶ月で発症するものが多い. 一般的な傾向として, 急性発症は, 非心原性肺水腫, 過敏性肺炎 (hypersensitivity pneumonia: HP), 急性好酸球性肺炎 (acute eosinophilic pneumonia: AEP), びまん性肺胞傷害 (diffuse alveolar damage: DAD) の臨床像を取り, 一方, 慢性発症は, 非特異性間質性肺炎 (non-specific interstitial pneumonia:nsip), 器質化肺炎 (organizing pneumonia:op) の臨床像を示す. 2.2 治療反応性 後述するように, 臨床病型には臨床経過が良好のものと不良なものがある. 好酸球性肺炎 (eosinophilic pneumonia:ep),hp,op などは一般に良好で薬剤中止あるいは副腎皮質ステロイド ( ステロイド ) の使用で改善することが多い. 一方,DAD は治療反応性に乏しく予後不良で, 回復しても線維化を残す. 慢性経過でみられる通常型間質性肺炎 (usual interstitial pneumonia: UIP) も治療反応性が乏しい. 2.3 リスク因子と量反応関係 薬剤性肺障害にはリスク因子や増悪因子が知られている. 非特異的なリスク因子としては, 年齢 60 歳以上, 既存の肺病変 ( 特に間質性肺炎 ), 肺手術後, 呼吸機能の低下, 酸素投与, 肺への放射線照射, 腎障害の存在, など患者側のリスク因子が挙げられる. 腎機能の低下は薬剤の血中濃度を高める意味でリスク因子となる. 2.4 臨床病型に関わる問題点 薬剤性肺障害の場合には, 臨床病型の前に必ず薬剤性という但し書きが必要である. しかし,gefitinib でみられたように, 投与により既存の特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis:ipf) が急性増悪をきたす例などでは, どこまでが原疾患の増悪であり, どこからが薬剤性肺障害であるか区別は困難である. また,HP という臨床病型が薬剤性肺障害の一病型としてよく用いられるが, この用語は有機抗原の吸入による外因性の HP でなく, 発症機序としてアレルギー反応の関与が疑われ, 比較的急性に発症した薬剤性間質性肺炎を示す場 合が多い. 更に, 臨床病型は各薬剤に特有な病型を示すものでなく,1 種類の薬剤が多種の臨床病型を示しうるし, 逆に, 複数の薬剤が 1 つの臨床病型を引き起こす. 3 発症機序 薬剤性肺障害発症の機序は, 少数の薬剤を除いてほとんど不詳である. 基本的には, 細胞障害性薬剤によるⅡ 型肺胞上皮細胞, 気道上皮細胞あるいは血管内皮細胞に対する直接毒性および免疫系細胞の活性化 ( おそらくはハプテン作用, あるいは抗原 mimicking 作用 ) の 2 つの機序が考えられている. これらの機序は, 遺伝性素因 ( 薬剤代謝系遺伝子, 免疫関連遺伝子など ), 個体の年齢的背景 ( 加齢現象 ), 肺における先行病態 ( 特に既存の肺線維症や慢性炎症性肺疾患 ), 併用薬剤との相互作用など, 多様な宿主因子と環境因子で修飾される. 4 疫学 薬剤性肺障害の正確な発症頻度は定かではない. 近年の調査から 2000 年以降に報告が増加している ( 図 1) 2,3 ). そのきっかけはわが国で大きな社会問題となった gefitinib による肺障害である 4). 臨床現場では確実例のほかに, 疑われる あるいは 否定できない ( 市販後は複数の薬剤の併用下で判断されるためこのような例が多い ) 場合が多いが, その様な例も含め, 薬剤性肺障害は, 製薬企業, 担当医師, 薬剤師等から, 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 Pharmaceutical and Medical Devices Agency:PMDA,http://www.info.pmda. go.jp/) へ被疑薬として報告, 集計され, それらの数字は国民の安全確保のため同機構ホームページに 副作用が疑われる症例報告に関する情報 ( 表 2) として提示されている 5). 近年, わが国での薬剤性肺障害の発症頻度が海外に比し多いのではないかと指摘されている.2002 年 7 月わが国で初めて上市された gefitinib による肺障害が多発したが, 諸外国では大きな社会問題となることもなく現在に至っている. 背景には医療制度や保険制度の違い, 体格と薬剤用量の違い, また HRCT 等の診断ツール普及の相違も指摘されている. しかし, これらを考慮しても, 2

疫学 図 1 薬剤性 ( 間質性 ) 肺炎をきたす薬剤数 医薬品 医療機器等安全性情報 ( 厚労省医薬食品局 ) より集計 表 2 薬剤別の間質性肺疾患報告件数の推移 ( 件数 ) 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 抗悪性腫瘍薬 ( 分子標的治療薬以外 ) 抗悪性腫瘍薬 ( 分子標的治療薬 ) 322 339 355 388 399 393 348 236 174 197 417 341 金製剤 1 3 3 3 1 2 抗菌薬 / 抗真菌薬 68 70 69 56 64 61 漢方薬 36 47 36 32 33 49 interferon 34 63 80 50 45 49 抗リウマチ薬 ( 生物学的製剤以外 ) 抗リウマチ薬 ( 生物学的製剤 ) 175 150 136 122 107 91 16 48 59 49 64 94 消炎鎮痛薬 28 36 19 33 29 25 向精神薬 21 14 31 15 18 13 降圧薬 28 32 38 43 50 46 その他 167 154 161 172 232 218 合計 1,244 1,192 1,161 1,160 1,459 1,382 記載した以外の薬剤は その他 に含めた. その他 に含まれる薬剤で報告数が比較的多かったものとして, 抗ウイルス薬, 抗血栓薬, 抗不整脈薬などがある. 文献 5 より集計 わが国では致死的な肺障害 (DAD パターンを示すもの ) の頻度が諸外国に比べて多いと考えられている. その考えの根拠は,1.Gefitinib,erlotinib,leflunomide, bortezomib,blm 等の致死的肺障害の報告 ( 表 3) 6), (clinically amyopathic dermatomyositis:cadm) に伴う急速進行性間質性肺炎 (rapidly progressive interstitial pneumonia:rpip) の重症度 8,9) などに違いがあることである. 2.IPF の急性増悪の致死性 7) や臨床的無筋症型皮膚筋炎 3

短縮版 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 表3 日本と海外 の薬剤性肺障害頻度の比較 国内 海外 gefitinib 3.98 n=1,482 0.3 米国 n=23,000 FDA approval letter leflunomide 1.81 n=3,867 0.017 海外 n=861,860 bleomycin 0.66 n=3,772 0.01 世界 n=295,800 bortezomib 2.33 n=3,556 0.16 世界 n=106,832 erlotinib 4.52 n=3,488 0.7 世界 n=4,900 日本人は薬剤性肺障害を起こしやすいことがわかる 一部日本を含む 文献 10-12 より引用改変 疑う 症状 / 検査所見 症 すべての薬剤は肺障害を引き 起こす可能性がある 栄養食品 サプリメント 基礎 疾患の特殊治療が原因となる 可能性がある 抗悪性腫瘍薬 interferon 抗リウマチ薬 生物 学的製剤 分子標的治療薬など 投与中のみならず 投与終了後にも発生 身体所見 皮疹 ラ音の聴取など 肺障害の発症リスク因子の存 在 が あ る 既 存 の 肺 線 維 症 間 質 性 肺 炎 放 射 線 療 法 腎 障害 高齢 喫煙歴 糖尿病 低アルブミン血症など 図2 状 咳 特に乾性 息切れ 呼吸困難 検査所見 肝障害 好酸球増加 KL-6 上昇など 日常診療で薬剤性肺障害を疑うポイント 5 診断基準 薬剤性肺障害の診断は すべての薬剤は肺障害を起こ 1 原因となる薬剤の摂取歴 2 薬剤に起因する臨床病型の報告 3 他の原因疾患の否定 す可能性があり 薬剤投与中のみならず投与終了後にも 4 薬剤の中止による病態の改善 発症することを常に念頭に置くことから始まる 新たな 5 再投与による増悪 肺病変の出現に際して薬剤性肺障害の発症を検討しつ などの薬剤性肺障害の診断基準に従って診断する 13 つ 肺 胸膜病変を基礎疾患に伴う例では既存の肺 胸 表 4 また 診断を進めるとともに薬剤を特定する 13 膜病変の悪化 特に免疫能や感染防御能が低下した症例 表 5 では日和見感染症と鑑別することが重要である 薬剤性肺障害の発症を疑うポイントを図 2 に示し た 発症を疑った場合には 4

