オピオイド

Similar documents
スライド 1

FileNewTemplate

スライド 1

PowerPoint プレゼンテーション

緩和ケア領域の薬剤について

オピオイドの患者指導

<4D F736F F F696E74202D CF68A4A A E312E31338C6F8E598FC E093A190E690B6816A2E B8CDD8AB B83685D>

看護に役立つ知っておきたい オピオイドの知識

痛み目次 1. 痛み治療の基本 3 2. 第 1 段階 (WHO 3 段階ラダー ) 4 3. 第 2 段階 (WHO 3 段階ラダー ) 5 4. 第 3 段階 (WHO 3 段階ラダー ) 6 5. 各オピオイドの特徴 9 6. 経口投与可能な場合のオピオイドの初回処方 副作用対策

スライド 1

【目的】

38 龍島靖明 西垣玲奈 赤木徹 他 1 オピオイド製剤処方量の年次推移.A: 注射製剤,B: 徐放性製剤.a: フェンタニル注射剤 : 術後疼痛 がん性疼痛への適応拡大 ( ),b: デュロテップパッチ 院内採用 ( ),c: オキシコンチン, 院内採用 ( )

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132>

がん疼痛緩和に必要な知識

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

スライド 1

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

Microsoft PowerPoint - 緩和ケア勉強会 ppt

あなたの痛みについてお話しましょう

がんの痛みのコントロール

痛み止めの上手な使い方

Epilepsy2015

5 がん化学療法に附随する消化器症状への対応 下痢, 便秘および 重篤な消化管症状への対応 後藤歩, 小栗千里, 光永幸代, 市川靖史 小林規俊, 前田愼, 遠藤格

疼痛マニュアル第5版.indd


スライド 1

SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

愛知医科大学  緩和医療マニュアル

目 次 WHO 方 式 がん 疼 痛 治 療 法 P.2~3 がん 疼 痛 フローチャート P.4 薬 剤 の 比 較 (NSAIDS オヒ オイト ) P.5 初 回 投 与 量 設 定 内 服 可 能 時 P.6~9 初 回 投 与 量 設 定 内 服 困 難 時 P.10~12 レスキュー P

ポプスカイン0.75% 注シリンジ 75mg /10 院 Popscaine 75mg /10 院 / 筒 丸石 薬価 円 / 筒 効 硬膜外麻酔 用 ( 注 )1 回 150mg ( 本剤として20 院 ) までを硬膜外腔に投与 禁 大量出血やショック状態, 注射部位またはその周辺に

スライド タイトルなし

<4D F736F F D B A814089FC92F982CC82A8926D82E782B95F E31328C8E5F5F E646F63>

<4D F736F F F696E74202D C189EA924A90E690B E B8CDD8AB B83685D>

アブストラル舌下錠100µg・200µg・400µg

添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

プラザキサ服用上の注意 1. プラザキサは 1 日 2 回内服を守る 自分の判断で服用を中止し ないこと 2. 飲み忘れた場合は 同日中に出来るだけ早く1 回量を服用する 次の服用までに 6 時間以上あけること 3. 服用し忘れた場合でも 2 回量を一度に服用しないこと 4. 鼻血 歯肉出血 皮下出

スライド 1

301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

痛みの評価と対応(上級者編)

Microsoft Word 抄読会.docx

がんの痛みの治療を受けられる方へ

減量・コース投与期間短縮の基準

PowerPoint プレゼンテーション

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

使用上の注意改訂のお知らせ スピーゲル

より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

患者向医薬品ガイド フィコンパ錠 2mg フィコンパ錠 4mg 2016 年 5 月作成 この薬は? 販売名 フィコンパ錠 2mg フィコンパ錠 4mg Fycompa Tablets 2mg Fycompa Tablets 4mg 一般名 ペランパネル水和物 Perampanel Hydrate

Microsoft PowerPoint - 浜松がん薬物治療セミナー  配付.pptx

モーニングセミナー   がんの痛みの緩和        平成26年12月1日(月)

181012_いたみやわらげ完成版

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

Microsoft Word - CDDP+VNR患者用パンフレット doc

疼痛の処方

食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

用法・用量DB

Microsoft Word - sa_niflec_ doc

9_痛みをやわらげる方法160502修正

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

Microsoft PowerPoint 第3講_疼痛マネジメント_配布資料 (1)

