最新 乳癌の薬物治療 患者さん 1 人ひとりにあった個別化治療 市立函館病院乳腺外科科長 鈴木伸作
乳がんとは何か 統計 定義 種類
乳がんの統計 罹患率
乳がんの統計 死亡率
乳房の構造 小葉 胸筋 乳腺 乳管 乳管開口部 肋骨 クーパー靭帯 脂肪組織
がんとは がん細胞分裂回数 1 個 1μg 1mg 1g 1kg 10 回転移開始 20 回 30 回触知可能 40 回
乳がんの定義
乳がんの種類 非浸潤がん ; がん細胞が増え続けるが乳管でと止まっている状態 浸潤がん ; がん細胞が乳管から外に出て 周りに広がった状態
乳がんの診断 画像診断 細胞診 生検
画像診断 画像診断で重要なものはマンモ グラフィーと超音波検査です その他としては CT や MRI PT 検 査などがあります 最近 MRI は乳癌の診断で重要な 位置を占めるようになってきており ます
マンモグラフィ マンモグラフィと は乳腺専用のレ ントゲン検査のこ と 触れることの できない乳癌も 見つけることが できます
超音波検査 超音波検査では 腫瘤の中の状態 がわかり 良性と 悪性の違いはも とより 組織型も ある程度判別で きます
MRI 磁石を使用して 乳腺内を画像化する検査です 造影剤を使用し その染まり方によって 良悪性の鑑別ができます また 癌の広がりを調べるのにも適しており 立体で表示することもあります
細胞診 生検 穿刺吸引細胞診 細い針で細胞を吸い取り スライドガラス上に吹きつけたものを顕微鏡で検査する 情報量は少ないが浸襲も少ない 生検 (Biopsy) 組織のかたまりをとって それを薄くスライスしたものを顕微鏡で観察する 情報量が多いが浸襲は大きい 針生検情浸報 マンモトーム生検襲量 摘出生検
穿刺吸引細胞診 専用の吸引ピストル用いた細胞採取 エコーガイド下の細胞採取
針生検 側孔 ( 横に開いた穴 ) にはまり込んだ組織を二重になった針で切り取り 組織を採取する
最終診断 画像診断と細胞診 組織診が診 組織診 一致したときのみ乳癌と診断さ れる 画像診断と細胞診 組織診の 結果が一致しないときは 検査 をくりかえしたり 経過を見ると いうことが必要になります
乳がんの治療 手術 放射線 薬物療法
手術療法 大きくは乳房切除術と乳房温存手術に分けられます 乳房切除術には胸筋合併乳房切除術と胸筋温存乳房切除術があります 乳房温存手術には扇状部分切除と円状部分切除があります 腋窩リンパ節に対しては腋窩郭清術とセンチネルリンパ節生検とがあります
乳房切除術
乳房温存手術
日本の手術術式の動向
日本の手術術式の動向 80 70 60 50 40 30 20 10 0 拡大乳房切除術乳房温存手術ハルステッド手術胸筋温存乳房切除術
切除術と温存手術 乳がん手術 症例数 70 60 50 40 30 20 10 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 年 乳房温存胸筋温存定型手術
放射線療法 放射線治療はがん細胞が放射線の影響を受けやすいことを利用し 正常細胞は傷つけずがん細胞だけを殺す治療です 乳房温存手術の後 乳房切除術の後 骨などの再発 転移性乳がん治療
乳がんの薬物治療 個別化治療
乳癌は全身病 以前は乳癌は局所病と考えられ 他 に転移する前に大きく取れば治ると考 えられていた 現在は癌ができた早い段階で 癌の癌の 芽 が全身のどこかに広がっており 乳癌と診断されたときには乳房以外 にも 癌の芽 があるかもしれない
乳癌は全身病 実際 原発性乳癌の 30% に 骨髄微小 転移を認め 認めた患者の予後は悪 かったが 全員が再発する訳ではな かった 転移が判明している乳癌患者の血液中 には 10ml あたり 2 個以上のがん細胞 が見られた患者は 60% にのぼった
薬物療法 薬物療法は乳がん = 全身病との考え に基づき局所治療では治療できない 部位の治療を行うものです 内分泌療法 化学療法 分子標的療法
個別化治療 同じ疾患に対し 個々の状態に合わせて治療すること 今までは 年齢や合併症 癌の大きさリンパ節転移の有無などによって個別化を図ってきた 現在は 乳癌の個々の性格にあわせ 現在は 乳癌の個々の性格にあわせ 一番効果でる薬物を選択し治療すること
個別化治療 リンパ節転移 乳癌 乳癌
薬物療法の変遷 ホルモン剤 抗癌剤 タモキシフェン CMF LH-RH アゴニスト アンスラサイクリン 第 2 世代 AI 剤 タキサン 第 3 世代 AI 剤 トラスズマブ
内分泌療法 乳癌はエストロゲン依存性に増殖するため エストロゲン産生の抑制や作用の阻害を行う治療である 視床下部ゾラデックス 卵巣下垂体 A フェマーラ タスオミン タスオミン 乳癌 副腎 フェマーラ A
内分泌療法 LH-Rha,AI 剤 R R R R R R R R R R R
内分泌療法タモキシフェン T T R R R R T T T R T T T T T R R R T T T T T R R R R T T T T T T T R R T T
