姿勢と運動 羽島市民病院リハビリテーション科 舟木一夫
平成 19 年国民生活基礎調査の概況自覚症状の状況 病気やけが等で自覚症状のある者 ( 有訴者 ) は人口 1 千人当たり 327.6 人 有訴者率 ( 人口千対 ) を性別にみると 男 289.6 女 363. 2 で女性が高い 隼齢階級別にみると 5~14 歳 の 206.6 人が最も低く 年齢階級が高くなるに従って上昇し 75~84 歳では 541. 8 人となっている 症状別にみると 男では 腰痛 での有訴者率が最も高く 次いで 肩こり せきやたんがでる の順 女では 肩二り が最も高く 次いで 腰痛 手足の関節が痛む の順となっている
姿勢が悪くなると 肩こり 頭痛 腰痛 O 脚 呼吸が浅くなる 声や表情への悪影響など
姿勢変化の要因 構造的な姿勢の変化骨の変形 関節拘縮 疼痛回避など 機能的な姿勢の変化筋のバランス ( 過緊張 萎縮 ) 関節機能的変化 ( 関節可動性障害など ) 運動連鎖に基づく変化 今回は 機能的な姿勢の話しです
筋のバランス ( 過緊張 萎縮 ) による変化 理想 異常 過緊張 萎縮
関節機能的変化 ( 関節可動性障害など ) 股関節を伸展する ( 大腿を後ろに動かす ) 外から見る動きは変わりないが 実際は腰に負担がかかっていて 腰痛の原因となりかねない 股関節で伸展ができる 股関節が硬いと 腰椎で伸展する
運動連鎖に基づく変位 足の重心を変えると全体の姿勢も変わってくる つま先立ち 骨盤前傾 腰椎伸展 胸椎伸展 頚部屈曲 踵立ち 骨盤後傾 腰椎屈曲 胸椎屈曲 頚部伸展
運動連鎖に基づく変位 足の重心を変えると全体の姿勢も変わってくる
筋のアンバランス 人の身体は基本的には左右半身は対称 身体は与えれた刺激に対して素直に反応 ( 姿勢や誤ったトレーニングにより負荷があれば強くなる 使わなければ弱くなる ) 利き手 利き足 習慣化された日常生活の動作 仕事 スポーツによって強い 弱い 硬い 柔らかいなどの筋肉が混在する状況が作られる 硬化 短縮を起こしやすい筋 ( 緊張筋 こわばり筋 ) と 弱化 抑制を生じやすい筋 ( 相動筋 ゆるみ筋 ) がある 表層筋は運動に 深層筋は関節の安定に働く 深層筋は抑制されやすい これが姿勢の乱れとなり肩こり 腰痛 o 脚などを引き起こすこともある
強い 弱い 硬い 柔らかいなどの筋肉が混在する状況が 身体のバランスを崩す ゆるみ筋 & こわばり筋のコンディショニング
深層筋は関節を安定させるが深層筋は弱くなりやすい 脊椎の分節的安定性のための運動療法 Segmental stabilisation training
筋のアンバランス 緊張 こわばりを起こしやすい筋と 弱化 ゆるみを生じやすい筋がある 緊張筋 ( こわばり筋 ) 腓骨筋 股関節屈筋 大腿直筋 腸腰筋 大腿筋膜張筋 内転筋群 ハムストリングス 脊柱起立筋 腰方形筋 梨状筋 僧帽筋上部線維 / 肩甲挙筋 大 小菱形筋 胸鎖乳突筋 短い深層頚部伸筋 上肢の屈筋群 相動筋 ( ゆるみ筋 ) 前脛骨筋 広筋群 ( 特に内側広筋 ) 大殿筋 中 小殿筋 腹壁筋 僧帽筋中 下部線維 前鋸筋 深層頚部屈筋 斜角筋 上肢の伸筋群 Janda.V
硬くなった筋の問題 多くの酸素とエネルギーを消費し 多くの乳酸老廃物を含有する 疲れやすい 正常なポンプ作用が作用しないため循環が障害される 骨膜 関節包 靱帯付着部を伸張して 関節の圧を増加させ 軟骨には不均衡な圧をかける 筋間を走行する神経 血管を圧迫することがある 弱くなった筋の問題 関節の安定性が悪くなり 関節に不均衡な力が生じ 変性が促進される 不良姿勢をもたらし 過緊張および圧迫が加わる領域を作り出す 筋収縮による循環が十分に機能しないために 血管系 リンパ系のポンプ作用が低下する 循環が悪くなる
僧帽筋緊張筋 ( こわばり筋 ) プロメテウス解剖学的アプローチ