診断基準 表 4 薬剤性肺障害の診断基準 1. 原因となる薬剤の摂取歴がある市販薬, 健康食品, 非合法の麻薬 覚醒薬にも注意 2. 薬剤に起因する臨床病型の報告がある臨床所見, 画像所見, 病理パターンの報告 3. 他の原因疾患が否定される感染症, 心原性肺水腫, 原疾患増悪などの鑑別 4. 薬剤の中止により病態が改善する自然軽快もしくは副腎皮質ステロイドにより軽快 5. 再投与により増悪する一般的に誘発試験は勧められないが, その薬剤が患者にとって必要で誘発試験の安全性が確保される場合 文献 13 より引用 表 5 薬剤性肺障害の診断の手順 1. 原因薬剤を同定する 1) 問診詳細な問診によって, 薬剤, 栄養食品, サプリメント, 家庭で作った食品, 法律で禁止されている物, 添加物, 放射線治療の既往を引き出す 2) 薬剤を 1 つに絞る数種類の薬剤を使用している患者では, これらの薬剤の可能性を各薬剤の肺に対する副作用や肺の反応のパターンを参考に評価する 3) 薬剤の特定 a. 発生時期は様々である. 以前投与されていた薬剤, 投与中の薬剤, 投与終了後の薬剤, すべてに可能性があり, 薬剤投与と症状の発生は様々である b. 理想的には肺障害と関連するすべての症候は特定の薬剤の中止後に消失するはずである ( 但し, これは肺線維症の場合には当てはまらない ). 薬剤の中止効果を判断するには, 可能であれば, 副腎皮質ステロイドは使用すべきではない c. 再投与試験による再発は診断の基本である. しかし, これは重症化や死亡の危険性を引き起こす. 実行には十分なインフォームド コンセントが必要である 2. 薬剤肺障害の特徴的な臨床像,BALF 所見, 病理所見を知り, 感染症との鑑別や背景疾患の肺病変との鑑別が必要である 1) 臨床症状咳 呼吸困難などの呼吸器症状の原因の特定 a. 薬剤性肺障害 b. 基礎疾患の肺 胸膜病変 c. 基礎疾患の病態 ( 心不全, 腎不全など ) d. 感染症の合併 2) 身体所見皮疹 ラ音の聴取など 3) 臨床検査所見血液検査 : 好酸球数, 肝機能障害, 血清 KL-6 SP-A SP-D LDH,β-D グルカン 4) 胸部 X 線 CT 画像所見薬剤性肺障害の臨床像, 病理所見に対応した画像所見が得られる 5) 呼吸機能検査拘束性換気障害, 拡散障害 6) 気管支肺胞洗浄液 (BALF) a. 除外診断悪性疾患の診断 : 悪性細胞の証明感染症の診断 : 病原体の細菌学的診断, 遺伝子診断 b. 薬剤性肺障害を疑う : 総細胞数増加, 病態によって好酸球, リンパ球, 好中球の増加 7) 肺病理組織学的検査びまん性肺胞傷害, 非特異性間質性肺炎, 好酸球性肺炎, 閉塞性細気管支炎, 器質化肺炎, 過敏性肺炎などを病理組織学的に診断する 8) 薬剤リンパ球刺激試験 Ⅳ 型アレルギー反応による発症で陽性率が高い 9) 再投与試験 ( チャレンジテスト ) インフォームド コンセントが必要である 文献 13 より引用改変 5

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 6 診断の手順と鑑別診断 6.1 症状, 医療面接, 身体所見, 薬剤摂取歴 自覚症状は薬剤性肺障害を診断する過程で重要であり, 薬剤開始や変更の時期, 薬剤の摂取量, 期間と臨床症状との関連が薬剤性肺障害を疑う重要な根拠となる. また, 呼吸困難などの呼吸器症状の発症経過は薬剤性肺障害の重症度を判断する上で重要であり, 特に急性経過の呼吸不全には鑑別診断とともに迅速な対応が求められる. 呼吸器症状として重要なものは, 息切れ 呼吸困難, 乾性咳嗽, 胸痛 ( 胸膜炎, 胸水貯留 ), 喘鳴 ( 気道病変 ), 血痰 ( 肺胞出血 ) である. 呼吸器感染症や肺水腫の鑑別には特に注意する. 自覚症状が乏しくても経皮的動脈血酸素飽和度の低下, 新たな胸部異常陰影や胸水貯留が薬剤性肺障害を疑うきっかけとなる. 医療面接では, 原因として疑われる薬剤の摂取歴, 薬剤投与と臨床所見の増悪 寛解との関係, 報告された臨床病型に合致するか, 再投与による病態の悪化の有無などを聞き出す. 身体診察では, バイタルサイン, 経皮的動脈血酸素飽和度, 視診, 触診にて皮疹, 口腔内粘膜診, 表在リンパ 節腫大を診る. 胸部聴診では呼吸音の左右差やラ音 ( 特に捻髪音 ) の有無, 気道病変の有無を深吸気, 強制呼気にて確認する. 肺障害の初期や閉塞性細気管支炎 (bronchiolitis obliterans:bo) など必ずしも聴診にて異常をきたさない場合もあるので, 症状, 画像, 呼吸機能でさらに評価する. 6.2 診断 鑑別診断のためのフローチャート 薬剤性肺障害の診断は, 症状, 身体所見, 薬剤摂取歴 既往歴, 画像 病理所見などの情報を総合して行う. ( 図 3) 6.3 血液検査 薬剤性肺障害の診断に直結する血液検査は存在しないが, 薬剤性肺障害の診断と病態の理解に補助的な役割を担う. 1) 非特異的な炎症反応, 組織障害, アレルギー反応をみる検査赤血球沈降反応 ( 赤沈 ),C 反応性蛋白 (CRP), 乳酸脱水素酵素 (LDH), アレルギー反応に関与する検査である. 図 3 薬剤性肺障害の診断のためのフローチャート 6

診断の手順と鑑別診断 薬剤へのアレルギーによって, 末梢血好酸球数の上昇とともに, 薬剤性の EP が誘発される場合がある. しかし, 末梢血好酸球数と肺障害の重症度には相関はなく, 末梢血好酸球数が変動することも知られている. 2) 間質性肺炎のマーカー (KL-6,SP-A,SP-D) 現在わが国では,KL-6,SP-A,SP-D が間質性肺炎のバイオマーカーとして使用されている.KL-6 は, 抗 KL-6 抗体にて認識されるシアリル化糖鎖抗原を有する MUC1 ムチンであり, 主としてⅡ 型肺胞上皮細胞から産生される 14).SP-A,SP-D はⅡ 型肺胞上皮細胞から産生されるサーファクタント蛋白である. 薬剤性肺障害を HRCT 画像から DAD, 慢性間質性肺炎 (chronic interstitial pneumonia:cip),boop(op に相当 ),EP,HP の各パターンに分類し, 血清 KL-6 値との関連をみた報告がなされている. この報告では, DAD,CIP パターンにおいて KL-6 は上昇するが,OP, EP,HP パターンでは上昇しないことが示されている 15) ( 図 4). 3) 薬剤リンパ球刺激試験 (drug lymphocyte stimulation test:dlst) 薬剤リンパ球刺激試験 (DLST) は, 薬剤性アレルギーが疑われる患者の感作されたリンパ球と被疑薬 ( 抗原 ) を混合し, リンパ球から分裂 増殖する率を 3H-thymidine の取り込み量として測定しようとする検査法である. 薬剤性肺炎の DLST 陽性率は, 全体の 66.9% と報告されている 16) ( 表 6). しかし,DLST には様々な問題点が指摘されている. 即ち, 薬剤によっては, 例えば漢方薬の小柴胡湯のように, それ自体がリンパ球刺激能を有している場合, また逆に minocycline(mino) のようにリンパ球機能抑制作用を有する薬剤があり, 前者では偽陽性, 後者では偽陰性となる可能性がある.methotrexate(MTX) については, 関節リウマチ患者の検討で,DLST の特異度が極めて低いことが報告されている. 以上のように,DLST を薬剤性肺障害の診断に使用する際は, 偽陽性 偽陰性があることを十分に認識して用いるべきである. 表 6 薬剤性肺炎の薬剤リンパ球刺激試験陽性率薬剤陽性率 (%) 抗悪性腫瘍薬 33.3 金製剤 72.7 漢方薬 67.6 漢方薬 + interferon(Ⅰfn) 25.0 抗結核薬 85.7 抗菌薬 58.0 消炎鎮痛薬 89.5 ⅠF N 20.2 全例 (n=175) 66.9 文献 16 より引用 図 4 薬剤性肺障害の画像パターンと血清 KL-6 値の関係 文献 15 より引用改変 7

