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1 物理化学 Ⅱ - 熱力学入門 年度 講義ノート 琉球大学理学部海洋自然科学科堀内敬三

2 まえがき この小冊子は 琉球大学理学部海洋自然科学科化学系の 2 年生対象の講義 物理化学 Ⅱ の講義ノートである このノートに基づいて実際に黒板に板書する場合は ここに書いて あることを全て書くことは ( でき ) ないが それでもかなりの時間を板書に費やすことにな り また学生諸君もそれを書き写すのにかなりの時間を費やしてしまう そのため 講義 の進行は遅くなり 学生諸君も書き写すのに忙しくて内容を理解する あるいは考える時 間が余り持てないのが実状である このノートはそのような時間や手間を省いて 講義に 集中してもらうために配布するものである 板書以外にも話す内容に重要なことが含まれ ていることがあるが その話の内容までノートにメモするのは 板書に忙しいとなかなか 大変である この講義ノートはそのような内容まで全て書いておいた ( そのためページ数 が増えてしまった ) この講義ノートがあれば板書を書き写す手間が省かれるので 講義 の内容に対する理解に神経を集中できるようになると期待している 教科書は 千原秀昭 中村亘男訳 アトキンス物理化学 ( 第 8 版 ) 上下 東京化学同人 であるが このノートはアトキンスに書いてないことも多く含まれているし 順番も少し 異なっている しかし ノートの内容がアトキンスのどの部分に対応しているかを示して あるので アトキンスを参照するときに不便はないと思われる 式には通し番号を付けて あるが 例えば ( 3 45)( 79) と書いてあるときは アトキンスの 3 章の式 ( 45) と同じであることを意味している また 講義ノートには書けなかった式の証明などはホームページの講義ノートの補足に掲載し た 興味のなる人は参照して頂きたい アドレスは である ~ horiuchi/ このノートを作る際に参考にして文献はかなりの数になるが アトキンスの他には主に 榊友彦訳 ピメンテル化学熱力学 東京化学同人 原田義也著 化学熱力学 裳華房 小宮山宏著 入門熱力学 培風館 久保亮五編 熱学 統計力学 裳華房 である これらの本は図書館にもあるので 興味のある人は参考にして頂きたい 内容については間違いのないように注意深く推敲したつもりであるが それでも間違い や誤解されやすいあるいは分かりづらい記述などが多々あるかもしれない 漸次改善して いくつもりであるから 気づいたことがあったら遠慮せずにどんどん指摘して頂きたい 堀内 敬三

3 目次 : 1. 序論 1 1 熱力学とは? 1 2 熱平衡状態 1 3 理想気体 1 4 実在気体 1 2. エネルギー 2 1 内部エネルギー 2 2 エンタルピー 2 3 内部エネルギーとエンタルピーの温度依存性 2 4 熱容量 熱化学 エンタルピー変化 3 2 標準生成エンタルピー 3 3 エンタルピー変化の解釈 4. 過程とエネルギー効率 等温過程と断熱過程 4 2 膨張 圧縮サイクル 4 3 熱機関のエネルギー効率 4 4 熱力学第二法則 5. エントロピー 熱力学におけるエントロピー 5 2 エントロピーの微視的観点からの (= 統計力学的 ) 解釈 5 3 物質のエントロピー 5 4 エントロピー効果の実例 6. 自由エネルギー 自由エネルギーと平衡条件 6 2 自由エネルギーの温度 圧力依存性 6 3 標準生成 ( Gibbs) 自由エネルギー 6 4 自由エネルギーと最大仕事 最小仕事 6 5 自由エネルギーと化学平衡 6 6 実在気体の熱力学的取り扱い-フガシティー 実在溶液の熱力学的取り扱い- 活量 - 7. まとめ Maxwell の関係式 7 2 熱力学的状態方程式 7 3 開いた系の熱力学関係式 7 4 熱力学の有効性と限界 8. 記述問題 演習問題 149

4 1. 序論 1 1 熱力学とは? 我々が普通に観測の対象とするものは きわめて多数の原子や分子を含み 一般にきわ めて大きい力学的自由度 ( 基礎物理学 1 1a b 参照 ) を持つ系であるが 普通の観測では温 度とか 圧力とかいった少数の巨視的物理量を指定し それによってその状態を記述する この様に粗く指定された状態を巨視的状態という これに対して 少なくとも考えの上で はその系の状態を力学的に可能な限り精密に指定する事ができる ( 例えば 原子や分子の座 *1 標と運動量を全て指定する ) そのように指定された状態を微視( 的 ) 状態という 熱力学の特徴 熱力学では極めて多数 ( Avogadro( ) アヴォガドロ数個程度 ) の粒子を含む系を 数個の巨視 的量で記述される巨視的状態としてとらえる これに対して 力学は基本的には少数粒子 から成る系を対象とし 各粒子の位置と運動量で系の状態を記述する 熱力学の枠組みは 保存則 ( 第一法則 ) という一般的原理と不可逆性 ( 第二法則 ) とい う日常経験を前提として組み立てられているものであるから それなりに一般性を持つ まず 熱平衡状態 ( 1 2 参照 ) という巨視的状態が存在する という経験を基礎に置く( ことを前提とする ) 熱平衡状態という巨視的状態を指定する物理量として 温度 圧力 体積 粒子数という大雑把な量 ( 巨視的な量 ) を導入する つまり この巨視的な量を 使って系の状態を記述する 熱平衡状態は分子の ( 運動 ) 状態の微視的な詳細によらず こ のような巨視的な量が同じであれば 同じような平衡状態が実現されるという経験に基づ いている 熱力学の最大の強みの一つは その基礎をマクロな経験的観測のみに置いている事であ る 取り扱う過程についてのミクロな知識が全くなくても あるいはミクロなレベルに立 ち入る事なしに議論できる そのため どんな複雑な系にも適用できる ( 例 : 生体系 ) しかし 熱力学の内容を理解する時には ミクロなレベルから考えた方が理解しやすいの で この講義では分子のレベルから出発して熱力学を理解する事にする これは統計力学 的に熱力学を理解するということであり 統計熱力学と呼ばれる これについては 3 年前 期の 化学統計熱力学 で詳しく取り扱う この講義の目標 この講義は要約すればエネルギーとエントロピーについて学ぶ エントロピーという概 念は 1 年後期の 化学 Ⅱ で既に学習しているが エネルギーと比べて理解することが難 しい概念である 従って この講義ではこのエントロピー ( そしてその変形である自由エネ ルギー ) を理解することを第一の目標として熱力学を学ぶ その際の基本的姿勢としては *1 微視的あるいはミクロという言葉を 原子や分子のスケールに対して用いる 巨視的あるいはマク ロという言葉は それらに対して相対的に大きなスケール ( 基本的には我々が目で見ることのでき る大きさ ) の系に対して用いる - 1 -

5 上述したように 分子の立場に基づいて熱力学の内容を理解する ( 統計力学的に理解す る ) というものである 化学熱力学とは化学者が興味を持つ系 ( 例えば 溶液 相平衡 化学平衡 化学電池など ) に 熱力学を応用するものであるが これについては基本的に 後学期の 物理化学 Ⅳ で学ぶ この講義では化学熱力学を理解するための基礎として熱 力学を学び 熱力学的な考え方 概念 ( 特にエントロピーと自由エネルギー ) を理解しそ れに慣れることを目標とする 教科書 ( アトキンス) でいえば 1 章から 3 章および 章の一部の内容を扱う予定である 1 2 熱平衡状態 熱力学で使う用語をいくつか紹介しておこう 系 外界 ( 環境 周囲) 宇宙( アトキンス図 2 1) 我々が今注目している ( 問題にしている 考察している ) 対象を系と呼ぶ そして 宇 宙は系とその外界 ( 環境 周囲 ) からなる 孤立系 : 外界と全く交渉を持たず つまり 外界とのエネルギーや物質の交換を行わない 系 例 : 理想的な魔法瓶 ; 宇宙は孤立系である 閉じた系 ( 閉鎖系 ): 外界との間にエネルギーの交換はあるが物質の出入りのない系 例 : 地球 ( 隕石などを考慮すると閉じた系ではない) 開いた系 ( 開放系 ): 外界との間でエネルギーや物質の交換を行う系 例 : エンジン ( ガソ リンや空気を取り込み 仕事や熱 排気ガスを放出する ); 生物 同じ系であっても 何を目的に議論するか どこまで厳密に議論するかによって 例え ば孤立系と見なしたり 閉じた系と見なしたりする事がある ( 例 : 地球は閉鎖系であると見 なせるが 厳密には開放系である ) この講義では基本的に孤立系と閉じた系 ( 閉鎖系 ) を考察 の対象とする 開放系については後学期の 物理化学 Ⅳ で取り上げる 状態関数 ( 状態量 ) 前述したように 熱力学では巨視的な物質の状態を指定 ( 記述 ) するときに 温度 T 圧力 P 体積 V といった少数の巨視的物理量を使う これらのように 系の状態だけで決 *1 まる巨視的量 系の状態の性質を指定 記述する巨視的量を状態関数という 系が過去 にどのような過程を経てこようと その状態をどの様にして作ったかには無関係に 状態 関数は現在ある系の状態にのみ依存するという性質を持っている 熱平衡状態と非平衡状態 巨視的状態を熱平衡状態と非平衡状態に大別する 熱平衡状態とは 巨視的状態が時間 *2 変化しない つまり状態関数が一定の状態である 一般に孤立系は一定条件の下に十分 長く放置すれば熱平衡状態に達する ( 経験則 ) 熱平衡状態の具体例としては コップの *1 一般には状態量というが ここではアトキンスにあるように状態関数と呼ぶことにする *2 平衡状態というと 力学系の平衡状態 ( 力の釣り合い ) を連想するかもしれないが それと混同することはないであろう - 2 -

6 中にあって周囲と同じ温度 圧力の水 ( 蒸発はないものとする ) これは 温度 体積 圧力が一定である これに対して 定常状態とは熱平衡状態ではないので注意する 流体の流れ 例えば川 の流れや電流などはその流れの中に任意の領域を考えたとき その領域に関してみると物 質やエネルギーの出入りがある 定常状態とは 流速とか単位時間当たりの流量とかの運 動 ( 流れ) の様相が時間的に不変な しかし巨視的には ( 物質やエネルギーの流れがある) 動的な状態である これに対して 熱平衡状態は巨視的には静的な状態である 化学で重要な平衡に 相平衡と化学平衡がある これらについては 後学期の 物理化 学 Ⅳ で取り扱う 熱平衡状態は巨視的には少数の変数 ( 例えば温度と圧力 ) を与えれば決まる静的な ( つま り時間変化しない ) 状態であるが 微視的には粒子が複雑な運動をしている動的な ( 時間変 化する ) 状態である 例えば化学平衡は ミクロなレベルで見たとき正逆のプロセスの速 度が等しくなった時に実現する動的な釣り合い状態である 非平衡状態から熱平衡状態に至る過程は 不可逆過程 あるいは緩和過程と呼ばれてい る 緩和過程 : 熱平衡状態にある系に熱や圧力を加えた時 その系が示す挙動 ( 例 :Le Chatelier( ル-シャトリエ) の法則 ) この講義では熱平衡状態にある系についてのみ考える ( こ れを平衡熱力学という ) 非平衡状態にある系が時間とともにどのように変化していくか ( 非平衡熱力学 ) を考えることはしない 平衡熱力学の根本問題は 熱平衡状態にある系の内部束縛 ( エネルギー 体積 物質の やり取りを禁止する束縛 ) が除去された時 系が最終的に到達する新しい熱平衡状態を決 定する事である ( 注意 : 熱力学と速度論 ) 熱力学では変化の方向を示すが その速さ ( どの程度の時間で 新しい平衡状態に達するか ) は分らない それを取り扱うのは速度論という別の理論体系 である 化学反応についての速度論 -反応速度論-は後学期の 物理化学 Ⅳ で取り扱う 1 3 理想気体 ( アトキンス ) この講義では考察対象としての系を 基本的には理想気体に限定するが 必要に応じてそれ以外の 系 ( 実在気体 液体 固体) も取り上げる ここでは アトキンスの に沿って理想気体の性 質を復習してみよう アトキンスでは完全気体と呼んでいるが 理想気体という言葉の方が一般的なので ここでも理想 気体という言葉を使う 理想気体とはモデル物質である モデルとは系を単純化することによって 問題の本質的な部分を理解 ( あるいは数学的に解析 ) し易くしたものである つまり 問題を単純化 し問題の本質的な部分のみを抽出するためにモデルを使う 理想気体とは巨視的 ( 熱力学的 ) には 任意の条件下で気体の状態方程式 ( 1 8) が成立する系であるが 微視的には気体粒子間の相互作用も *1 粒子自身の体積もない ( 大きさがない) と見なせるような粒子からなる系を意味している これに *1 理想気体は Charles( シャルル ) の法則に従うので 圧力が一定の時 体積は温度に比例し ( アトキン ス図 1 6 参照 ) 体積が一定の時 圧力は温度に比例する( アトキンス図 1 7 参照 ) そのため 理想 気体は絶対零度では体積も圧力もゼロになる - 3 -

