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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

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骨髄異形成症候群 Myelodysplastic syndrome ( MDS ) Myelo = 骨髄 Dysplastic = 形成異常の = 異形成 Syndrome = 症候群

造血幹細胞 (stem cell) 1 自己複製能 造血幹細胞 Stem cell 2 多能性 白血球系赤血球系血小板系

造血幹細胞 成熟細胞 NK 細胞 リンパ系前駆細胞 T 細胞 B 細胞 形質細胞 リンパ球 好酸球 多能性幹細胞 好塩基球 顆粒球 白血球 好中球 単球 マクロファージ 骨髄系前駆細胞 単球 骨髄 血小板 赤血球 末梢血

MDS とは 造血幹細胞に何らかの異常が生じて 正常な血液が作れなくなる病気

MDS になると 血液細胞が減少し 正常に働かなくなる ことで様々な症状が現れる

MDS が進行すると 急性白血病 へ移行するおそれがある ( 前白血病状態 ) 骨髄や血液中の芽球が一定以上に増えると 急性白血病 と診断される

MDS とは 1 遺伝子異常をもつクローン性造血幹細胞疾患 2 形態学的異形成 3 単一あるいは複数の血球系の減少症 4 骨髄における無効造血 5 急性骨髄性白血病への移行

1 遺伝子異常をもつクローン性造血幹細胞疾患 MDSは遺伝子変異によっておこるクローン性疾患であり 1) 原因が不明なものと 2) 放射線照射 アルキル化剤やトポイソメラーゼⅡ 阻害剤などの抗腫瘍薬投与 を契機に発症するものがある インターネットでみつけた画像 クローン同義 / 類義語 : クローン性完全に同じ構造の遺伝子セットを持つ一群の細胞や 個体 同じ塩基配列を持つDNA 分子の一群 アルキル化剤細胞障害性抗がん剤の代表的な薬 白血病や悪性リンパ腫などに特に効果が認められる 薬剤 : イホスファミド ( イホマイド ) シクロホスファミド ( エンドキサン ) ダカルバジン ( ダカルバジン ) ブスルファン ( ブスルフェクス ) メルファラン ( アルケラン ) ラニムスチン ( サイメリン ) トポイソメラーゼ阻害剤トポイソメラーゼのはたらきを阻害し薬剤が切断部位に入り込み再結合を阻止するため DNA が切断されたままの状態となり 癌細胞が死滅する 薬剤 : 塩酸イリノテカン ( トポテシン カンプト ) トポイソメラーゼは 細胞分裂の過程で DNA の切断と再結合を助け 二重らせん構造をときほぐすはたらきを持ち ねじれを元に戻して再結合させる

MDS で認められる染色体異常 MDS では約半数に染色体異常を認める 不均衡型染色体異常 頻度 均衡型染色体異常 頻度 +8 10% t(1;3)(q36.3;q21.2) 1% -7 or del(7q) 10% t(2;11)(p21;q23) 1% -5 or del(5q) 10% inv(3)(q21;q26.2) 1% del(20q) 5-8% t(6;9)(p23;p34) 1% -Y 5% i(17q) or t(17p) 3-5% -13 or del(13q) 3% del(11q) 3% del(12p) or t(12p) 3% del(9q) 1-2% idic(x)(q13) 1-2%

染色体検査 G- バンド法 染色体の基本構造 転座 t translocation 記号 男性 :46 XY 女性 :46 XX 起源 表現する染色体異常 del deletion 欠失 del(5) 例

MDS とは 1 遺伝子異常をもつクローン性造血幹細胞疾患 2 形態学的異形成 3 単一あるいは複数の血球系の減少症 4 骨髄における無効造血 5 急性骨髄性白血病への移行

顆粒球系の成熟過程とその形態 未分化 成熟 骨髄芽球前骨髄球骨髄球後骨髄球成熟好中球 分葉核球 核小体 核小体 杆状核球 骨髄芽球 : 核は大型円形 ~ 卵円形 クロマチン構造は点状 ~ 網状 前骨髄球 : 細胞質が少なく塩基性 核は大型円形 ~ 卵円形 クロマチン構造は網状で骨髄芽球より粗い 骨髄球 : 核は円形 ~ 卵円形 クロマチン構造はやや粗く 核小体は認めない 後骨髄球 : 核は陥凹があり 腎形を示すものが多い 核クロマチンは粗く細胞質も多い 杆状核球 : 核はソーセーシ 状または帯状 分葉核球 : 核は 1 ヶ所以上に大きなくびれ あるいは核糸で核が分けられる

