表 1 関西ターミナル空域 の入域地点 管制部 セクタ 移管地点 移管高度 東京 近畿西 SAEKI 160 紀伊 EVERT 160 三河 SINGU 180 福岡 四国北 RANDY 150 南九州東 KARIN 160 ( 解析対象日の条件, 現在は一部変更 ) イトレベル,1 は高度 100

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Transcription:

. 航空交通管理領域 福島幸子, 平林博子, 岡恵, 上島一彦 1. 航空機が降下 着陸するときは, エンジンスラストをアイドル ( 推力最小 ) の状態で連続的に降下することが, 燃料節減の面で望ましい また, より高高度を飛行する方が騒音も低減できる しかし, 他機との安全間隔を確保するために, 航空管制ではレーダー誘導や水平飛行を指示する場合もある 消費燃料や騒音を低減するために, 世界的に多くの空港で継続降下運航 (CDO; Continuous Descent Operation) [1] が検討 導入されてきている 我が国でも, 国土交通省の 将来の航空交通システムに関する長期ビジョン (CARATS) では, CDO を 3 段階にわけて導入する予定である [2] まず, 関西国際空港 ( 以下, 関西空港 ) では CDO の試行運用を経て, 平成 25 年 3 月 7 日から CDO が正式運用となった さらに, 那覇空港では平成 25 年 9 月 19 日から CDO が試行運用されている ( 現在は両空港とも第 1 段階 ) [3] 関西空港では交通量の少ない夜間に 3 つの地点からターミナル空域に入域する到着機に対して, 希望する到着機には CDO を運用しており, 日に 0~6 機程度, 平均すると約 1.5 機 / 日の実施がある CDO は運航効率が良く, 燃料の削減が可能であるが, 経路の通過高度や速度について予測が難しく, 管制上は不確実性の高い運航である 安全性の理由から, 運用時間帯でも承認されない場合がある また, 承認後に中止する場合 (Partial CDO という ) もあるが, 中止するまで CDO で降下できる便益は少なくない 実際, サンフランシスコ空港では,CDO の一種である TA(Tailored Arrival) が運用されており, Partial TA(TA を途中で中止 ) でも Full TA( 最後まで TA 可能 ) の半分程度の便益があることが報告されている [4] CDO の運用拡大は燃料費の削減だけでなく, CO2 の排出削減にも繋がるので, 地域的な取り 組みも行われている [5,6] また, 低高度での飛行が減少するため, 騒音が軽減されることも大きな便益である [7] 将来,CDO の運用時間および対象経路を拡大するために, 地点 KARIN からの関西空港到着機に着目し,CDO の実施可能性を推定した これは飛行情報統計データを用いた, エンルート空域に限定した解析であり,2013 年 1 年分のデータを解析した ターミナル空域内での CDO の中止については管制間隔の設定が困難となる同空港からの出発機の出発時刻の予測が難しいことから,TOD の段階で既に出発済みである通過機との関係に限定して解析を行った CDO の実施, 非承認, 中止の原因について CDO 実績データ及びレーダデータの解析も行ってきたが, 飛行計画情報レベルで解析できれば, 実時間での CDO 実施の可否の予測に役立つ さらに, 現在は CDO を運用していない地点 SAEKI からの到着機に着目し,CDO が難しい時間帯を推定する 本稿ではまず関西空港での経路について述べ, エンルート部分の解析方法を述べる 解析結果を報告し, 将来の CDO 拡大の可能性を推定する 2. 2.1 エンルート空域は, 航空路監視レーダの届く範囲で, 空港周辺のターミナル空域や自衛隊などの空域を除いた空域であり, いくつかの空域に分割して管制を行っている そこでは安全間隔として水平方向 5NM 以上, 垂直方向 1,000ft 以上の間隔確保が必要である また, ターミナル空域への管制移管には一般的に移管地点ごとの移管条件が定められている 関西ターミナル空域には 5 つの地点から到着機が入域する 各地点での移管地点と高度を表 1 に示す KARIN では高度 160(; フラ - 67 -