7 対して 実際に存在している気体を実在気体という a 気体の状態 ( アトキンス 1 1) 系の熱平衡状態を指定するのに必要かつ十分な ( 温度以外の ) 状態関数と 温度との間の 関数関係を与える式が状態方程式である この状態方程式の形は物質に依存するため一般 的な形というものはないが 理想気体は例外的に次の理想気体の状態方程式が気体の種類 に関わらず成立する PV = nrt ( 理想気体 ) ( 1 8)( 1) ここで R は気体定数である ( アトキンス表 1 2 を参照せよ) 上式の両辺ともエネルギーの 次元を持っていることに注意する ( a) 圧力 圧力の定義 圧力の単位 Pa( パスカル)( アトキンス表 1 1 を参照せよ) 標準 ( 状態 ) 圧力 P 5 = 10 Pa = 1 bar( バール ) *1 1 気圧は Pa 圧力と力学的平衡 ( アトキンス 1 1( a) 図 1 1 参照 ) 気体の圧力の原因は 気体分子がそれを入れている容器に衝突して力を及ぼすことにあ る この衝撃力を壁に衝突する多数の原子について平均すると この平均した力 < f> を気 体の圧力として測定することになる つまり 気体の圧力 及ぼす平均の力である ( N は気体分子の数 L 2 は容器の面積 ) P とは気体分子が容器の壁に 2 P = N< f> / L (< > は平均を表す ) ( a) 実際に原子が時々刻々壁に及ぼす力は平均から多少ずれるわけだが 気体分子の数は莫大 なので 平均からのずれ ( これを ゆらぎ という ) は検出できないほど僅かである ( b) 圧力の測定 気圧計 圧力計 ( c ) 温度 ( 温度については 2 章以降で詳しく考察する) 絶対温度 T の単位は K( ケルビン ) K = 25 つまり 摂氏温度 θとの関係は T/K =θ / ( 1 4)( 2) である ( アトキンス数値例 1 1 を参照せよ) 絶対零度 ( T = 0) では物質を構成する粒子の 熱運動は完全に停止する 有限温度 ( T > 0) では粒子は熱運動を行い 温度が高くなる ほどその運動は激しくなる つまり 熱運動とは物質を構成している粒子が有限温度でお こなう不規則な ( ランダムな ) 運動であり 温度とはこの粒子の熱運動の運動エネルギ ーの平均値 ( 運動の激しさ ) を表している 従って 絶対温度目盛りでは負の温度はな い エネルギーの等分配則 ( 基礎物理学 1 2d 参照 ) によると 1 mol の理想気体の平均運 動エネルギーは ( 3/2) RT であり NA 個の粒子の運動エネルギーは ( 1/2) m< v 2 > NA なので ( 3/2) RT =( 1/2) NAm< v 2 > (< > は平均を表す ) ( b) ( 3/2) kbt =( 1/2) m< v 2 > ( c) 5 *1 標準状態とは 0 1 気圧の状態ではなく 圧力が 10 Pa の状態で 温度の指定はない - 4 -

8 である つまり 温度 T と分子の運動エネルギー ( 1/2) m< v 2 > が比例している 絶対温度の単位 K はエネルギーの単位としても使われる このときは Boltzmann 定数 がかかった値がエネルギーの単位としての K の大きさである すなわち である - 1 K = kb K =( J K 1 - )( K)= J ( d) 温度と圧力 理想気体の場合 P nt/ V なので 粒子数密度 ( N/ V = nna/ V) 一定のもとでは圧力と 温度は比例する P T < 運動エネルギー > ( N/ V = 一定 ) ( e) また 圧力の単位は N m = J m -2-3 なので 理想気体の圧力は単位体積あたりの気体分子の運動エネルギーであることが分か る 気体の運動が激しくなるほど 気体の温度も圧力も上昇する ( ただし 圧力は容器の 体積 正確には数密度に依存する ) さらに 温度一定条件下では 理想気体の圧力は数密度に比例する P n/ V ( T = 一定 ) ( f) 式 ( a) からも 圧力が粒子数に比例することが分かる 原子 分子の熱運動 分子や原子は有限温度においてランダムな ( 無秩序な でたらめな ) 熱運動をしている この意 味を考えてみよう 気体分子を想像してみよう 分子の運動は原理的には運動方程式によって記述可 能であり 分子の運動を惑星やすい星の運動を追うように 時々刻々追うことはできる つまり分子 運動は決して本質的にランダムではない しかし 分子数が莫大な場合これをまともに取り扱う ( す なわち Avogadro 数個程度の運動方程式を解く ) ことは現実的には不可能である また 仮に可能で あったとしても そこに惑星の運動に見られるような何らかの規則性を見出すことができるとは考え られない 仮に分子を見ることができたとして 我々には粒子がでたらめに運動しているとしか見え ないであろう それはなぜかというと ミクロな粒子の数が莫大で絶えずそれらの間で衝突を繰り返 しているからである 1 個の気体分子が時間の経過とともにたどる道筋は恐ろしく複雑であり そこ には太陽系の惑星の運動に見られるような規則性は見いだせない この意味において ミクロな粒子 の熱運動はでたらめ ( 不規則 ランダム ) なのである この講義ではランダムな熱運動という言葉を 今後多用するが この場合のランダムという言葉が上記のような意味合いで用いられているというこ とを強調するために ランダム あるいは 無秩序 と表記することにする ところで ある限られた空間に閉じこめられた一個の分子は 長い間には存在する空間の全領域を *1 まんべんなく通過するであろう つまり分子の運動を長時間平均してみたとき 分子がどの方向に移 *1 アトキンス ( p.810) によると 1 気圧 25 の気体窒素において 1 個の分子は毎秒 回程 度衝突する つまりある運動が継続する時間は s 程度である ミクロのレベルではこの程度の時間 間隔を考えるので 1 秒でも充分長時間である 巨視的な物理量を測定するのに要する時間のスケール では 分子の運動は充分平均されていると見なすことができる - 5 -

9 動する確率も等確率であると考えることが可能であろう ( もちろん短時間では無理 ) したがって 分 子の運動をランダムな運動として取り扱っても 莫大な数の分子が存在する系の時間平均 (= マクロ な系の熱平衡状態 ) を考える限り良いのではないかと期待される ( 熱平衡状態にある分子は 次の瞬 間どの方向に移動する確率も等しい状態にあると考える ) これが確率的な 統計力学的な見方 (= 本 来力学過程である分子運動を確率過程として認識すること ) である 莫大な数の自由度がある系を 少数の変数で記述するとき 確率的な見方 記述が生まれる 温度と熱平衡 ( アトキンス 1 1( c) 図 1 2 参照 ): 温度という概念は次の熱力学第零法則をも とにして導入された 熱力学第零法則 ( アトキンス図 1 3 参照 ) とは A と B とが熱平衡にあり B と C とが 熱平衡にあれば A と C とを直接接触するとき A と C は必ず熱平衡にある というも のである 二つの系が熱平衡にあるとき その二つの系の温度は等しい 逆に 二つの系 が熱平衡にあるための条件は 二つの系の温度が等しいことである 二つの物体が熱接触 しているとき それらが熱平衡にあるかどうかは 二つの物体の温度を測定すれば分かる 閉じた系の平衡条件は 外界との間に力学的平衡と熱平衡が成立することである ( アトキンス図 1 1( 圧力 ) と図 1 2( 温度 ) 参照 ) ( 注意 : 熱平衡状態と熱平衡 ) 熱平衡状態は T P V が一定なので 外界と熱平衡およ び力学平衡が成立している 例えば 外界と熱平衡にある水は蒸発によって体積が減少す るので 厳密には熱平衡状態ではない このように 厳密には熱平衡状態と熱平衡は区別 されるが 熱平衡状態という意味で熱平衡という言葉が使われることが一般的である し かし この講義では区別して用いることにする b 気体の諸法則 ( アトキンス 1 2) ここに現れる気体の諸法則は正確には理想気体の法則であり 実在気体の場合はある極 限 ( 理想気体の条件を満足できる条件 すなわち 気体粒子の相互作用や大きさが無視できるとき) でのみ成立する極限則である ( a) 理想気体の法則 -1 Boyle( ボイル) の法則 PV = 一定 ( 定温 ) ( 1 5)( 3) Charles( シャルル) の法則 V =( 定数 ) ( 摂氏温度 + 273) ( 定圧 ) ( 1 6a)( 4) Avogadro の原理 V =( 定数 ) n ( 定温 定圧 ) ( 1 7)( 5) 上記の諸法則を統合することによって 理想気体の状態方程式が得られる PV = nrt ( 理想気体 ) ( 1 8)( 1) 3 理想気体は K 1 bar( 標準環境温度と圧力 SATP) でモル体積 Vm = dm mol 現在では実験データなどは基本的に いる ( アトキンス巻末のデータ部参照 ) SATP の条件の下で測定されたものが掲載されて - 6 -

10 ( b) 混合気体 Dalton( ダルトン) の法則 分圧の定義 *1 気体 J の分圧 PJ は J のモル分率が xj のとき PJ P xj [ 1 13]( 6) と定義される 分圧の計算例はアトキンス例題 1 3 を参照せよ 理想気体では が成立する ここで モル分率 nj/ n =圧力分率 PJ/ P =体積分率 VJ/ V n = JnJ P = JPJ V = JVJ である しかし 重量分率 mj/ m( m = JmJ) は なので となり モル分率 JmJ = JnJ MJ = m ( MJ は成分 J のモル質量 ) mj/ m = nj MJ/ JnJ MJ = xj MJ/ M ( M = JxJ MJ は平均モル質量 ) xj と等しくはない 1 4 実在気体 ( アトキンス ) a 分子間相互作用 ( アトキンス 1 3) 実在気体では気体分子間に分子間相互作用 ( あるいは分子間力ともいう ) が働く それ は大別すれば 引力と斥力 ( 反発力 ) である 2 個の分子間に働くポテンシャルエネルギ ー V の様子がアトキンスの図 1 13 に載っている 分子間に働く力はその微係数 - d V/dr である ( 基礎物理学 1 2b 参照 ) F =- d V/dr ( 7) 分子間距離 r が大きいところでは d V/dr > 0 なので 分子間に引力が働き ポテンシャ ルエネルギーが極小になるところより接近すると d V/dr < 0 なので 反発力が働くこと が分かる 分子間引力は r がある程度離れたところでも有効に働くので 分子間引力は長距離力で ある これに対して 斥力 *2 はごく近くに分子が接近すると有効に働くので 分子間斥力 は短距離力である 長距離 短距離は相対的な表現で 分子間引力の元となる *3 Waals 力は Coulomb 力と比較すると かなり短距離力である van der b 圧縮因子 ( アトキンス 1 3) 実在気体ではこのような分子間相互作用が存在するため 理想気体の状態方程式 ( 1 8) からのずれを示す そのずれの程度を示すのが圧縮因子 Z である Z PVm/ RT [ 1 17]( 8a) ここで Vm は物質 1 mol 当たりの体積 すなわちモル体積を表す 分母の RT はその温度で の気体粒子の全運動エネルギーを表しており PVm はその運動エネルギーに抗して気体を *1 化学種を一般的に表記する記号として J を使う エネルギーの単位ジュールと混同しないように *2 分子間の斥力については 物理化学 Ⅰ で詳しく説明する 6 *3 van der Waals 力のポテンシャルエネルギーは r に Coulomb ポテンシャルは r に反比例する - 7 -

11 体積 Vm に閉じこめるのに必要なエネルギー ( 仕事 ) を表している そこで 理想気体 の場合のそのエネルギーを ( PVm) 理 実在気体の場合のそれを( PVm) 実と表記すると である Z =( PVm) 実 /( PVm) 理 ( 8b) 実在気体では気体粒子間に引力が働いているので 粒子の運動がその分弱められ より 少ないエネルギーで気体を閉じこめておくことができる 言い換えれば 理想気体より圧 縮しやすくなる つまり ( PVm) 実 <( PVm) 理である ( 従って Z < 1 である ) このとき 理想気体と実在気体を同じ体積に閉じこめると それに必要な圧力は ( P) 実 <( P) 理であり 理想気体と実在気体を同じ圧力で閉じこめると その結果の体積は ( Vm) 実 <( Vm) 理である( ア *1 トキンス例題 1 4 参照 ) しかし 非常に高圧になると 粒子間の斥力が働くようになり 気体に運動エネルギー以上に圧力をかけてやらないと圧縮されない すなわち 理想気体 より圧縮しにくくなる このとき ( PVm) >( PVm) となるので Z > である このとき 実理 1 理想気体と実在気体を同じ体積に閉じこめると それに必要な圧力は ( P) 実 >( P) 理であり 理想気体と実在気体を同じ圧力で閉じこめると その結果の体積は ( Vm) 実 >( Vm) 理である アトキンスの図 1 14 に 圧縮率因子の圧力依存の実例が載っているので参照せよ 温度が高くなると 実在気体の Z は 1 に近づく これは高温では分子の運動エネルギ ーが大きくなるため 相対的に分子間力が無視できるようになるからである 実在気体は 高温低圧の状態で理想気体に近い振る舞いをする 常温常圧で多くの気体が理想気体と見 なせるのは この条件では分子間距離が大きくて 長距離力である分子間引力の効果もほ とんど無視できるからである この様に圧縮因子の 1 からのずれは非理想性の目安となる c virial 状態方程式 ( アトキンス 1 3) 実在気体を理論的 定量的に解析する手段として 理想系の式 ( 1 8) をある状態関数の *2 べき級数で展開することを考える つまり 理想系の法則はこのべき級数の第一項であ るとして取り扱う これは virial( ヴィリアル ) 状態方程式と呼ばれている 数学的には高次の 項までとればとる程パラメータの数が増えるので実験値との一致は良くなる ( このような解析の仕方 を一般に数値解析という ) 正確な計算をする場合はこの方法が優れているかもしれないが 問題点と しては展開項の物理的意味が必ずしも明確ではないことである 展開項の意味付けは理論的な考察 ( = 統計力学 ) に基づいて行われなければならない virial 状態方程式には次の 2 通りの表し方がある 2 PVm = RT( 1 + BP ' + CP ' + ) ( 1 18)( 9) 2 PVm = RT( 1 + B/ Vm + C/ Vm + ) ( 1 19)( 9' ) ここで B C は第 2 第 3 virial 係数という virial 係数は分子の種類毎に異な る値を持ち 温度に依存する ( アトキンス表 1 4 に B の値が載っている) virial 展開では第 2 virial 係数 B が特に重要である アトキンス図 1 16 に示されているように Z の圧力依存 *1 厳密には気体粒子が接触する頻度が増大するため 反発力の効果が平均として効いてくるようにな るということである *2 x を実数とするとき 次の級数を x のべき級数 ( 整級数 ) という n n =0 anx = a0 + a1x + a2x + + anx + 2 n - 8 -

