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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

1-4. 免疫抗体染色 抗体とは何かリンパ球 (B 細胞 ) が作る物質 特定の ( タンパク質 ) 分子に結合する 体の中に侵入してきた病原菌や毒素に結合して 破壊したり 無毒化したりする作用を持っている 例 : 抗血清馬などに蛇毒を注射し 蛇毒に対する抗体を作らせたもの マムシなどの毒蛇にかまれ

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日本内科学会雑誌第97巻第7号

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血球数算定 ( 血算 ) NTT 東日本関東病院臨床検査部 栗原正博

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

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蛍光標識抗体の組み合わせによる測定値への影響

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八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

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33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

血糖高いのは朝食後のため検査項目 下限値上限値 単位名称 9 月 3 日 9 月 6 日 9 月 15 日 9 月 18 日 9 月 21 日 9 月 24 日 9 月 28 日 10 月 1 日 10 月 3 日 10 月 5 日 10 月 9 日 10 月 12 日 10 月 15 日 10 月


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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時

を作る 設計図 の量を測定します ですから PCR 値は CML 患者さんの体内に残っている白血病細胞の量と活動性の両方に関わるのです PCR は非常に微量の BCR-ABL 設計図 を検出することができるため 残存している病変を測定するものとよく言われます 4. PCR の検査は末梢血と骨髄のどち

無顆粒球症

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

中医協総 再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて 再生医療等製品の保険適用に係る取扱いについては 平成 26 年 11 月 5 日の中医協総会において 以下のとおり了承されたところ < 平成 26 年 11 月 5 日中医協総 -2-1( 抜粋 )> 1. 保険適

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報道発表資料 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 ヒト白血病の再発は ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因 - 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - ポイント 患者の急性骨髄性白血病を再現する 白血病ヒト化マウス を開発 白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性が

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

第5章 体液

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

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ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

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白血病(2)急性白血病

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

[ 別紙 1] 論文の内容の要旨 論文題目 NK 細胞受容体 NKG2 の発現解析および KIR (Killer cell Immunoglobulin-like receptor) の遺伝的多型解析より導き出せる 脱落膜 NK 細胞による母児免疫寛容機構の考察 指導教官 武谷雄二教授 東京大学大学

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

検査項目情報 EBウイルスVCA 抗体 IgM [EIA] Epstein-Barr virus. viral capsid antigen, viral antibody IgM 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLA

耐性菌届出基準

はじめに 日本で最初の造血幹細胞移植が行われたのは 1974 年ですが 199 年代に入ってから劇的にその件数が増え 近年では年間 5, 件を超える造血幹細胞移植が実施されるようになりました この治療法は 今日では 主に血液のがんである白血病やリンパ腫 あるいは再生不良性貧血などの根治療法としての役


10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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愛知県臨床検査標準化ガイドライン 血液特殊染色アトラス 愛知県臨床検査標準化協議会 AiCCLS : Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization

当院の血液検査室の概要 血液検査 system 自動血球分析装置塗抹標本作製装置 La-vietal LS (Sysmex 社 ) XN-3000 (Sysmex 社 ) XN 台 ( RET WPC PLT-F の各チャンネル ) XN 台 SP-10 (Sysmex

Q. 造血幹細胞移植とは? 通常の治療では根治や長期生存が期待できない造血器悪性腫瘍や 再生不良性貧血の患者に対して 大量化学療法や全身放射線照射などの移植前処置を行った後 骨髄機能を回復させるために多能性造血幹細胞を移植すること

活動報告 [ 背景 ] 我が国では少子高齢化が進み 遺伝子異常の蓄積による白血病などの病気が増加している 特に私が専門とする急性骨髄性白血病 (AML; acute myeloid leukemia) は代表的な血液悪性疾患であり 5 年生存率は平均して 30-40% と 多くの新規治療法 治療薬が

医学部医学科 2 年免疫学講義 10/27/2016 第 9 章 -1: 体液性免疫応答 久留米大学医学部免疫学准教授 溝口恵美子

患者必携 がんになったら手にとるガイド 編著 国立がん研究センターがん対策情報センター 発行 学研メディカル秀潤社 患者必携 血液 リンパのがんの療養情報 白血病や悪性リンパ腫などの血液 リンパのがんでは 全身の病気として薬物療法 抗がん剤治療 による治療を中心に行います 治療の間は感染予防を 治療


するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

2 参考 検体投入部遠心機開栓機感染症検査装置 感染症検査装置 (CL4800)