表 1 関西ターミナル空域 の入域地点 管制部 セクタ 移管地点 移管高度 東京 近畿西 SAEKI 160 紀伊 EVERT 160 三河 SINGU 180 福岡 四国北 RANDY 150 南九州東 KARIN 160 ( 解析対象日の条件, 現在は一部変更 ) イトレベル,1 は高度 100feet) で,10NM 以上の間隔を確保して移管する この中で,3 つの地点 (EVERT,RANDY, KARIN) からの到着機について CDO が運用されている CDO を実施する場合, 移管地点での通過高度が一定とはならない 滑走路までの距離は使用滑走路及び進入方向によって異なる また, 降下開始点 (TOD; Top Of Descent) の位置は滑走路までの距離, 機体重量や風向 風速により異なる CDO を実施したい航空機は降下開始点 (TOD; Top Of Descent) の 10 分以上前に管制機関に CDO 実施を要求する その時,TOD の位置や決められた地点の通過予定時刻などを通知する そして, 管制官は交通状況に応じ承認あるいは却下する 関西空港の場合はいずれの地点からも RW/06 の場合の方が RW/24 の場合よりも到着パスが短い CDO が実施できた場合の便益は RW/24 の方が大きい CDO の実施の条件として, 地点の高度や速 表 2 関西空港 CDO の条件 (KARIN より ) 条件運用時間 0JST(1400UTC) から 0600JST(2100UTC) 滑走路 06L( 北風時 ):RWY06L CDO Number 1 IAF と高度条件 BERRY で 4,000ft 以上 STAR BECKY BRAVO ARRIVAL 滑走路 06R( 北風時 ):RWY06R CDO Number 1 IAF と高度条件 ALLAN で 4,000ft 以上 STAR BECKY ALFA ARRIVAL 滑走路 24( 南風時 ):RWY24 CDO Number 1 IAF と高度条件 MAYAH で 4,000ft 以上 STAR BECKY DELTA ARRIVAL 度に条件を付ける場合も多い 関西空港について本稿の解析で対象としている KARIN からの到着について, 表 2 に代表的な条件を示す [3] 高度については後述する地点毎の条件もあるが, 速度に関する条件はない なお, より詳細な高度条件として, RWY06R CDO Number 1 の条件を後述する図 1 に示す 2.2 と CDO 下 関西空港で, 初期進入地点 (IAF; Initial Approach Fix) 以降は垂直方向もパスを保つこ ととし, それ以前の経路の高度では TOD から 連続的に降下すること仮定する KARIN は関西ターミナル空域の南西方向に 位置し, 南九州 沖縄, 東南アジア方面からの到着機が入域する KARIN から IAF までの経路は RW/06 の方が RW/24 よりも短くなっている そのため,KARIN での高度は RW/06 の方が RW/24 よりも低くなる 滑走路方向による差の傾向は地点と経路長に依存する SAEKI は関西ターミナル空域の北西方向に位置する 東側である SQUID からは北海道, 北陸, 方面からの到着機は東側である CHILY を通過し, 山陰, 韓国方面からの到着機は西側である JEC を通過し, 東西交通流は SAEKI で合流し南下するため, 東方向は SQUID という地点から, 西方向は JEC という地点からの 2 つに分けて解析した 表 1 の RWY06R CDO Number 1 の高度 プロファイルの例を図 1 に示す 赤線は CDO を行った場合, 黒線及び青点線は, 通常の降下を行った場合の例である 実際, 水平飛行時のパスはレーダ誘導により延伸することがある 図中, 四角で囲った M750 などの名称は, M750 The scale is not real. MADOG 図 1 RWY06R CDO Number 1 の高度プロフ ァイル 南九州東セクター四国北セクター A1 STORK Y81 V37 KARIN 160 関西ターミナル BECKY EVERT ALLAN 9000ft 6000ft 4000ft - 68 -

