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299 P1NP 骨芽細胞 プロコラーゲン分解 Ⅰ 型コラーゲン TRACP-5b BAP OC ucoc OC 類骨 細胞活性化による分泌 1 増殖期 P1NP 2マトリックス形成 成熟期 3 石灰化期 OC 破骨細胞 肝臓 腎臓代謝 尿中 NTX CTX 血中 NTX コラーゲン断片 CTX α


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はじめに この冊子は レトロゾール錠 2.5mg アメル による乳がんのホルモン療法を受ける患者さんが 安心して治療に取り組めるように 乳がんのホルモン療法や薬の効果 副作用について解説しています 冊子を読んでもわからないことや 不安に感じることがありましたら 担当医師や看護師 薬剤師に遠慮なくご相

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Q1 骨粗しょう症とはどんな病気ですか? 1 Q2 Q3 Q4 治療が必要なのは どのような症状が現れたときですか? 骨量測定はどこで受けられますか? また どのくらいの頻度で受ければよいのですか? 2 どんな人が骨粗しょう症になるのですか? 3 Q5 骨代謝 とか 最大骨量 という言葉を耳にします

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甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

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肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

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ACOG educational bulletin. Osteoporosis. Number 246, April 1998 (replaces No. 167, May 1992).

Background 骨粗鬆症 骨量減少症 - 約 80% は女性 ( 米国 ) 骨粗鬆症による骨折 - 50 歳以上の有病女性の 40% 以上 - 骨折部位の約 15% は股関節部 股関節部骨折後 - 約 20% は死亡 (1 年以内に ) - 長期の治療 QOL の低下 骨粗鬆症によるその他の重大な合併症には 椎体の圧迫骨折 歯槽の脆弱化による貧歯などがある

Definition 骨粗鬆症 - 骨量減少 骨組織の微細構造の破壊を特徴とする全身性の骨疾患骨の脆弱化 骨折の危険性が増加 以前まで 骨粗鬆症の診断は骨折が生じてから下されることが多かった 骨量測定法の進歩により 重篤な骨折が生じる前に骨粗鬆症の可能性を診断できるようになった

WHO 基準 低骨密度 骨量減少 骨密度が若年成人平均値 ( YAM ) より 1~2.5 SD 低下した状態 骨粗鬆症 骨密度が YAM より 2.5 SD 以上低下した状態 脊椎や股関節において 骨量が 1SD 減少すると骨折の危険性がほぼ 2 倍に上昇

Pathophysiology 骨のリモデリング 骨表面の骨芽細胞と破骨細胞の働きによる骨の形成と吸収 リモデリングを繰り返し 日々の活動などによって生じたダメージを修復 Remodeling cycle ( 4 phase ) 2~3 ヶ月 1 resting phase 2 resorption phase 3 reversal phase 4 formation phase

Remodeling cycle 1 Resting phase 2 Resorption phase 3 Reversal phase 4 Formation phase 骨髄からの幹細胞が細胞表面に接着し 破骨細胞に分化 破骨細胞が酸と蛋白質分解酵素を用いて骨を吸収 間質幹細胞が骨の表面に接着し 骨芽細胞に分化 骨芽細胞がオステオイド ( 蛋白基質 ) を用い 新しい骨を形成し 石灰化

骨の成分 骨の構造 骨 無機成分結晶成分 ( ハイドロキシアパタイト ) 非結晶成分 ( Ca P ) 骨の強靭さ 有機成分 Ⅰ 型コラーゲン ( 有機基質の 90% ) 非コラーゲン蛋白 ( オステオカルシン プロテオグリカン ) 骨の弾力性

Calcium Homeostasis Vit. D 皮膚で合成 肝 腎で代謝 活性化小腸からの Ca 吸収を促進 bone 石灰化 plasma intestine 吸収 Ca 2+ Ca2+ Ca2+ 骨吸収分泌 CT PTH 分泌 再吸収 Vit. D PTH & Vit. D kidney PTH 骨からの Ca 放出を促進腎尿細管からの Ca 再吸収を促進 urine カルシトニン ( CT ) 甲状腺傍濾胞 C 細胞より分泌破骨細胞に作用し 骨吸収を抑制 血清 Ca 高血清 Ca 低 PTH 分泌抑制 OC 分泌促進 PTH 分泌促進

