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第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

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指導方法等の改善計画について

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単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

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2、協同的探究学習について

4 単元の評価規準 コミュニケーションへの関心 意欲 態度 外国語表現の能力 外国語理解の能力 言語や文化についての知識 理解 与えられた話題に対し 聞いたり読んだりした 1 比較構文の用法を理解 て, ペアで協力して積極 こと, 学んだことや経 している 的に自分の意見や考えを 験したことに基づき

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

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知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

第5学年  算数科学習指導案

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20情報【授業】

主語と述語に気を付けながら場面に合ったことばを使おう 学年 小学校 2 年生 教科 ( 授業内容 ) 国語 ( 主語と述語 ) 情報提供者 品川区立台場小学校 学習活動の分類 B. 学習指導要領に例示されてはいないが 学習指導要領に示される各教科 等の内容を指導する中で実施するもの 教材タイプ ビジ

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(3) 指導観公民的分野は地理的分野と歴史的分野の学びの積み重ねによるところが大きい 用語や概念も高度化し 生徒の感想にも 難しい と感じるものが多くなっている そこで その難しいと感じる公民の用語などは積極的に用語集を活用し 難しい言葉に対する抵抗感を少しでも和らげるよう授業でも活用している また

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

第 5 学年 社会科学習指導案 1 単元名自動車をつくる工業 2 目標 我が国の自動車工業の様子に関心を持って意欲的に調べ, 働く人々の工夫や努力によって国民生活を支える我が国の工業生産の役割や発展について考えようとしている ( 社会的事象への関心 意欲 態度 ) 我が国の自動車工業について調べた事

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

単元の目標 カレーライスを作ることに興味 関心をもち, 進んで活動する カレーライスの作り方を調べ, 作り方, 材料, 用具を発表することができる カレーライス作りの活動を通して, 食材を知ったり, 道具を使う仕事にふれたりして, 生活経験を豊かにする 人との関わりを通してコミュニケーション能力を身

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ICTを軸にした小中連携

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント

(2) -2,4,1 3 y=-x-2 をかいた ( 人 ) 4 (1) y=2x-9,y=2x,y=3x+3 (2) y=x+11 (3) 指導観校内の研究テーマが 考える力を引き出す授業のあり方 ということで, 数学科では考える力とは何かを分析し,11 項目に整理した 1 帰納的に考える力 2

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国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを 話したり, 書いたりしている

(2) 計画学習課題 学習内容 時間 連立方程式とその解 二元一次方程式とその解の意味 2 連立方程式とその解の意味 ( 本時 1/2) 連立方程式の解き方 文字の消去の意味 加減法による連立方程式の解き方 5 代入法による連立方程式の解き方 連立方程式の利用 問題を解決するために 2つの文字を使っ

Super Interactive School Super Interactive School は インターネットなどの新しい環境の中で より一層の学習効果が上がるように 進化 発展させた 教科支援教材です 学習指導要領の改訂を機に 今まで以上に学習効果が上がるように 様々な改訂を行いました ま

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目次 1. フラッシュ型スライド教材を作ってみよう 2 2. 文字が順に消えていくスライド教材を作ってみよう 5 3. 文字が順に現れるスライド教材を作ってみよう 8 4. 音声とともに文字の色が変わるスライド教材を作ってみよう スライド教材を種類別にまとめてみよう 14 * 実践事例集

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6 年 No.8 You can see Daibutsu! 1/7 単元の目標 主な言語材料 できることを紹介する表現や感情を表す表現が分かる 修学旅行でできることについて具体物などを見せながら伝え合う 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり できることについ

C プログラミング演習 1( 再 ) 2 講義では C プログラミングの基本を学び 演習では やや実践的なプログラミングを通して学ぶ

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3 第 3 学年及び第 4 学年の評価規準 集団活動や生活への関心 意欲態度 集団の一員としての思考 判断 実践 学級の生活上の問題に関心 楽しい学級をつくるために を持ち 他の児童と協力して意 話し合い 自己の役割や集団と 欲的に集団活動に取り組もう してよりよい方法について考 としている え 判