赤芽球 ( 赤血球 ) 系の分化 未熟 成熟 核小体 central pallor 前赤芽球塩基好性赤芽球多染性赤芽球正染性赤芽球成熟赤血球 核周明庭 前赤芽球 : 核は大型円形 ~ 卵円形 クロマチン構造は繊細 顆粒状 核小体はあり 細胞質に乏しく濃青 塩基好性赤芽球 : 核は円形で前赤芽球よりクロマチンはやや粗く 核小体はない 核周明庭あり 多染性赤芽球 : 核は円形で偏在する クロマチンは濃く 細胞質が豊富 青色 正染性赤芽球 : 核は小型でクロマチンは濃縮し均等 細胞質は豊富でヒ ンク色 成熟赤血球 : 中央が淡染する (central pallor)

巨核球 ( 血小板 ) 系の分化 未熟 成熟 巨核球非血小板生成巨核球血小板生成巨核球成熟巨核球血小板 舌状突起 (bleb) 巨核球 : 直径 20-60μm で辺縁不規則 舌状突起 (bleb) を有するものが多い 核は単核で類円形 クロマチンは繊細網状 核小体あり 非血小板生成巨核球 血小板生成巨核球に成熟し最終的に成熟巨核球となり血小板を産生する 血小板は 2-4μm の大きさである

異形成 = 形態異常 各形態異常が 10% 以上を示すことが条件とされている ( 但し 環状鉄芽球は全赤芽球の 15% 以上で陽性 ) カテゴリー A: 骨髄異形成症候群に特異性の高い異形成 好中球系 典型的な偽ペルゲル核異常は鼻眼鏡状と表現される核を示す 低分葉好中球 ( ペルゲル核異常 ) 脱顆粒 ( 無または低顆粒好中球 ) 脱顆粒好中球は顆粒が消失したものである 巨核球系 微小巨核球 微小巨核球は前骨髄球以下のサイズで 単核または時に 2 核を示す 赤血球系 環状鉄芽球 核周の 1/3 以上に核に沿った鉄顆粒を認める または核に沿って 5 個以上の明瞭な鉄顆粒を認める

異形成 = 形態異常 各形態異常が 10% 以上を示すことが条件とされている ( 但し 環状鉄芽球は全赤芽球の 15% 以上で陽性 ) カテゴリー B: 好中球系小型または大型好中球過分葉核好中球偽 Chediak-Higashi 顆粒 巨核球系非分葉核分離多核 赤血球系核 : 核辺縁不整 核間 ( 染色質 ) 架橋 核崩壊像 多核赤血球 過分葉核赤芽球 巨赤芽球様変化 細胞質 : 空砲化 PAS 陽性

3 単一あるいは複数の血球系の減少症 4 骨髄における無効造血

MDS では 血球減少 異常幹細胞が腫瘍性に増殖し 正常な造血は抑制される 異常な血球が分化 増殖するが 多くはアポトーシスする ( 無効造血 ) 正常な血球の産生は抑制される 分化できない芽球も存在するが 増殖は活発ではない 無効造血 血球減少がみられる 様々な異常血球が少なからずみられる 少量の芽球がみられることもある

MDS とは 1 遺伝子異常をもつクローン性造血幹細胞疾患 2 形態学的異形成 3 単一あるいは複数の血球系の減少症 4 骨髄における無効造血 5 急性骨髄性白血病への移行

MDS 無効造血 骨髄中の芽球の割合 20% 未満 血球減少 さらなる遺伝子異 常が蓄積した幹細 胞が増殖する 分化能をもたない芽球 ( 白血病細胞 ) が増殖する 白血病化 血球減少がみられる 芽球 ( 白血病細胞 ) が末梢血にみられるようになる

骨髄異形成症候群 (MDS) 2 つの特徴 1 無効造血による血球減少 2 前白血病状態 約 1/3 が急性白血病に移行する

FAB 分類 1982 年発表 名称 血液中の 芽球の割合 骨髄中の 芽球の割合 特徴 不応性貧血 (RA) 鉄芽球性不応性貧血 (RARS) <1% <5% 環状鉄芽球が増 えている 芽球増加を伴う不応性貧血 (RAEB) 慢性骨髄単球性白血病 (CMML) 5% 5~19% <20% 血液中の単球が 1000/μl 以上 移行期の芽球像を伴う不応 性貧血 (RAEB-t) 5~29% 20~29% 芽球が 30% 以上あると急性白血病

WHO 分類第 4 版 -2008 年 - 第 3 版 -2001 年発表 - 名称 単一血球系統の異形成を伴う不応性血球減少症 (RCUD) 不応性貧血 (RA) 不応性好中球減少症 (RN) 不応性血小板減少症 (RT) 血液中の芽球の割合 骨髄中の芽球の割合 <1% <5% 特徴 1 系統で 10% 以上の異形成あり 環状鉄芽球を伴う不応性貧血 (RARS) (-) <5% 環状鉄芽球 が増えている 多血球系異形成を伴う不応性血球減少症 (RCMD) 芽球増加を伴う不応性貧血 -1 (RAEB-1) 芽球増加を伴う不応性貧血 -2 (RAEB-2) <1% <5% <5% 5~9% 5~19% 10~19% 分類不能 MDS(MDS-U) 1% <5% 単独 5q- を有する MDS(5q- 症候群 ) <1% <5% 複数の系統で 10% 以上の異形成あり 芽球 が増えている 異形成はないが染色体異常があるものなど 5 番染色体の長腕部に欠失 ( 異常 ) がみられる 芽球が 20% 以上あると急性白血病