皮質骨と海綿骨 皮質骨 骨の外郭を形成 緻密な構造をもつ全骨量の 75% を占める 海綿骨 小さな柱のように分散し その間のスペースが骨髄になる柱状の構造物は骨梁と呼ばれる全骨量の 25% を占める椎体や骨盤 長管骨の末端に多く分布する疎な多孔質構造のため 骨の表面積のほとんどが海綿骨である リモデリングの回転率は皮質骨より海綿骨の方が高い

骨量 骨量のピーク 男女ともほぼ 30 歳 ピーク後 年間 0.4% の骨を喪失 さらにこれに加え 女性は 閉経後 5~8 年以内に皮質骨の 2% 海綿骨の 5% を失う 骨粗鬆症の要因 Aging 破骨細胞と骨芽細胞のバランスが破綻骨の損失過剰 Menopause 破骨細胞による骨の吸収が亢進骨の損失過剰 Postmenopause 骨芽細胞の活動が抑制骨の形成低下

Factors Affecting Bone Mass 骨量に影響する因子 ホルモン 生活様式 習慣 栄養 薬剤 骨代謝疾患など 1 ホルモン エストラジオール テストステロン プロゲステロン コルチゾール 甲状腺ホルモン 成長ホルモン インスリンなど エストロゲンの骨保護作用 PTH の骨に対する感受性を抑制 腎での活性型 Vit. D の合成を促進 腸管での Ca 吸収を促進 骨吸収を抑制 腎からの Ca 再吸収促進 血中 Ca 濃度上昇 骨吸収性サイトカイン ( IL- 1 IL- 6 ) 産生を抑制骨芽細胞からの TGF- β IGF- 1 分泌を促進破骨細胞のアポトーシスを促進 骨吸収抑制作用骨形成作用 ( 閉経と骨代謝産婦人科治療 vol.84 no.4-2002/4)

2 生活様式と習慣 喫煙 アルコール 過度のカフェイン摂取 骨量減少股関節部骨折の危険性上昇 3 カルシウム摂取 小児期 思春期 老年期における骨量の維持に重要 ( 特に 成人の股関節部 ) 低エストロゲン状態の女性は腸管からのカルシウム吸収が低下 カルシウムバランスを維持するためよりカルシウム摂取が必要 4 ビタミン D カルシウム代謝とミネラルバランスの維持に重要 食事からの摂取不足 日光に当たる時間の不足 ビタミン D 不足

5 薬剤 ステロイド 骨に直接作用し 骨形成を阻害 腸管からの Ca 吸収を抑制 腎での Ca 分泌を促進 高用量のステロイド投与により治療初年で 10% の骨量減少 チロキシン ( T 4 ) 骨量を減少させ 骨粗鬆症を引き起こす ( 甲状腺機能亢進症においても骨量は減少 治癒後も数年間骨量の減少は続く ) ヘパリン 長期に渡るヘパリンの投与で 治療を受けている女性の 1/3 に骨量の減少が見られる

6 代謝性骨疾患 多くの代謝性骨疾患で骨量の減少が見られる < 代表的骨疾患の Laboratory data> 骨粗鬆症骨軟化症甲状腺機能亢進症腎不全骨 Paget 病 血清 Ca 血清 P ALP

7 続発性骨粗鬆症 内分泌疾患 血液疾患 消化器疾患 結合組織疾患に骨粗鬆症が続発することがある 内分泌疾患 Cushing 病 甲状腺機能亢進症 副甲状腺機能亢進症 糖尿病など 血液疾患 リンパ腫 多発性骨髄腫など 消化器疾患 ビタミン D の作用の障害 カルシウム吸収の減少 全身性疾患や胃腸の外科的切除による吸収不良症候群が主な原因 結合組織疾患 Marfan 症候群 Ehlers- Danlos 症候群など

Screening 現在はまだ骨密度測定におけるガイドラインは統一化されていない APGO の示すガイドラインにおいて HRT を続けていない女性は 骨粗鬆症のリスクを持っている場合骨量を測定したほうがよい * HRT を受けている閉経後の女性は骨量を常に測定する必要はない と推奨されている 現在のところ 骨量測定は 骨粗鬆症の進展の危険性を個人単位でスクリーニングする最高の手段