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 6.4 感染症の検査 薬剤性肺障害の鑑別上, 呼吸器感染症を否定することは重要である. 結核を含む抗酸菌症, 頻度の多い肺炎球菌性肺炎, ペニシリン系, セフェム系抗菌薬が無効である Mycoplasma pneumoniae,chlamydophila pneumoniae,legionella による肺炎, さらにはウイルスや真菌による呼吸器感染などを鑑別しなければならない. 6.5 胸部画像所見 (X 線写真,CT, 特に高分解能 CT(high-resolution CT:HRCT)) まず, 薬剤投与開始前には, 画像診断の役割の中で最も大きいものは, 薬剤性肺障害のリスク因子である既存の慢性線維化性間質性肺炎や正常肺の面積の少ない例などを検討し, 薬剤投与のリスク評価を行うことである. 薬剤性肺障害の病理パターンは極めて多彩であり, その反映である画像所見も極めて多彩な形態を示す. 病理パターン分類は既知のびまん性肺疾患と類似しつつ決められる. 画像パターン分類も同様の方法で分類される. 画像パターンと病理パターンは, ある程度は一致するものの, 乖離がある症例も少なくない点に注意すべきである 17). 画像パターンを類型化することは, 予後不良の DAD 型肺障害の診断や他疾患との鑑別の際に有用であり, またある程度病理所見を反映した所見が得られる点も有用である. びまん性肺疾患を呈する薬剤性肺障害の主な画像パターンを表 7に示す 18). この画像パターンから表 1 に列挙した臨床病型を決定することは容易ではなく, 予後の面から予後不良の DAD パターンと非 DAD パターンに分類することで臨床上十分である.DAD パターンは, 薬剤性 DAD においても, 広範な浸潤影やすりガラス様陰影に牽引性気管支拡張などの構造改変所見がみられるのが特徴で, 既知の疾患でいえば AIP に類似したパターンである. しかし,DAD 型肺障害と非 DAD 型肺障害の画像による鑑別は, 特に DAD 早期の滲出期には困難であり, また薬剤による DAD とその他の原因による DAD の画像による鑑別は, 重症感染症などの基礎疾患が画像上明瞭である場合などを除いて原則として難しい事に留意すべきである. 薬剤性肺障害診療における画像診断の役割は, 以下のようにまとめられる. 特に 3.5.6. が重要と考えられる. 1. 陰影の早期発見 : 時に臨床症状のない grade 1 の症例が存在するが, このような症例での早期の診断に役立つ. 2. 薬剤性肺障害発症の客観的証拠としての重要性 : たとえば被疑薬剤の投与前から陰影が存在し増悪する場合には, その薬剤による肺障害は考えにくい. 3. 重篤な肺障害の頻度が高い薬剤では, 投与前にリスク評価として, 間質性肺炎の有無や程度, 肺気腫の評価を行うことは重要である. 4. 発症時の鑑別診断の一助になりうる. 5. 陰影の広がりや増悪速度の判断に有用で, 重症度の判定に役立つ. 6. 予後の推定に重要な DAD 型肺障害発症の診断に有用である. ただし, 器質化期に至らない早期例の診断には限界がある. 7. 肺障害機序の推定の一助. 但し画像パターンの適応にあたっては, その問題点と限界を十分にわきまえるべきである. 表 7 びまん性肺疾患を呈する薬剤性肺障害の画像所見 慢性間質性肺炎 (CIP) 好酸球性肺炎 (EP) 器質化肺炎 (OP) びまん性肺胞傷害 (DAD) 過敏性肺炎 (HP) 胸部 X 線画像 両側下肺野優位のすりガラス様陰影, 斑状の浸潤影 末梢優位の散在性浸潤影またはすりガラス様陰影 両側の多発性, 非区域性浸潤影 両側肺野に斑状の浸潤影, すりガラス様陰影 肺容量の減少および両肺底部の境界不明瞭な間質陰影 胸部 CT 画像 両側肺野末梢優位のすりガラス様陰影, 浸潤影, 線状陰影, 気管支血管束の肥厚, 牽引性気管支拡張像 すりガラス様陰影, 浸潤影, 結節様陰影, 縦隔リンパ節腫脹, 胸水, 小葉間隔壁, 気管支血管束肥厚 胸膜下または気管支血管束沿いに結節影や斑状陰影, すりガラス様陰影,reversed halo sign 両側斑状のすりガラス様陰影と浸潤影 ( 背側優位が多い ) 両側肺野にびまん性のすりガラス様陰影 文献 18 より引用改変 8

薬剤性肺障害の治療の実際と治療反応性 8. 治療効果の判定や経過観察. 6.6 気管支肺胞洗浄 (bronchoalveolar lavage; BAL) BAL のみで薬剤性肺障害の確定診断を行うことはできないが, 呼吸器感染症などの他疾患の除外に有用であり, さらに病態 病理組織所見を推測できる情報が得られる可能性もある. 薬剤性肺障害の診療において本検査は重要である. Costabel ら 19) の総説では薬剤性肺障害の BAL 液 (BALF) 所見を以下のように分類している. 1)Cellular pneumonia 臨床病型としては HP パターンとして認識されるものであろう. 最も頻度が高く,BALF 中リンパ球が優位に増加しておりしばしば 50% を超える. 好中球やその他の炎症細胞の増加を伴う場合もある.CD4/CD8 比は低いことが多い. 2)Eosinophilic pneumonia 好酸球分画が増加している. 逆に BALF 中に好酸球が認められなければ好酸球の胞隔 肺胞内の浸潤は否定される. 3)Organizing pneumonia リンパ球, 好中球, 好酸球, 肥満細胞が種々の割合で混在している. 泡沫状のマクロファージや形質細胞も認める場合もある.CD4/CD8 比は低いことが多い. 4)Cytotoxic reaction 臨床病型としては DAD パターンとして認識されるものであろう. 細胞障害性薬剤によって誘発される. 好中球分画が増多し, 異型 Ⅱ 型肺胞上皮細胞の集塊を認める場合もある. 予後不良の薬剤性肺障害である. 5)Diffuse alveolar hemorrhage 赤血球以外にヘモジデリンを貪食した肺胞マクロファージがみられる. 6)Amiodarone によって誘発される薬剤性肺胞傷害では, リン脂質 ( サーファクタント様物質 ) の貯留によるものと考えられる泡沫状の細胞質を呈する肺胞マクロファージを認めることが特徴である. 6.7 肺病理組織所見 一般的に薬剤性肺障害に特異的な病理組織像はなく, 種々の組織像を呈することが知られている. 病理所見が 得られず, 経過, 画像, 検査所見から, 臨床的に診断されることも多いが, 逆に病理像から薬剤性肺障害を疑う症例も存在することから, その病理学的特徴を理解することは診断のために重要である. 肺胞, 気道, 血管, 胸膜などの肺内のすべての領域に肺障害, 病変が起こりうるが, 最も頻度が高く, かつ重要なのは肺胞 間質領域病変, 特に間質性肺炎である. 特発性に類似したものを含め, 間質性肺炎のあらゆるパターンをとるとされている ( 表 1). 特に感染症や腫瘍性病変の除外という意味を含めても, 可能な限りBAL, 経気管支的肺生検 (transbronchial lung biopsy, TBLB) での検索をすることが望ましい. TBLB のような小検体であっても的確な部位から採取されていれば, 治療反応性, 予後を予測しうる組織パターンの認識と, 好酸球浸潤や異型上皮細胞の出現, 組織パターンの混在など薬剤性肺障害を示唆する所見を得ることができる. 6.8 薬剤負荷試験 薬剤への過敏反応を調べるために, 薬剤負荷試験を行うべきかどうかについては, 倫理的な側面もあり, 一定の見解が得られていないのみならず, その具体的な方法についても定まったものはないのが現状である. 7 薬剤性肺障害の治療の実際と治療反応性 7.1 治療の実際 ( 図 5, 表 8) まず, 被疑薬はすみやかに中止する. 治療の継続が必要な場合は, 薬剤性肺障害の頻度の少ない他の種類の薬剤に変更する. ただし, 抗悪性腫瘍薬治療は肺障害が改善するまで再開すべきではない. 中等症では prednisolone(psl) 換算で 0.5 ~ 1.0 mg/ kg/ 日を原因薬剤, 重症度を考慮して投与する. 開始量を2~4 週間投与した後漸減する. 重症例では methylprednisolone 500 ~ 1,000 mg/ 日を 3 日間投与するパルス療法を行い,PSL 換算で 0.5 ~ 1.0 mg/kg/ 日で継続し, 漸減する. 肺障害と低酸素血症の改善がすみやかに得られれば 1 ~ 2 ヶ月間で終了する. 9