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試験問題評価委員会報告書

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

項目評価規準評価方法状況 C の生徒への対応 関心意欲態度 1 自の考えを持ち 積極的に交流 討論している 2 自らの言葉で 中学生にかりやすく紹介文を書こうとしている 交流 討論で得た仲間の意見を取り入れて 自らの考えを深めるよう促す 参考例を示したり 書き出しを例示したりして 参考にするように指

【指導のポイント】

国語科学習指導案様式(案)

英語科学習指導案 京都教育大学附属桃山中学校 指導者 : 津田優子 1. 指導日時平成 30 年 2 月 2 日 ( 金 ) 公開授業 Ⅱ(10:45~11:35) 2. 指導学級 ( 場所 ) 第 2 学年 3 組 ( 男子 20 名女子 17 名計 37 名 ) 3. 場所京都教育大学附属桃山中

6 年 No.22 my summer vacation. 1/8 単元の目標 主な言語材料 過去の表し方に気付く 夏休みの思い出について, 楽しかったことなどを伝え合う 夏休みの思い出について, 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり, 他者に伝えるなどの目的

習う ということで 教育を受ける側の 意味合いになると思います また 教育者とした場合 その構造は 義 ( 案 ) では この考え方に基づき 教える ことと学ぶことはダイナミックな相互作用 と捉えています 教育する 者 となると思います 看護学教育の定義を これに当てはめると 教授学習過程する者 と

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自己紹介をしよう

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1. 単元名 運動とエネルギー 3 章エネルギーと仕事 南中学校第 3 学年理科学習指導案 平成 26 年 10 月 16 日 ( 木 ) 第 5 校時 3 年生徒数 3 名場所理科室授業者 2. 単元について (1) 単元観本単元は 運動の規則性やエネルギーの基礎を 身のまわりの物体の運動などの観

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第 2 学年 5 組理科学習指導案 日時平成 26 年 12 月 12 日 ( 金 ) 場所城北中学校授業者酒井佑太 1 単元名電気の世界 2 単元について (1) 教材観今日の私たちの日常生活において 電気製品はなくてはならないものであり 電気についての基礎的な知識は必要不可欠である しかし 実際

6 年 No.8 You can see Daibutsu! 1/7 単元の目標 主な言語材料 本時の目標 できることを紹介する表現や感情を表す表現が分かる 修学旅行でできることについて具体物などを見せながら伝え合う 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現で書かれたものの意味が分かり でき


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5. 単元指導目標単元の目標 ( 子どもに事前に知らせる ) 小数 整数の意味を考えよう 小数 整数の計算の仕方を見つけ 計算できるようになろう 子どもに事前に知らせる どうまとめるのか 何を ( どこを ) どうするのか ( 作業 教える 考えさせる ) 何についてまとめるのか 1. 小数 整数の

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必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

3 学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)(国語科)4.指導案 12 学校案内パンフレットを作ろう-共同編集・制作-

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1. 日時 日時平成 年 ( 年 ) 月 日 ( ) 時間目 ( 時 分 ~ 時 分 ) 2. 場所 場所 市立 中学校 室 3. 学年 組 人数 学年 組 人数 年 組 名 4. 単元 単元 ( 単元名 ) ( 小単元名 ) 5. 教材観 ( 題材観 ) < 教材観の考え方 > 教科書の該当単元全

各教科 道徳科 外国語活動 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする 各教科 道徳科 総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする

4. 題材の評価規準 題材の評価規準 については, B 日常の食事と調理の基礎 (2),(3), D 身近な消費生活 と環境 (1) の 評価規準に盛り込むべき事項 及び 評価規準の設定例 を参考に設定して いる 家庭生活への関心 意欲 態度 お弁当作りに関心をもち, おか 生活を創意工夫する能力

3 人権教育の視点英語科の授業を通して 文化や習慣には多様性があることを理解させる そしてその中から 表現の仕方の違いや考え方の違いに気づかせ 互いに違いを認め合い尊重しながら共に生きようとする態度 他者 文化に興味 関心をもち 良い人間関係を築きながら生活する力を持った生徒を育成したい そこでこの

