究 ( 田中 1998 小島 1995 など ) が多く 後者は比較的若い世代を対象にした研究が多い ( 仙田 2002 永瀬 1999 新谷 1998 など ) 夫の収入については 多くの研究で高い夫の収入は妻の就業を抑制する効果が認められる ( 小島 1995 永瀬 1999 新谷 1998 な

Similar documents
Powered by TCPDF (

Microsoft Word - 池田様本文確定

参考 1 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに

母親の就業が子どもに与える影響―その意識を規定する要因の分析―

<4D F736F F D DE97C78CA78F418BC B28DB895F18D908F DC58F49817A2E646F63>

Microsoft Word - 坂本様本文確定

第 1 子出産前後の女性の継続就業率 及び出産 育児と女性の就業状況について 平成 30 年 11 月 内閣府男女共同参画局

介護休業制度の利用拡大に向けて

続・女性のライフコースの理想と現実-人気の「両立コース」の実現には本人の資質より周囲の影響が大

親の教育意識が家計の教育費負担に及ぼす影響-JGSS-2006データによる分析-

参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

02世帯

Microsoft Word - huuhu3.doc

係が 無収入が高いポイントをとる J カーブ型であることも指摘される ( 瀬地山 1998) 若年層における専業主婦志向が一時取りざたされ 以前は高卒までの女性が支持していた 専業主婦 を近年では大卒女性が支持するまでとなっている ( 片桐 2014) これは世帯収入の減少や共働きの需要が高まる中で

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

はしたが出産していない ) 既婚出産 ( 結婚し出産もした ) の 3 つを比較することになる 図 は 未婚期雇用就業経験者の 現在時点の結婚と出産経験の有無を示している あくまで現時点の状態であるため 若いコーホートほど これから結婚 出産する可能性があることを考慮しながら 結果を読

労働力調査(詳細集計)平成24年平均(速報)結果の要約

3 調査項目一覧 分類問調査項目 属性 1 男女平等意識 F 基本属性 ( 性別 年齢 雇用形態 未既婚 配偶者の雇用形態 家族構成 居住地 ) 12 年調査 比較分析 17 年調査 22 年調査 (1) 男女の平等感 (2) 男女平等になるために重要なこと (3) 男女の役割分担意

Microsoft Word 結果の概要(1世帯)

 第1節 国における子育て環境の現状と今後の課題         

Microsoft Word - notes①1210(的場).docx

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル


平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 日常生活に関する事項

仕事と育児の両立支援  ―企業・家庭・地域の連携を―

第 16 表被調査者数 性 年齢階級 学歴 就業状況別 124 第 17 表独身者数 性 年齢階級 就業状況 家庭観別 142 第 18 表有配偶者数 性 年齢階級 就業状況 家庭観別 148 第 19 表仕事あり者数 性 年齢階級 配偶者の有無 親との同居の有無 職業別 154 第 20 表仕事あ

Microsoft PowerPoint - 【セット版】140804保育キャンペーン資料

親と同居の壮年未婚者 2014 年

切片 ( 定数項 ) ダミー 以下の単回帰モデルを考えよう これは賃金と就業年数の関係を分析している : ( 賃金関数 ) ここで Y i = α + β X i + u i, i =1,, n, u i ~ i.i.d. N(0, σ 2 ) Y i : 賃金の対数値, X i : 就業年数. (

スライド 1

第 1 章調査の実施概要 1. 調査の目的 子ども 子育て支援事業計画策定に向けて 仕事と家庭の両立支援 に関し 民間事業者に対する意識啓発を含め 具体的施策の検討に資することを目的に 市内の事業所を対象とするアンケート調査を実施しました 2. 調査の方法 千歳商工会議所の協力を得て 4 月 21

Microsoft Word - Notes1104(的場).doc

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

出産・育児調査2018~妊娠・出産・育児の各期において、女性の満足度に影響する意識や行動は異なる。多くは子どもの人数によっても違い、各期で周囲がとるべき行動は変わっていく~

PowerPoint プレゼンテーション

労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

Microsoft PowerPoint

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

平成 年 2 月 日総務省統計局 労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 24 年 10~12 月期平均 ( 速報 ) 結果の概要 1 Ⅰ 雇用者 ( 役員を除く ) 1 1 雇用形態 2 非正規の職員 従業員の内訳 Ⅱ 完全失業者 3 1 仕事につけない理由 2 失業期間 3 主な求職方法 4 前職の

電通総研、「女性×働く」調査を実施

平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 経済状況に関する事項

女性の就業と育児に関する実証分析 神戸大学大学院経済学研究科小林美樹 a 要旨本稿では 就業構造基本調査のミクロデータを用いて 女性の学歴や子どもの有無が就業にどのような影響を及ぼしているのかを検討した 1992 年 1997 年 2002 年の 就業構造基本調査 の個票を用いて 女性の就業選択につ

第 表性別 年齢階層別にみた就業形態別推計実数 H6 H11 H15 H19 男性 女性 合計 男性 女性 合計 男性 女性 合計 男性 女性 合計 正社員契約社員嘱託社員出向社員 常用雇用型派遣労働者 登録型派遣労働者 臨時的雇用者 パートタイム労働者 歳 83,790 0

