第 10 回福岡大学病院と院外薬局とのがん治療連携勉強会 オピオイド 福岡大学病院薬剤部 岡崎美和
本日の講演内容 オピオイドの特徴 使用上の注意 オピオイドの副作用と対策 オピオイドローテーション レスキュードーズ オピオイドの服薬指導の要点 まとめ
WHO の 3 段階除痛ラダー STEP 3 STEP 1 軽度の痛み STEP 2 軽度から中等度の強さの痛み リン酸コデイン オキシコドン トラマドール 中等度から高度の強さの痛み モルヒネ フェンタニル オキシコドン 非オピオイド鎮痛薬 ( アセトアミノフェン,NSAIDs など )± 鎮痛補助薬
( がん疼痛の薬物治療に対するガイドライン 2010 年版より ) オピオイドの作用機序 オピオイド : 中枢神経のオピオイド受容体に作用して効果を表す薬の総称
モルヒネの特徴 ( 経口 ) 徐放剤 : MSコンチン 錠 カディアン カプセル モルペス 細粒 MSツワイスロン カプセル ピーガード 錠 パシーフ カプセル速放剤 : 塩酸モルヒネ 末 オプソ 内服液 ( 注射 ) 塩酸モルヒネ 注 ( 外用 ) アンペック 坐剤 他のオピオイドの鎮痛効力比の基準となる 世界標準薬で古くから使用されており 使用経験 エビデンスが最も豊富 剤形が豊富
モルヒネの代謝 経口投与 肝臓 M3G M6G などの代謝物 血中 副作用 モルヒネ 鎮痛効果! 持続静注 持続皮下注 モルヒネ 代謝物の濃度が低く副作用がより少ない バイオアベイラビリティは約 20-25% と低い ( 初回通過効果大 ) グルクロン酸抱合 約 44-55%:M3G (morphine-3-glucuronide) 約 9-10%:M6G (morphine-6-glucuronide) M6G: 強力な活性代謝物 代謝物 未変化体ともに腎 ( 尿中 ) から排泄される に代謝される大部分が尿中に排泄
モルヒネの主な薬理作用の有効用量の比較 便秘や嘔気に対する副作用対策 オピオイド開始と同時に実施する!! 鎮痛に必要な用量の 10.4 倍 鎮痛に必要な用量の 1/10 鎮痛に必要な用量の 1/50 出典 : オピオイド治療 鎮痛薬 オピオイドペプチド研究会編エルゼビア ジャパンを一部改変
オキシコドンの特徴 ( 経口 ) 徐放剤 : オキシコンチン錠 (5 10 20 40mg/ 錠 ) 速放剤 : オキノーム散 (2.5mg 5mg/ 包 ) ( 注射 ) パビナール注 ( 複合剤 ) 鎮痛効力比 : モルヒネの1.5~2 倍 バイオアベイラビリティは約 60%( モルヒネより高い ) 腎機能障害のある患者でも モルヒネに比較して安全 ゴーストピルが排泄されることがある 事前に説明
フェンタニルの特徴 ( 注射 ) フェンタニル 注 ( 外用 ) デュロテップ MTパッチ フェントス テープ ワンデュロ パッチ モルヒネやオキシコドンと比較して 便秘や悪心 嘔吐の発現率が低く程度も軽い 開始時や増量時には呼吸抑制に注意が必要 フェンタニル貼付剤の使用上の注意貼付部位 : 胸 腹 上腕 大腿 貼付部位の温度上昇に注意!! 貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し 過量投与になり 死に至るおそれがある発熱時 入浴の温度 時間 暖房器具 ( こたつ 電気毛布等 ) デュロテップ MT パッチ フェントステープ ワンデュロパッチ添付文書より
オピオイド受容体への親和性と副作用 μ1 受容体 μ2 受容体 嘔気 嘔吐 便秘 眠気 モルヒネ + + + + + + + オキシコドン + + + + + + + フェンタニル 高用量 ± + + μ1 受容体 : 鎮痛など μ2 受容体 : 便秘 嘔気 嘔吐 呼吸抑制など 第 2 回日本緩和医療薬学会教育セミナーより
デュロテップ MT パッチ フェントステープ ワンデュロパッチ添付文書より フェンタニルの特徴 ( 注射 ) フェンタニル 注 ( 外用 ) デュロテップ MTパッチ フェントス テープ ワンデュロ パッチ モルヒネやオキシコドンと比較して 便秘や悪心 嘔吐の発現率が低く程度も軽い 開始時や増量時には呼吸抑制に注意が必要 フェンタニル貼付剤の使用上の注意貼付部位 : 胸 腹 上腕 大腿 貼付部位の温度上昇に注意!! 貼付部位の温度が上昇すると過量投与になり 死に至るおそれがある発熱時 入浴の温度 時間 暖房器具 ( こたつ 電気毛布等 ) 効果が出始めるまでに時間がかかる!!
