副甲状腺機能亢進症の 画像診断 -MIBI シンチを中心に- 北光記念病院中駄邦博
2 次性副甲状腺機能亢進症 ( 透析 ) 高 P 血症に対する反応性変化全ての腺の過形成治癒する疾患ではない軽快 再燃の繰り返し根本的解決手段は腎移植最近はレグパラ (cinaclcet) が用いられる. 原発性副甲状腺機能亢進症 1 腺腫大が 90% 治癒しうる疾患 再燃はある
PTH の作用 骨吸収の促進 ( 骨芽細胞系細胞を介する ) 腎近位尿細管からのリンの再吸収抑制 腎遠位置尿細管からのカルシウムの再吸収を促進 副甲状腺甲状腺機能亢進症では高カルシウム血症と低リン血症がみられる 骨粗鬆症 腎結石 胆嚢結石も認められる
副甲状腺機能亢進症の検査所見 副甲状腺ホルモン (intact PTH whole PTH) 高値 高 Ca 血症 低 P 血症 高 Ca 尿症 : 一日畜尿で尿中排泄量 200mg 以上 骨粗鬆症 腎結石
PTH が高値なのに Ca と P が正常のときは ビタミン D 欠乏症の可能性がある! この場合は手術や PEIT ではなく ビタミン D の補充が治療となる. PTH が高い時は血中の活性型ビタミン D は低くな らないので 活性型になる前のトータルのビタミン D (25-OH ビタミン D) を測定する必要がある 保険適応ではない
原発性副甲状腺機能亢進症 カルシウムの値はアルブミン値の影響をうける Ca [NET] = Ca- (Alb-3.7) イオン化カルシウム (Ca 2+ ) はアルブミンの影響を 受けにくいが 測定に時間を要する (5-6 日間 ) 高カルシウム血症の症状は不眠 口渇 多飲多尿 筋力低下 便秘 食思不振 全身倦怠 混迷や記憶障害などの精神症状は Ca 値が 13mg/dl 以上になると出現
副甲状腺の解剖
甲状腺の局所解剖
甲状腺の画像解剖
副甲状腺 ( 上皮小体 ) の解剖 正常腺の重量は 30-40mg 上副甲状腺は輪状態軟骨付近に位置する 下副甲状腺は甲状腺下極に位置する 下甲状腺動脈によって栄養される ( 上甲状腺の 80%, 下副甲状腺の 90%) 正常人の 5 8% 前後に第 5 腺が存在し その殆どは発生学的に第 3 鰓嚢由来の 下副甲状腺 部位は縦隔 甲状腺内 頚 部 ( 下行不全 ) など MEN Type 1 では 60% が 5 腺以上
副甲状腺に対する画像診断の適 応 1. 原発性副甲状腺機能亢進症 Adenoma 2.2 次性副甲状腺機能亢進症 Hyperplasia 3. 家族性副甲状腺機能亢進症 Hyperplasia 4. 多発性内分泌腫瘍症 I 型 Hyperplasia IIA 型 Adenoma IIB 型にも稀に合併 腫大腺の局在と数の同定 異所性腺の検出 術後再発の検出 縮小手術 (minimally invasive parathyroidectomy)
副甲状腺の画像診断
腫大した副甲状腺の画像所見 US 甲状腺背側の low echo mass 甲状腺との間に明るい境界エコ - を認める Doppler で下甲状腺動脈からの血流を確認 CT 甲状腺背側の low density mass 比較的明瞭な造影効果 16 列以上の MDCT で MPR を作ると分かり易い MRI T1 強調像低信号 T2 強調像 STIR 高信号 造影後 T1 強調像強い造影効果
原発性副甲状腺機能亢進症 ( 左上副甲状腺腫大 ) PTHi 262(pg/ml) Ca 10.0(mg/dl)
右上副甲状腺腫大 US longitudinal transverse Ca 14.3(mg/dl) PTH-I 93.1(pg/ml)
乳頭癌と原発性副甲状腺機能亢進症の合併 60 歳代 女性 高血圧で北 記 病院に入院中 札 医 耳 科で class III で悪性の可能性があるとして定期 follow されていた 右葉上部に石灰化と嚢胞を伴った不整形腫瘤あり 左葉下極部背側に低エコーの組織 PTH 高値 最終的に甲状腺亜全摘出 +D2a 郭清
甲状腺左葉下極部
超音波の有用性と限界 甲状腺の周囲にある腫大腺の検出には最も鋭敏 内部の詳細な性状も評価できる 死角がある 食道の背側 鎖骨の裏側 瀰漫性甲状腺腫のある場合 リンパ節との区別がときに困難 その気で探さないと見落としてしまう
