平成23年度環境対応技術開発等,第一種化学物質含有製品等安全性調査報告書

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1 平成 23 年度環境対応技術開発等 ( 第一種特定化学物質含有製品等安全性調査 ) 報告書 平成 24 年 2 月 一般財団法人化学物質評価研究機構

2 はじめに 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 ( 以下 化審法 という ) は工業用の化学物質が製造 輸入された後に環境を経由して人及び動植物に対して長期的な影響を及ぼすことを未然に防止する目的で制定された 化審法では 難分解性かつ高蓄積性で人又は高次捕食動植物への毒性がある化学物質は 第一種特定化学物質 に指定され 製造輸入が事実上禁止されている さらに 特定用途以外での使用禁止 政令指定製品の輸入禁止 第一種特定化学物質に指定された製品についての回収命令等により 我が国においては使用が事実上禁止されている また 難分解性かつ高蓄積性であるが人又は高次捕食動植物への毒性が不明な化学物質については 監視化学物質 に指定され 毒性を有することが明らかになった時点で 第一種特定化学物質 に指定されることになっている 本事業では 第一種特定化学物質及び監視化学物質による環境経由での人や動植物への悪影響を未然に防止して適切な管理を行うために 試買検査による第一種特定化学物質の製品中における含有実態及び監視化学物質を含有する製品からの暴露評価を実施した 本事業は以下に示す主な 2 つの調査項目から構成される (1) 第一種特定化学物質等が含有されていると思われる製品の試買検査 (2) 監視化学物質が含有されている製品の試買検査試買検査において第一種特定化学物質及び監視化学物質の試験方法を検討することで製品中の含有量及び溶出量及び製品の管理についての実態を把握し 当該化学物質による環境経由での人や動植物への悪影響を未然に防止し 適切な管理を行うことが可能となると考えられる さらに このような含有量調査及び溶出試験の結果に文献調査等から得られた情報を併せ 環境への暴露評価並びに人又は高次捕食動植物等への安全性等の評価を行い 当該化学物質を含有している製品に関する適正管理の在り方についての検討等が可能になる 現在使用されている1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン (HBCD) 含有製品の適切な使用やリスク低減のために ヒト健康へのリスク評価を行う必要がある しかし リスク評価を行うための暴露評価データ類が不足しているのが現状である 本調査では 今後規制が強化されるHBCDに関しての暴露評価に必要な情報を採取するための試験法の開発を行い調査を実施した 整理された結果は 今後の含有製品に関する適正管理のあり方ついて 具体的に役立つものと期待される 平成 24 年 2 月 一般財団法人化学物質評価研究機構

3 本調査報告書は 以下の 4 部構成で作成した Ⅰ. 臭素化ジフェニルエーテル ( 臭素数が 4 から 7 のものに限る ) 含有製品の安全性調査 Ⅱ. ヘキサクロロベンゼン含有製品の安全性調査 Ⅲ. PFOS 又はその塩含有製品の安全性調査 Ⅳ. 1,2,5,6,9,10- ヘキサブロモシクロドデカン (HBCD) 含有製品の安全性調査 Ⅳ- 1. 製品からの HBCD 放散量調査 Ⅳ- 2. 難燃加工時の HBCD 異性体存在比に及ぼす温度影響の推定調査 Ⅳ- 3. 製品から吸着外部粉じんへの HBCD 移行調査

4 Ⅰ. 臭素化ジフェニルエーテル ( 臭素数が 4 から 7 のものに限る ) 含有製品の安全性調査

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6 Ⅳ. 臭素化ジフェニルエーテル ( 臭素数が 4 から 7 のものに限る ) 含有製品の安全性調査 1. 調査内容 調査対象物質 調査対象製品 分析方法 標準物質類 試薬類 機器分析 検出法の選択 GC/HRMS 分析条件 検量線 標準液の測定 検量線の作成 試験方法の検討 含有試験 溶出試験 同定と定量 同定 定量 定量下限 調査結果 含有試験結果 PBDE 合計値 PBDE 詳細結果 溶出試験結果 暴露評価 排出量の推定 リスク評価 参考文献... 27

7 1. 調査内容 1.1. 調査対象物質本調査では ポリブロモジフェニルエーテル ( 以下 PBDE という ) を調査対象とした 平成 21 年 10 月 27 日 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令 が閣議決定され 臭素数が 4 から 7 の PBDE が化審法の第一種特定化学物質に指定されることとなった ( 平成 22 年 4 月 1 日施行 ) 1) そのため 本調査における測定対象物質に関しても 4 臭素化から 7 臭素化の PBDE を対象とした PBDE とはポリブロモジフェニルエーテル化合物の総称であり その分子に保有する臭素の数やその位置の違いにより理論的に 209 種類の異性体が存在する 図 に PBDE の化学構造式を示した 図中の数字は臭素の置換位置である その各異性体を表 から表 に示す なお 異性体の番号と名称は米国環境保護局 (U.S.EPA) の Method 1614 から抜粋して示した 2) (1 X+Y 10) 図 PBDE の化学構造式 1

8 表 PBDE 異性体一覧 - その 1 MoBDE monobromodiphenylether TeBDE tetrabromodiphenylether BDE-No. 異性体名 BDE-No. 異性体名 BDE-1 2-MoBDE BDE-40 2,2',3,3'-TeBDE BDE-2 3-MoBDE BDE-41 2,2',3,4-TeBDE BDE-3 4-MoBDE BDE-42 2,2',3,4'-TeBDE BDE-43 2,2',3,5-TeBDE BDE-44 2,2',3,5'-TeBDE DiBDE dibromodiphenylether BDE-45 2,2',3,6-TeBDE BDE-No. 異性体名 BDE-46 2,2',3,6'-TeBDE BDE-4 2,2'-DiBDE BDE-47 2,2',4,4'-TeBDE BDE-5 2,3-DiBDE BDE-48 2,2',4,5-TeBDE BDE-6 2,3'-DiBDE BDE-49 2,2',4,5'-TeBDE BDE-7 2,4-DiBDE BDE-50 2,2',4,6-TeBDE BDE-8 2,4'-DiBDE BDE-51 2,2',4,6'-TeBDE BDE-9 2,5-DiBDE BDE-52 2,2',5,5'-TeBDE BDE-10 2,6-DiBDE BDE-53 2,2',5,6'-TeBDE BDE-11 3,3'-DiBDE BDE-54 2,2',6,6'-TeBDE BDE-12 3,4-DiBDE BDE-55 2,3,3',4'-TeBDE BDE-13 3,4'-DiBDE BDE-56 2,3,3',4'-TeBDE BDE-14 3,5-DiBDE BDE-57 2,3,3',5-TeBDE BDE-15 4,4'-DiBDE BDE-58 2,3,3',5'-TeBDE BDE-59 2,3,3',6-TeBDE BDE-60 2,3,4,4'-TeBDE TrBDE tribromodiphenylether BDE-61 2,3,4,5-TeBDE BDE-No. 異性体名 BDE-62 2,3,4,6-TeBDE BDE-16 2,2',3-TrBDE BDE-63 2,3,4',5-TeBDE BDE-17 2,2',4-TrBDE BDE-64 2,3,4',6-TeBDE BDE-18 2,2',5-TrBDE BDE-65 2,3,5,6-TeBDE BDE-19 2,2',6-TrBDE BDE-66 2,3',4,4'-TeBDE BDE-20 2,3,3'-TrBDE BDE-67 2,3',4,5-TeBDE BDE-21 2,3,4-TrBDE BDE-68 2,3',4,5'-TeBDE BDE-22 2,3,4'-TrBDE BDE-69 2,3',4,6-TeBDE BDE-23 2,3,5-TrBDE BDE-70 2,3',4',5-TeBDE BDE-24 2,3,6-TrBDE BDE-71 2,3',4',6-TeBDE BDE-25 2,3',4-TrBDE BDE-72 2,3',5,5'-TeBDE BDE-26 2,3',5-TrBDE BDE-73 2,3',5',6-TeBDE BDE-27 2,3',6-TrBDE BDE-74 2,4,4',5-TeBDE BDE-28 2,4,4'-TrBDE BDE-75 2,4,4',6-TeBDE BDE-29 2,4,5-TrBDE BDE-76 2',3,4,5-TeBDE BDE-30 2,4,6-TrBDE BDE-77 3,3',4,4'-TeBDE BDE-31 2,4',5-TrBDE BDE-78 3,3',4,5-TeBDE BDE-32 2,4',6-TrBDE BDE-79 3,3',4,5'-TeBDE BDE-33 2',3,4-TrBDE BDE-80 3,3',5,5'-TeBDE BDE-34 2',3,5-TrBDE BDE-81 3,4,4',5-TeBDE BDE-35 3,3',4-TrBDE BDE-36 3,3',5-TrBDE BDE-37 3,4,4'-TrBDE BDE-38 3,4,5-TrBDE BDE-39 3,4',5-TrBDE 2

9 表 PBDE 異性体一覧 - その 2 PeBDE pentabromodiphenylether HxBDE hexabromodiphenylether BDE-No. 異性体名 BDE-No. 異性体名 BDE-82 2,2',3,3',4-PeBDE BDE-128 2,2',3,3',4,4'-HxBDE BDE-83 2,2',3,3',5-PeBDE BDE-129 2,2',3,3',4,5-HxBDE BDE-84 2,2',3,3',6-PeBDE BDE-130 2,2',3,3',4,5'-HxBDE BDE-85 2,2',3,4,4'-PeBDE BDE-131 2,2',3,3',4,6-HxBDE BDE-86 2,2',3,4,5-PeBDE BDE-132 2,2',3,3',4,6'-HxBDE BDE-87 2,2',3,4,5'-PeBDE BDE-133 2,2',3,3',5,5'-HxBDE BDE-88 2,2',3,4,6-PeBDE BDE-134 2,2',3,3',5,6-HxBDE BDE-89 2,2',3,4,6'-PeBDE BDE-135 2,2',3,3',5,6'-HxBDE BDE-90 2,2',3,4',5-PeBDE BDE-136 2,2',3,3',6,6'-HxBDE BDE-91 2,2',3,4',6-PeBDE BDE-137 2,2',3,4,4',5-HxBDE BDE-92 2,2',3,5,5'-PeBDE BDE-138 2,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-93 2,2',3,5,6-PeBDE BDE-139 2,2',3,4,4',6-HxBDE BDE-94 2,2',3,5,6'-PeBDE BDE-140 2,2',3,4,4',6'-HxBDE BDE-95 2,2',3,5',6-PeBDE BDE-141 2,2',3,4,5,5'-HxBDE BDE-96 2,2',3,6,6'-PeBDE BDE-142 2,2',3,4,5,6-HxBDE BDE-97 2,2',3',4,5-PeBDE BDE-143 2,2',3,4,5,6'-HxBDE BDE-98 2,2',3',4,6-PeBDE BDE-144 2,2',3,4,5',6-HxBDE BDE-99 2,2',4,4',5-PeBDE BDE-145 2,2',3,4,6,6'-HxBDE BDE-100 2,2',4,4',6-PeBDE BDE-146 2,2',3,4',5,5'-HxBDE BDE-101 2,2',4,5,5'-PeBDE BDE-147 2,2',3,4',5,6-HxBDE BDE-102 2,2',4,5,6'-PeBDE BDE-148 2,2',3,4',5,6'-HxBDE BDE-103 2,2',4,5,'6-PeBDE BDE-149 2,2',3,4',5',6-HxBDE BDE-104 2,2',4,6,6'-PeBDE BDE-150 2,2',3,4',6,6'-HxBDE BDE-105 2,3,3',4,4'-PeBDE BDE-151 2,2',3,5,5',6-HxBDE BDE-106 2,3,3',4,5-PeBDE BDE-152 2,2',3,5,6,6'-HxBDE BDE-107 2,3,3',4',5-PeBDE BDE-153 2,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE-108 2,3,3',4,5'-PeBDE BDE-154 2,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-109 2,3,3',4,6-PeBDE BDE-155 2,2',4,4',6,6'-HxBDE BDE-110 2,3,3',4',6-PeBDE BDE-156 2,3,3',4,4',5-HxBDE BDE-111 2,3,3',5,5'-PeBDE BDE-157 2,3,3',4,4',5'-HxBDE BDE-112 2,3,3',5,6-PeBDE BDE-158 2,3,3',4,4',6-HxBDE BDE-113 2,3,3',5',6-PeBDE BDE-159 2,3,3',4,5,5'-HxBDE BDE-114 2,3,4,4',5-PeBDE BDE-160 2,3,3',4,5,6-HxBDE BDE-115 2,3,4,4',6-PeBDE BDE-161 2,3,3',4,5',6-HxBDE BDE-116 2,3,4,5,6-PeBDE BDE-162 2,3,3',4',5,5'-HxBDE BDE-117 2,3,4',5,6-PeBDE BDE-163 2,3,3',4',5,6-HxBDE BDE-118 2,3',4,4',5-PeBDE BDE-164 2,3,3',4',5',6-HxBDE BDE-119 2,3',4,4',6-PeBDE BDE-165 2,3,3',5,5',6-HxBDE BDE-120 2,3',4,5,5'-PeBDE BDE-166 2,3,4,4',5,6-HxBDE BDE-121 2,3',4,5,'6-PeBDE BDE-167 2,3',4,4',5,5'-HxBDE BDE-122 2',3,3',4,5-PeBDE BDE-168 2,3',4,4',5',6-HxBDE BDE-123 2',3,4,4',5-PeBDE BDE-169 3,3',4,4',5,5'-HxBDE BDE-124 2',3,4,5,5'-PeBDE BDE-125 2',3,4,5,6'-PeBDE BDE-126 3,3',4,4',5-PeBDE BDE-127 3,3',4,5,5'-PeBDE 3

10 表 PBDE 異性体一覧 - その 3 HpBDE heptabromodiphenylether OcBDE octabromodiphenylether BDE-No. 異性体名 BDE-No. 異性体名 BDE-170 2,2',3,3',4,4',5-HpBDE BDE-194 2,2',3,3',4,4',5,5'-OcBDE BDE-171 2,2'3,3',4,4',6-HpBDE BDE-195 2,2',3,3',4,4',5,6-OcBDE BDE-172 2,2',3,3',4,5,5'-HpBDE BDE-196 2,2',3,3',4,4',5,6'-OcBDE BDE-173 2,2',3,3',4,5,6-HpBDE BDE-197 2,2',3,3',4,4',6,6'-OcBDE BDE-174 2,2',3,3',4,5,6'-HpBDE BDE-198 2,2',3,3',4,5,5',6-OcBDE BDE-175 2,2',3,3',4,5',6-HpBDE BDE-199 2,2',3,3',4,5,5',6'-OcBDE BDE-176 2,2',3,3',4,6,6'-HpBDE BDE-200 2,2',3,3',4,5,6,6'-OcBDE BDE-177 2,2',3,3',4',5,6-HpBDE BDE-201 2,2',3,3',4,5',6,6'-OcBDE BDE-178 2,2',3,3',5,5',6-HpBDE BDE-202 2,2',3,3',5,5',6,6'-OcBDE BDE-179 2,2',3,3',5,6,6'-HpBDE BDE-203 2,2',3,4,4',5,5',6-OcBDE BDE-180 2,2',3,4,4',5,5'-HpBDE BDE-204 2,2',3,4,4',5,6,6'-OcBDE BDE-181 2,2',3,4,4',5,6-HpBDE BDE-205 2,3,3',4,4',5,5',6-OcBDE BDE-182 2,2',3,4,4',5,6'-HpBDE BDE-183 2,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-184 2,2',3,4,4',6,6'-HpBDE NoBDE nonabromodiphenylether BDE-185 2,2',3,4,5,5',6-HpBDE BDE-No. 異性体名 BDE-186 2,2',3,4,5,6,6'-HpBDE BDE-206 2,2',3,3',4,4',5,5',6-NoBDE BDE-187 2,2',3,4',5,5',6-HpBDE BDE-207 2,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-188 2,2',3,4',5,6,6'-HpBDE BDE-208 2,2',3,3',4,5,5',6,6'-NoBDE BDE-189 2,3,3',4,4',5,5'-HpBDE BDE-190 2,3,3',4,4',5,6-HpBDE BDE-191 2,3,3',4,4',5',6-HpBDE DeBDE decabromodiphenylether BDE-192 2,3,3',4,5,5',6-HpBDE BDE-No. 異性体名 BDE-193 2,3,3',4',5,5',6-HpBDE BDE-209 DeBDE 本調査では 先述のとおり 第一種特定化学物質である TeBDE( テトラブロモジフェニルエーテル ) PeBDE( ペンタブロモジフェニルエーテル ) HxBDE( ヘキサブロモジフェニルエーテル ) および HpBDE( ヘプタブロモジフェニルエーテル ) の4 つの同族体を調査対象物質とした 1.2. 調査対象製品平成 21 年 7 月 23 日に開催された平成 21 年度第 1 回薬事 食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会 第二部 平成 21 年度化学物質審議会第 1 回安全対策部会第 90 回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会において TeBDEとPeBDEについての取り扱いに関して検討が行われた 3) 国内の製造実績はないものの 過去 10 年内に海外で製造されていたことが実績等により認められるため 今後国内に輸入される可能性がある製品として接着剤 塗料およびポリウレタンフォーム ( 成型品 ) が挙げられた このうち ポリウレタンフォーム ( 以下 PUF という ) については 海外における今後の製造の見込み 国内における使用の形態 環境汚染の可能性等の実態が不明であるため 委員会においては輸入禁止製品として指定すべきかどうかは判断できないとのことであった このとき 接着剤 と 塗料 については 輸入を制限しない場合には 使用の形態から直接 環境を汚染するおそれがあるため輸入禁止製品とすべきと考えられた 4

11 本調査においては 輸入禁止製品として指定すべきかどうかは判断できないとされた PUF 製品を対象とし 購入する際には できる限り難燃加工表示のあるものを対象とした 本調査において購入した調査対象製品を表 に示す 表 調査対象製品 (PUF 製品 ) 試料 No 用途 製造国 #1 車用携帯まくら 中国 #2 チャイルドシート用マット 中国 #3 吹付用断熱材 オランダ #4 車用ジュニアシート 中国 #5 車用ジュニアシート 中国 #1 及び #2 は製品内部の PUF を試料とした #3 は 工事用のスプレー式の補修剤で 隙間などにスプレーすると発泡体が固まるものである 本調査では ステンレス製のバットに吹き付け固まったものを試料とした #4 及び #5 の試料は 車用のジュニアシートであり 座面のクッションとして使用されている部分を試料とした #4 に関しては 微量検出されたため クッションの部材ごと ( シートカバー用 PUF 座面上部 PUF および座面下部 PUF) の分析も行った 5

12 2. 分析方法 2.1. 標準物質類測定対象は PBDE のうち 四臭素化体 五臭素化体 六臭素化体及び七臭素化体であるが 含有の原因を究明するため 八臭素化体 九臭素化体及び十臭素化体の分析も行った (1) PBDE 標準物質 ( 検量線作成に使用 ) Wellington Laboratories 社製 四臭素化体 BDE-49, BDE-71, BDE-47, BDE-66, BDE-77 五臭素化体 BDE-100, BDE-119, BDE-99, BDE-85, BDE-126 六臭素化体 BDE-154, BDE-153, BDE-138, BDE-156 七臭素化体 BDE-184, BDE-183, BDE-191 八臭素化体 BDE-197, BDE-196 九臭素化体 BDE-207, BDE206 十臭素化体 BDE-209 (2) PBDE クリーンアップスパイク用内標準物質 * Wellington Laboratories 社製 四臭素化体 13 C12 BDE-47 五臭素化体 13 C12 BDE-99 六臭素化体 13 C12 BDE-154, 13 C12 BDE-153 七臭素化体 13 C12 BDE-183 八臭素化体 13 C12 BDE-197 九臭素化体 13 C12 BDE-207 十臭素化体 13 C12 BDE-209 (3) PBDE シリンジスパイク用内標準物質 ** Wellington Laboratories 社製 六臭素化物 13 C12 BDE 試薬類 (1) 超純水 超純水製造装置 (Milli-Q 日本ミリポア 製 ) より得られる水 (2) ヘキサン 関東化学 ダイオキシン類分析用 (3) ジクロロメタン 関東化学 ダイオキシン類分析用 (4) 無水硫酸ナトリウム 関東化学 残留農薬試験 PCB 試験用 (5) プレセップ多層シリカゲル 和光純薬工業 ダイオキシン類分析用 * クリーンアップスパイクは 分析操作中 ( 抽出 前処理 ) の損失を確認するため添加 すべての化合物は 13 C で標識した安定同位体標識化合物である ** シリンジスパイクは クリーンアップスパイクの回収率が決められた範囲 (50~120%) に入っていることを確認するための基準として使用する安定同位体 13 C で標識した化合物である 6

13 2.3. 機器分析 検出法の選択今回の試験目的から 各化合物を識別して分析する必要があり また 樹脂製品中の夾雑成分の影響を受ける可能性があるため 高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/HRMS) を用いて分析を行った GC/HRMS を用いた分析は U.S.EPA の公定法 (Method 1614) 2) や環境省の環境モニタリング調査 4) においても使用されている一般的な手法である GC/HRMS 分析条件 1) 使用分析機器 ガスクロマトグラフ :Agilent6890 (Agilent 社 ) 質量分析計 Autospec- : UltimaNT (Waters 社 ) 2) 操作条件 ガスクロマトグラフ 14~6 臭素化体分離カラム :ENV-5ms ( 関東化学 ) 膜厚 ;0.10 μm 内径 ;0.25 mm 長さ ;15 m カラム温度 :100 (2 min hold) 25 /min 200 (1 min hold) 5 /min 270 (1 min hold) 25 /min 300 (7 min hold) 28~10 臭素化体分離カラム :ENV-5ms ( 関東化学 ) 膜厚 ;0.10 μm 内径 ;0.25 mm 長さ ;15 m カラム温度 :120 (2 min hold) 20 /min /min 300 (6 min hold) 注入方法 : スプリットレス法試料導入部温度 :280 試料導入方式 : スプリットレス方式 (1.5 分間 ) 試料注入量 :1 μl キャリヤーガス : ヘリウム (1.0 ml/min 定流量 ) トランスファーライン温度 :280 質量分析計イオン化方法 : 電子衝撃イオン化法イオン検出方法 : ロックマス方式による選択イオン検出 (SIM) 法電子加速電圧 :36 V イオン化電流 :500 μa イオン源温度 :280 イオン加速電圧 :8 kv 7

14 分解能 (10%vallay):10000 設定質量数 : 表 に示す測定質量数を設定した 表 PBDE 測定イオン (M+2) + (M+4) + (M+6) + (M+8) + TeBDEs PeBDEs HxBDEs HpBDEs OBDEs [(M+6)-2Br] [(M+8)-2Br] NoBDEs [(M+8)-2Br] [(M+10)-2Br] DeBDE [(M+8)-2Br] [(M+10)-2Br] C12-TeBDEs C12-PeBDEs C12-HxBDEs C12-HpBDEs C12-OcBDEs [(M+6)-2Br] [(M+8)-2Br] C12-NoBDEs [(M+8)-2Br] [(M+10)-2Br] C12-DeBDE [(M+8)-2Br] [(M+10)-2Br] 検量線 フラグメントイオン 標準液の測定 表 に示した濃度範囲の検量線作成用標準液を調製し 1 濃度に対して 3 回 GC/HRMS に注入し 全濃度領域で合計 15 点のデータを得た 8

