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最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴

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子宮頸部細胞診新報告様式について 子宮頸癌 子宮頸部細胞診における ベセスダシステム 2001 導入の意義 ー病理医の立場からー 早期発見が可能となった 本邦女性の死亡数は減少している しかし 20代 30代女性の罹患数や死亡数が増加 この年代においては 臓器別では最多 川崎医科大学 病理学2 現代

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細胞診クラス分類 日本母性保護産婦人科医会 1978年 子宮頸部細胞診報告様式改定 クラス クラス Ⅰ クラス Ⅱ クラス Ⅲ Ⅲa 正常 異常細胞を認めるが良性 悪性を疑うが断定できない 悪性を少し疑う 軽度 中等度異形成を推定 このクラスから5 程度に癌が検出される Ⅲb 悪性をかなり疑う 高度

日本における子宮頸がん検診の時代的背景 1982 年老人保健法にて 20 年かけて子宮頸がんを半減させる 30 歳以上の女性を対象受診間隔は 1 年に 1 回費用は行政が全額負担 1998 年地方交付税による財源措置に変更費用の一部個人負担が必要となる 2004 年子宮頸がん検診の見直し受診対象年齢

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原 著 最近の動向から見た子宮頸がん検診の判定と事後指導に対する提案 人間ドック 26: , ,4) 岩﨑武輝 1,5) 奥村次郎 1,6) 山本嘉昭 松井 1,2) 薫 1,2) 水口善夫 1,3,7) 宇野正敏 要約 キーワード 目的 : 今までの子宮頸部細胞診のいわゆる

高知赤十字病院医学雑誌第 2 2 巻第 1 号 年 5 原著 尿細胞診 Class Ⅲ(AUC) の臨床細胞学的検討 ~ 新報告様式パリシステムの適用 ~ 1 黒田直人 1 水野圭子 1 吾妻美子 1 賴田顕辞 2 奈路田拓史 1 和田有加里 2 宇都宮聖也 2 田村雅人

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れない 採取後 95% エタノールによって固定し パパニコロウ染色を実施した 標本は最初に細胞検査士によってスクリーニングされ 病理医によって確定診断された 細胞診標本の再評価は 著者と他 5 名の細胞検査士が行い病理医と評価した 判定はベセスダシステム 2001 に準拠し 上皮内腺癌の感度 scr

子宮がん細胞診の実施成績 長谷川 壽彦 東京都予防医学協会検査研究センター長 はじめに わって採用されるまでに至らなかったTBSは 厚生労働省内に設置された がん検診に関する検討 平成 年に それまでの実績の評価や指摘され 会 は 検診開始年齢や検診間隔についての指針を示 た問題点を検討し改訂がなさ

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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

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2. 各健 ( 検 ) 診の集計 10. 健 ( 検 ) 診判定基準


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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

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方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

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乳腺40 各論₂ 化膿性乳腺炎 (suppulative mastitis) 臨床像 授乳の際に乳頭の擦過創や咬傷から細菌が侵入し, 乳房に感染症を生じるものである 乳汁 排出不良によって起こるうっ滞性乳腺炎とは区別する 起炎菌は連鎖球菌や黄色ブドウ球菌である 自発痛, 腫脹, 硬結, 圧痛, 発赤

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60 香坂信明 DJMS 細胞診クラス分類 判定 細胞所見 推定病変 class I 異型細胞を認めない 正常上皮 II 異型細胞を認めるが良性である 良性異型上皮 ( 炎症性異型上皮など ) III 悪性を疑うが断定できない 異形成 IIIa 悪性を少し疑う 軽度 中等度異形成 IIIb 悪性をか

子宮頸がん 1. 子宮頸がんについて 子宮頸がんは子宮頸部に発生するがんです ( 図 1) 約 80% は扁平上皮がんであり 残りは腺がんですが 腺がんは扁平上皮がんよりも予後が悪いといわれています 図 1 子宮頸がんの発生部位 ヒトパピローマウイルス (HPV) 感染は子宮頸がんのリスク因子です