肩甲挙筋緊張筋 ( こわばり筋 ) 菱形筋 緊張筋 ( こわばり筋 ) ゆるみ筋 & こわばり筋のコンディショニング プロメテウス解剖学的アプローチ
腸腰筋緊張筋 ( こわばり筋 ) 内転筋群緊張筋 ( こわばり筋 ) ハムストリングス大腿筋膜張筋緊張筋 ( こわばり筋 ) ゆるみ筋 & こわばり筋のコンディショニング プロメテウス解剖学的アプローチ
脊柱起立筋腰方形筋梨状筋 緊張筋 ( こわばり筋 ) プロメテウス解剖学的アプローチ
深層頚部屈筋相動筋 ( ゆるみ筋 ) 僧帽筋相動筋 ( ゆるみ筋 ) 大殿筋 中 小殿筋相動筋 ( ゆるみ筋 ) 前鋸筋相動筋 ( ゆるみ筋 ) プロメテウス解剖学的アプローチ
腹壁筋相動筋 ( ゆるみ筋 ) 広筋群 ( 特に内側広筋 ) 相動筋 ( ゆるみ筋 ) プロメテウス解剖学的アプローチ
良い姿勢とは 骨格と筋肉のいずれかにも 余分な負担がかからない状態
良い姿勢 外耳孔 肩峰 後頭隆起 棘突起 大転子 膝関節前部 外果前方 殿裂 膝関節中間点 内果中間点
悪い姿勢とは 体の一箇所に大きな負担がかかり続ける姿勢 無理な力や重さがかかってしまう姿勢 骨 関節 筋肉などのチームワークがとれていない
姿勢のチェック ( 側方から ) 頭部 良悪 胸部
体幹 良悪 腹部 腰部
姿勢の種類 ( 横から ) 骨盤前傾 前方スウェイバック骨盤後傾 前方高齢者
骨盤前傾 前方姿勢 アライメント 頸の過伸展と頭部前方位 背中が丸みをおびている 腰が反っている 骨盤前傾 股関節屈曲 膝伸展 ゆるみと劣性筋 頸部屈筋群 上部脊柱起立筋 僧帽筋中部と下部線維前鋸筋 短縮と優勢筋 頸部伸筋群 股関節屈筋群 大胸筋 小胸筋 僧帽筋上部線維
骨盤前傾 前方型の筋のアンバランス 短縮 ゆるみ 腹部筋 股関節屈筋群 脊柱起立筋 大殿筋
頭部前方位の筋のアンバランス 胸鎖乳突筋 大胸筋 小胸筋 頸部伸筋群 僧帽筋上部線維肩甲挙筋 頸部屈筋群 前鋸筋 僧帽筋中部 下部線維
スウェイバック (Sway Back) 日本人に多い アライメント 背中は著名な丸み 腹部は前方へ突出 骨盤はニュートラルか後傾 股 膝関節は伸展 ゆるみと劣性筋 股関節の屈筋群 外腹斜筋 上部背筋 短縮と優勢筋 ハムストリングス 内腹斜筋 腰部筋群
スウェイバックの筋のアンバランス 腰部筋 腹部筋 ハムストリングス 股関節屈筋群
姿勢のチェック ( 前後から ) 頭部 良悪 肩の高さ
脊柱 良悪 骨盤
姿勢 ( 後ろから ) 肩甲挙筋 脊柱起立筋 広背筋 腰方形筋 梨状筋 中殿筋
バランスを整えるために バランスが大切
さあ 運動
こわばり筋のストレッチ 硬い筋は使われやすくなり こわばりや運動プログラムの変性をさらに促通する 短縮していれば できればまず筋の長さを正す ゆるみ筋を活性化 25~50% の負荷 20~30 回の繰り返し 筋の耐久性の改善 筋肉の収縮の早さを高め反射的安定を促通
背中を伸ばす
姿勢矯正 顎をひき耳と肩が直線になるように頭部を平行に後方へ移動する練習 壁 ( の角 ) にもたれる 顎をひいて頭をつける 首と背中の姿勢矯正
ストレッチ ( 肩甲挙筋 ) 1 右手で椅子の少し後ろを持って腰掛ける 2 鼻を左脇に近づけるようにし頭を動かし 左手で頭の斜め前から頭部を持ち 保持する 3 上体を徐々にそして最大に左 前方へ動かす
ストレッチ ( 僧帽筋 ) 1 右手で椅子の真横を持って腰掛ける 2 左耳を肩に近づけるようにし左手を頭部の少し後方から回して頭部を持ち 保持する 3 上体を徐々にそして最大に左側方へ動かす
ストレッチ ( 股関節前面の筋 ) 1 伸張する側 ( 右下肢 ) の膝をつく 体を支えるため台を利用する 2 腰を反らないように注意し 前方につきだしていく ( 左下肢に体重を乗せる )
