技術専攻の学 生に向けた授業「材料力」

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まえがき 材料力学の教科書を見ると 2ページ目から 微分 積分 行列の式などがずらっと並んでいます もう それを見るだけで拒絶反応を起こしてしまう方もおられるのではないでしょうか? 確かに 三次元で評価しようとするとそのような計算が必要になるかもしれませんが 一次元 二次元なら 簡単な式にまとめられ

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問題 2-1 ボルト締結体の設計 (1-1) 摩擦係数の推定図 1-1 に示すボルト締結体にて, 六角穴付きボルト (M12) の締付けトルクとボルト軸力を測定した ボルトを含め材質はすべて SUS304 かそれをベースとしたオーステナイト系ステンレス鋼である 測定時, ナットと下締結体は固着させた

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. 軸力作用時における曲げ耐力基本式の算定 ) ここでは破壊包絡線の作成を前提としているので, コンクリートは引張領域を無視した RC 断面時を考える. 圧縮域コンクリートは応力分布は簡易的に, 降伏時は線形分布, 終局時は等価応力ブロック ( 図 -2) を考えることにする. h N ε f e

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Transcription:

愛知教育大学技術教育研究,3,pp. 15~20,October,2016 技術専攻の学生に向けた授業 材料力学 の授業実践 Class practice of the lecture "Strength of materials" for the technology education student 北村一浩愛知教育大学技術教育講座 Kazuhiro Kitamura Department of Technology Education, Aichi University of Education キーワード : 材料力学, 授業実践, 機械工学 Keywords: strength of materials, class practice, mechanical engineering 1. はじめに 本稿は, 技術専攻の大学生に対する 材料力学 の授業実践を通して見えてきた効果的な教材の構成と展開を報告するものである さて, 機械工学における専門知識は, 材料力学, 機械力学, 熱力学, 流体力学の四力学と実際の機械を実現するための機械設計 工作および機械制御工学などである また機械工学の専門科目は, 材料力学, 流体工学, 熱工学, 機械設計 工作, 機械力学 制御という五つの分野で構成されている 本学中等教育教員養成課程技術専攻では中学校 技術科で求められる幅広い分野の知識を習得するため, 工学系の幅広い専門科目をまんべんなく履修するカリキュラムになっている そのため, 工学系大学と比較して機械工学科の科目が少なく 機械工学概論 (1 年生後期 ), 原動機 (1 年生後期 ), 材料力学 (2 年生前期 ), 機構学 (3 年生後期 ), 機械要素力学 (4 年生後期 ), 機械実験 (3 年生前期 ) の 6 科目のみである 次に 材料力学 の授業計画上の留意事項について述べる 1 年次に開設されている機械工学概論などの機械系の科目はなく, 学生は 2 年生でいきなり 材料力学 の授業を受ける 材料力学 の授業は,2 年次の専門必修科目として開設されており, 授業で扱う内容は, 大学の機械工学科で行なわれている 材料力学 と同様である しかし, 機械工学の基礎科目が少ないため, 工業系の大学の機械工学科で行われているすべての授業内容を半期 (15 回の講義 ) の 材料力学 の授業で行うことは困難である そのため, 材料力学 授業では, やさしい内容の教科書を使用し, 重要と考えられる部分のみで授業を行うとともに, 演 習の時間を多く設け, 確実に内容が身につくような計画で授業を行っている 以上の考えから, 材料力学 の授業では, はじめに材料力学で扱う内容について示すとともに, 国際単位系と工学単位系について扱い, その後は教科書に沿って, 応力とひずみ, フックの法則と弾性係数, 棒の自重による応力と変形, 引張または圧縮の不静定問題, 円断面棒のねじり, はりのせん断力 曲げモーメント, はりの曲げ せん断応力, はりのたわみについて扱うことにした 現在本学技術専攻の学生に向けて行っている具体的な全体授業計画を 2 章で示す 2. 全体授業計画 全体の授業計画を表 1 に示す 15 回で以下の 内容について授業を行う また, 実践している授 業の詳しい内容を 3 章に示す 材料力学の授業で は, 実習を 5 回入れるなど, 計算問題に慣れるた めの工夫をしている 時間 表 1 授業全体計画 学習内容 1 材料力学で扱うこと, 国際単位系と工 学単位系 2 応力とひずみ 3 フックの法則と弾性係数 4 第 1 回から第 3 回に関連した演習問 題 5 棒の自重による応力と変形 6 引張または圧縮の不静定の問題 15

