[ 文献紹介 ] 浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 (IVUS) 所見の影響 Miki K, et al., Impact of Post-Procedural Intravascular Ultrasound Findings on Long-Term Results Following Self-Expanding Nitinol Stenting in Superficial Femoral Artery Lesions. Circ J. 2013; 77: 1543-50. 三木孝次郎先生 兵庫医科大学循環器内科助教 福永匡史先生 兵庫医科大学循環器内科助教 川崎大三先生 森之宮病院循環器内科部長 IVUS Findings -S.M.A.R.T.-
浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 (IVUS) 所見の影響 兵庫医科大学循環器内科助教三木孝次郎先生兵庫医科大学循環器内科助教福永匡史先生森之宮病院循環器内科部長川崎大三先生 [ 背景 ] これまでの血管内超音波検査 (IVUS) に関する研究では 対照血管の内腔断面積 (CSA) が小さいこと ステントの拡張不十分 ステントの非対称性 ステントエッジの解離 組織の突出が 冠動脈インターベンション後の標的病変再血行再建 (TLR) と関連していることが報告されている しかし下肢では IVUSの所見が血管内治療 (EVT) 後のTLRと相関しているとの報告はない [ 方法及び結果 ] 自己拡張型ナイチノール製ステント留置後にIVUSを施行した患者における浅大腿動脈 (SFA) 計 236 病変を連続的に評価した ステント拡張率は最小ステント CSA/ 対照血管内腔 CSA 半径方向のステント stent symmetry index は最小ステント径 / 最大ステント径 軸方向の stent symmetry indexは最小ステント CSA/ 最大ステント CSAとして算出した TLRは対象となる病変で 75% 以上の再狭窄があった場合に施行した 平均観察期間は34±15ヵ月であった TLRは42 病変 (17.8%) で施行された TLR 群と非 TLR 群間で ステント拡張率 stent symmetry index 組織の突出の有意差は認められなかった 多変量解析の結果 ステント全長 ( オッズ比 [OR]:1.004 P<0.05) 遠位対照 CSA(OR :0.91 P<0.01) ステントエッジの解離(OR:3.51 P<0.01) は TLRの独立した予測因子であった [ 結論 ] SFA 病変における細い血管へのステント留置とステントエッジの解離はTLRの高リスクの指標である ただし 術後のステント拡張不十分及びステント非対称性はTLRに関連していなかった キーワード 血管内治療 血管内超音波法 再狭窄 自己拡張型ナイチノール製ステント 浅大腿動脈 血管内治療 (EVT) は 末梢動脈疾患 (PAD) 患者に対する低侵襲治療として受け入れられている 1-3 国際ガイドラインである Trans-Atlantic Inter-Society Consensus(TASC) Ⅱによれば EVTの適用はその有効性と技術及びデバイスの進歩により広がってきた 1, 2 浅大腿動脈(SFA) は 臨床的に再狭窄率が非常に高い最後の大きな動脈樹である SFAは 一般にびまん性の病変となり閉塞することが多く また大きな動きを受ける部分にあるため EVTによる治療が難しい末梢動脈である SFA 病変における最初のEVT 成功率は狭窄病変で95% 閉塞病変で85% 超と報告されているが EVTによる再狭窄率は容認しがたいほど高かった 3 より太いSFAへの自己拡張型ナイチノール製ステント留置はSFA 病変の治療には有用かつ安全であることが証明されているが 手技は完全ではない 4 自己拡張型ナイチノール製ステントで治療した SFA 病変の1 年の一次開存率と二次開存率はそれぞれ 84% 90% で あったが 5 2 年目の再狭窄率は約 45% と報告されている 6 血管内超音波検査 (IVUS) は 血管壁の断面像を高解像度で得られる手段であり 冠動脈インターベンション及び EVTにおいて画像診断法として広く使用されている 