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健康バンザイ! いなぎ講座 乳癌の診断と治療について

1980 年当時 ( 私が医学部を卒業 ) 乳がんはまだ少なかった 女性の 30 人に 1 人がかかるといわれた また 外科医も専門分化しておらず 一般外科医 ( 消化器外科医 ) の片手間に治療されていた また 手術は 定型的乳房切断術であった 傷も無残と言わざるを得なかった 1975 年には乳が

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乳がんってどんな病気? 手術 放射線療法 薬物療法といった治療があります 乳がんの治療法には がんが一部にとどまっている場合に そこを集中的に治療する 局所療法 と がんが全身に広がっている可能性のある場合に行う 乳がんは 乳房全体をおおうようにはりめぐらされている乳腺にできる腫瘍 です 乳腺は乳汁

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膵臓癌について

はじめに この冊子は レトロゾール錠 2.5mg アメル による乳がんのホルモン療法を受ける患者さんが 安心して治療に取り組めるように 乳がんのホルモン療法や薬の効果 副作用について解説しています 冊子を読んでもわからないことや 不安に感じることがありましたら 担当医師や看護師 薬剤師に遠慮なくご相

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2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

乳腺専用の超音波は極めて小さい腫瘍の描出が可能で 続いて超音波ガイド下穿刺細胞診断 組織診断 ( 針生検法 コアニードル生検 ) をおこないます 乳癌に精通した病理医の常駐 ( 常勤医 ) により極めて短期間に病理診断が可能です 乳癌の診断が得られた場合 CT MRI 骨シンチグラフィー等の最新機器

最近 乳がんの人が増えている? 最近 芸能人で乳癌になった人多くない? 乳がんって増えているの? なったら助からないんでしょ?

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cm 以上の腫瘍では悪性化していることも考慮する必要があります ただし 良性腫瘍でも長期間放置すれば大きくなりますので サイズが大きいからと言って悪性とは限りません 成長速度: 悪性度の高い腫瘍では 大きくなるスピードが速くなります 腫瘍がいつからあったか 最近はどのくらいのスピードで大きくなってき

( 後期 1 年目 ) アップ 2. 外来薬物療法を理解し実施できる ( 化学療法 内分泌療法 30 例の達成 ) 3. 乳癌関連基礎研究 ( トランスレーショナルリサーチ ) についての理解 4. 乳腺疾患の診断手技の実施 ( 穿刺吸引細胞診 20 例 針生検 20 例の達成 ) 5. 画像診断の

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を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です


10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

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目次 甲状腺とは 3 甲状腺ホルモンとは 4 甲状腺ホルモン量の調節 6 甲状腺がんとは 8 甲状腺がんの種類 9 甲状腺とは 甲状腺は のどぼとけのすぐ下にある重さ 10 ~ 20g 程度の小さな臓器で 甲状腺ホルモン というホルモンをつくっています ちょうど 蝶が羽を広げたような形をしていますが

70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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遠隔転移 M0: 領域リンパ節以外の転移を認めない M1: 領域リンパ節以外の転移を認める 病期 (Stage) 胃がんの治療について胃がんの治療は 病期によって異なります 胃癌治療ガイドラインによる日常診療で推奨される治療選択アルゴリズム (2014 年日本胃癌学会編 : 胃癌治療ガイドライン第

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乳がん 閉経後乳がん女性の体の中 アロマターゼ 乳がん タモキシフェン治療中の閉経後乳がん女性の体の中 アロマターゼ 男性ホルモン 男性ホルモン 女性ホルモン = エストロゲン 女性ホルモン = エストロゲン 7 8 アロマターゼ阻害剤 世代非ステロイド系ステロイド系 1 aminoglutethi

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6 月 25 日胸腺腫 胸腺がん患者の情報交換会 & 勉強会質疑 応答 奥村教授にお聞きしたいこと 奥村教授の話 1 特徴 (1) 胸腺腫 胸腺がん カルチノイドの違いについて 胸腺腫はがんの種類か 病理学的には胸腺腫はがんではなくて正常と区別つかず機能を残したまま腫瘍化したもの 一部 転移するもの

筆頭演者の利益相反状態の開示 すべての項目に該当なし

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がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

健康だより Vol.71(夏号)

するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

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博士の学位論文審査結果の要旨

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乳がんの現状は? 予防できるの? 遺伝するの? 今日の内容 なってしまったらどうすればよいの? 治療は? なおるの? 良い病院 良い先生にかかりたい! いくらかかるの?

