報告書の要点 人事管理の進むべき方向 (3 頁参照 ) グローバル化の進展 社員の働くニーズと働き方の多様化等 経営環境の変化や多様性への対応が企業の競争力を左右 企業の進むべき方向は 社員の多様化をいかして 経営の高付加価値化 グローバル化に対応できる人材を確保し活用する 人事管理を構築すること

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Transcription:

報道機関各位 2013 年 10 月 31 日 これからの雇用処遇研究会 報告書発表 社員の多様化をいかす人事管理の構築 公益財団法人日本生産性本部 公益財団法人日本生産性本部は これからの雇用処遇研究会 ( 主査 : 今野浩一郎 学習院大学教授 雇用システム研究センター所長 ) を設け 雇用の多様化やグローバル化の進展に対応するわが国企業の人事管理の進むべき方向を検討してきた この度 その成果を 社員の多様化をいかす人事管理の構築の基本的考え方としてとりまとめ 発表した 報告書の発表にあたって 急がれる企業の人事管理改革 人口減少と少子高齢化 グローバル経済の進展など 企業の経営環境が急激に変化している また ワークルールの見直しやジョブ型正社員制度の導入をはじめとした企業の人事管理の見直しについて多くの提案が出されている 社員の側も働くニーズと働き方の多様化が進んでおり 企業を取り巻くこうした人に関わる共通の環境変化への対応が遅れれば競争力は確実に失われていく 社員の多様化をいかす人事管理の構築に向けて 上記のような背景のもと 本報告書では 今後進めるべき人事管理改革について基本的な考え方をまとめた これは新たな人事処遇システムを具体的に設計するうえでの基盤となるものである 当本部では 今後この考え方に基づき 新たな人事処遇システムのフレームワークを開発し 制度設計に向けての提案につなげていく 連絡先 公益財団法人日本生産性本部ワークライフ部雇用システム研究センター ( 担当 : 渡辺 大野 加藤 ) 150-8307 東京都渋谷区渋谷 3-1-1(TEL.03-3409-1123/FAX.03-3409-2617) 1

報告書の要点 人事管理の進むべき方向 (3 頁参照 ) グローバル化の進展 社員の働くニーズと働き方の多様化等 経営環境の変化や多様性への対応が企業の競争力を左右 企業の進むべき方向は 社員の多様化をいかして 経営の高付加価値化 グローバル化に対応できる人材を確保し活用する 人事管理を構築すること 多様化をいかす人事管理 の3つの戦略(4 頁参照 ) 人材の確保 配置のシームレス化人材の確保や仕事への配置にあたり 雇用形態の違いや性別等でその範囲を区分する人事管理では企業の人材活用力の劣化を招く 多様な人材を活用できるよう こうした区分を取り払う ( シームレス化する ) 人材と仕事の最適マッチングの高度化確保する人材の範囲と人材を配置する仕事の範囲が広がる中 最適人材を選定 配置する精度を高めることが重要 そのためには 社員能力の 見える化 を進めることが必要 人材育成力の向上社員の多様化に対応した人材育成は個別性を強め 能力開発施策とキャリア開発支援策の2 本立てとなる人材育成力の向上が重要 多様化を統合する人事管理 の整備(4 頁参照 ) 組織を構成する社員の行動 価値観や働く意識が多様化するなかで 組織目標に向かって統合することの困難さは確実に高まっている 現在あるいは将来にわたる人材価値に着目することで組織全体の統合ができる 仕事の重要度と達成度に基づく短期視点の価値と 将来性も含めた能力に基づく長期視点の価値を明示化することにより 社員は価値を高める方向に向かい組織統合が進む 2