到着経路と交差する航空路名で, 今回の解析の対象とした航空路である 例えば, 一番左の M750 を の航空機が飛行していても, の到着機との間隔は確保されており到着機の TOD は未だ先であるため, 到着機は CDO が承認される しかし, 一番右の V37 を の航空機が通過予定でありかつ, 降下中の到着機が 250~ の間で V37 と交差する可能性があった場合, 到着機は CDO は承認されず, までの降下もしくは V37 通過以前に 250 まで降下することとなる 到着機の降下率や速度, 通過機の速度の誤差を考慮しても CDO は可能であるかといった解析を 4 本の航空路に対して行い,CDO が可能である時間帯の導出を試みた 航空機の降下率により,TOD の位置は異なる また,RW の方向によっても KARIN での通過高度は異なる なお, 機種の差のみでなく, 風の強さによっても降下率は変化することから, 今回は一般的な降下率が 3 度であることと, 西風の影響を受けてもう少し低い降下率であることを考慮して,2.1 度から 2.8 度までの降下率と仮定して,RW/06 の可能性を解析した 同様に,JEC 経由 SAEKI 通過機については, 4 本の航空路,SQUID 経由 SAEKI 通過機については,11 本の航空路の通過機との関係を RW/06 の場合について解析した 3. 3.1 到着経路と交差する経路の近い地点の通過時刻及び高度を飛行情報管理システムの統計データの通過時刻を参考に, 図 2, 図 3 のような解析を行った 統計データはある程度の誤差を含むが, 実際の運航時も地点の到着予測時間には誤差を含むことが想定されるため, このデータを使用し解析した 解析対象日は 2013 年 1 月 1 日から 12 月 31 日の 1 年間である 図 2 は, 航空路 を飛行する通過機が到着機と競合するかどうかを予測するための解析である 到着経路と交わる航空路の地点の通過時刻 T1,T2 から, 到着経路と交わる地点の通過時刻 T を線形近似で求め, 誤差を付加する (T±ΔT) そして, 到着機が P1 を通過して 基準 FIX P1 経路長 d1 到着機の到達時間 t1~t2(v1~v2) 通過時刻 T2 ターミナルへの移管 FIX A 経路長 D 通過機の通過予定時刻 [T-ΔT,T+ΔT] の間 通過時刻 T1 図 2 交差通過機との位置関係 から, 交点に到達するまでの飛行時間を求め, その分をスライドする 機種によって速度は異なるので到着機の速度を対地速度で v1~v2 の間と仮定し, 飛行時間 t1~t2(t1>t2 とする ) を得る (T-ΔT-t1,T+ΔT-t2 ) の間に P1 を通過する到着機は, の通過機と時間的に接近する可能性がある P1 から航空路との交点までの距離が長いほど誤差を多く見込むこととなる 図 3 の上図では 2 本の航空路との降下の可能 性を示す 上図は空港から逆算した経路長と降下角から交差する航空路 ( 橙色の面 ) との交差時刻及び交差高度 ( 図中, 白 ) を求めている 赤線は を飛行する航空機の地点の通過時刻から, 到着経路と交わる時刻をパラメータとして安全間隔が保てない時間帯を示す 緑線は の先にある との同様の解析である その次に航空路 ( 白面 ) との交差時刻及び交差高度 ( 図中, 緑 ) を求めている 緑線は を飛行する航空機の地点の通過時刻から, 到着経路と交わる時刻をパラメータとして安全間隔が保てない時間帯である 同様に 以降にも交差する航空路との交差を解析する 3.2 図 3 の下のタイル状の図は各時刻, 各高度か ら, 交差が想定される全ての航空路 ~ を通過できるかどうかを判定する 上 図の各 Route の通過高度の部分は赤, 前後 1,000ft の部分は黄色としている ~ までの通過情報を元に, 確 実に管制間隔がとれるか, 想定できる降下率 φ 1~φ2 の範囲内で,IAF まで到達できるか計算 - 69 -