15 表 検量線作成用標準液濃度単位 (ng/ml) : 測定対象化合物 異性体 No. CS1 CS2 CS3 CS4 CS5 4-MoBDE BDE ,4-DiBDE BDE ,4'-DiBDE BDE ,2',4-TriBDE BDE ,4,4'-TriBDE BDE ,2',4,5'-TeBDE BDE ,3',4',6-TeBDE BDE ,2',4,4'-TeBDE BDE ,3',4,4'-TeBDE BDE ,3',4,4'-TeBDE BDE ,2',4,4',6-PeBDE BDE ,3',4,4',6-PeBDE BDE ,2',4,4',5-PeBDE BDE ,2',3,4,4'-PeBDE BDE ,3',4,4',5-PeBDE BDE ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE ,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE DeBDE BDE C12-2,2',4,4'-TeBDE 13C12-BDE C12-2,2',4,4',5-PeBDE 13C12-BDE C12-2,2',4,4',5,6'-HxBDE 13C12-BDE C12-2,2',4,4',5,5'-HxBDE 13C12-BDE C12-2,2',3,4,4',5',6-HpBDE 13C12-BDE C12-2,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE 13C12-BDE C12-2,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE 13C12-BDE C12-DeBDE 13C12-BDE C12-2,2',3,4,4',5'-HxBDE 13C12-BDE 検量線の作成各標準物質及び内標準物質のピーク面積を求め 各標準物質の対応するクリーンアップスパイク内標準物質に対するピーク面積の比及び注入した標準液中のその標準物質と内標準物質の濃度の比を用いて検量線を作成した 9

16 相対感度係数 (RRF) は 次式によって で得られた全濃度域合計 15 点の データの平均値から算出した RRF=Qcs/Qs As/Acs RRF: 測定対象物質のクリーンアップスパイク内標準物質との相対感度係数 Qcs: 標準液中のクリーンアップスパイク内標準物質の量 (pg) Qs: 標準液中の測定対象物質の量 (pg) As: 標準液中の測定対象物質のピーク面積 Acs: 標準液中のクリーンアップスパイク内標準物質のピーク面積 2.5. 試験方法の検討 含有試験含有試験は 試料から全ての目的成分を抽出することが必須となるため 製品を溶解して PBDE の安定同位体標識化合物を添加する方法を採用した PBDE の安定同位体標識化合物を用いた内標準法で定量するため 抽出時の回収率は補正されることとなる 試料は 0.3 g 程度を精密に量り取った 試料を硫酸に溶解し クリーンアップスパイクを添加した後 ヘキサンを用いた液 / 液抽出を行い PBDE をヘキサン層に抽出した 抽出操作を更に 2 回繰り返し ヘキサン層を合わせたものを超純水を用いて水洗し 脱水濃縮後 多層シリカゲルカラムを用いてクリーンアップした 目的成分を含んだ溶出液を濃縮転溶後 シリンジスパイク用内標準物質を添加しバイアルに移し入れ GC/HRMS を用いて分析した 分析方法の概要を以下の図 のフローチャートに示す 10

17 試料採取 0.3 g 程度を精密に量り取る 溶解 抽出 水洗 脱水 ろ過 硫酸 クリーンアップスパイク添加 ヘキサンを入れて液 / 液抽出抽出液を水洗 無水硫酸ナトリウム 濃縮 多層シリカゲルカラムクロマトグラフィー GC/HRMS 分析 ヘキサン 0.5 ml 程度まで濃縮 予めヘキサン 140 ml で洗浄洗いこみながら試料添加し ヘキサン 100mL で展開 10% ジクロロメタン / ヘキサン 80 ml を流出させ PBDE 画分 を得る シリンジスパイク添加 図 含有試験分析フローチャート 溶出試験産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法 ( 昭和 48 年環境庁告示第 13 号 ) では 通常 試料 1 g に対し精製水 10 ml を用いて 6 時間振とう溶出することとなっているが 測定対象である PUF は発泡素材で非常に軽く 吸水し易いため この条件では溶出水の大半を吸い取ってしまい溶出操作ができない 従って今回は試料量と溶出液の量の割合を通常の 1:10 から 1:100 に変更して溶出試験を行うこととした 6 時間振とう後 溶出液を孔径 1 μm のガラス繊維ろ紙でろ過し 検液を作成した ジクロロメタンを用いた液 / 液振とう抽出により PBDE を抽出した 抽出液を濃縮し ヘキサンに転溶後 多層シリカゲルカートリッジによる精製を行い GC/HRMS で測定した 溶出試験における PBDE 類の分析フローシートを図 に示す 今回の試験では 4 臭素化体から 7 臭素化体を測定対象としている 今回測定対象としていないが 本条件では 1 臭素化体の回収が悪くなるので 全同族体を分析する際には 目的に合わせて分画試験をする必要がある 11

18 試料採取 試料を精密に量り取る 水添加 試料の 100 倍量 振とう 6 時間 ろ過 ガラス繊維ろ紙 液 / 液振とう抽出 濃縮 多層シリカゲルカラムクロマトグラフィー GC/HRMS 分析 ジクロロメタン クリーンアップスパイク添加 ヘキサン転溶 0.5 ml 程度まで濃縮 予めヘキサン 140 ml で洗浄洗いこみながら試料添加し ヘキサン 100 ml で展開 10% ジクロロメタン / ヘキサン 80 ml を流出させ PBDE 画分 を得る シリンジスパイク添加 図 溶出試験分析フローチャート 2.6. 同定と定量 同定得られた SIM クロマトグラム上のピークの保持時間 ( リテンションタイム ) が標準物質とほぼ同じであり 2 つのモニターイオンのピーク面積比が臭素原子の同位体存在比から推定されるイオン強度比と同等であれば PBDE と同定した 定量 PBDE の定量は それぞれ対応するクリーンアップスパイク内標準物質の添 加量を基準にして 内標準法で次式によって試料中の濃度として求めた C = As I s Ai s RRF 1 W 今回の試験では 4 臭素化体から 7 臭素化体を測定対象としている 今回測定対象ではないが 本条件では 1 臭素化体の回収が悪くなるので 全同族体を分析する際には 目的に合わせて分画試験をする必要がある 12

19 ここに, C : 分析対象物質の量 ( 濃度 :ng/g) AS Ais IS RRF W : 分析対象物質のピーク面積値 :As に対応する内標準物質のピーク面積値 : 分析試料中の内標準物質の量 (ng) : 相対感度係数 : 試料量 (g) 2.7. 定量下限最低濃度の検量線作成用標準溶液に関して GC/HRMS 測定及び同定 定量をそれぞれ 5 回行い 得られた測定値の標準偏差を以下の式によって求め その 10 倍を定量下限とした s = å( x i - x ) n -1 2 ここに,s: xi: x: 標準偏差 個々の測定値 (µg) 測定値の平均値 (µg) n: 測定回数 表 および表 に定量下限値の測定結果を示す なお 表 の異性 体は 今回の測定対象外であるが 参考までに示した 13

20 表 定量下限値 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目標準定量異性体偏差下限値 No. ng/ml ng/ml ng/ml ng/ml ng/ml σ 10σ BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE BDE 表 測定対象以外の化合物物定量下限値 ( 参考 ) 異性体 No. 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 標準偏差 定量下限値 ng/ml ng/ml ng/ml ng/ml ng/ml σ 10σ BDE BDE BDE BDE BDE この結果を基にして 試料量 前処理時の分取量及び定容量等から試料の定量 下限値を算出した 14

21 3. 調査結果 下記の調査結果は 第一種特定化学物質である 臭素数が 4 から 7 のポリ臭素化ジフ ェニルエーテルの結果を示す 3.1. 含有試験結果 PBDE 合計値 試験結果を以下の表 に示す 表 含有試験結果 (PBDE 合計値 ) 試料 No. 用途 実測濃度 (ng/g) 製造国 #1 車用携帯まくら N.D. 中国 #2 チャイルドシート用マット N.D. 中国 #3 吹付用断熱材 3.6 オランダ #4 ( 座面全体 ) 99 #4 ( シートカバー ) 0.80 車用ジュニアシート #4 ( 座面上部 ) 6.2 中国 #4 ( 座面下部リサイクル ) 36 #5 車用ジュニアシート N.D. 中国 注 ) 実測濃度 : 製品中の四臭素化体から七臭素化体の合計濃度 (ng/g) 定量下限値未満は N.D. と記載 結果は 有効数字 2 桁表示 吹付用断熱材である試料 #3 において TeBDE PeBDE 及び HxBDE 一部の異性体が合計で 3.6 ng/g(ppb) と極微量検出された 製造国はオランダであった また 試料 #4 のジュニアシートの座面用 PUF ( 座面全体 ) から 99 ppb の PBDE( 四臭素化体から七臭素化体 ) の含有が確認された この製品には様々な場所に種類の異なる PUF が使用されていた PBDE が含有している部位を特定するため シートカバー 座面上部 ( 新規製造品 ) 座面下部 ( リサイクル品 ) の 3 点に関してそれぞれ含有濃度を求めた 座面下部のリサイクル品に多く含まれていることが判ったものの 座面全体の結果と比較し 低い値となった 座面下部はリサイクル品と思われ 様々な色と形に破砕された PUF が重なり合うように癒着されているものであった ( 図 参照 ) 破砕されたリサイクル用 PUF の一部に PBDE が含有しているものがあり 部位によりその配合率が異なるため 濃度のばらつきが大きいことが考えられた 検出された PBDE 異性体で濃度が他の異性体と比較して高いものは 市販難燃剤製品である PeBDE の主要異性体 (BDE-47 BDE-85 BDE-99 BDE-100 BDE-153 及び BDE-154) であった 5) よって PUF を PeBDE 難燃剤で難燃加工した製品が輸入される可能性もあると考えられた 15

22 座面上部 ( 新規成型品と思われる PUF) 座面下部 ( リサイクル品と思われる PUF) 図 試料 #4 座面 PUF の写真 16

23 PBDE 詳細結果 試験結果を以下の表 3-1-2~ 表 に示す 表 試料 #1 の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 測定項目 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE-47 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE-100 N.D ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE-99 N.D ,2',3,4,4'--PeBDE BDE-85 N.D ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-154 N.D ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE-153 N.D ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs - N.D. - PeBDEs - N.D. - HxBDEs - N.D. - HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) - N.D. - 2,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE-196 N.D ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-207 N.D ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE-206 N.D DeBDE BDE-209 N.D OxBDEs - N.D. - NoBDEs - N.D. - Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) - N.D. - 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 17

24 表 試料 #2 の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 測定項目 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE-47 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE-100 N.D ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE-99 N.D ,2',3,4,4'--PeBDE BDE-85 N.D ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-154 N.D ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE-153 N.D ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs - N.D. - PeBDEs - N.D. - HxBDEs - N.D. - HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) - N.D. - 2,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE-196 N.D ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE DeBDE BDE OxBDEs NoBDEs Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 18

25 測定項目 表 試料 #3 の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE ,2',3,4,4'--PeBDE BDE-85 N.D ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-154 N.D ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs PeBDEs HxBDEs HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) ,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE-196 N.D ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-207 N.D ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE-206 N.D DeBDE BDE OxBDEs - N.D. - NoBDEs - N.D. - Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 19

26 表 試料 #4( 座面全体 ) の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 測定項目 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE ,2',3,4,4'--PeBDE BDE ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs PeBDEs HxBDEs HpBDEs Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) ,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE DeBDE BDE OxBDEs NoBDEs Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 20

27 表 試料 #4( シートカバー ) の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 測定項目 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE ,2',3,4,4'--PeBDE BDE-85 N.D ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-154 N.D ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE-153 N.D ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs PeBDEs HxBDEs - N.D. - HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) ,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE-196 N.D ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-207 N.D ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE-206 N.D DeBDE BDE OxBDEs - N.D. - NoBDEs - N.D. - Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 21

28 表 試料 #4( 座面上部 ( 新規製造品 )) の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 測定項目 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE ,2',3,4,4'--PeBDE BDE ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs PeBDEs HxBDEs - N.D. - HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) ,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-207 N.D ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE-206 N.D DeBDE BDE OxBDEs NoBDEs Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 22

29 表 試料 #4( 座面下部 ( リサイクル品 )) の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 測定項目 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE ,2',3,4,4'--PeBDE BDE ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs PeBDEs HxBDEs HpBDEs Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) ,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE DeBDE BDE OxBDEs NoBDEs Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 23

30 表 試料 #5 の PBDE 詳細結果 ( 含有試験 ) 測定項目 異性体 No. 実測濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE-47 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE-100 N.D ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE-99 N.D ,2',3,4,4'--PeBDE BDE-85 N.D ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-154 N.D ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE-153 N.D ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs - N.D. - PeBDEs - N.D. - HxBDEs - N.D. - HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) - N.D. - 2,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE-196 N.D ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-207 N.D ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE-206 N.D DeBDE BDE-209 N.D OxBDEs - N.D. - NoBDEs - N.D. - Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) - N.D. - 注 ) 定量下限値未満は N.D. と記載 24

31 3.2. 溶出試験結果 3.1 項の含有試験結果で TeBDE から HpBDE の異性体の含有が確認された試料に関して 含有する PBDE の水への溶出率 ( 溶出量 ) を算出するために 溶出試験を実施した 結果を表 及び表 に示す 表 試料 #3 の PBDE 詳細結果 ( 溶出試験 ) 測定項目 異性体 No. 溶出濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE-47 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE-100 N.D ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE-99 N.D ,2',3,4,4'--PeBDE BDE-85 N.D ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-154 N.D ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE-153 N.D ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs - N.D. - PeBDEs - N.D. - HxBDEs - N.D. - HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) - N.D. - 2,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE-196 N.D ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-207 N.D ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE-206 N.D DeBDE BDE-209 N.D OxBDEs - N.D. - NoBDEs - N.D. - Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) - N.D. - 注 1) 定量下限値未満は N.D. と記載 注 2) 溶出濃度は試料 1 g 当たりの溶出量を示す 25

32 表 試料 #4 の PBDE 詳細結果 ( 溶出試験 ) 測定項目 異性体 No. 溶出濃度 (ng/g) 試料の定量下限値 (ng/g) 2,2',4,5'-TeBDE BDE-49 N.D ,3',4',6-TeBDE BDE-71 N.D ,2',4,4'-TeBDE BDE-47 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-66 N.D ,3',4,4'-TeBDE BDE-77 N.D ,2',4,4',6-PeBDE BDE-100 N.D ,3',4,4',6-PeBDE BDE-119 N.D ,2',4,4',5-PeBDE BDE-99 N.D ,2',3,4,4'--PeBDE BDE-85 N.D ,3',4,4',5-PeBDE BDE-126 N.D ,2',4,4',5',6-HxBDE BDE-154 N.D ,2',4,4',5,5'-HxBDE BDE-153 N.D ,2',3,4,4',5'-HxBDE BDE-138 N.D ,3,3'4,4'5-HxBDE BDE-156 N.D ,2',3,4,4',6,6'-HpBDE BDE-184 N.D ,2',3,4,4',5',6-HpBDE BDE-183 N.D ,3,3',4,4',5',6-HpBDE BDE-191 N.D TeBDEs - N.D. - PeBDEs - N.D. - HxBDEs - N.D. - HpBDEs - N.D. - Total PBDEs (4 臭素化から 7 臭素化物の合計 ) - N.D. - 2,2',3,3',4,4',6,6'-OBDE BDE-197 N.D ,2',3,3',4,4',5,6'-OBDE BDE-196 N.D ,2',3,3',4,4',5,6,6'-NoBDE BDE-207 N.D ,2',3,3',4,4',5,5',6'-NoBDE BDE-206 N.D DeBDE BDE-209 N.D OxBDEs - N.D. - NoBDEs - N.D. - Total PBDEs (8 臭素化から 10 臭素化物の合計 ) - N.D. - 注 1) 定量下限値未満は N.D. と記載 注 2) 溶出濃度は試料 1 g 当たりの溶出量を示す 表 及び表 より PUF 試料 #3 及び #4 から水への PBDE の溶出はみら れなかった 26

33 4. 暴露評価 4.1. 排出量の推定今回検出された PUF 試料に関して 含有する PBDE の水への溶出率を算出するために 溶出試験を実施した その結果 PUF 試料 #3 及び #4 から PBDE の水への溶出はみられなかった PUF は 大気中の PBDE の採取時に吸着材 ( 捕集材 ) として使用されている 4) この大気試料を PUF から抽出する際には 有機溶媒であるアセトンを用いてソックスレー抽出を 24 時間行う必要があり 溶出試験条件である水を用いた 6 時間振とうでは PUF から PBDE は殆ど溶出しないことが推察される 実際に今回の試験条件では 定量下限値以上の PBDE は溶出されなかった 従って 今回の濃度レベルにおいては これら PUF 試料に含有する PBDE が雨水や排水へ溶出し 環境中に放出されることは殆どないと考えられる 5. リスク評価 今回の PUF 試料に含有する PBDE( 臭素数が 4 から 7 のもの ) に関しては 環境中へ 殆ど放出されないため 環境経由のヒト健康への影響は殆ど懸念されないといえる 6. 参考文献 1) 経済産業省報道発表資料 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令案 ( 平成 21 年 10 月 27 日 ) 2)U.S.EPA Method 1614 Brominated Diphenyl Ethers in Water Soil,Sediment and Tissue by HRGC/HRMS August ) 平成 21 年度第 1 回薬事 食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会 第二部 平成 21 年度化学物質審議会第 1 回安全対策部会第 90 回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会資料 2 第一種特定化学物質に指定することが適当とされたペルフルオロ( オクタン-1-スルホン酸 )( 別名 PFOS) 又はその塩など 9 種類の物質 (12 物質 ) の今後の対策について ( 平成 21 年 7 月 23 日 ) 4) 環境省水 大気環境局総務課ダイオキシン対策室 平成 21 年度臭素系ダイオキシン 類排出実態等調査結果報告書 ( 平成 23 年 2 月 18 日 ) 5) M. J. La Guardia, R. C. Hale, E. Harvey: Detailed Polybrominated Diphenyl Ether (PBDE) Congener Composition of the Widely Used Penta-, Octa-, and Deca-PBDE Technical Flame-retardant Mixtures, Environ. Sci. Technol., 2006, 40, , 27

34 Ⅱ. ヘキサクロロベンゼン含有製品の安全性調査

35

36 Ⅱ. ヘキサクロロベンゼン含有製品の安全性調査 1. 調査内容 調査対象物質及び調査対象製品 顔料及び顔料が使用された製品 がん具花火 調査対象製品 分析方法 標準物質類 試薬類 機器分析 検出法の選択 GC/HRMS 分析条件 検量線 標準液の測定 検量線の作成 試験方法 含有試験 溶出試験 同定と定量 同定 定量 定量下限 調査結果 含有試験結果 溶出試験結果 製品の環境への影響 製品からの放出可能性について 参考文献... 16

37 1. 調査内容 1.1. 調査対象物質及び調査対象製品 顔料及び顔料が使用された製品本調査では ヘキサクロロベンゼン ( 以下 HxCBz という ) を調査対象とした 副生する特定化学物質の BAT 削減レベルに関する評価委員会 では 平成 18 年 11 月に TCPA 及びこれを原料とする顔料ソルベントレッド 135 中の副生 HxCBz に係る削減レベルに関する報告書を取りまとめている 1) この中で 特定の顔料中に化審法の第一種特定化学物質である HxCBz が含有していることが判明した 1) また平成 18 年 3 月にピグメントブルー 15 を塩素化して製造される染料又は顔料についても副生 HxCBz が含まれていることが明らかとなった 2) これらの報告書において フタロシアニン系顔料では ピグメントグリーン 7( 以下 PG7 という ) 及びピグメントグリーン 36( 以下 PG36 という ) に関しては BAT レベルが設定されているもののピグメントブルー顔料に関しては 検討は行われていない 適正な化学物質の評価 及び管理を行う上で 最終的な市販工業製品中にどの程度の HxCBz が含有されているのか 調査することは非常に重要である そのため これらのブルー系あるいはグリーン系顔料が使用されていると考えられた市販製品を入手し 実際に HxCBz の含有量調査を行った また 化学構造が類似する第一種特定化学物質であるペンタクロロベンゼン ( 以下 PeCBz という ) も調査対象とした がん具花火 Chemicals Legislation European Enforcement Network(CLEEN: ヨーロッパ化学物質立法強化ネットワーク ) の報告では 2008 年から 2009 年の調査において 中国製の花火の 25% に HxCBz が含有しているとのことであった 3) その濃度に関しては KEMI( スウェーデン国家化学品監督局 ) の報告がある 4) 分析した 8 製品のうち 6 製品からヘキサクロロベンゼンが検出され そのうち 3 製品に関しては 2000 mg/kg(ppm) を超えて含有していたとのことである 本調査では 入手可能な中国製花火中の HxCBz 濃度測定を行った ( 同じ販売セットの中のタイ製の 1 種類も分析を行った ) 日本においては 花火は製造 販売 運搬及び消費の各段階において 火薬類取締法 によって規制されている 5) 一般家庭で入手が可能ながん具花火は火薬取締法施行規則第一条の五に規定されており 火薬量は最大でも 15 g の製品である 本調査では がん具花火を購入し HxCBz の含有量調査を行った また 化学構造が類似する第一種特定化学物質である PeCBz も調査対象とした 1

38 1.2. 調査対象製品 顔料及び顔料が使用された製品に関する調査対象製品を表 に示す 表 顔料関連調査対象製品 試料 No. 種類 製造国 #P01 顔料 韓国 #P02 顔料 韓国 #P03 顔料 日本 #P04 顔料使用製品 中国 がん具花火に関する調査対象製品を表 に示す 表 がん具花火調査対象製品 試料 No. 種類 製造国 #F01 回転花火 中国 #F02 噴出花火 中国 #F03 タイ #F04 噴出花火 中国 #F05 打上花火 中国 #F06 打上花火 中国 #F07 噴出花火 中国 #F08 噴出花火 中国 #F09 打上花火 中国 #F10 吹出花火 中国 #F11 吹出花火 中国 #F12 吹出花火 中国 #F13 線香花火 中国 #F14 吹出花火 中国 #F15 吹出花火 中国 #F16 スパークル 中国 試料 No.#F01 から #F09 は地上に設置して火をつける打上花火 ( 噴出花火等を含む ) で あり #F10 から #F16 は手に持つ種類の花火 ( 手持花火 ) である 2