7 これまでのIVUSに関する研究の報告によれば 対照血管の断面積 (CSA) が小さいこと ステントの拡張不十分 ステントの非対称性 及びステントエッジの解離が 冠動脈インターベンション後の標的病変再血行再建 (TLR) と相関していた 8, 9 冠動脈病変へのステント留置後の IVUS 所見がTLRの予測因子であることは報告されているが SFA 病変に対するEVT 後のIVUS 所見がTLRにどのように関係するかについてはほとんど知られていない 本研究の目的は SFA 病変に対し自己拡張型ナイチノール製ステントを留置した患者における術後 IVUSの所見からTLRの予測因子を調べることである 1
方法 患者及び病変前向きに維持管理されているデータベースから 2006 年 9 月 ~2010 年 9 月に日本の兵庫医科大学にて新規 SFA 病変に対するEVTが成功したすべての症例を後ろ向きに選択した この期間に 自己拡張型ナイチノール製ステント留置に成功し 血流障害のない新規 SFA 計 439 病変を今回の解析対象とした 全症例について 運動及び至適な薬物療法を行ったにもかかわらず QOLに影響を及ぼす SFA 病変の症状がみられた (Rutherford 分類 2-6) バルーン血管形成術のみを施行した患者 再狭窄病変に対しステント留置を施行した患者 急性または亜急性の虚血肢がある患者 12ヵ月以上の観察ができなかった患者については解析から除外した 試験プロトコルは兵庫医科大学の施設内審査委員会の承認を受けた 後ろ向きの研究であるため 患者の同意書は免除された 手技最初に下肢の診断的血管造影を実施し 2 名以上の医師が EVTによる治療を行うことを決定した EVTへのアプローチは術者の裁量で決定した 6-Frシースを挿入後 未分画ヘパリン (5,000 単位 ) を動脈に注射した 0.014/0.018インチのガイドワイヤーを病変部まで進めた後 最適なサイズのバルーンを用いて前拡張を行った 血流を制限する解離またはリコイルが 30% 超の狭窄を引き起こしている場合にS.M.A.R.T. CONTROL ステントを留置した 血管造影法で病変の近位部の対照血管径を確認し 非拘束時に対照血管径より 1~2mm 大きい径のステントを選択した 複数のステント留置が必要な場合には ステントが重なる部分の範囲は10mm 未満とした 12 気圧超で対照血管径まで拡張するバルーンを用いて すべての病変に同じ方法で後拡張を行った 手技終了時に試験セグメントを一定の安定した速度 ( 約 1mm/ 秒 ) で手動で引き戻し IVUSコンソール (s5 TM Imaging System *1 ) とフェーズド アレイ 20-MHz IVUSカテーテル (Eagle Eye Gold *1 ) を用いて IVUS 画像を得た 2 剤抗血小板療法 ( アスピリン 100mg/ 日とシロスタゾール 100mg/ 日 チクロピジン 200mg/ 日またはクロピドグレル 75mg/ 日 ) はEVTの1 週間以上前から開始し ほぼ全例で生涯にわたり継続した *1 米国カリフォルニア州 Rancho Cordova Volcano corporation IVUS 像の分析すべてのIVUS 像について 独立した経験豊富な観察者が臨床情報及び血管造影の情報について盲検化された条件でIVUS 画像分析ソフトウェア (echoplaque *2 ) を用いて定量的に分析を行った 最小及び最大ステント CSAを含む断面像 を選択し分析に用いた 近位及び遠位の対照部位は 同じ動脈内 ( ステントに対して近位及び遠位 20mm 以内 ) とし 大きい分岐がある場合は分岐手前の最も正常に見える断面像を選択した 近位及び遠位対照部位の外弾性板 (EEM)CSA 血管内腔 CSA プラーク面積率([EEM CSA - 血管内腔 CSA]/ EEM CSA) を測定した ステント拡張率は 最小ステント CSA / ([ 近位対照血管内腔 CSA + 遠位対照血管内腔 CSA] 1/2) として算出した 半径方向のstent symmetry indexは最小ステント径 / 最大ステント径 軸方向のstent symmetry index は最小ステント CSA/ 最大ステント CSAとした 9 さらに定性的な IVUS 分析を実施し ステントエッジの解離と組織の突出を調べた