メタボリックシンドロームネットメタボビクスより ペンギン体操僧帽筋の中下部など プロメテウス解剖学的アプローチ 両手の肘を伸ばしたまま できるだけ両腕を後ろに高く持ち上げます このとき 両腕を近づけた上体を保ちます そのまま両腕を 内 外と可能限りねじります 内 外のねじりを 1 秒ほどの間隔で 10 回ほど繰り返す 3 セット行います
僧帽筋の中下部 プロメテウス解剖学的アプローチ
僧帽筋の中下部
深層頚部屈筋 あごを引くこと プロメテウス解剖学的アプローチ
前鋸筋 プロメテウス解剖学的アプローチ
メタボリックシンドロームネットメタボビクスより ヒップウォーク体操股関節周囲筋 椅子に深く腰掛けます お尻を 左右交互に前に出しながら 手も振って座をお尻で歩くように 4 歩前に歩きます お尻を 左右交互に後ろに引きながら 手も振り 4 歩後ろに歩きます 10 往復程度繰り返します
お腹デコボコ体操横隔膜 腹直筋 腹横筋 プロメテウス解剖学的アプローチ 最初にお腹をできるだけ 最大限に前に出します 次にお腹をできるだけ 最大限にへこまします これを各 1 秒程度でテンポ良く 20 回程度 3 セット メタボリックシンドロームネットメタボビクスより
メタボリックシンドロームネットメタボビクスより 両足 V 字リフト体操腹直筋 大腰筋 プロメテウス解剖学的アプローチ イスの座を両手で持ちます 両足を揃えたまま 息を吐きながら 両膝を胸まで 5 秒かけて引き上げます 5 秒かけて ゆっくり戻します 10 回程度
大殿筋 ( お尻 ) プロメテウス解剖学的アプローチ
大殿筋 ( お尻 )
中殿筋 ( お尻の横 ) プロメテウス解剖学的アプローチ
中殿筋 ( お尻の横 )
大腿四頭筋 ( 大腿前面 ) プロメテウス解剖学的アプローチ
大腿四頭筋 ( 大腿前面 )
今日から 姿勢矯正 運動 スクワット ペンギン体操 お腹デコボコ体操 ヒップウォーク体操
よい姿勢を
立位姿勢を安定させる 高齢者の立位姿勢胸腰椎の後彎 骨盤後傾により足圧中心位置に比べ重心線は後方へ移動している 体重は踵の近くにある
加齢に伴う重心移動範囲の低下 足部の重心移動範囲の低下若年者 約 60% の範囲で重心移動高齢者 80 歳 約 20% 以下の範囲での重心移動 20% 60% 安定性限界の範囲成人 (22~36 歳 ) 前後方向足裏の 80% 高齢者 (69~77 歳 ) 前後方向足裏の 50%
足関節制御足でバランス 主に足関節を中心とした身体運動を介して身体重心を安定な位置に回復する戦略 平衡に対する影響が少なく 支持面がしっかりしている場合に使用されることが多い
股関節制御股関節でバランス 股関節を大きくかつ迅速な運動を発生させることで身体重心を安定な位置に回復する戦略 動揺が大きい 早い場合 あるいは支持面が柔らかい 狭い場合に使用される事が多い
重心移動の違い 若年者 足関節により姿勢制御 高齢者 股関節により姿勢制御お尻を出したり お腹を出したり足関節により姿勢制御が弱い
前足部は足底機能に重要 足底に存在する力学的受容器 ( メカノレセプター ) からの情報が姿勢調整の安定に重要 重心位置の後退は前足部の機能的退化が原因とも考えられる 力学的受容器 ( メカノレセプター ) の多い部分
姿勢運動戦略としての股関節 股関節に大きくかつ迅速な運動を発生させることで身体重心の動きを制御大殿筋大腰筋外旋筋など
足部 股関節周囲の機能を放棄してい る人が多い
足の運動 タオルギャザービー玉つかみペンつかみ
つま先に体重をのせましょう
その他 静的立位 不安定な面を段階的に進行してバランスを維持動揺板 トランポリン 片脚立ち ダイナミックフラミンゴ療法 閉眼 バンドを利用して重心移動を加える
背中丸くなっていませんか? 頭部前方姿勢になっていませんか
最後に 良い姿勢のために 時々 つま先立ち 歯磨き時など たまには利き手でないほうも使ってみる 食事は左右の奥歯で均等に 買い物袋は左右持ちかえる 腹式呼吸で腰の安定 壁で姿勢のチェック あごを引く 背中の筋のトレーニング ペンギン姿勢など