12 性は温度によって異なる 低圧で Z = 1 となる圧力領域の現れる温度を Boyle 温度という これは B = 0 になる温度でもある アトキンスの表 1 5 に Boyle 温度の値が載っている virial 係数は分子間の相互作用を表す量であるが 一般的にその物理的意味付けは熱力学的考察から は難しく 統計力学に基づいて行われる それによると ここでは詳細は省くが クラスター展開の 理論を用いることにより 係数は温度と分子間ポテンシャルの形からその値を定めることができる このとき 第 n virial 係数はクラスターを作る n 個の分子が同時に力を及ぼし合うことによる分子配置 の相関効果を表していると解釈される 第 2virial 係数が重要ということは 実在気体では 2 粒子間の 相互作用が重要であることを意味している つまり 3 個あるいは 4 個の分子が瞬間的にクラスター を作る頻度は非常に小さく ある分子に注目したときせいぜい分子 1 個がそれに接近する場合を考え れば十分であることを意味している 第 2 virial 係数 B に関していえば 一対の分子対内の相互作用を 考えて その引力部分が支配的な低温で B は負の値をとり ( そのとき PVm < RT 従って Z < 1) 温 度の上昇と伴にその絶対値は減少し Boyle 温度以上で正の値を持つようになる( そのとき PVm > RT 従って Z > 1) ことが導かれる つまり 温度の上昇に伴って B の値も増大する アトキンス表 1 4 に 273 K と 600 K における B の値が載っているが 確かに 600 K の値の方が大きい このとき B = 0 となる温度が Boyle 温度である B が正の値を持つということは圧縮因子 Z が 1 より大きくなること を意味し 従って反発力の効果が優勢になっていることを示している 高温にすると反発力の効果が 優勢になるのは 温度の上昇に伴って分子が単位時間内に動き回る空間が大きくなるので 分子どう しが接近する頻度が増すからである d van der Waals の式 ( アトキンス 1 4) 実在の系に適用できる法則を求める方法としてまず考えられるのは 理想性からのずれ の原因を想定した上で ずれの大きさを理論的に計算して補正することである このよう にして得られる実在気体に対する状態方程式で一番有名なのが van der Waals( ファンデル ワールス ) の式である van der Waals 方程式は次のように表される ( 式の導出の仕方はアトキ ンスの根拠 1 1 に載っているので参照せよ) ( P + an 2 / V 2 )( V - nb) = nrt ( 10) あるいはこれを書き換えて 2 2 P = nrt/ ( V - nb) - an / V ( 1 21a)( 11) 2 2 ここで - an / V は分子間引力による圧力減少効果を - nb は気体粒子が有限の大きさ を持つことの ( 言い換えれば斥力の ) 効果を表している ( b は排除体積と呼ばれることが ある) したがって ( 1 21a) 式の右辺の第 1 項は気体の運動エネルギーと反発相互作用を 第 2 項は引力相互作用を表していると解釈できる 補正項 a により圧力は減少し 補正項 b により圧力は増大する 分子間引力が優勢のときは理想気体と比較して圧力は減少し 斥 力が優勢のときは圧力は増大する van der Waals 方程式を使った計算例がアトキンスの 例題 1 4 に載っているので参照せよ van der Waals の式はvirial の式と比較して実測値の再現性では劣っているが van der Waals 式の長所はそれが解析的な式で 実在気体について一般的な結論を引き出せること にある van der Waals 方程式以外にも 実在気体に対する状態方程式がいくつか提案さ れている ( アトキンス表 1 7 参照 ) van der Waals の状態方程式で記述される気体を van der Waals 気体と呼ぶことがある - 9 -

13 係数 a b は virial 係数と同様に分子の種類によって異なる値をとるが 温度には依存 しない ( アトキンスの表 1 6 に係数の具体的な値がいくつか与えられている ) 表 1 6 に 載っている係数の数値を見ても その数値の相対的な関係を定性的に 分子間力 原子あ るいは分子の大きさに基づいてある程度説明できることが分かる すなわち 希ガス元素 の a は小さく 粒子が大きいと b も大きくなる 第 2virial 係数 B と van der Waals 係数 a b の間には B = b - a/ RT ( a b は温度に依存しない ) ( 12) の関係がある この式は B の温度依存性を定性的に説明する すなわち 引力効果を表す a が優勢の ときは B は負になるが 温度の上昇と伴にこの第 2 項の効果は小さくなり Boyle 温度で b = a/ RT と なり それより高温では斥力効果を表す b が相対的に優勢となり B は正になる

14 2. エネルギー ( エネルギーについては 基礎物理学 1 2 を参照せよ) 2 1 内部エネルギー 定義 熱力学に登場するエネルギーは内部エネルギー U という U は状態関数である 内部 エネルギーとはマクロな物質の持っているエネルギーのうち 系全体としての運動エネル ギーやポテンシャルエネルギーを除いた 系の内部に存在するエネルギーのことである ミクロなレベルに基づいて説明すると 系の内部エネルギーとは 系を構成する粒子の運 動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和である ( 注意 ) 原子内 分子内の電子の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーも U に含まれるはずで ( 化学反応における反応熱はこれらの変化に起因する ) この場合は系の構成粒子を電子と原子核と考 えていることになる 上記のミクロなレベルでの U の定義には 系の構成粒子をどのレベルまで遡っ て考えるか ( 原子は原子核と電子からできているが 原子核は陽子と中性子からできており それらはさらに素粒子から... ) という点が曖昧である しかし 熱力学的にはその内容に立ち入らず ただ 物質内部に含まれるエネルギーと考える 後で分かるが実際に重要なのは U 自体ではなくその変化量 Δ U であるので Δ U が何に起因するかで 粒子のレベルをどこまで遡って考えるかが決まってくる この講義では基本的にミクロのレベルとは原子 分子のレベルのことを指すと考えて良い 仕事と熱 ( アトキンス ) エネルギーは 基礎物理学 1 2 で考察した力学的エネルギーの他に化学エネルギー 熱エネルギー 電気エネルギー 光エネルギーなどがある エネルギーは保存される ( エネルギー保存則 ) これは経験則である 今まで誰も 例 えば燃料なしでエンジンが動くようなことを つまり無からエネルギーが創造されること を観測したことがないし これからもないであろうと考える エネルギーは保存されるが ある系から別の系へ移動させたり 変換することができる 例えば 滝を考えてみよう 滝の水は莫大な位置エネルギーを失って 水の内部エネルギーを増大させる ( 水全体とし ての位置エネルギーが水の内部エネルギーに変換された ) 水力発電は その水の位置エ ネルギーを電気エネルギーに変換しているのである エネルギーはある系から別の系へ仕事かあるいは熱の流れによって移すことができる では 仕事とは何か? 熱とは何か? 考えてみよう *1 a 仕事 仕事の例として力学的な仕事を取り上げよう 代表的な例としては ( 気体の ) 圧縮あるい は膨張による仕事 ( これをPV 仕事あるいは膨張 ( 圧縮 ) 仕事と呼ぶ ) がある 化学で重要 な仕事は 電気的な仕事 ( 化学電池 ) と PV 仕事である ( アトキンス表 2 1 参照 ) *1( 注意 ) 仕事とか熱のように日常用いられる単語で その意味が学術上使う意味と異なっている場 合は特に注意してその学術的な意味を理解するように

15 PV 仕事 ( 気体の膨張仕事 )( アトキンス 2 3) 二つの系 A B が熱力学的に接触しているとき 力学的平衡条件は PA = PB である PA > PB のとき A は B に仕事をする ( アトキンス図 1 1 参照 ) ここで アトキンス図 2 6 の ようなピストンを考えてみよう 仕事 = 力 移動距離 ( 基礎物理学 1 2a 参照 ) であるが これは 仕事 = 圧力 体積変化 ( 1) と書き直すことができる 気体が外界から力を受けて圧縮するとき 系 ( 気体 ) になされ た仕事を wexp と書くことにする 従って 膨張することによって系が外界に対して行った 仕事は- wexp である 仕事量 - wexp の大きさは PV 図において圧力曲線の下の面積であ る ( アトキンス図 参照 ) ( a) 外部圧力 Pex に逆らって気体の体積が Vi から Vf まで膨張するとき - wexp = Vi Vf PexdV ( 基本式 ) ( 2 6)( 2) である この式は圧力 Pex ( b) Pex = 0 のとき 自由膨張という このとき である が体積にどのように依存するかが分かれば計算できる - wexp = 0 ( 自由膨張 ) ( 2 7)( 3) ( c) 一定の外部圧力 Pex に逆らって気体の体積が Vi から Vf まで膨張するとき ( 2 6) 式よ り - wexp = Pex Δ V ( 定圧 ) ( 2 8)( 4) である ( アトキンス図 2 7 例題 2 1 参照 ) ここでΔ V = Vf - Vi である この式は例えば 大気中で液体が気化する際にする仕事にも使える ( ) ex が気体の圧力とほとんど等しい (=その差が無限小の) 状態で気体の体積が d P P Vi から Vf *1 まで膨張する場合 ( 2 6) 式は Vf - wexp, rev = Vi PdV ( 可逆 ) ( 2 10)( 5) となる この式は圧力 き 体積に依存せず圧力が一定であるならば P が体積にどのように依存するかが分かれば計算できる このと - wexp, rev = P Δ V ( 定圧可逆 ) ( 6a) である 理想気体の場合にはさらに - wexp, rev = nr Δ T ( 理想気体 定圧可逆 ) ( 6b) となる ここで Δ T = Tf - Ti である ( e ) 理想気体を温度一定の条件の下で可逆的に膨張させたとき P = nrt/ V より ( 5) 式は - wexp, rev = nrtln ( Vf/ Vi)= nrtln ( Pi/ Pf)( 理想気体 等温可逆 ) ( 2 11)( 7) となる ( アトキンス図 2 8 参照 ) b 熱 二つの系 A B が熱力学的に接触しているとき 熱的平衡条件は T = T である T > T のとき A から B へ熱が流れる ( アトキンス図 1 2 参照 ) A B A B *1 この過程の途中 系も外界も常に熱平衡状態を保つと見なされる これは準静的過程と呼ばれる可 逆過程である 可逆過程については で詳しく扱う アトキンスの 2 3( d) を参照せよ

16 温度 熱エネルギー 熱の違いを良く理解する 温度: 物質を構成する粒子の熱運動エネルギーの平均値を表現している 熱エネルギー: 物質を構成する粒子の熱運動エネルギーの合計 内部エネルギーの一部 熱 : 巨視的には 高温の物体から低温の物体へ移動するエネルギーの移動形態を指す 微視的には 粒子同士の衝突による運動エネルギーの高い粒子から低い粒子へのエネルギ ーの移動である 温度が高い物体から低い物体へ熱エネルギーが移動したとき 熱が流れた ( 輸送され た ) という c エネルギーの移動 温度は熱の流れる方向を 圧力は仕事の向きを教えてくれる指標である つまり 温度 と圧力はエネルギーの移動する方向を教えてくれる 温度が高い系ほど熱を与える能力が 高く 温度の高い系から低い系に熱が流れる 圧力が高い系ほど仕事をする能力が高く 圧力が高い系は低い系に仕事をする ここで 熱や仕事によって系の持っていたエネルギーが外界へ移動した という表現 を考えてみよう 圧力 P の気体があるとする この気体が外圧に逆らって膨張すれば 気体が外界 へ仕事をしたことになる すると気体の圧力は以前より低くなっているので 仕事をする能力 (= エ ネルギー ) が小さくなっていることが分かる 従って 系 ( 気体 ) から別の系 ( 周囲 ) へ仕事に よってエネルギーが移動したことが分かる 逆にこの気体が圧縮されれば 気体は外界から仕事をさ れたことになる すると気体の圧力は以前より高くなっているので 仕事をする能力が高くなってい ることが分かる 従って 外界から系へ仕事によってエネルギーが移動したことが分かる 密閉容器 内の気体に外界から熱を加えると 気体の温度は上昇し 圧力も高くなる つまり 気体が仕事をす る能力が高くなっていることが分かる 従って 外界から系 ( 気体 ) へ熱によってエネルギーが移 動したことが分かる この様に 仕事と熱はエネルギーの移動形態を指す つまり 系の性 質ではない したがって 仕事と熱は状態関数ではない 系が仕事や熱を所有するとはい *1 わない 状態関数は状態の性質であり 仕事と熱は経路の性質である 仕事と熱の量は 変化の道筋 経路に依存する 例として 温度一定の下で気体が外圧に逆らって膨張仕事 をする場合を考えてみよう P P P A ( PA, VA) A A 過程 2 過程 1 B ( PB, VB) B B ( 等温膨張 ) V 過程 1 V 過程 2 V 状態 A から状態 B に変化するとき 次の二つの経路を考える 過程 1 外圧を急に PA から P B に下げる 過程 2 外圧を徐々に下げて最終的に P B まで下げる 圧力や体積は状態関数 *1 アトキンスではこれを経路関数と呼んでいるが 一般的な言葉ではない