ステントエッジの解離は 視認できるフラップを伴うステントエッジ ( ステントの近位部及び遠位部 5mm 未満 ) で血管内腔表面が破裂と定義した 10 また エッジの解離は内膜か中膜で分類した 内膜の解離は内膜のプラーク内での血管内腔表面の破裂と定義し 中膜の解離は内膜の弾性膜まで広がる血管内腔表面の破裂と定義した 組織の突出は IVUS 像において 円弧状に広がったステントストラット間でステント内部に組織の突出が見られる場合と定義した 10 組織の突出面積は 組織の突出が最大となる断面像でステント CSAから血管内腔 CSA を引いた値とした *2 米国カリフォルニア州 Santa Clara, Indec Systems 定義及びフォローアップ高血圧は 収縮期血圧が140mmHg 以上 拡張期血圧が 90mmHg 以上 あるいは入院時に降圧剤を使用していることと定義した 脂質異常症は 総コレステロール 220mg/dL 以上 LDLコレステロール 140mg/dL 以上 HDLコレステロール 40mg/dL 未満 空腹時トリグリセリド 150mg/dL 以上 または脂質異常症治療薬の使用と定義した 糖尿病は 空腹時血糖値 126mg/dL 以上 ブドウ糖負荷 2 時間後の血糖値 200mg/ dl 以上 HbA1c 6.5% 以上 またはインスリンもしくは経口血糖降下薬の使用と定義した 慢性腎臓病 (CKD) は 3ヵ月以上にわたり糸球体濾過量が60mL/min/1.73m 2 未満であった場合と定義した 透析は末期腎不全に対する血液透析とした 喫煙は 現喫煙者と元喫煙者の両方と定義した 冠動脈疾患 (CAD) は CADと診断された場合 経皮的冠動脈インターベンションまたは冠動脈バイパスグラフト手術の既往がある場合 または心筋梗塞の既往がある安定狭心症と定義した 脳血管疾患は 一過性虚血性発作または虚血性脳卒中の診断による入院または神経科医の報告がある場合と定義した Run-off vessel は手技後の血管造影にて評価した 手技の成功は 残存狭窄が30% 未満であり 血管造影で血流を制限する解離がないことと定義した 症状及び足関節上腕血圧比 (ABI) など術後の臨床評価は EVT 後 1 3 6ヵ月目に実施し その後は外来受診時の6ヵ月毎に評価した 観察期 2
浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 ( 間中に PADの臨床症状再発または ABIスコアの低下が認められれば 標的病変の再狭窄を特定するためデュプレックス超音波検査を実施した 標的病変のデュプレックス超音波検査で最大収縮期血流速度比 (PSVR) が2.4を越えておりステント内再 11 狭窄が疑われる場合 診断的血管造影を実施した TLRは 血管造影上で75% 以上の狭窄がみられた場合に ステント留置セグメント内またはステント近位もしくは遠位 5mm 以内で 経皮的または外科的再血行再建などを実施した 統計解析データは平均 ± 標準偏差で示した 連続型変数は 対応のないt 検定または Mann-WhitneyのU 検定を用いて評価した カテゴリー変数は χ 2 検定または Fisherの直接確率検定を用いて比較した 単変量及び多変量ロジスティック回帰分析を実施し TLRの独立した予測因子を特定した 単変量解析にて P< 0.05であった因子 ( 女性 ステント全長 最小ステント CSA 遠位対照 EEM CSA ステントエッジの解離) を多変量回帰モデルに含めた TASC Ⅱ 分類及びステント数はステント全長に関連していたため ロジスティック回帰モデルに含めなかった P<0.05 を統計的に有意とした 結果 患者及び手技 5 年間で 兵庫医科大学にて新規 SFA 病変に対し EVT 439 件が施行された このうち解析対象から除外した症例は 手技中に自己拡張型ナイチノール製ステントが使用されなかった症例 (48 病変 ) 膝関節下側の病変に追加のEVTを必要とした症例 (42 病変 ) IVUSカテーテルがステント内を通過しなかった症例 (37 病変 ) 血栓病変にEVTが施行された症例(21 病変 ) EVT 後も大動脈腸骨動脈または膝窩の病変が認められた症例 (15 病変 ) EVTの開始時に失敗があった症例 (5 病変 ) IVUS 像が解析には不十分であった症例 (4 病変 ) であった 新規 SFA 病変に対してナイチノール製ステント留置を行ったが 12ヵ月以上観察できなかった 31 病変は解析から除外した 平均観察期間は34±15ヵ月であった この期間中 42 病変 (17.8%) に対して TLRが施行された 初回手術からTLRまでの期間は平均 13±9 ヵ月 (4~45ヵ月 ) であった 患者のベースライン特性を表 1に示す TLR 群では非 TLR 群に比べて 女性患者の割合が高く (37% vs. 20% P=0.04) 年齢に有意差はなかった (71.2±9.4 歳 vs. 72.2±8.8 歳 P=0.50) 2 群間の高血圧 脂質異常症 糖尿病 CKDの有病率 透析の実施率に有意差はなかった 2 群間で 重症下肢虚血 (CLI) の比率 (14% vs. 21% P=0.40) シロスタゾールの使用 (64% vs. 69% P=0.59) は同様であった 病変と手技のベースライン特 性を表 2に示す TASC Ⅱ 分類 C/D 型の病変はTLR 群のほうが非 TLR 群よりも多かったが (76% vs. 56% P=0.02) 慢性完全閉塞 (CTO) の病変の比率は同様であった (62% vs. 52% P=0.29) TLR 群のステント全長は非 TLR 群に比べて長く (213.1±75.4mm vs. 169.8±90.0mm P=0.04) ステント数は多かった (2.4±0.8 vs. 2.0±0.9 P<0.01) IVUS 所見術後のIVUSの所見を表 3に示す TLR 群と非 TLR 群で ステント拡張率 半径方向のstent symmetry index 軸方向のstent symmetry index( 図 1) 近位対照 EEM CSA または近位対照血管内腔 CSAに有意差は認められなかった しかし 最小ステント CSAはTLR 群が非 TLR 群に比べて有意に小さかった (13.4±4.0mm 2 vs. 14.9±4.3mm 2 P=0.04) また 遠位対照 EEM CSA と遠位対照血管内腔 CSAは非 TLR 群に比べてTLR 群では有意に小さかった ( それぞれ 32.3±10.7mm 2 表 1 患者のベースライン特性 症例数 (%) または平均値 ±SD 非 TLR 群 (n=194) TLR 群 (n=42) P 値 年齢 ( 歳 ) 72.2±8.8 71.2±9.4 0.50 女性 38 (20) 15 (37) 0.04 BMI 21.9±3.6 21.6±3.6 0.54 高血圧 160 (82) 39 (93) 0.11 脂質異常症 111 (57) 29 (69) 0.17 糖尿病 126 (65) 39 (71) 0.48 喫煙 154 (79) 31 (74) 0.42 慢性腎臓病 107 (55) 16 (38) 0.06 透析 41 (21) 5 (12) 0.20 冠動脈疾患 72 (37) 14 (33) 0.73 脳血管疾患 45 (23) 10 (24) 1.00 ABI 0.67±0.18 0.63±0.17 0.27 間歇性跛行重症下肢虚血投薬治療アスピリンチエノピリジンシロスタゾールスタチン TLR ; 標的病変再血行再建 154 (79) 40 (21) 194 (100) 62 (32) 134 (69) 80 (41) 表 2 病変 手技のベースライン特性 36 (86) 6 (14) 42 (100) 15 (36) 27 (64) 21 (50) 0.40 1.00 0.72 0.59 0.31 非 TLR 群 (n=194) TLR 群 (n=42) P 値 慢性完全閉塞 100 (52) 26 (62) 0.29 Run-off vessel 0/1/2/3 12/49/75/37 3/12/16/11 0.83 TASC Ⅱ 分類 A/B 型 C/D 型 86 (44) 108 (56) 10 (24) 32 (76) 0.02 ステント径 (mm) 6.6±0.7 6.5±0.6 0.51 ステント全長 (mm) 169.8±90.0 213.1±75.4 0.04 使用ステント数 2.0±0.9 2.4±0.8 0.002 TASC, Trans-Atlantic Inter-Society Consensus TLR ; 標的病変再血行再建 症例数 (%) または平均値 ±SD 3