主なオピオイドの相互作用 主なオピオイド / 併用 中枢神経抑制剤 ワルファリン μ 受容体の部分作動薬 グルクロン酸抱合抑制剤 (1) CYP2D6 阻害剤 (2) CYP3A4 阻害剤 (3) モルヒネ オキシコドン フェンタニル 主な機序 中枢抑制作用の増強 不明 受容体結合の変化 肝代謝の変化 肝代謝の変化 肝代謝の変化 : 併用薬の作用増強 / 減弱 : オピオイドの作用増強 / 減弱 (1) シメチジン メトトレキサート シスプラチン (2) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) (3) イトラコナゾール アミオダロン クラリスロマイシンジルチアゼム フルボキサミン
トラマドールの特徴 オピオイドμ 受容体の活性化作用とノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害作用 鎮痛効力比はモルヒネの1/5 代謝にはCYP2D6とCYP3A4が関与 医療用麻薬には指定されていない 有効限界あり
リン酸コデインの特徴 脱メチル化コデインモルヒネ ( 約 10%) 鎮痛効果 : モルヒネの約 1/10 コデイン1 日 100-120mg モルヒネ1 日 10mg 鎮咳薬 止痢薬としても使用される 原末 10 倍散 (10%) 麻薬 100 倍散 (1%) 麻薬ではない
アセトアミノフェン 胃腸障害 腎障害が少ない 副作用でNSAIDsの使用が困難な時に用いる 安全性 有効性 経済性で優れる 抗炎症作用はないが鎮痛作用と解熱作用あり 抗血小板抑制作用がみられない 1 日上限量 1500mg 4000mgへ
オピオイドの副作用 副作用の種類便秘嘔気 嘔吐眠気 ふらつき感排尿障害発汗かゆみ口内乾燥 発現時期反復投与時投与初期投与初期 増量時 投与初期 ~ 反復投与時 主に投与初期投与初期 ~ 反復投与時 便秘 嘔気 嘔吐対策が オピオイド継続で最も重要! 日本緩和医療学会がん疼痛治療ガイドライン作成委員会編 : がん疼痛治療ガイドライン 2000 年版より
オピオイドの副作用と対策 便秘 嘔気 嘔吐
オピオイドにより便秘の起こる機序 高瀬久光 加賀谷肇 : がん看護 2008 年 1 月より一部抜粋
分類薬剤名主な商品名剤形用法用量作用機序 浸透圧性 大腸刺激性 その他 塩類 糖類 適応外使用 酸化マグネシウムマグミット ラクツロースモニラック センナ 錠 / 細粒 液 末 アローゼン 顆粒 センノシドプルゼニド 錠 ピコスルファートナトリウム ビサコジル ラキソベロン 錠 液 テレミンソフト 坐 グリセリン各社浣腸 炭酸水素ナトリウム / 無水リン酸水素新レシカルボン 坐二ナトリウム 便秘の治療薬一覧 1 日 1-2g 2-3 回に分割 便の水分保持量を高めることで便を柔らかくする 便の容積を大きくし 腸粘膜を刺激 1 日 10-60mL 2-3 回に分割浸透圧性作用 腸内細菌で分解さ 1 日 6.5-39g れ蠕動を亢進 2-3 回に分割 1 日 1-3g 2-3 回に分割大腸のアウエルバッハ神経叢を刺激して 腸の蠕動を亢進 1 回 12-48mg 就寝前または起床時と就寝前 1 日 5-15mg 2-3 回に分割大腸で分解され 蠕動亢進および 1 回 5-30 滴水分吸収阻害 2-3 回に分割 1 回 10mg 蠕動亢進および水分吸収阻害 1 日 1-2 回頓用 1 回 10-150mL 腸管壁の水分吸収に伴う刺激作頓用用により蠕動を亢進 1 回 1-2 個頓用 炭酸ガスを発生し 蠕動を亢進 がん疼痛に関する薬物療法のガイドライン 2010 年版 および製品添付文書より
オピオイドの副作用と対策 便秘 嘔気 嘔吐