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1 除菌後胃癌の特徴と診断のポイント 新潟県立がんセンター新潟病院内科 小林正明 要点 除菌治療前の内視鏡検査で気付かなかった病変は 除菌後に形態変化 ( 平坦 陥凹化 ) して さらに発見しづらくなる場合があるため 治療前の検査は慎重に行う必要があります 除菌後に発見される病変には 従来の胃癌に比

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調査研究ジャーナル 2017 Vol.6 No.1 告する 2. 対象及び方法 2-1. 対象 2012 年 4 月から2015 年 3 月の3 年間にモデル事業として行われた3 市町村の検診車による子宮頸がん検診を受診した17,292 人を対象とし 同じ3 市町村の 2007 年から2011 年の

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8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

子宮頸がんと子宮体がん 卵管 子宮体癌 子宮頸癌 子宮体癌 自覚症状初期は無症状不正性器出血 好発年齢 30~40 代 (20~30 代で急増 ) 閉経後の 50 代以降 卵巣 子宮頸癌 リスクファクター 高リスク型 HPV 感染 肥満 高血圧 糖尿病 未経産婦 エストロゲン製剤の長期使用など 腟

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研究実績報告書宮頸部擦過細胞検体から採取された DNA には 病変を形成していない一過性の HPV 感染も検出されてしまうため 結果として複数のハイリスク HPV 型の DNA が検出されることも多く 病変形成に関わった真の HPV 型の同定が困難である そこで 既に診断の得られている子宮頸部腫瘍の

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Transcription:

ベセスダシステム ASC-H 判定の分析 ( 株 ) AKH research center 阿部一之助 金子翔 齊藤千佳 高橋正人 佐藤伸 南條博

子宮頸部細胞診報告様式 ベセスダシステムの背景 ( 米国 ) 1980 年代後半 米国内において 婦人科がん検診の細胞診と組織診の不一致率が高いこと 細胞診報告様式や用語が統一されていないため 臨床的な取り扱いに混乱を生じていることを大きく取り上げ 婦人科がん検診における細胞診が社会問題となった 米国政府は 細胞病理学のエキスパートより構成される専門委員会に子宮頸部細胞診の精度管理のあり方について解決策を要請した Bethesda System 1988 が公募 Bethesda System 2001( ( 改訂 ) ベセスダシステムは米国政府主導のもと全米で定着

class 細胞診 class 分類 ( 日本母性保護産婦人科医会 1978 年 ) class Ⅰ class Ⅱ class Ⅲ Ⅲa Ⅲb class Ⅳ class Ⅴ 正常 異常細胞を認めるが良性良性 炎症性変化 悪性を疑うが断定できない 悪性を少し疑う 軽度軽度 中等度中等度異形成異形成を推定このクラスから 5% 程度に癌が検出される 悪性をかなり疑う 高度異形成高度異形成を推定このクラスから 50% 程度に癌が検出される きわめて強く癌を疑う 上皮内癌上皮内癌を想定する 悪性 浸潤癌 ( 微小浸潤癌を含む ) を想定する

子宮頚がん検診におけるベセスダシステムの導入 < 背景 > 1973 年に考案された日母子宮頸部細胞診報告様式はクラス分類の中に 推定病変をあてはめたものであり 使い勝手が良く本邦で汎用されている 最近の細胞診断学の進歩に伴い 子宮頚癌に新たな知見が加わった事や 国際的に用いられている分類との互換性の必要性が増してきた 日母分類 改定の必要性の主な理由 1.HPV 検査との整合性をはかる 2. 検診精度管理のためクラス分類でなく 推定病変を記載する 3. 標本の適 不適を評価し 不良 ( 不適正 ) 標本を減少させる 4. 診断困難な異型細胞の評価基準を明確にする 5. 欧米では 他領域 ( 乳腺 甲状腺 ) ではクラス分類はすでに廃止された

ベセスダシステム 2001 クラス分類との対比 ( 扁平上皮病変 ) 結果略語 推定診断 クラス分類 陰性 NILM 非腫瘍性病変炎症 Ⅰ Ⅱ 意義不明異型扁平上皮 ASC-US LSIL 疑い Ⅱ Ⅲa 高度病変を除外できない異型扁平上皮 ASC-H HSIL 疑い Ⅲ Ⅲb 軽度扁平上皮内病変 LSIL HPV infection 軽度異形成 Ⅲa 中等度異型 Ⅲ 高度扁平上皮内病変 HSIL 高度異型 Ⅲb 上皮内癌 Ⅳ 扁平上皮癌 SCC 微小浸潤癌扁平上皮癌 Ⅴ