39 2. 分析方法 2.1. 標準物質類 (1) 標準物質 HxCBz PeCBz Cambridge Isotope Laboratories 社 東京化成工業 * (2) クリーンアップスパイク用内標準物質 13 C12-HxCBz Cambridge Isotope Laboratories 社 13 C12-PeCBz Cambridge Isotope Laboratories 社 ** (3) シリンジスパイク用内標準物質 13 C12-α- ヘキサクロロシクロヘキサン (HCH) Cambridge Isotope Laboratories 社 2.2. 試薬類 (1) 超純水 超純水製造装置 120(Milli-Q 日本ミリポア 製 ) より得られる水 (2) ヘキサン 関東化学 ダイオキシン類分析用 (3) トルエン 関東化学 ダイオキシン類分析用 (4) 酢酸エチル 関東化学 会社 残留農薬試験 PCB 試験用 (5) アセトン 関東化学 ダイオキシン類分析用 (6) ジクロロメタン 関東化学 ダイオキシン類分析用 (7) 硫酸 関東化学 精密分析用 (8) 無水硫酸ナトリウム 関東化学 残留農薬試験 PCB 試験用 (9) スペルクリン多層シリカゲルカラム シグマアルドリッチジャパン 2.3. 機器分析 検出法の選択副生する特定化学物質の BAT 削減レベルに関する評価委員会報告書 1)2) における HxCBz 析方法 また 環境省の 排出ガス中の POPs( ポリ塩素化ビフェニル ヘキサクロロベンゼン ペンタクロロベンゼン ) 測定方法マニュアル 6) にしたがい 高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/HRMS) を用いて分析を行った 分解能は 以上が必要である 以上の高分解能での測定を維持するため 質量校正用標準物質を測定用試料と同時にイオン源に導いて測定イオンに近い質量のイオンをモニタして質量の微少な変動を補正するロックマス方式による選択イオン検出法 (SIM 法 ) で検出し 保持時間及びイオン強度比から測定対象物質であることを確認した後 クロマトグラム上のピーク面積から内標準法によって定量を行った * ** クリーンアップスパイクは 分析操作中 ( 抽出 前処理 ) の損失を確認するため添加 すべての化合物は 13 C で標識した安定同位体標識化合物である シリンジスパイクは クリーンアップスパイクの回収率が決められた範囲 (50~120%) に入っていることを確認するための基準として使用する安定同位体 13 C で標識した化合物である 3

40 GC/HRMS 分析条件 1) 使用分析機器 2) 操作条件 ガスクロマトグラフ :Agilent6890 (Agilent Technologies 社 ) 質量分析計 Autospec- : UltimaNT (Waters 社 ) ガスクロマトグラフ 分離カラム :ENV-17ms ( 関東化学 ) 膜厚 ;0.10 μm 内径 ;0.25 mm 長さ ;30 m カラム温度 :80 (1 min hold) 10 /min 280 注入方法 : スプリットレス法 試料導入部温度 :280 試料導入方式 : スプリットレス方式 (1.0 分間 ) 試料注入量 :1 μl キャリヤーガス : ヘリウム (1.0 ml/min 定流量 ) トランスファーライン温度 :280 質量分析計 イオン化方法 : 電子衝撃イオン化法 イオン検出方法 : ロックマス方式による選択イオン検出 (SIM) 法 電子加速電圧 :36 V イオン化電流 :500 μa イオン源温度 :280 イオン加速電圧 :8 kv 分解能 (10%vallay):10000 設定質量数 : 表 に示す測定質量数を設定した 表 測定質量数 測定対象化合物 m/z PeCBz , HxCBz , C6-PeCBz , C6-HxCBzz , C6-α-HCH , 検量線 標準液の測定 表 に示した濃度範囲の検量線作成用標準液を調製し 1 濃度に対して 3 4

41 回 GC/HRMS に注入し SIM 測定操作を行って 全濃度領域で合計 15 点のデー タを得た 表 検量線作成用標準液濃度単位 (ng/ml) : 標準液名 CS7 CS6 CS5 CS4 CS3 CS2 CS1 PeCBz HxCBz C6-PeCBz C6-HxCBz C6-α-HCH 検量線の作成各標準物質及び内標準物質のピーク面積を求め 各標準物質の対応するクリーンアップスパイク内標準物質に対するピーク面積の比及び注入した標準液中のその標準物質と内標準物質の濃度の比を用いて検量線を作成した 相対感度係数 (RRF) は 次式によって 項で得られた全濃度域合計 15 点のデータの平均値から算出した RRF=Qcs/Qs As/Acs RRF: 測定対象物質のクリーンアップスパイク内標準物質との相対感度係数 Qcs: 標準液中のクリーンアップスパイク内標準物質の量 (pg) Qs: 標準液中の測定対象物質の量 (pg) As: 標準液中の測定対象物質のピーク面積 Acs: 標準液中のクリーンアップスパイク内標準物質のピーク面積 PeCBz の検量線を図 に HxCBz の検量線を図 にそれぞれ示す 5

42 図 PeCBz の検量線 図 HxCBz の検量線 6

43 2.5. 試験方法 含有試験含有試験方は 試料から全ての目的成分を抽出することが必須となるため 製品を溶解して HxCBz の安定同位体標識化合物を添加する方法を採用した PBDE の安定同位体標識化合物を用いた内標準法で定量するため 抽出時の回収率は補正されることとなる 試料は 0.05~0.1 g 程度を精密に量り取った 試料を硫酸に溶解し クリーンアップスパイク用内標準物質を添加した後 ヘキサンを用いた液 / 液抽出を行い PeCBs 及び HxCBz をヘキサン層に抽出した 抽出操作を更に 2 回繰り返し ヘキサン層を合わせたものを超純水を用いて水洗し 脱水濃縮後 多層シリカゲルカラムを用いてクリーンアップした * 目的成分を含んだ溶出液を濃縮転溶後 シリンジスパイク用内標準物質を添加しバイアルに移し入れ GC/HRMS を用いて分析した 含有試験の概要を以下の図 のフローチャートに示す 試料採取 0.05~0.1 g 程度を精密に量り取る 溶解 抽出 水洗 硫酸 * クリーンアップスパイク添加 ヘキサンで液 / 液抽出抽出液を水洗 脱水 ろ過 無水硫酸ナトリウム 濃縮 ヘキサン 0.5 ml 程度まで濃縮 多層シリカゲルカラムクロマトグラフィー GC/HRMS 分析 予めヘキサン 10 ml で洗浄洗いこみながら試料添加し ヘキサン 100 ml を流出させる シリンジスパイク添加 図 含有試験フローチャート * 試料量が多い場合には 硫酸を用いた溶解方法であると反応による発熱により発火する恐れがある この ような場合は アセトンを用いた超音波照射による抽出を行う 7

44 溶出試験試料 1 g に対し精製水 10 ml を用いて 6 時間振とう溶出し 溶出液を孔径 1 μm のガラス繊維ろ紙でろ過し 検液を作成した ( 昭和 48 年環境庁告示第 13 号に準拠 ) 検液をジクロロメタンで振とう抽出を行った 抽出液を濃縮し ヘキサンに転溶後 硫酸処理 多層シリカゲルカラムによる精製を行い GC/HRMS で測定した 溶出試験の概要を以下の図 のフローチャートに示す 試料採取 試料を精密に量り取る 水添加 試料の 10 倍量 溶出 ろ過 振とう抽出 6 時間振とうガラス繊維ろ紙でろ過 ジクロロメタン 濃縮 転溶 多層シリカゲルカラムクロマトグラフィー GC/MS 分析 ヘキサン 0.5 ml 程度に クリーンアップスパイク添加 予めヘキサン 10 ml で洗浄洗いこみながら試料添加し ヘキサン 10 ml を流出させる シリンジスパイク添加 図 溶出試験フローチャート 8

45 2.6. 同定と定量 同定得られた SIM クロマトグラム上のピークの保持時間 ( リテンションタイム ) が標準物質とほぼ同じであり 2 つのモニターイオンのピーク面積比が塩素原子の同位体存在比から推定されるイオン強度比と同等であれば PeCBz あるいは HxCBz と同定した 定量 定量は それぞれ対応するクリーンアップスパイク内標準物質の添加量を基準 にして 内標準法で次式によって試料中の濃度として求めた C = As I s Ai s RRF 1 W ここに, C : 分析対象物質の量 ( 濃度 :ng/g) AS Ais IS RRF W : 分析対象物質のピーク面積値 :Asに対応する内標準物質のピーク面積値 : 分析試料中の内標準物質の量 (ng) : 相対感度係数 : 試料量 (g) 2.7. 定量下限最低濃度の検量線作成用標準溶液に関して GC/HRMS 測定及び同定 定量をそれぞれ 5 回行い 得られた測定値の標準偏差 (σ) を以下の式によって求め その 10 倍を定量下限とした s = å( x i - x ) n -1 2 ここに,s: 標準偏差 xi: 個々の測定値 (ng/ml) x : 測定値の平均値 (ng/ml) n: 測定回数 9

46 表 に定量下限値の測定結果を示す 異性体 No. 表 定量下限値 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 標準 偏差 定量下限値 ng/ml ng/ml ng/ml ng/ml ng/ml σ 10σ PeCBz HxCBz この結果 (10σ) を基にして 試料量 前処理時の分取量及び定容量等から試料の定 量下限値を算出した 10

47 3. 調査結果 3.1. 含有試験結果 試験結果を以下の表 に示す 表 含有試験結果 試料 No. 種類 PeCBz 実測濃度 (ng/g) HxCBz 実測濃度 (ng/g) 製造国 #P01 顔料 中国 #P02 顔料 中国 #P03 顔料 日本 #P04 顔料使用製品 中国 #F01 回転花火 中国 #F02 噴出花火 中国 #F タイ #F04 噴出花火 中国 #F05 打上花火 中国 #F06 打上花火 中国 #F07 噴出花火 中国 #F08 噴出花火 中国 #F09 打上花火 中国 #F10 吹出花火 中国 #F11 吹出花火 中国 #F12 吹出花火 N.D 中国 #F13 線香花火 N.D. 10 中国 #F14 吹出花火 N.D. 1.4 中国 #F15 吹出花火 N.D. 8.6 中国 #F16 スパークル N.D. 87 中国 注 1) 定量下限値未満は N.D. と記載 注 2) 結果は 有効数字 2 桁表示 試料 #P03 の HxCBs が 2 ppm と今回の試料においては最も高い値を示した この製品はピグメントグリーン 7 ( 以下 PG7 という ) と考えられる顔料であり 油絵の具や捺染用の顔料として ホームセンターで販売していたものであった PG7 の BAT レベル 2) としては 尿素法によるブルークルードを原料として PG7 を製造する際に 当面 50 ppm 長期的には 30 ppm 以下の数値を目安に設定することが望ましいとしている 今回の PG7 の結果はこの長期的な目標の 30 ppm を大きく下回っており その他の顔料関連製品に関しても 測定対象物質は検出されているものの ppb レベルかそれ以下となっていた 11

48 3.2. 溶出試験結果顔料関連の試料は BAT レベル以下であった 花火試料に関しては含有濃度に関しての基準値がないため 製品からの環境中への放出を溶出試験結果から見積もる必要がある HxCBz 等における花火試料から環境中への移行シナリオは以下のものが考えられた シナリオ 1 シナリオ 2 花火の燃焼残渣をバケツに用意した水に浸け 残り火を消火した水を環境中に散水した 花火が未燃焼であり 安全のためそのままバケツ中の水に投入した 花火中の火薬が解れて溶解した水を環境中に散水した ワーストケースを考慮する場合 HxCBz の含有量が最も高いものを想定することになる 測定対象物質の濃度が高い花火の種類は 噴出花火 であり 表 の含有試験結果からどれも HxCBz の濃度が 3 桁となっている (#F02:210 ng/g #F04:320 ng/g #F07:120ng/g) この噴出花火をシナリオ1に適用すると 火花の火薬残渣が広範囲に飛び散るため 残渣の回収が困難であり危険も伴うため中止した シナリオ2に関しては 社団法人日本煙火協会発行の花火入門 7) に記載されている花火の処分方法において 手持ち花火では水の中で火薬部分を解して溶かすとあるが 打ち上げタイプやロケット類は構造が異なり 水が浸透しにくいため処理がしにくく一般の方には勧めないと記載されていることから 通常はこのような廃棄方法はしないと考えられた そこで これらシナリオを評価するのために 今回は火薬量の少ない手持ち花火を採用し 手持ち花火としては最も高い濃度であった #F16 を使用して溶出試験を行った 溶出試験は 花火の未燃焼火薬部分とそれを燃焼した残渣の 2 通りで行った シナリオ 1 用には 手持ち花火をコニカルビーカー内で燃焼させ 火花の残渣も含めて回収したものを溶出試験用試料とした また シナリオ2に関しては 花火入門に従い火薬を解したものを溶出試験用試料とした 結果を表 に示す 試料 No. 表 試料備考 溶出試験結果 PeCBz 溶出濃度 (ng/g) HxCBz 溶出濃度 (ng/g) #F16 シナリオ 1: 火薬燃焼残渣の水溶出試験 N.D #F16 シナリオ 2: 未燃焼火薬部分の水溶出試験 N.D 注 1) 定量下限値未満は N.D. と記載 注 2) 溶出濃度は試料 1 g 当たりの溶出量を示す #F16 の HxCBz 含有試験結果は 87 ng/g であり HxCBz の水溶出率はシナリオ 1 及 び 2 の水溶出試験からそれぞれ約 0.08% 及び約 0.9% と見積もられた 12

49 4. 製品の環境への影響 4.1. 製品からの放出可能性について表 の HxCBz 含有濃度に試料量 ( 火薬を含む粉体量 ) を乗じて 各花火試料 1 個あたりの HxCBz 含有量を求めた 結果を表 に示した 種類 打上花火 ( 噴出花火等を含む ) 手持花火 ( 吹出花火等 ) 表 花火試料 1 個あたりの HxCBz 含有量 注 ) 平均値は有効数字 2 桁表示 花火試料 1 個あたりの 試料 No HxCBz 含有量 (ng) #F #F #F #F 平均 #F #F #F #F #F #F #F #F #F #F #F #F 平均 26 全平均 800 HxCBz 含有量の算術平均値は 打上花火で 1400 ng/ 個 手持花火では 26 ng/ 個である 全日本中国花火輸入協同組合によれば 中国からのがん具花火の輸入個数は年間約 906,000,000 個とのことである その中で打上花火と手持花火の割合に関する情報は得られていないため 今回調査の全平均値を用いて評価すると HxCBz は 800 ng/ 個 906,000,000 個 =725 g 輸入されていると概算された 本調査による溶出試験は手持花火で行っているが 溶出率を考えた場合 打上花火よりも手持花火の方が 内部に水が浸透し易いと考えられるため より安全サイドに立った評価が出来ると考えられた 溶出試験結果から これら輸入花火中の HxCBz725 g のうち ワーストケースとして未使用品 ( 未燃焼 ) として全て廃棄され 雨水により環境中に放出されると仮定すると 以下の様に環境放出量 (g/ 年 ) を算出することが出来る 未燃焼花火からのHxCBz溶出濃度 (0.77ng/g) 725 g( 年間推定輸入量 ) =6.4 g/ 年花火中 HxCBz含有濃度 (87ng/g) 13

50 また 輸入花火を全て使用 ( 燃焼 ) し その燃焼残渣が環境中に放出された場合にお いては 以下の様に算出することが出来る 燃焼残渣からのHxCBz溶出濃度 (0.068ng/g) 725 g( 年間推定輸入量 ) =0.57 g/ 年花火中 HxCBz含有濃度 (87ng/g) 一般的な花火の使用状況を考えた場合 未使用の花火を廃棄する事例よりも 使用 後の燃焼残渣を水で洗い流す事例の方が多いと予想され 実際の環境放出量はワース トケースの 6.4 g よりもかなり小さい値になると推定される 輸入花火由来の HxCBz の環境放出量 (6.4 g 以下 ) は 表 に示した国内の HxCBz 排出インベントリーの他の発生源と比較したところ 特に重要な排出経路ではないと考えられた 但し 先述のスウェーデンにおける検出事例のように 高濃度で HxCBz を含有している花火試料が輸入される可能性もあるため 今後とも濃度レベルを注視していく必要がある 14

51 表 日本の HxCBz 排出インベントリー (2002 年 ) 8 ) 15

52 5. 参考文献 1) 副生する特定化学物質に関する BAT 削減レベルに関する評価委員会 : TCPA 及びソルベントレッド 135 中の副生 HCB に係る BAT レベルに関する報告書 ( 平成 18 年 11 月 ) 2) 副生する特定化学物質に関する BAT 削減レベルに関する評価委員会 : TCPA 由来そ の他顔料及びフタロシアニン系顔料中の副生 HCB に係る BAT レベルに関する報告書 ( 平成 19 年 4 月 ) 3) CLEEN Enforcement Project 4) KEMI 報道発表資料 :Prohibited substance in fireworks (2011 年 4 月 27 日 ) 5) 火薬類取締法施行規則 ( 昭和 25 年 10 月 31 日通商産業省令第 88 号 ) 最終改正 : 平成 21 年 11 月 27 日 6) 環境省水 大気環境局大気環境課 : 排出ガス中の POPs ( ポリ塩素化ビフェニル ヘキサクロロベンゼン ペンタクロロベンゼン ) 測定方法マニュアル ( 平成 23 年 3 月 ) 7) 社団法人日本煙火協会 : 花火入門 平成 23 年夏版 8) 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約関係省庁連絡会議 : 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約に基づく国内実施計画 (2005 年 6 月 24 日承認 ) 16

53 Ⅲ. PFOS 又はその塩含有製品の安全性調査

54 Ⅲ. PFOS 又はその塩含有製品の安全性調査 1. 調査内容 調査対象物質 調査対象製品 分析方法 標準物質類 試薬類 機器分析 検出法の選択 LC/MS/MS 測定条件 検量線 標準液の測定 検量線の作成 含有試験方法 固体試料 ( 試料 #1~#4) 水性液体試料 ( 試料 #5~#9 試料#13~#14) 油性液体試料 ( 試料 #10~#12) 溶出試験方法 同定と定量 同定 定量 定量下限 調査結果 測定条件の検討結果 含有試験の検討結果 固体試料の抽出方法 水性液体試料の精製方法 添加回収試験 含有試験結果 溶出試験結果 暴露評価 モデル計算に使用したパラメータ 推定暴露量 有害性評価 調査方法 リスク評価に用いる無毒性量等 不確実係数の算出 リスク評価 参考文献... 28

55 1. 調査内容 1.1. 調査対象物質本調査では PFOS 又はその塩を調査対象とした PFOS の塩は数多く存在するため 一例を以下に示す また カリウム塩の化学構造式を図 に PFOS の基本情報を表 に示す Potassium perfluorooctane sulfonate (CAS No ) Lithium perfluorooctane sulfonate (CAS No ) Ammonium perfluorooctane sulfonate (CAS No ) Diethanolammonium perfluorooctane sulfonate (CAS No ) Tetraethylammonium perfluorooctane sulfonate (CAS No ) Didecyldimethylammonium perfluorooctane sulfonate (CAS No ) 図 PFOS のカリウム塩 1) 1

56 表 PFOS に関するの基本情報 1) 2) 3) 政令名称 名称 ( 英名 ) ペルフルオロ ( オクタン-1-スルホン酸 )( 別名 PFOS) 又はその塩 Perfluoro(octane-1-sulfonic acid) 官報公示整理番号 既存名簿 官報公示名称 パーフルオルオクタンスルホン酸 CAS.No 分子式 C8HF17O3S 化学構造式 分子量 沸点 133 (0.8 kpa) 融点 90 密度 ( 比重 ) 外観 液体 水溶解度淡水 :370 mg/l (PFOS のカリウム塩の場合 ) 2

57 1.2. 調査対象製品 化審法第 24 条に規定する 化審法施行令第 7 条で定める PFOS 又はその塩の対象製品 を以下の表 に示す 表 PFOS 又はその塩の化審法第 24 条対象製品一覧 ( 当該物質が使用されている場合に輸入することができない製品一覧 ) 番号 対象製品 1 航空機用の作動油 2 糸を紡ぐために使用する油剤 3 金属の加工に使用するエッチング剤 4 半導体 ( 無線機器が 3 メガヘルツ以上の周波数の電波を送受信することを可能とする化合物半導体を除く ) の製造に使用するエッチング剤 5 メッキ用の表面処理剤又はその調製添加剤 6 半導体の製造に使用する反射防止剤 7 研磨剤 8 消火器 消火器用消火薬剤及び泡消火薬剤 9 防虫剤 ( しろあり又はありの防除に用いられるものに限る ) 10 印画紙 今回の調査対象製品は 平成 22 年度の本調査で対象とした製品を除き 表 に示 す入手可能な印画紙等の 14 試料を今回の試買製品として調査を行った ( 但し 試料 #13 及び #14 は製造者からの提供品 ) 3

58 表 調査対象製品 試料 No. 用途製造国 # 1 チェコ # 2 英国印画紙 # 3 米国 # 4 日本 # 5 日本 # 6 メッキ用の表面処理剤又は 日本 # 7 その調製添加剤 日本 # 8 日本 # 9 日本 # 10 防虫剤 ( しろあり又はありの日本防除に用いられるものに限 # 11 る ) 日本 # 12 日本 # 13 糸を紡ぐために使用する油 日本 # 14 剤 日本 4

59 2. 分析方法 2.1. 標準物質類 (1) PFOS 標準物質 (Linear) Sodium perfluoro-1-octanesulfonate:l-pfos Wellington Laboratories 社 (2) PFOS 標準物質 (Technical Grade) Potasium perfluorooctane sulfonate:t-pfos Wellington Laboratories 社 (3) PFOS 内標準物質 ( 以下 13 C4-PFOS とする ) Sodium perfluoro-1-[1,2,3,4-13 C4]-octanesulfonate:MPFOS Wellington Laboratories 社 (4) PFOS 異性体標準物質 Sodium perfluoro-1-methylheptane sulfonate:p1mhps Wellington Laboratories 社 2.2. 試薬類 (1) 蒸留水 和光純薬工業 LC/MS 分析用 (2) メタノール 和光純薬工業 LC/MS 分析用 (3) アセトニトリル FLUKA 社 LC/MS 分析用 (4) ヘキサン 関東化学 残留農薬試験 PCB 試験用 (5) 酢酸 和光純薬工業 高速液体クロマトグラフ用 (6) アンモニア水 関東化学 Suprapur (7) 酢酸アンモニウム 関東化学 特級 (8) Oasis WAX 固相カラム Waters 社 固相吸着剤量 150 mg 2.3. 機器分析 検出法の選択 PFOS 又はその塩の分析方法としては 液体クロマトグラフ質量分析計 (LC/MS) やタンデム型の LC/MS/MS を用いた測定例が多く LC/MS/MS 測定は特に環境水等の微量分析に多く利用されている 今回の調査の場合 様々な原材料から成る製品中の含有試験であり 製品中の妨害成分の影響が懸念されたため 選択性の高い LC/MS/MS 測定を用いて検討を実施することにした LC/MS/MS 測定条件 装 置 :LC 装置 Prominence ( 島津製作所 ) MS/MS 装置 API4000 (AB SCIEX 社 ) カ ラ ム :Acuity UPLC BEH Shield RP18 (Waters 社 ) 長さ 100 mm 内径 2.1 mm 粒径 1.7 mm 移 動 相 :30%B(0 min) 95%B(10-12 min) 30%B(12.5 min) STOP(14.5 min) 5