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

man2

全国就業実態パネル調査2019設計資料

第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい

全国就業実態パネル調査2016〔データ集〕

2. 調査結果 1. 回答者属性について ( 全体 )(n=690) (1) 回答者の性別 (n=690) 回答数 713 のうち 調査に協力すると回答した回答者数は 690 名 これを性別にみると となった 回答者の性別比率 (2) 回答者の年齢層 (n=6

18歳人口の分布図(推計)

初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 問 33 問 8- 母 ) 図 95. 初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 母親 ) 初めて親となった年齢 を基準に 10 代で初めて親となった 10 代群 平均出産年齢以下の年齢で初めて親となった平均以下群 (20~30 歳 ) 平均

調査研究方法論レポート

長期失業者の求職活動と就業意識

Microsoft Word - KUES-DP docx

スライド 1

1-1_旅行年報2015.indd

高齢期における幸福感規定要因の男女差について―JGSS-2000/2001統合データに基づく検討―

若年者の就業状況 キャリア 職業能力開発の現状 - 平成 19 年版 就業構造基本調査 特別集計より - 独立行政法人労働政策研究 研修機構 The Japan Institute for Labour Policy and Training

平成 22 年国勢調査産業等基本集計結果 ( 神奈川県の概要 ) 平成 22 年 10 月 1 日現在で実施された 平成 22 年国勢調査 ( 以下 22 年調査 という ) の産業等基本集計結果が平成 24 年 4 月 24 日に総務省統計局から公表されました 産業等基本集計は 人口の労働力状態

98家計研_本文p02_99.indd

人口 世帯に関する項目 (1) 人口増加率 0.07% 指標の説明 人口増加率 とは ある期間の始めの時点の人口総数に対する 期間中の人口増加数 ( 自然増減 + 社会増減 ) の割合で 人口の変化量を総合的に表す指標として用いられる 指標の算出根拠 基礎データの資料 人口増加率 = 期間中の人口増

スライド 1

中国帰国者以外 フィリピン アジア諸国 中米南米諸国 欧米系諸国 全体 就業の状態 (1) 現在の職業表 -2.5 は 国籍グループ別に有業者の現在の職業をみたものである

男女共同参画に関する意識調査

ブック 1.indb

厚生労働省発表

困窮度別に見た はじめて親となった年齢 ( 問 33) 図 94. 困窮度別に見た はじめて親となった年齢 中央値以上群と比べて 困窮度 Ⅰ 群 困窮度 Ⅱ 群 困窮度 Ⅲ 群では 10 代 20~23 歳で親となった割 合が増える傾向にあった 困窮度 Ⅰ 群で 10 代で親となった割合は 0% 2

関西圏女性の仕事と子育てに関する意識調査 ( 有業者 ) 1 集計結果 : 従事者の特徴 車井浩子横山由紀子 1. 調査の概要 2 調査地域 関西圏 ( 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 ) 調査対象者 小学生以下の子どもを持つ 歳の働いている女性 調査方法 調査会社の提

CW6_A3657D13.indd

男女共同参画に関する意識調査

Microsoft Word - H29 結果概要

第15回出生動向基本調査

,,.,,.,..,.,,,.,, Aldous,.,,.,,.,,, NPO,,.,,,,,,.,,,,.,,,,..,,,,.,

2014人口学会発表資料2

親からの住宅援助と親子の居住関係-JGSS-2006 データによる検討-

 

高齢期における社会的ネットワークの「多様性」―JGSS-2003データを用いた「相談」ネットワークの分析―

教育収益率の地域差と地域移動効果―JGSS データを用いた所得関数の分析―

調査の概要 少子高齢化が進む中 わが国経済の持続的発展のために今 国をあげて女性の活躍推進の取組が行なわれています このまま女性正社員の継続就業が進むと 今後 男性同様 女性も長年勤めた会社で定年を迎える人が増えることが見込まれます 現状では 60 代前半の離職者のうち 定年 を理由として離職する男

..,,...,..,...,,.,....,,,.,.,,.,.,,,.,.,.,.,,.,,,.,,,,.,,, Becker., Becker,,,,,, Becker,.,,,,.,,.,.,,

<4D F736F F D DE97C78CA78F418BC B28DB895F18D908F A DC58F49817A2E646F63>

15 第1章妊娠出産子育てをめぐる妻の年齢要因

Microsoft PowerPoint - sc7.ppt [互換モード]

Microsoft Word - 教育経済学:課題1.docx

<4D F736F F D2095F18D908F9192F18F6F A955C8E E646F63>

図 1 女性の労働力率 ( 国勢調査から ) 注 :2015 年は 70 歳以上のカテゴリーはなく 65 歳以上が最後のカテゴリーになっている これらの論文は 第 2 節で詳しく見るように M 字の多様化について言及するものの 女性の就業形態については あまり深く掘り下げていない また 結婚や出産と