短縮版 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 臨床像 非心原性肺水種 急性肺損傷 / 急性呼 吸窮 促 迫症候群 びまん性肺胞傷害 パルス療法 mpsl 500 1,000 mg/日 3日間 非特異性間質性肺炎 器質化肺炎 好酸球性肺炎 過敏性肺炎 PSL 0.5 1.0 mg/kg/日 図5 薬剤性肺障害の治療の実際 表8 薬剤性間質性肺炎 急性肺損傷の重症度分類案 重症度 軽 症 発生機序 副腎皮質ステロイド投与 細胞障害性 非細胞障害性 アレルギー性 治療 PaO2 80 Torr 被疑薬中止 中等症 60 Torr 80 Torr ステロイド治療 重 60 Torr PaO2/FiO2 300 パルス療法 ステロイド継続投与 症 治療の対応は概略を示したもので 被疑薬の中止やステロイドにすみやかに反応する時は治療も軽減する 7.2 治療の反応性 一般に アレルギーの反応によって発症した場合や好 酸球性肺炎 EP などでは ステロイドの効果が期待で 8 薬剤性肺障害の臨床病型と主な原因薬剤 8.1 間質性肺炎 きる cellular NSIP パターン OP パターン EP パター 薬剤性肺障害で最も頻度が高いのが間質性肺炎であ ンではステロイドに対する反応性は良好である 一方 り 薬剤性肺炎と薬剤性間質性肺炎はほぼ同義語として 細胞障害性の機序などで発症した DAD パターンでは 用いられている ステロイドの効果は乏しい 薬剤性間質性肺炎のパターンを呈する薬剤について代 病理組織所見では リンパ球浸潤 時に肉芽腫を認め 表的なものを表 9 に示した 薬剤性間質性肺炎と鑑別す る炎症像が主体で組織障害や線維化がごく軽度ないし欠 べき疾患として 原因不明の特発性間質性肺炎 idiopathic 如する場合 また EP 肺胞腔内器質化所見などである interstitial pneumonias IIPs 膠原病に合併する間質性 場合はステロイドに反応が期待できる 一方 DAD や 肺炎 急性 慢性 HP 好酸球性肺炎 EP 急性肺損傷 線維化が高度な所見では反応性は乏しい acute lung injury ALI / 急性呼吸窮 促 迫症候群 胸部 X 線と CT HRCT 画像 表 7 から EP acute respiratory distress syndrome ARDS ニュー OP 過敏性肺炎 HP を示唆する所見の症例はステロ モシスチス肺炎 Pneumocystis pneumonia PCP など イドに反応が期待できる 血清 KL-6 値が正常を示した のびまん性肺疾患がある 特に既存に IIPs や膠原病が存 OP HP はステロイドに反応するので 薬剤性の場合で 在する場合には 新たに出現した陰影が原疾患あるいは もこれらの臨床病型の場合にはステロイドに反応が期待 薬剤によるものかの鑑別が困難な場合もある 18 15 できる 図4 8.2 肺水腫 一般に薬剤による肺水腫 薬剤性肺水腫 は非心原性 肺水腫 non-cardiogenic pulmonary edema NCPE 20 10

薬剤性肺障害の臨床病型と主な原因薬剤 表 9 薬剤性間質性肺炎のパターンと原因薬剤 パターン 急性間質性肺炎 / びまん性肺胞傷害 (AIP/DAD) パターン 特発生器質化肺炎 / 器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎 (COP/BOOP) パターン 非特異性間質性肺炎 (NSIP) パターン 過敏性肺炎 (HP) パターン 原因薬剤 Amiodarone,cyclophosphamide(CPA),gefitinib,erlotinib,cetuximab, panitumumab,methotrexate(mtx), など Bleomycin(BLM),MTX,CPA, 金製剤,amiodarone,salazosulfapyridine (SASP),penicillamine など Amiodarone,MTX,penicillamine, 金製剤,hydralazine Gefitinib など をいう. しかし, 直接心血管系に作用し左心機能の低下を誘発する薬剤による場合は CPE と同様の病態を示す. 従って, 薬剤性肺水腫は,CPE,ALI/ARDS,ALI/ ARDS 以外の NCPE のいずれも起こしうる. 薬剤による NCPE の発症機序は解明されていない点が多い.ALI/ARDS 21) と同様の病態を呈するものは直接に薬剤が肺血管内皮細胞, 肺胞上皮細胞に障害をきたすものと思われるが, 詳細は不明である.ALI/ARDS 以外の薬剤による NCPE の発症機序 20) では,capillary leak syndrome( 毛細血管漏出症候群,Clarkson 症候群 ) 22), hypervolemia( 循環血液量過多症 ), アナフィラキシーなどのアレルギー性機序が推定されている. 心原性肺水腫, 非心原性肺水腫および ALI/ARDS を呈する薬剤を表 10(a) 23), 表 10(b) 20,23-25), 表 10(c) 20) に示す. 8.3 薬剤性好酸球性肺炎 (EP) 薬剤性好酸球性肺炎 (EP) とは, 治療薬剤の投与中に, 肺組織に好酸球が浸潤し, 臓器障害を起こす結果, 呼吸困難などの呼吸器症状を起こす疾患の総称である. 診断の確定には, 以下の 3 つの条件のいずれか 1 つが必要とされる. 1. 画像検査で肺に異常所見を伴う, 末梢血の好酸球増多 2. 経気管支生検あるいは開胸肺生検で確定された, 肺組織への好酸球浸潤 3. 気管支肺胞洗浄液 (bronchoalveolar lavage fluid: BALF) 中の好酸球増多 (25% 以上 ) 急性の経過を示す急性好酸球性肺炎 (acute eosinophilic pneumonia:aep) 型と, 亜急性 慢性の経過を示す慢性好酸球性肺炎 (chronic eosinophilic pneumonia:cep) 型とがある. 急性の場合には,Allen の提唱した AEP に類似した臨床像を示す 26). 即ち, 発熱, 呼吸困難, 咳嗽, 喀痰, 胸痛などが急速に出現し, 胸水を伴うこともしばしばみられる. 時に呼吸不全を伴う. 症状からは, 呼吸器感染症と鑑別が困難なことが多い. 原因薬剤の投与を開始して数日から 7 日以内に認められることが多い. 一方,CEP の病像を示す症例では, 亜急性から慢性の経過をとり, 数週間から数ヶ月持続する咳嗽, 発熱, 体重減少, 進行性の息切れ, 喘鳴, 盗汗などがみられる. 経過から原因薬剤を推定 特定するのが困難な場合もある. 急性型では, 発症当初は末梢血の好酸球が増加せず,1 週間ほど経過してから上昇してくることもある. それに対して, 慢性型では, ほとんどの症例で末梢血の好酸球増加が認められ,IgE 値も高値を示すことが多い. 急性型では, すりガラス様陰影, 網状陰影を示す. 程度が強ければ, 陰影はびまん性に広がる. 胸水の貯留もしばしばみられる. 慢性型では, 末梢側優位の浸潤影やすりガラス様陰影に加えて, 小葉中心性の粒状陰影や, 小葉間隔壁の肥厚などの多彩な所見を示す. 陰影が限局性の場合, 上葉に優位な分布を示すことが多い. EPを起こす可能性のある薬剤を ( 表 11) 27-29) に示す. 8.4 気道系病変 薬剤誘発性喘息もしくは気管支攣縮は, 大別して 3 つの機序によって発症する. 即ち,β 受容体遮断薬による喘息発作の誘発,NSAIDs によるアスピリン喘息発作および職業性喘息としてみられる薬剤粉末の吸入による喘息である. 11