60 移動相 (A) 移動相 (B) 移動相流量 :0.3 ml/min イオン化モード :ESI- 注入量 :5 ml 5 mm 酢酸アンモニウム水溶液 アセトニトリル 測定方法 : 選択反応検出法 (SRM) 測定イオン : 2.4. 検量線 標準液の測定 定量イオン (m/z) 確認イオン (m/z) 対象物質 PFOS 内標準物質 13 C4-PFOS 表 に示した各濃度の検量線作成用標準液をメタノール / 水 (1/1) で調製した 後 LC/MS/MS に一定量注入し SRM 測定操作を行って 全濃度領域でデータ を得た 表 検量線作成用標準液濃度単位 (ng/ml) : CS1 CS2 CS3 CS4 CS5 CS6 CS7 CS8 PFOS C4-PFOS 検量線の作成 項の測定で得られたデータから PFOS( 対象物質 ) 及び 13 C4-PFOS( 内標準物質 ) のピーク面積を求め 横軸に濃度 (ng/ml) 縦軸に対象物質の内標準物質に対するピーク面積比をプロットし 検量線を作成した 低濃度用の検量線の一例を図 に示す ピーク面積比 ( 対象物質 / 内標準物質 ) y = x R 2 = PFOS 濃度 (ng/ml) 図 PFOS 検量線の一例 ( 低濃度用 ) 6

61 2.5. 含有試験方法含有試験を実施する場合 試料からの目的成分の抽出が重要であり 試料形態を確認し 適切な抽出溶媒を用いて素材を溶解または均一に分散させる必要がある 今回の試買製品又は提供品は 試料形態から大別すると試料 #1~#4 の固体試料と 試料 #5~#14 の液体試料であった さらに液体試料の溶解性を確認したところ 試料 #10~#12 は油性 ( ヘキサンに溶解 ) で それ以外は水性であった これらを同一の試験方法で分析することは困難であるため それぞれ最適な抽出溶媒等を検討し 下記に示す 3 通りの試験方法で今回の 14 製品を分析することにした また 各製品の原材料は様々であり 対象物質の抽出効率に差が生じる可能性が考えられたため 対象物質の安定同位体標識物質 ( 内標準物質 ) である 13 C4-PFOS を試料の抽出前に添加し 各試験操作時における回収率の変動が補正可能な方法を採用した 固体試料 ( 試料 #1~#4) 試料 0.02 g 程度を精密に量り取り 内標準物質及びメタノール / 水 (1/1) 10 ml を添加した 1 分間の振とう抽出した後 水浴 60 中で 30 分間の超音波抽出を行った 抽出後 3000 rpm で 5 分間遠心分離して上澄み液の一部を分取し LC/MS/MS 測定を行った ( 図 2-5-1) 試料分取 0.02 g 程度 内標準物質添加 メタノール / 水 (1/1) 10 ml 抽出 遠心分離 振とう 1 分間超音波照射 30 分間 ( 水浴 60 中 ) 上澄み液 LC/MS/MS 測定 図 印画紙製品の分析フローチャート 水性液体試料 ( 試料 #5~#9 試料#13~#14) 試料 0.02 g 程度を精密に量り取り 内標準物質を添加した後 メタノール / 水 (1/1) 10 ml に溶解した この試料液 4 ml を分取し 予めコンディショニングした Oasis WAX 固相カラムに負荷した 負荷後 25 mmol/l 酢酸緩衝液 (ph4) 4 ml 及びメタノール 4 ml で洗浄し 0.1% アンモニア含有メタノール 4 ml で対象物質を溶出した 溶出液を窒素気流下で 1 ml まで濃縮した後 水を加えて 2 ml に定容し LC/MS /MS 測定を行った ( 図 2-5-2) 7

62 試料分取 0.02 g 程度 内標準物質添加 メタノール / 水 (1/1) 10 ml 試料液 4 ml 分取 Oasis WAX 固相抽出 コンディショニング 試料液負荷 洗浄 酢酸緩衝液 4 ml メタノール 4 ml 溶出 0.1% アンモニア含有メタノール 4 ml 溶出液 濃縮 定容 窒素気流下で1 ml 水加えて2 ml LC/MS/MS 測定 図 水性液体試料の分析フローチャート 油性液体試料 ( 試料 #10~#12) 試料 0.02 g 程度を精密に量り取り 内標準物質を添加した後 ヘキサン 5 ml に溶解した これにメタノール / 水 (1/1) を 5 ml 添加して 5 分間振とう抽出を行い 3000 rpm で 5 分間遠心分離した後 メタノール / 水層の一部を分取し LC/MS /MS 測定を行った ( 図 2-5-3) 試料分取 0.02 g 程度 内標準物質添加 溶解 液液抽出 遠心分離 ヘキサン 5 ml メタノール / 水 (1/1) 5 ml 5 分間振とう抽出 メタノール / 水層 LC/MS/MS 測定 図 油性液体試料の分析フローチャート 8

63 2.6. 溶出試験方法今回の含有試験でPFOS が検出された試料 #1 について 昭和 48 年環境庁告示 13 号 産業廃棄物における金属等の検定方法 を参考にした溶出試験を実施することにした 試料 #1 を 0.5 g 程度を精密に量り取り 試料重量比 10% となるように蒸留水を 5 ml 加え 6 時間の振とうを行った 振とう後 3000 rpm で 5 分間遠心分離を行い 水層の一部を分取してメタノール / 水 (1/1) で適宜希釈した この溶出液に内標準物質を添加し LC/MS/MS 測定で溶出液中の PFOS を定量した 2.7. 同定と定量 同定分析試料液から 5 µl 分取して LC/MS/MS に注入し SRM クロマトグラムを描かせ 得られた SRM クロマトグラム上のピーク保持時間 ( リテンションタイム ) が標準物質とほぼ同一であれば対象物質として同定した 定量同定された対象物質 (PFOS) と内標準物質 ( 13 C4-PFOS) のピーク面積比を検量線に代入して分析試料液中の PFOS の量を算出し 以下の式によって試料中の濃度を算出した 1 Ci = ( Qi - Qt) W Ci : 試料中の PFOS の濃度 (mg/g またはmg/mL) Qi : 分析試料液全量中の PFOS の量 (mg) Qt : 空試験での PFOS の量 (mg) W : 試料量 (g) または溶出液量 (ml) 9

64 2.8. 定量下限 検量線作成用標準液の最低濃度を 5 回測定し 得られた測定値の標準偏差を以下 の式によって求め その 10 倍を今回の分析方法の定量下限とした ( 表 2-8-1) s = å( x i - x ) n -1 2 s : 標準偏差 xi : x : n : 個々の測定値 (ng/ml) 測定値の平均値 (ng/ml) 測定回数 表 今回の分析方法の定量下限 検出濃度測定回数 (ng/ml) 標準偏差 σ σ 0.04 この定量下限 (0.04 ng/ml) を基にして 試料量 前処理時の分取量及び定容量等か ら各試料の定量下限値を算出した 10

65 3. 調査結果 3.1. 測定条件の検討結果平成 22 年 4 月施行の改正化審法では 第一種特定化学物質として直鎖状の PFOS( 以下 直鎖 PFOS とする ) 又はその塩のみが指定されているが PFOS 製品の多くは直鎖 PFOS だけではなく分岐状の PFOS 異性体 ( 以下 側鎖 PFOS とする ) とともに混合物として存在している 4) 5) そのため 第一種特定化学物質である直鎖 PFOS のみ定量する場合 側鎖 PFOS との分離が重要となる 平成 22 年度の本調査では PFOS 分析の公定法である ISO ) や JIS K ) 等と同等の ODS(C18) カラムを用いて LC/MS/MS 測定を行ったが 一部の側鎖 PFOS (P1MHpS:Perfluoro-1-methylheptane sulfonate) との分離が困難であることが分かった しかし MS/MS 測定を行うことにより 測定イオン m/z では P1MHpS が殆ど検出されないことから 直鎖 PFOS としてほぼ個別定量することが出来た 近年 分離能を損なうことなく分析時間の大幅な短縮が可能な 超高速液体クロマトグラフィー (UHPLC) を用いた分析事例が増えており PFOS 異性体の分離も良好とされている 8) 9) そこで今回は PFOS 分析事例の多い Waters 社の Acuity UPLC BEH Shield RP18 カラムを用いて測定条件の検討を行った Arsenault ら 8) の測定条件を参考にして 下記の移動相及び移動相流量で測定を行い PFOS 異性体の分離状況を確認した ( 他の測定条件は 項と同様 ) PFOS 異性体の分離確認に用いた移動相等の条件 移 動 相 :50%B(0 min) 53%B(6-25 min) 50%B(25.5 min) 移動相 (A) 10 mm 酢酸アンモニウム水溶液 移動相 (B) 10 mm 酢酸アンモニウム メタノール-アセトニトリル (80:20) 溶液 移動相流量 :0.35 ml/min ODS 系のカラムの場合 直鎖 PFOS は先の側鎖 PFOS (P1MHpS) と分離しにくいため この 2 つの異性体と PFOS 異性体混合物 (Technical Grade) を測定した SRM クロマトグラムを図 3-1-1~ 図 に示す 測定イオン m/z では P1MHpS は殆ど検出されないため m/z で確認を行った その結果 Arsenault ら 8) の報告では直鎖 PFOS と P1MHpS は分離していたが Riddell ら 9) の報告と同様に この比較的長時間の測定条件を用いても直鎖 PFOS と P1MHpS は殆ど分離せず ほぼ同じ保持時間で検出されることが分かった そのため この測定条件を用いても直鎖 PFOS を完全に分離することは困難であることから 今回は迅速分析が可能な 項の測定条件で分析を行い P1MHpS が殆ど検出されない m/z で定量を行うことにした 11

66 m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/98.7 amu from Sample 24 (L-PFOS 20ppb_UPLC fast10) of wiff (Turbo Spray), Smoothed, Smoothed, S... Max cps 直鎖 PFOS (L-PFOS) In te n s ity, c p s Time, min 図 直鎖 PFOS 標準物質 (L-PFOS) の SRM クロマトグラム m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/98.7 amu from Sample 23 (P1MHpS D50 1/26_UPLC fast10) of wiff (Turbo Spray), Smoothed, Smoothed Max. 1.4e4 cps. 1.4e4 1.3e4 1.2e4 1.1e4 側鎖 PFOS (P1MHpS) 1.0e In te n s ity, c p s 不純物 Time, min 図 側鎖 PFOS 標準物質 (P1MHpS) の SRM クロマトグラム m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/98.7 amu from Sample 25 (T-PFOS 100ppb_UPLC fast10) of wiff (Turbo Spray), Smoothed, Smoothed, S... Max. 2.0e4 cps. 2.0e4 1.8e4 1.6e4 1.4e4 In te n s ity, c p s 1.2e4 1.0e Time, min 図 PFOS 標準物質 (Technical Grade) の SRM クロマトグラム 12

67 3.2. 含有試験の検討結果 固体試料の抽出方法今回の固体試料 ( 印画紙 ) は PFOS だけでなく PFOS 塩の抽出も考慮してメタノール / 水 (1/1) で加温して抽出を行った (2.5.1 項参照 ) 一方 環境省の PFOS 含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項 ( 平成 23 年 3 月 ) では 固体廃棄物等の抽出において ギ酸酸性でのメタノール抽出が採用されている そこで PFOS が検出された試料 #1 を用いて今回の抽出方法との比較を行った結果を表 に示す 本試験法のメタノール / 水 (1/1) 加温抽出では平均 73 mg/g で ギ酸酸性メタノール抽出では平均 65 mg/g となり 本試験法の方がやや高めの値となった 印画紙は感光材料を塗布された紙で出来ており メタノール / 水 (1/1) で 60 に加温して抽出した方がより抽出効率が高くなると考えられたことから 印画紙については本試験法を採用した #1 表 固体試料 ( 印画紙 ) の PFOS 含有試験方法の比較注 1) 試料 No. メタノール / 水 (1/1) 加温抽出 (mg/g) ギ酸酸性メタノール抽出 (mg/g) 注 2) (n=1) (n=2) Ave 注 1) PFOS 塩も PFOS 濃度として定量 ( 直鎖 PFOS のみ定量 ) 注 2) 項の方法からギ酸酸性メタノールに変更し 加温せずに抽出した場合 水性液体試料の精製方法本調査の水性液体試料は めっき液 防虫剤及び紡績油剤と様々であり 試料マトリックスも多種多様であることが予想され そのまま希釈して LC/MS/MS 測定した場合 測定に問題が生じる可能性が示唆された そこで今回では ISO ) や JIS K ) 等で採用されている固相カラム (Oasis WAX) による精製を検討した 項の方法に従い 内標準物質添加時に対象物質も既知量添加し 回収率を確認した結果を表 に示す 今回の試料液はメタノール / 水 (1/1) で試料濃度 0.2%(w/v) 相当であったが PFOS 回収率はいずれも 95% 以上であり 内標準物質の回収率も良好であった 表 Oasis WAX 固相カラムによる PFOS 回収率 試料名 回収率 (%) 試料なし 105 試料 #

68 添加回収試験各含有試験方法について 対象物質を既知量添加した試料を用いて同様の分析を行い その添加回収率を求めることにより 試験方法の妥当性を確認した 代表的な試料を用いた結果を表 に示す いずれも PFOS 回収率は 95% 以上であり 内標準物質の回収率も良好であった なお 項の固体試料については 項の検討において妥当性を確認した ( 標準添加による添加回収試験では実際の抽出効率は確認できないため 省略した ) 表 PFOS 添加回収試験結果 含有試験方法検討試料回収率 (%) 水性液体試料試料 # 油性液体試料試料 # 含有試験結果 PFOS 又はその塩の含有試験結果を以下の表 に示す (PFOS 塩についても PFOS として一括定量 ) また PFOS が検出された試料 #1 直鎖 PFOS 及び PFOS 異性体混合物 (Technical grade) の SRM クロマトグラムを図 3-3-1~ 図 に示す 今回の調査対象製品 14 試料のうち PFOS を定量下限以上含有していた製品は 印画紙の試料 #1 のみであり その含有濃度は平均 73 mg/g (ppm) であった 図 の試料 #1 の SRM クロマトグラムでは図 の PFOS 異性体混合物と同様に複数のピークが確認されたことから 試料 #1 中には PFOS が直鎖 PFOS だけでなく側鎖 PFOS も含む混合物として存在していると考えられた なお 印画紙製品は感光材料を塗布された紙であり その重量の大半は紙由来であると考えられることから 感光材料中の PFOS 濃度としてみると % レベルで含有している可能性があると推察される 参考データとして 諸外国におけるPFOS 又はその塩の規制状況を表 に示した 印画紙自体の規制値は見当たらなかったが カナダ ドイツ及びスイスでは写真フィルムは適用除外であり EU では PFOS 重量比 0.1%(1000 ppm) 以上の製品が対象となっていることから 試料 #1 は欧米諸国の多くでは規制対象外の製品であると考えられる 14

69 表 各試料の PFOS 含有試験結果 試料 No. PFOS 含有濃度 (µg/g) 試料の定量下限 (µg/g) # 1 (n=1) 69.0 (n=2) 77.2 Ave # 2 N.D # 3 N.D # 4 N.D # 5 (n=1) N.D. (n=2) N.D. Ave. N.D # 6 N.D # 7 N.D # 8 N.D # 9 N.D # 10 (n=1) N.D. (n=2) N.D. Ave. N.D # 11 N.D # 12 N.D # 13 N.D # 14 N.D 注 1) 直鎖 PFOS を定量した結果を示す (PFOS 塩も PFOS として一括定量 ) 注 2) 定量下限未満のものは N.D. と記載 15

70 m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/80.0 amu from Sample 32 (0039PFOS01 MeOH/H2O) of wiff (Turbo Spray), Smoothed, Smoothed Max. 2.0e5 cps. 2.0e5 1.8e5 直鎖 PFOS 1.6e5 1.4e5 In te n s ity, c p s 1.2e5 1.0e5 8.0e4 側鎖 PFOS 6.0e4 4.0e4 2.0e Time, min m/z In te n s ity, c p s XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/98.7 amu from Sample 32 (0039PFOS01 MeOH/H2O) of wiff (Turbo Spray) 7.8e4 7.5e4 7.0e4 6.5e4 6.0e4 5.5e4 5.0e4 4.5e4 4.0e4 3.5e4 3.0e4 2.5e4 2.0e4 1.5e4 1.0e Max. 7.8e4 cps Time, min 図 試料 #1 の SRM クロマトグラム 16

71 m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/80.0 amu from Sample 18 (std 20ng/mL) of wiff (Turbo Spray), Smoothed Max. 3.4e4 cps. In te n s ity, c p s 3.4e4 3.2e4 3.0e4 2.8e4 2.6e4 2.4e4 2.2e4 2.0e4 1.8e4 1.6e4 1.4e4 1.2e4 1.0e Time, min m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/98.7 amu from Sample 18 (std 20ng/mL) of wiff (Turbo Spray), Smoothed Max. 1.3e4 cps. 1.3e4 1.2e4 1.1e4 1.0e In te n s ity, c p s Time, min 図 直鎖 PFOS 標準物質 (L-PFOS) の SRM クロマトグラム 17

72 m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/80.0 amu from Sample 22 (T-PFOS 100ng/mL) of wiff (Turbo Spray), Smoothed Max. 8.8e4 cps. 9.0e4 8.0e4 7.0e4 6.0e4 In te n s ity, c p s 5.0e4 4.0e4 3.0e4 2.0e4 1.0e Time, min m/z XIC of -MRM (4 pairs): 498.8/98.7 amu from Sample 22 (T-PFOS 100ng/mL) of wiff (Turbo Spray), Smoothed Max. 2.8e4 cps. 2.8e4 2.6e4 2.4e4 2.2e4 2.0e4 1.8e4 In te n s ity, c p s 1.6e4 1.4e4 1.2e4 1.0e Time, min 図 PFOS 標準物質 (Technical Grade) の SRM クロマトグラム 18

73 表 PFOS 又はその塩に関する諸外国の規制状況 国名等製造 使用等に関する規制規制開始 米国 カナダ オーストラリア ノルウェー ドイツ 英国 EU スイス 重要新規利用規則 (SNUR) による製造 輸入の許可制 2000 年頃 対象 PFOS 及び関連物質 PFOS 又はその塩及び関連物質に関する法律による製造 使用 販売及び輸入の禁止 対象 PFOS 又はその塩及び関連物質を含有する製品等 2008 年 適用除外用途 フォトレジスト 反射防止膜 写真フィルム 印刷板 航空機用作動油 消火薬剤 (PFOS 含有量が 0.5 ppm 以下のもの ) 国家工業化学品届出 審査制度 (NICNAS) による情報公開と自 2002 年主的な代替品への転換等に関する勧告 ~2008 年 対象 PFOS 又はその塩並びに PFAS ( 段階的 ) 製品管理法に基づく健康と環境に有害な化学物質及び製品の製造 輸入 輸出 販売及び使用の制限に係る規制 2007 年 対象 PFOS 及び関連化合物を % 重量以上含む含浸剤及び消火薬剤 1 µg/m 2 以上含む繊維 コーティング剤化学品禁止政令による流通の禁止 対象 PFOS 又はその塩を 0.005% 重量以上含む調剤 0.1% 以上含む製品又はその部品 1 µg/m 2 以上含む繊維 コーティ 2008 年ング剤 適用除外用途 フォトレジスト 反射防止膜 写真フィルム 印刷板 航空機用作動油 PFOS 及び関連物質の規制に関する規制影響分析 (RIA) による使用の制限 対象 PFOS 及び関連物質を 0.1% 以上含む日用品 ( カーペッ 2004 年ト 革製品 衣料 殺虫剤等 ) 金属メッキ 半導体用途 適用除外用途 消火薬剤 航空機用作動油 半導体用途の一部 PFOS の使用製品の上市禁止指令 (2006/122/EC) による EU 域内での販売 輸入 使用の禁止 対象 PFOS を重量比 0.1% 以上含む製品 部品 半製品 1 µg/m 2 以上含む布地 塗装材 重量比 0.005% 以上含む材料 2006 年及び調剤 適用除外用途 フォトレジスト 反射防止膜 金属メッキ 航空機用作動油 PFOS 及び関連物質の製造 販売及び使用の禁止 対象 PFOS 或いは 0.005% 以上含む調剤 0.1% 以上含む成形品 1 μg/m 2 以上含む繊維 コーティング剤 2011 年 適用除外用途 フォトレジスト 写真フィルム 印刷版 電気メッキ用途 航空機用作動油 医療用途 台湾 PFOS 等 7 つの POPs の環境用薬剤への使用禁止 2010 年 19

74 3.4. 溶出試験結果試料 #1 の PFOS 溶出試験結果及び含有試験結果から概算した溶出率を表 に示す 昭和 48 年環境庁告示 13 号を参考にした溶出試験方法において 溶出液から PFOS は平均 4.0 mg/ml 検出され この濃度を溶出した試料量に対する溶出量として換算すると 40 mg/g であった また この結果を含有試験結果と比較し 本条件における試料からの PFOS 溶出率として概算すると 55% となり 50% 以上が水で溶出することが分かった 表 試料 #1 の PFOS 溶出試験結果 溶出液中濃度 (µg/ml) (n=1) 3.6 (n=2) 4.4 Ave. 4.0 溶出量 (µg/g) 含有濃度 (µg/g) 含有試験結果 溶出率 (%) 注 1) 昭和 48 年環境庁告示 13 号を参考にした方法による 注 2) 直鎖 PFOS を定量した結果を示す (PFOS 塩も PFOS として一括定量 ) 注 3) 溶出率 (%)= 溶出量 / 含有濃度