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4. 研究の背景 : エストロゲン受容体陽性で その増殖にエストロゲンを必要とする Luminal A [3] と呼ばれるタイプの乳がんは 乳がん全体の約 7 割を占め 抗エストロゲン療法が効果的で比較的予後良好です しかし 抗エストロゲン剤の効果が低く手術をしても将来的に再発する高リスク群が 約

乳がん県民公開セミナー in 水戸 プログラム 日時平成 23 年 10 月 2 日 ( 日 )14:00~16:00 場所茨城県開発公社 3F 大会議室 ( 水戸市笠原町 ) 14:00 開会 14:00~14:05 あいさつ水戸医療センター副院長植木浜一先生 第一部 講演テーマ 乳癌

記入方法

配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 の相対生存率は 1998 年以降やや向上した 日本で

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妊よう性とは 妊よう性とは 妊娠する力 のことを意味します がん治療の影響によって妊よう性が失われたり 低下することがあります 妊よう性を残す方法として 生殖補助医療を用いた妊よう性温存方法があります 目次 はじめにがん治療と妊よう性温存治療抗がん剤治療に伴う卵巣機能低下について妊娠の可能性を残す方

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32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

乳癌 : 患者の手引き ESMO 診療ガイドラインに基づいた患者向け情報 日本語訳版発行にあたり 国を挙げて がん対策が進められています 基本計画に沿い 様々な施策が計画 実施されていますが その取り組むべき施策のひとつに 診療ガイドラインの作成と普及 があげられています これまで 診療ガイドライン

乳がん はじめに 乳がんは 乳腺に発生する悪性腫瘍で 日本人女性の最も患う可能性 ( 罹患率 ) の高いがんです 20 年ごとに2 倍に増加し 現在 1 年間に9 万人以上の女性が乳がんにかかり 1.5 万人以上が乳がんで亡くなっています しかも 罹患率 死亡率ともに増加し続けています 日本人女性の

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ANSWER BREAST CANCER 自分の病気を理解するために 担当医に質問してみましょう 私の乳がんは どのようなタイプで 病状はどのようなものですか 病理検査の結果を 説明してください 私のがんは どの病期 ステージ ですか がんはリンパ節やほかの 臓器にも広がっていますか 治療の選択肢

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ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

はじめに 当院では 乳腺専門医とともに 看護師や薬剤師 他科のスタッフがチームを組み それぞれの専門医的な立場から乳がん患者さんのケアにあたっています あなたは今 不安な気持ちで一杯かもしれません しかし あなたと同じような乳房の治療を受けた患者さんはたくさんいらっしゃいます そして その多くの方が

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

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Transcription:

最新 乳癌の薬物治療 患者さん 1 人ひとりにあった個別化治療 市立函館病院乳腺外科科長 鈴木伸作

乳がんとは何か 統計 定義 種類

乳がんの統計 罹患率

乳がんの統計 死亡率

乳房の構造 小葉 胸筋 乳腺 乳管 乳管開口部 肋骨 クーパー靭帯 脂肪組織

がんとは がん細胞分裂回数 1 個 1μg 1mg 1g 1kg 10 回転移開始 20 回 30 回触知可能 40 回

乳がんの定義

乳がんの種類 非浸潤がん ; がん細胞が増え続けるが乳管でと止まっている状態 浸潤がん ; がん細胞が乳管から外に出て 周りに広がった状態

乳がんの診断 画像診断 細胞診 生検

画像診断 画像診断で重要なものはマンモ グラフィーと超音波検査です その他としては CT や MRI PT 検 査などがあります 最近 MRI は乳癌の診断で重要な 位置を占めるようになってきており ます

マンモグラフィ マンモグラフィと は乳腺専用のレ ントゲン検査のこ と 触れることの できない乳癌も 見つけることが できます

超音波検査 超音波検査では 腫瘤の中の状態 がわかり 良性と 悪性の違いはも とより 組織型も ある程度判別で きます

MRI 磁石を使用して 乳腺内を画像化する検査です 造影剤を使用し その染まり方によって 良悪性の鑑別ができます また 癌の広がりを調べるのにも適しており 立体で表示することもあります

細胞診 生検 穿刺吸引細胞診 細い針で細胞を吸い取り スライドガラス上に吹きつけたものを顕微鏡で検査する 情報量は少ないが浸襲も少ない 生検 (Biopsy) 組織のかたまりをとって それを薄くスライスしたものを顕微鏡で観察する 情報量が多いが浸襲は大きい 針生検情浸報 マンモトーム生検襲量 摘出生検

