製品コード MK137 研究用 Mouse IgG EIA Kit 説明書
生体防御のひとつ 液性免疫の主役となる抗体 : 免疫グロブリン (Ig) は動物体内では 5 種類のクラス (IgG, IgA, IgM, IgE, IgD) が存在し 血液中で 80% を占めるのが IgG クラスです 血液中の IgG は 免疫応答によりその含有量は大きく変動しますが 一般的に 3 ~ 10 mg/ml という高濃度で存在していることから これらは これまで高感度 ELISA が必要となるような測定対象ではありませんでした しかし近年 モノクローナル抗体作製技術の一般化により 様々なタイプのイムノグロブリンが高純度の分離タンパクとして得られ それらを主成分とした薬剤や研究用試薬が市場に出現しました また 均一なタイプの免疫グロブリンであるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞そのものも 多方面の研究機関で取り扱われるようになり これらの抗体製品や細胞製品の品質評価には 高感度な免疫グロブリンの定量系が必要となってきました 本製品は Mouse IgG に特異的なポリクローナル抗体を用いた定量キットで マウス血液中の抗体測定に使用できるほか モノクローナル抗体を用いた薬剤や研究用試薬の品質検定 またハイブリドーマ細胞の抗体産生能モニタリング等に応用できます ( すでに捕捉用抗体をプレート器材に固相化してありますので 測定したいときにすぐに使用できます ) 全測定時間はわずか 60 分と非常に短時間で感度 再現性よくマウス免疫グロブリンを検出できるように用法用量を設定しました I. 測定原理 II. キットの内容 (96 回用 2) (1)Antibody Coated Microtiterplate 抗 Mouse IgG ポリクローナル抗体 (96 ウェル :8 ウェル 12 strips) 2 plates (2)Antibody-POD Conjugate ペルオキシダーゼ標識抗 Mouse IgG ポリクローナル抗体 ( 凍結乾燥品 ) 11 ml 用 2 (3)Standard( 陽性コントロール ) 精製 Mouse 免疫グロブリン 640 ng( 凍結乾燥品 ) 1 ml 用 2 (4)Sample Diluent 25% Block Ace 含有 PBS 含防腐剤 60 ml (5)Substrate Solution(TMBZ) 3, 3, 5, 5 テトラメチルベンジジン溶液 12 ml 2 III. キット以外に必要な試薬や器具 ( 主なもの ) Wash and Stop Solution for ELISA( 製品コード MK020) 洗浄液成分 (10 PBS;50 ml 5 本 Tween 20;3 ml) と反応停止液 (1N H2SO4 * ; 60 ml) を含む *: 1N 硫酸は腐食性があり 皮膚に接触するとただれ等を起こすことがあります 手や粘膜についた場合は ただちに多量の水で洗い流し 医師の指示に従ってください ピペット マイクロピペットおよびチップ マイクロプレートリーダー (450 nm 設定で吸光度 3.5 まで測定可能なもの ) IV. 保存 4 2
V. 使用目的 血清中のマウス免疫グロブリン量の測定ハイブリドーマ培養上清中のマウスモノクローナル抗体濃度の測定 VI. 使用方法 1. 検体 検体はマウス血清および血漿 またはマウスハイブリドーマ培養上清 腹水等を用いる 検体は 2 ~ 10 に保存し 12 時間を過ぎて測定する場合は凍結保存する 希釈が必要な場合は (4)Sample Diluent を用いて希釈する 正常マウス血清検体の場合 標準では 1,000 ~ 10,000 倍希釈して用いるとよい マウスハイブリドーマ培養上清の場合 標準的な場合で 10 ~ 500 倍希釈して測定するとよい ( 細胞株により抗体産生量に差があることから予備測定が必要 ) 2. 