ベセスダシステム 2001 異型扁平上皮細胞 ( ASC ) ASC-US とASC-H では臨床的管理が異なる ASC-US : HPV テスト併用 または再検 コルポスコピー ASC-H H : コルポスコピー * 異なる理由として ASC-H には発癌性 HPV 感染や HSIL の可能性が高いことが挙げられる

ベセスダシステム 2001 異型扁平上皮細胞 ASC-US の細胞像 中層扁平上皮細胞核の 2.5~3 倍 N/C 比はやや上昇 軽度核濃染 軽度核形不整 コイロサイト パラケラサイト

ASC-US の細胞像 100 100 100 100

ベセスダシステム 2001 異型扁平上皮細胞 ASC-H の細胞像 1) N/C 比の高い小型細胞 未熟な異型扁平上皮化生細胞 孤立性または 10 個以下の集団 正常の 1.5~2.5 倍の核を持つ異型化生細胞? N/C 比は HSIL と同様 2) 密在するシートパターン 極性を失った核 厚い細胞質 多稜形細胞形態 明瞭な輪郭を持つ細胞集団

1) N/C 比の高い小型細胞 100 100 100

2) 密在するシート パターン 100 100 100 100

記載なし 14.3% 71.4% 両方 50% 48.8% 検診以外 40% 60% 検診 63.6% 36.4% NILM ASC-US ASC-H LSIL

記載なし 35.7% 50% 両方 47.7% 40.7% 検診以外 60% 40% 検診 18.2% 9.1% 63.6% 9.1% NILM ASC-US ASC-H LSIL HSIL

1) 対象 AKH 研究センター ASC-H の検討 2008 年 12 月よりベセスダシステムを併用 2008 年 12 月 ~2010~ 年 1 月まで (14 ヶ月 ) 子宮頸部擦過細胞診 16,883 件 2) 検討項目 ベセスダシステム診断結果について ASC-H の細胞像について 最終病理診断との整合性

ベセスダシステムによる細胞診断内訳 ベセスダ 件数 (%) NILM 16,061 95.1 ASC-US 319 1.9 ASC-H 26 0.15 LSIL 363 2.2 HSIL 109 0.7 SCC 5 0.03 計 16,883 100

ASC-H の頻度と判定理由 ( 北海道がんセンターのデータ ) 判定 件数 検体不適正 506 ASC-US 765 ASC-H 230 ( 0.9% ) LSIL 394 HSIL 604 SCC 187 検体数 24,599 ASC-H と判定した理由 < 原因 > 件数 CIS 疑い 97 CIN3 vs 化生 59 高度異形成疑い 15 小型角化異型細胞 14 中等度異形成疑い 4 その他 15

ASC-H の組織診断内訳 組織診断 件数 (%) No malignancy 4 21.1 Mild dysplasia 4 21.1 Moderate dysplasia 6 31.6 Severe dysplasia 4 21.1 Clear cell carcinoma 1 5.3 計 19 100 * 組織提出なし 7 件 ( 21 %)

ASC-H の最終病理診断 ( カナダ オタワ大学 2008 年データ ) ASC-H H 123 例の最終病理診断 病理診断比率 (%) AKH(%) HSIL 59.4 52.7 LSIL 8.9 21.1 Benign lesion 31.7 21.1

当センターにおける ASC-H の細胞像 1) 異型を伴う未熟扁平化生細胞未熟扁平化生細胞と鑑別困難な細胞集塊 17 例 ( 65.4% ) 2) 異型細胞の出現数が少ない出現数が少ない 7 例 ( 27.0% ) 3) 高度な異型を伴う萎縮上皮細胞 1 例 ( 3.8% ) 4) 異型を伴う予備細胞の集塊 1 例 ( 3.8% ) 5) 変性など標本状態が悪い 0 例 ( 0 % )