IVUS) 所見の影響 vs. 25.1±7.6mm 2 P=0.006 22.8±8.0mm 2 vs. 19.0±8.3mm 2 P<0.001 図 2) エッジの解離は 56 病変 (23.7%) でみられ その内訳はステン ト遠位 (28 病変 ) ステント近位 (22 病変 ) ステントの近位 遠位 表 3 術後 IVUS 所見 非 TLR 群 (n=194) TLR 群 (n=42) P 値 最大ステント CSA(mm 2 ) 26.4±8.6 24.6±7.4 0.23 最小ステント CSA(mm 2 ) 14.9±4.3 13.4±4.0 0.04 対照セグメント近位 EEM CSA(mm 2 ) 近位血管内腔 CSA(mm 2 ) 近位プラーク面積率遠位 EEM CSA(mm 2 ) 遠位血管内腔 CSA(mm 2 ) 遠位プラーク面積率 46.3±19.3 30.9±13.4 46.8±11.3 32.3±10.7 22.8±8.0 45.4±11.3 44.3±19.0 30.2±13.9 48.0±9.7 25.1±7.6 19.0±8.3 48.9±11.4 0.54 0.75 0.53 0.006 <0.001 0.07 ステント拡張率 0.59±0.17 0.57±0.16 0.64 半径方向 stent symmetry index 0.65±0.11 0.66±0.11 0.77 軸方向 stent symmetry index 0.59±0.15 0.56±0.15 0.31 ステントエッジの解離内膜での解離中膜での解離 37 (19.1) 23 (11.9) 14 (7.2) 19 (45.2) 9 (21.4) 10 (23.8) <0.001 0.13 0.003 組織の突出 26 (13.4) 7 (16.7) 0.62 組織突出面積 (mm 2 ) 3.8±2.6 3.9±2.1 0.92 CSA ; 断面積 EEM ; 外弾性板 IVUS ; 血管内超音波法 TLR ; 標的病変再血行再建 症例数 (%) または平均値 ±SD の両方 (6 病変 ) であった これら 56 病変のエッジの解離のうち 血管造影で検出されたのは 14 病変のみ (25%) であった 全体 としてのステントエッジの解離は TLR 群が非 TLR 群より多かった (45.2% vs. 19.1% P<0.001) 内膜のステントエッジの解離の 発生率は2 群間で有意差は認められなかったが 中膜での解離はTLR 群のほうが非 TLR 群よりも多かった (23.8% vs. 7.2% P=0.003) ステント留置後の組織の突出の発生率及び突出面積は2 群間で同様であった TLR 病変の典型的なIVUS 像を図 3に示す TLRの単変量及び多変量ロジスティック回帰分析単変量及び多変量ロジスティック回帰分析を行い TLRの独立した予測因子を調べた ( 表 4) 多変量解析により ステント全長 ( オッズ比 [OR]:1.004 95% 信頼区間 [CI]:1.000-1.008 P<0.05) 遠位対照 EEM CSA(OR :0.91 95% CI :0.86-0.96 P<0.01) ステントエッジの解離の総数 (OR:3.51 95% CI :1.63-7.57 P<0.01) がTLRの独立した予測因子であることが示された 女性および最小ステント CSAはTLRの独立した予測因子ではなかった 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 ステント拡張率 stent symmetry index 半径方向軸方向 0.3 p=0.64 p=0.77 p=0.31 非 TLR 群 TLR 群非 TLR 群 TLR 群非 TLR 群 TLR 群 TLR 群と非 TLR 群で ステント拡張率 stent symmetry index( 半径方向 軸方向 ) に有意差は見られなかった 図 1 術後 IVUS 所見によるステント拡張率 stent symmetry index( 半径方向 軸方向 ) の評価 (mm 2 ) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 遠位 EEM CSA p<0.001 非 TLR 群 TLR 群 図 2 遠位対照血管の術後 