予後判定のための国際予後判定システム (IPSS 分類 ) 配点 予後因子 0 0.5 1.0 1.5 2.0 骨髄中の芽球 <5% 5~10% - 11~20% 21~30% 核型 良好 中間 不良 血球減少 0~1 系統 2~3 系統 核型良好 : 正常 -Y del(5q) del(20q) 不良 : 複雑 (3 種類以上の異常 ) 7 番の異常中間 : その他の異常 血球減少 Hb:<10g/dl 好中球 :<1800/μ l 血小板 :<10 万 /μ l リスク群 スコア 平均生存期間 ( 年 ) 25% 急性骨髄性白血病移行 ( 年 ) 低 (low) 0 5.7 9.4 中間 (int-1) 0.5~1.0 3.5 3.3 中間 (int-2) 1.5~2.0 1.3 1.1 高 (high) 2.5 0.4 0.2

国際予後判定システム (IPSS) による重症度別の MDS 生存曲線 白血病までの移行期間

WHO 分類に従った MDS の予後判定システム (WPSS 分類 ) 予後因子の 配点 0 1 2 3 WHO 分類 RA RARS 5q- RCMD RCMD-RS RAEB-1 RAEB-2 核型良好中間不良 赤血球輸血 依存性 なし あり リスク群 点数 Very low 0 Low 1 Intermediate 2 High 3-4 Very high 5-6 特徴 核型の配点は IPSS と同じ IPSS は診断時の予後予測因子として開発された WPSS は病状の変化にも対応しており 経過中のどの時点においてもそれ以降の予後予測に役立つ Very low 群で 診断後 2 年間リスクカテゴリーが変わらなければ 生命予後は一般人と変わらない

治療 - リスク分類から治療方針を決める - 診断時の予後予測因子として開発されたIPSS 分類に基づく層別化によって治療方針を考慮する リスク群 スコア 平均生存期間 ( 年 ) 25% 急性骨髄性白血病移行 ( 年 ) 低 (low) 0 5.7 9.4 中間 (int-1) 0.5~1.0 3.5 3.3 中間 (int-2) 1.5~2.0 1.3 1.1 高 (high) 2.5 0.4 0.2

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 一般にこの群の患者においては骨髄不全への対策が治療の主目的になる 保存的治療 輸血 ( 赤血球 / 血小板 ) EPO G-CSF 鉄キレート剤 原則として血球減少が経度で自覚症状のない患者は無治療で経過観察する 症状を有する貧血 (Hb 7-8g/dl 以下 ) に対しては赤血球製剤を輸血する 血小板減少や血小板の機能低下による出血症状に対しては血小板輸血をおこなう 反復する輸血による同種抗体の産生を防ぐため 高度の血小板減少 (0.5 万以下 ) を認める患者以外では予防的血小板輸血を行わない 血小板輸血は 感染症併発時 粘膜出血 深部出血のみられる場合 出血を伴う外科的処置の前後にとどめることが望ましい

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 一般にこの群の患者においては骨髄不全への対策が治療の主目的になる 保存的治療 輸血 ( 赤血球 / 血小板 ) EPO G-CSF 鉄キレート剤 FAB 分類で非 RARS 例や 血清 EPO 濃度低値 (500mU/ml 以下 ) では EPO の投与に より輸血回数の減少効果が報告されている ( 国内保険適応外 ) EPO+G-CSF 療法が白血病化に影響を与えずに予後を改善させるという報告がある 頻回の赤血球輸血が問題! あとで 赤血球輸血依存性の患者における鉄過剰症に対して鉄キレート剤を投与する

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 免疫抑制療法 シクロスポリン (CyA) 抗胸腺細胞グロブリン (ATG) シクロスポリンあるいはATGによる免疫抑制療法はこの群の血球減少に対して有効である ( 保険適応外 ) 反応例の多くはシクロスポリン依存性であり 長期投与に伴う細菌 真菌 ウイルスなどによる日和見感染症や 潜在的な悪性腫瘍の顕在化に注意する 免疫抑制療法の効果は 若年 HLA-DR15の存在 骨髄低形成と関連するという報告がある

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 薬物療法レナリドミド ( 商品名レブラミド ) (5q 欠失 ) レナリドミドはサリドマイドの誘導体で 免疫調節薬のひとつであり 多彩な薬理作用を有する 低リスクMDSの貧血に対して用いられ 赤血球造血の改善効果が認められている 特に5 番染色体長腕の欠失 (del 5q) を有する赤血球輸血依存性 MDSに対しての赤血球造血促進効果は著しく 76% が反応する Hb 値は5.4g/dl( 中央値 ) 上昇し 67% が輸血依存から脱却する 染色体レベルでの反応も73% に報告され 45% は細胞遺伝学的寛解がみられる