1 ) 異型を伴う未熟扁平上皮化生細胞と 鑑別困難な細胞集塊 ( 17 / 26 症例 65.4% )

100 組織診断 ; Mild dysplasia 100 組織診断 ; Chronic cervicitis 100 100 組織診断 ; Moderate dysplasia 組織診断 ; Mild to moderate dysplasia

100 100 組織診断 ; Mild dysplasia 組織診断 ; Moderate dysplasia 100 100 組織診断 ; Severe dysplasia 組織診断 ; Severe dysplasia

2 ) 異型細胞の出現数が少ない ( 7 / 26 症例 27.0 % )

100 組織診断 ; Mild dysplasia 100 組織診断 ; Mild to moderate dysplasia 100 組織診断 ; Moderate dysplasia 100 組織診断 ; Moderate dysplasia

3 ) 高度な異型を伴う萎縮上皮細胞 ( 1 / 26 症例 3.8 % )

組織診断 ; Atrophic change 100

まとめ 1) 子宮頸がん検診においてベセスダシステムが導入されたが 個々の細胞所見所見に関しては に関しては 従来の判定基準が変わるものではない 2) ベセスダシステムの ASC-US,ASC US,ASC-Hは やむを得ずいずれかにクラス分類していた曖昧な細胞像を無理せず 曖昧であることを認識曖昧であることを認識して報告できる利点がある 3) 当センターのベセスダシステムによる細胞診断内訳は ASC- US:1.9% ASC-H:0.15% LSIL:2.2% HSIL:0.7%SCC;0.03% であった 4) ASC-H の細胞像を分析すると 1 未熟扁平上皮化生細胞と紛らわしい所見を示したのが最も多く 65.4% 2HSIL2 を疑うが異型細胞数が少なかったのが 27.0% と全体の 92% を占めた 5)ASC ASC-H 症例の組織診断内訳は Moderate~Severe dysplasia;52.7% Mild dysplasia;21.1% No dysplasia;21.1% であった

基本方針 : 骨子 ベセスダシステム 2001 準拠 1. 標本の評価 標本の適 不適の別を記載する 世界的に普及しているベセスダシステム 2001 の基準を用いる 2. 記述式用語による報告 従来のクラス分類による細胞診の結果報告を廃止し 記述式用語による報告にする 記述用語は ベセスダシステム 2001 の用語を用いる

子宮頸部前癌病変の分類 従来の用語 クラス分類 CIN SIL ( ベセスダ ) 軽度異形成 CIN 1 Ⅲa 中等度異形成 CIN 2 LSIL 高度異形成 上皮内癌 Ⅲb Ⅳ CIN 3 HSIL

ばらつきの原因となる細胞像 乾燥 炎症で核肥大している核の判断 Koilocytosis による halo か 炎症に伴う halo か? 角化を示唆する OG 好染細胞に軽度腫大した核 ( NILM? ASC-US? ) 再生上皮 化生細胞の核腫大か LSIL か? 萎縮性膣炎内に見られる核腫大 濃縮核が目立つ 細胞は ASC-H? HSIL? ASC-US?

ベセスダシステム 2001 異型扁平上皮細胞 ( ASC ) < 扁平上皮内病変を示唆する細胞変化 > 扁平上皮への異常分化 ( N/C 比 ) 軽度核濃染 クロマチン凝集 核形不整 スマッジ核 多核 コイロサイト パラケラサイト * 鑑別細胞 : 萎縮性変化 修復細胞 異型腺細胞

ベセスダシステム 2001 異型扁平上皮細胞 ( ASC ) ASC-US 核 : 中層扁平上皮細胞の 2.5~3 倍 N/C 比 : やや上昇 クロマチン分布 : 核形状不規則性 わずかな核濃染 厚いオレンジ G 好染細胞質を持つ細胞の異常角化 Parakeratosis,Koilocytosis を伴う ASC-H 1) N/C 比の高い小型細胞 異型 ( 未熟 ) 化生 孤立性または 10 個以下の集団 正常の 1.5~2.5 倍の核 N/C 比は HSIL と同様 2) 密在するシート パターン 極性を失った核 厚い細胞質 多稜形細胞形態 明瞭な輪郭を持つ細胞集団

ASC-H の細胞像 100 100