17 なので どの様な経路をとっても最終的に B という状態にたどり着けば圧力 体積はそ れぞれ PB VB という値を持つ ところが 仕事は1という経路と2という経路では異な った値となる このことは a で与えた PV 仕事の式を参照しても容易に理解できるであ ろう ( アトキンス例題 2 7 参照 ) 4 章において詳しく考察するが 可逆過程において系は最 大の仕事をする これは任意の仕事 任意の物質に対して成立する 熱力学第一法則 ( アトキンス 2 2) 熱や仕事によって移動したエネルギーはどこへ行ったのか? それは 系に蓄えられた( 系の内部エネルギーを増大させた) のである 例えば ビーカーの中の水を加熱したとき その熱は水の内部エネルギーを増大させたのである このマクロな系のエネルギー保存則 は熱力学第一法則と呼ばれている 閉じた系の熱力学第一法則は次式によって与えられる Δ U = q + w ( 閉じた系 ) ( 2 2)( 9) ここで Δ U = U2 - U1 は状態 1 から状態 2 に変化したときの系の内部エネルギー変化 q は系に入ってきた熱 w は系になされた仕事である q と w は符号に注意する ( アトキン ス数値例 2 1 参照 ) 系から出ていった熱は- q 系がなす仕事は- w である したがって *1 任意の変化が発熱過程のときは- q > 0( q < 0) 吸熱過程のときは q > 0 である 閉じた系では 系の内部エネルギーは熱および仕事によって変化する 逆に言えば 熱 と仕事がなければ系の内部エネルギーは変化しない 例えば 体積変化 ( PV 仕事 ) に伴 って内部エネルギーは変化する ところで 仕事 w を PV 仕事 wexp とそれ以外の仕事 w( e 非 膨張仕事 具体的には電気的な仕事等 ) に分けて考えることにする すなわち w = we + wexp ( 10) この場合熱力学第一法則は Δ U = q + wexp ( 閉じた系 PV 仕事のみ ) ( 2 12)( 11) となる wexp の具体的な形は式 ( 2)~( 7) で与えられる 熱の仕事当量 熱力学第一法則はエネルギー保存則を表しているが もう一つの別の意味を持っている つまり 熱も仕事も系の内部エネルギー変化に寄与するという意味では等価であること( = 熱と仕事の等価性 ) を表している 熱を与えることと同じ効果 ( つまり系の温度を上昇さ せる) を仕事によっても生じさせることができる この事を分子の立場から考えてみよう 熱を加える 分子の 無秩序な 熱運動のエネルギーが増大する (= 内部エネルギー が増大する ) 温度が高くなる 攪拌仕事をする 流れという分子集団として揃った 組織的な運動が起こる = 運動 エネルギーの増大 (= 内部エネルギーの増大 ) 分子間の衝突によりやがて 無秩序な 分子運動 (= 熱運動 ) に変わる 温度が上昇する この様に 熱と仕事は系の内部エネルギーを変化させる方法としては等価である *1 断熱条件下で発熱過程が起こると 系の温度は上昇し 吸熱過程が起こると 温度は下がる 等温 条件下で発熱過程が起こると 系から外界に熱が流れ 吸熱過程が起こると 系に外界から熱が流入 し 系の温度は一定に保たれる アトキンス図 2 2 参照

18 水 1 g の温度を 1 上昇させるために必要な熱量が 1 cal である では 水 1g の温度を 1 上昇させるために必要な仕事量はどれ程であろうか これを初めて定量的に調べたのは Joule( ジュール) であった 糸に付けた重りがその重みで下がると 軸に巻き付けた糸が ほどけるに従って水中の羽根車が回転し 水をかき回す仕組みになっている このとき 重りの位置エネルギーの減少した分が羽根車の運動エネルギーになり さらに水の内部エ ネルギーになるのである そこで 重りの位置エネルギーの減少と水の温度の上昇を測れ ば 力学的な仕事がどの様な割合で物を温めるかを知ることができる このようにして 熱と仕事とは物を温める上で同じ働きがあり 量的には 1 cal = J の関係があることが分かった これを熱の仕事当量という 理想気体の特殊性 内部エネルギーの増加は一般に系の温度上昇を生むが ではエネルギーを加えると系の 温度は必ず上昇するだろうか? 100 の水と 100 の水蒸気では 水蒸気の方が内部エネ ルギーが高い ( なぜなら 100 の水を 100 の水蒸気にするためにはエネルギーが必要だから) しかし 温度は同じなので粒子の運動エネルギーは同じである では 内部エネルギーの 違いはどこからきているか? 蒸発に要したエネルギーはどこに行ったのかを考えてみれば よい 答えは 粒子間のポテンシャルエネルギーである 熱は液体粒子間の距離を引き離 すための仕事をすることにより 粒子間のポテンシャルエネルギーを増大させた 熱は粒 子間のポテンシャルエネルギーの増大という形で内部エネルギーに貯えられたのである 理想気体は分子間力がないと見なすので 内部エネルギーは粒子の熱運動エネルギーに のみ依存する 従って 内部エネルギーは温度にのみ依存する ( 理想気体の重要な性質 ) 温度一定の過程 ( 等温過程 ) ではΔ U = 0 である 2 2 エンタルピー エンタルピーの導入 ( アトキンス ) 化学において重要な二つの測定条件は 体積一定 ( これを定容 あるいは定積という ) で実験を行うか それとも圧力一定 ( 定圧 ) で実験を行うかというものである この他に もう一組重要な測定条件がある それは温度一定 ( これを定温あるいは等温という ) で実 験を行うか 断熱 ( q = 0) で実験を行うかである 仕事は PV 仕事のみであるとする すなわち ( 11) 式 Δ U = q + wexp が使える この とき体積一定のもとで( したがって wexp = 0) の系の状態変化に伴って移動した熱量 qv は その変化に伴う系の内部エネルギー変化 Δ U に等しいことが分かる Δ U = qv ( 定容 PV 仕事のみ ) ( 2 13b)( 12) ここで エンタルピー H という状態関数を導入する エンタルピーは次式のように定 義される H U + PV [ 2 18]( 13) したがって エンタルピー変化 Δ H は

19 Δ H = Δ U + Δ( PV) ( 14) なので 圧力一定のもとでは Δ H = Δ U + P Δ V ( 圧力一定 ) ( 15) これをΔ U = q + wexp と比較すると 圧力一定のもとでの系の状態変化に伴って移動し た熱量 qp は ( このときΔ U = qp - P Δ V なので ) その変化に伴う系のエンタルピー *1 変化 Δ H に等しいことが分かる ( アトキンス根拠 2 1 参照 ) Δ H = qp ( 定圧 PV 仕事のみ ) ( 2 19b)( 16) 言い換えれば 系のエンタルピー変化 Δ H は 定圧変化に際して発生 あるいは吸収す る その系自身の膨張 あるいは圧縮以外の内部エネルギー変化である つまり 内部エ ネルギー変化から系の膨張 あるいは圧縮による仕事 wexp(=- P Δ V) を差し引いた系 の全エネルギー変化である Δ H =Δ U + P Δ V =Δ U -(- P Δ V)=Δ U - wexp = q ( 定圧 膨張仕事のみ ) ( 17) 幾つかの条件を付けたので ( 16) 式は特殊な場合にしか成立しないように思えるかもし れないが 普通に 例えばビーカー中で化学反応を行わせれば 定圧 膨張仕事のみの条 件になっている 化学で一番簡単な測定条件が 定圧 膨張仕事のみという条件である この講義で想定している系の状態変化とは 温度 圧力 体積等を変えたときの変化 ( 相 転移を含む ) と化学反応に伴う変化であり この講義では基本的には仕事 = 膨張仕事と考 えて良い P エンタルピーという状態関数を導入した理由 + 内部エネルギーもエンタルピーも系のエネルギー状態を表す状態関数であり H = PV という関係で結びついているので これらは独立ではない なぜ内部エネルギーの 他にわざわざエンタルピーという状態関数を導入したのであろうか? 例えば我々が化学反 応に伴う熱量変化を測定する場合 体積一定という条件よりも 圧力一定という条件で実 験する方がはるかに容易であるので 通常は圧力一定のもとで熱量が測定される その時 系のエネルギー状態関数として内部エネルギーしかないときは Δ U = qp( 実測値 )- P Δ V というように PV 仕事の補正をして 反応後の系の状態を記述しなければならない しかし エンタルピーという状態関数を導入しておけば ( エンタルピーという状態関数 で系のエネルギー状態を記述することにしておけば 実測値 ) qp U をそのまま系の状態関数 ( であるエンタルピー ) と結びつけることができる つまり 体積一定の場合には内部エネ ルギーを 圧力一定の場合にはエンタルピーを系のエネルギーを記述する状態関数として 採用する ( 使い分ける ) のである 相平衡と相転移 ( アトキンス 4 章 ) この講義では相転移について考察することが多いので 必要な言葉の定義を与えておく 相 : 物質系において明確な境界 ( これを界面という ) によって他と区別され その内部で *1 熱は状態関数ではないが 圧力一定とか 体積一定というように経路を指定すると 状態関数として取り扱える

20 状態の均一な部分で 他と熱力学的に明確に区別される状態を相という 温度や圧力を変 化させたとき 物質の状態が明確に異なるとき それらは異なる相である 同じ固体の状 態にあっても結晶構造が異なる場合は それらはお互いに異なる相である *1 相平衡 : 物質系がいくつかの相に分かれて熱平衡状態にあることをいう 相転移 : 適当な条件により ( 例えば 温度を変えたり 圧力を変えたりすることにより) ある相から別の相へ系の状態が変化することをいう 気相 液相 固相の間の相転移の他 にも 固相間転移 ( 固相 - 固相転移 例 : 超伝導転移 磁気相転移 ) や液相間転移 ( 液相 - 液相転移 例 : 液体ヘリウムの超流動転移 ) がある 相転移については 6 1 5a で 融解 蒸発について考察する 相分離 : 均一な相にある物質系の状態関数を変えたとき 系が二つの相に分離する現象を いう 多成分系では分離した二つの相では物質の組成が異なっている 例として水について考えてみよう 1 気圧のもとでは 100 より高温では水蒸気が一番 安定な相である これを 1 気圧のもとで冷却すると 100 で液化が起こり気相と液相の 二つの相に分離する 100 のもとでは気相と液相の二つの相は相平衡の状態にある 完 全に液化すると水の温度は 100 より低くなる このとき水蒸気は水に相転移したという 0 ~ 100 の間では水 ( 液相 ) が一番安定な相である ΔH とΔU の関係 エンタルピーの定義式より Δ H -Δ U =Δ( PV) であるが このΔ( PV) 項は系の変化 が液相や固相のような凝縮相で起こる限りほとんど無視できる Δ H ~ Δ U ( 系の変化が凝縮相でのみ起こるとき) ( 18) Δ H =Δ U +Δ( ngrt) アトキンスの例題 2 2 数値例 2 4 を参照せよ ( 系の変化が気相 ( 理想気体と見なせる ) を含むとき) ( 19) 温度が一定のとき 理想気体の場合 式 ( 19) より Δ H = Δ U + RT Δ ng ( 等温 理想気体 ) ( 2 21)( 20) であり 反応の前後で気体の物質量に変化がなければ Δ H =Δ U である 断熱過程では一般に系の温度が変化するので 理想気体の場合 式 ( 19) より Δ H = Δ U + R Δ( ngt) ( 断熱 理想気体 ) ( 21) 第 4 章で考察するが 断熱膨張では系の温度は下がり 断熱圧縮では温度は上昇するので となる Δ H <Δ U ( 断熱膨張 ) Δ H >Δ U ( 断熱圧縮 ) ( 22) 体積が一定のとき Δ H -Δ U = V Δ P = V( Pf - Pi)= R( nt f f - nt i i) ( 定容 理想気体 ) であり 反応の前後で気体の物質量に変化がなければ である 定圧過程では Δ H -Δ U = nr Δ T ( 定容 理想気体 ) *1 例えば ダイヤモンドとグラファイトは同じ炭素の単体であるが 結晶構造が異なる