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 薬物療法アザシチジン ( 商品名ビダーザ ) ( 他治療に不応の貧血 血小板 好中球減少 ) アザシチジンはDNAメチル化阻害薬のひとつである アザシチジンはRNA DNAの両方に取り込まれるため 1) 蛋白質合成阻害による殺細胞効果と 2)DNAメチル化阻害による細胞増殖抑制作用が報告されている

MDS とメチル化 がん遺伝子の活性化 がんの発症 がん抑制遺伝子の不活化 がん抑制遺伝子のプロモーター領域でシトシンがメチル化されて転写が抑制されることにより 細胞の腫瘍化につながる 従って メチル化を阻害することによってがんの治療に用いる DNA メチル化による遺伝子の不活化遺伝子を使うか使わないかを制御している部分 ( プロモーター ) がメチル化されると 遺伝子は使えなくなる

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 薬物療法アザシチジン ( 商品名ビダーザ ) ( 他治療に不応の貧血 血小板 好中球減少 ) NCCN ガイドラインでは 低リスク MDS の血小板減少や好中球減少例 または種々の 治療に反応しない貧血に対してアザシチジンを使用するようになっている しかし この群に対するアザシチジンの生存期間延長効果は明らかでない アザシチジンの有害事象 有害事象頻度好中球減少症 88.7% 血小板減少症 84.9% 治療によって一過性に血球減少が悪化することが極めて高率に想定されるため 適応を慎重に考慮する必要がある

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 同種造血幹細胞 移植 1) 適応 : 高度の輸血依存性 繰り返す感染症 免疫抑制療法などの治療に不応 2) ドナー :HLA 適合ドナー あるいは HLA1 座不適合血縁者 3) 前処置 : 骨髄破壊的前処置 高齢者 合併症を有する例では骨髄非破壊的前処置 決断分析の手法を用いた移植時期の解析では 低リスクの症例は病期が進行してからの移植のほうが望ましい 従って 適応は慎重に判断する必要がある 一般にはリスクの悪化または悪化傾向がある症例 高度の輸血依存例 繰り返し感染症がみられる例 他の治療に反応がみられない例が適応となる 55 歳以下でHLA 一致同胞が得られる場合は高い長期生存率が報告されている 非血縁者間骨髄移植やHLA1 座不適合血縁者間移植では長期生存率が10% 程度低下する 移植前処置は標準的なものを基本とするが 55 歳以上や 重篤な移植関連毒性が予想される合併症を有する例では 治療強度を減弱した前処置を用いた造血幹細胞移植 (RIST: reduced-intensity stem cell transplantation) を考慮する

低リスク群骨髄異形成症候群の治療 一般にこの群の患者においては骨髄不全への対策が治療の主目的になる 輸血 ( 赤血球 / 血小板 ) 保存的治療 EPO G-CSF 鉄キレート剤 免疫抑制療法 シクロスポリン (CyA) 抗胸腺細胞グロブリン (ATG) 薬物療法 レナリドミド (5q 欠失 ) アザシチジン ( 他治療に不応の貧血 血小板 好中球減少 ) 同種造血幹細胞 移植 1) 適応 : 高度の輸血依存性 繰り返す感染症 免疫抑制療法などの治療に不応 2) ドナー :HLA 適合ドナー あるいは HLA1 座不適合血縁者 3) 前処置 : 骨髄破壊的前処置 高齢者 合併症を有する例では骨髄非破壊的前処置

高リスク群骨髄異形成症候群の治療 この群で血球減少や白血病への進展リスクが高く 支持療法のみによる自然経過は予後不良である 同種造血幹細胞移植 根治的な治療法である標準的な同種造血幹細胞移植が施行可能であれば 原則として速やかに実施する 55 歳未満で HLA 血清学的 1 座不適合までの血縁ドナーがいて 全身状態が良ければ適応となる HLA 一致非血縁者もドナーとしてよい

同種移植の予後不良因子は 骨髄芽球比率が高いこと 予後不良染色体異常があること 診断から移植までの期間が長いこと 年齢である 移植までの病状をコントロールする目的で化学療法を施行することはよいが 移植前の寛解導入を目的とした化学療法の意義は確立していない

高リスク群骨髄異形成症候群の治療 化学療法 強力化学療法 ( 急性骨髄性白血病に準じた多剤併用療法 ) 低用量化学療法 若年者で 染色体異常 PS 罹病機関などの予後不良因子がない例では強力な化学療法に対する反応性がよいとされており 同種移植を実施しない場合には強力な化学療法を施行してもよい 予後良好例以外に対する強力化学療法は 腫瘍量を減少する目的で行うが 寛解に至っても持続期間は短い