嘔気 嘔吐 オピオイド製剤投与開始初期あるいは増量時に生じやすい 治療に対する不安初期段階で嘔吐を経験し 疼痛コントロール不良 開始時から制吐剤を用いる ( 増量時にも ) 通常 1~2 週間ぐらいで慣れが生じる それ以降の嘔気は大半が便秘によるもの 制吐剤を減量 中止 便秘対策
嘔気の種類と作用機序 動作時の吐き気 1 日中続く吐き気 食後の吐き気 がん疼痛の薬物療法に対するガイドライン 2010 年版より
嘔気 嘔吐の治療薬一覧 分類薬剤名主な販売名剤形用法用量ジフェンヒドラミンヒスタミンH₁ 受容体サリチル酸塩 / トラベルミン 錠 1 回 1 錠 1 日 3-4 回拮抗薬ジプロフィリン 中枢ドパミン D₂ 受容体拮抗薬 プロクロルペラジンマレイン酸塩プロクロルペラジンメシル酸塩 ノバミン ハロペリドール セレネース オランザピン 糖尿病患者に禁忌 リスペリドン ジプレキサ 錠 注 1 回 5mg 1 日 1-4 回 1 回 5mg 1 日 1 回 錠 / 細粒 / 液 1 回 0.75mg 1 日 1 回 注 1 回 2.5-10mg 1 日 1-2 回 錠 / 細粒 1 回 2.5mg 1 日 1 回 リスパダール 錠 / 細粒 / 液 1 回 0.5mg 1 日 2 回 ペロスピロン塩酸塩 ルーラン 錠 1 回 4-8mg 1 日 1 回 錠 / 細粒 1 回 5-10mg 1 日 3 回ドンペリドンナウゼリン 消化管運動改善薬坐 1 回 60mg 1 日 2 回 食前または食後に投与 メトクロプラミドプリンペラン 錠 / 細粒 / 液 1 回 5-10mg 1 日 2-3 回 注 1 回 10mg 1 日 1-2 回 錐体外路障害現れやすい錐体外路障害現れにくい 保険適応外 がん疼痛に薬物療法に関するガイドライン 2010 年版 および製品添付文書より
持続痛と突出痛 レスキューとは 基本となるオピオイドが定期的に投与されている状態で痛みが残存または増強した場合に追加投与される臨時の薬 モルヒネ : 塩酸モルヒネ 末 オプソ 内服液 オキシコドン : オキノーム 散 フェンタニル レスキューの1 回量基本投与されているモルヒネの1 日量の1/6が目安徐放製剤 経皮吸収剤はレスキューには使用しない
フェンタニル口腔粘膜吸収製剤 アクレフ 200μg 400μg 600μg 800μg 即効性フェンタニル製剤 承認時までに 50.3% に何らかの副作用が認められている 主な副作用は 傾眠 (11.7%) 便秘 (9.8%) 口腔内出血 (7.0%) 口内炎 嘔吐 ( 各 6.3%) などであり 重大な副作用としては 依存性 呼吸抑制 意識障害 ショック アナフィラキシー様症状 痙攣などが認められている 2011 年 3 月 11 日に薬価収載された
オピオイドローテーションとは より好ましい反応を得るために 現在使用しているオピオイドを他のオピオイドに変更すること 目的 副作用の軽減 回避鎮痛効果の改善投与経路の変更鎮痛効果の耐性形成の回避 方法 オピオイドローテーション 換算表を参考に薬剤および投与量を変更患者の症状に応じてレスキュー投与を必ず行う高用量では 部分的なローテションを行う
オピオイドローテーション オピオイド換算表 経口モルヒネ (mg/ 日 ) 30 60 120 240 360 トラマール (mg/ 日 ) 150 300 経口坐薬経皮静脈皮下 モルヒネ坐薬 (mg/ 日 ) (20) 40 80 160 240 オキシコンチン (mg/ 日 ) 20 40 80 160 240 デュロテップMTパッチ (mg/3 日 ) 2.1 4.2 8.4 16.8 25.2 フェントステープ (mg/ 日 ) 1 2 4 8 12 ワンデュロパッチ (mg/ 日 ) 0.84 1.7 3.4 6.7 10 コデイン (mg/ 日 ) 180 レペタン坐薬 (mg/ 日 ) 0.6 1.2 モルヒネ (mg/ 日 ) 15 30 60 120 180 フェンタニル (mg/ 日 ) 0.3 0.6 1.2 2.4 3.6 パビナール (mg/ 日 ) 12 24(3A) 48(6A) 96(12A) 144(18A) トラマール (mg/ 日 ) 150 300 OPTIM 緩和ケア普及のための地域プロジェクトより一部改変