75 3.5. 暴露評価環境へ放出された PFOS の大気 水 土壌 底質 生物等の多媒体中での濃度予測には 独立行政法人国立環境研究所の MuSEM (Multimedia Simplebox-systems Environmental Mode) を使用した MuSEM は 1994 年にオランダの国立公衆衛生 環境保護研究所 (RIVM) の化学物質評価グループが開発した USES (Uniform System for the Evaluation of Substances) を基にして構築された Mackay Level III 型 ( 非平衡 定常 移流あり ) の動態予測シミュレーションモデルである 環境へ放出された化学物質について 大気 水 土壌 底質 生物等の多媒体中での挙動を予測し さらにはヒトを対象とする健康リスク評価や環境中の生物を対象とする生態リスク評価を行うことを目指す統合アセスメント プログラムである 今回の設定では continental として日本列島全体 regional として人口が最も多く PFOS の使用が最も多いと考えられた東京都を選択して予測することとした モデル計算に使用したパラメータ 1) 対象地域の設定 EU 圏を対象としている USES (Uniform System for the Evaluation of Substances) では 地域スケールは EU 圏の 200 km 四方 大陸スケール 1900 km 四方でユーザーが直接入力するが MuSEM (Multimedia Simplebox-systems Environmental Model) の場合には対象地域データをより容易に入力させるために 都道府県の面積や人口 下水道普及率などの地域データを [INPUT data] シートにまとめ [Interface] シートからのデータ自動取得を可能にしている 都道府県から選択された一つの対象地域を除いた日本全国の面積が大陸エリアの面積となる 今回は 人口密度が高いため 単位面積当たりの PFOS 使用量が最も高いと考えられる 東京都 を対象地域として設定した 東京都 を対象地域として選択した場合 東京都以外の全国の面積 が大陸エリアの面積となる 表 には [INPUT data] シートにまとめた全国と関東地方の一般現況を示した 都道府県の自然地面積は表 の森林面積率から 農地は耕地面積率から算出し モデルに適用した 大陸エリアの人口は日本全国から選択した地域の人口を差し引いた人口を用いた 大陸エリアの下水道普及率として日本全国の下水道普及率を用いた これらのデータは すべて MuSEM 内のデータシートの値を用いた 人口統計などの出典は 総務省の統計局のホームページの 2003 年 6 月時点での統計データを使用したとのことである 21

76 表 全国と関東地方の地域データ一覧 都道人口面積各土地利用別面積比 (%) 下水道 府県名 ( 千人 ) (km 2 ) 森林耕地 都市 注 ) 産業用地 地表水表面 普及率 (%) 日本全国 127, , 茨城県 2,990 6, 栃木県 2,010 6, 群馬県 2,032 6, 埼玉県 7,001 3, 千葉県 5,994 4, 東京都 12,219 2, 神奈川県 8,625 2, 注 ) 都市 産業用地面積比 (%)=100%- 森林面積比 - 耕地面積比 - 地表水表面面積比 2) 化学物質のパラメータ設定 計算に必要な必須項目として分子量 溶解度などがある 必須項目として使用した 値を表 に示す 今回は PFOS-K 塩の物性値を採用した 表 使用した物性値 項目値単位出典 分子量 538 g/mol POPRC, 2006 溶解度 519 mg/l (20 ) POPRC, 2006 蒸気圧 Pa (20 ) POPRC, 2006 融点 >400 POPRC, 2006 logkow 4.49 ( 推定値 ) 1 ) SRC:KowWin, ) PFOS カリウム塩の分配係数は 界面活性作用により測定が困難である 従って ここでは生物濃縮係数 (BCF) が ( 魚類 POPRC,2006 より ) と非常に大きいことなどを考慮し PFOS の分配係数の推定値 (4.49) を採用した 3) 環境中分解速度の入力化学物質の分解性に関する分解度試験結果の項目は 易分解性 (10 日以内 10 日以上 ) 良分解性 ( 特定条件充足又は不充足 ) 難分解性の 5 つの項目から選択することにより 分解速度 ( 半減期 ) を設定することができる PFOS は化学物質審査規制法に基づく好気的生分解性試験では 難分解性と判定されており ここでは大気 水 土壌 及び底質の半減期の設定で 難分解 というパラメータを設定した 22

77 4) 排出量の設定モノクロ印画紙である試料 #1 において PFOS が 73 mg/g の含有濃度で検出された 印画紙 4 試料 ( モノクロ 2 試料 : 輸入 カラー 2 試料 : 輸入 1 試料 国産 1 試料 ) のうち 検出された試料はチェコから輸入されたものであった 表 に試料に含有している PFOS の水への溶出率を算出した結果を示す 表 PFOS 溶出率の算出結果 試料 No. # 溶出量 (mg/g) 平均 40 含有濃度 (mg/g) 注 ) 溶出量とは 試料 1g あたりの PFOS 溶出量のこと 溶出率 (%) モノクロ印画紙の輸入量に関する情報は得られなかったが 写真感光材料の輸入量として カラー写真用ロールフィルム 白黒写真用ロールフィルム カラー印画紙の面積ベースによる輸入量に関する情報は得られた ( 表 3-5-4) モノクロ印画紙の輸入量が カラーフィルムと白黒用フィルムの比率と同じと仮定して モノクロ印画紙の輸入量を推定した 表 写真感光材料の輸入量 写真感光材料 輸入量 (m 2 ) 出典 カラー写真用ロールフィルム 13,982 化学工業日報社,2011 白黒写真用ロールフィルム 94,988 化学工業日報社,2011 カラー印画紙 238,536 化学工業日報社,2011 モノクロ印画紙 ( 推定値 ) 1,620,516 モノクロ印画紙の輸入量 ( 推定値 ) を 重量換算するために 今回調査した印画紙 4 試料に関して 面密度の測定 (n=2) を行った 結果を表 に示す 表 印画紙の面密度測定結果 試料 No. 印画紙 1 枚の面積 (cm 2, 片面 ) 印画紙 1 枚の重量 (g) 印画紙の面密度 (g/cm 2 ) 試料 # 試料 # 試料 # 試料 # 平均

78 印画紙の面密度 (4 試料の平均値 ) g/cm 2 より モノクロ印画紙の輸入量 ( 推定値 ) 1,620,516 m 2 は 重量に換算すると 388,924 kg と推定された 今回の調査では モノクロ印画紙 2 製品 ( ともに輸入品 ) のうち 1 試料から PFOS が検出された モノクロの輸入印画紙の中で PFOS が含有するものの割合に関する情報は得られていないが 今回の結果より ワーストケースとして輸入モノクロ印画紙の 2 分の 1 に同じ含有濃度の PFOS が含まれていた場合を想定し 環境影響を評価する 検出された含有濃度は 73 mg/g であり 溶出率は 55% であるから 輸入モノクロ印画紙から 8 kg/ 年の PFOS が毎年雨水や排水として環境中に溶出されると試算された 表 輸入印画紙製品由来の PFOS 排出量推計値 年間排出量 [kg/ 年 ] 全国における 1 日あたりの排出量 [kg/ 日 ] 東京都における 1 日あたりの排出量 [kg/ 日 ] 排出先 地表水 4) ヒトの 1 日摂取量の設定環境媒体に分配された化学物質は更にヒトが食する魚介類 家畜 ( 肉 / 乳製品 ) 穀物 / 野菜 / 果物に吸収 移行する ヒトは汚染された大気を吸入したり 飲食料を摂取することにより化学物質の暴露を受ける ヒトは生活環境の中で 環境媒体に分配された化学物質に直接的 間接的に暴露され 様々な経路で化学物質を摂取する 日本人の平均体重を 50 kg とし 空気の一日摂取量を 20 m 3 / 日 飲料水の一日摂取量を 2 L/ 日に仮定した 日本人の食物の一日摂取量は厚生省の国民栄養調査結果 (2001) を参考に ヒトの各食品の一日摂取量として魚介類を kg/ 日 葉野菜を 1.0 kg/ 日 根野菜を kg/ 日 肉製品を kg/ 日 乳製品を 0.17 kg/ 日と仮定した 推定暴露量本シミュレーションモデルで得られる各媒体の推定結果 各媒体による間接暴露の影響 及びヒト推定摂取量の推算結果をそれぞれ表 表 及び表 に示す 24

79 表 各媒体の PFOS 濃度推定結果 化学物質の濃度 東京都 全国 単位 大気 1.73E E-13 [μg m -3 ] * Gas phase 1.73E E-13 [μg m -3 ] * Aerosol 5.05E E-17 [μg m -3 ] 淡水域 1.32E E-05 [μg L -1 ] * Dissolved 1.30E E-05 [μg L -1 ] * Particulate 1.07E E-07 [μg L -1 ] 海水域 3.33E E-07 [μg L -1 ] * Dissolved 3.32E E-07 [μg L -1 ] * Particulate 9.07E E-10 [μg L -1 ] 自然地 2.28E E-10 [μg gwet -1 ] *Pore waer / Groundwater 2.36E E-12 [mg L -1 ] *Solid phase 2.58E E-10 [μg gwet -1 ] 農業用地 2.26E E-10 [μg gwet -1 ] *Pore waer / Groundwater 2.34E E-12 [mg L -1 ] *Solid phase 2.56E E-10 [μg gwet -1 ] 都市部 産業用地 2.28E E-10 [μg gwet -1 ] *Pore waer / Groundwater 2.36E E-12 [mg L -1 ] *Solid phase 2.58E E-10 [μg gdry -1 ] 淡水域の底質 2.49E E-06 [μg gwet -1 ] *Pore waer / Groundwater 2.36E E-08 [mg L -1 ] *Solid phase 6.44E E-05 [μg gdry -1 ] 海水域の底質 1.33E E-08 [μg gwet -1 ] *Pore waer / Groundwater 1.25E E-10 [mg L -1 ] *Solid phase 3.43E E-07 [μg gdry -1 ] 表 各媒体による PFOS の間接暴露の影響例 各媒体による間接暴露の影響 ( 媒体中の濃度 ) 地域 大陸 魚介類体内 1.72E E-11 [kg kgwet -1 ] ミミズ体内 2.90E E-15 [kg kgwet -1 ] 植物根組織 6.20E E-15 [kg kgwet -1 ] 野菜体内 3.36E E-17 [kg kgwet -1 ] 草 3.36E E-17 [kg kgwet -1 ] 飲料水 6.58E E-11 [kg m -3 ] 肉製品 2.81E E-15 [kg kgwet -1 ] 乳製品 8.89E E-16 [kg kgwet -1 ] 25

80 表 PFOS ヒト推定摂取量の推算結果 ヒトに及ぶ化学物質の暴露量予測 ( 化学物質の一日摂取量 ) 東京都 全国 東京都 全国 [μgc eq -1 d -1 ] [μg kg -1 d -1 ] 空気 2.59E E E E-13 飲料水 1.32E E E E-07 魚介類 1.62E E E E-04 葉菜 3.50E E E E-10 根菜 3.90E E E E-09 肉製品 2.14E E E E-09 乳製品 1.51E E E E-09 全媒体 1.63E E E E 有害性評価 調査方法 PFOS の有害性情報については EFSA の報告書 (EFSA, 2008) を中心に調査を行った リスク評価に用いる無毒性量等カニクイザルに PFOS のカリウム塩 及び 0.75 mg/kg/ 日を 182 日間強制経口投与した試験 (Seacat et al., 2002) で 0.15 mg/kg/ 日の投与群で甲状腺ホルモンのレベルの低下がみられした この試験の NOAEL を 0.15 mg/kg/ 日以上の投与群でみられた甲状腺ホルモンレベルの低下を指標として 0.03 mg/kg/ 日としている 表 PFOS のリスク評価に用いる無毒性量等 試験の概要 カニクイザルを用いた 182 日間反復投与試験 ( 甲状腺ホルモンレベルの低下 ) Seacat et al., 2002 NOAEL (mg/kg 体重 / 日 ) 不確実係数の算出 本リスク評価に用いるカニクイザルの反復投与試験 (Seaca et al., 2002) データ の不確実係数積は 以下の不確実係数より 500 とした 不確実係数 : 動物とヒトの種差についての不確実係数 (10) 不確実係数積 : 500 個体差についての不確実係数 (10) 試験期間についての不確実係数 (5) 26

81 3.7. リスク評価 暴露の余裕度は NOAEL と暴露量との比として計算される MOE = NOAEL / 暴露量 算出結果と 不確実係数積 (UFs) との比較によるリスク判定結果を表 に示す 表 PFOS 含有製品からの暴露量予測と MOE 算出結果 地域東京都全国 ( 東京都以外 ) ヒトに及ぶ化学物質の推定暴露量 (μg/kg/ 日 ) 3.26E E-04 NOAEL (mg/kg/ 日 ) MOE E+05 不確実係数 (UFs) リスク判定 MOE > UFs ( 健康影響の懸念なし ) MOE > UFs ( 健康影響の懸念なし ) 上記のとおり 東京都及び全国における MOE は 900 以上となり 不確実係数積 (500) との比較の結果 環境経由の暴露によりヒト健康への影響を及ぼす懸念はない と判断された 東京都における MOE は 920 と不確実係数積 (500) に近い値となっているが この原因としては実際の輸入量が不明のため 輸入モノクロ印画紙の 2 分の 1 に検出製品と同濃度の PFOS が含まれる と仮定して環境影響評価を実施した点が挙げられる 実際の輸入印画紙の中で PFOS が含まれるものは全体の 10 分の 1 にも満たないと予想される 仮に 推定輸入量の 10 分の 1 に今回の検出濃度と同濃度の PFOS が含まれる とした場合 推定暴露量は本評価における推定暴露量の 5 分の 1 になり 東京都における MOE は 4,600 となる 従って 今回の評価におけるワーストケースは現実よりも厳しい条件であることが予想される 27

82 4. 参考文献 基本情報 1) 独立行政法人科学技術振興機構 (JST); 有機化合物辞書データベース 日本化学物質辞書 ( 日化辞 ) ( アクセス日平成 24 年 2 月 27 日 ) 2) 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター ; 化学物質総合情報提供システム (CHRIP) ( アクセス日平成 24 年 2 月 27 日 ) 3) Hazardous Substances Data Bank:HSDB (TOXNET, US NLM) ( ( アクセス日平成 24 年 2 月 27 日 ) 含有 溶出試験 4) Langlois, Ingrid., Mass spectrometric isomer characterization of perfluorinated compounds in technical mixture, water and human blood. 2007, PhD Thesis, University of Basel, Faculty of Science. 5) 国立環境研究所特別研究報告 ; 有機フッ素化合物等 POPs 様汚染物質の発生源評価 対策並びに汚染実態解明のための基盤技術開発に関する研究 ( 特別研究 ), SR , 平成 15~17 年度 6) ISO 25101:2009 Water quality-determination of perfluorooctanesulfonate (PFOS) and perfluorooctanoate (PFOA)-Method for unfiltered samples using solid phase extraction and liquid chromatography/mass spectrometry. 7) JIS K :2011 工業用水 工場排水中のペルフルオロオクタンスルホン酸及びペルフルオロオクタン酸試験方法 8) Gilles Arsenault et al., Some issues relating to the use of perfluorooctanesulfonate (PFOS) samples as reference standards. Chemosphere 2008, 70, ) Nicole Riddell et al., Branched Perfluorooctane Sulfonate Isomer Quantification and Characterization in Blood Serum Samples by HPLC/ESI-MS(/MS). Environ. Sci. Technol. 2009, 43, リスク評価 10) EFSA, European Food Safety Authority (2008) Perfluorooctane sulfonate (PFOS), perfluorooctanoic acid (PFOA) and their salts Scientific Opinion of the Panel on Contaminants in the Food chain. 11) Seacat, A.M., Thomford, P.J., Hansen, K.J., Olsen, G.W., Case, M.T. and Butenhoff, J.L. (2002) Subchronic toxicity studies on perfluoroctanesulfonate potassium salt in cynomolgus monkeys. Toxicol Sci. 68, ) POPRC (2006) Risk profile on perfluorooctane sulfonate, Report of the Persistent Organic Pollutants Review Committee on the work of its second meeting, Addendum. ( OPRC2documents/tabid/106/Default.aspx から引用 ) 13) SRC, Syracuse Research Corporation (2012) KowWin Estimation Software, ver. 1.68, North Syracuse, NY. 14) 化学工業日報社 (2011) の化学商品 28

83 Ⅳ. 1,2,5,6,9,10- ヘキサブロモシクロドデカン (HBCD) 含有製品の安全性調査 Ⅳ- 1. 製品からの HBCD 放散量調査 Ⅳ- 2. 難燃加工時の HBCD 異性体存在比に及ぼす温度影響の推定調査 Ⅳ- 3. 製品から吸着外部粉じんへの HBCD 移行調査

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85 Ⅳ- 1. 製品からの HBCD 放散量調査

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87 Ⅳ- 1. 製品からの HBCD 放散量調査 1. 調査内容 調査対象物質 調査項目 調査対象製品 調査方法 標準物質及び試薬類 標準物質類 試薬類 装置及び器具類 装置 器具類 機器分析 測定条件 検量線 同定及び定量 定量下限 含有試験 放散試験 カーテン及びカーファブリック製品 断熱材及び畳製品 調査結果 含有試験結果 放散試験結果 設定条件の検討結果 カーテン及びカーファブリック製品 断熱材及び畳製品 暴露評価 カーテンの使用による室内暴露の評価 カーテンからの HBCD 放散量 ヒトの推定 1 日暴露量の設定 カーファブリックの使用による車内暴露の評価 カーファブリックからの HBCD 放散量 推定暴露量の算出 有害性調査 調査方法 有害性評価 ヒト健康への影響 リスク評価に用いる無毒性量等 不確実係数の算出 リスク評価 カーテンの使用による室内暴露の評価 カーファブリックの使用による車内暴露の評価 参考文献... 37

88 1. 調査内容 1.1. 調査対象物質監視化学物質の一つである 1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン ( 以下 HBCD とする ) を調査対象物質とした HBCD には複数の立体異性体が存在することから 本調査では主要な異性体であるα β 及びγ 体を分析対象とした ( 但し 製品中の含有試験では確認のためδ 及びε 体も分析した ) α-hbcd β-hbcd -HBCD γ CAS No.: CAS No.: CAS No.: 調査項目 HBCD は 第 103 回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会 ( 平成 22 年 9 月 17 日 ) において有害性調査項目が検討され 製造 輸入業者に対して鳥類の繁殖試験による有害性調査指示が出されており 今後の試験の結果によっては 第一種特定化学物質に指定される可能性も十分に考えられる物質である また 国際的にも HBCD は残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs 条約 ) に基づき 条約対象物質への追加について検討するために設置された残留性有機汚染物質検討委員会 (POPRC:POPs Review Committee) において審議されている こうした動向もふまえて 今後は HBCD 含有製品の用途から 特に室内あるいは車内環境におけるヒト健康へのリスク評価が必要となってくるが 有害性情報の調査 評価に比べ 暴露評価はまだ十分には行われておらず 一般消費者を対象とした室内あるいは車内環境における暴露に関しては 国内外の情報が少ないというのが現状である 室内環境における HBCD 含有製品からの暴露は主に 図 に示した1 揮発 2 発じん 3 直接接触による経路があると考えられている 1

89 2 1 3 図 室内環境における HBCD の暴露シナリオ ( 静岡県立大学 HP: column_25.htm#fig_25-1 より引用 ) そこで本調査では 室内または車内環境における HBCD の暴露評価を行うための基礎的情報収集として 1 揮発 の経路に着目し これらの暴露量推定を補足するための調査を実施した 1 揮発 経路の暴露については 様々な HBCD 含有製品の放散量測定を行い 各製品の室内または車内空気中への放散量 ( 放散速度 ) を見積り 製品からの暴露の推定を行った また 得られた調査結果及び文献情報 使用実態調査等の情報から 室内または車内環境への暴露評価を行い 人又は高次捕食動植物への安全性等の評価を行った 2

90 1.3. 調査対象製品 本調査において入手した調査対象製品を表 に示す 表 調査対象製品 1) 試料 No. 用途 製造国 # 1 日本 # 2 中国 # 3 日本 # 4 カーテン 中国 # 5 日本 # 6 日本 # 7 日本 # 8 日本 # 9 断熱材 日本 # 10 (EPS) 2) 日本 # 11 # 12 日本 # 13 断熱材 日本 # 14 (XPS) 3) 日本 # 15 日本 # 16 日本 # 17 中国 # 18 畳 日本 # 19 日本 # 20 日本 # 21 日本 # 22 タイカーペット # 23 日本 # 24 日本 # 25 日本 # 26 カーファブリック 日本 # 27 日本 1) 試料 #5~#7 #18~#20 及び #25~#27 は製造者等からの提供品である 2) EPS: ビーズ法発泡ポリスチレン 3) XPS: 押出法発泡ポリスチレン 3

91 2. 調査方法 2.1. 標準物質及び試薬類 標準物質類 HBCD 標準品 1) α-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 2) β-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 3) γ-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 4) δ-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 5) ε-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 HBCD- 13 C12 標準品 1) α-hbcd- 13 C12 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 2) β-hbcd- 13 C12 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 3) γ-hbcd- 13 C12 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 HBCD-d18 標準品 1) α-hbcd-d18 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 2) β-hbcd-d18 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 3) γ-hbcd-d18 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 注 ) 含有試験では HBCD- 13 C12 をクリーンアップスパイク * 用内標準物質 HBCD-d18 をシリンジスパイク ** 用内標準物質として使用した 放散試験では HBCD- 13 C12 を内標準物質として使用した 試薬類 1) アセトン 残留農薬試験 PCB 試験用 関東化学 ( 株 ) 2) アセトニトリル LC/MS 分析用 関東化学 ( 株 ) 3) メタノール LC/MS 分析用 関東化学 ( 株 ) 4) 超純水 LC/MS 分析用 和光純薬工業 ( 株 ) 5) ジクロロメタン 残留農薬試験 PCB 試験用 関東化学 ( 株 ) 6) HFIP セントラル硝子 ( 株 ) 7) ABS Elut-NEXUS 200 mg/6 ml Agilent Technologies 社 8) Sep-Pak Plus Florisil 910 mg Waters 社 注 ) HFIP: ヘキサフルオロイソプロパノール * クリーンアップスパイクは 前処理操作中の損失を確認するために添加 各内標準物質は 13 C で標識した安定同位体標識化合物である ** シリンジスパイクは クリーンアップスパイクの回収率を確認するための基準として使用する 13 C で標識 した安定同位体標識化合物である 4

92 2.2. 装置及び器具類 装置 1) 恒温槽 2) マスフローコントローラー (MFC) 3) 遠心分離機 器具類 1) ヘッドスペースバイアル ( 容量 20 ml) 2) 小型チャンバーセパラブルフラスコ ( 容量 325 ml) をセパラブルカバー ( 容量 125 ml 細口を 2 つ設置 ) で蓋した容器 ( ツバ内径 85 mm) 2.3. 機器分析 測定条件 高速液体クロマトグラフ質量分析法 (LC/MS/MS) LC 条件 L C 装置 Agilent 1100 (Agilent Technologies 社 ) カ ラ ム Ascentis Express C18 (SUPELCO 社 ) 長さ 150 mm 内径 2.1 mm 粒径 2.7 mm 移 動 相 A: 水 B: アセトニトリル / メタノール (1/9) 0 16 min A:B=20: min A:20 0 B: linear gradient min A:B=0: min A:B=20:80 流 量 0.25 ml/min カラム温度 40 注 入 量 5 ml MS 条件 M S 装置 API4000(AB SCIEX 社 ) イオン化法 ESI(Negative) 測定モード SRM(Selected Reaction Monitoring) 測定イオン 各 HBCD 異性体 m/z > 78.9 ( 定量用 ) m/z > 80.9 ( 確認用 ) 各 HBCD- 13 C12 異性体 m/z > 78.9 各 HBCD-d18 異性体 m/z > 検量線 1) 検量線作成用標準液の調製各 HBCD 異性体の 50 mg/ml 標準原液を分取し アセトニトリルで 1 mg/ml の混合標準液を調製した後 アセトニトリル / 水 (4/1) 溶液で順次希釈して 1~200 ng/ml の混合標準液を調製した 各 HBCD- 13 C12 異性体の 50 mg/ml 標準原液を分取し アセトニトリルで 1 mg/ml の混合標準液を調製した後 先程の 1~200 ng/ml 混合標 5