IVUS 所見 遠位血管内腔 CSA p=0.006 非 TLR 群 TLR 群 遠位 EEM CSA と遠位血管内腔 CSA は 非 TLR 群に比べて TLR 群では有意に小さかった ( 順に 32.3±10.7mm 2 vs. 25.1±7.6mm 2 P=0.006 22.8± 8.0mm 2 vs. 19.0±8.3mm 2 P<0.001) (A)SFA 症例 ( 右肢 ) の自己拡張型ナイチノール製ステント留置後の血管造影像 ステントエッジの解離は血管造影では確認できない (A1-4) ステント留置後の IVUS 像 (A1) ステント近位における中膜での解離 (A2) 最大ステント CSA における断面像 (A3) 最小ステント CSA における断面像 (A4) ステント遠位における内膜での解離 (B) ステント留置 8 ヵ月後 血管造影ではステント内の再狭窄が見られる 図 3 TLR を施行した症例 (69 歳 男性 ) 4
浅大腿動脈病変における自己拡張型ナイチノール製ステント留置の長期成績に対する術後血管内超音波検査 ( 表 4 TLR に対するロジスティック回帰分析 単変量解析 多変量解析 OR(95% 信頼区間 ) P 値 OR(95% 信頼区間 ) P 値 女性 2.28 (1.11 4.70) 0.03 1.57 (0.70 3.50) 0.27 高血圧 2.76 (0.81 9.46) 0.11 脂質異常症 1.67 (0.82 3.40) 0.16 糖尿病 1.33 (0.64 2.77) 0.45 慢性腎臓病 0.50 (0.25 0.99) 0.06 透析 0.50 (0.19 1.37) 0.18 間歇性跛行 0.64 (0.25 1.63) 0.35 シロスタゾール 0.81 (0.40 1.62) 0.55 慢性完全閉塞 1.53 (0.77 3.01) 0.22 Run-off vessel 0/1 1.11 (0.55 2.25) 0.78 ステント径 (mm 2 ) 0.84 (0.50 1.42) 0.51 ステント全長 (mm 2 ) 1.006 (1.002 1.009) <0.01 1.004 (1.000 1.008) 0.04 最小ステント CSA(mm 2 ) 0.91 (0.83 0.99) 0.04 1.05 (0.94 1.17) 0.38 対照セグメント近位 EEM CSA(mm 2 ) 近位プラーク面積比遠位 EEM CSA(mm 2 ) 遠位プラーク面積比 0.99 (0.98 1.01) 1.01 (0.98 1.04) 0.91 (0.87 0.95) 1.03 (1.00 1.06) 0.54 0.52 <0.001 0.07 IVUS 所見を用いた本試験では ステント全長が長い 遠位対照血管が小さい ステントエッジの解離があるという因子が SFA 新規病変に対する自己拡張型ナイチノール製ステント留置後のTLRと強く関連していることがわかった ステントの拡張不十分及び非対称性のステント拡張はSFA 病変における EVT 後のTLRとの関連は認められなかった 我々の知る限りでは 本試験はSFA 病変に自己拡張型ナイチノール製ステントを留置後 術後のIVUS 所見と長期成績の関係を明らかにした初めての研究である ステント留置は近年 PAD 患者の侵襲治療の主流となっているが ステント内再狭窄は SFA 病変のステント留置手技の 30~40% に生じる可能性が報告されている 4, 12, 13 これは EVT 後に最も多くみられる早期合併症であり いまだに大きな臨床的課題である IVUSによりステント留置後の冠動脈の断層像が得られることから 我々は SFA 病変への自己拡張型ナイチノール製ステント留置後のTLR 発生に関連する重要な特徴がわかると考えている これまでに報告されている再狭窄率は FAST 試験で 32% 12 ASTRON 試験で34% 13 ABSOLUTE 試験で36% 4 で 14 あった これらの再狭窄率はSIROCCO 試験の報告より比較的高い Dudaらは 自己拡張型ナイチノール製ステントを用い たSIROCCO 試験において ステント留置群の24ヵ月目の再狭窄率は21% に過ぎないと報告している 15 ただし SIROCCO 試験における平均病変長は83mmであり他の試験より短い この結果は SFA 