e. 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 B. 感染性下痢 : 胃腸炎 1. ウイルス性 ( 最多 ) a. ノロウイルス b. ロタウイルス 2. 細菌性 ( 一般に食品由来 ) a. コレラ b. Escherichia coli 大腸菌 c. Shigella 赤痢菌属 d. Salmonell

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b. 潰瘍性大腸炎 c. 膠原病性腸炎 9. 腫瘍性 (neoplastic): a. 大腸癌 b. VIP 腫瘍 c. カルチノイド腫瘍 これらの鑑別疾患に重みをつける必要があると思うが ここで重要なのが 問診や身体所見だ なかなか疾患が想起できない場合や もれが無いかを確認するために ROS や

!YAK Sample 教材! 問題 2 セレウス菌 27 セレウス菌は 短い潜伏期間で嘔吐を主徴とするタイプと より長い潜伏期間で下痢を主徴とするタイプの2 つの型があり それらの発症にはいずれも毒素が関与している (94 70) 黄色ブドウ球菌 28 Staphylococcus aureus

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胃腸炎による入院患者の管理胃腸炎患者の症状が重くて 入院することがあります 入院患者の管理をしなければいけないことが 病院小児科の特異的なところだと思いますので その点に重点を置いてこれからお話しします 胃腸炎の患者が入院しなければいけない時には多くの患者が脱水になっているため 適切な補液が最も重要

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平成 30 年東京都食中毒発生状況 ( 速報値 ) 平成 30 年 8 月 31 日現在 8 月末までの都内の食中毒の発生状況が 東京都から公表されました 昨年と比較すると 件数では 30% 増 患者数では 46% 減となっています 最近 10 年間の平均と比較すると 患者数はほぼ同じですが発生件数

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

性食中毒である きのこ類による食中毒や貝毒による食虫毒は 毒素型の自然毒食中毒である ウエルシュ菌や ベロ毒素陽性の大腸菌が原因の場合には 感染毒素中間型細菌性食中毒に分類 されるべきものである 学校医が知っておくべき食中毒に関連する法律は 主に食品衛生法と感染症法 それに学校保健安全法である 食品

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ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

年次別 主な病原体別の食中毒事件数の推移 * 腸管出血性大腸菌を含む

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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

菌名原因食品及び感染したときの症状特徴 黄色ブドウ球菌 原因食品 : 弁当 おにぎりなど潜伏期間 :1~5 時間症状 : 吐き気 おう吐 下痢 腹痛などの症状が現れます ヒトや動物の化膿した傷口やおできなどに存在し 食品に付着し増殖するときに毒素を作ります 毒素は熱や乾燥に強い性質があります ウエル

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1 月号は以下の情報を掲載しています 1. 茨城県感染症発生動向調査事業に基づく試験検査 検出状況 1) 全数把握疾患 2) 病原体定点依頼検査その他の検査 3) 集団 ( 施設や学校等 ) 事例 月別検出件数 1) 三類 四類 五類 ( 全数把握 ) 2) 五類 ( 定点 ) その他の検査 3)

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146 (1) コレラ 三類感染症 Cholera 感染経路 経口感染菌が含まれた便で汚染された水 食物 ( 魚介類など ) その他の媒介物の経口摂取 潜伏期間 : 12 時間から 5 日 ( 平均 1.4 日 ) 病原体 ( 細菌 ) Vibriocholerae( コレラ菌 ) O1 型生物型

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どく拡張する ( 中毒性巨大結腸症 ) こともあります. このような場合には緊急に手術が必要です. また 大腸癌になった場合にも手術が必要になります. 内科的治療が効きにくい難治例や重症例の場合にも 内科的治療のバランスの点から手術を選択することがあります. 手術の方法は 大腸全摘ですが 肛門を残す

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

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シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