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

PowerPoint プレゼンテーション

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

添付文書の薬物動態情報 ~基本となる3つの薬物動態パラメータを理解する~

Transcription:

第 10 回福岡大学病院と院外薬局とのがん治療連携勉強会 オピオイド 福岡大学病院薬剤部 岡崎美和

本日の講演内容 オピオイドの特徴 使用上の注意 オピオイドの副作用と対策 オピオイドローテーション レスキュードーズ オピオイドの服薬指導の要点 まとめ

WHO の 3 段階除痛ラダー STEP 3 STEP 1 軽度の痛み STEP 2 軽度から中等度の強さの痛み リン酸コデイン オキシコドン トラマドール 中等度から高度の強さの痛み モルヒネ フェンタニル オキシコドン 非オピオイド鎮痛薬 ( アセトアミノフェン,NSAIDs など )± 鎮痛補助薬

( がん疼痛の薬物治療に対するガイドライン 2010 年版より ) オピオイドの作用機序 オピオイド : 中枢神経のオピオイド受容体に作用して効果を表す薬の総称

モルヒネの特徴 ( 経口 ) 徐放剤 : MSコンチン 錠 カディアン カプセル モルペス 細粒 MSツワイスロン カプセル ピーガード 錠 パシーフ カプセル速放剤 : 塩酸モルヒネ 末 オプソ 内服液 ( 注射 ) 塩酸モルヒネ 注 ( 外用 ) アンペック 坐剤 他のオピオイドの鎮痛効力比の基準となる 世界標準薬で古くから使用されており 使用経験 エビデンスが最も豊富 剤形が豊富

モルヒネの代謝 経口投与 肝臓 M3G M6G などの代謝物 血中 副作用 モルヒネ 鎮痛効果! 持続静注 持続皮下注 モルヒネ 代謝物の濃度が低く副作用がより少ない バイオアベイラビリティは約 20-25% と低い ( 初回通過効果大 ) グルクロン酸抱合 約 44-55%:M3G (morphine-3-glucuronide) 約 9-10%:M6G (morphine-6-glucuronide) M6G: 強力な活性代謝物 代謝物 未変化体ともに腎 ( 尿中 ) から排泄される に代謝される大部分が尿中に排泄

モルヒネの主な薬理作用の有効用量の比較 便秘や嘔気に対する副作用対策 オピオイド開始と同時に実施する!! 鎮痛に必要な用量の 10.4 倍 鎮痛に必要な用量の 1/10 鎮痛に必要な用量の 1/50 出典 : オピオイド治療 鎮痛薬 オピオイドペプチド研究会編エルゼビア ジャパンを一部改変

オキシコドンの特徴 ( 経口 ) 徐放剤 : オキシコンチン錠 (5 10 20 40mg/ 錠 ) 速放剤 : オキノーム散 (2.5mg 5mg/ 包 ) ( 注射 ) パビナール注 ( 複合剤 ) 鎮痛効力比 : モルヒネの1.5~2 倍 バイオアベイラビリティは約 60%( モルヒネより高い ) 腎機能障害のある患者でも モルヒネに比較して安全 ゴーストピルが排泄されることがある 事前に説明

フェンタニルの特徴 ( 注射 ) フェンタニル 注 ( 外用 ) デュロテップ MTパッチ フェントス テープ ワンデュロ パッチ モルヒネやオキシコドンと比較して 便秘や悪心 嘔吐の発現率が低く程度も軽い 開始時や増量時には呼吸抑制に注意が必要 フェンタニル貼付剤の使用上の注意貼付部位 : 胸 腹 上腕 大腿 貼付部位の温度上昇に注意!! 貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し 過量投与になり 死に至るおそれがある発熱時 入浴の温度 時間 暖房器具 ( こたつ 電気毛布等 ) デュロテップ MT パッチ フェントステープ ワンデュロパッチ添付文書より

オピオイド受容体への親和性と副作用 μ1 受容体 μ2 受容体 嘔気 嘔吐 便秘 眠気 モルヒネ + + + + + + + オキシコドン + + + + + + + フェンタニル 高用量 ± + + μ1 受容体 : 鎮痛など μ2 受容体 : 便秘 嘔気 嘔吐 呼吸抑制など 第 2 回日本緩和医療薬学会教育セミナーより