21 Δ H = Δ U + P Δ V ( 圧力一定 ) ( 15) の関係があるので 外界から仕事をされる ( 圧縮の) ときは P Δ V =- wexp < 0 なので Δ H <Δ U であり 外界に仕事をする ( 膨張の) ときは P Δ V =- wexp > 0 なのでΔ H >Δ U である アトキンスの例題 Δ H <Δ U ( 定圧圧縮 ) Δ H >Δ U ( 定圧膨張 ) ( 23) 2 2 数値例 2 4 例題 2 3 を参照せよ 2 3 内部エネルギーとエンタルピーの温度依存性 数学的な取り扱いをすることによって 状態関数に対する新たな知見 ( 例えばその温度や圧力に対 する依存性 ) が得られたり 状態関数の間の関係を知りそれら相互の関連性を明らかにすることがで きる 状態関数の間の関係式が得られると 次のような場合に特に有効である 後で考察するように 任意の状態関数 A が簡単に測定できるとは限らない そのようなとき 別の測定しやすい状態関数 と A の間の関係式があれば B を測定することにより間接的に A を測定することが可能になる そし て この様に状態関数の間の関係式を得ることができることが 熱力学の優れた点の一つである B 数学的準備 ( アトキンス 2 10) 閉じた系の熱力学第一法則は Δ U = q + w と記されるが このときΔ q Δ w とは 書かないことに注意する ところで このΔ U は U の有限変化を表している これに対 して任意の関数の無限小変化を微分といい ( 基礎数学 5 1a 参照 ) 例えば U の微分は du と書く 最初と最後の状態に微少な差しかないような変化を無限小過程といい そのとき の熱力学変数の変化を微分で表すのである 微分形式の熱力学第一法則は次のようになる du = d'q + d'w ( 閉じた系 ) ( 2 5)( 24) *1 このとき du は完全微分 d'q d'w は不完全微分であるという つまり 状態関数の無 限小変化は完全微分で 仕事や熱の無限小変化は不完全微分である Δ U = f i du = Uf - Ui : 経路に依存しない 完全微分 状態関数 ( 2 38)( 25) q = pathd'q : 経路に依存する 不完全微分 ( 2 39)( 26) du の積分は始めと終わりの状態を指定すればよいが d'q ( あるいは d'w) の積分は全経 路 ( path) を指定しなければならない ( アトキンス図 2 20 参照 ) これについては既に 2 1 2c で触れた 内部エネルギー U は体積 V と温度 T の関数と見なすことができる ( P, T あるいは P, V の 関数と見なすこともできる アトキンス p.p.59 ~ 60 参照 ) ので その全微分は d U = ( U/ V) Td V + ( U/ T) VdT ( 2 40)( 27u) である( 偏微分と全微分については 基礎数学 参照 ) エンタルピー H は圧力 P と温度 T の関数と見なせるので その全微分は *2 *1 不完全微分に d を使って 完全微分と区別することがあるが ( アトキンス p.59 参照 ) ここでは d' を使うことにする *2 対応関係のある式については 同じ式番号とし 内部エネルギーの式には u エンタルピーの式に は h を付けることにする

22 と表される d H = ( H/ P) Td P + ( H/ T) PdT ( 2 52)( 27h) ここで 熱容量という重要な状態関数を導入する 熱容量とはある特定の条件下で系の 温度を 1 (= 1 K) 上げるために供給される熱として定義される 特定の条件とは体積 一定のもとで測定するか あるいは圧力一定のもとで測定するかというもので 前者の条 件で得られるのが定容 ( 定積 ) 熱容量 CV 後者の条件で得られるのが定圧熱容量 Cp であ る で指摘したように 仕事が膨張仕事のみのとき 体積一定の下での内部エネル ギー変化 Δ U は移動した熱 qv に等しく 圧力一定のもとでのエンタルピー変化 Δ H は 流れた熱 qp に等しいので CV ( U/ T) V ( 非膨張仕事なし ) [ 2 15]( 28u) CP ( H/ T) P ( 非膨張仕事なし ) [ 2 22]( 28h) である ( アトキンスコメント 8 3 参照 ) 1 mol 当たりの熱容量 すなわちモル熱容量は CV, m CP, m と標記する CV = n CV, m CP = n CP, m ( n は物質量 ) 熱容量については 2 4 で詳しく取り上げる 内部エネルギーの温度依存性 ( アトキンス 2 11) 内部エネルギーの全微分の式 ( 27u ) で 右辺第二項の偏導関数 ( U/ T) V は定容熱容 量の定義式と同一であることが分かる また 右辺第一項の ( U / V) T という偏導関数 は温度を一定に保ったまま体積を変化させたとき 内部エネルギーがどれだけ変わるかを *1 表しており 内 ( 部 ) 圧 π T と呼ばれる ( 圧力の次元を持っている ) π T =( U / V) T [ 2 41]( 29u) このπ T と CV を使って ( 27u) 式は du = π TdV + CVdT ( 非膨張仕事無し ) ( 2 42)( 30u) と書くことができる ( 外界から仕事をされることにより ) 系の体積が縮小すれば平均粒子 間距離が小さくなるので 系のポテンシャルエネルギーは低下する ( 分子間ポテンシャル曲 線図 1 13 を参照せよ) 一方 等温過程なので粒子の運動エネルギーは変化しない したが って 実在気体では一定温度の下で体積が小さくなれば内部エネルギーは減少し ( U/ V) T > 0 ( 実在気体 ) ( 31u) *2 であることがわかる しかし 理想気体では粒子間の相互作用がないので 一定温度の 下で体積が変化しても内部エネルギーは変わらない ( アトキンス図 2 25 参照 ) ( U/ V) T = 0 ( 理想気体 ) ( 32u) この式は理想気体の熱力学的な定義式となる したがって 理想気体では ( 30u) 式より du = CVdT ( 理想気体 非膨張仕事無し ) ( 33u) *3 であることが分かる このことからも分かるように 内圧は物質を構成する分子の相互 *1 ミクロの言葉で言い換えれば 粒子の運動エネルギーを一定 (= 定温 ) にしたままで粒子間ポテンシ ャルエネルギーを変化 (= 体積変化 ) させたとき 内部エネルギーがどれだけ変わるかを表している *2 これは引力効果が優勢の場合で 反発力が優勢の場合は逆に ( U/ V) T < 0 となる *3 この式から 理想気体の等温過程ではΔ U = 0 であることが分かる

23 作用の強さの尺度である 分子間引力が強い系ほど π T は大きくなる ( 30u) 式より 体積を一定に保ったまま温度を変化させたとき 内部エネルギーがどれ だけ変化するかは du = CVdT ( 体積一定 非膨張仕事なし ) ( 2 16a)( 34u) という式で与えられることが分かる 上式は理想気体でなくても成立するが 体積一定の 条件が付く これを積分すると T2 U( T2) = U( T1) + T1 CVdT ( 体積一定 非膨張仕事なし ) ( 35u) 定容熱容量は一般に温度依存する (= 温度によって CV の値が異なる CV = CV( T) アト キンスの図 2 10 参照 ) 温度 T1 におけるある物質の内部エネルギー U( T1) が分かっていると き CV の温度依存性が分かっていれば 式 ( 35u) を使って任意の温度 T2 における内部エ ネルギー U( T2) の値が計算できる T1 ~ T2 の温度範囲で熱容量が一定であると見なせる *1 ときは Δ U = U( T2)- U( T1) Δ T = T2 - T1 とすると あるいは U( T2)= U( T1)+ CV( T2 - T1) ( 定容 CV = 一定 ) ( 36u) Δ U = qv = CV Δ T ( 定容 CV = 一定 ) ( 2 16b)( 2 17)( 36'u) となる この式を使って定容条件下で物質の温度を T1 から T2 へ上昇させるときに必要な 熱量を見積もることができる 次に圧力一定のもとでの内部エネルギーの温度変化を見てみよう ( 27u) 式を dt で割 って定圧の条件を課すと ( U/ T) P = ( U/ V) T( V/ T) P + ( U/ T) V ( 37) となる ここで 偏導関数 ( V/ T) P は定圧で温度を変えたときの体積変化を与えるの で 膨張率 αはこれを使って次式で与えられる α (1/ V) ( V/ T) P [ 2 43]( 38u) 理想気体では V = nrt/ P なので α= 1/ T である ( アトキンス例題 2 8 参照 ) 理想気体で *2 はαが温度に反比例することが分かる この式を使うと式( 37) は ( U/ T) P = απ TV + CV ( 非膨張仕事無し ) ( 2 45)( 39u) となる これが圧力一定の下での内部エネルギーの温度変化を与える一般式である さら に理想気体では内部圧がゼロなので ( U/ T) P = ( U/ T) V = CV ( 理想気体 非膨張仕事なし)( 2 46)( 40u) という関係が導かれる *1 熱容量は一般に温度変化し 特に結晶の熱容量は低温で大きく温度変化し 絶対零度ではゼロにな る ( これについてはあらためて次節 2 4 熱容量で考察する ) しかし 室温付近以上では 狭い温度範 囲なら 気体 液体 固体に関わらず 近似的に一定と見なすことができる ちなみに いうことは U が T に比例するということである CV = 一定と *2 つまり 温度変化 Δ T が同じなら 系の温度が高いときほど その体積の膨張率が小さいことを示 している これは 熱容量が温度に依存しないとすれば Δ T という温度変化に必要な熱量は温度に よらず同じであり このとき系の温度が高いほど系の持っている熱エネルギーが大きいので Δ いう温度変化による系の熱エネルギーの変化分が小さいからであると解釈できる T と

24 Joule の実験 気体を断熱条件下で真空中に自由膨張させれば このとき気体は外部に仕事をしていな いし 外部と熱の交換も行っていないので 内部エネルギー変化 du = 0 である U の全 微分の式 ( 27u) を dv で割って U 一定の条件を課すと ( U/ V) U = ( U/ V) T + ( U/ T) V( T/ V) U = 0 ( 41) となる したがって 内部圧 ( U/ V) T は ( U/ V) T = -( U/ T) V( T/ V) U = -( T/ V) UCV ( 42) なので 気体の断熱自由膨張における気体の温度変化 ( T / V) U が認められれば 内部 圧 ( U/ V) T が存在すること ( 従って 分子間相互作用の存在 ) の証明になる これが 熱力学関係式を導くことの有用性を示す一つの例である Joule は ( U / V) T を測定するために 気体を断熱自由膨張させて その気体の温度 変化を測定した( アトキンス図 2 26 参照 ) が 温度変化は測定されなかった したがって 気体に内部圧はないということになるが しかしこれは 実験の精度が悪くて ( 装置全 体の熱容量が大きすぎて ) 気体のわずかな温度変化を検出できなかったためで 実際に はわずかであるが温度変化していたはずである つまり 気体は外部に仕事をしていない が 気体粒子間に引力が働いていれば 膨張するということはその引力を振り切って広が る 内部圧に対して仕事をする ( これを内部仕事をするという ) ということなので その 分運動エネルギーが減少して系の温度が下がるはずである エンタルピーの温度依存性 ( アトキンス ) エンタルピー H の全微分 d H = ( H/ P) Td P + ( H/ T) PdT ( 2 52)( 27h) の右辺第二項の偏導関数 ( H / T) P は定圧熱容量 CP なので 圧力一定の下で温度を変 化させたとき エンタルピーがどれだけ変化するかは dh = CPdT ( 圧力一定 非膨張仕事なし ) ( 2 23a)( 34h) という式で与えられることが分かる これを積分すると T2 H( T2)= H( T1)+ T1 CPdT ( 圧力一定 非膨張仕事なし ) ( 35h) 定圧熱容量も定容熱容量と同様に一般に温度変化する ( アトキンス図 2 14 参照 ) 温度 T1 に おけるある物質のエンタルピー H( T1) が分かっているとき CP の温度依存性が分かってい れば 上式を使って任意の温度 T におけるエンタルピー H( T ) の値が計算できる T ~ T の温度範囲で熱容量が一定であると見なせるときは Δ H = H( T2)- H( T1) Δ T = T2 - T1 あるいは とすると H( T2)= H( T1)+ CP( T2 - T1) ( 定圧 CP = 一定 ) ( 36h) Δ H = qp = CP Δ T ( 定圧 CP = 一定 ) ( 2 23b)( 2 24)( 36'h) となる この式を使って定圧条件下で物質の温度を T1 から T2 へ上昇させるときに必要な 熱量を見積もることができる 次に体積一定の下でのエンタルピーの温度依存性を見るために エンタルピーの全微分 式を dt で割って体積一定の条件を課す

