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LCD( 基礎編 ) 東京工業大学有機 高分子物質石川謙 全体の構成 液晶 ネマチック液晶の物性 複屈折物体と偏光 液晶表示装置 付録 1

液晶 物質の3 態 位置と方向の長距離秩序 3 種類の融解過程 柔軟性結晶 ネマチック液晶 1 次元固体とスメクチック液晶 不斉分子の効果 物質の 3 態 P-T 相図 超臨界流体 圧力 P 結晶 三重点 液体 臨界点 気体と液体の違いは密度のみで 対称性には違いはない 結晶は長距離の並進対称性がある点で 液体 気体と違う 気体 温度 K 2

結晶の長距離秩序 位置秩序 方向秩序 半導体やイオン性結晶では多くの場合原子の方向性は意識されない 異方的な有機分子では方向の長距離秩序も重要である 物質の融解 通常の融解過程では 位置の秩序と方向の秩序は同時に失われる 原理的には位置の秩序と方向の秩序が同時に失われる必然はない 実際 球形に近い分子には 加熱により方向秩序が失われた後も位置の秩序が保たれる場合 棒状や円盤状の分子には 加熱により位置の秩序が失われた後も方向の秩序が保たれる場合がある 3

柔軟性結晶を経る融解過程 結晶柔軟性結晶液体 位置秩序 方向秩序 液晶を経る融解過程 結晶液晶液体 位置秩序 方向秩序 方向秩序は存在し 位置秩序を失った状態が ( ネマチック ) 液晶である 4

液晶と柔軟性結晶 結晶 3 次元周期構造方向秩序有 液晶 0 次元周期構造方向秩序有 柔軟性結晶 3 次元周期構造方向秩序無 液体 0 次元周期構造方向秩序無 3 次元の周期構造が一気に 0 次元になる必然はない 液晶になるもの N Anisylidene-p-aminophenylacetate(APAPA) K-81.5-N-108-Iso N N n 芳香族ポリアミド ( 硫酸溶液中 ) 棒状高分子 ( 主鎖型 ) N p-methoxybenzylidene-p'-butylaniline(mbba) K-20-47-Iso 棒状低分子 α へリックス DNA 円盤状低分子 K - 154 - Dr - 183 - ND - 227 - Iso 要するに適度に細長いか平べったいもの 加熱過程で液晶になるのをサーモトロピック 溶液で液晶になるのをライオトロピックという 5

融解過程での半端な重心秩序 結晶 1 次元結晶液体 位置秩序 方向秩序 1 次元周期構造と 2 次元周期構造 1 次元周期構造 ( 層構造 ) スメクチック液晶 2 次元周期構造 ( カラム構造 ) ディスコチックカラムナー液晶 6

スメクチック液晶の内部分類 2 次元液体相 ( 層内無秩序 ) ヘキサチック秩序相 ( 層内方向秩序のみ ) 異方的柔軟結晶相 ( 層内位置秩序あり ) 詳細は スメクチック液晶の研究を学術的にやるのでなければ 知らなくても全く困らない 6 方晶から斜方晶へ 分子長軸は層法線方向に平行 SmA SmB(HexB) SmB(CryB or SmL) SmE(CryE) 分子長軸が層法線に対して傾く SmF(HexF) SmG(CryG) SmH(CryH) SmC SmI(HexI) SmJ(CryJ) SmK(CryK) 分子キラリティ ( 掌性 ) の効果 S 体 光学異性体 ( 鏡像異性体 ) R 体 液晶分子がキラル構造を持ちラセミ体ではないと 巨視的に鏡映面を持たなくなる鏡映面を持たなくなると ねじれ ( ラセン ) 構造が許容となる 7

不斉構造とねじれ 正面 側面 側面 正面 上面 上面 平行配置 ねじれ配置 2 つのラセンをねじって重ねるとたいがいにぶつからずに近づける キラルネマチック ( コレステリック ) 液晶 全ての方向にねじれるとねじれ方向が矛盾する場所が出現してしまう ラセン軸 ねじれを 1 方向に制限すると欠陥なしに空間を重点できる コレステリック液晶 8

コレステリック液晶の特性反射 相対反射率 400 500 600 700 800 波長 ( ナノメートル ) コレステリック液晶は 1 次元周期構造を持ち その周期が可視光程度だと周期構造由来の ブラッグ反射 ( 構造色 ) を示す 液晶温度計 ちなみに 上のスペクトルはコレステリック様構造を持つコガネムシの鞘翅の反射 これらのコガネムシからの反射光は円偏光になっている 右円偏光板を通して観察 9