試薬調製 抗体プレート ((1)Antibody Coated Microtiterplate) 使用前に室温に戻してから開封する Mouse IgG 標準液 (3)Standard は 蒸留水を 1 ml 加えて溶解し Mouse IgG 標準液 (640 ng/ml) とする 定量目的で検量線を作成する場合は これを (4)Sample Diluent で用時段階希釈して 640 320 160 80 40 20 10 ng/ml の各濃度の標準液として使用する 0 濃度は (4)Sample Diluent を用いる Mouse IgG 標準液は 4 保存では一週間安定で - 20 保存では 1 ヵ月安定である * *: IgG サブクラスにより検出力が異なりますので 正確な定量には独自で設定した IgG 標準品を用いた測定を行ってください 標識抗体液 (2)Antibody-POD Conjugate を蒸留水 11 ml で溶解する 溶解後一週間は 4 で安定である それ以上保存する場合には - 20 で凍結する その場合 1 ヵ月は安定である ただし 凍結は一度までにとどめる 基質液 ((5)Substrate Solution(TMBZ)) 反応に用いる前に室温にもどし そのまま使用する 使用前に基質液が濃い青に変色していないか確認する 金属イオンと反応すると呈色するおそれがあるので 特に水道水が混入しないよう注意する 数回に分けて使用する場合はあらかじめ必要量を取り分けるようにする 洗浄液 (0.1% Tween 20 含有 PBS) * Wash and Stop Solution for ELISA の 10 PBS 1 本 (50 ml) を蒸留水で 500 ml に希釈する Tween 20 を 500 μl 添加する 充分に混合後 洗浄液として使用する ( 用時調製 ) 反応停止液 * Wash and Stop Solution for ELISA の Stop Solution(1 N H2SO4) をそのまま使用する 強酸性のため取扱いには注意する *: 洗浄液および反応停止液は 本キットには含まれていません Wash and Stop Solution for ELISA( 製品コード MK020) を用いて調製してください 3
3. 操作法 < 標準プロトコール :Total 1 hour Assay protocol > 測定は二重測定で行う キット中の各試薬ならびにサンプルは使用前に室温にもどし 泡立てないように混和し 液を均一にしてから用いる (1) 各濃度の標準液およびサンプルを 100 μl ずつマイクロピペットで各ウェルに 2 連ずつ加え 室温 (20 ~ 30 ) で 25 分反応させる 標準液およびサンプルはあらかじめ別の 96 穴プレートを利用して用意し 8 連ピペット等ですみやかに (5 分以内 ) 投入する プレート内の測定値の信頼を高めるためにも 1 列目と 12 列目とに標準液の希釈系列をおくとよい ( 第一反応 ) (2) 反応液を捨て 0.1% Tween 20 含有 PBS で 3 回洗浄後 標識抗体液を 100 μl ずつ 8 連ピペットで各ウェルに加え 室温 (20 ~ 30 ) で 25 分反応させる ( 第二反応 ) (3) 反応液を捨て 0.1 % Tween 20 含有 PBS で 4 回洗浄後 (5)Substrate Solution(TMBZ) を 100 μl ずつ 8 連ピペットで各ウェルに加え 室温 (20 ~ 30 ) で 10 分反応させる ( 第三反応 ) (4) 反応停止液 (1N H2SO4) を 100 μl ずつ (5)Substrate Solution(TMBZ) を入れた順番に各ウェルに加え 反応を停止させた後よく混和する (5) 蒸留水を対照としてゼロ調整し 波長 450 nm で吸光度を測定する 発色は反応停止後一時間までは安定である (6) グラフ用紙の横軸に各標準液の濃度を 縦軸に対応する吸光度をプロットして標準曲線を作成し 検体の吸光度から対応する Mouse IgG 濃度を読み取る < 高感度プロトコール > 検出感度を高くしたい場合は 標準プロトコールを以下のように変更して反応時間を延長してください 検量線の測定領域が向上し 検出限界が 5 ng/ml になります (VI. 性能 7. 反応時間延長による検出感度の向上参照 ) < 標準プロトコール> < 高感度プロトコール> 標準液の作製 640 ng ~ 10 ng 320 ng ~ 5 ng 第一反応 25 分 2 時間 第二反応 25 分 1 時間 第三反応 10 分 15 分 4