北村一浩 と変形, 幾何学的形状, 境界条件 ) について説明 7 第 5 回,6 回に関連した演習問題 した 最後に, 国際単位系の説明と, 工学単位系 との換算方法について, 例題を交えて扱った 第 8 円断面棒のねじり 1 回目の例題の学生の解答は良好であった 3.2. 応力とひずみ 9 第 8 回に関連した演習問題 第 2 回目の授業内容を以下に示す ここでは, 応力とひずみについて説明した 図 1に引張応力 10 はりのせん断力 曲げモーメント の説明を示している また, 図 2にリベットに作 用するせん断応力を示している 応力は, 単位断 11 はりの曲げ せん断応力 面積あたりの荷重のことで, 引張応力, 圧縮応力, せん断応力, 曲げ応力などがあることを示した 12 第 10 回,11 回に関連した演習問題 13 はりのたわみ 14 第 13 回に関連した演習問題 15 全体のまとめ 図 1 応力の説明 3. 実践している授業の詳しい内容授業実践している授業の詳しい内容を以下に示す 3.1. 材料力学で扱うこと, 国際単位系と工学単位系第 1 回目の授業内容を以下に示す 第 1 回目では, 材料力学で扱うことと, 国際単位系と工学単位系について扱った はじめに, 材料力学で扱うことについて説明した 材料力学は, 任意の荷重条件下にある機器や構造物の各部に作用している力や変形状態を明らかにし, それらの結果を機器や構造物の安全設計に役立てるための基礎的学問であることを示した 次に, 等方性 ( 材料中のある点における性質が方向によって変わらないこと ) 均質性( 材料の性質がその位置によらず変わらないこと ) 連続性( 材料の内部に空洞, き裂, 欠陥および異物質がないこと ) の仮定を説明した 次に, 材料力学で重要な微小変形の仮定 ( 外力によって生ずる変形の大きさは, 物体自体の寸法に比べてきわめて小さいと仮定する ) について示した 次に, 材料力学の解析の手法 ( 釣り合い, 力 図 2 リベットに作用するせん断応力 16

愛知教育大学技術教育研究,3,pp. 15~20,October,2016 次に, ひずみについて説明した ひずみは, 伸ど遠心力がかかる場合はにも, 考慮する必要があびを元の長さで割ったもので, 縦ひずみ, 横ひずる 図 3に自重を考慮した応力と変形の関係を示み, せん断ひずみなどがあることを示した また, す 学生は, 自重を考慮する一様断面棒, 鋼で縦ひずみと横ひずみの比のことをポアソン比と言できた線材を垂らすことができる最大長さ, 平うことを示した 学生は, 段付き棒に作用する応等強さの形状を持った鋼材の応力と最大伸び, 力とひずみ, 一定断面の縦ひずみ, 横ひずみ, 天井から吊るされる直円断面棒, 遠心力によポアソン比 の演習を行うことにより, 計算に慣る応力と変形 などの演習を行うことにより, 計れるができた 算に慣れるができた 3.3. フックの法則と弾性係数第 3 回目の授業内容を以下に示す まず, 弾性と塑性の違いについて説明した 弾性は, 物体に荷重を加えると変形し, 荷重を取り除くと変形量が完全になくなる性質を言う この性質は, 弾性限度内のある範囲において正比例的関係があることが実験的にわかっている この現象はフックの法則として知られており, 中学校理科で扱った内容である また, フックの法則が成立する限界の応力を比例限度という 弾性限度を超えて荷重を 付加すると, その荷重を取り除いても変形が残留図 3 自重を考慮した応力と変形する現象が現れる この現象を塑性という 引張 3.5. 引張または圧縮の不静定の問題変形による応力とひずみの関係は,σ=Eεで表第 6 回目の授業内容を以下に示す 静定問題とされる ここで σは応力,εはひずみ,eは縦は, 構造物の部材に作用する力が, 静力学的な力弾性係数またはヤング率と呼ばれる Eは物質にとモーメントの釣り合い式のみから求まるものを固有の値である また, 長さ l で一様断面積 A を言う しかし, 静力学的な釣合いの式のみからで有する棒の伸びは,δ=Pl/AE の関係で表され, は, 各部材に作用する力が求まらず, 構造物の変 δは材料の伸び,p は荷重,A は断面積,Eは縦形を考慮して初めて解決される問題を不静定問題弾性係数である この式は, せん断変形についてという 図 4は,3 本の棒からなる不制定問題のも同様に成立し,τ=Gγの関係で表される こ図である 以下の演習を行うことにより, 学生は, こで,G は横弾性係数またはせん断弾性係数と呼 3 本の棒からなる不静定問題, 軸力を受けるばれる 学生は, 縦弾性係数及び横弾性係数の導両端固定棒, 材質と断面積が異なった棒からで出に関する演習を行うことにより, 計算に慣れるきた構造物が力を受ける場合 などの演習を行うができた ことにより, 計算に慣れるができた 3.4. 棒の自重による応力と変形第 5 回目の授業内容を以下に示す ここでは, 棒の自重によって生ずる応力とひずみについてあるかった 第 2 回の授業では, 材料の自重を無視して, 材料のかかる荷重のみを考慮して応力やひずみを求めていた しかし, 実際の機械設計では, 材料の自重を考慮しておく必要がある そのため, 自重による変形と荷重による変形を分けて扱う必要がある このように自重によって生ずる応力とひずみには, 大型構造物のみでなく, 高速回転な図 4 3 本の棒からなる不制定問題 17