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 表 10(a) 心原性肺水腫を呈する主な薬剤 1. 心不全を誘発する薬剤 1)α 受容体作動薬 Adrenaline(epinephrine),noradrenaline(norepinephrine),phenylephrine, など 表 10(c) ALI/ARDS を呈する主な薬剤 1. 抗悪性腫瘍薬など Cytarabine arabinoside (Ara-C),vinca alkaloids,gefitinib, erlotinib,cetuximab,panitumumab,recombinant granulocyte-macrophage colony stimulating factor (rgm-csf) 2)β 受容体遮断薬 Propranolol,metoprolol,atenolol, など 3)Ca 拮抗薬 Verapamil, diltiazem, nifedipine 2. 体内水分貯留による肺水腫 1) 血漿増量薬 Albumen, 血漿蛋白製剤, 等張性 高張性輸液製剤 2. 生物学的製剤 ( 抗関節リウマチ薬 ) Ⅰnfliximab,etanercept,adalimumab 3. その他 Amiodarone,nitrofurantoin,talc 文献 20 より引用改変 2) 副腎皮質ステロイド 表 10(b) 非心原性肺水腫を呈する主な薬剤 1. 抗悪性腫瘍薬 文献 23 より引用 Cytarabine arabinoside (Ara-C),gemcitabine(GEM),interleukin-2(ⅠL-2, teceleukin),mitomycin(mmc),pentostatin(dcf),all-trans retinoic acid(atra, tretinoin), arsenic trioxide,vinblastine 2. 免疫抑制薬 Methotrexate(MTX),muromonab-CD3 3. 抗真菌薬 Amphotericin B(AMPH-B) 4. 呼吸器系薬 Epoprostenol,nitric oxide 5. 利尿薬 Acetazolamide,chlorothiazide/hydrochlorothiazide 6. 抗精神薬, 抗うつ薬 Ethchlorvynol,phenothiazines,tricyclic antidepressants 7. 非ステロイド性抗炎症薬, 麻薬性鎮痛薬 Aspirin,methadone,morphine,propoxyphene 8. 陣痛防止薬 ( 子宮収縮薬, 子宮運動抑制薬 ) Ⅰsoxsuprine, ritodrine, oxytocin 9. 造影剤 10. その他 Protamine,oxygen toxicity (heroin,paraquat) * * Heroin,paraquat は薬剤ではないが, 肺水腫を誘発する. 文献 20,23,24,25 より引用改変 8.5 肺血管病変 1) 肺血栓塞栓症エストロゲン製剤および経口避妊薬は血液凝固能を亢進させるため, 肺血栓塞栓症のリスク因子として挙げられている. その他の薬剤としては, 統合失調症をはじめとする精神障害で用いられる向精神薬と肺血栓塞栓症との関連が古くから数多く報告されている. 2) 肺胞出血薬剤誘発性の肺胞出血は, 抗血栓薬 ( 抗凝固薬, 抗血小板薬, 血栓溶解薬など ) の使用時や抗甲状腺薬 propylthiouracil(ptu) で代表される抗好中球細胞質抗体 (ANCA) が関与する血管炎が原因で発症する. 3) 肺高血圧症 2008 年に肺高血圧症の臨床分類が改訂され 5 群に分類されているが, 薬剤性肺高血圧症は肺動脈性肺高血圧症 (pulmonary arterial hypertension:pah) に含まれている 30).PAH の約 10% を占めるとの報告もある. 8.6 胸膜病変 薬剤により胸膜病変が誘発されることは, 頻度としては高くはない. 病像としては, 胸水貯留, 発熱, 胸痛など胸膜炎, あるいは緩徐に進行する胸膜肥厚の場合がある. 現在までに 40 以上の薬剤で胸膜病変の誘発が報告されているが, 新しい薬剤の導入に伴い増加している. 胸膜病変単独のものと, 他の病態 ( 薬剤誘発性 lupus や急性間質性肺炎 ) に合併するものとがある. 薬剤誘発性 lupus は, 発熱, 皮疹, 関節痛, 抗核抗体陽性など,SLE と酷似した病像を呈するもので, 因果関係が疑われている薬剤は多数にのぼる 31). その一部に胸膜炎, 心膜炎を 12

各種の薬剤による肺障害 表 11 合併する. 薬剤性好酸球性肺炎を起こす, 使用頻度の高い薬剤 1. 非ステロイド性抗炎症薬 Diclofenac( ボルタレン ),naproxen( ナイキサン ),loxoprofen( ロキソニン ),acetylsalicylic acid( バイアスピリン ) 2. 非ピリン系鎮痛薬 Acetaminophen( カロナール ) 3. その他の抗炎症薬 免疫修飾薬 D-penicillamine( メタルカプターゼ ),salazosulfapyridine ( アザルフィジン EN, サラゾピリン ),bucillamine( リマチル ),azathioprine( アザニン, イムラン ) 4. 抗菌薬 Penicillin( バイシリン G),minocycline( ミノマイシン ), clarithromycin( クラリシッド, クラリス ),levofloxacin ( クラビット ),cephalosporin( セフゾン, メイアクト ) 5. 抗てんかん薬 Phenytoin( アレビアチン, ヒダントール ),carbamazepine ( テグレトール ),procarbazine( 塩酸プロカルバジン ) 6. 抗うつ薬 Imipramine( トフラニール ) 7. 降圧薬 Captopril( カプトリル ),hydralazine( アプレゾリン ) 8. 利尿薬 Hydrochlorothiazide * ( ニュートライド ) 9. 漢方薬 紫朴湯, 小紫胡湯 10. その他 G-CSF 製剤 ( 例 filgrastim: グラン ), propylthiouracil( チウラジール, プロパジール ), simvastatin( リポバス ) 11. 健康食品 サプリメント Fenfluramine( 食欲抑制薬 : わが国では未承認 ) * 配合薬として, プレミネント, エカード 配合錠 LD / HD, コディオ 配合錠 MD / DX, ミコンビ 配合錠 AP / BP にも含まれる. 文献 27-29 より作成 近年は薬剤性胸膜炎の原因薬剤として,TNF α 阻害薬 も含めた生物学的製剤に由来するものが報告の過半を占めるに至っている. 8.7 呼吸中枢障害, 神経 筋障害 薬剤性肺障害というよりは, 薬剤性呼吸障害の 1 つの型として, 呼吸中枢障害と神経 筋障害がある. 高炭酸 ガス血症が存在する時に呼吸中枢障害が疑われる. 麻酔薬, 鎮痛薬, 睡眠 鎮静薬, 向精神薬など中枢神経系に作用する薬剤は, 肺障害 ( 肺の実質 間質障害 ) は誘発せずに呼吸中枢抑制をきたす可能性がある. 薬剤誘発性筋無力症は,penicillamine, アミノグリコシド系抗菌薬,procainamide,polymyxin B などで誘発される. 9 各種の薬剤による肺障害 頻度の多いもの, 近年注目されている薬剤などを中心に概説する. 9.1 抗悪性腫瘍薬 ( 分子標的治療薬を除く ) 現在, わが国において, 悪性腫瘍治療に用いられている主な抗悪性腫瘍薬 ( 分子標的治療薬を除く ) を対象に, 薬剤性肺障害に関する報告数とその臨床パターンについて表 12 32-34) にまとめた. また, 各薬剤による肺障害の発症頻度の把握が重要であることから, 抗悪性腫瘍薬による間質性肺炎, 肺障害の発症頻度を表 13 に示した. 9.2 抗悪性腫瘍分子標的治療薬 抗悪性腫瘍薬は年々新薬が増加しているが, 特に最近は分子標的治療薬の開発が顕著である. わが国ではこれら分子標的治療薬の新薬について市販後全例調査方式の使用成績調査 ( 以下, 全例調査 ) が実施されている. これにより薬剤性肺障害の発現状況, 特に頻度と予後について正確な数値が得られるような状況となっている. Gefitinib と erlotinib はいずれも上皮細胞増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬 (EGFR-TKI) であり, 非小細胞肺癌を適応症とする.Gefitinib は, 発売後に急性肺障害 間質性肺炎の副作用報告が相次いだことからプロスペクティブ調査が行われ, その調査結果では急性肺障害 間質性肺炎の発現率は 5.8% であった. 急性肺障害 間質性肺炎の発症リスク因子は,performance status(ps)2 以上, 喫煙歴有, 投与時に間質性肺疾患の合併有および化学療法歴有とされ, 予後不良因子は, PS2 以上および男性とされた 35). Erlotinib は, 全例調査 (3,488 例 ) において,158 例が間質性肺疾患とされ, 発現率は 4.5%,55 例が死亡した. 13