病変に対する自己拡張型ナイチノール製ステント使用後のTLRにステント全長が関連しているという本研究の結果を裏付けている 今回の結果と同様に Krankenbergらは SFA 病変へのナイチノール製ステント留置後 12ヵ月目の TLR 施行率は14.9% であると報告しており 12 Schillingerらは留置後 24ヵ月目の TLR 施行率は21.7% であったと報告している 6 女性 若齢 糖尿病 シロスタゾールの使用なし CLI CTO TASC Ⅱ 分類 C/D 型病変 ステント破損はSFA 病変でのナイチノール製ステント留置後の再狭窄と関連していた 16-18 本研究の単変量解析では 非 TLR 群よりも TLR 群において女性および TASC Ⅱ 分類 C/D 型病変が多かったが 年齢 糖尿病 シロスタゾールの使用 CLI CTOは群間で同様であった 過去の研究では シロスタゾールの使用により SFA 病変へのステント留置後の再狭窄が予防されると報告されている 19, 20 SFA 病変へのステント留置後のシロスタゾールによる再狭窄予防については いくつかのメカニズムが示されている シロスタゾールは内膜過形成を阻害し血管拡張作用がある 21 本研究と過去の研究の差については完全には明らかではなく 症例数の差による可能性が考えられる 本研究ではSFA 病変の患者 236 人のみを対象とした 他の理由としては 試験における評価項目の違いが考えられる 過去の研究では血管造影上の再狭窄が評価項目とされていたが 本研究では TLRを評価項目とした これらの理由により過去の研究と本研究の差を説明できると考えられる ステント留置の確認は血管造影で判断するが 血管造影ではステントの完全かつ均一な拡張を評価する際に必要となる三次元の形状はわからない また ステントストラットと血管壁の密接な接触とステントの対称的な拡張は血管造影では確認できない 中村らは 血管造影の結果は適切であったにもかかわらず IVUSでは不完全かつ非対称に拡張されたステントが多かったことを報告している 22 しかし インターベンション後及び観察時に連続的にIVUSの撮像を行った過去の研究では ステントを留置した部位内の観察時に ステントの対称性と新生内膜組織の量は相関していなかった 23 さらに 個々のステントにおける最も悪い asymmetry indexは 全体的な新生内膜組織の量と相関していなかった これらのデータはステントの対称性は 0.91 (0.86 0.96) <0.01 ステント拡張率 0.62 (0.08 4.60) 0.64 半径方向 stent symmetry index 1.57 (0.08 32.27) 0.77 軸方向 stent symmetry index 0.31 (0.03 2.87) 0.30 ステントエッジの解離 3.51 (1.73 7.10) <0.001 3.51 (1.63 7.57) <0.01 考察 5
IVUS) 所見の影響 留置した部位内の新生内膜形成に影響しない可能性を示唆している 本研究の結果と同様に 過去の冠動脈内超音波に関する研究では ステント拡張の非対称性が新生内膜組織量および再狭窄率と関連していなかったことが報告されている 24 本研究では SFA 病変に対するステント過拡張は 必ずしも自己拡張型ナイチノール製ステントの留置後に必ずしも必要ではないことがわかった この結果は 留置後も継続してステントが拡張している可能性を示唆している 冠動脈では ステントが持続的に拡張する利点は血管の内膜過形成増加により相殺されているものの 自己拡張型ナイチノール製ステントはステント留置 6ヵ月後の IVUS 像ではバルーン拡張ステントに比べてステント径が大きかった 25 しかし 今回の研究で使用したステントの種類は過去の研究と異なるためメカニズムが異なる可能性がある さらに結果を再確認するには IVUS 所見を用いた前向きの連続的な研究が必要である これまでの IVUS 研究では 冠動脈病変へのステント留置後 ステントエッジの解離が認められる病変における TLR 発生率は ステントエッジの解離が認められない病変と同等であることが示されている 26 ただし 本研究では TLR 群のステントエッジの解離の発生率は非 TLR 群よりも有意に高かった さらに ステントエッジの解離は SFA 病変への自己拡張型ナイチノール製ステント留置後のTLR 発生の独立した予測因子の1つであることがわかった 過去の報告と本研究で結果が異なる理由は不明であるが 留置されたステントのタイプ ( バルーン拡張型ステンレススチール製ステント vs. 