25 ( H/ T) V = ( H/ P) T( P/ T) V + ( H/ T) P ( 43) この式の ( P/ T) V に対して アトキンスの関係式 No.2 と No.3( アトキンス A2 6 参照 ) を使って ( P/ T) V =-( P/ V) T( V/ T) P =-( V/ T) P/ ( V/ P) T ( 44) という関係が得られる ( 44 ) 式の分母 ( V / P) T は温度一定において圧力を変えたとき の体積変化を表しているので これを使って等温圧縮率 κ T を定義することができる κ T -( 1/ V)( V/ P) T [ 2 44]( 38h) 理想気体では V = nrt/ P なので κ T = 1/ P である 理想気体ではκ T が圧力に反比例す *1 ることが分かる また ( V/ T) P =α V なので 式 ( 44) は ( P/ T) V = α/ κ T ( 45) と書くことが出来る したがって 式 ( 43) は ( H/ T) V = ( α/ κ T)( H/ P) T + CP ( 39h) となる これが体積一定の下でのエンタルピーの温度変化を与える式である あるいは偏導関数 ( H/ P) T に関係式 No.3 を適用すると ( H/ P) T = -( T/ P) H( H/ T) P = - μ CP ( 2 53)( 46) という関係が得られる ここで μ ( T/ P) H = -( 1/ CP)( H/ P) T [ 2 51]( 2 55)( 47) は Joule-Thomson( ジュール- トムソン) 係数と呼ばれている これを使って 式 ( 39h) を ( H/ T) V = ( 1 - αμ/ κ T) CP ( 48) のように書くこともできる ところで ( H / P) T という偏導関数は定温で圧力を変化させたとき エンタルピー がどれだけ変わるかを表している 圧力が上昇した結果 系の体積が縮小すれば粒子間の 相互作用が強くなり 系のポテンシャルエネルギーは低下する 一方 等温過程なので粒 子の運動エネルギーは変化しない したがって 圧力が高くなればエンタルピーは減少し ( H/ P) T < 0 ( 実在気体 ) ( 30h) *2 であることがわかる しかし 理想気体では粒子間の相互作用がないので 一定温度の 下で圧力を変えてもエンタルピーは変化しない ( H/ P) T = 0 ( 理想気体 ) ( 31h) このとき ( 47) 式より理想気体の Joule-Thomson 係数が零であることが分かる μ= 0 ( 理想気体 ) ( 49) アトキンスでは ( H/ P) T を等温 Joule-Thomson 係数 μ T と呼んでいる μ T これを使って ( 27h) 式を = ( H/ P) T [ 2 54]( 29h) dh = μ TdP + CPdT ( 2 50)( 30h) と書くことができる μ T と内圧 π T =( U/ V) T を比較せよ 両者とも分子間相互作 *1 つまり 系の圧力が高いほど圧縮しづらくなる 同じ体積だけ圧縮しようとしたら 系の圧力が高 い場合ほど大きな外圧が必要になるということである *2 熱容量は常に正なので ( 47) 式よりμ> 0 しかし μ< 0 の場合もある そのときは ( H/ P )T > 0 である 詳しくは で説明する

26 用の強さの目安である また 理想気体では ( 27h) 式より dh = CPdT ( 理想気体 非膨張仕事無し ) ( 33h) *1 であることも分かる この式は非理想気体でも 定圧 膨張仕事のみという条件下で成 立することを既に見た (( 34h) 式 ) さらに理想気体ではμ= 0 なので 式 ( 48) より ( H/ T) V = ( H/ T) P = CP ( 理想気体 ) ( 40h) という関係が導かれる Joule-Thomson 効果と気体の液化 ( アトキンス 2 12) Joule は内圧 ( U / V) T の存在を証明することができなかったが 今度は内圧と同様 の意味を持つ ( H / P) T( 正確にはμ=( T / P) H ) の存在を実験的に示すことがで *2 きた Joule-Thomson 係数 μは エンタルピー一定のもとで ( しかし 内部エネルギー は変化してもよい ) 系の圧力を変えたときの温度変化を測定することによって得られる 実際には 断熱条件下 ( q = 0) で ある一定圧力 一定温度の状態から それより低圧 の一定圧力 一定温度の状態へ気体を膨張させ そのときの圧力差 温度差を測定するこ とによってμは決定される ( これについてはアトキンスの根拠 2 3 に詳しい解説があるのでそれ を参照する ) その結果 水素とヘリウムを除く全ての気体は 室温で膨張する (= 圧力を 下げる ) ことによって系の温度が下がった これは μが正であることを意味している このようなエンタルピー一定のもとでの断熱膨張によって系の温度が変化することを Joule-Thomson 効果と呼んでいる 水素とヘリウムは室温ではμは負であるが 温度を下げていくとある温度以下では係数 が正に変わる それ以外の気体でも 室温から温度を上げていくとある温度以上で係数が 負に変わる( アトキンスの図 2 32 参照 ) このようにμの符号が変わる温度を( Joule-Thomson の ) 逆転温度 TI と呼んでいる 系の温度が TI のとき 膨張率 α =1/ TI の関係を満足して いることが分かる ( 第 7 章式 ( 35 ) 参照 ) 理想気体では任意の温度において常にこの条件を 満足しているのでμ= 0 である つまり 理想気体では Joule-Thomson 効果は起きない 理想気体でμ= 0 なのは 分子間力がないからである 実在気体のμが正になったとい うことは 気体分子間に引力が働いていることの証明となる つまり 分子間引力を振り 切って ( 内圧に抗して ) 膨張することによって内部仕事をするので系の温度が下がるの である また μが負になることもあるということは 分子間に引力と同時に斥力 ( 反 発力 ) も存在していて この斥力の効果が相対的に優勢になっていることを示している 分子間の斥力は分子どうしが接触するほど近づいたときに働く 図 2 31 を見ると 圧力 を高くするほどμ< 0 の温度領域が増えることが分かる これは圧力が高くなると分子間 距離が減少し 分子どうしが接近する頻度が高くなるので 平均として斥力の効果が効い てくるからである *3 Joule-Thomson 効果を利用して気体を液化することができる Joule-Thomson 効果によ *1 この式から 理想気体の等温過程ではΔ H = 0 であることが分かる *2 式 ( 46 ) より μが有限の値を取れば ( H / P) T がゼロでないことが証明される 熱力学関係式 を導く事の有用性を示すもう一つの例である *3 アトキンス図 2 33 リンデの冷凍機および分子論的解釈 2 3 を参照せよ

27 る実際の温度変化はわずかであるので 等エンタルピー断熱膨張を何回も繰り返すことにより液化する Joule-Thomson 効果による温度変化は僅かであるから 最初からこの方法で液化するのではなく 十分低い温度からさらに冷却するのに用いられる 2 4 熱容量 ( アトキンス ) 熱容量は直接実験的に測定できる状態関数であるが 定圧熱容量はより容易に測定でき る 定圧熱容量と定容熱容量を比較したとき 前者は後者よりも大きな値となる つまり CP - CV > 0 ( 50) これを理想気体を例にして定量的に考えてみよう 定義式より CP - CV = ( H/ T) P - ( U/ T) V ( 2 47)( 51) この式に理想気体の状態方程式を使った次式 を代入すると H = U + PV = U + nrt ( 52) CP - CV = ( U/ T) P + nr - ( U/ T) V ( 2 48)( 53) となり ( 40u) 式から 理想気体では右辺の第一項と第三項が等しいので CP - CV = nr CP, m - CV, m = R ( 理想気体 ) ( 2 48)( 54) *1 が成り立つ これを Mayer( マイヤー ) の関係という これは定圧条件下では系が膨張仕 事 ( PV = nrt) をするため ( 内部エネルギーが減少し ) その分定容条件下より多くの熱 量が系の温度を上げるために必要になるからである アトキンス図 2 14 を参照せよ 熱容量と系の自由度 熱容量の大きい物質は熱しにくく 冷めにくい 熱容量の小さい物質は熱しやすく 冷 めやすい では この物質による熱容量の違いはなぜ起こるのであろうか? ところで 原 子 N 個から成る系の自由度は 3N である ( 基礎物理学 1 1a 参照 ) 同じ 1 mol の粒子から 成る系であっても その粒子が何個の原子から成るかによってその系の持つ自由度は違っ てくる つまり 分子数が同じなら 原子数の多い分子から成る系の方が原子数の少ない 分子から成る系よりも自由度が大きい このとき この自由度の大きい系の方が熱容量が 大きいのである それはなぜかというと 系の温度を上げるために供給された熱が各自由 度に流れるため ( これをエネルギーの散逸という ) 自由度が大きい系ほど温度を上げる ために必要な熱量が大きくなるからである *2 ここで アトキンスのデータ部表 2 7 に載っている熱容量の値を見てみよう 希ガス元 - 素から成る単原子分子気体の CP, m はどれも J K 1 - mol 1 で CO N2 O2 H2 等の二 2 *1 一般的には CP - CV = α V T / κ T ( 2 49) が成立するが これは 7 2 で導く *2 以前に 温度とは物質を構成している粒子の熱運動エネルギーの平均値を表しているといったが 気体の場合は正確には並進運動エネルギーの平均値である 回転と振動の運動エネルギーは系の温度に寄与しないが 熱はこれらの自由度にも流れるため 系の自由度の違いによって熱容量が違ってくる つまり 自由度が大きいほどいろいろな運動モード ( 特に振動モード ) にエネルギーを貯えることができるので 熱容量が大きくなる

28 - 原子分子気体の CP, m はいずれも約 29 J K 1 - mol 1 で H2O CO2 という三原子分子気体の CP, m はそれぞれ と J K - 1 mol - 1 と少し違いはあるが 原子数の同じ分子の熱容量がほ ぼ同じことが分かる もう一つ熱容量の値に影響を与えるものがある それは 並進 回転 振動のエネルギ ー準位の様子である つまり エネルギーの量子化の効果である もしこのエネルギー準 位の間隔が大きいと その運動を活発にする ( これを運動を励起するという ) のに必要な エネルギーも大きいので 加えた熱量が小さいと有効にこの運動を励起することができず その運動の自由度はエネルギーを吸収することができない そのため結局この自由度は実 質上無いに等しい ( この自由度にエネルギーが流れない ) ので 系の温度を上げるのに 必要な熱量は見かけ上小さくなる この点について もう少し定量的に考察してみよう( ア トキンス分子論的解釈 2 2 参照 ) エネルギー等分配則を使うと 例えば 1 mol の希ガス元素気体 (= 単原子分子気体 ) が 温度 T のとき その内部エネルギーは U = 3 ( 1/2) kbt NA =( 3/2) RT で 温度 T に おけるモル定積熱容量は CV, m =( 3/2) R であると見積もることができる ( アトキンス数値例 2 3 参照 ) 希ガス元素気体は理想気体と見なせるので そのモル定圧熱容量は CP, m =( 3/2) R + R =( 5/2) R である 従って K における希ガス元素 1 mol の定圧熱容量は = J K mol と計算でき これは実測値 ( J K mol ) とよく一 致する 二原子分子気体の場合 等分配則を使うと モル定圧熱容量は 4R = J K mol と予想されるが これは実測値 ( 約 29 J K mol ) よりも大きく むしろ 3.5R = J K mol 1 に近い これは 加えたエネルギーと比較して振動運動 ( 基礎物理学 p.35 *1 図 参照 ) のエネルギー準位の間隔が大きいため 振動運動を励起できず 実 質上この自由度が無いに等しいので 見かけ上自由度が 5 になっているからである *2 H2O では並進と回転の自由度は合計 6 なので この自由度だけが熱容量に寄与するなら C P, は 4R = J K mol になるはずである 実測値は J K mol なので 振動の自 由度は熱容量にほとんど寄与していないことが分かる このようにエネルギー等分配則は 量子効果があると適用できない ( 量子効果とはこの場合エネルギーが量子化されていることを指 す ) m Boltzmann 分布 ( アトキンス分子論的解釈 3 1) 熱容量のデータを見ると 振動の自由度は熱容量に全く寄与しないわけではなく 少し は寄与しているように見える CO2 分子は直線分子なので 二原子分子と同様に回転に自 -1-1 由度は 2 で 並進 回転運動の CP, m への寄与は 3.5R = J K mol である 実測値 は J K mol なので 振動運動の寄与はかなりあることが分かる これに対して水 分子は上述したように ほとんど振動運動の寄与はない これはなぜだろう 絶対零度では最低エネルギーの振動状態だけが占められているが 有限温度ではエネル ギーの高い状態を占める確率は零ではない 一般に 有限温度において エネルギーが Ej - *1 振動運動エネルギーは 100 cm 1 - から 1000 cm 1 - のオーダーである 1 cm 1 = 1.44 K である *2 今回とりあげた 4 化合物の CP, m が H2 < CO ~ N2 < O2 の順に大きくなることに注意する これは分子量が増える順序と同じである

29 と Ek の状態にある平均粒子数の比 < Nj> / < Nk> は < Nj> / < Nk>= exp [-( Ej - Ek) / kbt] ( 55) *1 で与えられる この関係は次の Boltzmann 分布 ( アトキンス図 3 4 参照 ) から求められる < Nj>=( N exp [- Ej/ kbt]) / Σ jexp [- Ej/ kbt] ( 56) ここで N は全粒子数である 例えば エネルギー準位の間隔が等間隔で その間隔が kbt と等しい場合を考えてみよう このとき 例えば 1000 個の粒子が基底状態 E0 を占めて いたとすると 368 個の粒子が第一励起状態 E を 135 個の粒子が E を 50 個の粒子が E を 18 個の粒子が E4 を 占めている 粒子一個のエネルギーはおよそ kbt なので 粒子の持っているエネルギーよりかなり高い状態を占める粒子もある程度存在することが 分かる -1 CO2 分子の四つの振動モードは二重縮退の変角振動 ( 667 cm ) 対称伸縮振動 ( 1388 cm ) 逆対称伸縮振動 ( 2349 cm ) である 水分子の三つの振動モードは 変角振動 ( 1595 cm ) 対称伸縮振動 ( 3652 cm ) 逆対称伸縮振動 ( 3756 cm ) である( 基礎物理学 p.35 図 参照 ) いま j を最低エネルギー状態 k を第一励起状態とすると K では cm ( CO 2) で Nj/ Nk ~ cm 1 ( CO 2) で Nj/ Nk ~ cm 1 ( H2O ) で Nj/ Nk ~ 2216 程 -1 度になる CO2 の熱容量への振動運動の寄与が思いのほか大きいのは 667 cm の振動モ ードがあるからである これに対して 水分子の場合はどのモードも振動エネルギーが高 いので 熱容量に寄与しないのである このように系によって 室温においてもある程度 ではあるが振動運動が励起された分子が存在するので 熱容量にもある程度ではあるが振 動の自由度の寄与が含まれることになる 熱容量の温度依存性 固体 液体 気体の熱容量はそれぞれに特徴的な温度変化をする ( アトキンス図 3 14( a) 参照 縦軸は Cp/ T なので注意する) これも上記のエネルギーが量子化されていることに起因 している 例えば 上記の室温における気体の熱容量では 振動の自由度はほとんど熱容 量に寄与していなかったが 温度が高くなると振動エネルギーを励起することができるよ うになるので 熱容量は大きくなる しかし エネルギーの等分配則によると熱容量は温 度に依存しないで 系の自由度で決まる一定の値であることを導く つまり熱容量が温度 に依存するという事実も 古典的なエネルギー等分配則が正しくないことを示している ( 物理化学 Ⅰ 1 2 1a アトキンス 8 1( c ) を参照せよ) 系のエネルギー準位の様子に基づい て その熱容量などを計算することは 統計力学において行われるのであるが これ以上 ここでは詳しく触れない ちなみに先ほどの J K mol CO2 となり 実測値とよく一致している の熱容量を統計力学的に計算すると 熱力学における熱容量の有用性 及び で考察したように ある温度における内部エネルギー U( T1) あるい はエンタルピー H( T1) が分かっているとき ( あるいはある温度における内部エネルギーやエンタ ルピーを基準としたときの ) それ以外の温度における内部エネルギー U( T2) やエンタルピー *1<> は平均を表す