更年期女性 HRT を始めた女性 HRT を受けていない女性 HRT を続けた女性 HRT を中止した女性骨粗鬆症の検索 予防的治療を継続する危険因子 + 危険因子 - *HRT hormone replacement therapy 骨密度測定 経過観察 骨粗鬆症のスクリーニングアルゴリズムの一例 骨密度正常 経過観察 骨密度基準値以下 ( 骨粗鬆症 ) ビスフォスフォネートやカルシトニンを用い治療を開始

Diagnosis DXA (dual-energy X-ray absorptiometry) Bone mass test (Z- score, T- score) Bone density instrument Biochemical markers Ultrasound bone mass measurement

DXA 二重エネルギー X 線吸収測定法 (dual-energy X-ray absorptiometry) 利点 現在最も推奨されている骨量測定法 検査が2~5 分ででき 放射線への曝露も短時間で済む スクリーニングとして 骨折の危険性の検索に適している 上腕骨のような末梢側での骨量測定が可能 欠点 骨棘や大動脈の石灰化 関節炎などにおいて骨密度が誤って高値になる場合がある

骨量測定の評価法 ( Bone mass test ) 1 絶対骨量 :g/cm 3 中に換算した骨量 2 Z- score : 性別や年齢の平均値と比較した相対骨量 3 T- score : 平均最大骨量と比較した相対骨量 (T- score of -2 : 骨量が平均最大骨量と比較し -2SD であることを示す ) T- score of -2 骨折の危険性ほぼ 4 倍 骨密度測定 ( Bone density test ) WHO の基準を用い 骨密度は評価される最近は骨密度測定に加えて 身長も測定したほうがよいと言われている 成人時の最大身長より 1 inch ( 2.54cm ) 以上低下 骨粗鬆症の疑いあり

骨代謝マーカー 骨の代謝回転を見るのに有効 骨形成マーカー 血清 : 骨型アルカリフォスファターゼ ( B-ALP ) オステオカルシン ( OC ) Ⅰ 型プロコラーゲンC 末端ペプチド ( PICP ) Ⅰ 型プロコラーゲンN 末端ペプチド ( PINP ) 骨吸収マーカー血清 : 酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ ( TRAP ) 尿 : デオキシピリシノリン ( Dpy ) Ⅱ 型コラーゲンN 末端ペプチド ( NTx ) Ⅰ 型コラーゲンC 末端テロペプチド ( CTx )

Prevention 骨粗鬆症の予防で最も大事なことは 最大骨量 (PBM) を維持するよう努力すること 閉経期においての骨量減少を最低限にとどめること 代表的な予防法 1 カルシウム製剤 2 ライフスタイルの改善 3 SERM ( 選択的エストロゲン受容体作動薬 )

カルシウム摂取による骨粗鬆症の予防 Ca 必要最低量 (mg/day) 小児 青年期 1~5 歳 小児 6~10 歳 成人女性 ( 閉経前 ) 成人女性 ( 閉経後または低エストロゲン状態 HRT 治療中 ) 成人女性 ( 閉経後または低エストロゲン状態 HRT 未施行 ) 800 800~1200 1200~1500 1000 1000 1500 カルシウムサプリメントは最大骨量を維持するために重要 カルシウム摂取が不十分だと 加齢による骨の喪失が加速 炭酸カルシウムよりもクエン酸カルシウムの方が吸収が良く 効果的

ライフスタイルによる骨粗鬆症の予防 Weight - bearing exercise 骨芽細胞を刺激 筋量の増加 新しい骨形成 骨量増加 閉経期の女性 22 ヶ月間の weight - bearing exercise 骨密度 6.1% 上昇 その他 転倒を避ける 喫煙を控える アルコール摂取量を減らす カフェイン摂取量を減らす 骨折の危険性低下

SERM による骨粗鬆症の予防 SERM Selective estrogen receptor modulator 選択的エストロゲン受容体作動薬 Raloxifene エストロゲンのアゴニストとして 骨肝 破骨細胞の機能を抑制 LDL - コレステロールを減少 Raloxifene は子宮内膜に対して エストロゲンアゴニストとしての作用を持たない Raloxifene は HRT の副作用である子宮よりの不正出血 そして癌化を引き起こす可能性が低い