Ⅱ 方法と対象 1. 所得段階別保険料に関する情報の収集 ~3 1, 分析手法

Microsoft Word - 修正rp1110_的場_.doc

長野県の少子化の現状と課題

Ⅲ 結果の概要 1. シングル マザー は 108 万人我が国の 2010 年における シングル マザー の総数は 108 万 2 千人となっており 100 万人を大きく超えている これを世帯の区分別にみると 母子世帯 の母が 75 万 6 千人 ( 率にして 69.9%) 及び 他の世帯員がいる世

調査レポート

政策課題分析シリーズ16(付注)

006宮坂.indd


親と同居の未婚者の最近の状況(2016 年)

第 1 章アンケートの概要 1-1 調査の目的 1-2 対象者 1-3 調査方法 1-4 実施期間 1-5 調査結果サンプル数 第 2 章アンケート調査結果 2-1 回答者自身について (1) 問 2: 年齢 (2) 問 5: 同居している家族 2-2 結婚について (1) 問

Transcription:

誰が子どもを産み育てながら就業継続できるのか 1 阿形健司 ( 同志社大学 ) 論文要旨 本稿では 2015SSM 調査データを用いて 女性が子どもを産み育てながら就業継続を可能にする要因を探ることを試みる 20~49 歳の女性の末子出産前後の職歴に着目して分析した結果 学歴 ( 大学 大学院 ) 初職が 経営者 自営業主 であること 初職が 専門職 であること 夫の収入が少ないこと 15 歳時に母親が就業していたこと が末子出産時の就業継続を促進する要因として認められた 一方で 待機児童数を指標にした社会的育児支援の充実度という地域特性を説明変数として加えた結果 社会的育児支援が充実していない地域の分析対象者は 就業継続の確率が有意に低いことが明らかになった とくに 就業継続するよりも出産前に離職してしまうことを促進している このことは 社会的育児支援は 直接的な効果だけでなく 就業意欲を持続させる間接的な効果を持つことを示唆している キーワード : 就業継続待機児童数社会的育児支援 1. 問題の所在 1985 年に成立した男女雇用機会均等法を初めとして 女性がより働きやすくなることを目指した法律や制度が整備されるようになってから相当な年月が経過している しかし 実際には女性が働き続けるためには制約が多く 労働市場に参入してから一貫して働き続ける女性は少数にとどまる とくに 子どもを育てながら就業継続することの困難さはよく指摘されていることである 一方で 人口減少期に入った日本において 将来にわたる労働力不足が懸念されており よりいっそうの女性労働力化が政策課題となっている さらには 少子高齢化対策という観点からも 子どもを育てながら働き続けることができる条件を明らかにすることは重要となる そうした政策を実効性のあるものにするためには 女性の労働参加の実態を丁寧に把握することが欠かせない 本稿は そうした問題意識に基づき どのような条件を備えた女性が子どもを持ちつつも働き続けることができているのかを明らかにする試みである 出産前後の女性の就業継続に関する先行研究は多数にのぼり そこで取り上げられる要因は 学歴 夫の収入 親族の援助の有無が主なものである 以下 西村 (2014: 71-78) の整理に依拠して概観する 学歴については 高学歴が出産 育児期の就業を促進するとは言えないという結果と 促進する効果があるという結果が混在している 前者はより上の世代を対象にした研 1 本研究は JSPS 科研費 JP25000001 の助成を受けたものです 183

究 ( 田中 1998 小島 1995 など ) が多く 後者は比較的若い世代を対象にした研究が多い ( 仙田 2002 永瀬 1999 新谷 1998 など ) 夫の収入については 多くの研究で高い夫の収入は妻の就業を抑制する効果が認められる ( 小島 1995 永瀬 1999 新谷 1998 など ) 親族の援助については 親との同居が女性の就業を促進する効果を認める研究が多い ( 小島 1995 永瀬 1999 新谷 1998) 一方で 若い世代では親族の援助が就業促進につながらないという研究もある( 大沢 鈴木 2000) また 今田 池田(2006) は 若い世代においては 親族の援助機能が低下し 育児休業制度と保育所の組み合わせが就業継続に効果をもたらすことを明らかにしている 2. データと方法本稿では 2015 年 SSM 調査データのうち 50 歳未満 (1965~1994 年生まれ ) で 一度でも働いたことがあり 子どものいる女性 1164 人を対象として 就業継続の要因を分析する 50 歳未満に限定する理由は 第一に この年齢層がほぼ男女雇用機会均等法以降に労働市場に参入した世代に当たること 第二に 50 歳以上を含む女性標本全体において末子出産年齢が 47 歳以下であること である なお 分析には 2017 年 2 月 27 日版 ( バージョン 070) のデータを用いた 被説明変数は本人の就業状況であり 職歴の変化 ( 就職 離職 ) があった年齢と出産年齢を手がかりに末子出産時に就業していたかどうかを区別する 分析の煩雑さを避けるため 従業上の地位は問わず 就業と不就業の識別だけを行っている 具体的には 末子出産二年前から無職であった人 = 出産前無職 末子出産一年前から出産後一年の間 すなわち出産前後一年間に無職になった人 = 出産時無職 出産後一年を超えて有職であった人 = 就業中 の三つに分ける 出産時無職 に幅を持たせた理由は 調査設計上 データ上の出産年齢が実際の出産年齢から一歳のずれが生じる可能性があることと 出産後に育休をとってそのまま辞めてしまう場合があり そうしたケースは出産時に就業中とは判断しがたいことの二つである 分析対象者の年齢層別にこれらのカテゴリー分布を見ると表 1のようになる 全体では 4 割が 就業中 2 割が 出産時無職 4 割が 出産前無職 である 20 代前半を除けば若い年齢層ほど 就業中 が多い傾向がみられる 注意を要するのは ここで着目する就業状況は あくまで末子出産前後の期間に限定されることである したがって たとえば 出産前無職 には 出産三年前には働いていた人が含 184

