生命物理化学 系について 熱力学で考える 系 には次の つがある 開いた系 : や物質の出入りがある生物や細胞のような系 閉じた系 : の出入りはあるが, 物質の出入りはない系 孤立系 : 物質やの出入りがない宇宙のような系 ( 熱力学と自由 ) 一定圧で内部に仕事をした場合ピストン 系 ΔU( 内部 E の増加 ) W 仕事 () 一定圧で内部 ( 系 ) に仕事をした 熱量 () 開いた系閉じた系孤立系入れ子構造の開放定常系 ( 地球 ) 赤外線 太陽光 Δ 物質 物質 物質 開放系閉鎖系孤立系 ΔU W Δ ( Δ Δ ) 大気循環と水循環が 地球の熱エントロピーを宇宙に捨て 生態系の循環が物エントロピーを熱エントロピーに変換する 動物は 栄養素を地球規模で補給し 陸地の生態系の循環を成立させている この機能が地球の仕組みであり これが健全であるかぎり 地球の生命は維持される ( 開放定常系 : 槌田敦 ) 熱力学第 0法則 : 三つの物体 A, B, があり, A と B および A と とが互いに熱平衡にあるならば, Bと も互いに熱平衡にある 熱力学第一法則 : 熱力学でも保存の法則は成り立つ 熱力学第二法則 : 力学的から熱への変化は一般に不可逆である 熱力学第三法則 : 絶対 0 度では物体は最低の状態にあり, 乱雑な熱運動はなくなるからエントロピーは 0 となる 仕事の方向を,-で示し, Δはプラス (), つまり Δ Δ としている 次のように説明している場合もある Δ が, Δ ( 大きさ ) だけではなく, 変化の方向を表す ( つまり正 負の符号をつけ膨張 圧縮を示す ) 場合もあるので注意する ピストン ΔU W 仕事 熱量 熱力学第一法則 内部変化 ΔU は, 系が得た熱量 と, 系に可逆的になされた仕事 W の和 ( または差 ) で表される 一定圧で外部に仕事をした場合ピストン ΔU W - Δ プラス マイナスの場合がある ( 下記参照 ) 系 ΔU( 内部 E の増加 ) W 仕事 (-) 系が一定圧で外部に仕事をした 熱量 () Δ - Δ Δ Δ Δ Δ Δ ΔU - W - Δ ( - Δ ) -Δ 0 Δ 圧縮の場合, Δは負の値となるから, Δ が大きさ ( Δ ) なのか, 変化の方向を考慮し, 符号を付けた ΔU W もの ( Δ ) なのかを判別する必 - Δ 要がある - - Δ 参考書等の説明も曖昧である Δ -- --
エンタルピー H の次元をもつ熱力学的な状態量 内部を U, 圧力を p, 体積を としたとき, エンタルピー H は H U p によって定義される エンタルピーという言葉は, 909 年カメルリン オンネスによって, 温まるという意味のギリシア語 enthalpein にちなんで命名されたもので, 一定の外圧のもとで系が吸収する熱量を表すために用いられた HU U: 内部 : 圧力 : 体積 別解 エンタルピー変化 Δ H は Δ H Δ U Δ より ( - Δ ) Δ を代入 ΔH 外圧を一定として H U を全微分すると Δ H Δ U Δ Δ 積の微分法の公式より定圧状態だから Δ 0 { fxgx ( ) ( )} f ( xgx ) ( ) fxg ( ) ( x) よって Δ H Δ U Δ あるいは H U で, は定数だから Δ H Δ U Δ ΔH ΔU Δ ( 定圧 ) ΔU - Δ より U -U - ( - ) (U )-(U ) ( 定圧のとき ) H - H エンタルピーの定義より ΔH 定圧の開放系での物質変化は 体積変化と同時に外界との間でのやり取りを行う 系 Δ 反応熱 とエンタルピー変化 Δ Hの関係 熱力学第一法則より ΔU - W - Δ ピストン (Δ H ) Δ 圧力 体積変化 ΔU 内部増加 () W 仕事 (-) 熱量 () 力 / 面積 体積 力 距離 仕事 / ( ジュール ) ( 参考 ) Δ 定積状態の系では Δ 0 だから ΔU - Δ は定圧反応熱だから とすると ΔU 内部変化 ( 増加 ) は は定積反応熱だから とすると,ΔU は ΔU - Δ ( 定圧状態の系 ) ΔU ( : 定積反応熱 ) -- -4-