VII. 性能 1. 標準曲線 (Mouse IgG EIA Kit) 下記の標準曲線は代表的な一例である 各ロットの標準曲線については 添付の Certificate of Analysis に記載している 正確な結果を得るためには 測定ごとに標準曲線を作成することが望ましい Mouse IgG 濃度 (ng/ml) 640 320 160 80 40 20 10 0 A450 2.679 1.304 0.532 0.230 0.122 0.080 0.064 0.045 2. 再現性 < 同時再現性試験 (n = 16)> マウスハイブリドーマ培養上清を希釈して作製した 3 種類の濃度コントロールを用いて再現性試験を実施した 検体 (n = 16) 平均値 (ng/ml) 標準偏差 (ng/ml) CV(%) コントロール A コントロール B コントロール C 402.61 110.31 57.20 16.421 8.785 3.708 4.1 8.0 6.5 < 日差再現性試験 (n = 3)> 三日間にわたり 3 種類の濃度コントロールの定量を行い 再現性試験を実施した 検体平均値 (ng/ml) 標準偏差 (ng/ml) CV(%) コントロール A コントロール B コントロール C 379.67 102.69 57.00 18.466 5.565 4.008 4.9 5.4 7.0 5
3. 添加回収試験 さまざまな濃度の検体サンプルを等量ずつ混合し 予想される理論値と実測値とから回収率を調べた サンプル A サンプル B A + B/2( 実測値 ) A + B/2( 理論値 ) 回収率 (%) 328.99 174.66 264.1 251.8 104.9 328.99 325.38 307.4 327.2 94.0 328.99 186.14 238.0 257.6 92.4 328.99 95.00 196.5 212.0 92.7 174.66 325.38 236.7 250.0 94.7 174.66 186.14 164.1 180.4 91.0 174.66 95.00 133.9 134.8 99.3 325.38 186.14 271.7 255.8 106.3 325.38 95.00 222.7 210.2 105.9 単位 :ng/ml 4. 希釈直線性 マウス血清サンプル 6 種を 10 4 より倍々希釈して定量値をプロットした希釈直線の例を示す No.1 y = 105.03x + 0.2304 R 2 = 0.9878 No.2 y = 119.96x + 2.0272 R 2 = 0.9947 No.3 y = 128.64x + 4.8745 R 2 = 0.9956 No.4 y = 276.17x + 14.58 R 2 = 0.9997 No.5 y = 289.59x + 21.644 R 2 = 0.9991 No.6 y = 485.74x + 30.363 R 2 = 0.9996 6
5.Mouse IgG 各サブクラスに対する検出力について 各サブクラスを示すモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞の培養上清を 適宜希釈して 各マウス IgG サブクラスおよび IgM の反応性を調べた ( 表中の値は A450) Monoclonal Polyclonal Monoclonal Mouse Ig IgM IgG s IgG1 IgG2a IgG2b IgG3 原液 3.485 3.988 3.439 4.017 4.000 3.289 5 3.232 3.851 3.116 4.015 4.145 3.129 25 2.492 3.664 1.562 3.847 4.097 1.722 125 0.571 1.660 0.295 1.643 3.458 0.343 < 結果 > いずれのサブクラスに対してもシグナル確認ができた 6.BALB/c と C57BL6 マウス系統差の比較 マウスの系統と個体の違いで血中の IgG 濃度にどのような違いが出るかを調べた 対象はいずれも 8 週齢の個体を使用した 表中の測定値は 血清サンプル 10,000 倍希釈の値を示す 血中 IgG 換算濃度 (mg/ml) BALB/c-1 BALB/c-2 BALB/c-3 C57BL/6-1 C57BL/6-2 C57BL/6-3 1.098 1.219 1.377 2.954 3.216 5.325 < 結果 > 系統により定常時の IgG 濃度が大きく違うことがわかった 7
7. 反応時間延長による検出感度の向上 反応時間を延長した高感度プロトコールの場合 標準曲線の測定領域の向上がみられる 標準プロトコール第一反応 25 分 第二反応 25 分 第三反応 10 分標準曲線 :10 ~ 640 ng/ml Mouse IgG 濃度 (ng/ml) 640 320 160 80 40 20 10 0 A450 2.322 1.097 0.465 0.196 0.109 0.079 0.066 0.048 高感度プロトコール第一反応 2 時間 第二反応 1 時間 第三反応 15 分標準曲線 :5 ~ 320 ng/ml Mouse IgG 濃度 (ng/ml) 320 160 80 40 20 10 5 0 A450 3.761 1.693 0.594 0.251 0.130 0.086 0.065 0.051 8