デュロテップ MT パッチ フェントステープ ワンデュロパッチ添付文書より フェンタニルの特徴 ( 注射 ) フェンタニル 注 ( 外用 ) デュロテップ MTパッチ フェントス テープ ワンデュロ パッチ モルヒネやオキシコドンと比較して 便秘や悪心 嘔吐の発現率が低く程度も軽い 開始時や増量時には呼吸抑制に注意が必要 フェンタニル貼付剤の使用上の注意貼付部位 : 胸 腹 上腕 大腿 貼付部位の温度上昇に注意!! 貼付部位の温度が上昇すると過量投与になり 死に至るおそれがある発熱時 入浴の温度 時間 暖房器具 ( こたつ 電気毛布等 ) 効果が出始めるまでに時間がかかる!!

主なオピオイドの相互作用 主なオピオイド / 併用 中枢神経抑制剤 ワルファリン μ 受容体の部分作動薬 グルクロン酸抱合抑制剤 (1) CYP2D6 阻害剤 (2) CYP3A4 阻害剤 (3) モルヒネ オキシコドン フェンタニル 主な機序 中枢抑制作用の増強 不明 受容体結合の変化 肝代謝の変化 肝代謝の変化 肝代謝の変化 : 併用薬の作用増強 / 減弱 : オピオイドの作用増強 / 減弱 (1) シメチジン メトトレキサート シスプラチン (2) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) (3) イトラコナゾール アミオダロン クラリスロマイシンジルチアゼム フルボキサミン

トラマドールの特徴 オピオイドμ 受容体の活性化作用とノルアドレナリンとセロトニンの再取り込み阻害作用 鎮痛効力比はモルヒネの1/5 代謝にはCYP2D6とCYP3A4が関与 医療用麻薬には指定されていない 有効限界あり

リン酸コデインの特徴 脱メチル化コデインモルヒネ ( 約 10%) 鎮痛効果 : モルヒネの約 1/10 コデイン1 日 100-120mg モルヒネ1 日 10mg 鎮咳薬 止痢薬としても使用される 原末 10 倍散 (10%) 麻薬 100 倍散 (1%) 麻薬ではない

アセトアミノフェン 胃腸障害 腎障害が少ない 副作用でNSAIDsの使用が困難な時に用いる 安全性 有効性 経済性で優れる 抗炎症作用はないが鎮痛作用と解熱作用あり 抗血小板抑制作用がみられない 1 日上限量 1500mg 4000mgへ

オピオイドの副作用 副作用の種類便秘嘔気 嘔吐眠気 ふらつき感排尿障害発汗かゆみ口内乾燥 発現時期反復投与時投与初期投与初期 増量時 投与初期 ~ 反復投与時 主に投与初期投与初期 ~ 反復投与時 便秘 嘔気 嘔吐対策が オピオイド継続で最も重要! 日本緩和医療学会がん疼痛治療ガイドライン作成委員会編 : がん疼痛治療ガイドライン 2000 年版より

オピオイドの副作用と対策 便秘 嘔気 嘔吐

オピオイドにより便秘の起こる機序 高瀬久光 加賀谷肇 : がん看護 2008 年 1 月より一部抜粋

分類薬剤名主な商品名剤形用法用量作用機序 浸透圧性 大腸刺激性 その他 塩類 糖類 適応外使用 酸化マグネシウムマグミット ラクツロースモニラック センナ 錠 / 細粒 液 末 アローゼン 顆粒 センノシドプルゼニド 錠 ピコスルファートナトリウム ビサコジル ラキソベロン 錠 液 テレミンソフト 坐 グリセリン各社浣腸 炭酸水素ナトリウム / 無水リン酸水素新レシカルボン 坐二ナトリウム 便秘の治療薬一覧 1 日 1-2g 2-3 回に分割 便の水分保持量を高めることで便を柔らかくする 便の容積を大きくし 腸粘膜を刺激 1 日 10-60mL 2-3 回に分割浸透圧性作用 腸内細菌で分解さ 1 日 6.5-39g れ蠕動を亢進 2-3 回に分割 1 日 1-3g 2-3 回に分割大腸のアウエルバッハ神経叢を刺激して 腸の蠕動を亢進 1 回 12-48mg 就寝前または起床時と就寝前 1 日 5-15mg 2-3 回に分割大腸で分解され 蠕動亢進および 1 回 5-30 滴水分吸収阻害 2-3 回に分割 1 回 10mg 蠕動亢進および水分吸収阻害 1 日 1-2 回頓用 1 回 10-150mL 腸管壁の水分吸収に伴う刺激作頓用用により蠕動を亢進 1 回 1-2 個頓用 炭酸ガスを発生し 蠕動を亢進 がん疼痛に関する薬物療法のガイドライン 2010 年版 および製品添付文書より