まれているし 就業中 には末子出産後三年目に仕事を辞めてしまった人も含まれている また 出産時無職 には出産後二年目に再就職した人も含まれる この留意点を吟味するために 末子出産時の就業状況と全体の職歴パタンとの関係をみておこう ( 表 2) 表頭の職歴パタンのカテゴリーを説明する 就業継続 は 職歴データに 無職 を一つも含まない場合である すなわち 初職就職から現職まで職歴全体で就業継続している場合である ( ただし 調査票の設計上 職歴のどこかに 3 ヶ月以内の無職期間が存在してもそれは 無職 とはみなされない ) 就業 無職 は 継続して就業したのち無職になり そのまま現在に至るまで無職の場合である 中断再就職 は いったん無職になったのちに 再就職して現在まで就業継続している場合であり いわゆるM 字型就労 ( 平田 2011 大和 2011) が個人単位で現れたパタンである この場合 無職経験は一回のみである 中断繰返し は 就職経験と無職経験がそれぞれ 2 回以上あるケースである 無職経験の最大値は 6 回である 表 2から 末子出産時だけでなく 職歴全体で就業継続しているのは 末子出産時就業中の 6 割 全体の 2 割 (260/1126) であることがわかる また 末子出産を機に無職になった 205 人のうち 2 割は無職のままであるが 出産後に再就職を果たした人が少なくとも 3 割以上存在することがわかる 表 1 年齢層別末子出産時の就業状況 ( ) 内は行パーセント 就業中 出産時無職 出産前無職 合計 20-24 歳 6(31.6) 6(31.6) 7(36.8) 19(100.0) 25-29 34(44.2) 22(28.6) 21(27.3) 77(100.0) 30-34 65(41.1) 34(21.5) 59(37.3) 158(100.0) 35-39 107(39.3) 41(15.1) 124(45.6) 272(100.0) 40-44 121(38.3) 54(17.1) 141(44.6) 316(100.0) 45-49 98(33.7) 48(16.5) 145(49.8) 291(100.0) 全体 431(38.0) 205(18.1) 497(43.9) 1133(100.0) 表 2 末子出産時の就業状況と職歴パタンとの関係 ( ) 内は行パーセント 就業継続 就業 無職中断再就職中断繰返し 合計 就業中 260(61.0) 4( 0.9) 120(28.2) 42( 9.9) 426(100.0) 出産時無職 0( 0.0) 48(23.4) 67(32.7) 90(43.9) 205(100.0) 出産前無職 0( 0.0) 188(38.0) 210(42.4) 97(19.6) 495(100.0) 全体 260(23.1) 240(21.3) 397(35.3) 229(20.3) 1126(100.0) 185

説明変数は先行研究を参考にして次のように設定した 学歴は 分析対象者が1965~1994 年生まれであり専門学校への進学者が相当数にのぼることを考慮し 専門学校 ( 専修学校専門課程 ) を独立したカテゴリーとして加えた また 人数の少ない 中学校 を 高校 と合併した 同様に 短期大学 と 高等専門学校 を一つのカテゴリーに 大学 と 大学院 を一つのカテゴリーにまとめている 本人の職業については 初職の従業上の地位と職種を取り上げる 従業上の地位は 正規雇用者 ( 常時雇用されている一般従業者 ) 非正規雇用者 ( パート アルバイト 派遣社員 契約社員 嘱託 臨時雇用 内職 を含む ) 経営者 自営業主 ( 経営者 役員 自営業主 自由業者 家族従業者 を含む ) の3カテゴリーとする 職種はSSM 職業 8 分類のカテゴリーを 専門職 事務職 販売職 マニュアル職 の4つに再編した( 初職が 管理職 は分析対象者には存在しなかった ) 夫の年収は 2050 万円未満はプリコードカテゴリーの中間値をあて 2050 万円以上は実額を当てはめている 分析ではこうして算出した金額の対数値を用いている ( 収入なし は対数値をとるために便宜的に年収 1 円とした ) 次に 母親ロールモデル説を検討するため 本人が15 歳時の母親の就業について 就業 不就業 の二値変数を設定した 親族の援助の効果を確認するために 現在親と同居しているかどうかを 非同居 実の親との同居 義理の親との同居 の3つのカテゴリーで把握する さらに 社会的援助 ( 今田 池田 2006) の効果をみるために地域特性を示す変数を導入した 具体的には 2009 年から2015 年の各 4 月 1 日時点の待機児童数 ( 厚生労働省各年 ) の 7 年間の平均値が300 名を超える10 都府県 宮城 埼玉 千葉 東京 神奈川 滋賀 大阪 兵庫 福岡 沖縄 を1 その他の道府県を0とするダミー変数 地域 である したがって 地域 は 社会的援助を受けにくい地域特性を表す変数である 以上の変数は 夫の収入を除いて全てダミー変数化している なお コントロール変数として 本人の年齢 子ども数を加えた これらの説明変数のうち 夫の年収 親との同居 地域 の三つは調査時点もしくは調査時点近辺の情報であるため 末子出産時の状況とは必ずしも一致しない しかしながら 出産時の夫の年収や同居家族は調査項目には含まれていないこと 待機児童数は近年のみ得られる情報であることから これらの変数は 末子出産時と調査時点および調査時点近辺とでは大きくは異ならないと仮定して 調査時点および調査時点近辺の情報を分析に用いる これはかなり強い仮定であるが 他の変数では代替が困難であり 本稿での分析に必要と考えて説明変数に加えたことをあらかじめ断っておく 以上のように設定した変数の記述統計量を表 3に示す 186