30 H( T2) の値を熱容量を使って見積もることができる T2 U( T2) = U( T1) + T1 CVdT ( 体積一定 非膨張仕事なし ) ( 35u) T2 H( T2) = H( T1) + T1 CPdT ( 圧力一定 非膨張仕事なし ) ( 2 35)( 35h) 例えば 系が液体状態にある時の内部エネルギー U( l, T1) あるいはエンタルピー H( l, T1) を基準にして 気体状態における内部エネルギー U( g, T2) あるいはエンタルピー H( g, T2) を与える式は次のようになる Tb T2 U( g, T2)= U( l, T1)+ T1 CV( l) dt + qv,vap + Tb CV( g) dt ( 62) Tb T2 H( g, T2)= H( l, T1)+ T1 CP( l) dt + qp,vap + Tb CP( g) dt ( 63) ここで Tb は沸点 CV( l) 及び CP( l) は液体状態の熱容量 CV( g) 及び CP( g) は気体状態の熱 容量 qv,vap と qp,vap はそれぞれ定容及び定圧の蒸発熱である モル定圧熱容量 Cp, m の温度変化を考慮するときよく使われる近似的経験式として 2 Cp, m = a + bt + c/ T ( 2 25)( 64) がある ここでパラメータ a b c は温度に依らない アトキンス表 2 2 例題 2 4 を参 照せよ

31 3. 熱化学 熱化学は 熱力学第一法則の対象のうち 化学反応や溶解 あるいは融解 蒸発 昇華などの状態 *1 変化 (= 相変化 相転移 ) 等に伴う熱効果 ( それぞれ反応熱 溶解熱 転移熱という ) を取り扱う 反 応熱等は温度一定の条件で測定し ( 一般的には K( 25 ) で測定される ) さらに圧力一定か体積 一定の条件を課す 普通は実験が容易なので圧力一定のもとで熱測定は行われる 従ってこのとき測 定されるのは 反応エンタルピー 溶解エンタルピー 転移エンタルピーといったエンタルピー変化 Δ H である 系から熱が出ていくとき q < 0 とするので 発熱過程ではΔ H < 0 吸熱過程ではΔ H > 0 である 熱量測定を実際に行うための装置については アトキンス 2 4( a) 2 5( b) を見よ 以下 では特に断らない限り 定温定圧条件下での熱効果である 3 1 エンタルピー変化 標準エンタルピー変化 ( アトキンス 2 7) 5 標準状態とは圧力が 10 Pa(= 1 bar) の状態である 各温度で標準状態が定義される そ して 最初と最後の物質がそれぞれ標準状態にあるような過程に対するエンタルピー変化 を標準エンタルピー変化という これはΔ H のように書き 上付きの は標準状態で あることを表している 標準エンタルピーは 1 mol 当たりのエンタルピー変化なので そ の単位は J mol -1 である 温度については 文献に載っている標準エンタルピー変化等の データは = K で測定されたものが一般的であり この温度をアトキンス では約束温度と呼んでいる ( が 一般的な言葉ではない ) 反応エンタルピー ( アトキンス 2 7( b)) *2 反応式の書き方 : H2( g) + 1/2O2( g) H2O( l) Δ rh -1 ( 298 K) = kj mol ( 1) 各反応物 生成物の状態を すなわち固体 ( s) 液体( l) 気体( g) のいずれであるかを明 示する 必要であれば 同じ固体でも 例えばグラファイトあるいはダイヤモンドと書く Δ rh ( 298 K) は標準反応エンタルピーで *3 括弧の中の 298 K は測定温度を表している 約束温度で測定したときは測定温度を書く必要はない 反応エンタルピーとしては反応の 種類によって 燃焼エンタルピー Δ ch 中和エンタルピー Δ nh 等がある *1 一般的には 反応熱は熱として発生するのみとは限らず 電気や軸仕事としても取り出せる ( 電池 やガスタービンなどが例として挙げられる ) 化学プラントや発電プラントの設計においてはエネルギ ーの計算は重要である 熱の仕事への変換については 第 4 6 章を参照せよ *2 このとき 熱化学方程式は H2( g) + 1/2O2( g) = H2O( l) kj mol と書く 反応エンタルピーの符号に注意せよ *3 種々のエンタルピー変化はΔと H の間に r とか c といった添え字を付けて区別して標記する アト キンス表 2 4 参照

32 ここで注意したいことは 例えば A + B C + D という反応のΔ r H とは 温度 T 圧力 1 bar の下で熱平衡状態 ( 標準状態 ) にある A と B が別々に存在している状態から 同温同圧下で熱平衡状態 ( 標準状態 ) にある C と D が別々に存在している状態までのエ ンタルピー変化である このとき 反応が 1 bar のもとで進行する必要はない エンタル ピーは状態関数なので 経路に依存せず 最初と最後が決まれば そのエンタルピー変化 も一義的に決まる 反応エンタルピーの温度依存性 ( アトキンス 2 9) 熱容量を用いると ある温度で既知の反応エンタルピーから 測定データのない他の温 度における反応エンタルピーの値を求めることができる 例えば 次のような反応を考え てみよう aa + bb cc + dd ( 2) このときこの反応のエンタルピー変化 Δ rh は Δ rh = chm( C) + dhm( D) -[ ahm( A) + bhm( B)] ( 3) で与えられる ここでこれを次のように略記することにする Δ rh = J ν JHm( J) ( 4) ここでν J は ( 化学 ) 量論数と呼ばれ a b c d 等の係数を表し 反応物の係数について は負号が付くこととする 例えば ν D = d であるが ν A =- a である そして J は 1 3 b で導入した化学種を表す記号で 反応物と生成物 A B C D 等を表すこととする したがって 反応式を一般的に 0 = J ν JJ ( 7 9)( 5) と書くことができる ( アトキンス数値例 7 1 参照 ) 反応エンタルピーの式( 4) を温度で微分 して圧力一定の条件を課す ( Δ rh/ T) P = J ν J( Hm( J )/ T) P ( 6) 右辺の偏導関数は物質 J のモル定圧熱容量なので 上式は ( Δ rh/ T) P =Δ CP ( = J ν J CP, m( J)) ( 定圧 非膨張仕事なし ) ( 7a) と書き直すことができる ここで Δ CP は Δ CP =( 生成系の熱容量の和 )-( 反応系の熱容量の和 ) [ 2 37]( 8a) である ( 7a) は Kirchhoff( キルヒホッフ) の式 ( の微分形 ) と呼ばれている これを積分する と Kirchhoff の式の積分形が得られる ( あるいは第 2 章式 ( 35h) から直接導くこともでき る ) T2 Δ rh( T2) = Δ rh( T1) + T1 Δ CPdT ( 2 36)( 7b) この式を前章の式 ( 35h) と比較せよ 具体例としてアトキンス例題 2 6 を見てみよう Kirchhoff の式は化学反応だけではなく 相転移に伴うエンタルピー変化 Δ 等の任意 の状態変化に伴うΔ H の温度変化に対しても適用する事ができる この場合 Δ CP は例 えば融解の場合 である Δ CP( 融解 )= CP( 液体 )- CP( 固体 ) ( 8b) H

33 3 1 4 転移エンタルピー ( アトキンス 2 7( a)) 転移エンタルピー Δ trsh としては 蒸発エンタルピー Δ vaph 融解エンタルピー Δ fush 昇華エンタルピー Δ subh 等がある 例えば 1 気圧で氷を加熱していくと 0 で氷から水に相転移する この氷から水への融解に要した熱エネルギーが融解エンタルピー Δ fush である さらに加熱を続けると 100 でお湯から水蒸気に相転移する このお湯から水蒸 気への蒸発に要した熱エネルギーが蒸発エンタルピー Δ vaph である アトキンスの表 2 3 を見ると Δ vaph はΔ fush の 3 ~ 7 倍もあることが分かる 固体から液体に変わるには 固体の緊密で規則正しい分子配列がゆるめられて 流体特有の運動の自由度が許されるようにならなければならない しかし 両者のモル体積がほとんど同一であることは 液体中においても 分子がなおかなり密に詰まっていて強く保持されていることを示している 他方 気相では分子が離れ離れになっているから 分子間にはごく僅かの力しか働かない そこで 固体をゆるめて液体にするよりも 液体の分子を気相に脱出させる方がずっと多くのエネルギーを消費しなくてはならないのである その他のエンタルピー変化 ( アトキンス表 2 4 参照 ) *1 混合エンタルピー (Δ mixh) : 混合に際し 系に出入りする熱 *2 溶解エンタルピー (Δ solh ): 溶質が溶媒に溶けるときに発生または吸収される熱量 混 合エンタルピーの一種である 積分溶解エンタルピーとは溶質 1 mol を溶媒に溶解し 無 限希釈するときの熱量変化 微分溶解エンタルピーとは溶液に微少量の溶質を加えたとき の熱量変化 希釈エンタルピー (Δ dilh) : ある濃度の溶液に溶媒を加え希釈する際 発生または吸収さ れる溶質 1 mol 当たりの熱量変化 水和エンタルピー ( Δ hydh) : 溶質を溶媒である水で無限に希釈した際に生じる熱量変化 吸着エンタルピー (Δ adsh) : 吸着に伴って発生する熱をいう *3 イオン化エネルギー (Δ ion H ) ( アトキンスデータ部表 10 3) : 気体中の基底状態にあ る原子または分子から 1 個の電子を無限遠に引き離して 1 個の陽イオンと自由電子とに 解離させるために必要なエネルギー イオン化ポテンシャルともいう 原子では 中性原子 から 1 個の電子を引き離すとき第 1 イオン化エネルギー 一価の陽イオンからさらに 1 個の電子を引 き離すとき第 2 イオン化エネルギーというように呼ぶ 第 2 イオン化エネルギーは第 1 イオン化エネ ルギーよりも常に大きい これに対して 分子では中性分子から 個の最も高いエネルギーを持つ電 子を引き離すとき第 1 イオン化エネルギー 次のエネルギーの電子を引き離すとき第 2 イオン化エネ 1 *1 2 種類以上の異なる粉粒体 気体または液体どうしを混ぜ合わせて 均質な粉粒体 気体または液 体 ( 溶液 ) にする操作 液体に気体 液体 固体が混合して均一な液相を形成する現象を溶解という *2 希硫酸を作るとき 冷却しながら水に濃硫酸を加えなければいけないのは 硫酸の水への溶解エン タルピーが大きいからである *3( エネルギーとエンタルピーの違い ) 実測されるのは有限温度におけるエンタルピー変化であ る これに対して 熱エネルギーの効果を削除した 言い換えれば絶対零度におけるものがエネルギ ー変化である 例えば イオン化エンタルピーとイオン化エネルギー 結合解離エンタルピーと結合 エネルギー アトキンス式 ( 10 34) ( 10 35) 根拠 10 7 を参照せよ