高リスク群骨髄異形成症候群の治療 化学療法 強力化学療法 ( 急性骨髄性白血病に準じた多剤併用療法 ) 低用量化学療法 低用量化学療法の効果は一般に限定的で 芽球の一時的なコントロールは可能であるが 予後を延長させえるかは明らかでない 強力寛解導入療法と低用量寛解導入療法を比較した試験では 寛解率は強力療法群が高かったが (65%vs44%) 2 年生存率はほぼ同等であった (28%vs26%)

高リスク群骨髄異形成症候群の治療 薬物療法アザシチジン (DNA メチル化阻害剤 ) 同種造血幹細胞移植 強力化学療法が施行されない例では まずアザシチジンを投与する DNA シトシン残基のメチル化によって遺伝子発現が抑制されるが MDS では多くの遺伝子がメチル化 を受けており 複製時のメチル化阻害によりこれが解除されて腫瘍性増殖の抑制がなされる アザシチジンと支持療法の比較試験で M DSのすべての病型において 白血病化を遅らせ 生存期間を延長し QOLを改善した また 高リスクMDSを対象とした通常治療 ( 支持療法 低用量化学療法 強力化学療法 ) とアザシチジンの比較試験で 生存期間の延長 白血病化までの期間の延長が示された

高リスク群骨髄異形成症候群の治療 この群で血球減少や白血病への進展リスクが高く 支持療法のみによる自然経過は予後不良である 同種造血幹細胞移植 化学療法 強力化学療法 低用量化学療法 薬物療法 アザシチジン

輸血後鉄過剰症と 鉄キレート療法

鉄代謝 2/3 は赤血球内体内の鉄 貯蔵鉄は 血清フェリチン値で 評価する 30% 貯蔵鉄アポフェリチンと結合 健常人は体内に 3~4g の鉄を持っている 鉄総量の約 2/3 はヘモグロビン中の鉄 鉄総量の約 1/3 は貯蔵鉄 血清中の鉄はごくわずかしかない 0.1% 血清鉄トランスフェリンと結合 65% 赤血球内鉄ヘモグロビンと結合

ヘムとグロビンヘモグロビン 赤血球の役割は酸素を運搬することである 酸素運搬の中心的役割を果たしているのがヘモグロビンである ヘモグロビン ( ヘモグロビン :Hb) は ヘム (heme) とグロビン (globin) の結合した蛋白質である ヘムの中に鉄を含んでいる ヘモグロビン ヘム グロビン 鉄 (Fe2+) プロトポルフィリン環 補足事項 ヘモグロビンは血色素ともよぶ 臨床医はヘモグロビンのことを Hb( はーべー ) とよく言う

1mg の吸収 1mg の喪失 1 日の体内の鉄動態 大部分の鉄はいったん生体内に入ると体外に排出されることはない ( 総量 3g 1 日喪失量 1mg) これを鉄の閉鎖環とよぶ 食物中の鉄の吸収 1mg 1mg 生理的喪失 ( 汗 尿 便など ) 血漿トランスフェリン 20mg 20mg 骨髄 ( 赤芽球のヘモグロビン合成 ) 貯蔵鉄 ( 肝など ) 2.4g 一部 網内系細胞 ( 脾などの組織マクロファージ ) 20mg 赤血球 ( ヘモグロビン ) 20mg

輸血関連ヘモジデローシス 骨髄異形成症候群や再生不良性貧血などの難治性貧血では 定期的な輸血が必須で 輸血によって体内に入った赤血球由来の鉄は排出機構が存在しないため 体内に蓄積する 血液 1mlあたり約 0.5gの鉄が含まれることから 輸血 1 単位 ( 全血 200ml 赤血球濃厚液約 140mlに相当 ) で 約 100mgの鉄が負荷されることになる

輸血副作用対応ガイド 1-1 急性溶血性輸血副作用 2-6 低血圧性輸血副作用 1-2 遅発性溶血性輸血副作用 2-7 輸血後 GVHD 2-1 発熱性非溶血性輸血副作用 2-8 輸血後紫斑病 2-2 アレルギー反応 2-9 輸血関連ヘモジデローシス 2-3 輸血関連急性肺障害 2-10 高カリウム血症 2-4 輸血関連循環過負荷 3-1 細菌感染症の疑い 2-5 TAD 3-2 輸血ウイルスおよび寄生虫感染症 日本輸血 細胞治療学会輸血療法委員会

輸血関連ヘモジデローシス 生体に鉄が過剰沈着する病態は 鉄過剰症とよばれ 肝臓 心臓 膵臓 甲状腺 内分泌臓器や中枢神経などの障害がおきる

生体内の鉄が過剰になると 肝臓 トランスアミナーゼの上昇 肝線維化 肝硬変 肝細胞癌 心臓 初期には拡張障害 収縮能低下が顕在化し 心エコー上左室駆出率 (EF) が低下する 膵臓 β 細胞の破壊耐糖能低下糖尿病