穿刺吸引細胞診 専用の吸引ピストル用いた細胞採取 エコーガイド下の細胞採取

針生検 側孔 ( 横に開いた穴 ) にはまり込んだ組織を二重になった針で切り取り 組織を採取する

最終診断 画像診断と細胞診 組織診が診 組織診 一致したときのみ乳癌と診断さ れる 画像診断と細胞診 組織診の 結果が一致しないときは 検査 をくりかえしたり 経過を見ると いうことが必要になります

乳がんの治療 手術 放射線 薬物療法

手術療法 大きくは乳房切除術と乳房温存手術に分けられます 乳房切除術には胸筋合併乳房切除術と胸筋温存乳房切除術があります 乳房温存手術には扇状部分切除と円状部分切除があります 腋窩リンパ節に対しては腋窩郭清術とセンチネルリンパ節生検とがあります

乳房切除術

乳房温存手術

日本の手術術式の動向

日本の手術術式の動向 80 70 60 50 40 30 20 10 0 拡大乳房切除術乳房温存手術ハルステッド手術胸筋温存乳房切除術

切除術と温存手術 乳がん手術 症例数 70 60 50 40 30 20 10 0 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 年 乳房温存胸筋温存定型手術

放射線療法 放射線治療はがん細胞が放射線の影響を受けやすいことを利用し 正常細胞は傷つけずがん細胞だけを殺す治療です 乳房温存手術の後 乳房切除術の後 骨などの再発 転移性乳がん治療

乳がんの薬物治療 個別化治療

乳癌は全身病 以前は乳癌は局所病と考えられ 他 に転移する前に大きく取れば治ると考 えられていた 現在は癌ができた早い段階で 癌の癌の 芽 が全身のどこかに広がっており 乳癌と診断されたときには乳房以外 にも 癌の芽 があるかもしれない

乳癌は全身病 実際 原発性乳癌の 30% に 骨髄微小 転移を認め 認めた患者の予後は悪 かったが 全員が再発する訳ではな かった 転移が判明している乳癌患者の血液中 には 10ml あたり 2 個以上のがん細胞 が見られた患者は 60% にのぼった

薬物療法 薬物療法は乳がん = 全身病との考え に基づき局所治療では治療できない 部位の治療を行うものです 内分泌療法 化学療法 分子標的療法

個別化治療 同じ疾患に対し 個々の状態に合わせて治療すること 今までは 年齢や合併症 癌の大きさリンパ節転移の有無などによって個別化を図ってきた 現在は 乳癌の個々の性格にあわせ 現在は 乳癌の個々の性格にあわせ 一番効果でる薬物を選択し治療すること

個別化治療 リンパ節転移 乳癌 乳癌

薬物療法の変遷 ホルモン剤 抗癌剤 タモキシフェン CMF LH-RH アゴニスト アンスラサイクリン 第 2 世代 AI 剤 タキサン 第 3 世代 AI 剤 トラスズマブ

内分泌療法 乳癌はエストロゲン依存性に増殖するため エストロゲン産生の抑制や作用の阻害を行う治療である 視床下部ゾラデックス 卵巣下垂体 A フェマーラ タスオミン タスオミン 乳癌 副腎 フェマーラ A

内分泌療法 LH-Rha,AI 剤 R R R R R R R R R R R

内分泌療法タモキシフェン T T R R R R T T T R T T T T T R R R T T T T T R R R R T T T T T T T R R T T

内分泌療法の個別化 乳癌全患者 ホルモン感受性あり 70% 感受性なし 30% 閉経前 35% 閉経後 65% タモキシフェン +LH-RHa アロマターゼ阻害剤

新規内分泌療法 フルベストラント 2011 年 11 月に薬価収載された 乳癌治療に登場した初めてのSelective strogen Downregulator(SRD) エストロ ゲン受容体へのエストロゲン結合を阻害するだけでなく 受容体そのものも減少させる 進行 再発乳癌の二次治療に有効性が示されています アロマターゼ阻害剤などが効かなくなった癌に対しても効果がある

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化学療法 化学療法とは 抗癌剤を用いて直接的に癌細胞の遺伝子 (DNA) に働き がん細胞を死滅させる方法である そのため 分裂が盛んな骨髄細胞 毛母細胞 粘膜細胞への影響が避けられず 腫瘍選択性は必ずしも高くない