Treatment Calcium Vitamin D HRT ( estrogen ) Bisphosphonates ( alendronate, etidronate ) Calcitonin SERM ( raloxifene, tamoxifene ) progestin, fluoride, parathyroid hormone * etidronate 骨粗鬆症の治療の目的では FDA によって未承認 * tamoxifene 骨粗鬆症の予防という目的の薬剤として推奨されていない * fluoride USA において使用が推奨されていない * parathyroid hormone 骨粗鬆症の治療の目的では FDA によって未承認

Calcium 骨に対する効果 : カルシウム欠乏を防ぎ 骨量減少を抑制骨折に対する効果 : ビタミンDと併用することで骨折のリスク減少適応 : 青年期 授乳期の女性 低エストロゲン状態の女性副作用 : 高カルシウム血症 Vitamin D 腸管からのCa ++ の吸収を増加させる適応 : 70 歳以上の女性副作用 : 高カルシウム血症 * 高齢者に用いる場合 overdose で腎不全を招く恐れがある

Bisphosphonates ビスフォスフォネート類 リン酸化合物の一種 強力な骨吸収抑制作用 Alendronate ( アレンドロン酸 / フォサマック R ) 骨のハイドロキシアパタイトに強力に接着破骨細胞の機能を抑制 骨吸収を阻害閉経期の女性の骨密度上昇 骨折の危険性低下 閉経期の女性 Alendronate にて 3 年間治療 大腿骨大転子の骨量増加 ( 6~8% ) 椎骨の骨量増加 ( 6~9% ) 椎骨骨折が 48% 減少

Alendronate の利点 欠点 利点 骨の表面に強力に接着し 数年もの間 骨から離れない 半減期が長いため 服用を中断してもすぐには骨量の減少は起きない (10 年以上 ) 欠点 Alendronate が吸収されるまで 30 分ほどかかり その間飲食は避けなければいけない 服用後は腹部の不快感が生じることが多く その症状を軽減するために 座位 または立位をとる必要がある 主な副作用として 腹痛 筋肉痛がある まれに 上部消化管出血を伴う場合がある

HRT (hormone replacement therapy) 骨粗鬆症の危険性のある女性に 治療の第一歩として用いられる 作用 骨量の減少を抑制する骨折の発生を防ぐ身長の低下を予防する 閉経期または閉経後すぐにエストロゲンによる HRT を開始 約 50% の女性において 閉経後初期の骨量減少を予防可能 Risk 虚血性心疾患 脳卒中 乳癌 静脈血栓塞栓症 胆嚢疾患 尿失禁など 2002 年 8 月の ACOG では ビスフォスフォネート製剤や SERM の使用を推奨し HRT を施行する際には可能な限り最短期間で 最小有効量を用いるよう提唱している

Calcitonin カルシトニン 甲状腺の傍濾胞 C 細胞などから分泌されるホルモン破骨細胞を抑制して 骨吸収を阻害する骨粗鬆症に伴う疼痛のコントロールにも用いられている < 問題点 > ペプチドホルモンであるため注射薬しかなかった 現在 便利な経鼻スプレーによる注入法が用いられるようになった 効果 骨量の増加 椎骨骨折の危険性低下 副作用 鼻炎

progestins 破骨細胞を抑制し 骨吸収を阻害する 低エストロゲン状態の女性に対して 骨吸収マーカーを低下させ骨密度を維持する 副作用 HDL- コレステロールの減少 LDL- コレステロールの増加 fluoride 新しい骨を形成する骨芽細胞を刺激する無機物 高用量 密だが構造的に弱く折れやすい骨ができる低用量 骨密度が上昇し 骨折の危険性の低下 副作用 上腹部不快感 下肢の痛みなど parathyroid hormone 低用量の副甲状腺ホルモンの投与により 骨の成長が刺激される

Summary 女性は閉経前より 骨粗鬆症の予防のために 十分な運動とカルシウム摂取を継続するべきである 閉経期の女性は骨量の減少と骨粗鬆症の進展の抑制を目的として HRT を開始したほうがよい 骨密度の低い女性や すでに骨粗鬆症と診断された女性は HRT に加え ビスフォスフォネートやカルシトニンによる治療がすすめられる

ACOG educational bulletin. Osteoporosis. Number 246, April 1998 (replaces No. 167, May 1992). 6 年 90 番江浦瑠美子