NTBI (μmol/l) 鉄代謝 十二指腸 上部小腸からの吸収 生体の鉄含有量約 3~4g 肝臓 1g 実質細胞 0.3g 平均 1~2mg/ 日 再循環 20~30mg/ 日 2~3mg/ 日 赤血球系 2g トランスフェリン ( 鉄の担体 ) 粘膜 皮膚などの剥離月経などの出血による喪失 老廃赤血球 20~30mg/ 日 網内系マクロファージ 0.6g 20~30mg/ 日 平均 1~2mg/ 日 ヒトは積極的な鉄排泄機構をもたず 鉄代謝は閉鎖システムに近い形で機能しており 必要な鉄のほとんどは再利用の形でまかなわれている 100% トランスフェリン飽和度 0% 正常 鉄過剰 1.1 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 トランスフェリン飽和度 (%) 血清中にトランスフェリン非結合鉄 (nontransfer rin-bound iron:ntbi) が増加 臓器障害 同種造血幹細胞移植患者トランスフェリン飽和度が上昇すると NTBI が増加する Sahlstedt L, et al., Br J Haematol. 2001; 113: 836-838

過剰鉄による組織の障害機構 鉄過剰症 : 血中トランスフェリンの飽和度 >80% 血清中にトランスフェリン非結合鉄 (nontransferrin-bound iron:ntbi) 不安定血清鉄 (labile plasma iron LPI) が出現 血中を循環するとともに その一部が組織に流入 肝臓 心臓 膵臓など 不安定鉄プール (labile iron pool LIP) 自由鉄 Fenton 反応 ヒドロキシラジカル DNA 損傷 A Fe 3+ +O 2 - Fe 2+ +O 2 B Fe 2+ +H 2 O 2 Fe 3+ +OH - +OH C H 2 O 2 +O 2 - O 2 +OH - +OH 脂質過酸化 細胞器官障害 細胞死 組織の障害 Haber-Weiss 反応 TGF-β1 組織の線維化 不溶性の鉄複合体 ( フェリチン ヘモジデリン ) が組織に蓄積

心鉄濃度 (μmol/g) 血清フェリチン値が 1,800ng/mL を超えると心臓への鉄沈着が始まる 40 1,800ng/mL 30 20 10 0 100 1,000 10,000 血清フェリチン値 (ng/ml) 輸血による鉄過剰症を伴う患者 14 例 (MDS 11 例, 急性骨髄性白血病完全寛解 1 例, ダイヤモンド ブラックファン貧血 1 例, 原因不明の慢性溶血患者 1 例 ) に対し, デフェロキサミンによる鉄キレート療法を行い, 心鉄量と血清フェリチン値の相関を検討した Jensen PD, et al., Blood. 2003; 101: 4632-4639 より改変

説明会用資料輸血依存患者の死因の約 30% が心不全 肝不全であり鉄過剰症が致死的な影響を与える可能性が示された 日本人の輸血依存 MDS 及び AA 患者における死因と輸血量 死因 (n=75) % 輸血量 心不全 24% 肝不全 6.7% 289.2 単位 (p=0.0033) その他 160.7 単位 p 値 : Student s t test vs. その他の死亡例 Eur J Haematol. 2007, 78: 487 494より作表 EXJ0014EP

Zacharski L R et al. JNCI J Natl Cancer Inst 2008;100:996-1002 末梢動脈疾患患者 Cumulative incidence curves of new cancer diagnoses for the entire study cohort by intervention group. 鉄減少群 (6 か月に 1 回瀉血を行う ) コントロール群 瀉血群では内臓がんの発生が 35% 減少する がん発生患者の死亡率はコントロール群の方が高い ( つまり 瀉血なしでがんになった患者の方が進行が 早く 早期に亡くなっている ) 鉄過剰症は 発がん 動脈硬化 糖尿病などの 生活習慣病 の本質部分にかかわっている

患者の割合 (%) 輸血依存の骨髄異形成症候群患者は合併症の罹患率が高い 100 82.4 輸血依存 (205 例 ) 輸血非依存 (307 例 ) 81.0 50 67.1 44.4 37.1 62.9 40.4 55.7 0 心疾患イベント 糖尿病 1.0 0.7 呼吸困難肝疾患イベント合併症の内訳 感染症による合併症 14.6 輸血依存の MDS 患者は, 輸血非依存よりも心疾患イベント, 糖尿病, 呼吸困難, 肝疾患および感染症の罹患率が高い 6.2 真菌感染症 * 2003 年第 1 四半期に MDS と診断されたメディケア受給者 2,253 例のうち, 合併症を有した 512 例 糖尿病 (p=0.10) と肝疾患 (p=0.68) 以外の合併症が有意であった (p<0.001) Goldberg SL et al. J Clin Oncol 2010; 28: 2847-2852