自己拡張型ナイチノール製ステント ) 動脈のサイズ ( 冠動脈 vs. 浅大腿動脈 ) の違いが関係している可能性がある 本試験では 内膜におけるステントエッジ解離の発生率はTLR 群と非 TLR 群で同様であったが 深部の中膜におけるステントエッジ解離の発生率は非 TLR 群よりも TLR 群で高かった これは 深部でのエッジ解離後に血管壁に対して持続的にかかった力が他の動脈損傷を引き起こし 内膜過形成が起こっている可能性を示唆している 本研究では ステント留置後の血管造影では IVUSにて確認されたステントエッジ解離の25% しか検出されなかった これは 適切なステントサイズまたはバルーンサイズを決定するという IVUSの用途に加え IVUSを用いたステントエッジ解離の確認がTLR 予防の ため臨床現場で有用になる可能性を示唆している 研究の限界本研究は 単一施設にて前向きに収集した観察データを後ろ向きに解析したものである 大規模な患者集団にてこの結果を再確認するためには さらなる多施設前向き研究が必要である これまでの研究では ステントの破損がEVT 後の臨床成績に影響することが報告されているが 27 ステント破損を検出するために X 線像を撮影していないため これらのデータは本研究には含めなかった 本研究では すべての IVUS 撮像を20-MHz IVUS トランスデューサーを用いて実施した そのため この所見が他のIVUSシステムに適用できるかどうかは不明である ステントを留置したセグメントが長いため (TLR 群で213.1mm 非 TLR 群で169.8mm) SFA 病変を介した IVUSの引き戻しは用手にて実施した ほとんどの CTO 病変において 前拡張を行うことなく IVUSカテーテルを病変まで進めることはできないため (n=126, 53%) 手技前のIVUS 所見は今回の解析に含めなかった SFA 病変における EVT 後の血管造影及びIVUSによる観察は兵庫医科大学ではルーチンでは行っていないが 血管造影及びIVUSによる観察を行わなかった全症例において症状が認められなかったため 血管造影の施行率が低いことはデータの臨床的妥当性に影響しない 一方で 血管造影の施行率が高いことにより再狭窄率に関するより信頼性の高い情報が得られたが 本観察研究の主要評価項目の 1つである虚血による TLRの発生率の情報は得られなかったと考えられる 結論 SFA 病変において 小さな対照血管へのステント留置とステントエッジの解離はTLRの高リスクの指標であることがわかった 一方で 術後のステント拡張不十分とステント非対称性は TLRと関連していなかった ステントの完全拡張は SFA 病変への自己拡張型ナイチノール製ステント留置後の長期成績の改善にはつながらない可能性がある 略語一覧 IVUS intravascular ultrasound 血管内超音波検査 CSA cross-sectional area 断面積 TLR target lesion revascularization 標的病変再血行再建 EVT endovascular therapy 血管内治療 SFA superficial femoral artery 浅大腿動脈 PAD peripheral artery disease 末梢動脈疾患 TASC Trans-Atlantic Inter-Society Consensus EEM external elastic membrane 外弾性板 CKD chronic kidney disease 慢性腎臓病 CAD coronary artery disease 冠動脈疾患 ABI ankle brachial index 足関節上腕血圧比 PSVR peak systolic velocity ratio 最大収縮期血流速度比 CLI critical limb ischemia 重症下肢虚血 CTO chronic total occlusion 慢性完全閉塞 6
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