液晶 0 次元重心秩序系 ネマチック液晶 キラルネマチック液晶 ( コレステリック液晶 ) ディスコティックネマチック液晶 1 次元周期構造系 スメクチック液晶 SmA,SmB,SmC バナナ型スメクチック液晶 B1,B2,B3 2 次元周期構造系 ディスコチックカラムナー相 3 次元周期構造系 キュービック相 各種ブルー相 結晶と液体の中間には驚くほど多様な中間状態が存在する 現時点で応用的に最も重要なのはネマチック液晶 ネマチック液晶の特徴的な性質 異方性 複屈折の存在 誘電異方性 外場に対する応答 復元力の存在 流動性 低電圧駆動 自己修復性 易製造工程 支持体の必要 柔軟基板への適合性の低さ 液晶表示装置は液晶の異方性と流動性を巧に組み合わせて用いている 10

液晶分子とネマチック相の異方性 液晶分子 ネマチック液晶 α z ε z α y ε y α x ε x α α α α z y x z ε ε=ε z y x 分子の対称性は C 1 程度 一方ネマチック液晶は円筒対称性 (D ) を示す 円筒対称性が成立する条件 頭が上の分子と 頭が下の分子が同数いる 分子長軸回りに特定の配向は存在しない 左に図は長軸回りに 4 つの方向しか描いていないけれど 実際のネマチックではアボガドロ数の分子が連続して分布している これらの 2 つは 実際のネマチック液晶に関する実験結果から結論された物であり 第 1 原理から要請されたものではない ( 例外が存在する ) 11

通常のネマチック液晶 n=-n なので 頭に矢印 ( ) を付けない n 配向の程度は完全からはかなり遠い 液晶の巨視的な異方性は配向の程度に大きく依存しており どの程度並んでいるかは極めて重要 偏光顕微鏡で暗くなるところは n が偏光子か検光子に平行 n: 配向ベクトルディレクターと発音する人とダイレクターと発音する人がいる 液晶相を安定化する要因 異方的な引力斥力 ( 排除体積 ) U=F(R, θ) 8LD 2 2D(L+D) 2 異方的なポテンシャルがあるから 液晶状態が存在する ポテンシャルの形状が分かれば 配向分布を計算できる しかし 第 1 原理からポテンシャルを計算することはできていない 12

分子配向を決める因子 配向軸からθ 傾いた時にどれだけエネルギーが不利になるかで配向分布が決まる π sinθ - Δ ε(θ) kt P( θ)= 2 e Δε(θ) 2 π sinθ e - kt dθ Δε(θ) 残念ながら未知 `sinθ f(θ ) exp(-δ E kt) / 0 π 2/ θ 実験による配向分布の測定 θ Absorbance(arb.units) 0 90 180 270 360 θ ncos i 2 θ i 分子の長軸方向に偏光した光のみ吸収されるとする この時 偏光面と分子の長軸の角度をθとすると 吸光度 Absは Abs cos 2 θ となる N 個の分子からなる系での吸収の角度依存性は 個々の分子の吸収の和なので ncos 2 i θ i となる 但しn i は角度 θ i の分子の個数である つまり 吸収異方性では分布 n i (θ) に cos 2 θ で重みがついた分布平均 <cos 2 θ> しか分からない 13

<cos 2 θ> に依存する物性 屈折率異方性 誘電異方性 磁気感受率異方性 吸収異方性 ( 弾性定数 ) 実用上重要な物性は 液晶の配向分布ではなく <cos 2 θ> に依存している それ故に 配向分布が分かっていなくても <cos 2 θ> 分かっていれば大丈夫なことが多い 2 次の配向秩序度 1 P= <3cos 2 2 θ -1> 2 P2=1 1>P2>0 P2=0( 多分 ) θ=90でp2=-1/2になる これは (nをz 軸として )xy 平面内に分子長軸がランダムに分布している状態に対応する 現実の液晶でP2が0 以下の状態は見付かっていない 14

配向秩序度の温度依存性 1 N 液晶相 等方液体相 配向秩序度 0.5 * β P=a(T-T) 2 0 T N-IS T * 温度 T/K 等方相 -N 相相転移は潜熱の小さい 1 次転移で 2 次転移的な様相を示し オーダーパラメータは温度低下にともない上昇する P 2 =0.7 程度の配向イメージあんまりキチンとは並んでいない 配向秩序度と異方性 1 Χ// =N< χ // >= [ Χ (2P +1)+ (2-2P )] 3 l 2 Χ t 2 1 Χ =N< χ >= [ Χ (1-P )+ (2+P )] 3 l 2 Χ t 2 - =( - ) P = P Χ // Χ Χ l Χ t 2 ΔΧ 2 局所場を考えなくてもよい物性値 ( 磁気異方性 ) では 完全に並んだときの異方性にオーダーパラメーターを掛けるとその状態の異方性となる 15