患者の割合 (%) 低リスク MDS 患者の死因 - 白血病以外 - 心不全が輸血依存の患者で多く認められた (p=0.01) 100 75 イタリアの新規 MDS 患者 467 例のデータを後方視的に解析し,WHO 基準に基づいた診断時の臨床的および血液学的特性,OS,LFS の関連を解析した 50 51 31 25 0 心不全 8 8 感染症出血肝硬変 Malcovati L, et al. J Clin Oncol. 2005; 23: 7594-7603. より作図

生存率 生存率 鉄過剰症の予後への影響 (n=762) 説明会用資料 EXJ061EP WPSS を加えた多変量解析 (n=580) において 鉄過剰症は WPSS とは独立した予後因子であった 全生存 1.0 1.0 無増悪生存 0.8 フェリチン <1000 ng/ml 0.8 フェリチン <1000 ng/ml 0.6 0.6 0.4 0.2 0 0 0.4 フェリチン 1000 ng/ml フェリチン 1000 ng/ml 0.2 P<0.0001 P<0.0001 5 10 15 20 0 0 5 10 15 20 診断からの期間 ( 年 ) * Sanz et.al. Abst # #640

説明会用資料低リスクMDS 患者において 血清フェリチンが1,000ng/mLを超えると生存率が低下することが示された 低リスク MDS 患者における血清フェリチンが全生存率に及ぼす影響 1.0 0.8 全生存率 0.6 0.4 p=0.01(log rank 検定 ) 0.2 0 0 血清フェリチン (ng/ml) 症例数死亡例数 1,000 61 6 >1,000 34 11 12 24 診断からの期間 ( 月 ) Leukemia 2008, 22: 538-543 EXJ0014EP

生存率 生存率 生存率 生存率 生存率 血清フェリチンの全生存率への影響 (WHO 分類別 ) 説明会用資料 EXJ061EP 1.0 RA/RARS (n=237) 1.0 RCMD/RCMD-RS (n=231) 1.0 5q- symdrome (n=46) 0.8 <1000 ng/ml 0.8 0.8 <1000 ng/ml 0.6 0.6 <1000 ng/ml 0.6 0.4 0.2 0 P<0.0001 1000 ng/ml 0 5 10 15 診断からの時間 ( 年 ) 20 0.4 0.2 0 P<0.0001 1000 ng/ml 0 5 10 15 診断からの時間 ( 年 ) 20 0.4 0.2 0 P=0.0014 1000 ng/ml 0 5 10 15 診断からの時間 ( 年 ) 20 1.0 RAEB-1 (n=78) 1.0 RAEB-2 (n=45) 0.8 <1000 ng/ml 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1000 ng/ml P<0.0001 0 5 10 15 診断からの時間 ( 年 ) 20 0.6 P=0.004 0.4 0.2 0 <1000 ng/ml 1000 ng/ml 0 5 10 15 診断からの時間 ( 年 ) 20 G Sanz, ASH 2008, abstr. #640

鉄過剰の MDS 患者の予後は不良であった 説明会用資料 MDS 患者における血清フェリチン別全生存率の推移 RA, RARS, isolated del (5q) 症例 RCMD, RCMD-RS 症例 1.0 0.9 0.8 血清フェリチン 1,000 ng/ml 1,500 ng/ml 2,000 ng/ml 2,500 ng/ml 1.0 0.9 0.8 血清フェリチン 1,000 ng/ml 1,500 ng/ml 2,000 ng/ml 2,500 ng/ml 0.7 0.7 全生存率 0.6 0.5 0.4 全生存率 0.6 0.5 0.4 0.3 0.3 0.2 0.2 0.1 0.1 0.0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 生存期間 0.0 ( 月 ) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 ( 月 ) 生存期間 Haematologica 2006, 91: 1588-1590 EXJ0014EP

輸血後鉄過剰症の診療ガイド 輸血後鉄過剰症診断基準 鉄キレート療法開始基準 鉄キレート療法開始基準の解説 維持療法 総赤血球輸血量 20 単位以上 血清フェリチン値 500ng/ml 以上 および 下記の 1 と 2 を考慮して鉄キレート療法を開始する 1. 総赤血球輸血量 40 単位以上 2. 連続する 2 回の測定で血清フェリチン値 >1000ng/ml 下記のような場合には 鉄キレート療法の開始にあたり 総輸血量および血清フェリチン値の両方を考慮し 総合的に判断する 慢性的な出血や溶血を伴う場合 現在輸血を受けていない場合 ( 造血幹細胞移植や薬物療法が奏効した例 ) 輸血とは無関係に血清フェリチン値が慢性的に高値を示す合併症がある場合 ( スティル病 血球貪食症候群 悪性腫瘍など ) 鉄キレート療法により 血清フェリチン値を 500~1000ng/ml に維持する 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造血障害に関する調査研究 ( 平成 20 年度 ) 研究代表者小澤敬也