報告書概要 1. 人事管理の進むべき方向働くニーズ 働き方の多様化 経営活動のグローバル化および高付加価値型の経営スタイルへの転換等の環境変化のもと 企業の進むべき方向は 社員の多様化をいかして 経営の高付加価値化 グローバル化に対応できる人材を確保し活用する 人事管理を構築することである 人事管理の基本的な枠組みには 短期的な経営成果を実現するための パフォーマンス マネジメント や長期的観点から組織の人材力の向上をはかるための 人材マネジメン ト さらに これらと連携して行う社員の能力開発とキャリア形成支援がある これらの基本的な枠組みが環境変化のもとでも機能するためには 社員の 多様化をいかす人事管理 と多様化を超えて社員を組織目標に統合するための人事管理 ( 多様化を統合する人事管理 ) が必要になる いま 多様化をいかす人事管理 と 多様化を統合する人事管理 の構築が求められている 短期的な経営成果の向上 個人の能力向上 長期的な組織能力の向上 短期的な視点にたつ パフォーマンス マネジメント 長期的な視点にたつ 人材マネジメント 報酬 戦略的育成計画 戦略的活用計画 事業計画 評価 ( 現在価値の評価 ) 目標設定 能力開発キャリア開発 社員の能力 ( 将来価値 ) の分析 組織の人材力分析 多様化をいかす人事管理 多様化を統合する人事管理 3

2. 多様化をいかす人事管理 の 3 つの戦略 多様化をいかす人事管理 を構築するには以下の 3 つの戦略が重要になる 人材の確保 配置のシームレス化 これまでのわが国の人事管理をみると 男性社員と女性社員 総合職と一般職 正社員と非正社員等のような区分を用いて人材の確保と仕事への配置の範囲を細かく区分するという方法をとってきたが こうした方法は社員の多様化が進む中で企業の人材活用力の劣化を招いている 多様化をいかす人事管理 では このような区分を取り払い( シームレス化し ) できる限り広い範囲の社員から適材を確保し できる限り広い範囲から適所を探して社員を配置することが求められる 人材と仕事の最適マッチングの高度化 人材の確保 配置のシームレス化 により 確保する人材の範囲と人材を配置する仕事の範囲が拡大されるが そのもとで 多様化をいかす人事管理 を機能させるためには 仕事に求められる人材要件と人材のもつ能力特性をマッチングする精度を高めることが重要になる そのためには 社員能力の 見える化 を進め それに基づいて最適な人材の選定と配置を行うことが必要である 人材育成力の向上 多様な社員をいかすには これまでの年功等に基づく集団的 画一的な育成では対応できない このことは人材育成の個別性の高まりを意味し 職場での適切な対応が課題となっている そこで 能力開発施策とキャリア開発支援策の2つからなる人材育成力の向上戦略が重要となる 3. 多様化を統合する人事管理 の整備組織を構成する社員の行動 その背景にある価値観や働く意識が多様化するなかで 組織目標に向かって統合することの困難さは確実に高まっている 組織を効率的かつ効果的に運営するには これまで以上に組織統合を実現し生産性向上をはかる人事管理上の装置を整備することが求められている 組織統合を実現する方法は様々であるが 現在あるいは将来にわたる人材価値に着目し て整理することで組織全体の統合ができる 人材価値による組織統合は 社員が多様化 するなかでこれからの企業が追求すべき方向といえる 4

人材価値には 現在価値 と 将来価値 がある 現在価値 は人材の短期的な価値であり 仕事遂行の結果としての成果で決める さらに 現在価値が明確に設定されると 社員は現在価値を高める方向に向かって共同歩調をとり組織統合が進む 短期的な視点にたつ パフォーマンス マネジメント はこれに相当する 将来価値 は人材の長期的な価値であり 仕事遂行に求められる能力で決まる さら に 将来価値が明確にされると 社員は将来価値を高める方向に向かって行動すること になり組織統合が進む 長期的な視点にたつ 人材マネジメント はこれに相当する 4. 人事管理部門のこれからの方向女性 高齢者 非正社員 外国人社員等が増えるなかで社員の働く意識と働き方が急速に多様化している つまり伝統的な人事管理スタイルが機能するための前提条件であった社員の均質性の条件は大きく変化した このため 人事管理部門が中央集権的に管理する伝統的な人事管理体制だけでは機能不全となり 人事管理機能を現場に委譲する人事機能のライン化の方向も必要となっている 人事管理部門の新たな役割として ライン部門の支援及び個々の社員のキャリア形成支援が求められている ライン部門の支援 ~ 人事管理部門の社内人事コンサルタント化現場の管理者が人事管理の重要な担い手になるための研修等の支援や人事管理ツールを提供する等の支援機能を果たす つまり社内人事コンサルタントとしての役割が求められる キャリア形成の支援 ~ 人事管理部門の社内キャリア コンサルタント化社員の多様化のなかで 社員の求める働くニーズと働き方 さらにキャリアビジョンの個別性が高まっている こうした中で キャリアの専門家として長期の能力開発 キャリア開発を支援する等のサービスを個々の社員にきめ細かく提供することが人事管理部門の新たな重要な役割になる 人事管理部門のスタッフには 今後期待される役割像に向けた人事コンサルタントとし ての専門性とキャリア コンサルタントとしての能力開発が求められる 5