オピオイドの副作用と対策 便秘 嘔気 嘔吐

嘔気 嘔吐 オピオイド製剤投与開始初期あるいは増量時に生じやすい 治療に対する不安初期段階で嘔吐を経験し 疼痛コントロール不良 開始時から制吐剤を用いる ( 増量時にも ) 通常 1~2 週間ぐらいで慣れが生じる それ以降の嘔気は大半が便秘によるもの 制吐剤を減量 中止 便秘対策

嘔気の種類と作用機序 動作時の吐き気 1 日中続く吐き気 食後の吐き気 がん疼痛の薬物療法に対するガイドライン 2010 年版より

嘔気 嘔吐の治療薬一覧 分類薬剤名主な販売名剤形用法用量ジフェンヒドラミンヒスタミンH₁ 受容体サリチル酸塩 / トラベルミン 錠 1 回 1 錠 1 日 3-4 回拮抗薬ジプロフィリン 中枢ドパミン D₂ 受容体拮抗薬 プロクロルペラジンマレイン酸塩プロクロルペラジンメシル酸塩 ノバミン ハロペリドール セレネース オランザピン 糖尿病患者に禁忌 リスペリドン ジプレキサ 錠 注 1 回 5mg 1 日 1-4 回 1 回 5mg 1 日 1 回 錠 / 細粒 / 液 1 回 0.75mg 1 日 1 回 注 1 回 2.5-10mg 1 日 1-2 回 錠 / 細粒 1 回 2.5mg 1 日 1 回 リスパダール 錠 / 細粒 / 液 1 回 0.5mg 1 日 2 回 ペロスピロン塩酸塩 ルーラン 錠 1 回 4-8mg 1 日 1 回 錠 / 細粒 1 回 5-10mg 1 日 3 回ドンペリドンナウゼリン 消化管運動改善薬坐 1 回 60mg 1 日 2 回 食前または食後に投与 メトクロプラミドプリンペラン 錠 / 細粒 / 液 1 回 5-10mg 1 日 2-3 回 注 1 回 10mg 1 日 1-2 回 錐体外路障害現れやすい錐体外路障害現れにくい 保険適応外 がん疼痛に薬物療法に関するガイドライン 2010 年版 および製品添付文書より

持続痛と突出痛 レスキューとは 基本となるオピオイドが定期的に投与されている状態で痛みが残存または増強した場合に追加投与される臨時の薬 モルヒネ : 塩酸モルヒネ 末 オプソ 内服液 オキシコドン : オキノーム 散 フェンタニル レスキューの1 回量基本投与されているモルヒネの1 日量の1/6が目安徐放製剤 経皮吸収剤はレスキューには使用しない

フェンタニル口腔粘膜吸収製剤 アクレフ 200μg 400μg 600μg 800μg 即効性フェンタニル製剤 承認時までに 50.3% に何らかの副作用が認められている 主な副作用は 傾眠 (11.7%) 便秘 (9.8%) 口腔内出血 (7.0%) 口内炎 嘔吐 ( 各 6.3%) などであり 重大な副作用としては 依存性 呼吸抑制 意識障害 ショック アナフィラキシー様症状 痙攣などが認められている 2011 年 3 月 11 日に薬価収載された

オピオイドローテーションとは より好ましい反応を得るために 現在使用しているオピオイドを他のオピオイドに変更すること 目的 副作用の軽減 回避鎮痛効果の改善投与経路の変更鎮痛効果の耐性形成の回避 方法 オピオイドローテーション 換算表を参考に薬剤および投与量を変更患者の症状に応じてレスキュー投与を必ず行う高用量では 部分的なローテションを行う