2010 年 7 月 18 日 ( 土 ) 英語科指導法 Ⅲ 模擬授業 2 学習指導案 第 2 学年英語科学習指導案 日時 :2010 年 7 月 18 日 ( 土 ) 第 4 時限目学年 : 第 2 学年場所 : 共通教育棟 3 号館 3F 332 教室授業者 : B082G031X 菊田真由 1

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正誤表(FPT1004)

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いろいろな衣装を知ろう

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コミュニケーションを意識した授業を考えるーJF日本語教育スタンダードを利用してー

理科学習指導案

実践 報告書テンプレート

第 2 学年 * 組保健体育科 ( 保健分野 ) 学習指導案 1 単元名生涯の各段階における健康 ( イ ) 結婚生活と健康 指導者間中大介 2 単元の目標 生涯の各段階における健康について, 課題の解決に向けての話し合いや模擬授業, ディベート形式のディスカッションなどの学習活動に意欲的に取り組む

28(宣)中社小中パンフ表1-small

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

第 2 学年 4 組理科学習指導案 平成 18 年 10 月 20 日 ( 金 )5 限 指導者坂井輪中学校教諭野上貴浩 1 単元名化学変化と原子 分子 -2 章物質どうしの化学変化 - 2 単元の目標化合, 分解などの化学変化に関する観察, 実験をもとに反応における物質の変化や量的関係を原子 分子

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第1学年 理科学習指導案

第 4 学年算数科指導案 平成 28 年 11 月 2 日 ( 水 ) 第 5 校時場所 4 年 2 組男子 22 名女子 10 名指導者垣見遥 ともなって変わる量 思考力 判断力 表現力の育成 ~ 児童の考えを引きだす算数的活動の工夫 ~ 1 単元名 ともなって変わる量 2 単元の目標 ともなって

生活単元学習指導案 日時 : 平成 27 年 11 月 17 日 ( 火 ) 授業者 : 谷麻紗美 1. 単元名 校内販売を成功させよう 2. 単元について本学級は平成 27 年度より設置された特別支援学級 ( 知的 ) である 現在 1 年生の男子 3 名が在籍しており 障害の程度はさまざまである

第1学年国語科学習指導案

○数学科 2年 連立方程式

3 単元の目標 (1) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象に進んでかかわり それらを科学的に探究するとともに 事象を日常生活とのかかわりでみようとする 自然事象への関心 意欲 態度 (2) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象の中に問題を見いだし 目的意識をもって観察

総合的な探究の時間 は 何を 何のために学ぶ学習なのか? 総合的な探究の時間 は与えられたテーマから みなさんが自分で 課題 を見つけて調べる学習です 総合的な探究の時間 ( 総合的な学習の時間 ) には教科書がありません だから 自分で調べるべき課題を設定し 自分の力で探究学習 ( 調べ学習 )

あったらいいな ! こんなあそび場 (わたしの町大好き)

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Transcription:

2. JSL 理科における授業づくりの実際 2-1 指導案づくりの手順とポイント JSL 理科授業指導案を作成する重要なポイントは 日本語指導にとらわれすぎず 日常体験 や 身近な情報 と理科の実験 観察が結びつくように心がける 授業内容と時間には 十分ゆとりを持つ ( 到達目標は低く 達成感は高く ) その授業 ( その単元 ) の学習目標を教師側がしっかり把握し できるだけ単純な授業展開にする この3 点は 普段の理科授業でも教師として重要なポイントだが とりわけJSL 理科授業指導案を作成するにあたっては 常に気を付ける必要がある 理科は 道具や事物の名称に普段使わないものが多く それが学習の妨げになることがある 学習の過程の中で生徒の認識と道具や事物の名称が一致するようにつとめることで 実験 観察のおもしろさ 身近さを大切にしたい また 授業経験の多い教師ほどその知識から授業が複雑になり 到達目標も自ずと高くなりがちである 理解できる生徒にとっては理科がより楽しくなる要素だが JSL 対象の生徒にとっては 言葉以外の わからない を増やすことで よりやる気がなくなることになりかねない まずは到達目標と授業展開を単純にして生徒が わかった! といえる達成感を持たせることが重要である JSL 理科授業指導案を作成しよう! 準備 指導案の作成に入る前 次のことを決めておこう! 指導案を作成する単元 内容を決めよう現在 学習指導要領によって3 年間の教育課程は決められている JSLの授業はその特性からして 必ずしもこれに一致するものになるわけではないが もし 取り出し指導 であった場合 クラスに戻ったとき 全く違った内容を学習していたのでは 取り出しが逆効果になってしまう また 単元によっては JSL 理科 ( 中学校編 ) としての指導しやすさに差がある これらのことを考慮したうえで 3 単元シートと指導案 / ワークシート例 にある各単元の 基本技能の学習目標 基本概念の学習目標 を - 32 -