表 3 被説明変数 説明変数の記述統計量 度数 最小値 最大値 平均値標準偏差 就業中ダミー 1126 0 1.378.485 年齢 1144 20 49 39.417 6.459 子ども数 1144 1 4 1.981.785 学歴中学 高校 ( 基準 ) 1144 0 1.427.495 専門学校 1144 0 1.176.381 短大 高専 1144 0 1.189.392 大学 大学院 1144 0 1.208.406 初職の従業上の地位正規 1144 0 1.776.417 非正規 ( 基準 ) 1144 0 1.211.408 経営者 自営業主 1144 0 1.013.114 初職の職種専門 1144 0 1.247.432 事務 ( 基準 ) 1144 0 1.362.481 販売 1144 0 1.223.416 マニュアル 1144 0 1.168.374 夫収入 ( 対数値 ) 858 0.00 8.29 6.108.676 15 歳時母就業ダミー 1110 0 1.803.398 同居 非同居非同居 ( 基準 ) 1144 0 1.782.413 実の親と同居 1144 0 1.100.300 義理の親と同居 1144 0 1.118.323 地域ダミー 1144 0 1.416.493 分析は二段階に分けて行う まず 被説明変数の 出産時無職 と 出産前無職 を合併して 無職 とし これを基準カテゴリーとする 就業中 を予測するロジスティック回帰分析を行う ( 分析 1) 次に 無職 を元のカテゴリーに戻して多項ロジスティック回帰分析を行う ( 分析 2) いずれの場合も 末子が実子である場合に限定するが この限定により分析から除外されるのは5ケースのみである 以下 3 節で分析結果を示し 4 節で考察を行う 3. 分析結果 3.1 分析 1 まず全体像をつかむために 被説明変数を就業 非就業の二値変数としてロジスティック回帰分析を行った 表 4は 末子出産時に 就業中 である確率を推定した結果である モデル 1は夫婦外部の援助の有無を含まないモデルであり モデル2は 外部の援助としての親との同居と地域特性を加えたモデルである モデル1から 初職が 経営者 自営業主 であると 非正規雇用 に比べて末子出産時に 就業中 になりやすいことがわかる また 初職が専門職であると 事務職に比べて 就業中 になりやすい 夫の収入については 高いほど 就業中 になりにくい効果が認められ 先行研究と一致する結果である さらに 本人が15 歳時 187

に母親が働いていた場合は末子出産時に 就業中 になりやすい ロールモデル仮説を支持する結果である 一方 学歴については 甘い基準でみると 中学 高校 学歴に比べて 大学 大学院 学歴の場合は 就業中 になりやすいという結果であり 若い世代を対象にした先行研究と一致している モデル2は 親族による援助や社会的援助の要因を加えた効果を測っている モデル1よりも適合度が改善しており 親族による援助や社会的援助の効果が認められる 親との同居については 実の親との同居 は親族による援助として有効であり 末子出産時の就業継続を促進する効果を持つ また 待機児童が少ない地域に住んでいることは末子出産時に 就業中 になりやすい効果を持っていると言える 分析 1により 学歴 本人の初職 親との同居 地域特性が末子出産時の就業継続と関連を持つことがわかったが 次項では いつ仕事を辞めてしまうかというタイミングを考慮した分析を行う 表 4 末子出産時就業の規定要因 ( ロジスティック回帰分析基準 : 非就業 ) モデル1 モデル2 係数 標準誤差 オッズ比 係数 標準誤差 オッズ比 年齢 -.022.012.978 + -.023.013.977 + 子ども数.157.099 1.170.142.101 1.153 学歴中学 高校 ( 基準 ) 専門学校.299.221 1.349.375.225 1.455 + 短大 高専.121.223 1.128.177.226 1.193 大学 大学院.392.210 1.479 +.511.215 1.667 * 初職の従業上の地位正規.314.205 1.369.360.210 1.434 + 非正規 ( 基準 ) 経営者 自営業主 1.651.703 5.214 * 1.678.708 5.356 * 初職の職種専門.592.192 1.807 **.571.193 1.770 ** 事務 ( 基準 ) 販売 -.365.225.695 -.326.227.722 マニュアル -.176.239.839 -.167.240.846 夫収入 ( 対数値 ) -.363.125.696 ** -.325.123.723 ** 15 歳時母就業ダミー.438.195 1.550 *.352.197 1.422 + 同居 非同居非同居 ( 基準 ) 実の親と同居.670.290 1.955 * 義理の親と同居.297.228 1.346 地域ダミー -.356.161.700 * 定数 1.380.841 3.975 1.252.838 3.497 χ 2 60.950 *** 73.447 *** -2 対数尤度 1031.329 1018.832 Nagelkerke R 2.097.116 ケース数 824 824 注 : *** p <.001, ** p <.01, * p <.05, + p <.10. 188