CT MPR(2-3mmスライス) 作成 鎖骨からのartifactに注意 単純 CT では甲状腺よりも低吸収 造影語 動脈相では強い早期濃染を示し 造影後 後期相では甲状腺よりは低濃度後期相では甲状腺よりは低濃度 ダイナミックCTを行うと 下甲状腺動脈や上甲状腺動脈を可視化できる
60 歳代 男性 原発性副甲状腺機能亢進症 Ca 10.9 (8.4-10.2) P 1.6 (2.5-4.6) PTH-I 205.0 (12-65) ALP 415 (101-360)
超音波 ( 左葉長軸 ) MIBI 後期像
CT(MPR 2mm /slice)
VR 画像 : 下甲状腺動脈が feeder いったん上行して蜷局を巻くようにして副甲状腺へ流入している
09 年 4 月 左下副甲状腺摘出術施行
70 歳代 男性. 右上副甲状腺腫大 MIBI では甲状腺右葉下極部に集積
CT MPR(2mm/slice)
3D VR 上甲状腺動脈と下甲状腺動脈の 2 重支配がみられる上甲状腺動脈と下甲状腺動脈の 2 重支配がみられる 下行した上副甲状腺の腫大
60 歳代 男性 二次性副甲状腺機能亢進症 糸球体腎炎 透析歴 12 年 左上及び下副甲状腺腫大 手術は行われていない
3D VR 正面像
左下副甲状腺には右最下甲状腺動脈が注いでいる
左上甲状腺動脈は左上副甲状腺へは注いでいないは注いでいない
左上甲状腺動脈は上副甲状腺へは注いでいないは注いでいない
左上副甲状腺には左下甲状腺動脈が注いでいる
30 歳代, 女性. 甲状腺左葉の瀘胞性腫瘍に合併した 左下副甲状腺腺腫
CT (axial) 左下副甲状腺が腫大
甲状腺腫瘍には上甲状腺動脈が注いでいる
3D VR image 副甲状腺には最下甲状腺動脈が feeder となっている
核医学の従来法 : Tl-TcTc サブトラクショシンチ
Tl-Tc subtraction scintigraphy Tl-201 Tc-99m Subtracted image T + P - T = P 検査中検査中 頭部が動かない様に十分注意! Sensitivity は MIBI より落ちる (70-80%)
MIBI 副甲状腺シンチグラフイ 薬剤 Tc-99m MIBI (methoxyisobutylisonitrile : sestamibi) 世界的な標準検査方法だが日本では保険適応になっていなかった 集積機序 ミトコンドリアの豊富な好酸性細胞に集積するとされている 従って副甲状腺機能は反映しない 正常の副甲状腺には集積しない 生理的集積 甲状腺 (2 時間後には消失する ) 唾液腺 鼻粘膜 口腔 心筋 肝臓 消化管 ( 胆汁に排泄 )
副甲状腺シンチグラフイ (MIBI) 撮像方法 標識率に注意! 96% 以下では検出率が低下する 10-20 mci (370-740 MBq) 静脈注射後 ( 苦味を感ずる事あり ) 10-20 分後 (early image) と 120-180 分後 (delayed image) に頚部 (+ 胸部 ) 正面像を撮像 SPECT 像を追加 自家移植している場合は移植部 ( 腕 ) も撮像 異常所見 正常の副甲状腺は描出されない 腫大した副甲状腺は局所的集積亢進として示され delayed image で集積が残存する 大きなものほど (> 500mg) 検出され易い False positive: 橋本病 甲状腺の充実性腫瘍 頚部リンパ節転移 False negative: 透析 血清 K 高値 深部病変 過形成 SPECT/CT fusion imageで診断率向上
Tc-99m MIBI の meta-analysis (6331 例 ) による原発性副甲状腺機能亢進症の診断成績 sensitivity 90.7% specificity 98.8%