1-11. 三種混合ワクチンに含まれないのはどれか 1 破傷風 2 百日咳 3 腸チフス 4 ジフテリア 疾患と症状との組合せで誤っているのはどれか 1 猩紅熱 コプリック斑 2 破傷風 牙関緊急 3 細菌性赤痢 膿粘血便 4 ジフテリア 咽頭 喉頭偽膜 予防接種が有効なはど

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2014 年 10 月 29 日放送 MRSA 腸炎はあるのか? 神戸大学病院感染症内科教授岩田健太郎 MRSA 腸炎の歴史きょうはこのMRSA 腸炎は本当にあるのかという 多少刺激的なタイトルでお話ししようと思います MRSA 腸炎は抗菌薬関連下痢症の一つで 抗菌薬治療をおこなっている患者さんが下

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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2 食中毒ってなんですか? 飲食物を摂取することによって起きる 急性の胃腸障害を主症状とする健康障害のこと 大部分の食中毒事例は ある種の微生物により発生 ただし 原因 ( 病因物質 ) によっては 主症状が胃腸障害以外のものもある 昔は 食あたり とも呼ばれていた

通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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Ⅰ 滋賀県感染症発生動向調査事業の概要

10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

患者 ID: 氏名 : ピロリ菌外来説明文書 1. ピロリ菌はいつ誰によって発見されたのでしょうかピロリ菌はオーストラリアのウォレンとマーシャルによって 1983 年ヒトの胃の中から発見されました その後 ピロリ菌がヒトの胃に与える様々な影響が解明

目次 C O N T E N T S 1 下痢等の胃腸障害 下痢について 3 下痢の副作用発現状況 3 最高用量別の下痢の副作用発現状況 3 下痢の程度 4 下痢の発現時期 4 下痢の回復時期 5 下痢による投与中止時期 下痢以外の胃腸障害について 6 下痢以外の胃腸障害の副

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

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2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

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D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

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2009年8月17日

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はじめに 高齢者施設等で抵抗力が低い利用者をケアするには 介護スタッフの感染予防が必要です 施設は重度の利用者が中心になり さまざまな基礎疾患を抱えているため 感染しやすい状態の方が急増しています 介護スタッフが感染源にならないための予防策と 介護スタッフ自身の安全なケアの方法が重要となってきます


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1-11. 三種混合ワクチンに含まれないのはどれか 1. 破傷風 2. 百日咳 3. 腸チフス 4. ジフテリア 第 17 回按マ指 疾患と症状との組合せで誤っているのはどれか 1. 猩紅熱 - コプリック斑 2. 破傷風 - 牙関緊急 3. 細菌性赤痢 - 膿粘血便 4. ジフテリア

したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

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2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに


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別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 本資料の作成日 :2016 年 10 月 12 日商品名 : ビフィズス菌 BB( ビービー ) 12 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) による食経験の評価ビフィズス菌 BB-12

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

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急性下痢の鑑別疾患 (110221) 急性下痢のもっとも多い原因は胃腸炎 ほとんどの場合 パターン認識で治療が開始されると思うが いつもの症状と異なると感じた場合には鑑別疾患を挙げてみることが必要と思う ( 大多数の急性下痢は自然軽快するので 血便や 黒色便 体重減少 免疫不全状態 海外旅行歴などが無い場合は検査しないのが普通 ) まず 鑑別疾患を挙げてみるが 参考文献 6 では非感染性下痢 感染性下痢 : 胃腸炎 感染性 下痢 : 炎症性腸炎と大きく分類している 非感染性の下痢は 全身症状の欠如によって認識される 大量 ( かつしばしば水様性 ) の便 全身症状 吐き気やおう吐 そしてしばしば腹部の鋭い痛みを呈する感染性下痢は胃腸炎として分類できる 炎症性下痢は感染性症状としばしば赤痢 (dysentery: 発熱 しぶり腹 血液 / 粘液を伴う便 ) を起こす感染症である 多くの病原体が胃腸炎 炎症性下痢の両者を生じうる 6) A. 非感染性下痢 1. 薬剤や他の消化されない物質 ( いくつかは浸透圧効果による ) a. ソルビトール ( ガム ミント 錠剤配合充填剤 ) b. マンニトール c. フルクトース ( 果実 清涼飲料 ) d. 繊維 ( ブラン 果実 野菜 ) e. ラクツロース 2. マグネシウム含有薬物 a. 栄養サプリメント b. 制酸薬 c. 緩下薬 3. 吸収不良 a. 乳糖不耐症 b. 膵炎 4. 非浸透圧性機序により下痢を生じる薬物 a. メトホルミン b. 抗菌薬 c. コルヒチン d. ジゴキシン