3.2 分析 2 前項の分析で得られた末子出産時に就業を継続する要因は 出産直前に離職するか それよりも以前に離職するかの違いに関連を持つだろうか この問いを検討するために 被説明変数を いつ無職になったかを考慮に入れた3カテゴリー変数 ( 出産前無職 出産時無職 就業中 ) として多項ロジスティック回帰分析を行う 表 5はその結果を示したものである モデル1の 出産前無職 をみると 初職が 経営者 自営業主 であること 初職が 専門職 であること 本人が15 歳時に母親が就業していたことは 末子出産より前に仕事を辞めてしまうよりも出産時に就業中であることの確率を高めることがわかる また 夫の収入が高いと末子出産より前に離職してしまう傾向がある 一方 出産時無職 をみると 大学 大学院 の学歴 初職が 専門職 であることは 末子出産時に仕事を辞めてしまうよりも出産時に就業中であることの確率を高めている 大学 大学院 の学歴は 末子出産より前に辞めてしまうか 出産時に就業を継続するかの違いには影響を及ぼさなかったが 末子出産時に仕事を辞めるよりも就業を継続する可能性を高めている このことは 次のように解釈できる 大学 大学院 という相対的に恵まれた学歴を持つ人は 末子出産より前に仕事を辞めてしまう人と末子出産時も就業継続する人とに二極化しているということである 辞めてしまう層は 早々と辞めてしまうので 中学 高校 学歴を持つ人との違いが現れない 他方で 出産ぎりぎりまで仕事を続けた人たちの中では 大学 大学院 学歴の人の方が仕事の条件に恵まれているので 中学 高校 学歴の人よりも出産時も就業継続しやすいという結果が現れたのである 次に コントロール変数である年齢と子ども数をみると 比較するカテゴリーによって異なる影響の現れ方をしている 年齢が高いと末子出産時に就業継続するよりも出産より前に仕事を辞めてしまう確率が高い 世代が上であるほど早々に退職する傾向が認められる 一方 子どもの数が多いほど末子出産時に離職するよりも就業継続する確率が高い 子どもが多いほど育児に手がかかって就業継続しにくいというよりも 子どもが多いと生活費がかさむため働き続けざるを得ないという状況を表していると考えられる 就業中 と 出産時無職 との比較では 夫の収入が有意でないこともこの解釈と整合的である モデル2は 夫婦外部の援助の効果を加えたもので モデルの適合度はモデル1よりも高い 効果の現れ方はおおむねモデル1と類似している つまり 夫婦外部からの援助を説明変数に加えても 初職の効果や夫の収入の効果は依然として残っている ただし 分析 1と比較すると 二項ロジスティック回帰分析でははっきりと現れた親との同居の効果は 多項ロジスティック回帰分析ではやや曖昧にしか現れていない 地域特性の効果の現れ方は大変興味深い すなわち 出産前無職 との比較では有意な効果を持ち 社会的な育児支援が不足していることは 末子出産時に就業継続するよりも出産前に仕事を辞めてしまうことを促進している その一方で 出産時無職 との比較では有意にならず 社会的な育児支援が不足していると出 189