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 表 12 各種抗悪性腫瘍薬における薬剤性肺障害の発症パターンと発症頻度 ( 分子標的治療薬については本文参照 ) 抗悪性腫瘍薬 ( 分子標的治療薬以外 ) 報告数 A B C D E F G H Ⅰ J K L M N O P アルキル化薬 Cyclophosphamide(CPA) *** Ⅰfosfamide(ⅠFM) * Busulfan(BUS) *** Melphalan(L-PAM) ** Nitrosourea *** Procarbazine(PCZ) ** 代謝拮抗薬 Methotrexate(MTX) **** Fluorouracil(5-FU) * Cytarabine(Ara-C) ** Gemcitabine hydrochloride(gem) ** Azathioprine(AZ) * Mercaptopurine(6-MP) * Fludarabine(FLU) ** Pemetrexed(MTA) ** 抗悪性腫瘍性抗生物質 Doxorubicin(DXR) * Mitoxantrone(MⅠT) * Mitomycin C(MMC) *** Bleomycin(BLM) **** 微小管阻害薬 Vinblastine(VLB) *** Vindesine(VDS) ** Vinorelbine(VNR) * Paclitaxel(PCT) ** Docetaxel hydrate(dct) ** トポイソメラー Ⅰrinotecan(ⅠRT) ** ゼ阻害薬 Nogitecan(topotecan) * Etoposide(ETP) *** 白金製剤 Cisplatin(CDDP) * Carboplatin(CBDCA) * Oxaliplatin(L-OHP) ** Cytokine Ⅰnterferon(ⅠFN) ** Ⅰnterleukin-2(ⅠL-2) ** ホルモン製剤 Tamoxifen(TAM) * Medroxyprogesterone(MPA) * Leuprorelin * その他 Cladribine(CdA) * Bacille de Calmette et Guérin ** (BCG)(intravesical) A :acute ⅠLD/NSⅠP( 急性間質性肺疾患 / 非特異性間質性肺炎 ) Ⅰ:lung nodules( 肺小 [ 結 ] 節 ) B :subacute ⅠLD/NSⅠP( 亜急性間質性肺疾患 / 非特異性間質性肺炎 ) J :transient infiltrates( 一過性浸潤 ) C :PⅠE(pulmonary infiltration with eosinophilia: 肺好酸球増多症 ) K :pulmonary edema( 肺水腫 ) D :granulomatous ⅠLD( 肉芽腫性間質性肺疾患 ) L :ARDS( 急性呼吸窮 [ 促 ] 迫症候群 ) E :OP( 器質化肺炎 ) M :HUS(hemolytic uremic syndrome: 溶血性尿毒症性症候群 ) F :DⅠP( 剥離性間質性肺炎 ) N :DAH( びまん性肺胞出血 ) G :pulmonary fibrosis( 肺線維症 ) O :PVOD( 肺静脈閉塞症 ) H :shrinking lung( 縮小肺 ) P :opportunistic infections( 日和見感染 ) *: 数例 **:10 ~ 20 例 ***:20 ~ 100 例 ****:100 例以上 : まれ : 低頻度 : 中頻度 : 高頻度文献 32-34 より引用改変 間質性肺疾患の発現時期は投与開始後 4 週間以内が多く, 間質性肺疾患の発現 増悪のリスク因子として, 喫煙歴,ECOG PS2 4, 間質性肺疾患の合併または既往, 肺感染症の合併または既往が特定された 36). Gefitinib,erlotinib による肺障害はしばしば致死的であり, その主要な病態は DAD である.Erlotinib については,gemcitabine との併用で膵癌に対して使用可能となったが, その臨床試験では 8.5% に間質性肺疾患の副作用が認められており 37), 非小細胞肺癌における erlotinib 単独投与と比較して発現率は高いことに注意が必要である. Everolimus,temsirolimus は腎細胞癌を適応症とする mtor 阻害薬である. いずれの薬剤も間質性肺疾患が高頻度に認められる.Everolimus の腎細胞癌を対象とした日本人を含む国際共同第 Ⅲ 相臨床試験では, 間質性肺疾患の副作用は everolimus 群の 11.7%(32/274 例 ) に発現しており, さらに盲検下で専門家による放射線画像評価がレトロスペクティブになされた結果,everolimus 群 14

各種の薬剤による肺障害 表 13 抗悪性腫瘍薬における間質性肺炎, 肺障害の発生頻度 薬剤名 頻度 (%) Paclitaxel( タキソール ) 0.54 Docetaxel hydrate( タキソテール ) 0.1 Amrubicin hydrochloride( カルセド ) 2.2 Gemcitabine hydrochloride( ジェムザール ) 1.50 Pemetrexed ( アリムタ ) 3.6 Vinorelbine( ナベルビン ) 2.45 Ⅰrinotecan( カンプト, トポテシン ) 1.30 Peplomycin sulfate( ペプレオ ) 6.90 Bleomycin( ブレオ ) 10.20 Cisplatin( ブリプラチン, ランダ ) 0.38 Carboplatin( パラプラチン ) 0.1 S-1(TS-1) 0.3 2011 年 10 月までの添付文書, インタビューフォーム使用成績調査から 274 例のうち,CT 画像評価が可能であった 245 例中 132 例 (53.9%) に新たな間質性肺疾患の出現または悪化の所見が認められた 38). Temsirolimus の腎細胞癌を対象に行った日本人を含む国際共同第 Ⅱ 相臨床試験では,17.1%(14/82 例 ) に間質性肺疾患の副作用発現が報告され, 後に行われた画像診断の専門家による CT 画像評価では, 評価可能であった 77 例中 44 例 (57.1%) に間質性肺疾患が認められている 39). 同様に, 腎細胞癌を対象とした海外第 Ⅲ 相臨床試験では,temsirolimus 群 1.9%(4/208 例 ) に間質性肺疾患が報告されていたが,CT 画像をレトロスペクティブに検討した結果, 評価可能であった 178 例中 52 例 (29.2%) に間質性肺疾患が認められた 40). Everolimus と temsirolimus の間質性肺疾患に対する治療には, 重症度に応じた対応が推奨されている. 重要な点は, 最も軽症な間質性肺疾患, 即ち画像所見のみで無症状である場合には,everolimus あるいは temsirolimus を中止することなく治療継続可能とされていること, さらに, 比較的軽症の症状を有する間質性肺疾患の場合には, 休薬した後に間質性肺疾患が改善すれば, 投与再開も可能とされている点にある ( 詳細は各々の適正使用ガイドを参照 ). mtor 阻害薬の間質性肺疾患はステロイドの反応性が良好である 38). 一方,mTOR 阻害薬は基本的に免疫抑制剤であり,PCP 発症も報告されているためこの鑑別は治療上重要である. 9.3 関節リウマチ (RA) 治療薬 関節リウマチ (RA) では RA による慢性間質性肺病変 は 10 ~ 30% の頻度で認められる. 従って,RA 患者の治療中に間質性肺病変の新たな発現あるいは増悪がみられた場合に, 薬剤性肺障害の他に,RA 自体の間質性肺病変の出現 増悪, および呼吸器感染症 ( 特に PCP) の 3 者の鑑別が必要となる. しかし, この鑑別は必ずしも容易ではない.RA においてはこれら 3 者が相互に関連して病態を形成していると考えられる場合が少なくない. 例えば,RA の PCP は単なる感染症とはいえず, 宿主が持っている病原体に対する異常な免疫応答に, さらに免疫抑制薬による修飾の関与が想定される 41). 1)Methotrexate(MTX) RA 治療のアンカードラッグとして, 最近では約 8 割の RA 患者に投与されている. わが国の調査で MTX による肺炎の発症は 75% が服用開始半年以内であるが, 数年から十数年を経ての発症も時々みられる. 用量には依存しない. 発症頻度は 1990 年頃には 1 ~ 5% とされていたが, その後リスク因子として男性, 喫煙歴, 既存の肺病変などが抽出され 42,43), わが国でも既存の肺病変が重要視された 44). これらを踏まえ, 投与開始前にスクリーニングを行い, 臨床的に問題となる間質性肺病変を有する患者への投与を可能な限り控えるようになり,RA における発現率は 0.4% 以下に低下しているようである 45). 2) 生物学的製剤 2011 年 9 月現在, わが国で市販されている生物学的製剤は 6 種類ある.RA 以外にもクローン病, 潰瘍性大腸炎, 尋常性乾癬, 強直性脊椎炎などの難治性炎症性疾患にも適応が拡大されつつある. これらの投与中に間質性肺炎の新規発症や増悪を認める頻度は,RA において 0.1 ~ 1.0% とされるが, その全てが薬剤性肺障害ではなく,PCP や RA の肺病変が除外されていない例が少なからずあり, さらなる検証が必要である. RA 患者に生物学的製剤投与中の急性間質性肺疾患 24 症例を集積した多施設共同研究の検討によれば,13 例が PCP 確診,11 例が PCP 疑診と判定され, 薬剤性肺障害と判断されたのは 2 例のみ, しかもいずれも MTX 肺炎と判断された 46). 即ち, 急性肺障害の発症には Pneumocystis の関与が深いという結論で, こうした結果も, 生物学的製剤による薬剤性肺障害は, 実際には報告よりも低頻度である可能性を示唆している. 診断は生物学的製剤に特有のものはないが,PCP をは 15