h1 h2 電子航法研究所研究発表会 ( 第 14 回平成 26 年 6 月 ) 基準 FIX Altitude() φ1~φ2 Time 図 3 通過可能時刻の 例 する 到達できれば CDO の可能性がある とし, それ以外は CDO 不可 と 2 種類に分 類する 例えば, から を通過する場合, TOD の手前であることを想定した可能な高度 が ~ であったとする しかし, 図 中 は黄色であり, 水平飛行はできない そこで,~ が可能となる 次に を交差する場合には しか空きが ない ( 通過時に降下モードとなってい るので水平飛行は除く ) このようにして まで空き高度が繋がり,IAF まで TOD 以降に水平飛行を経ることなく降下していけるかの判断を行う これらの通過可能性を示すタイル図を作成した 4. Potential Conflict () v1~v2 8:40 8:50 9:00 9:10 基準 Fix Cross with Cross with 4.1 KARIN Potential Conflict () 9:00 9:10 9:20 9:30 9:10 9:20 9:30 9:40 Runway ある日の通過予測時刻について, 図 4, 図 5 に示す 各線分は誤差を含めた各航空路の通過 予測時刻である,,,, と基準 FIX から遠ざかるため, 誤差が拡大する そのため Route 番号が大きくなるほど予測時刻を表す線分は長くなる 実際の到着機が TOD よりも手前の地点として, 空港から十分に離れた ( この例では 180NM 程度 ) 基準 FIX を通過した時刻には を表示した 通過時刻よりも, 基準 FIX から降下した場合の予測にスライドしている そして, その後順次交差する ~ に到達する頃に通過機の飛行が予想される時間帯に線を引いた 斜線は交差のどこかで通過機が高度変更を予定していることを示す よりも低高度に通過機の線がなければ, どこから降下を初めてもエンルートでは通過機との交差がないことを示す よりも低高度であっても TOD との位置関係により, 通過機の交差がないこともある 実際に関西空港への CDO の要求及びそれに対する承認 / 非承認のデータがある 図 5 は図 4 とは異なる日のグラフの抜粋であり,KARIN を経由して関西空港に着陸した航空機で,CDO を要求し承認されたものには, 非承認もしくはエンルート空域で中止されたものには をつけた ~ は離れているが,CDO を実施しようとする航空機との位置の差を補正しており, から下の通過軸との関係を見ればよい 図中 1の ( 付 ) は CDO を要求し, 承認されている 実際 1の下には通過機を示す線はない また,2の は CDO の要求は行っていないが, 要求をすれば承認された可能性が高い 3の ( 付 ) は, 下に との交差を示 190 150 18:00 0:00 3:00 21:00 6:00 0:00 9:00 3:00 6:00 12:00 9:00 15:00 12:00 18:00 15:00 21:00 24:00 18:00 図 4 通過可能時刻の 例 (RW/06,KARIN) - 70 -

2 3 1 19:30 4:30 20:00 5:00 20:30 5:30 21:00 6:00 21:30 6:30 22:00 7:00 7:30 Approve Negative 図 5 通過可能時刻の (RW/06,KARIN) す線があるため承認されなかったと推測できる と の理由が, 図 5 の解析から推測できた 4.2 SAEKI JEC 方面 ) ある日の通過予測時刻について図 6 に示す 4 本の航空とは通過高度が高めだが, は移管高度に近い高度での通過が多い また, CDO の運用時間帯以外の到着機は少ない 4.3 SAEKI SQUID 方面 ) ある日の通過予測時刻について図 7 に示す 10 本の航空路の通過機は図 6よりも広範囲に分布している また, 図 7 同様に Route9 は移管高度に近い高度での通過が多い 4.4 KARIN の通過可能性タイルについて 1 年分を図 8 に示す 色付部分は各高度 (010 毎 ), 各時刻 (10 分毎,JST) に CDO が不可能と推定された日数を示す 赤は 250 日以上, 薄橙は 200 日以上, 黒は 150 日以上, 灰色は 100 日以上である KARIN については CDO が不可能な日数が 250 日以上の高度 時間帯は無かった なお, 滑走路の方向によってタイルの色は異なり, 経路調が長い RW/24 の方が高高度帯の不可能なタイルが多かった [8] 5. SQUID 経由 SAEKI の通過可能性の推定タイルについて 