化学療法 現在保険上使用可能な抗癌剤は約 20 種類存在している 当科ではそのうち16 種類を使用して治療にあたっている アンスラサイクリン系 タキサン系 (DOC PTXetc) 5FU 系 ( ゼローダ TS1) その他 ( MMC GM CPT11 VNRetc)

化学療法の個別化 現在 化学療法の個別化は進んでいない ホルモン受容体の有無 HR2 発現の有無に合わせ リンパ節転移の有無 増殖因子の有無などによって個別化を図っている 術前化学療法 術後化学療法では アンスラサイクリン ± タキサン系を投与する 悪性度が低いと考えられるときには どちらか単独で使用することも多い 再発では なるべく多くの薬剤を使用するようにしている

新規抗癌剤 ゲムシタビン ( ジュムザール ) 2010 年使用開始 ナブパクリタキセル ( アブラキサン ) 2011 年使用開始 エリブリン ( ハラヴェン ) 2011 年使用開始 カルボプラチン ( バラプラチン ) 2011 年使用開始

ナブパクリタキセル 人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させ 平均 130nmにナノ粒子化したもの アレルギーや副作用の軽減の他に がん細胞内への薬剤移行が高まり 奏効率も向上した

エリブリン 海綿動物のクロイソカイメンより抽出された物質で日本で発見された 海外とほぼ同時期に発売された薬で 再発後のサードライン以降の薬の中で唯一生存率を改善した薬剤として注目されている

分子標的治療 分子標的治療は 癌細胞に特有の性質を見つけ そこを狙い撃ちする治療法です 現在乳がんでは 増殖に必要なHR2 受容体をブロックする薬が使用されてます トラスツズマブは平成 20 年 2 月から術後再発予防目的に使用可能となり ラパニチブは再発乳癌で使用可能となっております

抗 HR2 治療 HR2 HR1 HR3 HR4 T T T T T L L

抗 HR2 治療の個別化 乳癌全患者 HR2 陽性 20% HR2 陰性 80% R 陽性 50% R 陰性 50% 化学療法 + 抗 HR2 療法 ホルモン療法 + 化学療法 + 抗 HR2 療法

新規分子標的治療 ベバシズマブ VGF に対するヒト化モノクローナル抗体である 血管新生の阻害の他 腫瘍血管を退行 正常化し 血流を減少させ 腫瘍を兵糧攻めにする薬剤 今までは腎癌 大腸癌などで使用され今腎癌 大腸癌な使用ていた

個別治療 ホルモン受容体の有無 HR2 蛋白の有無 Ki67 などの増殖因子

乳癌のサブタイプ R 陽性 ( 高 ) HR2 陰性 Ki67 低値 Luminal A R 陽性 ( 低 ) HR2 陰性 Ki67 高値 Luminal B R 陽性 HR2 陽性 R 陰性 HR2 陽性 R 陰性 HR2 陰性 Luminal B HR2 type HR2 type Ti Triple negative

サブタイプ別治療 Luminal A Luminal B Luminal B HR2 type HR2 type Ti Triple negative 内分泌療法 ± 化学療法内分泌療法化学療法抗 HR2 療法抗 HR2 療法化学療法化学療法

ホルモン感受性のある 化学療法 化学療法追加 内分泌療法単独 組織学的グレード 3 1 増殖指標 Ki67 R PgR 陽性割合 高い低い 低い高い 腋窩リンパ節転移 4 個以上 0 個 腫瘍周囲脈管浸潤病理学的浸潤径 広汎 >5cm なし 2cm 以下 患者の意向 希望あり 希望なし

Luminal A の治療 内分泌療法を中心とした治療 閉経前 ; 術前療法の場合は 化学療法を行う 術後は LH-RHa(2 年 )+ タモキシフェン (5 年 ) 閉経後 ; 術前術後ともアロマターゼ阻害剤を服用 術後は 5 年服用 化学療法を追加する場合は リスクに応じて アンスラサイクリン and/or タキサン系を投与する

Luminal B の治療 内分泌療法を中心とするが なるべく抗癌剤を追加する 閉経前 ; 化学療法 LH-RHa (2 年 )+ タモキシフェ (5 年 ) 閉経後 ; 化学療法 アロマターゼ阻害剤を 5 年服用 化学療法を追加する場合は リスクに応じて アンスラサイクリン and/or タキサン系を投与する