93 準液に内標準物質として 10 ng/ml となるように添加し これを検量線作成用標準液とした 含有試験の場合は HBCD- 13 C12 異性体と同様に 各 HBCD-d18 異性体の 50 mg/ml 標準原液を分取し アセトニトリルで 1 mg/ml の混合標準液を調製した後 先程の 1~200 ng/ml 混合標準液に内標準物質として 10 ng/ml となるように添加した 2) 検量線の作成検量線作成用標準液を 項の測定条件で LC/MS/MS に 5 ml 注入し 得られた SRM クロマトグラムから各 HBCD 異性体 ( 対象物質 ) 及び対応する HBCD- 13 C12 異性体 ( 内標準物質 ) のピーク面積を求め 横軸に HBCD 濃度 (ng/ml) 縦軸に対象物質の内標準物質に対するピーク面積比をプロットし 検量線を作成した 一例としてα -HBCD 検量線を図 に示す 20.0 ピーク面積比 ( 対象物質 / 内標準物質 ) y = x R 2 = α-hbcd 濃度 (ng/ml) 図 α-hbcd 検量線の一例 同定及び定量 1) 同定分析試料液 5 ml を 項の測定条件で LC/MS/MS に 5 ml 注入し 得られた SRM クロマトグラム上のピーク保持時間 ( リテンションタイム ) が標準物質とほぼ同一であれば対象物質として同定した 2) 定量同定された対象物質及び内標準物質のピーク面積比を検量線に代入し 分析試料液中の対象物質の量を算出した後 以下の式によって試料の含有濃度または放散速度を算出した 6

94 1 Ci = ( Qi - Qt) W Ci Qi Qt W : 試料の HBCD 含有濃度または放散速度 (mg/g またはmg/m 2 /h) : 分析試料液全量中の HBCD の量 (mg) : 空試験での HBCD の量 (mg) : 試料量 (g) または試料面積 / 放散時間 (m 2 /h) 定量下限検量線作成用混合標準液の最低濃度を5 回測定し 得られた測定値の標準偏差を以下の式によって求め その 10 倍を本調査における分析方法の定量下限とした ( 表 2-3-1) s = å( x i - x ) n -1 2 s : 標準偏差 xi : 個々の測定値 (ng/ml) x : 測定値の平均値 (ng/ml) n : 測定回数 表 本調査における分析方法の定量下限 測定回数 測定値 (ng/ml) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd δ-hbcd ε-hbcd 標準偏差 σ σ この定量下限 (10σ) を基にして 試料量 前処理時の分取量及び定容量等から各試 料の定量下限値を算出した 2.4. 含有試験放散試験を実施する前に 調査対象製品の HBCD 含有試験を行い 各 HBCD 異性体の含有濃度を調査した 平成 21 年度の本調査で開発した試験方法に基づいて各製品の含有試験を行った 含有試験フローチャートの概要を図 に示す なお 複数の部材からなる畳製品については HBCD を含有する可能性のあるポリス 7

95 チレンフォーム板のみを対象とした 試料分取 溶解 分取 希釈 ジクロロメタンまたは HFIP ジクロロメタンで適宜希釈 クリーンアップスパイク用内標準物質添加 再沈 メタノール 遠心分離 精製 濃縮 転溶 Sep-Pak Plus Florisil 固相カラム ( 必要に応じて実施 ) アセトニトリル / 水 (4/1) LC/MS/MS 測定 シリンジスパイク用内標準物質添加 図 含有試験フローチャート 2.5. 放散試験今回の放散試験は 試料形態に応じて以下の2 通りの方法を採用した カーテン及びカーファブリック製品はヘッドスペースバイアル 断熱材及び畳製品については小型チャンバーを用いた加熱加速測定法により 各想定温度における製品からの HBCD 放散速度を推定または実測した カーテン及びカーファブリック製品 1) ヘッドスペースバイアルを用いた放散試験方法各試料を30~40 cm 2 程度の表面積 ( 片面 ) で切断して重量を測定した後 20 ml 容ヘッドスペースバイアルに封入した 恒温槽に試料を封入したバイアルを導入した後 高純度空気を通気し 表 の測定条件でそれぞれ試料から放散した HBCD を捕集管 (ABS Elut-NEXUS) に採取した ( 図 2-5-1) 捕集管から HBCD をアセトン 5 ml で溶出し 溶出液に内標準物質 (HBCD- 13 C12) を加えて溶媒置換した後 LC/MS/MS 測定を行った 8

96 表 ヘッドスペースバイアルを用いた放散試験の設定条件 No. 加熱温度放散時間通気速度 ( ) (h) (ml/min) 捕集管 ストップコック MFC 高純度空気 バイアル 試料 銅管 30m 恒温槽 図 ヘッドスペースバイアルを用いた放散試験の概略図 2) 放散速度の算出方法各加熱温度における HBCD 放散量を算出した後 試料の表面積 ( 片面 ) 及び測定時間から HBCD 放散速度を求めた この放散速度と加熱温度の逆数からアレニウスプロットを作成し 室内または車内の想定温度を外挿することにより 室内または車内環境における試料からの放散速度 ( 推定値 ) を算出した なお ある温度での反応速度を予測するアレニウス式は次のように表わされる k = A e (- Ea ) RT 9

97 k : 反応の速度定数 A : 頻度因子 Ea : 活性化エネルギー R : 気体定数 T : 絶対温度 (K) 上式を自然対数 ln の形にすると下の式のようになる ln k = ln A - Ea 1 R T 頻度因子 A 及び気体定数 R は定数であり 活性化エネルギー Ea も固有の値であることから lnk の値は絶対温度 T によって変化する つまり y = b-ax の簡単な直線式と見ることができる 一般的には化学反応の速度や製品寿命の予測に使用されているが 本調査では 製品からの HBCD の放散速度の推定に応用した 断熱材及び畳製品 1) 小型チャンバーを用いた放散試験方法試料を小型チャンバーの内径に合わせて切断した後 小型チャンバー容器 ( セパラブルフラスコ ) 内に挿入した 容器と試料の隙間をアルミテープで塞ぎ 試料表面 ( 畳表 ) のみの評価が可能な方法とした ( 図 及び図 2-5-3) セパラブルカバーで試料を封入した小型チャンバー ( 図 2-5-4) を恒温槽に導入した後 高純度空気を通気し 表 の測定条件でそれぞれ試料から放散した HBCD を捕集管 (ABS Elut-NEXUS) に採取した ( 図 2-5-5) 捕集管はアセトン 5 ml で溶出し 溶出液に内標準物質 (HBCD- 13 C12) を加えて溶媒置換した後 LC/MS/MS 測定を行った また設定温度が低い場合 放散した HBCD がチャンバー ( セパラブルカバー ) 等へ再吸着することが予想されたため 内面をアセトンで洗いこみ 同様にして LC/MS/MS 測定を行った 10

98 図 小型チャンバーへの試料挿入時の写真 -1 (EPS: 試料 #10) 図 小型チャンバーへの試料挿入時の写真 -2 ( 畳 : 試料 #19) 11

99 図 試料封入後の小型チャンバーの写真 ( 畳 : 試料 #19) 表 小型チャンバーを用いた放散試験の設定条件 No. 放散温度 ( ) 放散時間 (h) 通気速度 (ml/min) 対象試料 XPS 及び EPS XPS 及び畳 ストップコック MFC 高純度空気 試料 銅管 30m 恒温槽 図 小型チャンバーを用いた放散試験の概略図 2) 放散速度の算出方法 各設定条件における HBCD の捕集量を求め 試料表面積及び測定時間を除すること により 各設定温度における HBCD の放散速度 ( 実測値 ) を求めた 3. 調査結果 3.1. 含有試験結果 HBCD 含有試験結果を表 3-1-1~ 表 に示す なお 各異性体の濃度は Total-HBCD を求めるための途中結果のため 全て小数点第 3 位まで表示した カーテン製品については 試料面積が広く また複数の部材を積層にした製品が多いことから 分析試料の採取位置によって HBCD 含有濃度に差が生じる可能性が考えられた そこで 分析試料の採取位置を製品の上部及び下部等に区分し n=2 または n=3 で試験を実施したところ いずれもほぼ同じ含有濃度であり 各試料中の HBCD 含有濃度はほぼ均一であると判断した 他の製品についても 試料面積が広い代表的な試料について n=2 測定を行い HBCD 含有濃度が均一であることを確認 12

100 した 対象調査製品 27 試料のうち HBCD が定量下限以上検出された試料は 20 試料であった このうち試料 #1 については Total-HBCD 含有濃度が 0.001wt% (10 ppm) と他試料に比べて低濃度であることから 製造または流通時等に汚染したものであると推測された そこで放散試験については 試料 #1 を除いた 19 試料を用いて調査を行うことにした 表 カーテン製品の HBCD 含有試験結果 試料 No. #1 n=2 #2 n=2 #3 n=3 #4 n=2 #5 n=2 #6 n=2 #7 n=2 HBCD 含有濃度 (wt%) α 体 β 体 γ 体 δ 体 ε 体 Total 平均 <0.001 <0.001 <0.002 < < < <0.002 < < <0.001 <0.001 <0.002 <0.002 < <0.001 <0.001 <0.002 < 表 断熱材 (EPS) 製品の HBCD 含有試験結果 試料 No. HBCD 含有濃度 (wt%) α 体 β 体 γ 体 δ 体 ε 体 Total 平均 #8 n=2 < <0.001 <0.001 <0.002 <0.002 < < < <0.002 <0.002 #9 n= #10 n= < #11 n= <0.002 <

101 表 断熱材 (XPS) 製品の HBCD 含有試験結果 試料 No. HBCD 含有濃度 (wt%) α 体 β 体 γ 体 δ 体 ε 体 Total 平均 #12 n= < #13 n= <0.002 < #14 n= #15 n= 表 畳製品の HBCD 含有試験結果 試料 No. HBCD 含有濃度 (wt%) α 体 β 体 γ 体 δ 体 ε 体 Total 平均 #16 n= #17 n=1 < <0.001 <0.001 <0.002 <0.002 #18 n= <0.002 < #19 n= < #20 n= 注 ) 畳製品は HBCD を含有する可能性のあるポリスチレンフォーム板のみを対象とした ( ポリスチレ ンフォーム板の重量当たりの含有濃度を示す ) 表 カーペット製品の HBCD 含有試験結果 試料 No. HBCD 含有濃度 (wt%) α 体 β 体 γ 体 δ 体 ε 体 Total 平均 #21 n=2 < < < <0.002 <0.002 < < < <0.002 <0.002 #22 n=1 < <0.001 <0.001 <0.002 <0.002 #23 n=1 < < < <0.002 <0.002 #24 n=1 < < < <0.002 <0.002 表 カーファブリック製品の HBCD 含有試験結果 試料 No. HBCD 含有濃度 (wt%) α 体 β 体 γ 体 δ 体 ε 体 Total 平均 #25 n= < #26 n= #27 n= <

102 3.2. 放散試験結果 設定条件の検討結果 1) 捕集管の検討放散試験に用いた捕集管 (ABS Elut-NEXUS) の HBCD 回収率を以下の設定条件で確認した その結果を表 に示す 試料はカートリッジに標準物質を添加したものである いずれも約 90% 以上の回収率が得られたことから この捕集管を今回の試験法で採用することにした 表 捕集管の添加回収試験結果 添加回収条件 捕集管に γ-hbcd を 20 ng 添加し そのまま分析 捕集管に γ-hbcd を 20 ng 添加し 80 4 時間放散試験 捕集管に γ-hbcd を 20 ng 添加し 時間放散試験 回収率 (%) n=1 96 n=2 100 n=1 90 n=2 88 n=1 91 n=2 88 注 ) 各捕集管をアセトン 5 ml で溶出し 溶出液に内標準物質 (HBCD- 13 C12) を加えて溶媒 置換した後 LC/MS/MS 測定を行った 2) 供給空気の通気速度の検討試料 #27 を用いて加熱温度 80 及び放散時間 4 時間で 各通気速度における HBCD の放散量を測定した 試料表面積及び放散時間を除することにより 各通気速度における HBCD の放散速度 ( 実測値 ) を求めた 表 の結果より 通気速度 50 ml/min では低めの放散速度となり 200 及び 400 ml/min ではほぼ同じ値となったことから 200 ml/min が最適であると判断した 表 通気速度の検討結果 通気流速 放散速度 (μg/m 2 /h) (ml/min) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total 平均値 ) 放散時間の検討試料 #27 を用いて加熱温度 100 及び通気速度 200 ml/min で 各放散時間における HBCD の放散量を測定した 試料表面積及び放散時間を除することにより 15

103 各放散時間における HBCD の放散速度 ( 実測値 ) を求めた 表 の結果より 放散時間 1 時間では n=2 測定でばらつきがみられ 4 時間と 12 時間では殆どばらつきはみられなかった 放散速度は 4 時間が最も速く 本試験法の迅速化も考慮して 本調査では放散時間を 4 時間に設定した 表 放散時間の検討結果 放散時間 放散速度 (μg/m 2 /h) (h) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total 平均値 ) 供給空気中の湿度影響の検討試料 #27 を用いて加熱温度 80 通気速度 200 ml/min 及び放散時間 4 時間で 高純度空気 ( 乾燥空気 ) と湿度約 50% に加湿した高純度空気 ( 加湿空気 ) における HBCD の放散量を測定した 試料表面積及び測定時間を除することにより 各供給空気における HBCD の放散速度 ( 実測値 ) を求めた 表 の結果より 加熱温度が 100 と比較的高温であったためか 両者に大きな差は見られなかったが ワーストケースも考慮して放散量が多くなると考えられる乾燥空気を採用することにした 表 供給空気中の湿度影響の検討 供給空気 乾燥空気 加湿空気 50%rh 放散速度 (μg/m 2 /h) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total 平均値 ) 繰り返し測定の検討試料 #27 を用いて 項の試験方法で 5 回の併行測定を行い 推定放散速度のばらつきを見積もった その結果を図 に示す それぞれ得られたアレニウスプロットの近似式から各想定温度に外挿して推定した放散速度を示した 実測の加熱温度でもある80 では ほぼ同程度の結果が得られたが 28 に外挿した推定放散速度ではばらつきが大きくなる傾向がみられた アレニウスプロットの温度範囲から大きく外れた低い想定温度への外挿に関しては プロットの少しの傾きの差でも大きく影響しやすく 結果の評価に対して注意が必要であることが分かった 16

104 試料 #27 80 想定温度 回目 4 回目 3 回目 2 回目 1 回目 1.0E E E E E E- 推定放散速度 (μg/m 2 /h) 図 項の試験法の 5 回繰り返し測定結果 ( アレニウスプロットを用いた推定放散速度 ) カーテン及びカーファブリック製品 1) 放散速度測定結果ヘッドスペースバイアルを用いたカーテン及びカーファブリック製品の放散速度測定結果を表 3-2-5~ 表 に示す なお 各測定値の有効数字は 2 桁であるが HBCD 放散速度の推定値を求めるための途中結果のため 全て小数点第 3 位まで表示した また 不検出の測定値については 便宜上 全て として表示した 表 カーテン製品 ( 試料 #3, n=1) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD

105 表 カーテン製品 ( 試料 #3, n=2) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD 表 カーテン製品 ( 試料 #4) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD 表 カーテン製品 ( 試料 #5) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD 表 カーテン製品 ( 試料 #6) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD

106 表 カーテン製品 ( 試料 #7) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD 表 カーファブリック製品 ( 試料 #25) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD 表 カーファブリック製品 ( 試料 #26) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD 表 カーファブリック製品 ( 試料 #27) の HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 加熱温度 ( ) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD

107 2) 想定温度における HBCD 放散速度の推定結果表 3-2-5~ 表 の Total-HBCD 放散速度 ( 対数値 ) と対応する加熱温度 ( 絶対温度 ) の逆数から 各試料のアレニウスプロットを作成した結果を図 3-2-1~ 図 に示す HBCD03a n=1 LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーテン製品 ( 試料 #3, n=1) のアレニウスプロット HBCD03b n=2 LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーテン製品 ( 試料 #3, n=2) のアレニウスプロット 20

108 4 0039HBCD04 LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーテン製品 ( 試料 #4) のアレニウスプロット HBCD05 LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーテン製品 ( 試料 #5) のアレニウスプロット HBCD06 LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーテン製品 ( 試料 #6) のアレニウスプロット 21

109 7 0039HBCD07 LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーテン製品 ( 試料 #7) のアレニウスプロット LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーファブリック製品 ( 試料 #25) のアレニウスプロット LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーファブリック製品 ( 試料 #26) のアレニウスプロット 22

110 LogHBCD 放散速度 (μg/m 2 /h) y = x R 2 = /Tx10 3 (1/K) 図 カーファブリック製品 ( 試料 #27) のアレニウスプロット 各試料のアレニウスプロットから得られた近似式に想定温度を外挿することに より 室内または車内環境における試料からの Total-HBCD 放散速度を推定した 推定結果を表 ~ 表 に示す 表 カーテン製品 ( 試料 #3, n=1) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 室内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x 表 カーテン製品 ( 試料 #3, n=2) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 室内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x 表 カーテン製品 ( 試料 #4) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 室内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x

111 表 カーテン製品 ( 試料 #5) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 室内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x 表 カーテン製品 ( 試料 #6) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 室内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x 表 カーテン製品 ( 試料 #7) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 室内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x 表 カーファブリック製品 ( 試料 #25) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 車内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x 表 カーファブリック製品 ( 試料 #26) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 車内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x

112 表 カーファブリック製品 ( 試料 #27) の Total-HBCD 放散速度推定結果 アレニウスプロット 車内環境における想定温度 推定放散速度 (mg/m 2 /h) 近似式 ( ) 1/T 10 3 (1/K) 対数値 換算値 ( 真数 ) y = x ) 推定放散速度に関する考察表 ~ 表 の各試料の推定放散速度の一覧を表 及び表 に示す 想定温度 40 において カーテン製品では ~ mg/m 2 /h カーファブリック製品では ~ mg/m 2 /h の推定放散速度となった 各試料の HBCD 含有濃度と各想定温度における推定放散速度との関係を確認したが いずれも明確な相関は認められなかったことから 放散速度の要因は含有濃度だけでなく 試料の形状等が大きく影響していると考えられた 表 試料 No. カーテン製品の推定放散速度一覧単位 :mg/m 2 /h 室内環境における想定温度 #3 n= n= Ave # # # # 表 試料 No. カーファブリック製品の推定放散速度一覧単位 :mg/m 2 /h 車内環境における想定温度 # # #

113 断熱材及び畳製品小型チャンバーを用いた断熱材 (EPS, XPS) 及び畳製品の放散速度測定結果 ( 実測値 ) を表 及び表 に示す 放散温度 28 では 断熱材の EPS 及び XPS は共に定量下限以上の HBCD が検出され Total-HBCD は 0.033~0.20 mg/m 2 /h であった 放散温度 50 においては XPS は HBCD が定量下限以上検出され 放散速度は 0.52~0.84 mg/m 2 /h であったが 畳の場合はいずれも HBCD は不検出であった 畳製品中のポリスチレンフォーム板 (HBCD 含有材料 ) は 保護材やタタミボード等で完全に隔てられているため HBCD は畳表面 ( 畳表 ) からは殆ど放散しないことが分かった 但し 畳の端面部の框や畳へり部分ではポリスチレンフォーム板の遮蔽が十分でない可能性があると推察された 調査した畳試料はいずれも建材畳床であり 試料 #16 及び #19 はⅢ 形 #18 はⅡ 形及び #20 は N 形の区分であった 表 放散温度 28 における HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 試料 No. α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD # EPS # XPS #14 # # # n= n= Ave # 表 放散温度 50 における HBCD 放散速度測定結果 単位 :mg/m 2 /h 試料 No. α-hbcd β-hbcd γ-hbcd Total-HBCD # XPS # # # #16 <0.002 <0.002 <0.002 畳 #18 <0.002 <0.002 <0.002 #19 <0.002 <0.002 <0.002 #20 <0.002 <0.002 <0.002 注 ) 畳は畳表面 ( 畳表 ) からの HBCD 放散速度を測定した 26

114 4. 暴露評価放散試験した製品のうち 想定温度においてHBCD の放散が認められたカーテン及びカーファブリックについて暴露評価を実施した 断熱材については 建物の換気方式等によっては 断熱材に直接触れた空気が室内に流入する場合があると考えられるが 住宅等における断熱材の平均的な使用量 換気方式その他住宅の構造など 断熱材から気化した HBCD を含むガスの室内への流入に関する要因について 関連する情報が得られなかった 一般住宅に関して 天井裏等からの汚染物質の室内侵入に関する実証実験データ ( 住宅リフォーム 紛争処理支援センター, 2005) という報告も得られたが この報告は実験結果の一例であって 現時点でワーストケースを想定するために十分な情報が得られておらず 暴露評価は困難であると判断した 4.1. カーテンの使用による室内暴露の評価 カーテンから放散する HBCD の室内の消費者への暴露シナリオは 高温時に放散した HBCD を消費者が吸入する可能性がある というものである カーテンからの HBCD 放散量カーテン1 製品からの HBCD の放散量 ( 放散速度 ) は カーテンの表面積により変動する 各カーテン製品の推定放散速度及び表面積 ( 片面 ) から 1 製品当たりの推定放散速度を算出した結果を表 に示す 試料 No. 表 各カーテン製品の 1 製品当たりの HBCD 放散速度 ( 想定温度 40 ) 推定放散速度 (mg/m 2 /h) カーテン 1 製品の表面積 (m 2, 片面 ) 縦 (cm) 横 (cm) 枚数面積 1 製品当たりの推定放散速度 (mg/h) # # # # # 注 ) 試料 #3 は平均値 (Ave.) を使用 これ以降は 1 製品当たりの推定放散速度 (mg/h) の最も高い試料 #3 に関して暴露評 価を行うこととする ヒトの推定 1 日暴露量の設定室内の化学物質に呼吸によって暴露されるヒトに関する項目は 表 のように設定した 換気率に関しては 暴露係数ハンドブック ( 産総研, 2007) の代表値より