局所場を考えた異方性 ε // -1 N = { α ( 2P +1) + ( 2-2P )} +2 9 ε l. 2 α t 2 0 ε av ε -1 N = { α ( 1-P ) + ( 2+P )} +2 9 ε l. 2 α t 2 0 ε av 誘電率の平均値で空洞場を計算する近似では等方状態と類似の関係が得られるただし 使うにあたっては慎重さが必要 ( さらに 分子の永久双極子も考慮されてない ) Δn ρ 1/2 P2 屈折率異方性は密度が変わらなければ近似的にオーダーパラメータに比例する 第 1 近似としては 異方性は分子の異方性 オーダーパラメータ 固体の弾性と液体の弾性 固体 拗り 液体 曲げ 形状の変化に対しては復元力はない 引っ張り 捻り 曲げ 引っ張り 体積変化に復元力が働く 体積変化に対しては復元力が働く 16

ネマチック液晶の弾性 外形の変化復元力無 配向ベクトルの均一な変化復元力無 体積の変化復元力有 配向ベクトルの不均一な変化復元力有 変形モードと弾性定数 スプレイツイストベンド dnx/dx dny/dx dnx/dz dnx/dx, dny/dx, dnz/dx,,,,,,,,, dnz/dz と 9 つの変形パターンがある これらのうち dnz/ の 3 つは z 方向の n の変化は配向秩序の変化になるので 配向ベクトルの方向変化ではないので 考えない 残る 6 つの要素と 力の方向のバリエーションを考えると すごく沢山の弾性定数 ( 固体の引っ張りとか曲げに対応するもの ) があるけれども 液晶の対称性からそれらは整理されて最終的に 17

ネマチック液晶の弾性定数 1 1 1 F= K( n) +2 K[n( n)] 2 +2 K[n ( n)] 2 2 3 e 1 2 2 K1( スプレイ ) K2( ツイスト ) K3( ベンド ) の 3 つの独立な弾性定数がある スプレイツイストベンド dnx/dx dny/dx dnx/dz 液晶の弾性定数 ( 比 ) は 表示装置の閾特性や配向の安定性を支配する 系がキラルだと自由エネルギーの第 2 項に有限のツイスト ( ラセン ) をもたらす項が加わる ネマチック液晶の粘性 液晶の粘性は表示装置の応答速度に影響を及ぼす重要な物性定数である 異方性を反映して 5 つの独立な粘性係数がある 5 つの粘性係数の評価は楽ではなく 定常流動における 3 つの粘性係数や 表示装置の応答速度に関連する回転粘性 ( これらは 5 つの粘性係数の線形結合で表記できる ) で粘性を評価することが多い 18

物性と表示デバイスの関係 複屈折 セル厚 コントラスト 誘電異方性 駆動方式 駆動電圧 弾性定数 閾特性 表示安定性 応答速度 粘性係数 応答速度 電気抵抗 表示安定性 アンカリング強度 表示安定性 表示方式により 要求されるポイントが異なる このため 方式毎に異なる分子設計がなされる 液晶セルの主な配向状態 水平 ( ホモジニアス ) 配向垂直 ( ホメオトロピック ) 配向ねじれネマチック ( TN) 配向 単結晶的な状態を作り出す必要がある 上記の 3 種類の配向様式は 何れも液晶表示装置で使われている 表示装置における液晶の配向制御の基本は界面での方向制御 19

界面での配向制御 外場による配向 電場 磁場 液晶セル界面による配向制御 水平配向 配向補助剤 + ラビング 配向補助剤 + 光照射 斜法蒸着 イオン斜方照射 垂直配向 自己組織化膜 ( 界面活性剤 ) 配向補助剤 斜め配向 斜法蒸着 配向補助剤 + ラビング 水平配向処理 基板洗浄 配向補助膜塗布 種々のポリイミド誘導体製造プロセスではスリットコーター ローラー転写が主流 かつては多くの水平配向処理剤が提案された 最終的にポリイミドが生き残っている ラビング回転ローラーに巻いた布で擦る 光配向処理 直線偏光を照射 スループットはラビングが一番ゴミ 静電気 ムラなどの点から光配向 イオン照射が検討されている 配向補助膜蒸着 イオン斜入射照射 DLC 薄膜のスパッタ 20