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

豚繁殖 呼吸障害症候群生ワクチン ( シード ) 平成 24 年 3 月 13 日 ( 告示第 675 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した弱毒豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を凍結乾燥したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍における高頻度の 8q24 再構成 : 細胞形態,MYC 発現, 薬剤感受性との関連 Recurrent 8q24 rearrangement in blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm: association wit

ハイドレア とは ハイドレア は ほんたいせいけっしょうばんけっしょう 本態性血小板血症 (ET) 6 ページ参照 しんせいたけつしょう 真性多血症 ( 真性赤血球増加症 : PV) 8 ページ参照 まんせいこつずいせいはっけつびょう 慢性骨髄性白血病 (CML) 10 ページ参照 に対して処方され

化学物質の分析 > 臨床で用いる分析技術 > 分析技術 > 免疫学的測定法 1 免疫学的測定法 免疫反応を利用して物質を分析する方法として 免疫学的測定法 ( イムノアッセイ ) がある イムノアッセイは 抗体に抗原を認識させる ( 抗原抗体反応を利用する ) ことにより 物質を定量する分析法であり

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

Transcription:

臨床における フローサイトメーターの応用 測定原理の概略臨床検査におけるFCM 応用例標準化と精度管理 ベックマン コールター株式会社バイオメディカルリサーチ本部

フローサイトメーター (FCM( FCM) 細胞や粒子の特性を調べる ( 光を当てた時に ) 細胞から出る光の強さを分析 散乱光強度 ----- 細胞の大きさや内部構造 蛍光強度 ----- 細胞の性状 ( 予め試料を染色 ) サイトミクス FC500

FCM が苦手なこと 分子の細胞内局在や移動の検出 組織の構造や細胞の位置関係の把握 共焦点レーザー顕微鏡イメージサイトメーター免疫組織化学染色などで解析 鈴木, 丹羽 : MBL 研究試薬誌より引用

フローサイトメーター (FCM( FCM) Flow Cytometer Flow Cytometry ( フローサイトメトリー ) Flow 流れる Cyto 細胞 -meter 測定機械 (-metry 測定技術 ) 血球計数機と共通の起源 ( コールターカウンター ;1953 年 )

FCM で測定可能なサンプル 粒子の懸濁液 ( 細胞浮遊液 ) 細胞 ( 粒子 ) のサイズは 0.3~40μm 血液の細胞 ( ヒト, 動物 ) 他の組織の細胞 植物の細胞 微生物 プランクトン ビーズ 汎用性 サンプル処理が必要 細胞分離 赤血球除去 ( 溶血処理 ) 蛍光染色 ( 免疫染色 核染色など )

細胞表面マーカー ( 表面抗原 ) 分析 - 免疫蛍光法 ( 蛍光抗体法 )- 細胞に目印を付ける 細胞固有の目印となる糖タンパク ( マーカー分子 ) に結合する蛍光標識モノクローナル抗体で細胞を光らせる

CD 番号 細胞表面マーカーの国際名称 Cluster of Differentiation 集まり ( 細胞の ) 分化 ヒト白血球分化抗原に関する国際会議 (HLDA) CD1a~CD247 まで約 300 種類 ( 第 1 回 ~ 第 7 回 HLDA 会議 ) 2004 年 12 月に第 8 回 HLDA 会議開催 CD339 まで決定

FCM の測定原理 サンプル浮遊液をフローセルに押し出す レーザー光を細胞が一個ずつ通過 細胞がレーザー光を通過する際に生じる散乱光と蛍光を光学フィルタで分別 細胞 1 個ごとに散乱光と蛍光の強さを解析 統計ヒストグラムデータを作り プロットと計算結果を出力 レーザー 細胞

個々の細胞シグナルをヒストグラム解析 2 方向の散乱光 ( 白血球を分別 ) 前方散乱 FS ( 大きさ ) Ly Mo Gr 個数 ( ドットの濃淡または等高線で表示 ) 蛍光 個数側方散乱 SS ( 顆粒密度等 ) 蛍光陽性 レーザー 細胞 蛍光 ( 抗原量など )

SSSF数蛍光強度個ゲーティング ( 特定の細胞に限定したデータ解析操作 ) 目的の細胞に解析ゲート設定 ( この例ではリンパ球領域 ) ゲート : リンパ球領域 抗体陽性リンパ球 強 目的とする細胞に正しくゲーティングすることが重要

結果の判定 ( 陽性率 ) 1 パラメータ (1 カラー ) PE 2 パラメータ (2 カラー ) +/- +/+ -/- -/+ FITC ダブルポジティブ ヒストグラムの高さ = 細胞数の多少 ドットの濃淡や等高線で細胞数の多少を表現