< 結果 > 反応時間を延長すると検出限界が 5 ng/ml に向上した サンプル数が多数ある場合 および標準プロトコールのような短時間で操作を終えることがスケジュール的に困難な場合は 反応時間を第一反応 2 時間 第二反応 1 時間 第三反応 15 分の高感度プロトコールに変えて行うことができる 8. 溶血の影響 溶血の有無によってサンプルの測定が影響を受けるか検討した < 方法 > マウス全血採取後 血液を 2 分割したのち 一方を意図的に注射針内を数回通過 溶血させ その後に遠心操作により血清を調製した < 結果 > 意図的な溶血処理により赤血球成分が混入している場合と 混入していない場合を比較したところ 混入した赤血球溶血成分による極端な反応妨害はないと考えられた 希釈倍率 8 10 3 16 10 3 32 10 3 64 10 3 128 10 3 Mouse IgG 濃度 未処理 603.231 285.727 150.898 73.627 41.235 (ng/ml) 溶血処理 595.980 318.414 175.844 98.731 54.497 9.Mouse IgA 交差反応 Mouse IgA に対する交差反応を調べるために Mouse IgA 産生ハイブリドーマの培養上清を適宜希釈し 当キットで測定した 希釈倍率 吸光度 (A450) 測定値 (ng/ml) 1 1.563 508.83 5 0.601 216.53 25 0.126 46.11 125 0.064 3.68 < 結果 > Mouse IgA にも交差反応が確認された 9
VIII. 使用例 マウスハイブリドーマの IgG 産生モニタリング マウス IgG 産生ハイブリドーマのクローニング操作において 限界希釈法により細胞をシングルセルとし 抗体産生能の有無を確認するステップがある 一般に単離抗原がある場合 抗原を固相化したマイクロタイタープレートを用いた ELISA 法により抗体産生能を確認できるが 単離抗原がない抗体を産生するハイブリドーマのモニタリングは 産生した IgG の定量を行う必要がある 本キットを用いて 限界希釈したハイブリドーマ細胞の IgG 定量を行い ハイブリドーマ細胞の産生抗体モニタリングを実施した例を示す < 注意点 > 検定する培養上清を添付の検体希釈液で 一律 10 倍希釈する まきこみ細胞数が少ない場合には 希釈倍率を 5 ~ 6 倍とする場合があるが クローニング用専用培地の中に マウス Ig に交差性のあるサンプルが含まれる商品があるため 培地ブランクを必ず設定する 反応停止液 (1N H2SO4) 添加 本キットでのマウス IgG 検出例 右 : 上記と同様のフォーマットによる単離抗原を固相化したマイクロタイタープレートでの ELISA 法による活性確認テスト < 結果 > 本キットでの IgG 定量結果と単離抗原を用いた ELISA 法による結果により 抗体の産生能や存在する細胞数との相関が感度よく示された 本キットは 抗体産生ハイブリドーマのモニタリングへの応用が可能である 10
IX. 使用上の注意 1. ロット番号の異なるキット及び試薬を混ぜて使用しないでください 2. 保存もしくは反応中に試薬を強い光に当てないでください 3. (5)Substrate Solution(TMBZ) および反応停止液 (1N H2SO4) に用いるピペット等は金属が使われていないものを用いてください 4. (5)Substrate Solution(TMBZ) や反応停止液 (1N H2SO4) は手や粘膜につかないようご注意ください 5. 着色した (5)Substrate Solution(TMBZ) は使用しないでください 6. 各反応は時間 温度の影響を受けるので測定ごとに標準曲線を作成してください 7. 血液検体の取り扱いには充分注意してください 本製品は研究用として販売しております ヒト 動物への医療 臨床診断用には使用しないようご注意ください また 食品 化粧品 家庭用品等として使用しないでください タカラバイオの承認を得ずに製品の再販 譲渡 再販 譲渡のための改変 商用製品の製造に使用することは禁止されています 11
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