ラビング法 * N N n * 基板ガラス板 ラビングローラー どんな布を使うか どのくらいの速度でローラーを回転するか等は各企業のノウハウ 配向機構 : 機械的に形成される微小な溝高分子フィルム表面の配向と 高分子フィルムと液晶の異方的相互作用 配向機構は現在でも完全に解明されたわけではない 水平以外の配向処理方法 垂直配向 気体界面 適当な配向補助膜 シランカップリング材 自己組織化膜 垂直配向用ポリイミド 斜め配向 斜め蒸着 適当な配向補助膜 + ラビング 垂直配向用ポリイミドは VA 方式の出現により開発された 斜め配向用ポリイミドも 斜め配向を必要とする 表示方式の存在故に開発されつつある ただし 現状では最終的な製品は出現していない ( かもしれない ) 21

ネマチック液晶の特徴的な性質 異方性 複屈折の存在 誘電異方性 外場に対する応答 復元力の存在 流動性 低電圧駆動 自己修復性 易製造工程 支持体の必要 柔軟基板への適合性の低さ 液晶表示装置の理解には複屈折物体と偏光の関係を理解する必要 偏光板と複屈折のデモ 22

BBBA SmG 相 等方物質と異方的物質 等方物質屈折率は光の方向によらず一定 ガラス 食塩 螢石 水 空気 流体 歪みのないアモルファス 対称性の高い結晶 異方的物質屈折率は光の方向 偏光状態に依存 方解石 水晶 石綿 延伸した高分子 液晶 対称性の低い結晶 歪みのあるアモルファス 配向した分子集合体 異方的物質には 1 軸性物質と 2 軸性物質がある ネマチック液晶は 1 軸性物質なので ここからの話は 1 軸性物質に限定して話をすすめる 23

常光と異常光 n x =n y n z Z 軸に垂直な偏光の屈折率は光線の方向によらず一定 (nx) 常光 (no) n =n o n= // none 常光 2 nsin 2 2 o θ+ncos 2 e θ 異常光 Z 軸に平行な偏光の屈折率は光線の方向に依存し変化する 異常光 (ne) n= // nsin n n o e 2 2 2 o θ+ncos 2 e θ 光軸 ( 偏光方向によらず 屈折率が一定の方向軸 ) 光軸が入射光方向に斜めな場合 異常光 常光 基板面に対して光軸が傾いていると 垂直入射の光に対して異常光は有限の角度で進むようになる 24

光軸に垂直に入射する場合 光軸 透過容易軸を直交させた偏光板の間にセロテープを入れると光が透過する これは セロテープが複屈折性を有するためである 光軸と偏光子の軸の角度と透過強度 θ P A I/I 0 =sin 2 (2θ) 位相差による透過光変化の式と組み合わせると I/I 0 =sin 2 (2θ) sin 2 (πr/λ) R はリターデーションと呼ばれる値でセロテープの枚数に比例 25

リタデーション t=0 t=dno/c t=dne/c d d(1-no/ne) d(ne-no) 複屈折物体を通過後の 2 つの固有偏光の間の波面のずれをリタデーション ( レターデーション ) と言う リタデーション R と波の位相差 δ の間には δ=2π(r/λ) という関係が成立する 複屈折物体を通過する光 R=(ne-no)d δ=2πr/λ x 成分 同位相 n=no 厚み D λo=λ/no 異位相 リタデーションがあると位相差が生じる y 成分 n=ne λe=λ/ne n=1 λ ( 空気中 ) セロテープ n=1 λ ( 空気中 ) 2 つの偏光の位相がずれるために 合成された光の状態が変化する このため 直交偏光板間に複屈折物質を入れると透過光が出る 26

直線偏光と楕円偏光 t sin(kz-ωt) 2π/ω 3π/2ω π/ω π/2ω 0 0 7π/4ω 3π/2ω sin(kz-ωt+δ) π/4ω π/2ω 3π/4ω π/ω 5π/4ω 楕円偏光 位相差 δ があると楕円偏光になる 直線偏光 位相差と楕円率変化 0 π/4 π/2 3π/4 7π/4 3π/2 5π/4 π 2 つの直線偏光成分の大きさが等しい場合には途中で円偏光となる 27

位相差と透過光量 楕円率の変化で透過光量も変化 1 12 10 1 0.9 0.8 I/I0 位相差 /π 8 6 4 2 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 透過光量 0 0 π/2 π 3π/2 2π δ 0 0 300 400 500 600 700 800 波長 /nm 位相差 透過光量 位相差は波長に依存するので波長依存性が出る 干渉色と干渉色図表 リタデーションは膜厚に依存位相差はリタデーションと波長に依存透過光量は位相差に依存 膜厚に応じた特徴的な透過スペクトル 28