1 年分を図 9 に示す 250 日以上の日はなかった 図 7 より,SQUID からの到着機と交差する通過機が多く飛行しており, ほとんど CDO の可能性がないように見える タイル図も空きが少なく, 空いている時間帯は到着機自体がほとんどいない しかし, 関西空港の CDO 運用時間帯については空きがある また,( 本稿では図示していないが )JEC 方面からの SAEKI 経由到着機のタイルは 200 日以上の時間帯がなかった タイミングを探す必 190 150 15:00 0:00 3:00 18:00 6:00 21:00 0:00 9:00 3:00 12:00 6:00 15:00 9:00 18:00 12:00 21:00 15:00 24:00 図 6 通過可能時刻の (RW/06,JEC) 190 150 15:00 0:00 3:00 18:00 6:00 21:00 9:00 0:00 3:00 12:00 6:00 15:00 9:00 18:00 12:00 21:00 24:00 15:00 Route5 Route6 Route7 Route8 Route9 0 1 図 7 通過可能時刻の (RW/06,SQUID) - 71 -

300 250 RW/06 >200days >150days >100days 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 300 250 図 8 CDO 実施 可能時 高度の推定 (2013,RW/06,KARIN) 300 250 RW/06 >250days >200days >150days >100days 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 300 250 図 9 CDO 実施 可能時 高度の推定 (2013,RW/06,SQUID) 要があるが CDO 実施の可能性がある 6. 関西空港の CDO 運用時間拡大の可能性を推定するために, 地点 KARIN からの到着機に着目し,CDO 実施可能時間と高度の推定方法を示し, 推定を行った 実際の関西到着機の承認 / 非承認のデータとの比較でエンルート空域である程度の一致が見られた また, 現在は CDO を運用していない地点 SAEKI からの到着機にも解析を行った 昼間の時間帯はエンルートでの交通量が多いが, 関西空港の CDO 運用時間帯はエンルートの交通量も少なく,CDO 実施の可能性を示した 一方,CDO のキャンセルはターミナル空域に入ってからもありえる 特に大阪空港や関西空港の出発 到着経路と交差する場合のキャンセル頻度が高い 今回の解析はエンルート空域に限定している CDO 拡大のためには近隣空港や関西ターミナル空域内からの出発機との関係を今後解析する必要があり, 今後の課題としたい 謝辞本研究を進めるに当たり, レーダーデータや運用に関するデータをご提供下さった, 東京航空交通管制部, 福岡航空交通管制部及び関西国際空港の管制官各位, 飛行計画データをご提供下さった, 航空交通管理センターの管理管制官各位に深く感謝いたします [1] ICAO, Continuous Descent Operations (CDO) Manual., ICAO Doc 9931, 2010. [2] 国土交通省, 将来の航空交通システムに関する推進協議会 : CARATS プログレスレポート 2011-2013.,(https://www.mlit.go.jp/common/ 000993373.pdf) [3] 国土交通省, AIP Japan [4] FAA, Tailored Arrivals, IPACG/32, IP/06, May 2010. [5] ASPIRE, http://www.aspire-green.com [6] EC, IRE,http://ec.europa.eu/transport/air/ environment/aire_en.htm [7] 吽野, 騒音軽減のための連続降下方式について, 航空環境研究,No.15 pp.8-11, 2011. [8] 福島, 平林, 岡, エンルート空域における継続降下運航の可能性についての一検討, 航空宇宙学会第 45 期年会講演会,2014 年 4 月. - 72 -