Luminal B HR2 type の治療 抗癌剤治療 抗 HR2 治療 内分泌療法のすべてを行う 閉経前 ; アンスラサイクリン+タキサン系 + ハーセプチン LH- RHa (2 年 )+タモキシフェン (5 年 ) 閉経後 ; アンスラサイクリン+タキサン系 + ハーセプチン アロマターゼ阻害剤を 5 年服用 術前療法は抗癌剤で行う ハーセプチンは全部で 1 年間投与する

HR2 type の治療 アンスラサイクリン + タキサン系 + ハーセプチンを基本とする タキサンとハーセプチンはなるべく同時投与を行う 高齢の場合は UFTの服用や単独投与も行っている 術前療法も同じ

Triple negative の治療 アンスラサイクリン + タキサン系で治療する タキサンは weeklyptx を基本としている 遠方の場合は3wDOCも考慮にいれている 高齢の場合は UFT 単独投与も 高齢の場合は UFT 単独投与も行っている

術前薬物療法 乳房温存手術を希望するが腫瘍 径によりできない早期乳癌や局所 進行乳癌 炎症生乳癌に対しての 標準治療である 術前内分泌療法 術前化学療法

術前内分泌療法 閉経前ではエビデンスが少なく勧 められないが 閉経後では 予後 の影響ははっきりしないが 温存 率は向上する タモキシフェン アロマターゼ阻害剤

術前内分泌療法 閉経後術前内分泌療法としては タモキシフェンよりレトロゾールの方が効果が高く アナストロゾールでは効果は同等とされている このため 第一選択ではレトロゾールを使用する 期間は3 か月以上 できれば最大効果が得られるまで投与する

術前内分泌療法

術前化学療法 NSABP B-18 試験において 術前 化学療法と術後化学療法の比較 がなされ 生存期間に差がなく 温 存率に優れていた アントラサイクリン系 タキサン系 トラスツマブ

術前化学療法 術前化学療法で使用するレジメンは FC100 タキサン系を基本としている HR2 陽性の場合はハーセプチンを追加しセプチンを追加し タキサンはweeklyPTXを使用している Luminal タイプで若年者 遠方の方の時は方 3wDOCを主に使用している

術前化学療法

進行再発乳癌における 薬物療法 初診時に遠隔転移を認める例は10% 術後に再発する例は30% である 治癒は困難であるため 基本的には延命緩和治療である 内分泌療法 化学療法 分子標的療法 その他

進行再発乳癌における 内分泌療法 内分泌感受性があるluminlタイプが適応になる 閉経前ではLH-RHa+タモキシフェンが基本となる その後は トレミフェン MPA アロマターゼ阻害剤を使用していく 閉経後はアロマターゼ阻害剤 トレミフェン MPA を使用していく Luminl B HR2タイプの場合は化学療法でコントロール後内分泌療法を行う場合もある

進行再発乳癌における 化学療法 ホルモン感受性陰性 ホルモン療法無効例 生命の危機が差し迫っている場合などが適応になる 1st 2nd lineはアンスラサイクリン系 タキサン系薬剤を使用する 3rd line 以降としては カペシタピン ビノレルビン ゲムシタビンを使用する 4th line 以降ではTS1 MCC+MTX CPT11 などを使用する

進行再発乳癌における 化学療法 HR2 陽性の場合 1st lineはptx+ ハーセプチンとする 2nd lineにはカペシタピン+ラパニチブを使用する 3rd line 以降はハーセプチンと組み合わせて DOC VNR GM などを順次使用する なるべく多くの種類を使い切るように使用する

肝転移 前期後期の化学療法 前期 8 例後期 14 例検定 アンスラサイクリン系 6 例 2 例 タキソール 1 例 10 例 タキソテール 2 例 4 例 ハーセフ チン 0 例 3 例 ゼローダ 2 例 7 例 TS1 0 例 2 例 ナベルビン 0 例 9 例 CPT-11 0 例 5 例 P=0.064

肝転移生存率 期間 Kaplan-Meier 生存曲線 100 90 80 70 60 生存 50 率 40 30 20 10 0 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 生存期間 前期群 後期群 P=0.296

乳癌再発後の生存率 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 é ó äjénéû 16îNå 生存死亡

治療のバランス 手術 :7 薬剤 :2 放射線 :1

治療のバランス 手術 :2 薬剤 :6 放射線 :3