115 回 /h とした また 呼吸率 ( 消費者の 1 日呼吸量 ) は EU の Technical Guidance Document (ECB, 2003) より 20 m 3 とした 表 室内におけるヒトの吸入暴露に関する設定項目 項目設定値単位 部屋の広さ 20 (4 m 2.5 m 2 m) m 3 換気率 0.59 回 /h 呼吸量 ( 呼吸率 ) 20 m 3 / 日 暴露期間 24 時間 体重 50 kg 上記の設定項目を用いて ヒトの吸入による推定暴露濃度及び推定暴露量を以下のよ うに算出した 1 日 ( 暴露時間 :24 時間 ) のカーテン 1 製品からの放散による発生量は 推定発生量 (mg) =1 製品当たりの推定放散速度 (mg/h) 暴露時間 (h) = (mg/h) 24 (h) = (mg) 推定暴露濃度 (mg/m 3 ) =1 日の推定発生量 (mg) /{ 部屋の広さ (m 3 ) (1+ 換気率 ( 回 /h) 暴露時間 (h) ) } = (mg) /{20 (m 3 ) (1+0.59( 回 /h) 24(h) ) } = (mg) / 303 (m 3 ) = (mg/m 3 ) 推定暴露量 (mg/kg/ 日 ) = 推定暴露濃度 呼吸量 (m 3 )/ 体重 (kg) = (mg/m 3 ) 20 (m 3 )/50 (kg) = (mg/kg/ 日 ) となり 試料 #3 から放散した HBCD の 1 日推定暴露量は mg/kg/ 日 (1 製品当たり ) であった 4.2. カーファブリックの使用による車内暴露の評価 カーファブリックからの HBCD 放散量表 に本評価で用いる暴露に関する設定値を示す 車内におけるカーファブリックからの HBCD の放散量は 車内で使用されているそれらの表面積により変 28

116 動する 1 台当たりのカーファブリックの使用面積及び車内容積は 日本自動車工業会からの提供情報により それぞれ 8 m 2 及び 3 m 3 を採用した また 自動車使用時間 ( 車内滞在時間 ) は 可塑剤であるフタル酸ジ-(2-エチルヘキシル ) の EU リスク評価書 (ECB, 2008a) で採用されていた 4 時間と仮定した 表 車内におけるヒトの吸入暴露に関する設定項目 条件 設定値 暴露経路 吸入 車内温度 40 車内滞在時間 4 時間 車内容積 1) 3 m 3 ファブリック使用面積 1) 8 m 2 換気条件 換気なし 体重 ( 成人 ) 50 kg 呼吸量 ( 呼吸率 ) 20 m 3 / 日 1) 日本自動車工業会提供情報 表 の設定値を用いて 各カーファブリック製品の推定放散速度 ( 想定温度 40 ) から車内に放散した HBCD の車内空気中濃度を算出した結果を表 に示 す 表 各カーファブリック製品の HBCD 車内空気中濃度 ( 推定値 ) 試料 No. HBCD 車内空気中濃度 ( 推定値 ) #25 #26 #27 注 ) 表 の車内設定条件の場合 (mg/m 2 /h) 8 (m 2 ) / 3 (m 3 ) 4 (h) = 0.54 ng/m (mg/m 2 /h) 8 (m 2 ) / 3 (m 3 ) 4 (h) = 0.37 ng/m (μg/m 2 /h) 8 (m 2 ) / 3 (m 3 ) 4 (h) = 0.50 ng/m 推定暴露量の算出 表 及び表 の値を用いて 各カーファブリック製品から放散した HBCD による 1 日の推定暴露量 (mg/kg/ 日 ) を 下記の式 1 に従い算出した 推定暴露量 (mg/kg/ 日 )= ( C1 Binh Vinh t1/24 ) /BW1 /10 6 ( 式 1) ここで C1 :HBCD 車内空気中濃度 (ng/m 3 ) Binh : 吸入のバイオアベイラビリティ (100% とする ) Vinh : 消費者の 1 日呼吸量 (20 m 3 ) 29

117 t1 : 車内滞在時間 (4 時間 ) BW1 : 体重 ( 成人 ; 50 kg) 結果を表 に示す 試料 #25 #26 及び #27 の推定暴露量はそれぞれ 及び mg/kg/ 日であった 表 各カーファブリック製品から放散した HBCD の吸入による推定暴露量 ( 車内温度 40 で 4 時間使用時 ) 試料 No. #25 #26 #27 HBCD 推定暴露量 0.54 (ng/m 3 ) 20 (m 3 ) 4 (h) /24 (h) /50 (kg) /10 6 = mg/kg/ 日 0.37 (ng/m 3 ) 20 (m 3 ) 4 (h) /24 (h) /50 (kg) /10 6 = mg/kg/ 日 0.50 (ng/m 3 ) 20 (m 3 ) 4 (h) /24 (h) /50 (kg) /10 6 = mg/kg/ 日 5. 有害性調査 5.1. 調査方法 HBCD の有害性評価に関しては 最新の評価書として 2010 年発行のカナダ環境省カナダ保健省の評価書 (Environment Canada/Health Canada, 2010) 及び 2008 年発行の EU リスク評価書 (ECB, 2008b) があり これらを中心に情報を収集した また POPRC おけるリスクプロファイル報告書 (POPRC, 2010) についても確認を行った さらに 2008 年以降に公表された情報の有無についても CAS 番号 に基づき以下文献データベースの検索を行い 収集した 調査結果を表に示す 文献データベース National Library of Medicine:Toxicology Literature Online (TOXLINE) 表 文献検索結果 情報源 ヒット数 TOXLINE 187 検索時期 : 平成 23 年 (2011 年 ) 9 月 得られた検索結果 ( タイトル又はアブストラクト ) の内容を確認し 必要に応じて原著 論文の査読により内容等を確認した 30

118 5.2. 有害性評価 ヒト健康への影響 HBCD 暴露によるヒトに対する事例及び疫学調査に関しては パッチテストでの感作性なしという報告以外得られていない HBCDの急性毒性は LD50 値またはLC50 値が経口投与で20,000 mg/kg 超 ( ラット ) または40,000 mg/kg 超 ( マウス ) 吸入暴露 ( ダスト ラット 4 時間暴露 ) で202 mg/l 超 経皮投与で20,000 mg/kg 超 ( ウサギ ) と極めて弱い HBCDは実験動物では皮膚への刺激性を示さないが 眼に対しては軽度の刺激性を示す しかし EUの基準に従えば眼刺激性物質には該当しない また 呼吸器への刺激性もみられない 感作性は日本で行われた 2つの試験では陽性を示したが 他の 2 試験では陰性を示した ヒトでのパッチテストの陰性結果も合わせて HBCDは明らかな感作性誘発物質とは考えられない HBCDの反復投与毒性は 吸入または経皮経路による試験は得られなかった 経口経路では ラットを用いた経口投与による試験が28 日間投与で3 試験 90 日間投与で2 試験 一般毒性試験ではないが2 世代生殖毒性試験が報告されている マウスを用いた18ヶ月間の試験が行われており 標的器官は主に肝臓及び甲状腺であり 一部の試験では生殖器官 ( 卵巣 前立腺 ) にも影響がみられている これらのうち リスク評価に用いる NOAEL 設定に関連する試験として van der Venら (2006) の28 日間経口投与試験とEmaら (2008) の2 世代生殖毒性試験がある van der Venら (2006) の試験は用量反応関係をベンチマークドーズモデルで解析した試験で肝臓 甲状腺及び下垂体への影響がみられ 肝臓の重量増加に対するNOAEL/BMD-Lの22.9 mg/kg/ 日が得られている 一方 Emaら (2008) が行った2 世代試験でも肝臓及び甲状腺に同様の影響がみられており これらの影響を基にした当該試験のNOAELは10 mg/kg/ 日と最小であることから 本評価では Emaら (2008) の試験を反復投与毒性のキースタディと判断した このほか 母ラットに妊娠から授乳期にかけて HBCD を投与し児動物の免疫機能に対する影響の検討が Hachisuka ら (2010) 甲状腺に対する影響 脳神経の発達に対する影響の検討が Saegusa ら (2009) によって行われ また Eriksson ら (2006) による新生児期にマウスに HBCD を単回暴露した神経発達への影響の検討が行われている その結果 児動物に対する免疫系への影響の可能性 神経発達への影響の可能性が示された しかし これらの結果については 試験法や結果の評価が一般化していないと考えられることから 現時点では リスク評価に用いることはできないと判断する なお カナダ環境省保健省は成人及び乳児 / 幼児に対するリスク評価にはそれぞれEma ら (2008) のNOAELの10 mg/kg/ 日及びErikssonら (2006) のLOAELの0.9 mg/kgを用いている (Environment Canada/Health Canada, 2010) 一方 EUリスク評価書では成人のリスク評価に用いる反復毒性の無毒性量としてvan der Venら (2006) の28 日間経口投与試験でのNOAEL/ BMD-Lの22.9 mg/kg/ 日 生殖毒性の無毒性量としてEmaら (2008) のNOAELの10 mg/kg/ 日を用いており Erikssonら (2006) のLOAELの0.9 mg/kgについては試験法の有用性の確認ができるまで適用を保留している 遺伝毒性は in vitro 体細胞組換え試験で弱い陽性の結果が得られているが in vitroの 31

119 復帰突然変異試験及び染色体異常試験並びにin vivo 小核試験でいずれも陰性であり HBCDは遺伝毒性を有さないと結論された 発がん性については 信頼性のある報告はない また 国際機関等で HBCDの発がん性は評価されていない 以上のような HBCD の有害性について 表 にまとめた 表 HBCD のヒトの健康影響に関する有害性評価のまとめ 有害性項目結果のまとめ経口 LD50 ( ラット )>20,000 mg/kg LD50 ( マウス )>40,000 mg/kg 急性毒性吸入 LC50 ( ラット )>202 mg/l (4hrs) 経皮 LD50 ( ウサキ )>20,000 mg/kg 皮膚刺激性 腐食性皮膚刺激性なし ( 実験動物 ) 眼刺激性 腐食性軽度の眼刺激性 ( 実験動物 ) 皮膚感作性なし ( ヒト ) 感作性皮膚感作性あり なし ( 実験動物 ) 明らかな感作性物質ではない主標的器官 : 肝臓 甲状腺反復投与毒性 NOAEL ( ラット, 2 世代生殖試験 )=10 mg/kg/ 日生殖毒性授精率の減少 卵巣における原始卵胞数の減少 NOAEL ( ラット, 2 世代生殖試験 )=10 mg/kg/ 日 生殖 発生毒性 遺伝毒性発がん性許容濃度 発生毒性催奇形性なし ( 実験動物 ) 哺育期間中の児動物の死亡 NOAEL ( ラット, 2 世代生殖試験 )=10 mg/kg/ 日陰性 (in vitro 及び in vivo) 発がん性を示す証拠なしなし リスク評価に用いる無毒性量等調査の結果得られた情報の中から HBCDのリスク評価に用いる無毒性量等として ラットを用いた2 世代生殖毒性試験 (Emaら, 2008) における一般毒性及び生殖発生毒性の NOAEL 10 mg/kg/ 日を採用した 以下にこの試験について示す Emaら (2008) による2 世代生殖毒性試験 ( 混餌投与 ) では 反復毒性の影響として 肝臓及び甲状腺への影響が観察されている 肝臓相対重量は全ての世代で雌雄とも高用量群で増加し F0 雄 F1 離乳児の雌雄及びF2 離乳児雄の中用量群でも増加したが 病理組織学的変化はみられていない F0 及びF1の中及び高用量群では甲状腺濾胞の萎縮を示した動物の頻度が有意に増加した 甲状腺の相対重量の増加が F0 及びF1の雄の高用量群 及び F1 の雌の高用量群で示された 血清 T4は全ての高用量群の動物で減少し F0 動物の雌雄のみが統計的に有意に減少した 血清 TSHはF0 雌の全用量群で F1 雌では上の2 用量で有意に増加した 高用量では肝臓重量の一貫した増加がみられた 中用量では甲状腺濾胞萎縮及び血清 TSHの増加がみられている 血清 TSHは雌では低用量でも増加の傾向にあるが F0 32

120 雌のみで統計的に有意であった この低用量の F0 雌でみられた血清 TSHの増加については 甲状腺の病理組織学的な変化やT4の変化がみられないこと F0 世代のみでみられていることから 毒性影響ではないと考え 甲状腺への影響及び肝重量の増加を指標とした一般毒性のNOAELは10 mg/kg/ 日と判断した ( 表 5-2-2) 表 HBCD の反復投与毒性試験結果 動物種等投与方法投与期間 投与量 結 果 文献 ラット SD 雌雄 経口投与 ( 混餌 ) 2 世代生殖毒性試験 ,500 15,000 ppm ( ,008-1,363 mg/kg/ 日に相当 ) F0 世代 : 150ppm 以上 : 血清 TSH の増加 ( 雌 ) 1,500ppm : 肝臓相対重量増加 ( 雄 ) 甲状腺濾胞の萎縮 ( 雌雄 ) 15,000ppm: 肝臓相対重量増加 ( 雌雄 ) 甲状腺相対重量の増加 ( 雄 ) 甲状腺濾胞の萎縮 ( 雌雄 ) 血清 T4 の減少 ( 雌雄 ) 血清 TSH の増加傾向 ( 雄 ) F1 世代 : 1,500ppm: 肝臓相対重量増加 ( 離乳児 雌雄 ) 1,500ppm 以上 : 血清 TSH の増加 ( 雌 雄は増加の傾向 ) 甲状腺濾胞の萎縮 ( 雌 ) 15,000ppm: 肝臓相対重量増加 ( 雌雄 ) 甲状腺相対重量の増加 ( 雌雄 ) 甲状腺濾胞の萎縮 ( 雌雄 ) 血清 T4 の減少傾向 ( 雌雄 ) 血清 TSH の増加傾向 ( 雄 ) F2 世代 : 1,500ppm: 肝臓相対重量増加 ( 離乳児 雄 ) 15,000ppm: 肝臓相対重量増加 ( 雌雄 ) 血清 T4 の減少傾向 ( 雌雄 ) 150 ppm の F0 雌でみられた血清 TSH の増加については 甲状腺の病理組織学的な変化や T4 の変化がみられないこと F0 世代のみでみられていることから 毒性影響ではないと考えた NOAEL=150 ppm (10 mg/kg/ 日 ) ( 本評価判断 ) Ema et al 2008 同じ試験における生殖 発生毒性として F0 F1 世代での用量依存的な授精率の減少 F1 雌での卵巣における原始卵胞数の有意な減少が1,500 ppm 以上でみられ 生殖毒性の NOAELは10 mg/kg/ 日と推定された また 妊娠期間中投与による発生毒性試験において 33

121 は 胎児毒性 催奇形性ともに認められなかった しかしながら 哺育期間中の児動物の 死亡の増加 (F2 世代 1,500 ppm 以上 ) がみられたため 発生毒性の NOAEL は 10 mg/kg/ 日と推定された ( 表 5-2-3) 表 HBCD の生殖 発生毒性試験結果 動物種等投与方法ラット経口 ( 混 SD 餌 ) 雌雄 F0 及び F1: 24 匹 / 性 / 群 投与期間投与量結果文献 F0 : 交配前 10 週間 交配期間 ( 最長 3 週間 ) 妊娠及び哺育期間 F1: 生後 4 週齢から生育 交配 妊娠 分娩 F2 世代の離乳まで ,500 F0: 15,000 ppm 150 ppm 以上 : 用量依存的な授精 ( 雄ではそれぞ率の有意な低下れ ,008 mg/kg/ F1: 日 雌ではそれ 150 ppm 以上 : 用量依存的な授精ぞれ 率の低下 ( 有意差なし ) 1,363 mg/kg/ 日に相当 ) 1,500 ppm 以上 : 原始卵胞数の有意な減少 ( 雌 約 30%) 15,000 ppm: 雄離乳児で体重の有意低値 F2: 1,500 ppm: 児動物の死亡率の増加傾向 ( 哺育期間中 有意差なし ) 15,000 ppm: 児動物の死亡率の増加 ( 哺育期間中 ) 雌雄離乳児で体重の有意低値 空中立ち直り反射の成功率の低下 ( 雌児動物 ) 授精率の減少は F0 及び F1 でみられたが F0 のみで統計学的に有意であることから 影響があるが明確ではないと考えられた したがって 150 ppm については LOAEL と判断せず 明らかな影響のみられた 1,500 ppm を LOAEL とし NOAEL は 150 ppm (10 mg/kg/ 日 ) であると推定する NOAEL=150 ppm (10 mg/kg/ 日 ) ( 本評価判断 ) Ema et al.,

122 不確実係数の算出 本リスク評価に用いるラットの 2 世代生殖毒性試験 (Ema ら, 2008) データの不確 実係数積は 以下の不確実係数より 500 とした 不確実係数 : 動物とヒトの種差についての不確実係数 (10) 個体差についての不確実係数 (10) 不確実係数積 : 500 試験期間についての不確実係数 (5) 6. リスク評価 暴露の余裕度は NOAEL と暴露量との比として計算される MOE = NOAEL / 暴露量 なお HBCD のリスク評価に用いる無毒性量は 一般毒性の NOAEL 10 mg/kg 及び生 殖発生毒性の NOAEL 10 mg/kg であるが 以後のリスク評価結果は一般毒性及び生殖発 生毒性共通のものとして 1 通りのみ示す 6.1. カーテンの使用による室内暴露の評価放散 ( 揮発 ) 経路の推定暴露量の算出結果と 不確実係数積 (UFs) との比較によるリスク判定結果を表 に示す MOE が UFsよりも大きければ 有害影響を及ぼす懸念は無い という判定結果となる 表 カーテンからの揮発経路の暴露量予測と MOE 算出結果 試料 No. 推定暴露量 (mg/kg/ 日 ) NOAEL (mg/kg/ 日 ) MOE UFs # リスク判定 MOE > UFs ( 懸念なし ) 上記のとおり MOE と UFs (500) との比較の結果 カーテンからの揮発経路の室内 暴露によりヒト健康への影響を及ぼす懸念はない と判断された 35

123 6.2. カーファブリックの使用による車内暴露の評価 放散 ( 揮発 ) 経路の推定暴露量の算出結果と 不確実係数積 (UFs) との比較によるリスク 判定結果を表 に示す 表 カーファブリックからの揮発経路の暴露量予測と MOE 算出結果 試料 No. 推定暴露量 (mg/kg/ 日 ) NOAEL (mg/kg/ 日 ) MOE UFs # # # リスク判定 MOE > UFs ( 懸念なし ) MOE > UFs ( 懸念なし ) MOE > UFs ( 懸念なし ) 上記のとおり MOE と UFs (500) との比較の結果 カーファブリックからの揮発経 路の車内暴露によりヒト健康への影響を及ぼす懸念はない と判断された 36

124 7. 参考文献 含有試験 放散試験 Miyake et al. (2009):Emission rate of hexabromocyclododecane (HBCD) from the surface of a flame retarded curtain in Japan. Organohalogen Compounds, 71, JIS A 5914:2004 建材畳床 有害性 暴露リスク 産業技術総合研究所 (2007) 暴露係数ハンドブック ( ate.pdf から引用 ) 住宅リフォーム 紛争処理支援センター (2005) 平成 16 年度室内空気環境に関する実証実験および調査業務 ECB, European Chemical Bureau (2003). Technical Guidance Document on Risk Assessment, PartⅠ. ECB, European Chemical Bureau (2008a). Risk Assessment Report; Bis(2-Ethylhexyl)- Phthalate, Final report. ECB, European Chemical Bureau (2008b). Risk Assessment Report; Hexabromocyclododecane, Final report. Ema, M., et al. (2008) Two-generation reproductive toxicity study of the flame retardant hexabromocyclododecane in rats. Reprod. Toxicol., 25, Environment Canada/Health Canada(2010) Draft Screening Assessment Cyclododecane, 1,2,5,6,9,10-hexabromo- Chemical Abstracts Service Registry Number Eriksson, P., Fisher, C., Wallin, M., Jakobsson, E., and Fredriksson, A. (2006) Impaired behaviour, learning and memory, in adult mice neonatally exposed to hexabromocyclododecane (HBCDD). Environ. Toxicol. Pharmacol., 21 (3), (ECB, 2008 より引用 ) Hachisuka, A., Nakamura, R., Sato, Y., Nakamura, R., Shibutani, M. and Teshima, R. (2010) Effects of perinatal exposure to the brominated flame-retardant hexabromocyclododecane (HBCD) on the developing immune system in rats. Bull. Natl. Inst. Health Sci., 128, POPRC (2010) Risk profile on hexabromocyclododecane, Report of the Persistent Organic Pollutants Review Committee on the work of its sixth meeting, Addendum. ( OPRC6Documents/tabid/783/language/en-US/Default.aspx から引用 ) Saegusa, Y., Fujimoto, H., Woo, G., Inoue, K., Takahashi, M., Mitsumori, K., Hirose, M., Nishikawa, A., Shibutani, M. (2009) Developmental toxicity of brominated flame retardants, tetrabromobisphenol A and 1,2,5,6,9,10-hexabromocyclododecane, in rat offspring after maternal exposure from mid-gestation through lactation. Reprod. 37

125 Ⅳ 2. 難燃加工時の HBCD 異性体存在比に及ぼす温度影響の推定調査

126

127 Ⅳ 2. 難燃加工時の HBCD 異性体存在比に及ぼす温度影響の推定調査 1. 目的 調査内容 調査結果 市販 HBCD の異性体構成比 加熱温度による異性体構成比の変換 HBCD 含有製品の使用あるいは製造時のリスク低減策 引用文献... 6

128 1. 目的 HBCD には主に α β 及び γ 体の 3 つの異性体 ( ジアステレオマー ) があり 難燃加工の工程において 加熱によりその異性体比率が変化することが知られている HBCD については 異性体によって生物濃縮性が大きく異なることや水溶解度が異なることから HBCD の環境リスクを低減し 管理を行ううえで 熱による異性体変換の情報を収集しておくことは重要である ここでは 加熱温度と HBCD 異性体の構成比の関連性を調査し リスク低減に利用できる基礎データを採取した 2. 調査内容 3 異性体の構成比率が既知のカーファブリック試料を 80 から 160 の範囲で 10 ごとに温度を変えて放散試験を行った 試験方法は Ⅳ-1 章のカーファブリックの放散試験方法同様である 加熱温度と その時の HBCD 放散量の各異性体構成比をプロットし 最小二乗法により 温度の関数としての各異性体の構成比率を求めた また 異性体構成比の文献値を整理し 今回の調査結果と比較を行い HBCD に利用においてリスク低減に利用できる基礎データを採取した 3. 調査結果 3.1. 市販 HBCD の異性体構成比市販難燃剤は γ 体の比率が高い 表 に Peled ら 1) による市販 HBCD の異性体構成比分析結果を示す 難燃剤製品としての HBCD は γ 体を主成分としており その構成比は α 体が 10 数 % β 体が 10% 弱 及び γ 体が 70% 程度の製品が多い 中には Sample A のように β 体がほとんど含まれていない製品もある 表 Assay and isomer distribution of commercial samples of HBCD 1) Sample %Br γ-isomer α-isomer β-isomer TBCD * Unidentified MP A B B-2 C D < ND * TBCD - Tetrabromocyclododecene Samples A D were taken from the following materials though not necessarily in the same order: Bromkal-73-6CD - Chemische Fabrik Kalk FR Dead Sea Bromine Group CD-75 - Great Lakes Chemical Corporation BC-63 - Saytech HBCD - Societe Potasse et Produits Chimiques 3.2. 加熱温度による異性体構成比の変換 Miyake ら 2) は HBCD が使用された防炎カーテンからの HBCD 放散量を見積もるため HBCD の放散量を加熱加速測定法により求めている HBCD は揮発しにくい物質のため 製品からの放散量は非常に少なく 測定することが困難である そのため 加熱により放散量を増大させて測定を行い 放散速度と温度との関数 ( アレニ 1