内分泌療法の個別化 乳癌全患者 ホルモン感受性あり 70% 感受性なし 30% 閉経前 35% 閉経後 65% タモキシフェン +LH-RHa アロマターゼ阻害剤
新規内分泌療法 フルベストラント 2011 年 11 月に薬価収載された 乳癌治療に登場した初めてのSelective strogen Downregulator(SRD) エストロ ゲン受容体へのエストロゲン結合を阻害するだけでなく 受容体そのものも減少させる 進行 再発乳癌の二次治療に有効性が示されています アロマターゼ阻害剤などが効かなくなった癌に対しても効果がある
新規内分泌療法フルベストラント F F R R R R F F F R F F F F F R R R F F F F F R R R R F F F F F F F R R F F
化学療法 化学療法とは 抗癌剤を用いて直接的に癌細胞の遺伝子 (DNA) に働き がん細胞を死滅させる方法である そのため 分裂が盛んな骨髄細胞 毛母細胞 粘膜細胞への影響が避けられず 腫瘍選択性は必ずしも高くない
化学療法 現在保険上使用可能な抗癌剤は約 20 種類存在している 当科ではそのうち16 種類を使用して治療にあたっている アンスラサイクリン系 タキサン系 (DOC PTXetc) 5FU 系 ( ゼローダ TS1) その他 ( MMC GM CPT11 VNRetc)
化学療法の個別化 現在 化学療法の個別化は進んでいない ホルモン受容体の有無 HR2 発現の有無に合わせ リンパ節転移の有無 増殖因子の有無などによって個別化を図っている 術前化学療法 術後化学療法では アンスラサイクリン ± タキサン系を投与する 悪性度が低いと考えられるときには どちらか単独で使用することも多い 再発では なるべく多くの薬剤を使用するようにしている
新規抗癌剤 ゲムシタビン ( ジュムザール ) 2010 年使用開始 ナブパクリタキセル ( アブラキサン ) 2011 年使用開始 エリブリン ( ハラヴェン ) 2011 年使用開始 カルボプラチン ( バラプラチン ) 2011 年使用開始
ナブパクリタキセル 人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させ 平均 130nmにナノ粒子化したもの アレルギーや副作用の軽減の他に がん細胞内への薬剤移行が高まり 奏効率も向上した
エリブリン 海綿動物のクロイソカイメンより抽出された物質で日本で発見された 海外とほぼ同時期に発売された薬で 再発後のサードライン以降の薬の中で唯一生存率を改善した薬剤として注目されている
分子標的治療 分子標的治療は 癌細胞に特有の性質を見つけ そこを狙い撃ちする治療法です 現在乳がんでは 増殖に必要なHR2 受容体をブロックする薬が使用されてます トラスツズマブは平成 20 年 2 月から術後再発予防目的に使用可能となり ラパニチブは再発乳癌で使用可能となっております
抗 HR2 治療 HR2 HR1 HR3 HR4 T T T T T L L
抗 HR2 治療の個別化 乳癌全患者 HR2 陽性 20% HR2 陰性 80% R 陽性 50% R 陰性 50% 化学療法 + 抗 HR2 療法 ホルモン療法 + 化学療法 + 抗 HR2 療法
新規分子標的治療 ベバシズマブ VGF に対するヒト化モノクローナル抗体である 血管新生の阻害の他 腫瘍血管を退行 正常化し 血流を減少させ 腫瘍を兵糧攻めにする薬剤 今までは腎癌 大腸癌などで使用され今腎癌 大腸癌な使用ていた
個別治療 ホルモン受容体の有無 HR2 蛋白の有無 Ki67 などの増殖因子
乳癌のサブタイプ R 陽性 ( 高 ) HR2 陰性 Ki67 低値 Luminal A R 陽性 ( 低 ) HR2 陰性 Ki67 高値 Luminal B R 陽性 HR2 陽性 R 陰性 HR2 陽性 R 陰性 HR2 陰性 Luminal B HR2 type HR2 type Ti Triple negative
サブタイプ別治療 Luminal A Luminal B Luminal B HR2 type HR2 type Ti Triple negative 内分泌療法 ± 化学療法内分泌療法化学療法抗 HR2 療法抗 HR2 療法化学療法化学療法
ホルモン感受性のある 化学療法 化学療法追加 内分泌療法単独 組織学的グレード 3 1 増殖指標 Ki67 R PgR 陽性割合 高い低い 低い高い 腋窩リンパ節転移 4 個以上 0 個 腫瘍周囲脈管浸潤病理学的浸潤径 広汎 >5cm なし 2cm 以下 患者の意向 希望あり 希望なし
Luminal A の治療 内分泌療法を中心とした治療 閉経前 ; 術前療法の場合は 化学療法を行う 術後は LH-RHa(2 年 )+ タモキシフェン (5 年 ) 閉経後 ; 術前術後ともアロマターゼ阻害剤を服用 術後は 5 年服用 化学療法を追加する場合は リスクに応じて アンスラサイクリン and/or タキサン系を投与する