オピオイドローテーション オピオイド換算表 経口モルヒネ (mg/ 日 ) 30 60 120 240 360 トラマール (mg/ 日 ) 150 300 経口坐薬経皮静脈皮下 モルヒネ坐薬 (mg/ 日 ) (20) 40 80 160 240 オキシコンチン (mg/ 日 ) 20 40 80 160 240 デュロテップMTパッチ (mg/3 日 ) 2.1 4.2 8.4 16.8 25.2 フェントステープ (mg/ 日 ) 1 2 4 8 12 ワンデュロパッチ (mg/ 日 ) 0.84 1.7 3.4 6.7 10 コデイン (mg/ 日 ) 180 レペタン坐薬 (mg/ 日 ) 0.6 1.2 モルヒネ (mg/ 日 ) 15 30 60 120 180 フェンタニル (mg/ 日 ) 0.3 0.6 1.2 2.4 3.6 パビナール (mg/ 日 ) 12 24(3A) 48(6A) 96(12A) 144(18A) トラマール (mg/ 日 ) 150 300 OPTIM 緩和ケア普及のための地域プロジェクトより一部改変

有賀悦子がん疼痛緩和 (2009) 88-90 から一部抜粋 オピオイドローテーションの手順 1オピオイドの1 日総量を計算する 2 新しいオピオイドの量を等力価比を用いて計算する 3 交差耐性が再度出現する可能性が高いため 20~30% 減量した量を1 日量として設定する ( 切り替え前に強い痛みがあるときは減量幅を少なくする ) 4 定時量を決める 5 レスキュードーズを決定する

オピオイドローテーションの一例 MS コンチン 120mg/ 回を 12 時間ごと時間を決めて服用し (2 回 / 日 ) レスキュードーズ塩酸モルヒネ 40mg/ 回を 1 日平均 3 回服用していた 副作用としてミオクローヌスとせん妄を認めたためモルヒネからオキシコドンに切り替えることとする 11 日オピオイド総量を計算定時量 120 2=240 レスキュー 40 3=120 モルヒネ全量 360mg 2 等力価量を計算 ( モルヒネ : オキシコドン=3:2) 360 2/3=240mg オキシコドン 320~30% を減量 240-20%~30% 180mg オキシコドン 4 定時量を計算約 180 2=90mg オキシコンチン 1 回量 5オキノーム を用いたレスキュドーズを設定 180 1/5~1/6=30mg/ 回 有賀悦子がん疼痛緩和 (2009) 88-90 から一部抜粋

オピオイドローテーション : 貼付剤 オピオイド製剤 フェンタニル貼付剤 ( 先行薬 ) オピオイド製剤 ( 切り替える薬剤 ) フェンタニル貼付剤デュロテップ MT パッチ フェントス テープ ワンデュロ パッチ 1 日 2 回投与の経口剤 MS コンチン MS ツワイスロン オキシコンチン 1 日 1 回投与の経口剤カディアン パシーフ ピーガード オピオイド持続静注 フェンタニル貼付剤 オピオイド製剤 先行薬剤最終投与と同時にフェンタニル貼付剤貼付 先行薬剤最終投与の 12 時間後にフェンタニル貼付剤貼付 フェンタニル貼付剤貼付 6-12 時間後に先行薬剤投与中止 ( 先行薬 ) フェンタニル貼付剤 ( 切り替える薬剤 ) オピオイド製剤 デュロテップ MT パッチフェントス テープワンデュロ パッチ 定時投与の経口剤 オピオイド持続静注 先行薬を剥がしてから 6-12 時間後に投薬 疼痛時レスキュー使用 大量の場合は段階的に

臨床緩和医療薬学日本緩和医療薬学会編集 2008 年版 (212-215) より一部抜粋 オピオイドの服薬指導の要点 疼痛管理の重要性痛みを我慢しない疼痛の程度や性質等を積極的に伝えてもらう オピオイド ( 麻薬 ) に対する誤解や不安の解消 麻薬 = 死 のイメージの払拭 依存性について ( 中毒の心配なし ) 耐性について 投与中止可能 各種オピオイド製剤の使い方 特徴定時的投与の重要性 投与量の個体差が大きいこと 薬物動態学的特徴 レスキュードーズの使用法 オピオイドの副作用対策と各種薬物の説明便秘対策 ( 下剤の調節法 ) 悪心 嘔吐対策

本日のまとめ WHO3 段階除痛ラダ に沿って, 非オピオイドと共に痛みに合ったオピオイドを選択する 経口投与を基本としながら, 他の剤形も患者の状態に合わせて使用する 患者の痛みを継続的に評価し適切な投与量を決定する 嘔気 便秘等の副作用対策と服薬指導を適切に行うことで患者のQOL 向上につながる