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 発, 咳, 呼吸困難 (PaO2, SpO2 の低下 ) 体所見, X 線検査, CT, 臨床検査 Methotrexate(MTX), 生物学的製剤の一時中止 呼吸器内 医, 放射線 医の 影が ましい 実質性陰影 間質性陰影 養, 血液 養抗酸菌染 養 すべて陰性 血中 β-d グルカン (β-dg) 定可能なら誘発 ないし BAL で 菌体染 PCR の検査 いずれかで陽性 抗菌薬治療が 効ないし悪化で病原体不明 β-dg, PCR および他の病原体すべて陰性 β-dg または PCR 陽性 β-dg, PCR とも陰性他の病原体検査で陽性 細菌性肺炎または結核 MTX などによる薬剤性肺炎, リウマチ肺など ニューモシスチス肺炎 (PCP) PCP 以外の非定型肺炎 図 6 生物学的製剤投与中における発熱, 咳, 呼吸困難に対する診断フローチャート 文献 47 より引用 じめとした感染症の除外が必須であるため, 診断フローチャート ( 図 6) の手順に従って鑑別を進める 47). 9.4 Interferon Interferon(IFN) は多彩な抗ウイルス作用, 細胞増殖抑制作用, 免疫調節作用を有するサイトカインである. その産生細胞の違いなどから,α,β,γの 3 種類がある. このうち IFN- αおよび IFN- βが,1990 年代の初めから様々な疾患の治療に用いられてきた.IFN は強い免疫調節作用を持つサイトカインであるため治療に伴い様々な有害事象が生じるが, 肺においては間質性肺炎が問題であり, また少数ながらサルコイドーシスの報告がある. 最近の主力製品である Peg-IFN- α -2a 製剤と α -2b 製剤について, 間質性肺炎の発症率は, 市販後調査によればそれぞれ 0.29%,0.08% であり,α -2a 製剤においてやや注意が必要である.2008 年 8 月からはα -2a 製剤は間質性肺炎の既往のある患者は投与禁忌となった.C 型肝炎に対する治療として小柴胡湯の併用は間質性肺炎の発症と死亡の発症頻度を高めることから, 現在禁忌となっている. 9.5 免疫抑制薬 Cyclophosphamide(CPA) 免疫力低下による呼吸器感染症以外に, 間質性肺病変として,DAD, 器質化肺炎 (OP), 肺線維症など, その他, 非心原性肺水腫 (NCPE), 胸水貯留, 気管支収縮, アナフィラキシーの報告がある. Cyclosporin(CYA) DAD, 亜急性の間質性肺炎など, その他,NCPE, びまん性肺胞出血, 肺高血圧, の報告がある. Tacrolimus(FK506) 急性進行性間質性肺炎,OP,NCPE, 肺高血圧を起こす. Azathioprine(AZ) 亜急性に進行する間質性肺炎,OP, びまん性肺胞出血, 肺血管炎を起こす. その他に, 気管支収縮, 血管性浮腫, アナフィラキシーの報告がある. 9.6 漢方薬 漢方薬に起因する薬剤性肺障害は確実に存在するが, その頻度は不明である. 薬剤性肺障害に関する概念の普及, 胸部 CT 普及による薬剤性肺障害疑い症例数の増加 16

各種の薬剤による肺障害 と, 薬剤性肺障害の報告数は関係している可能性がある. さらに漢方薬は副作用 ( 有害事象 ) が生じにくいという既成概念が存在し, 肺障害が生じると症例報告をするために目立つことになっている可能性もある. 漢方薬特有の薬剤性肺障害発症機序は報告されていない. 小柴胡湯 1996 年に小柴胡湯が原因と考えられる間質性肺炎の死亡例が厚生省の緊急安全情報により報告され, 同報告を受けて全国調査による検討が行われた 48,49). 小柴胡湯に起因する薬剤性肺障害 100 例の検討では, 投与中止のみで軽快した例が 12 例, ステロイド経口投与が 29 例, ステロイドパルス療法が 54 例であった.90 例はすみやかに治癒しているが,10 例は死亡している. 死亡例の特徴は, 症状出現から薬剤中止までの期間が長く ( 生存 : 5.8 日, 死亡 :15.9 日 ), 基礎疾患として呼吸器疾患の合併が多かった ( 生存 :2.2%, 死亡 :30%). 小柴胡湯による薬剤性肺障害では肝疾患も考慮しておく必要がある.IIPs 症例では C 型肝炎ウイルス (hapatitis C virus:hcv) 抗体の陽性率が高い可能性があり,HCV 感染そのものが間質性肺炎の発症 増悪に関与している可能性がある 50).C 型慢性肝炎症例では, 軽微でも間質性肺炎の兆候がある場合には, 小柴胡湯も含めて薬剤投与を慎重に行う必要がある. 9.7 抗菌薬 あらゆる抗菌薬が薬剤性肺障害を発症する可能性があ るが, 中でもテトラサイクリン系,β - ラクタム系, ニューキノロン系での報告が多い. 抗菌薬による薬剤性肺障害の発症機序として,Ⅲ 型 Ⅳ 型アレルギーあるいは Ⅰ 型アレルギーが関与するアレルギー反応が推定されている. 9.8 抗循環器病薬 Amiodarone による薬剤性肺障害の発症率は研究方法や用量の相違のため報告によりばらつきが大きい. 約 700 例を対象とした二重盲検試験では,amiodarone(300 ~ 800 mg/ 日 ) による重篤な肺障害の頻度は 1.2% であった 51). 低用量 (200 mg/ 日以下 ) での発症は少ないとされてきたが, わが国では低用量でも 5 年間の累積頻度が 10.6% と報告されており 52), 日本人特有の体質的素因が示唆される. 表 14 に amiodarone による肺障害のリスク因子を示す. Amiodarone による肺障害の発症機序は,1. 肺胞上皮細胞や血管内皮細胞, 線維芽細胞などに対する細胞毒性,2.Th1 細胞と Th2 細胞のアンバランス,3. 肺胞マクロファージからの TNF- αや transforming growth factor β(tgf- β) の産生,4. アンジオテンシンⅡによる肺胞上皮細胞のアポトーシス, などが推定されている. これら複数の要因が関与するため,amiodarone 肺障害は多彩な臨床像を呈する. 乾性咳嗽や労作時の息切れで発症することが多く, 血清 KL-6 値の上昇や DLco の低下を認める. 特に,DLco は肺障害の指標として重 表 14 Amiodarone による肺障害のリスク因子 1. 性別男性 2. 年齢 40 歳以下は稀, 小児や青年層の報告は稀 3. 基礎病変および状態 1) 胸部 X 線画像上の何らかの異常の存在 2) 肺手術,COPD, 低肺機能肺機能の異常はリスク因子となる可能性があるが普遍的な所見ではない. 片側肺の摘出は手術後の amiodarone が必要な不整脈と手術後の低肺機能とがあわさって危険性は増す. 3) 吸入酸素濃度吸入酸素濃度の上昇は肺障害の発生のきっかけとなる可能性がある. 4) ヨード系造影剤ヨード系造影剤の投与が発生のきっかけとなった症例がある. 4. 用量 1) 低用量 (200 mg/ 日以下 ) の症例では危険性は少ない. 2) 発生率は低用量での 0.1% 程度から高用量 ( たとえば 1,200 mg/ 日 ) の 50% と様々である. 3) 平均的には,500 mg/ 日あるいはこれ以上で治療を受けている症例では 5 15% の症例に発生し,200 mg/ 日の投与を受けている症例は 0.1 0.5% の発生率である. 4) 低用量では発生率は低いが, 肺障害の程度には関係ないようである. 17