Luminal B の治療 内分泌療法を中心とするが なるべく抗癌剤を追加する 閉経前 ; 化学療法 LH-RHa (2 年 )+ タモキシフェ (5 年 ) 閉経後 ; 化学療法 アロマターゼ阻害剤を 5 年服用 化学療法を追加する場合は リスクに応じて アンスラサイクリン and/or タキサン系を投与する
Luminal B HR2 type の治療 抗癌剤治療 抗 HR2 治療 内分泌療法のすべてを行う 閉経前 ; アンスラサイクリン+タキサン系 + ハーセプチン LH- RHa (2 年 )+タモキシフェン (5 年 ) 閉経後 ; アンスラサイクリン+タキサン系 + ハーセプチン アロマターゼ阻害剤を 5 年服用 術前療法は抗癌剤で行う ハーセプチンは全部で 1 年間投与する
HR2 type の治療 アンスラサイクリン + タキサン系 + ハーセプチンを基本とする タキサンとハーセプチンはなるべく同時投与を行う 高齢の場合は UFTの服用や単独投与も行っている 術前療法も同じ
Triple negative の治療 アンスラサイクリン + タキサン系で治療する タキサンは weeklyptx を基本としている 遠方の場合は3wDOCも考慮にいれている 高齢の場合は UFT 単独投与も 高齢の場合は UFT 単独投与も行っている
術前薬物療法 乳房温存手術を希望するが腫瘍 径によりできない早期乳癌や局所 進行乳癌 炎症生乳癌に対しての 標準治療である 術前内分泌療法 術前化学療法
術前内分泌療法 閉経前ではエビデンスが少なく勧 められないが 閉経後では 予後 の影響ははっきりしないが 温存 率は向上する タモキシフェン アロマターゼ阻害剤
術前内分泌療法 閉経後術前内分泌療法としては タモキシフェンよりレトロゾールの方が効果が高く アナストロゾールでは効果は同等とされている このため 第一選択ではレトロゾールを使用する 期間は3 か月以上 できれば最大効果が得られるまで投与する
術前内分泌療法
術前化学療法 NSABP B-18 試験において 術前 化学療法と術後化学療法の比較 がなされ 生存期間に差がなく 温 存率に優れていた アントラサイクリン系 タキサン系 トラスツマブ
術前化学療法 術前化学療法で使用するレジメンは FC100 タキサン系を基本としている HR2 陽性の場合はハーセプチンを追加しセプチンを追加し タキサンはweeklyPTXを使用している Luminal タイプで若年者 遠方の方の時は方 3wDOCを主に使用している
術前化学療法
進行再発乳癌における 薬物療法 初診時に遠隔転移を認める例は10% 術後に再発する例は30% である 治癒は困難であるため 基本的には延命緩和治療である 内分泌療法 化学療法 分子標的療法 その他
進行再発乳癌における 内分泌療法 内分泌感受性があるluminlタイプが適応になる 閉経前ではLH-RHa+タモキシフェンが基本となる その後は トレミフェン MPA アロマターゼ阻害剤を使用していく 閉経後はアロマターゼ阻害剤 トレミフェン MPA を使用していく Luminl B HR2タイプの場合は化学療法でコントロール後内分泌療法を行う場合もある
進行再発乳癌における 化学療法 ホルモン感受性陰性 ホルモン療法無効例 生命の危機が差し迫っている場合などが適応になる 1st 2nd lineはアンスラサイクリン系 タキサン系薬剤を使用する 3rd line 以降としては カペシタピン ビノレルビン ゲムシタビンを使用する 4th line 以降ではTS1 MCC+MTX CPT11 などを使用する
進行再発乳癌における 化学療法 HR2 陽性の場合 1st lineはptx+ ハーセプチンとする 2nd lineにはカペシタピン+ラパニチブを使用する 3rd line 以降はハーセプチンと組み合わせて DOC VNR GM などを順次使用する なるべく多くの種類を使い切るように使用する
肝転移 前期後期の化学療法 前期 8 例後期 14 例検定 アンスラサイクリン系 6 例 2 例 タキソール 1 例 10 例 タキソテール 2 例 4 例 ハーセフ チン 0 例 3 例 ゼローダ 2 例 7 例 TS1 0 例 2 例 ナベルビン 0 例 9 例 CPT-11 0 例 5 例 P=0.064
肝転移生存率 期間 Kaplan-Meier 生存曲線 100 90 80 70 60 生存 50 率 40 30 20 10 0 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 生存期間 前期群 後期群 P=0.296
乳癌再発後の生存率 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 é ó äjénéû 16îNå 生存死亡
治療のバランス 手術 :7 薬剤 :2 放射線 :1
治療のバランス 手術 :2 薬剤 :6 放射線 :3