e. 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 B. 感染性下痢 : 胃腸炎 1. ウイルス性 ( 最多 ) a. ノロウイルス b. ロタウイルス 2. 細菌性 ( 一般に食品由来 ) a. コレラ b. Escherichia coli 大腸菌 c. Shigella 赤痢菌属 d. Salmonella サルモネラ属 e. Campylobacter キャンピロバクター属 f. Yersinia enterocolitica 3. 毒素によるもの a. Stapyulococcus aureus 黄色ブドウ球菌 b. Clostridium perfringens ウェルシュ菌 c. Bacillus cereus セレウス菌 C. 感染性下痢 : 炎症性腸炎 1. 細菌性 a. 赤痢菌褥 b. E.coli c. キャンピロバクター属 d. サルモネラ属 e. Y.enterocolitica 2. 抗菌薬関連性 a. Clostridium difficile b. C.difficile 非関連性 臨床における実践的な下痢の評価としては 急性下痢症と慢性下痢症に分類するのが実用的 1) 急性下痢症のおもな原因は感染性腸炎であり サルモネラ菌 赤痢菌 キャンピロバクター クロストリジウム 病原性大腸菌 黄色ブドウ球菌などの細菌性腸炎 ノロウイルス ロタウイルス アストロウイルス アデノウイルスなどのウイルス性胃腸炎である 1) ノロウイルスとその近縁種のウイルスが 成人の非細菌性胃腸炎のおよそ 90% を占める 6) 感染性腸炎を疑ったら 発症前の食事内容は鑑別に重要 例 : 海産物 ビブリオ 肉製品

乳製品 サルモネラ ポテトサラダ おにぎり ブドウ球菌 ( 食べたら 2~3 時間で発症する ) 3) 細菌性腸炎では発熱をともない重症な下痢になりやすい 1) 臨床症状から小腸型 大腸型に大まかに 2 分し 原因微生物の推測を行う 2) ( 参考文献 2 より引用 ) 血性下痢の場合は 0157:H7 腸管出血性大腸菌が原因菌であることが多いが サルモネラ菌 赤痢菌 キャンピロバクターによる大腸炎も血性下痢となることがある 1) ウイルス性腸炎の下痢は水様便が多く 比較的軽症で自然に消退する場合が多い 1) 疑わしい食事の 6 時間以内に発症した場合はブドウ球菌毒素による食中毒 ( 吐気 嘔吐をともなう ) 8~16 時間ではウェルシュ菌 (Clostridium Perfringens) 感染 16 時間以上の場合はウイルス性腸炎や病原性大腸菌など他の細菌性腸炎などが疑われる 1) 食事から 24 時間以上たって発症する場合 ウイルス性あるいは細菌性腸炎であることが多いです 5) 急性のなかでも 細菌毒素に汚染された食物の摂取により数時間で発症する超急性型の下痢症がある これは セレウス菌や黄色ブドウ球菌などが産生した毒素に由来し 悪心嘔吐などの上部消化管症状が強いが数日で自然軽快する 2) ( 毒素による胃腸炎は ) 通常急性で嘔吐や鋭い腹痛を伴う 嘔吐が主要な症状であり 下痢は軽度かつ水溶性で発熱は軽微である 6) 食後数時間の消化器症状での他の鑑別に アニサキス症があります アニサキスは腹痛が主体ですが ときに下痢も伴います 5) 抗生物質の最近の服用歴がある場合はクロストリジウム ディフィシレ (Clostridium difficile) 感染が疑われる 服用歴に刺激性下剤の常用 抗癌剤が含まれる場合は薬剤の副作用が疑われる 1) 重症例や数日間の対症療法でも改善がみられない場合は血液 生化学検査 便培養を行う 急性下痢症の患者の多くは大腸内視鏡検査を必要としないが 炎症性腸疾患や偽膜性大腸炎が疑われる場合 免疫抑制状態の患者では早めに大腸内視鏡検査を行う 1)