129 ウスプロット ) を求めている この関数を使用し 温度に室温を外挿することにより 室温における HBCD 放散速度を推定している (Ⅳ-1 章の 項と同様の試験法 ) この試験の中で カーテンの加熱試験を行っているが 各異性体の構成比が変換されていることを報告している ( 図 3-2-1) 図 Distribution of HBCD isomers before and after thermal processing 2 ) *Peled et al. have reported distribution of HBCD isomers after thermal rearrangement. また Peled らによれば 熱による転移 (Thermal rearrangement) により もとの構成比がどのようであっても熱転移が平衡に達した際の構成比は α 体が 78% β 体が 13% 及び γ 体が 9% になるということを報告しており 1) このときの試験温度は 190 であった 本調査においても Miyake らと同様に 異性体の温度ごとの放散量を求めた 結果を図 に示す α-hbcd β-hbcd γ-hbcd 放散量 (ng/g) 温度 ( ) 図 HBCD 異性体放散量の温度プロファイル 2

130 図 では 130 から放散量は多くなり始め 特に α 体の放散が顕著であり 次にβ 体 γ 体となっている この傾向は HBCD の蒸気圧の傾向と一致している 酒井らによる PBDEs と HBCD の蒸気圧測定結果を図 に示す 3) α 体は蒸気圧が他の異性体と比較し高いため 放散しやすいことが推察された つまり 製品からは 先ずα 体の放散が始まることが示唆される 図 PBDEs と HBCD の蒸気圧測定結果 3) ここで 図 のデータに関して 加熱温度ごとの異性体構成比を算出した 結果を表 及び図 に示す 表 異性体構成比に及ぼす温度影響 温度異性体 α 体 β 体 γ 体

131 α-hbcd β-hbcd γ-hbcd 異性体構成比 (%) 温度 ( ) 図 加熱温度による異性体構成比の変化 この結果 温度を上げていくと α 体の構成比率は 120 まで下がっており その後上昇に転じている α 体に関しては 付近までは 他の異性体も放散するため その構成比が落ちるが 110 を越えた時点から 熱転移が始まり α 体が温度上昇とともに支配的になっていくと考えられる 熱転移以後の異性体構成比を図 に示す α-hbcd β-hbcd γ-hcbd 異性体構成比 (%) 温度 ( ) 図 熱転移以後の異性体構成比率のプロット 4

132 図 における各異性体のプロットの傾きを以下に示す α 体 y = x (R 2 = 0.863) 式 (1) β 体 y = x (R 2 = 0.504) 式 (2) γ 体 y = x (R 2 = 0.927) 式 (3) α γ 体に関しては寄与率も高く 直線性があることが判った このとき 使用 したカーファブリック試料の HBCD 含有濃度及び異性体構成比を次の表 に示 す 表 異性体 カーファブリック試料の HBCD 含有濃度及び異性体構成比 カーファブリック中 HBCD 濃度 (wt%) 異性体構成比 (%) α 体 β 体 γ 体 この異性体構成比を式 (1) から式 (3) の y 項に代入しときの温度 (x 項 ) を求めたところ α 体が 125 β 体が 196 γ 体が 120 となったが β 体に関しては 式の精度が悪いため不採用とした α 体の 125 及びγ 体の 120 付近の温度が このカーファブリック試料における製造時の加熱温度であると推察される 4. HBCD 含有製品の使用あるいは製造時のリスク低減策 HBCD は 各異性体によって 水溶解度や生物蓄積性等が異なることが知られている 4) 中でもα 体は水溶解性が高いため HBCD 異性体の中では最も水に移行しやすく 生物蓄積性も高いことから 水生生物に濃縮されやすいと考えられる 今回 α 体が熱転移温度以下では 最も気中に放散しやすいことが判明した また 難燃加工時等で高温になると 熱転移によりα 異性体比率が高くなることから α 体が環境中に最も移行しやすい異性体であるといえる 環境中への HBCD の影響を最小限とするには 製品の難燃加工時等において 出来るだけ温度を上げずに処理する必要があることが示唆された 5

133 5. 引用文献 1) M.Peled, R.Scharia and D.Sondack :Thermal Rearrangement of Hexabromocyclodecane (HBCD). Advances In Organobromine Chemistry Ⅱ, (1993). 2)Miyake Y., Managaki S., Yokoyama Y., Nakai S., Kataoka T., Nagasawa E., Shimojima M., Masunaga S., Hondo H., Kobayashi T., Kameya T., Kimura A., Nakarai T., Oka Y., Otani H. and Miyake A. :Emission rate of hexabromocyclododecane (HBCD) from the surface of a flame retarded curtain in Japan.Organohalogen Compounds, 71, (2009). 3) 酒井ら : 家庭系廃製品の残留性化学物質と 3R シナリオ解析 ( 廃棄物処理等科学研究費 補助金総合研究報告書概要版 ) 4) 平成 22 年度第 6 回薬事 食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質調査会化学物質審議会第 98 回審査部会第 103 回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会 第一部 : 参考資料 11 HBCD の異性体による違い ( 平成 22 年 9 月 17 日 ) 6

134 Ⅳ- 3. 製品から吸着外部粉じんへの HBCD 移行調査

135 Ⅳ- 3. 製品から吸着外部粉じんへの HBCD 移行調査 1. 調査内容 調査対象物質 調査項目 調査対象製品 調査方法 標準物質及び試薬類 標準物質類 試薬類 装置及び器具類 装置 器具類 機器分析 測定条件 検量線 同定及び定量 定量下限 吸着移行試験 粉じんの種類 試料調製 含有試験 調査結果 試料拡大写真 吸着粉じん量 含有試験結果 参考文献... 19

136 1. 調査内容 1.1. 調査対象物質監視化学物質の一つである 1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン ( 以下 HBCD とする ) を調査対象物質とした HBCD には複数の立体異性体が存在することから 本調査では主要な異性体であるα β 及びγ 体を分析対象とした α-hbcd β-hbcd -HBCD γ CAS No.: CAS No.: CAS No.: 調査項目 HBCD は 第 103 回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会 ( 平成 22 年 9 月 17 日 ) において有害性調査項目が検討され 製造 輸入業者に対して鳥類の繁殖試験による有害性調査指示が出されており 今後の試験の結果によっては 第一種特定化学物質に指定される可能性も十分に考えられる物質である また 国際的にも HBCD は残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs 条約 ) に基づき 条約対象物質への追加について検討するために設置された残留性有機汚染物質検討委員会 (POPRC:POPs Review Committee) において審議されている こうした動向もふまえて 今後は HBCD 含有製品の用途から 特に室内あるいは車内環境におけるヒト健康へのリスク評価が必要となってくるが 有害性情報の調査 評価に比べ 暴露評価はまだ十分には行われておらず 一般消費者を対象とした室内あるいは車内環境における暴露に関しては 国内外の情報が少ないというのが現状である 室内環境における HBCD 含有製品からの暴露は主に 図 に示した1 揮発 2 発じん 3 直接接触による経路があると考えられている 1

137 2 1 3 図 室内環境における HBCD の暴露シナリオ ( 静岡県立大学 HP: column_25.htm#fig_25-1 より引用 ) そこで本調査では 室内または車内環境における HBCD の暴露評価を行うための基礎的情報収集として 2 発じん の経路に着目し これらの暴露量推定を補足するための調査を実施した 2 発じん 経路の暴露については 例えばカーテン製品であれば 2-1 製品劣化による発じん と 2-2 製品に吸着した塵埃のような外部由来の粉じん ( 以下 吸着外部粉じんとする ) に HBCD が移行して再発じん するものが考えられる 2-1 については 製品自体から発生する粉じんによるものであるが 約 10 年間使用されていたカーテンにおいても製品由来の粉じん ( 繊維 ) は殆ど検出されていないことから 1) 試買製品( 新品 ) を試験する本調査の場合 非常に長期的な調査が必要であると予想された 室内環境のモニタリングにおいて 捕集した粉じん中に高濃度のHBCD が検出されており 室内暴露において粉じんは重要な暴露経路であると報告されている 2) しかし 2-2 の吸着外部粉じんへの HBCD の移行メカニズムは明らかにされておらず 可塑剤のフタル酸ジ-2-エチルヘキシル (DEHP) 等で調査事例が一部あるのみである 3) 4) そこで本調査では 2-2 の吸着外部粉じんへの HBCD の移行経路に着目し HBCD 含有製品へ外部粉じんを人工的に吸着させることにより 模擬的な吸着移行試験を行うこととした 2

138 1.3. 調査対象製品 Ⅳ- 1 章で使用した 27 試料のうち 本調査で用いた調査対象製品 4 試料を抜粋して 表 に示す 表 調査対象製品 試料 No. 用途製造国 # 3 日本カーテン # 7 日本 # 25 カー 日本 # 26 ファブリック 日本 注 ) 試料 #3 は試買製品 それ以外は製造者等からの提供品である 2. 調査方法 2.1. 標準物質及び試薬類 標準物質類 HBCD 標準品 1) α-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 2) β-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 3) γ-hbcd (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 HBCD- 13 C12 標準品 1) α-hbcd- 13 C12 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 2) β-hbcd- 13 C12 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 3) γ-hbcd- 13 C12 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 HBCD-d18 標準品 1) α-hbcd-d18 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 2) β-hbcd-d18 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社 3) γ-hbcd-d18 (50 mg/ml トルエン溶液) Wellington Laboratories 社注 ) HBCD- 13 C12 をクリーンアップスパイク * 用内標準物質 HBCD-d18 をシリンジスパイク ** 用内標準物質として使用した * クリーンアップスパイクは 前処理操作中の損失を確認するために添加 各内標準物質は 13 C で標識した安定同位体標識化合物である ** シリンジスパイクは クリーンアップスパイクの回収率を確認するための基準として使用する 13 C で標識 した安定同位体標識化合物である 3

139 外部粉じん標準品 1) 関東ローム JIS Z 8901 試験用粉体 8 種 ( 社 ) 日本粉体工業技術協会 2) 混合粉体 JIS Z 8901 試験用粉体 15 種 ( 社 ) 日本空気清浄協会 3) コットンリンタ ( 社 ) 日本空気清浄協会 注 1) 混合粉体は上記の関東ローム コットンリンタ及び JIS Z 8901 試験用粉体 12 種 ( カーボンブラック ) を それぞれ 72% 5% 及び 23% の割合で混合したもの 注 2) 製造者より入手したコットンリンタの規格値を表 に示す 表 項目 コットンリンタ規格値一覧 規格値 原料コットン 100% 外観 粒度 水分 (%) 嵩比重 (g/cc) その他 白 ( 標準品と同等程度 ) 異物混入がないこと 60 メッシュ全通 10% 以下 0.3 以下 JIS Z 8901 では直径 1.5 mm, 長さ 1 mm 以下と規定 試薬類 1) アセトン 残留農薬試験 PCB 試験用 関東化学 ( 株 ) 2) アセトニトリル LC/MS 分析用 関東化学 ( 株 ) 3) メタノール LC/MS 分析用 関東化学 ( 株 ) 4) 超純水 LC/MS 分析用 和光純薬工業 ( 株 ) 5) ジクロロメタン 残留農薬試験 PCB 試験用 関東化学 ( 株 ) 6) ガラス繊維ろ紙 GB-100R ( 内径 25 mm) アドバンテック東洋 ( 株 ) 7) 0.2 mm シリンジフィルタ 13 mm Millex-LG (PTFE ) ミリポア社 8) 0.45 mm シリンジフィルタ 25 mm GD/X (PTFE) Whatman 社 2.2. 装置及び器具類 装置 1) 恒温恒湿槽 2) ローボリウムエアサンプラー (LVS) 3) 遠心分離機 器具類 1) フォトフレーム ( アルミ枠 L サイズ ) 4

140 2) ろ紙フォルダー 2.3. 機器分析 測定条件 高速液体クロマトグラフ質量分析法 (LC/MS/MS) LC 条件 L C 装置 Agilent 1100 (Agilent Technologies 社 ) カ ラ ム Ascentis Express C18 (SUPELCO 社 ) 長さ 150 mm 内径 2.1 mm 粒径 2.7 mm 移 動 相 A: 水 B: アセトニトリル / メタノール (1/9) 0 16 min A:B=20: min A:20 0 B: linear gradient min A:B=0: min A:B=20:80 流 量 0.25 ml/min カラム温度 40 注 入 量 5 ml MS 条件 M S 装置 API4000(AB SCIEX 社 ) イオン化法 ESI(Negative) 測定モード SRM(Selected Reaction Monitoring) 測定イオン 各 HBCD 異性体 m/z > 78.9 ( 定量用 ) m/z > 80.9 ( 確認用 ) 各 HBCD- 13 C12 異性体 m/z > 78.9 各 HBCD-d18 異性体 m/z > 検量線 1) 検量線作成用標準液の調製各 HBCD 異性体の 50 mg/ml 標準原液を分取し アセトニトリルで 1 mg/ml の混合標準液を調製した後 アセトニトリル / 水 (4/1) 溶液で順次希釈して 1~200 ng/ml の混合標準液を調製した 各 HBCD- 13 C12 異性体の 50 mg/ml 標準原液を分取し アセトニトリルで 1 mg/ml の混合標準液を調製した後 先程の 1~200 ng/ml 混合標準液に内標準物質として 10 ng/ml となるように添加し これを検量線作成用標準液とした また HBCD- 13 C12 異性体と同様に 各 HBCD-d18 異性体の 50 mg/ml 標準原液を分取し アセトニトリルで 1 mg/ml の混合標準液を調製した後 先程の 1~200 ng/ml 混合標準液に内標準物質として 10 ng/ml となるように添加した 2) 検量線の作成 検量線作成用標準液を 項の測定条件で LC/MS/MS に 5 ml 注入し 得られた SRM クロマトグラムから各 HBCD 異性体 ( 対象物質 ) 及び対応する HBCD- 13 C12 異性 5

141 体 ( 内標準物質 ) のピーク面積を求め 横軸に HBCD 濃度 (ng/ml) 縦軸に対象物質の 内標準物質に対するピーク面積比をプロットし 検量線を作成した 一例として α -HBCD 検量線を図 に示す 20.0 ピーク面積比 ( 対象物質 / 内標準物質 ) y = x R 2 = α-hbcd 濃度 (ng/ml) 図 α-hbcd 検量線の一例 同定及び定量 1) 同定分析試料液 5 ml を 項の測定条件で LC/MS/MS に 5 ml 注入し 得られた SRM クロマトグラム上のピーク保持時間 ( リテンションタイム ) が標準物質とほぼ同一であれば対象物質として同定した 2) 定量 同定された対象物質及び内標準物質のピーク面積比を検量線に代入し 分析試料液 中の対象物質の量を算出した後 以下の式によって粉じん中の含有濃度を算出した 1 Ci = ( Qi - Qt) W Ci Qi Qt W : 試料の HBCD 含有濃度または放散速度 (mg/g) : 分析試料液全量中の HBCD の量 (mg) : 空試験での HBCD の量 (mg) : 粉じん捕集量 (g) 定量下限検量線作成用混合標準液の最低濃度を5 回測定し 得られた測定値の標準偏差を以下の式によって求め その 10 倍を本調査における分析方法の定量下限とした ( 表 2-3-1) 6

142 s = å( x i - x ) n -1 2 s : 標準偏差 xi : 個々の測定値 (ng/ml) x : 測定値の平均値 (ng/ml) n : 測定回数 表 本調査における分析方法の定量下限 測定回数 測定値 (ng/ml) α-hbcd β-hbcd γ-hbcd 標準偏差 σ σ この定量下限 (10σ) を基にして 試料量 前処理時の分取量及び定容量等から各試 料の定量下限値を算出した 2.4. 吸着移行試験製品から吸着外部粉じんへのHBCD 移行を調査するため 模擬的に製品に粉じんを吸着させ 一定期間暴露させた後 ガラス繊維ろ紙で吸着粉じんを吸引捕集した 捕集した粉じんを有機溶媒で抽出した後 抽出液中の HBCD を LC/MS/MS で測定し 各設定条件における粉じん中の含有濃度を調査した 本調査の試験条件の概要を表 に 各設定条件の試験試料一覧を表 に示す 7

143 表 吸着移行試験の試験条件 ( 概要 ) No. 試験条件試験詳細 1 対象物質 HBCD 主要な α β 及び γ 体の 3 異性体を対象 2 対象試料 3 粉じん 1カーテン-1 ( 試料 #3:HBCD2.2wt%) 2カーテン-2 ( 試料 #7:HBCD1.5wt%) 3カーファブリック-1 ( 試料 #25:HBCD0.85wt%) 4カーファブリック-2 ( 試料 #26:HBCD1.5wt%) 5アルミホイル ( 粉じんブランク ) 1 混合粉体 (JIS Z 8901 試験用粉体 15 種 ) 2 関東ローム (JIS Z 8901 試験用粉体 8 種 ) 3コットンリンタ 4 分析対象試料上に吸着させた粉じん中の HBCD 含有濃度 5 試料調製 1 製品をフォトフレーム (L サイズ ) に挟み込む 2LVS で試料表面の埃を吸い取る 3 粉じん数十 mg を試料表面に均一に吸着 ( 堆積 ) させる 4 アルミ箔でフレーム前面を覆う ( 細穴を数点開ける ) 6 試験場所 容器上記で調製したフレーム試料を恒温恒湿槽内に設置 7 温湿度 28, 50%RH ( 恒温恒湿槽内で調整 ) 8 試験期間 1 日 4 日及び 7 日後 9 粉じん捕集 10 含有試験 ガラス繊維ろ紙をろ紙フォルダーに取り付け LVS で吸引捕集 1 抽出 : 有機溶媒を用いて超音波抽出 30 分間 2 精製 : シリンジフィルタでろ過 3 置換 : 抽出液を濃縮し 溶媒置換 4 測定 :LC-MS/MS 法 8

144 表 各設定条件の試験試料一覧 No. 粉じん試料名吸着暴露期間 1 1 日カーテン-1: 試料 #3 2 4 日 (n=1) 3 7 日 4 1 日カーテン-1: 試料 #3 5 4 日 (n=2) 6 7 日 7 1 日 8 カーテン-2: 試料 #7 4 日 9 7 日 10 1 日カーファブリック-1 11 混合粉体 4 日 : 試料 #25 (n=1) 12 7 日 13 1 日カーファブリック 日 : 試料 #25 (n=2) 15 7 日 16 1 日カーファブリック 日 : 試料 # 日 19 1 日アルミホイル 20 4 日 ( 粉じんブランク ) 21 7 日 22 カーテン-1 (n=1) 23 カーテン-1 (n=2) コットンリンタ 24 カーテン-2 7 日 25 アルミホイル 26 カーテン-1 (n=1) 27 カーテン-1 (n=2) 関東ローム 28 カーテン-2 7 日 29 アルミホイル 注 ) 各試料は粉じんを吸着させる前に試料表面を LVS で吸引洗浄した また 試 料片面を試料ブランクとして同様のろ紙捕集を行った 粉じんの種類対象外部粉じんとして JIS Z 8901 試験用粉体 15 種の混合粉体 同 8 種の関東ローム及びコットンリンタを使用した この混合粉体はコットンリンタに8 種 ( 関東ローム ) 及び 12 種 ( カーボンブラック ) を それぞれ 5% 72% 及び 23% の割合で混合したものであり 衣服から出た繊維状のいわゆる綿ぼこり 各種不完全燃焼により生じた煤 そして屋外から入った土ぼこりの混じった屋内あるいは人の出入りの多い場所での粉じんを想定して作成されている 5) そこで本調査ではこの混合粉体を主に試験を行い 参考粉じんとして 関東ローム及びコットンリンタを用いることとした 9

145 試料調製 1) 試料の固定各試料をL サイズのフォトフレーム ( アルミ枠 ) に挟み込んで固定した さらにアルミ板を用いて二分割し 一方を粉じん堆積用 他方を試料ブランク用 ( 粉じん無し ) として区分けした その後 ローボリウムエアーサンプラー (LVS) で試料表面を吸引し 試料由来の粉じんを取り除いた なお 評価する試料表面は試料由来の粉じんによる汚染を防ぐため 可能な限り長繊維のものを使用した 図 フォトフレームに挟み込んだ試料の一例 ( 試料 #3) 2) 試料への粉じんの吸着方法各粉じんをそれぞれ内径 25 mm の円筒に入れ 先端を試料表面 ( 片面 ) の中央付近で押し付けながら数回反転させ 粉じんを試料表面に吸着させた その後 試料表面を下に向けた状態でフォトフレームの裏面を軽く叩いて 過剰な吸着粉じんを落とし 試料表面をアルミホイルで覆った ( 換気のために四隅に細口を数点開けた ) もう一方の試料表面はそのままアルミホイルで覆い 試料ブランクとした 10

146 図 粉じんを吸着させた試料の一例 ( 試料 #7) 注 ) 下部のアルミホイル部分は対照となる試料ブランク 図 全てアルミホイルで覆った後の試料の一例 ( 試料 #3) 注 ) この状態で恒温恒湿槽に導入し 試験開始した 11

147 2.5. 含有試験 ガラス繊維ろ紙に捕集した粉じんまたは試料ブランク ( 粉じん無し ) 中の HBCD 含有濃 度を図 の含有試験フローチャートに従って分析した 捕集粉じん クリーンアップスパイク用内標準物質添加 超音波抽出 アセトン / ジクロロメタン (1/1) 上澄み液 遠心分離 ろ過 濃縮 転溶 シリンジフィルタ アセトニトリル / 水 (4/1) LC/MS/MS 測定 シリンジスパイク用内標準物質添加 図 含有試験フローチャート ( 概要 ) 3. 調査結果 3.1. 試料拡大写真参考データとして 本調査で使用した試料の拡大写真 ( マイクロスコープによる ) を図 3-1-1~ 図 に示す いずれも撮影した試料表側の繊維は主に長繊維であった 図 試料 #3 の拡大写真 12

148 図 試料 #7 の拡大写真 図 試料 #25 の拡大写真 図 試料 #26 の拡大写真 13

平成 25 年度化学物質安全対策 ( 第一種特定化学物質含有製品等安全性調査 ) 報告書 平成 26 年 3 月 一般財団法人化学物質評価研究機構 はじめに 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 ( 以下 化審法 という ) は工業用の化学物質が製造 輸入された後に環境を経由して 人および動植物に対して長期的な影響を未然に防止することを目的としている 化審法では 難分解性 高蓄積性 人又は高次捕食動植物への毒性のある化学物質を

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