有賀悦子がん疼痛緩和 (2009) 88-90 から一部抜粋 オピオイドローテーションの手順 1オピオイドの1 日総量を計算する 2 新しいオピオイドの量を等力価比を用いて計算する 3 交差耐性が再度出現する可能性が高いため 20~30% 減量した量を1 日量として設定する ( 切り替え前に強い痛みがあるときは減量幅を少なくする ) 4 定時量を決める 5 レスキュードーズを決定する
オピオイドローテーションの一例 MS コンチン 120mg/ 回を 12 時間ごと時間を決めて服用し (2 回 / 日 ) レスキュードーズ塩酸モルヒネ 40mg/ 回を 1 日平均 3 回服用していた 副作用としてミオクローヌスとせん妄を認めたためモルヒネからオキシコドンに切り替えることとする 11 日オピオイド総量を計算定時量 120 2=240 レスキュー 40 3=120 モルヒネ全量 360mg 2 等力価量を計算 ( モルヒネ : オキシコドン=3:2) 360 2/3=240mg オキシコドン 320~30% を減量 240-20%~30% 180mg オキシコドン 4 定時量を計算約 180 2=90mg オキシコンチン 1 回量 5オキノーム を用いたレスキュドーズを設定 180 1/5~1/6=30mg/ 回 有賀悦子がん疼痛緩和 (2009) 88-90 から一部抜粋
オピオイドローテーション : 貼付剤 オピオイド製剤 フェンタニル貼付剤 ( 先行薬 ) オピオイド製剤 ( 切り替える薬剤 ) フェンタニル貼付剤デュロテップ MT パッチ フェントス テープ ワンデュロ パッチ 1 日 2 回投与の経口剤 MS コンチン MS ツワイスロン オキシコンチン 1 日 1 回投与の経口剤カディアン パシーフ ピーガード オピオイド持続静注 フェンタニル貼付剤 オピオイド製剤 先行薬剤最終投与と同時にフェンタニル貼付剤貼付 先行薬剤最終投与の 12 時間後にフェンタニル貼付剤貼付 フェンタニル貼付剤貼付 6-12 時間後に先行薬剤投与中止 ( 先行薬 ) フェンタニル貼付剤 ( 切り替える薬剤 ) オピオイド製剤 デュロテップ MT パッチフェントス テープワンデュロ パッチ 定時投与の経口剤 オピオイド持続静注 先行薬を剥がしてから 6-12 時間後に投薬 疼痛時レスキュー使用 大量の場合は段階的に
臨床緩和医療薬学日本緩和医療薬学会編集 2008 年版 (212-215) より一部抜粋 オピオイドの服薬指導の要点 疼痛管理の重要性痛みを我慢しない疼痛の程度や性質等を積極的に伝えてもらう オピオイド ( 麻薬 ) に対する誤解や不安の解消 麻薬 = 死 のイメージの払拭 依存性について ( 中毒の心配なし ) 耐性について 投与中止可能 各種オピオイド製剤の使い方 特徴定時的投与の重要性 投与量の個体差が大きいこと 薬物動態学的特徴 レスキュードーズの使用法 オピオイドの副作用対策と各種薬物の説明便秘対策 ( 下剤の調節法 ) 悪心 嘔吐対策
本日のまとめ WHO3 段階除痛ラダ に沿って, 非オピオイドと共に痛みに合ったオピオイドを選択する 経口投与を基本としながら, 他の剤形も患者の状態に合わせて使用する 患者の痛みを継続的に評価し適切な投与量を決定する 嘔気 便秘等の副作用対策と服薬指導を適切に行うことで患者のQOL 向上につながる