液晶を用いた表示デバイス 液晶による表示デバイスの基本的な手法 外場による液晶の配向方向変化 液晶の配向変化にともなう 偏光状態の変化 外場がFFになった後の 液晶の配向弾性による初期状態への復帰 カラー化を考えると 液晶セル自体は白 - グレー - 黒の階調性を持ち それがカラーフィルターと組み合わさる方が 液晶セル + 干渉色で色を出すよりも はるかに筋がよい 液晶を使った表示の欠点 利点 欠点 他の FPD 方式のプレゼンテーションをご覧下さい 利点 連続体理論で扱える対象であること 有機物の電子励起状態を使わないこと セル内が真空ではないこと 後 2 つは液晶セルの寿命に大きく関与 29

有機光電子材料の安定性 反結合性軌道 C 原子軌道 C 励起状態の化学的な表現 結合性軌道 電子励起状態は 化学的には反応中間状態 容易に 周辺の他の分子や空気中の酸素等と反応できる状態になっている 液晶表示方式の変遷 セグメント表示 単純ドットマトリックスアクティブマトリックス DS GH TN STN IPS VA 強 反強誘電 高分子分散 70 80 90 00 30

DS 方式 V=0 均一配向透過性良 V>Vt ランダムドメイン散乱大 電場によるセル中のイオンの運動により液晶の配向を崩して動的散乱 (Dynamic Scattering) が生じる 電流駆動デバイスである GH 方式 ゲスト (2 色性色素 )- ホスト ( 液晶 ) 系の電場によるスイッチで表示液晶の P 2 がコントラストの制限を与える 偏光板が無くてもコントラストは出るが 偏光板 1 枚と組み合わせることが多い 31

TN(Twisted Nematic) 方式 電圧 =0V 偏光面が 90 度回転 電圧 > 閾値偏光面は不変 実際の TN ではこんな具合に直線偏光が回転しているのではない TN が主流になった理由 対 DS モード 低消費電力 低電圧 耐久性 視野角特性 明るさ 対 GH モード コントラスト 耐久性 白黒表示 カラー化 明るさ 他デバイス ( ニキシー管 LED) と比較しての優位性 : 低消費電力 低動作電圧 液晶表示が発達した理由 :CMS の発達 デジタルデバイスの普及 32

セグメント表示 マトリックス表示 時計 電卓定まった記号のみ表示可 信号電極走査電極カラー表示方法 多彩な文字が表示可 ワープロ 1 行画面など 3 原色フィルターによる加色混合液晶自体は白色光のスイッチを行う 33

クロストークと STN マトリックス駆動で走査電極が増えると 電極間のクロストークで 選択画素と非選択画素間の電圧差が減少するし また 電圧印加時間も減少する 閾特性が急峻でないと コントラストの高い表示ができない スーパーツイステッドネマチック (STN) 液晶の発明と台頭 STN: ツイスト角が 270 度近傍に設定した液晶セル 基本的に複屈折のコントロールで N-FF 制御する TN に比べて敷居特性が急峻 アクティブマトリックスによりクロストークの問題は解消 液晶セルの TN 回帰 アクティブマトリックス駆動 信号電極 蓄積電極 蓄積容量電極 透明導電膜 アクティブマトリックスにより クロストークが無くなる 走査中も電圧が印加し続けられる ゲート電極 アクティブマトリックス用液晶材料には 電圧保持率が高いことが求められる 34

液晶セルの構成 ハードコート層 ノングレア層 反射防止層 偏光板 ブラックマスク ガラス基板スペーサー ソース電極ドレイン電極アモルファスシリコンゲート絶縁層ゲート電極 液晶 蓄積層絶縁膜蓄積電極 カラーフィルター ガラス板偏光板散乱層導光板 反射板 保護層ポリイミド配向膜 透明電極 現在の主戦場はセルの外側 位相差補償フィルム TN の視野角特性 ( 基底状態 ) 真横 違った配置に見えると透過光も異なる 横斜め上 斜め斜め上 35

TN の視野角特性 ( 中間状態 ) 真横 横斜め上 斜め斜め上 視野角特性の向上 位相差フィルムによる補正 非 TN 型表示方式 IPS 方式 VA 方式 セル分割化 LCD 開発 ( 本日 11 時半より ) のメインテーマ 36