細菌性腸炎を疑った場合 抗菌薬開始前の便培養検査は重要である 便に血液が混入した例や高熱をきたした例 重症の下痢 (1 日 10 回以上または 1 時間 1 回以上 ) 渡航歴を有する例 免疫不全患者 デイケア使用者 食品取扱者 医療従事者など集団感染が疑われる例には 外来診療の場でも積極的に便培養を提出するべきである 2) 入院症例の便培養は限定的施行が推奨されている 入院 72 時間以降に発症した下痢に対しての便培養検査は 行わないとする原則を 3-day rule と呼ぶ 2) ( 抗菌薬を ) もし使うとしたら 主な治療薬としては ST 合剤 ニューキノロンなどがあります 5) 急性下痢症の原因である感染性腸炎に対しては初期治療として脱水治療を行う ブドウ球菌やサルモネラ菌の食中毒の場合は脱水の治療だけで軽快することが多い それ以外の急性下痢症の場合はシプロフロキサシン 1 日 1000mg を 2 回に分服して 3~5 日間投与する 便培養で赤痢菌 キャンピロバクター エルシニア菌が同定されたらニューキノロン系抗菌薬を 5~7 日間投与する 1) カンピロバクターは加熱不十分の鶏肉を原因とすることが多く ギラン バレー症候群の原因としても知られている エンピリックに使用されることの多いニューキノロン系抗菌薬は耐性率が高く マクロライド系抗菌薬が第一選択である 2) ニューキノロンもカンピロバクターでは耐性が多く この場合はアジスロマイシンなどのマクロライドを用います 5) ( サルモネラの ) 抗菌剤はニューキノロン系が第一選択であり 重症例や易感染性症例には適応だが 単純な胃腸炎症状のみの場合は使用を控えるべきとの意見が優勢である 2) サルモネラによる敗血症が起きる懸念から ステロイド服用者 免疫抑制状態 人口骨頭などの異物がある患者 では治療すべきだと考えられている 5) 腸管出血性大腸菌 (O-157 など ) は 小児では溶血性尿毒症症候群 (HUS) 高齢でも重症化を認める例がある 抗菌剤使用により血便の遷延や HUS の合併率 死亡率の増悪をきたしたとの報告があり 使用の是非は現時点でも議論が続いている 2) ( 病原性大腸菌に対して ) 日本ではホスホマイシンを用いる方が良いという意見もある ( 文献著者は同意しておらず ) 5) たとえ サルモネラ 赤痢 カンピロバクターといった細菌性腸炎であっても大抵は自然治癒する ( 補液 対症療法だけでおしまい ) 高熱がある 症状の改善が見られない時だけ抗菌薬使用を検討します そういう時には入院することが多いので 外来で抗菌薬を使う機会はまれということです 5) ウイルス性腸炎も多い 最も頻度が高いのがノロウイルス 他にアストロウイルスやアデノウイルスなども腸炎の原因になる ノロウイルスより重症化しやすいのがロタウイルス 5) ノロウイルスなどはベッドを介して感染しますから 皮肉にも医療機関で患者を増やすような誤謬を起こしかねません 潜伏期は数日と短く 嘔吐や下痢が必発 普通の消毒薬では殺せないので 患者の使った椅子やベッドは次亜塩素酸を用いて拭きます 5)