蛍光ヒストグラムの解釈 (+ とーの判定 ) 胞数陰性 ( 弱 ) 陽性 ( 強 ) 陽性 低高蛍光強度細 弱陽性 (dim) の解釈 ポイント : ヒストグラムの右側ほど蛍光強度が強い細胞弱陽性 (±) では陽性率が結果を正しく反映していない

FCM の ( 臨床 ) 応用 細胞表面抗原や細胞内抗原による細胞解析 リンパ球サブセット分析 ( リンパ球の働きを調べる ) 白血病 / リンパ腫フェノタイピング ( 白血病 / リンパ腫細胞の由来を調べる ) CD34 陽性造血幹細胞測定 ( 造血幹細胞移植をサポートする ) 細胞周期 ( 核 DNA 量 ) 解析 その他 白血球機能の解析 抗血小板抗体などの検出 アポトーシス検出 遺伝子発現解析 可溶性成分測定 ( ビーズアレイ ) 細胞分取 ( セルソーティング )

FCM 分析に用いられる臨床検体 末梢血 骨髄血 リンパ節 脳脊髄液 関節滑液などの組織液 肺気管支洗浄液 腹水 胸水 尿沈渣 病変部 ( 腫瘍 炎症など ) の組織 固型組織は細胞を分散し浮遊液にする

リンパ球サブセット分析 リンパ球 CD2 CD5 CD7 CD3 Th CD4 CD3 Tc CD8 CD2 CD5 CD7 CD19 CD56 B NK CD20 CD16 リンパ球サブセットの細胞機能に関連したマーカーが発現 各々の陽性率を指標に疾患や病態に関連したサブセットの増減を調べる ( 例 :HIV 感染症の CD4 + リンパ球 )

リンパ球サブセット分析の臨床応用 HIV 感染症 HIV が CD4 陽性細胞に感染 ウィルス増殖に伴い CD4 陽性リンパ球 ( ヘルパー T 細胞 ) 減少 免疫機能不全による日和見感染や発ガン (AIDS) 死亡 検査パラメータ CD4リンパ球の比率( 陽性率 ) CD4 + 細胞数 CD4 のモニタリングで病態を把握

白血病 / リンパ腫タイピング ( 造血器悪性腫瘍細胞検査 ) 造血幹細胞 造血前駆細胞 細胞型を細胞表面 / 細胞質内抗原 ( マーカー ) で調べる 細胞系統 (cell lineage) 分化段階 (differentiation) 巨核球 赤芽球 顆粒球 血小板 赤血球 リンパ球 T B NK 単球 マーカー発現プロファイルから白血病 / リンパ腫細胞の細胞系統と分化段階を判断

白血病 / リンパ腫タイピングに用いるマーカーの例 白血病細胞のみが陽性となるマーカーはない 複数のマーカーを組み合わせたパネルで細胞系統と分化段階を判断 T 細胞系 CD1 CD2 CD3 CD4 CD5 CD7 CD8 TCR B 細胞系 CD19 CD20 CD22 CD23 CD79a IgM(μ 鎖 ) κ/λ(l 鎖 ) FMC7 骨髄系 CD13 CD14 CD33 CD34 CD64 CD65 CD117 MPO その他 CD10 CD38 CD56 CD58 HLA-DR CD41/CD61 CD42b CD235a

急性白血病フェノタイピング T 細胞性 CD2+ CD5+ CD7+ cycd3+ 成熟 ( 末梢 )T scd3+ 中間 ( 胸腺 )T CD1a+ Precursor-T CD34+ non-t 細胞 (B 細胞 ) 性 CD19+ cycd79a+ 成熟 B CD20+ sigm+ Pre-B CD10+ cyμ+ Pro-B CD34+ 骨髄性 CD13 and/or CD33+ MPO+ 未分化 低分化 CD34+ 単球系 CD4+ CD14+ CD64+ 前骨髄球 (APL) HLA-DR- ( 他の AML は通常 DR+) 赤芽球系 CD235a(Glycophorin-A)+ 巨核球系 CD41+ CD61+ ( 下線は細胞質内マーカー )

急性リンパ性白血病 (ALL( ALL) 分析例 CD19 のみ陽性 B 細胞性 ALL

慢性骨髄性白血病急性転化 (CML( CML-BC) ) 分析例 CD10 陽性 CD13/CD33 陰性 (B) リンパ性急性転化 ( 注 : 慢性期の CML はタイピングの対象外 )