本邦で使用可能な鉄キレート薬の種類と特徴 デフェロキサミン ( デスフェラール ) デフェラシロクス ( エクジェイド ) 分子量 560.7 373.4 配位座数 6 座 3 座 投与経路皮下 静脈内経口 鉄排泄の主要経路 約 50% 糞便中 50% 尿中 糞便中 半減期 5~10 分 20 時間 臨床容量 20~60mg/kg 持続注入 20mg/kg 1 日 1 回 ともにノバルティスのくすりです

経口鉄キレート剤エクジェイド ( デフェラシロクス ) 経口剤 1 日 1 回投与 分散性錠剤 / 水に懸濁して服用 (100ml 以上 ) 主に糞中排泄 ( 尿中には 10% 未満 )

血清フェリチン値変化量 (ng/ml) 説明会用資料 EXJ172EP デフェラシロクスは用量依存的に血清フェリチン値を低下 日本人の輸血による鉄過剰症を伴う難治性貧血患者 (AA,MDS 等 ) に対する血清フェリチン値の推移 ( 国内第 Ⅰ 相試験 ) 2,000 1,000 0-1,000-2,000-3,000-4,000 初回投与量 ( 中央値 ) 5mg/kg/ 日 (n=5) 10mg/kg/ 日 (n=5) 20mg/kg/ 日 (n=11) 0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 経過期間 ( 週 ) 52 AA: 再生不良性貧血 MDS: 骨髄異形成症候群 10

鉄キレート剤をほぼ連日投与した患者では 高い生存率が維持された 説明会用資料 デスフェラールを投与した重症サラセミア患者における年間投与日数別全生存率の変化 (%) 100 80 適正治療群 (n=149) (250 日 / 年以上の投与 ) 全生存率 60 40 非適正治療群 (n=108) (250 日 / 年未満の投与 ) 20 0 0 10 20 30 40 ( 年 ) 生存期間 Actra Haematologica,1996,95: 26-36 EXJ0014EP

説明会用資料鉄キレート療法は MDS 患者の生命予後を向上させた 赤血球輸血を受けた MDS 患者における鉄キレート剤投与有無別全生存率 (Kaplan-Meier 法 ) 全生存率 1.00 0.75 0.50 鉄キレート療法あり ( エクシ ェイト テ スフェラール テ フェリフ ロン ) 鉄キレート療法なし 中央値 : 5 年 ( 全ての群 ) 鉄キレート療法あり 76 例 ( 中央値 :10 年 ) vs. p<0.0001 (log rank 検定 ) 鉄キレート療法なし (89 例 ) ( 中央値 :4 年 ) 0.25 0 0 50 100 150 200 250 生存期間 ( 月 ) C Rose, ASH 2007, abstr. #249 本邦未承認 EXJ0014EP

1 ヵ月あたりの輸血量と デフェラシロクス投与量別による血清フェリチンの変化 輸血量 8 単位 / 月以上 4-8 単位 / 月 4 単位 / 月未 デフェラシロクスの投与量 30mg/kg/ 日 減少 20mg/kg/ 日増加減少 10mg/kg/ 日増加不変 体重 50Kg の成人の場合

EPIC Study(Evaluation of Patients Iron Chelation with Exjade): 骨髄異形成症候群患者における血清フェリチン値の変化 ( 中央値 ) 51% Gattermann N, et al. Leuk Res. 2010:1143-1150 より改変

エクジェイドの副作用発現頻度 % 80 62.4% 70 60 50 40 30 20 10 0 42.8% 5mg/kg 10mg/kg 20mg/kg 30mg/kg 皮膚障害 検査異常 ( 血清クレアチニン増加を含む ) 胃腸障害 ノバルティスファーマ承認時資料

デフェラシロクス ( エクジェイド ) に よる造血能の回復

デフェラシロクス投与による重症再生不良性貧血の造血の改善 原田結花広島大学原爆放射線医科学研究所

プリモボラン 2 錠 90 歳女性 MDS ng/ml 400 エクジェイド 125mg 血清フェリチン値 300 200 100 4 単位 / 月 2 単位 / 月 赤血球輸血 0 2010 年 2011 年 2012 年

デフェラシロクスを投与した MDS 患者における血液学的奏功 : International Working Group 2006 基準を用いた EPIC 事後解析

骨髄異形成症候群 (MDS) 1 無効造血による血球減少 2 前白血病状態 急性白血病に移行 低リスク群骨髄異形成症候群 骨髄不全への対策 高リスク群骨髄異形成症候群 白血病への進展リスクが高い 保存的治療 輸血 ( 赤血球 / 血小板 ) EPO G-CSF 鉄キレート剤 同種造血幹細胞移植 免疫抑制療法薬物療法 シクロスポリン (CyA) 抗胸腺細胞グロブリン (ATG) レナリドミド (5q 欠失 ) アザシチジン 化学療法薬物療法 強力化学療法 低用量化学療法 アザシチジン 同種造血 幹細胞移植