消毒液の作り方 :2 リットル入りのペットボトルに 1キャップ 2 杯分の塩素系漂白剤を入れる ( ハイターなど ) 2 水をいっぱいに入れる 3できあがり ( 使用時手袋は着用 ) ジアルジア症は急性または慢性の下痢のいずれかを呈することがある ジアルジア属は米国で生じる寄生虫性下痢の最も多い原因である キャンプ中や感染が流行している国への旅行中に暴露されるのが典型的 下痢を 96% に認める 治療されない患者のおよそ 10% に慢性感染が生じる 6) 高齢者に急性の下痢症を起こす疾患として特徴的なものは 抗生物質投与中に起こる下痢症である 4) ( 抗生剤関連の下痢で )Clostridium difficile(cd) が起こすものを偽膜性腸炎といいます CD トキシンは感度の良い検査 抗菌薬を止めるだけでも治ることが多く 外来でメトロニダゾールや経口バンコマイシンを使用することはあまりありません 5) 外国の調味料や油の刺激そのもので下痢をする人がいる 5) 夏場では 少し時間のたった鯖などの魚を食べると 蕁麻疹を伴う下痢をすることがあります 5 ) ( アレルギーと紛らわしいヒスタミン中毒 も参照を http://rockymuku.sakura.ne.jp/hifuka/hisutaminntyuudoku.pdf ) 乳糖不耐症はきわめて多い 小腸感染のエピソードは誰にでも一過性の乳糖不耐症を起こしうるが 基礎的なラクタマーゼ活性の低い人々では より症状が起こりやすい 日本人の 20% でラクタマーゼ活性が低いと言われている なお 人類は乳児期から成長するにつれラクタマーゼ活性が低下するようになっているので もともと生理的な現象であるという意見もある 6) 外来の状況において診断がつく多くの疾患と異なり しばしば下痢の患者で正確な診断がつけられる必要は無い 6) 白血球や CRP もやや高くなることはありますが それが抗菌薬使用を決めてくれるわけではありません あくまで抗菌薬使用は重症患者に対するオプション ( バイタルサインが重要) 5) 以前は腸炎を起こしているときには絶食と相場が決まっていましたが 現在では空腹感があり 患者本人が食べても腹痛 嘔吐をおこさなければ少しずつ食べさせてもよいと考えられている 5) 一般論として 下痢に止痢薬は勧められない ( toxic megacolon などの合併症 ) 最近は止痢剤を用いてもそれほど問題にならないと考えられており 旅行者下痢などではむしろ推奨されることもある 5) ( 症状が再燃した場合 ) 疾患再発や 乳糖不耐症の可能性を高めるべきである 細菌が原因の下痢の多くは 臨床症状の解消後も便中にとどまるため再発しうる この遷延性細菌排泄はまた疾患遷延の原因ともなる これは特にサルモネラ属やキャンピロバクター属でよくみられる 小腸粘膜障害により 乳糖不耐症もまた 胃腸炎後にはよくみられる 6)

参考文献 1. 山名哲郎症状別にみた実践的な評価と治療方針 2. 排便障害 B) 下痢.Modern Physician, 29(11) : 1639-1642, 2009. 2. 関野雄典, 小山茂. 下痢へのアプローチ. 綜合臨牀, 57(12) : 2929-2930, 2008. 3. 仲瀬裕志. 便通異常 ( 下痢 便秘 ). 臨床研修プラクティス, 4(2) : 60-62, 2007. 4. 河村朗, 木下芳一. 高齢者の便通異常. 老年消化器病, 16(1) : 31-34, 2004. 5. 岩田健太郎ら. 感染症外来の帰還. 東京, 医学書院,2010. 6. Scott D. C. Stern, Adam S Cifu, Diane Altkorn. 考える技術臨床的思考を分析する. 東京, 日 経 BP,2007.