急性骨髄性白血病 (AML( AML) 分析例 HLA-DR CD13 CD33 CD34 CD34( 幹細胞マーカー ) が強陽性 未分化な骨髄系細胞の可能性

白血病 / リンパ腫でみられる ユニークなマーカー発現 1 正常ではみられないマーカー発現の組み合わせ ( アベラント マーカー発現 ) AML M2 with t(8;21) におけるCD19, CD56 発現 Ph1 + ALLにおけるCD66c 発現など 2 非常にマイナーな細胞集団の腫瘍化 B 細胞性 CLL や MCL における CD5 発現など

悪性リンパ腫 (ML( ML) ) 分析例 CD5 陽性の B 細胞 MCL

成人 T 細胞白血病 (ATL( ATL) ) 分析例 典型的な ATL 細胞は CD4+ CD8- CD2+ CD3+ CD5+ CD7-

Biphenotypic Acute Leukemia (BAL) 同一の白血病細胞に異なる系統の抗原が発現 2 カラー FCM 分析で同定 ( ダブルポジティブ検出 ) 骨髄系抗原 リンパ系抗原 CD33+(My) CD19+(B)

Pan-T T 細胞マーカーの反応特異性 CD3 CD2 CD5 CD7 T 細胞未熟成熟 B 細胞 NK 細胞顆粒球単球 - + - - - + + + + + + - -/+ - +/- - + - - -/+ リンパ球サブセット分析と異なり 未熟な T 細胞も分析対象となる白血病タイピングでは CD3 のみでは不十分 複数のマーカーを分析し総合的に判断

Biphenotypic Acute Leukemia 鑑別スコアリングシステム (EGIL) B 細胞系,T 細胞系のいずれかと骨髄細胞系が 2 ポイント以上であれば BAL ポイント B 細胞系 T 細胞系骨髄細胞系 2 1 0.5 CD79a CD3 MPO IgM TCR-α/β (Lysozyme) CD22 TCR-γ/δ CD19 CD2 CD13 CD10 CD5 CD33 CD20 CD8 CD65 CD10 CD117 TdT TdT CD14 CD24 CD1a CD15 CD7 CD64 Bene MC, et al.: Leukemia (1995) vol. 9, 1783-86. Bene MC, et al. : Blood (1998) vol. 92: 596-599.

FCM によるタイピングが困難な検体 溶血 凝固の顕著な検体 ( 腫瘍細胞の生残率低下 凝集 ) 採血後著しく時間が経過している検体 ( 腫瘍細胞の生残率低下 ) 検体中の腫瘍の割合が低い検体 ( 正常細胞と腫瘍細胞との分別が困難 ) 大部分のマーカーは正常細胞にも分布 散乱光強度が大きく違わない場合 正常細胞と腫瘍細胞を区別できない 細胞形態の情報やゲーティングが重要

CD45 蛍光強度によるゲーティング CD45= 白血球共通抗原 (LCA) 白血球 = 陽性 リンパ球 = 強蛍光 単球, 好酸球 = 強 ~ 中蛍光 好中球 = 中 ~ 弱蛍光 好塩基球, 造血幹細胞 = 中 ~ 弱蛍光 赤血球, 血小板 = 陰性 FS/SS と CD45/SS を併用

白血病細胞の CD45 ゲーティング 急性白血病細胞は CD45 発現がしばしば低い 散乱光では正常リンパ球 単球と区別困難な白血病細胞を CD45 の蛍光強度で分別 FS Mo Gr CD45 Ly Mo Gr Ly SS SS

急性白血病細胞 CD45 ゲーティング例 (ALL 患者末梢血 CD10-FITC/CD19-PE/CD45-PC5) FS/SS CD45/SS

CD45/SS ゲーティングが 有効でなかった例 CD45/SS CD45 λ SS κ FS/SS FS λ SS κ 悪性リンパ腫患者末梢血 κ-fitc/λ-pe/cd45-pc5

蛍光 /FS 2パラメータ解析による正常細胞と白血病細胞の分別 白血病細胞 (FS= 大 ) 正常リンパ球 (FS= 正常 ) 検体 : 健常者末梢血に KM3 細胞株 (B 細胞性白血病由来 ) を混合

CD19 ゲーティングによる免疫グロブリン κ 鎖 /λ 鎖の分析例 検体 : 健常者末梢血 CD19 で B 細胞のみにゲートすることで 血漿由来の免疫グロブリンの影響を最少化

骨髄腫細胞の CD38 ゲーティング例 多発性骨髄腫患者骨髄 CD49e-FITC CD56 -PE CD38 -PC5 CD38 SS CD56 CD49e CD38 は様々な細胞に発現 形質細胞 / 多発性骨髄腫細胞は CD38 が強陽性 CD56 CD49e