参考にしてほしい 基本技能 基本概念を決めよう ( 3 単元シートと指導案 / ワークシート例 参照 ) 単元 内容が決まったら つぎに授業展開を決めることになる そのとき できれば授業は2 時間分を 一度に考えておきたい こうすることで 目標を達成する時間が十分にとれるだけでなく 生徒の活動に合わせた授業が可能となる ( 授業内容は 複雑にならないよう 多くならないよう注意する ) キーになる質問を決めよう ( 3 単元シートと指導案 / ワークシート例 参照 ) 基本技能 基本概念達成のための質問例から その時間の最後にする質問を決める 質問の内容や言葉づかいは 生徒の条件に応じて適宜変更が必要な場合がある こうした質問をうまく活用することによって 目標の達成を確認することができる 指導案の最後にくる重要なポイントである 指導案作成その1 さあ! 指導案を作成していこう!! その単元について 以前学習していることをチェックしよう小学校や中学校の低学年でその単元内容につながる学習をしている場合がある そうした既習の内容が意外に生徒のサポートになることも多い そういった内容をプリントにして渡しておくことも効果的である 授業の展開を Step でシミュレーションしよう ( 頭の中ですれば十分 ) 単純な授業展開として次のようなパターンが考えられる 基本的な流れ 導入 用語 実験 観察 説明 まとめ 説明の中で用語について触れる場合 導入 実験 観察 用語 説明 まとめ 実験結果を生徒の発表やワークシートを完成させることでおこなう場合 導入 用語 実験 観察 発表 導入で実験をして それについて考えさせる場合 用語 実験 観察 発表 用語 説明 まとめもちろん これら以外のパターンも考えられる またこれらを組みあわせることも可能である ただ組みあわせれば組みあわせるほど複雑になることに注意したい まず ど - 33 -

のように展開するか どこに用語を入れるか ワークシートをどのように扱うか を シミュレーションすることが大切である タイムスケールを Step 段階 指導案項目は 大きく 展開 留意点 で作成しよう 3 単元シートと指導案 / ワークシート例 にある指導案例を参考にしてもらいたい タイムスケールは Step にすることで 時間ではなく学習段階で授業展開が可能になる 展開の組み立ては Step に合わせて進めることになるが まずキーになる質問を決めると 全体の流れが見やすくなる Step1 展開 留意点 指導案作成その2 具体的な授業展開を書き込んでいこう!! 展開 は授業の流れを追いながら 教師と生徒の相互活動で展開しよう教師の活動は 説明 ( ) 発問 ( ) 指示 ( ) とわけ 生徒の活動 ( ) と相互に展開するよう指導案をたてる このことによって 生徒のつまずきを想定することができる また ワークシートの活用方法も必ず記入しておことが大切である キーになる質問の解答は 記録させるよう工夫をしよう キーになる質問の解答は 最後に発言させるだけでなく 授業の中で何度か発言をさ せ また記録させることで 生徒の言葉として定着するようにしたい 留意点 は 日本語支援と学習内容サポートを考えよう 展開 がすべて記入できたら 留意点 の記入をする ここには日本語支援と学習内容サポートを考えて書き込んでいく 内容は生徒の状況に応じて検討していくことになるが 日本語支援についてはⅡ.2 日本語支援 5つの視点 を参考に検討することが必要である - 34 -