産時に就業継続をあきらめて仕事を辞めてしまうという傾向は認められない 出産ぎりぎりまで仕事を続けた人にとっては 出産時に仕事を辞めるかどうかについて 社会的な育児支援の充実度は影響を与えないのである 社会的育児支援は 出産時の就業継続を促進する政策的意図があると常識的には考えられるが 本稿での分析結果はそのような常識的理解と一致しない 次節ではこのことの意味を考察する 表 5 末子出産時就業の規定要因 ( 多項ロジスティック回帰分析基準 : 就業中 ) モデル1 モデル2 係数 標準誤差 オッズ比 係数 標準誤差 オッズ比 出産前無職 年齢.034.014 1.034 *.034.014 1.035 * 子ども数.114.107 1.120.133.109 1.142 学歴中学 高校 ( 基準 ) 専門学校 -.354.239.702 -.438.244.645 + 短大 高専 -.114.239.892 -.177.242.837 大学 大学院 -.256.224.774 -.377.229.686 初職の従業上の地位正規 -.287.220.751 -.318.225.728 非正規 ( 基準 ) 経営者 自営業主 -1.714.828.180 * -1.765.837.171 * 初職の職種専門 -.594.207.552 ** -.569.209.566 ** 事務 ( 基準 ) 販売.377.239 1.458.346.241 1.413 マニュアル.277.253 1.319.264.255 1.302 夫収入 ( 対数値 ).437.142 1.548 **.401.139 1.494 ** 15 歳時母就業ダミー -.455.208.634 * -.364.210.695 + 同居 非同居非同居 ( 基準 ) 実の親と同居 -.570.314.565 + 義理の親と同居 -.211.242.810 地域ダミー.425.172 1.530 * 定数 -3.226.959.040 ** -3.155.952.043 ** 出産時無職 年齢 -.001.017.999.001.017 1.001 子ども数 -.987.162.373 *** -.975.162.377 *** 学歴中学 高校 ( 基準 ) 専門学校 -.131.310.877 -.213.314.808 短大 高専 -.114.308.892 -.161.310.851 大学 大学院 -.742.310.476 * -.858.314.424 ** 初職の従業上の地位正規 -.382.277.682 -.456.281.634 非正規 ( 基準 ) 経営者 自営業主 -1.638 1.101.194-1.602 1.101.201 初職の職種専門 -.635.287.530 * -.632.289.532 * 事務 ( 基準 ) 販売.290.306 1.337.238.308 1.268 マニュアル -.159.343.853 -.171.344.843 夫収入 ( 対数値 ).192.180 1.212.146.174 1.157 15 歳時母就業ダミー -.400.267.671 -.336.268.715 同居 非同居非同居 ( 基準 ) 実の親と同居 -.840.438.432 + 義理の親と同居 -.571.358.565 地域ダミー.181.226 1.199 定数.846 1.175 2.331 1.145 1.167 3.143 χ 2 138.760 *** 153.279 *** -2 対数尤度 1558.765 1544.246 Nagelkerke R 2.178.195 ケース数 824 824 注 : *** p <.001, ** p <.01, * p <.05, + p <.10. 190

4. 考察本稿の問いは どのような条件を備えた女性が子どもを持ちつつも働き続けることができているのかということであった これまでの分析から 末子出産後も働き続けることに寄与する要因として 学歴 ( 大学 大学院 ) 初職が 経営者 自営業主 であること 初職が 専門職 であること 夫の収入が少ないこと 15 歳時に母親が就業していたこと が認められた これらの結果は多くの先行研究と一致している それに加えて 先行研究ではあまり指摘されてこなかったこととして 待機児童数を指標とした社会的育児支援が不足しているという地域特性は 有意に就業継続の確率を低めることが明らかになった ただし 末子出産より前に仕事を辞めるか 末子出産時に仕事を辞めるかの違いを考慮すると 地域特性の影響の現れ方が異なっている 本節ではこのことの意味を考えてみる まず 出産前無職 と 出産時無職 というカテゴリーの意味を考えよう 出産前無職 は 末子出産ぎりぎりまで仕事を続けようと努力するよりも 出産を予期しているかどうかにかかわらず 早々に職場から離脱してしまうという離職パタンである それに対して 出産時無職 は できるだけ仕事を続けたいという意思 あるいは続けなければならない理由があったものの 条件がそろわず末子出産を機に仕事を辞めるという離職パタンである 以上のように カテゴリーの意味づけを行った上で 分析結果を振り返ってみよう 地域 変数は 分析 1の二項ロジスティック回帰分析によると 末子出産時の就業継続確率を有意に低める効果を持っていたが 分析 2の多項ロジスティック回帰分析によると 末子出産時の就業継続確率を低める効果は 出産時無職 との対比では現れず 出産前無職 との対比で現れていた この結果は一見すると意外である なぜなら 待機児童とは 保育所に入所させたくても入所させられない乳幼児を指すので 出産時に保育所入所という条件が得られないから仕事を辞めざるを得ない ( 出産時の離職 ) という筋道を想定するのがもっともらしいからである ところが実際にはそうではなく 待機児童が多い地域に住むことは 出産前無職 の確率を高めるのである 先ほどのカテゴリーの意味づけを用いるなら 待機児童数が多い地域に住むことは 末子出産時に仕事を続けようと努力するよりも 早々に職場から離脱してしまう可能性を高めているということになる これをどのように解釈すればよいだろうか 保育所の整備は 乳幼児をもつ女性が働き続けることの直接的な支援として捉えることが一般的であろう しかしながら実際にはそれ以上の間接的な効果を持っていると考えられる それはこういうことである 子どもを産んでも保育所に預けることができるだろうという期待が持てないと 出産時まで就業継続する意欲をそがれてしまうのである したがって 社会的な育児支援が不足している地域に住んでいると 女性は出産時まで就業継続するよりも早々と離職してしまうということになる 逆に言えば 社会的な育児支援が整っていると できる限り就業を継続しようとする意欲を持ち続けることができるかもしれない これが間接的な効果という意味である 子どもを産み育てながら就業継続するためには 産んだ時点の諸条件が整っ 191