造血幹細胞 / 造血前駆細胞の測定 有核細胞の 0.01%( 正常末梢血 )~1%( 骨髄, 臍帯血 ) 造血幹細胞 全ての血液細胞の源 造血前駆細胞 特徴 CD34: 陽性 CD45: 弱陽性 巨核球 赤芽球 顆粒球 側方散乱 (SS): 低 血小板 赤血球 リンパ球 単球 検体 : 末梢血,PBSCH, 骨髄, 臍帯血 T B NK 移植に十分な数かどうか? ( 少ないので高い精度が必要 )

CD34 陽性細胞測定に関する ISHAGE プロトコール CD34 陽性造血幹細胞を精密かつ正確に測定するために DR. Sutherland, et al. : J. Hematotherapy Vol. 5: 213-226, 1996 ( 通称 ISHAGE ガイドライン ) CD34 抗体の選択 (classⅢ または PE 標識 classⅡ 抗体推奨 ) CD45/CD34 の 2 カラー分析と階層化ゲーティング 白血球数 (CD45 + ) 75000 個以上で 2 回測定した平均値 M. Keeney, et al. : Cytometry vol. 34: 61-70, 1998 内部標準ビーズによる CD34 陽性細胞数の直接測定 (single-platform ISHAGE 法 ) 7-AAD による死細胞の除外 ( 生 CD34 陽性細胞の測定 )

CD34 + 細胞 ( 造血幹細胞 ) 測定 (Single -Platform ISHAGE 法 ) 絶対数測定用内部標準ビーズ CD45+ CD34+ CD45dim FS 正常 SS 低 7AAD- CD34: 陽性 CD45: 弱陽性側方散乱 (SS): 低

CD34 + 細胞 ( 造血幹細胞 ) 測定 (Single -Platform ISHAGE 法 ) CD45とCD34の階層化ゲートによる絞込みで精密測定 (1~4) 絶対数測定用内部標準ビーズによる直接測定 (7) 7-AAD 核染色による死細胞除去 ( 生 CD34 + 細胞 ) 測定 (8) 1 2 5 6 3 4 8 7 検体 : 骨髄

ISHAGE プロトコールの拡張 第 3 蛍光, 第 4 蛍光チャンネルの活用 DNA 色素 (7-AAD) の併用 CD34 + 細胞の亜分画測定 T 細胞 (CD3 + ) の同時測定

CD58 による白血病微少残存腫瘍検出 Chen J-S J S et al.: Blood (2001) vol. 97, 2115-2120. 2120. CD58(LFA-3) は 正常骨髄 B 前駆細胞にほとんど発現しないが 同じステージ (CD10 + CD19 + CD34 + ) の白血病細胞には過剰発現 治療後の骨髄の残存腫瘍細胞をマルチカラー FCM で高感度に検出染色体 遺伝子異常の有無に関係なく適用可能と考えられる

白血病 / リンパ腫タイピング検査の動向 リンパ腫や多発性骨髄腫への拡張 マルチカラー化 効率化 CD45 ゲーティング法 MRD( 微少残存腫瘍 ) の高感度検出 ( 再発モニタリング ) 細胞質内マーカーの併用 方法の標準化と自動化 CD79a CD45 ゲーティング MPO

FCM 検査の標準化の現状 外国 : 各種ガイドライン, 推奨パネル, 共通プロトコル 日本 : JCCLS ガイドライン 1 リンパ球表面抗原検査 (JCCLS H1) 改訂版 ( 最終版 ) 承認 2 造血器腫瘍細胞表面抗原検査 (JCCLS H2) 委員会案公開中 3CD34 + 細胞測定委員会案検討中 サイトメトリー学会 : DNA 量 ( 細胞周期 ) 解析学会案検討中 小児白血病免疫診断標準化ワーキンググループ ( 厚労省研究班 )

日本臨床検査医学会 HP にて JCCLS ガイドライン H2-P へのコメント募集中 http://www.jscp.org/news/release/relid=200411101.htm

FCM 検査の精度管理の現状 内部精度管理 コントロール血球は複数メーカーより入手可能精度管理用ツール (L-Jチャート等) 自動作成 外部精度管理 公的機関によるサンプルサーベイ : CAPサーベイ ( 米 ) メーカー運営の外部精度管理プログラム : IQAP( 日本 )

臨床検査における FCM の位置付け 3 大アプリケーションは血球計数検査の拡張 造血幹細胞 造血幹細胞移植をサポートする CD34 陽性細胞測定 白血病 / リンパ腫細胞の由来を調べる 白血病 / リンパ腫タイピング 血球計数 リンパ球 血小板赤血球白血球 リンパ球の働きを調べる リンパ球サブセット分析

詳細 最新情報はサイトメトリー Web サイトへ http://www.bc-cytometry.com