34 ルギーと呼ぶ 電子親和力 (Δ egh) ( アトキンスデータ部表 10 4) : 真空中で無限に離れていた中性原子 と電子とが接近して結合し 陰イオンが生成する際に放出されるエネルギーであって 陰 イオンから電子を引き離すのに要する仕事に等しい その値は原子が電子を受け取って陰 イオンとなる傾向の大小を表す 電子親和力が正であれば陰イオンは真空中で安定 負で あれば真空中では不安定であるが 溶液あるいは結晶中ではそうとは限らない 原子団や 分子に対しても同様に電子親和力が定義される 5 結合解離エンタルピー ( D) ( アトキンスデータ部表 11 3a) : 結合 A-B が 10 Pa の理想気 体状態で等温的に原子あるいは原子団 ( イオンではない ) A B に解離するときのエンタ ルピー変化 + - 例 ) HF( g) H( g) + F( g) ( H ( g) と F ( g) に分離するのではない ) ( 9) 3 2 標準生成エンタルピー 2 8 ( アトキンス ) 多くの反応は直接的な熱量測定に適さない ( ができない) しかし 反応エンタルピ ーを間接的に決定することができる ( Hess( ヘス) の法則 ) これは エンタルピーは状態 関数なので 任意の物質の持つエンタルピーはその温度 体積 物質量等が同じならば どのような過程を経てその状態に至ろうとも同じだからである 例として 炭素がグラファイトからダイヤモンドに変わる相転移を見てみよう C( グラファイト) C( ダイヤモンド) Δ trsh ( 炭素 )=? ( 10) この転移は非常に大きな圧力をかけることによって起こるので 直接転移熱を測定するこ とは非常に困難である これに対してグラファイトとダイヤモンドの燃焼反応は熱量計の 中で行うことができるので 反応熱の測定は比較的容易である C( グラファイト)+ O2( g) CO2( g) Δ ch ( 298 K)= kj mol -1 ( 11) C( ダイヤモンド)+ O2( g) CO2( g) Δ ch ( 298 K)= kj mol -1 ( 12) グラファイトを直接ダイヤモンドに変えたときの Δ trs H 二酸化炭素にし 次にその二酸化炭素からダイヤモンドを作ったときの Δ で と グラファイトを燃焼させて H は同じなの Δ trsh ( )=- -(- ) - 1 =+ - 1 炭素 kj mol 1.89 kj mol ( 13) である ( アトキンスの例題 2 5 も参照せよ) 任意の物質の持つエンタルピーが分っていれば 任意の反応のエンタルピー変化を直接 測定しなくても 計算で求めることができるので大変便利である しかし エネルギーの 値は基準次第で種々の値を取りうるので そのためには基準を定めなければならない 指 5 *1 定された温度と 10 Pa (= 1 bar) の圧力のもとで 任意の元素の最も安定な状態のエン タルピーを零にとり (= 基準とし ) 任意の化合物を ( 基準状態にある ) 構成元素から合成す る ( これを標準生成反応と呼ぶことにする ) ときの標準反応エンタルピー を その化合物 の標準生成エンタルピー Δ f H と定義する 例として CH4( g) の標準生成エンタルピー *1 アトキンスではこれを基準状態と呼んでいるが 一般的な言葉ではない

35 がどのように決められるか考えてみよう メタンの構成元素は炭素と水素で それらの基 準状態は 298 K でそれぞれ C( グラファイト ) と H2( g) なので 標準状態にあるそれらから 標準状態の CH4( g) を作る標準生成反応を考える C( グラファイト)+ 2H2( g) CH4( g) Δ rh ( 298 K)= kj mol -1 ( 14) このとき C( グラファイト) と H2( g) の標準生成エンタルピーをゼロにとるので CH4( g) の 標準生成エンタルピー Δ fh ( 298 K)= 上記反応の標準反応エンタルピー Δ rh ( 298 K)= kj mol -1 である C( グラファイト) H2( g) CH4( g) Δ fh ( ) K /kjmol ( 15) 標準生成エンタルピーの値を用いて 任意の反応の標準反応エンタルピー Δ rh を計算 することができる *1 Δ rh = J ν J Δ fh ( J)= 生成系 νδ fh - 反応系 νδ fh ( 2 34)( 16) つまり 標準反応エンタルピー Δ r H は ( 生成系の標準生成エンタルピーの和 )-( 反応系 の標準生成エンタルピーの和 ) である 例として次のエチレンの水素化反応を考えてみよ う CH2CH2( g) + H2( g) CH3CH3( g) Δ rh =? ( 17) 各化合物の標準生成エンタルピーは次のように与えられている( アトキンスデータ部表 2 5) CH2CH2( g) H2( g) CH3CH3( g) Δ fh ( ) K /kjmol ( 18) したがって Δ rh ( )= (- - ) K kj mol = kj mol - 1 と求めら れる ( アトキンス数値例 2 7 も参照せよ) ( 注意 ) 任意の温度において標準生成エンタルピーが定義される そして基準状態の元素 の標準生成エンタルピーは任意の温度で常にゼロである (=ゼロとする) このことはし かし この元素のエンタルピーがすべての温度で等しいという意味ではない 物質のエン タルピーは温度依存する 従って 異なる温度の標準生成エンタルピーの値を比較しても 意味がない この点について具体例で見てみよう 先ほど取り上げた反応を考えてみよう C( グラファイト) + 2H2( g) CH4( g) ( 14) 0 K と 298 K における標準生成エンタルピーは以下のようになる C( グラファイト ) H2( g) CH4( g) Δ fh ( ) K /kjmol ( 20) Δ fh ( ) K /kjmol ( 21) H 1 ( 298 K)- Hm ( 0 K )/kjmol ( 22) - m 0 K における C( グラファイト) と H2( g) の標準生成エンタルピーをゼロにとる CH4( g) のΔ f H -1 ( 298 K) はΔ fh ( 0 K) より 8.0 kj mol も小さくなっているが これは 0 K のときより も298 K のときの方が CH4( g) のエンタルピーが低いことを意味しているのではない 事 実 0 K のときと 298 K のときのエンタルピーの差 Hm ( 298 K)- Hm ( 0 K) は逆に kj mol 1 である これは反応物の Hm ( 298 K)- Hm ( 0 K)(= = *1 標準生成エンタルピーという体系は エンタルピー変化が反応熱となるようにそれぞれの物質の 原点を調節すること がその本質である

36 kj mol 1 - ) が生成物のそれ ( kj mol 1 ) よりも大きかったので 本当は CH4( g) のエンタルピーは 0 K のときよりも 298 K のときの方が大きいのに 標準生成エンタル ピーは小さくなっているのである Δ fh ( 298 K)=Δ fh ( 0 K) ( )= ( 23) この例からも分かるように 異なる温度の標準生成エンタルピーを比較しても意味がない 標準エンタルピーは同じ温度で使ってはじめて役に立つのである ( 参考 ) 任意の温度 T の標準反応エンタルピー Δ r H ( T) は 例えば反応に関与する物質の 298 K に おける標準生成エンタルピー Δ f H ( 298 K) の値が分かっていれば 298 K を基準にしたときのその温 度 T におけるモル標準エンタルピー [ Hm ( T)- Hm ( 298 K)] を使って 次式から求めることができる ここで Δ rh ( T) = Δ rh ( 298 K) + Δ[ Hm ( T)- Hm ( 298 K)] ( 24) Δ rh ( 298 K) = J ν J Δ fh ( 298 K, J) ( 25) Δ[ Hm ( T)- Hm ( 298 K)] = J ν J[ Hm ( T)- Hm ( 298 K)] J ( 26) 水溶液中の物質の標準生成エンタルピー 化学反応の多くは水溶液中で行われるので 水溶液中における物質の標準生成エンタル ピー Δ fh ( aq ) を決めておくと便利である これは 任意の温度 T において 1 bar の定 圧下で最も安定な状態 ( 基準状態 ) にある構成元素から 水溶液中に存在するある化合物 を作るときの標準反応エンタルピー として定義される 例えば 水溶液中の塩化水素の 標準生成エンタルピーは ( 1/2) H2( g)+( 1/2) Cl2( g) H + ( aq)+ Cl - ( aq) Δ fh ( aq) ( 27) という反応のエンタルピー変化である Δ fh ( aq) は実験的に求めることができる すな わち その物質の水への溶解エンタルピー Δ sol H と標準生成エンタルピー Δ f H から求 めることができる Δ fh ( aq) = Δ solh + Δ fh ( 28) いくつか例を見てみよう 1 HCl( aq) のΔ fh ( aq): HCl( g) HCl( aq) Δ solh = kj mol -1 ( 29) ( 1/2) H2( g)+( 1/2) Cl2( g) HCl( g) Δ fh = kj mol -1 ( 30) ( 1/2) H2( g)+( 1/2) Cl2( g) HCl( aq) Δ fh ( aq)=? ( 31) したがって Δ fh ( ) = (- - ) - 1 aq kj mol = kj mol - 1 と求められ る 正確な値はΔ fh ( aq) = kj mol -1 である 2 NaCl( aq) のΔ fh ( aq): NaCl( s) NaCl( aq) Δ solh = kj mol -1 ( 32) Na( s) + ( 1/2) Cl2( g) NaCl( s) Δ fh = kj mol -1 ( 33) Na( s) + ( 1/2) Cl2( g) NaCl( aq) Δ fh ( aq)=? ( 34) したがって Δ fh ( ) = ( - ) - 1 = aq kj mol kj mol と求められる 3 KCl( aq) のΔ fh ( aq): KCl( s) KCl( aq) Δ solh = kjmol -1 ( 35) K( s) + ( 1/2) Cl2( g) KCl( s) Δ fh = kjmol -1 ( 36)

37 K( s) + ( 1/2) Cl2( g) KCl( aq) Δ fh ( aq)=? ( 37) したがって Δ fh ( ) = ( - ) - 1 = aq kj mol kj mol と求められる 次に 水溶液中で完全にイオンに分離している化合物 ( 例えば HCl) の標準生成エンタ ルピー Δ fh + ( aq) を 各成分イオン( H と Cl - ) の水溶液中での標準生成エンタルピー ( イ オン標準生成エンタルピー ) の和と考える 言い換えれば 各イオンについて基準状態に ある元素から水溶液中に存在するイオンを作るときの標準生成エンタルピーである これ - はあるイオン ( 例えば Cl ) の持つエンタルピーが対イオンが何であろうとも( Na でも K + + でも ) 変わりがないと仮定することを意味している これは希薄水溶液については可能な 仮定である 問題はイオン対の標準生成エンタルピーをどうすれば各イオンに分けること ができるかである これについては あらゆる温度において希薄水溶液中の 標準生成エンタルピーをゼロとすることが一般的に認められている H + のイオン ( 1/2) H2( g) H + ( aq) Δ fh ( H +, aq) = 0 [ 2 33]( 38) - したがって Cl のイオン標準生成エンタルピーは上記 1のΔ fh ( aq) から kj mol -1 である ( 1/2) Cl2( g) Cl ( aq) Δ f ( Cl, aq) = kj mol 1 H ( 39) また Na + と K + のイオン標準生成エンタルピーは2と3のΔ fh ( aq) から それぞれ ( ( )=) kj mol ( ( )=) kj mol である エンタルピー変化の解釈 結合エネルギー ( アトキンス 2 8( b)) 反応エンタルピーの値をどのように解釈したらよいであろうか? 反応エンタルピーの値 を化学結合が生成したり 切断するのに要するエネルギーに結び付けて考えることができ るであろう このとき T = 0 K での反応を考えることによって 反応エンタルピーから 熱エネルギーの効果を削除する そうすれば反応エンタルピーから結合エネルギーを求め ることができるのではないか? C( g) + 4H( g) C( g) + 4H( g) H2 の原子化エンタルピー 2 Δ H = 338 kj mol -1 = 872 kj mol CH( g) + 3H( g) C( g) + 2H ( g) 1664 kj mol Δ = 422 kj mol H C( グラファイト ) の原子化エンタルピー CH2( g) + 2H( g) = 717 kj mol Δ H = 473 kj mol -1-1 C( グラファイト )+ 2H2( g) CH3( g) + H( g) Δ fh =- 75 kj mol Δ H = 430 kj mol -1-1 CH4( g) CH4( g)

38 しかし 二原子分子 あるいは同一の結合のみを含む分子の場合 結合エネルギーを決めることは可能ではあるが 分子中に異なった型の結合を持つ場合 各結合のエネルギーを決定することは困難である また 同一結合のみをいくつか含む分子でも そのうちの一つの結合の解離エネルギーと そこからさらにもう一つの結合を解離するときのエネルギーは異なっている これは最初に一つの結合が切れた後で分子中の各結合の電子状態が変化したためである 例として CH4( g) を見てみよう あるいは 例えば同じ O- H 結合といっても CH3OH と C6H5OH では 結合エネルギーは異なる これは 結合にあずかる電子が 各結合ごとに局在しているのではなく 互いに影響を及ぼしあっているからである しかし 平均的な結合エネルギー ( 平均結合エネルギー ) が分っていると これを任意の反応のエンタルピー変化の値を見積もるときの目安とする事ができる 化合物の数に比べて結合の種類は非常に少ないのでこれは有用である 格子エネルギー イオン性結晶を気体状のイオンに分解するのに要するエネルギーについて考えてみる 例 ) NaCl( s) Na + ( g) + Cl - ( g) Δ LH = kj mol -1 ( 40) このときのエンタルピー変化 Δ LH を格子エンタルピーという 格子エネルギーとは絶 対零度で結晶を構成要素に分解するのに必要なエネルギー ( 分解するときの内部エネル ギー変化 ) あるいは 化合物結晶 1 mol が互いに無限遠に離れて存在する気体状のイオ ンに解離するときの内部エネルギー変化である この格子エネルギーは実測することがで きないので 状態関数の性質を用いて間接的に求める そのために考案されたのが Born-Haber( ボルン-ハーバー ) サイクルである ( アトキンス図 参照 ) + - Na ( g)+ e ( g)+ Cl( g) Δ egh ( Cl) Δ ionh ( Na) = = Na( g)+ Cl( g) Δ subh ( Na)= Na( s)+ Cl( g) ( 1/2)Δ H ( Cl- Cl)= Na( s)+( 1/2) Cl2( g) + - Na ( g)+ Cl ( g) 格子エンタルピー 水和エンタルピー Δ fh ( NaCl) Δ fh ( NaCl,aq)= = NaCl( aq) NaCl( s) Born-Haber サイクル ( 数値の単位は kj mol -1 ) 溶解エンタルピー

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