内部 U 体積を一定 (Δ 0) に保って 温度を上げるときのモル比熱が定積モル比熱 である 物質や場のもつからそれらの全体としての運動に関する運動を引いた残りの部分 内部は 系の状態によって定まる つの状態量 Δ U ( ) cal W ( ) W( ) 4 ΔU 7 Δ U : 内部の増加分 : cal( カロリー ) 単位の熱量 : 熱の仕事当量 ( 4.855 ) 4. / cal W : 仕事 外部から系 ( 気体 ) に対しての仕事 気体 W 仕事 ( プラス ) 圧力を一定 (Δ0) に保って 温度を上げるときのモル比熱が定圧モル比熱 6 に7を代入して 8を得る ΔU ( Δ Δ T である ) 6 (は一定) ΔU 熱量 ( プラス ) Δ Δ T 8 内部 U とモル比熱 ( cal/ K ol) モルの気体で 圧力は一定 温度がΔ T( K) 上昇したとき 体積はΔ 変化したとする 5 モル比熱 ( cal/ K ol) 物質 ol の温度を K 上昇させるのに要する熱量モル比熱を 熱容量と表現している場合もある ΔU ( cal) W 5 に代入して (ΔU-W) ( ΔU 4 (ΔU Δ より ) ( -Δ)} Δ) 6 T a ( Δ ) ( TΔ T) b a bより Δ Δ これを 8 に代入して 9 マイヤーの式 ( カルノーの式 ) - 9, の単位を( / K ol) とすると 9 式は となる -5- { ΔU- -6-
理想気体の分子運動と圧力 容器の一辺の長さを () とすると 速度 vx で運動している気体分子が 次に容器の ( 同じ ) 壁に衝突するまでの時間は vx (s) t 秒間に 圧力 は F v 両辺に ( 体積 ) を掛けて v v 4 t 秒間に vx t ( 回 ) 壁に衝突する nt 5 4 を式変形して 5 を代入 t 秒間に壁から受ける力積は また 壁が 個の分子から受けている力 F は vx Σv v FΣf Σ vx Σvx x vx v x vx vy v y vz に, を代入して vz -ft- - Σvx v vx vx vx vx v t v x vy t 0 vz v v v v kt T v だが T v nt A : アボガドロ数 : ボルツマン定数 k より v T A n k T 6.0 0 ( 個 /ol) T 6 v とし ( 比例記号 ) を用いて : 分子量 F Σ v x vx v 気体分子の平均速度 v は T に比例し に反比例する -7- -8-
内部と定積モル比熱 & 定圧モル比熱 U T v A A T A ( 理想気体 モルの内部 ) 6 より マイヤーの式 U T 7 を代入して 8 : 定積モル比熱 9 に 5 5 8. 4.9 5.0 (cal /K ol) ΔU 7 5 9 : 定圧モル比熱 7 式に ΔU ΔU (T) - T (ΔU: 内部の増加 ) (/K ol) (/cal) を代入して g 当たりの比熱を 定圧比熱, 定積比熱 とすると Ṕ マイヤーの式に代入して, 比熱や比熱比は 分子の構造や分子の運動 ( 並進運動 回転運動 振動運動 ) で異なる 分子の運動の自由度が増える分だけ多くのを加えなければ温度は上がらない 8. 4.9.0 (cal /K ol) 8,9 式は 単原子分子理想気体について成立するものである 二原子分子理想気体の通常温度での各比熱は 7 ( 単原子分子 : He や Ar など 二原子分子 : O や など ) 5, である マイヤーの式参照 -9- -0-
エントロピー S 乱雑さの度合を表すための熱力学的概念で 物質または場からなる系の状態量の つ エントロピーという名称はクラウジウス ( 独 8 ~ 888) によるもので ギリシア語の trop ( 変化 ) に由来し 変化容量を意味する 孤立系の可逆変化においては不変であるが 非可逆変化 ( 不可逆変化 ) においては必ず増大する S : エントロピー : 熱量 T : 絶対温度 [ エントロピー小 ] [ エントロピー大 ] 気体の体積小大 ( 拡散 ) 液体の濃度高 ( 濃縮 ) 低 ( 希釈 ) 熱高温 低温熱 Eの流れ 光 S T TS 5 高温 ( 6000K ) の太陽から放射され, 地球が受け取る質の高い光 地球から放射される ( 宇宙へ出て行く ) 質の低い光 ( 50K の赤外放射 ) 一般的に, エントロピーが増加する方向 ( エントロピー小から大 ) に変化する エントロピーとは, そもそも複雑さの度合を表すための熱力学的概念であり, 複雑さまたはでたらめさが増すほどエントロピーは大きくなる 理想気体が, 温度一定の下で, 非常にゆっくりと ( すなわち準静的に ) 膨張してその体積がもとの体積の 倍になった状態を考えてみよう どちらも同じ温度で平衡状態になっているが, これら二つの状態は, 明らかに熱力学的に違った状態である 倍の体積の状態のほうが熱的により乱れた状態であるといえる なぜなら, 体積が 倍となった容器の中央に仮想的な仕切りをつけたとすると, 中の粒子は, もとの半分の体積の場合と比較して, 仮想的な仕切りを乗り越えて両方に入り乱れることができるからである もっと直観的にいってしまえば, ある体積の容器の中にハエを入れたときと, その 倍の体積の容器に入れたときとで, どちらのほうがハエの飛び方が複雑になるかを考えれば類推できるであろう