1990 年 -2000 年における我が国の原発性副甲状腺機能亢進症 3152 例の分析 ( 甲状腺外科学会 ) 1. 性別 : 男性 82 (26%) : 女性 2332 (74%) 2. 年齢 : 40-60 代で 2225 例 (50 代にピ- ク ) 3. 手術前血清 Ca 値 (mg/dl): 11 < 38%, 11-12 37%, 12-14 21%, > 14 4% 4. 腫大腺重量 (g): 0.5 < 35%, 0.5-1 29%, 1-5 31%, > 5 5% 5. 病型 : 生化学型 54%, 腎結石型 35%, 骨病変型 11% 6. 病理組織 : 単発腺腫 84%, 過形成 11%, 多発腺腫 2%, 癌 2%, 判定不能 1% 7. 遺伝発生例 : 170/ 3152 (5.4%) MEN I 121, MEN IIA 18, 家族性 HPT 31 8. 腺腫の手術後経過 : Ca 正常化 95%, Ca 高値持続 2%, 永続性低 Ca 3% 9. 過形成の手術後経過 : Ca 正常化 82%, Ca 高値持続 6%, 永続性低 Ca 12% 10. 癌の手術後経過 : 治癒 84%, 担癌生存 8%, 原病死 8%
US MIBI positive hyperfunctioning gland PTH 262 (pg/ml) Ca 10.8 (mg/dl) the longest diameter 23 mm lft left upper early MIBI delayed Doppler 28yrs., f
Primary hyperparathyroidism early delayed MIBI Adenoma 540 mg US Ca 14.3(mg/dl) PTH-I 93.1(pg/ml) longitudinal transverse
MIBI- SPECT (coronal) early delayed
縦隔内副甲状腺腫による原発性副甲状腺 機能亢進症 early delayed
橋本病を合併した副甲状腺機能亢進症 Early Delayed 橋本病には delayed image でも MIBI 集積が残存する
US CT
50 才代, 女性.Hashimoto s thyroiditisと副甲状腺腺腫の合併例 ( 甲状腺左葉は切除後 ) MIBI planar SPECT US 右葉長軸 MIBI シンチでは甲状腺右葉への強い集積のために背面に存在する腫大 MIBI シンチでは甲状腺右葉への強い集積のために背面に存在する腫大した上副甲状腺への集積 (1040 mg の腺腫 ) への集積は指摘できないが US では甲状腺との間に境界エコーを有する低エコーの腫瘤として認められる
40 才代女性, 原発性副甲状腺甲状腺機能亢進症. 甲状腺右葉に腺腫を合併. MIBI では腫大副甲状腺を示唆する集積なし.
49yrs, female, MIBI positive gland at back aspect of lower pole of the left lobe. Delayed MIBI scan
ワークステーションを用いた MIBI SPECT /CT 融合画像の 作成
60 歳代女性 左下副甲状腺腫大 左葉に腺腫様甲状腺腫あり CT MIBI planar
左下甲状腺動脈が左下副甲状腺へ注ぐ
MIBI SPECT coronal images
SPECT/CT fusion uso MPR MIBI の集積は左下副甲状腺にきれいに superimpose される excellent
70 歳代 男性. 右上副甲状腺腫大 MIBI では甲状腺右葉下極部に集積
CT MPR(2mm/slice)
3D VR 上甲状腺動脈と下甲状腺動脈の 2 重支配がみられる上甲状腺動脈と下甲状腺動脈の 2 重支配がみられる 下行した上副甲状腺の腫大
MIBI/CT fusion MPR images MIBI の集積は左下副甲状腺に superimpose される fair
60 歳代, 男性. 左下副甲状腺腫大. 造影剤で吐き気 血圧上昇をきたし VR 画像はうまく作成できなかった USでは腫大副甲状腺を同定できず
MIBI scan
CT SPECT/CT fusion 左下副甲状腺に MIBI 集積が superimpose される. good
矢状断で頸椎の情報も同時に得られる ほぼ正常 頸椎症
まとめ - 今後の課題 腫大副甲状腺への feeding artery に関して詳細な情報が得られる事が判明した SPECT/CT 専用機を用いなくともwork stationで良好な fusion 画像が作成できる Fusion 画像の精度 画像処理の時間 外科治療成績 特にminimally invasive surgery への貢献度は?