参考 外資系金融業 A 社における 社員能力の 見える化 の事例 社員の現在価値と将来価値に基づいて社員を9つのタイプに分類し タイプごとに長期的な観点から配置とキャリア管理の施策が展開されている 同社ではこれを ナイン ボックス 制度と呼んでおり 対象者はマネージャー以上のランクにある社員である この制度により 配置にあたっての人選の透明性が高まるとともに 人と仕事のマッチングにおける人材探索力が高まる 1Leadership Conpetency 等で評価する 2 次のポストに昇進する能力を備えているかをみるためのもの 将来性 生き残りが問われている人材 High Middle Low 新入社員 リスクのある社員 非常に将来性の高い社員 将来性に余地がある社員 貢献度が固定した社員 Low Middle High 貢献度 貢献度の高い社員 当該部門での 抱え込み 禁止の人材群 豊富な経験に基づく安定した成果をあげる 会社を支える人材 いま発揮されているパフォーマンスを評価する 小売 B 社における 正社員 非正社員の人事管理上の融合 に向けた事例 B 社はまず非正社員を販売職かスタッフ サービス職か 働き方がフルタイム勤務か短時間勤務かによって4つのタイプに区分し そのうえでキャリア アップの仕組みを整備している 例えば販売職についてみると 非正社員は短時間勤務からフルタイム勤務 フルタイム勤務から正社員へと転換できる また非正社員の範囲内でも複数段階にわたってキャリア アップする仕組みが整備されている さらに進めた第二ステップでは 非正社員と正社員の人事管理上の融合をはかることを改革の目標とした まず社員区分制度は 社員を業務上のニーズに合わせて働く時間と場所 仕事内容を柔軟に変えることができる従来型の正社員と 生活上の都合を重視するために働く時間等に制約がある社員に区分する仕組みとした そのうえで人材活用 配置は 従来型正社員と制約のある社員を同等に扱う こうした方向で人事管理を整備することで 非正社員の労働意欲と定着性が高まり 組織の生産性が向上するという経営上の効果が期待できる 6

外資系化学メーカー C 社の 人材価値による組織統合 の事例 B 社は職能資格制度等に基づく日本型をとってきたが 21 世紀に入り 人事管理の基本骨格を職務等級制度等に基づく米国本社型に転換し さらに リーマンショック後には事業活動のグローバル化に合わせる制度改革を行っている その結果 給与は仕事と成果の評価により行い 昇進 配置は バリュー評価 ( グローバルに適用される行動評価基準に基づいて行われる評価 ) により行われている こうしたなかで苦労したことは 経営活動と人材活用のグローバル化が進むと 多様な価値観をもつ社員が同じ場で協働し 競争し 処遇されることになるので 多様な社員が納得できる ( つまり 多様な社員を統合できる ) 人材価値の評価の仕組みをいかに開発するかであった 現在価値の評価については仕事と成果で決める方法を国境を超えて適用し 将来価値の評価についてはコンピテンシー ( 行動特性 ) を開発した コンピテンシーという将来価値の評価基準を国境を超えて多様な社員に適用することでグローバルな組織統合をはかろうとしている *** 本報告書の刊行予定 本報告書は 公益財団法人日本生産性本部 生産性労働情報センターより 社員の多様 化をいかす人事管理の 3 つの戦略 として 2013 年 11 月上旬に刊行を予定している お問い合わせ先 公益財団法人日本生産性本部ワークライフ部雇用システム研究センター ( 渡辺 大野 加藤 ) Tel.03-3409-1123 / Fax.03-3409-2617 7