この乱れぐあいを定量的に表現する物理量がエントロピーなのである エントロピーという概念は, 熱力学的な状態の変化を特徴づけるものとして.. E. クラウジウスが導入したものであり, その名はギリシア語のentrop^( 反転する働きの意 ) に由来し, 変化容量の意味で命名されたものである 自由 ヘルムホルツの自由 F( 定積自由 ) F U - TS ( 体積一定 ) 仕事に変えられる U: 内部 T: 絶対温度 S: エントロピー Fは体積を一定にしたとき, 内部 U( F TS) のうち仕事に変えられる部分を表す クラウジウスは残りの部分 TS を束縛 ( bound energy) とよんだ 閉じた系の等温, 等積での熱平衡条件は F の極小で与えられる ギブズの自由 F ( 圧力一定 ) ( U -TS ) (U)-TS H-TS ( HU) H: エンタルピー H ー TS 6 T: 絶対温度 S: エントロピー は圧力を一定にしたとき, 内部のうち仕事に変えられる部分を表す <0: 発エルゴン反応 ( 自発反応 ) 0: 平衡状態 正味の反応は起こらない ( 見かけ上反応は停止 ) >0: 吸エルゴン反応 ( 非自発反応 ) 化学反応が自然に起きるとき は負である 吸エルゴン反応は 発エルゴン反応と共役する ( 一緒に反応が進む ) ことで主反応となることができる ( AT H O AD H O 4-7. ( kcal / ol ) AT の加水分解は 発エルゴン反応である ) つまり ATのを用いて吸エルゴン反応が進むことになる ) 自由 が極小になるというのが平衡の条件である H TS の減少には, H の減少と, S の増大の両方の要素がある 燃焼は H TS の H の減少が大きな場合である 氷の融解は S の増加が大きな場合である 反応は平衡 ( d0 極小 ) へ向かって進み また自由 が減少する方向 ( < 0 の方向 ) へと進む 極小が平衡の条件 極小 上り坂の反応は進みにくいが 下り坂の反応は進みやすい -- --
自由変化 Δ 自由変化 Δ とΔ 標準自由変化で考えると 溶液中での化学反応 aa bb c dd について 例 ) HA Ê H A この反応における自由 は 次のように表される H A HA a ( 自由変化 ) T ln [ ] c [D] d [A] a [B] b : 自由 : 生化学的標準状態 ( at, 5, ph 7) での自由 : 気体定数 T : 絶対温度 ln : 自然対数 反応と自由の図 ln K Δ! T ( アレニウスの式参照 ) 各成分の自由は, H H Tln[H], A A Tln[A], HA HA Tln[HA] であるから, a 式は ( H T ln[ H ]) ( A T ln[ A ]) ( HA T ln[ha]) 標準自由の部分をまとめると ( H A HA) T ln[h ] T ln[a ] T ln[ha] さらに, 対数部分を整理して ( H A HA) T ln T ln [H ][A ] [HA] [H ][A ] [HA] となる となる となり, 反応系 生成系 活性化自由 E Δ 反応系 逆反応の活性化自由 E Δ 生成系 Δ T lnk 図より Δ Δ 生成系 - Δ 反応系 "!", より Δ 生成系 - 反応系 T ln K ( 図の場合,Δ の値は負である ) よって 自由変化 Δ は 次のように表される Δ Δ T ln [ ] c [D] d [A] a [B] b Δ : 自由変化 Δ : 標準自由変化 ( 反応の種類によって決まっている ) ( 生化学的標準状態 ( at, 5, ph 7) での自由変化 ) 7 自由変化量と基準 基準 ( 標準状態における値 ) を決めて, 状態間の差を式の中に組み入れなければならない : 気体定数 T : 絶対温度 ln : 自然対数 化学 Eと反応熱 反応と自由 例 ) 時間後 だけでは, 何時何分なのかわからない ( 今現在の時刻を, 基準にしているから 時間後の時刻がわかる ) 化学 E お釣りが 00 円少ない だけでは, お釣りの金額はわからない ( お釣りは500 円なのに 400 円しかもらっていない もらうべき正確なお釣りの金額を, 基準にしているから 00 円足りないとわかる ) A B Δ 活性化 E 反応熱 D Δ H エンタルピ - 変化 A B Δ T lnk D! 式から Δ T lnk である 基準 ( 標準状態における値 ) を決めて, T lnk とする Δ は 固定された値 ( ヘスの法則より ) なのに対し Δ は 刻々と変化する値である Δ 0( 平衡状態 ) になったとき 見かけ上 反応は停止する 反応と自由のグラフは ある瞬間の写真のようなもの と考えればよい -- -4-