ているだけでなく 子どもが成長する過程において養育と就業を両立させる条件が持続的に整っていることが必要である 当たり前のことながら 産んだらしまい ではないからである そうした長期的な見通しがないと 子どもを持ちながら仕事を続けようという意欲を保つことはむずかしいだろう 雇用継続の 支援の効果を高めるためには 企業 家族 地域社会による支援が相乗的に機能する ことが重要であるという指摘 ( 今田 池田 2006: 43) があるように 家族 親族の協力や仕事の内容 職場の理解といった条件のみならず 社会的な育児支援を充実させることは 女性が子どもを産み育てながら就業継続できるという長期的展望をもつためには欠かせない条件であると言えよう [ 文献 ] 平田周一.2011. 女性のライフコースと就業:M 字型カーブの行方 石田浩 近藤博之 中尾啓子編 現代の階層社会 [2]: 階層と移動の構造 東京大学出版会 :223-237. 今田幸子 池田心豪.2006. 出産女性の雇用継続における育児休業制度の効果と両立支援の課題 日本労働研究雑誌 48(8):34-44. 小島宏.1995. 結婚 出産 育児および就業 大淵寛編 女性のライフサイクルと就業行動 大蔵省印刷局 :61-87. 厚生労働省.2009. 保育所の状況( 平成 21 年 4 月 1 日 ) 等について 添付資料 3. http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/09/h0907-2.html( 最終アクセス日 2017 年 12 月 31 日 ) 厚生労働省.2010. 保育所関連状況取りまとめ( 平成 22 年 4 月 1 日 ) 資料 3. http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000nvsj.html( 最終アクセス日 2017 年 12 月 31 日 ) 厚生労働省.2011. 保育所関連状況取りまとめ( 平成 23 年 4 月 1 日 ) 資料 3. http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001q77g.html( 最終アクセス日 2017 年 12 月 31 日 ) 厚生労働省.2012. 保育所関連状況取りまとめ( 平成 24 年 4 月 1 日 ) 資料(3):8. http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002khid.html( 最終アクセス日 2017 年 12 月 31 日 ) 厚生労働省.2013. 保育所関連状況取りまとめ( 平成 25 年 4 月 1 日 ) 資料(3):10. http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000022684.html( 最終アクセス日 2017 年 12 月 31 日 ) 厚生労働省.2014. 保育所関連状況取りまとめ( 平成 26 年 4 月 1 日 ) 資料(3):10. http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000057750.html( 最終アクセス日 2017 年 12 月 31 日 ) 厚生労働省.2015. 保育所等関連状況取りまとめ( 平成 27 年 4 月 1 日 ) 及び 待機児童解消加速化プラン 集計結果を公表 保育所等関連状況取りまとめ資料 (3):15. http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000098531.html( 最終アクセス日 2017 年 12 月 31 日 ) 永瀬伸子.1999. 少子化の要因: 就業環境か価値観の変化か : 既婚者の就業形態選択と出産時期の選択 人口問題研究 55(2):1-18. 西村純子.2014. 子育てと仕事の社会学: 女性の働きかたは変わったか 弘文堂. 192

大沢真知子 鈴木春子.2000. 女性の結婚 出産および人的資本の形成に関するパネルデータ分析 : 出産退職は若い世代で本当に増えているのか 家計経済研究 48:45-53. 新谷由里子.1998. 結婚 出産期の女性の就業とその規定要因:l980 年代以降の出生行動の変化との関連より 人口問題研究 54(4):46-62. 仙田幸子.2002. 既婚女性の就業継続と育児資源の関係: 職種と出生コーホートを手がかりにして 人口問題研究 58(2):2-21. 田中重人.1998. 高学歴化と性別分業: 女性のフルタイム継続就業に対する学校教育の効果 盛山和夫 今田幸子編 女性のキャリア構造とその変化 (1995 年 SSM 調査シリーズ12) 1995SSM 調査研究会 :1-16. 大和礼子.2011. 女性のM 字型ライフコースの日韓比較 : 出産後の再就職に注目して 佐藤嘉倫 尾嶋史章編 現代の階層社会 [1]: 格差と多様性 東京大学出版会 :161-175. 193

Who can keep working and continue to take care of a child? Kenji Agata (Doshisha University) Abstract This paper explores the factors that enable women to keep working while raising children by using the 2015 SSM survey data. The analysis was based on the work history of women aged 20 to 49 years old. It shows that the following factors pushed the respondents to continue working even after they gave birth to their last child: women whose academic background is university/graduate school, women whose first employment status is manager/self-employed, women whose first job is professionals, husband's low income, and respondents mothers were working when respondents were 15-years-old. In contrast, respondents who live in a prefecture where the social childcare support (it is measured by the number of children waitlisted) is weak decreases the probability of continuing to work when respondents gave birth to their last child. According to the result of multinomial logistic regression analysis, living in a prefecture where the social childcare support is weak promotes leaving job before the birth of the last child rather than continuing to work. This fact implies that social childcare support has more effects other than direct support to continue working i.e., promoting effect for the motivation to continuous work. Key words: continuing to work, the number of the waiting-list children, social childcare support 194