指導案作成その3 ワークシートを作成しよう!!! 作成した指導案に合わせて ワークシートを作成しようワークシートは 用語の説明から 実験 観察の手順 確認問題 視覚教材資料など様々なものが用意できる ここでは生徒が 視覚的にとらえるものを大切にしたい ワークシート作成のポイントについては Ⅲ.2.2 ワークシートの活用法 を参照してもらいたい 最後に 以上のように作成された指導案は JSL 理科を実施する上で 十分な生徒への支援と理科指導が盛り込まれると思われる しかし 普段の授業の中で毎回これだけの指導案を作成することは 時間的に難しい状況こともあるかもしれない そのような場合は せめて普段の授業計画の時に 次のようなことを意識してもらいたい 1 本時の基本技能 基本概念を意識する 2キーになる質問を決める 3キーになる質問の解答は 数度にわたって発言 記録させる 4 授業の終了時には よくできました 等プラスの評価を言葉でかける このようなことだけでも教師が意識することで 今までの理科授業とは違う JSL 理科としての授業が展開されるはずである - 35 -

2-2 ワークシートの活用法 (1) ワークシートの機能 JSL 理科 ではワークシートに次のような機能を持たせてある 1 羅針盤的機能 ワークシートを見ると 授業がどのような流れで展開するのかが見通せる そのため 自分が今 どの段階の作業を 何のためにしているのかが分かる 羅針盤 的機能がある 2 理解補助機能 図や表を多く取り入れるだけでなく 思考過程を目で確認できるようにすることで教科概念理解の手助け機能を強めている 3 表現補助機能 実験や観察の結果がわかっても それを日本語でどう表現すればよいか分からない生徒のために 回答モデルとなる文を 選択肢にしたり図と文を線で結ぶ方法にしたりして提示した 4 事典的機能 その単元の用語だけでなく 基礎知識として必要な用語なども整理しておくおくことにより ワークシートに 事典 としての機能をもたせた また 生徒が母語で書き込みをすることで 辞書 としての機能を持たせることも可能になる (2) 各機能の具体例 1 羅針盤的機能 Step1 2 3という見出しと 1 2 3 などの設問を見ると 授業の流れと 今どこを学習しているのかが把握できる 化学変化と物質の質量 Step1 知っていかな? おぼえているかな? 1 この器具を何というか Step2 スチールウールとは何か? 4 事典的機能学習内容全体をまとめておいたり 学習に使う器具の名前をまとめておいたりすることで 易しい日本語で書かれた 理科事典 としての機能を持たせることができる 1 スチールウールとは何か? 2 磁石につくか つかないか 3 その結果からスチールウールは何と同じだと言えるか Step3 スチールウールを燃やすとどうなるか? 1 酸素の中でろうそくはよく燃えるか * ワークシート例は スペースの関係で ふりがながないなど 本文収録のものとは異なっている - 36 -

音の大きさや高さ Step5 コンピュータで音の波形を確かめよう 1 音の伝わり方をまとめておきましょう 大切音は空気の中を ( ) として伝わります 2 コンピュータの画面を見ながら音を聞きましょう そして あてはまる方に をつけましょう 1 音が大きくなると 波の山の高さが ( 高く 低く ) なる 大きくなると 3 表現補助的機能文による回答が難しい場合は 文の大体を書いておき 主要な部分を 穴埋め または 選択 で回答する形にして 負担を軽減する 4 理解補助的機能文の理解が難しい場合は 理解の手助けとなるように文が表す意味を図で示す 地震のゆれの伝わり方? 1 次の文が表す言葉を線で結びましょう 1 地面がぐらぐらゆれること 初期微動 2 地震の初めに感じる小さなゆれ 震央 Step1 知っているかな? おぼえているかな Step5 ゆれの伝わり方 1 震源から近いほど短くなるものは何ですか 近い 遠い 震源からの距離 (km) 30 60 90 150 240 初期微動継続時間 ( 秒 ) 8 9 12 17 31 短い 長い 2 理解補助的機能 震源から近いほど初期微動継続時間が短くなる という現象に気づかせるため 表に 近い 短い などの言葉を書き入れておく これにより 規則性に気づかせるだけでなく その規則性を表す Aが Bほど CがD という日本語の習得をも促すことができる - 37 -