短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 要で, ベースライン値から 15% 以上低下した場合は, その存在を強く示唆する.Amiodarone による肺病変は, 様々な病型が存在する.BALF 中や肺生検組織中の泡沫状マクロファージの存在は診断の裏付けとなるが, 肺障 害の根拠とはならない. Amiodarone による肺障害の死亡率は, 病型にもよるが 9 ~ 50% と報告されており 53), 予後不良疾患としての認識が必要である. 文献 1)ICH Harmonised Tripartite Guideline. http://www.ich.org/ fileadmin/public_web_site/ich_products/guidelines/efficacy/ E2A/Step4/E2A_Guideline.pdf 2)Azuma A, Kudoh S. High Prevalence of Drug-induced Pneumonia in Japan. JMAJ 2007;50:405-11. 3) 厚生労働省. 医薬品 医療機器等安全性情報.http://www1. mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou.html 4)Inoue A, Saijo Y, Maemondo M, et al. Severe acute interstitial pneumonia and gefitinib. Lancet 2003;361:137-9. 5) 医薬品医療機器総合機構.http://www.info.pmda.go.jp/ 6)Kudoh S, Kato H, Nishiwaki Y, et al. Interstitial lung disease in Japanese patients with lung cancer:a cohort and nested case-control study. Am J Respir Crit Care Med 2008;177: 1348-57. 7)Azuma A, Hagiwara K, Kudoh S. Basis of acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis in Japanese patients. Am J Respir Crit Care Med 2008;177:1397-8. 8)Fiorentino D, Chung L, Zwerner J, et al. The mucocutaneous and systemic phenotype of dermatomyositis patients with antibodies to MDA5 (CADM-140):a retrospective study. J Am Acad Dermatol 2011;65:25-34. 9)Kameda H, Takeuchi T. Recent advances in the treatment of interstitial lung disease in patients with polymyositis/dermatomyositis. Endocr Metab Immune Disord Drug Targets 2006;6:409-15. 10) アストラゼネカ株式会社. ゲフィチニブ ( イレッサ 錠 250) の急性肺障害 間質性肺炎に関する専門家会議最終報告,2003 11) 向井陽美, 他. 第 72 回日本血液学会,2010. 12)U.S.Food and Drug Administration. Prescribing Information for Tarceva, 2009. 13)Camus P, Fanton A, Bonniaud P, et al. Interstitial lung disease induced by drugs and radiation. Respiration 2004;71:301-26. 14)Kohno N, Awaya Y, Oyama T, et al. KL-6, a mucin-like glycoprotein, in bronchoalveolar lavage fluid from patients with interstitial lung disease. Am Rev Respir Dis 1993;148:637-42. 15)Ohnishi H, Yokoyama A, Yasuhara Y, et al. Circulating KL-6 levels in patients with drug induced pneumonitis. Thorax 2003;58:872-5. 16) 近藤有好. 薬剤による肺障害. 結核 1999;74:33-41. 17)Cleverley JR, Screaton NJ, Hiorns MP. Drug-induced lung disease:high-resolution CT and histological findings. Clin Radiol 2002;57:292-9. 18) 大中原研一, 東元一晃, 有村公良, 他. 薬剤性肺疾患の臨床的 特徴 アマメシバ 関連性閉塞性細気管支炎を含めて. 呼吸 2004;23:540-5. 19)Costabel U, Uzaslan E, Guzman J:Bronchoalveolar lavage in drug-induced lung disease. Clin Chest Med 2004;25:25-35 20)Lee-Chiong T Jr, Matthay RA. Drug-induced pulmonary edema and acute respiratory distress syndrome. Clin Chest Med 2004;25:95-104. 21)Bernard GR, Artigas A, Brigham KL, et al. The American- European Consensus Conference on ARDS. Definitions, mechanisms, relevant outcomes, and clinical trial coordination. Am J Respir Crit Care Med 1994;149:818-24. 22)Chihara R, Nakamoto H, Arima H, et al. Systemic capillary leak syndrome. Intern Med 2002;41:953-6. 23) 立川洋一, 御厨美昭. 薬物性呼吸器障害肺水腫. 医薬ジャーナル 1995;31:2225-9. 24)Briasoulis E, Pavlidis N. Noncardiogenic pulmonary edema: an unusual and serious complication of anticancer therapy. Oncologist 2001;6:153-61. 25) 石川博一, 大塚盛男, 関沢清久.4. 薬剤誘起性血管病変 4. 薬剤惹起性肺水腫. 吉澤靖之編. 薬剤による呼吸器障害. 克誠堂出版, 東京,2005;44-50. 26)Allen JN, Pacht ER, Gadek JE, et al. Acute eosinophilic pneumonia as a reversible cause of noninfectious respiratory failure. N Engl J Med 1989;321:569-74. 27)Allen JN. Drug-induced eosinophilic lung disease. Clin Chest Med 2004;25:77-88. 28)Camus P, Fanton A, Bonniaud P, et al. Interstitial lung disease induced by drugs and radiation. Respiration 2004;71:301-26. 29)Solomon J, Schwarz M. Drug-, toxin-, and radiation therapyinduced eosinophilic pneumonia. Semin Respir Crit Care Med 2006;27:192-7. 30)Simonneau G, Robbins IM, Beghetti M, et al. Updated clinical classification of pulmonary hypertension. J Am Coll Cardiol 2009;54:S43-54. 31)Katz U, Zandman-Goddard G. Drug-induced lupus:an update. Autoimmun Rev 2010;10:46-50. 32)Foucher P, Camus P. http://www.pneumotox.com:pneumotox Website:Last update October 2011. 33)Camus P, Fanton A, Bonniaud P,et al. Interstitial lung disease induced by drugs and radiation. Respiration 2004;71:301-26. 34)Limper AH. Chemotherapy-induced lung disease. Clin Chest Med 2004;25:53-64. 35) 厚生労働省医薬食品局. 医薬品 医療用具等安全性情報. 18

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短縮版 : 薬剤性肺障害の診断 治療の手引き 2013 年 6 月 10 日第 1 版第 1 刷発行 編集日本呼吸器学会薬剤性肺障害の診断 治療の手引き作成委員会発行者日本呼吸器学会 ( 代表 ) 西村正治発行所一般社団法人日本呼吸器学会 113-0033 東京都文京区本郷 3 丁目 28 番 8 号日内会館 7 階 TEL:03-5805-3553( 代 ) FAX:03-5805-3554 info@jrs.or.jp URL:http://www.jrs.or.jp/ 事務局信州大学医学部内科学第一講座花岡正幸 390-8621 松本市旭 3-1-1 TEL:0263-37-2631 FAX:0263-36-3722 制作元株式会社メディカルレビュー社デジタル編集企画部 日本呼吸器学会 /2013/ Printed in Japan