北村一浩 3.6. 円断面棒のねじり第 8 回目の授業内容を以下に示す 身の回りの 3.7. はりのせん断力 曲げモーメント機械には, 回転する部品が多数使われている そ第 10 回目の授業内容を以下に示す まず, はの代表的なものはモータであり, 扇風機や掃除機, りについて説明する はりには, 一般的に荷重が冷蔵庫などありとあらゆる家電製品に使われてい軸に垂直に作用し, このような荷重は, 小さくてる エンジンも回転運動を発生させる部品であり, も大きな応力を生じさせる はりが荷重を受けて自動車をはじめとする輸送機器に使われている 変形場合, はりの内部には応力が生ずる はりに図 5は, 伝動軸の説明図である モータやエンジは大きく分けて, 片持ちはり と 単純はり のンによる回転は, 回転軸を介して伝達されるが, 2 種類がある 図 7は, 片持ちはり と 単純はこの時, 回転軸の内部にはねじりモーメントが作り を示している 用する 図 6は, トルクを受ける丸棒の概要を示している ねじりモーメントにより回転軸内部に生じる応力とねじり角の計算を行うことは, 回転軸の破損を防ぐ意味でも重要である これらの回転軸は, 伝動軸 と呼ばれ, 伝動軸が伝える動力を計算により求めることができる そのため, 以下の演習を行うことにより, 学生は, 丸棒にねじりモーメントを作用させた時に生ずる最大ねじり応力と比ねじり角 や 中空棒にねじりモーメントを作用させた時に生ずる最大ねじり応力と比ね図 7 片持ちはりと単純支持はりじり角, 伝動軸が伝える動力, 必要な動力を伝える伝動軸の直径を求める, 円形でない断面 片持ちはりは 一端が固定で, 他端が自由でを持つ軸のねじり などの演習を行うことにより, ある 一方 単純はり は, 一端が回転自由で他計算に慣れることができた 端は移動可能な支点である はりの支持支点には, 自由に並行移動可能な支点である移動支点, 自由に回転可能な回転支点, 平行移動も回転も不可能な固定支点がある 図 8は, 回転支点, 移動支点, 固定支点を示している 図 5 伝動軸の説明 図 8 回転支点 移動支点 固定支点 図 5 トルクを受ける丸軸 はり全体にせん断力と曲げモーメントがどのよ 18

愛知教育大学技術教育研究,3,pp. 15~20,October,2016 うに分布しているかを正確に把握することは, 機たわみの計算方法は, 発生応力を許容範囲に抑え械設計では重要であるため, せん断力図と曲げモるたり, はりのたわみが規定された許容範囲になーメント図の作成に関する内容も扱った 授業でるように負荷を制限したり, 断面の必要寸法を決は以下の演習を行うことにより, 学生は, 片持は定したりすることに利用可能である 変形後のはりの先端に集中荷重が作用するときの固定支点のりがなす曲線をたわみ曲線という また, たわみ反力, 単純支持はりに集中荷重が作用するとき曲線の接線がはりの長手方向となす角度をたわみの各支点に生じる反力, 単純支持はりに斜め方角ということを説明した 以下の演習を行うこと向から集中荷重が作用するときの各支点に生じるにより, 学生は 片持ちはりの先端に集中荷重 P 反力, 片持ちはりに等分布荷重が作用するときが作用する場合, 中空円形断面のポールに円盤の固定支点の生じる反力, 片持ちはりの先端にのついた道路標識に風圧がかかる場合, 片持ば集中荷重が作用する場合のせん断力図 曲げモーりに等分布荷重が作用する場合 断面積が等しいメント図, 片持ちはりに等分布荷重が作用する円形断面はりと長方形断面はりが全長に当分布荷場合のせん断力図 曲げモーメント図, 単純支重を受けた時の最大たわみの比較, 片持ちはり持はりに集中荷重が作用する場合のせん断力図 の先端にモーメントが作用する場合, 単純支持曲げモーメント図, 単純支持はりに等分布荷重はりに当分布荷重が作用する場合 などの演習をが作用する場合のせん断力図 曲げモーメント図, 行うことにより, 計算に慣れることができた 単純はりに2つの対称に集中荷重が作用する場 4. 材料力学と機械実験 ( 演習 ) の関係合のせん断力図 曲げモーメント図, 単純支持 材料力学 の授業内容は, 機械実験 (3 年はりに等分布荷重が作用する場合のせん断力図 前期 ) において, その一部の内容を実習により確曲げモーメント図, 単純支持はりの両端にモー認している 図 9は, 様々な材料の応力 ひずみ曲メントが作用する場合のせん断力図 曲げモーメ線を示している 機械実験では, アムスラー型引ント図, 突き出しはりに対称な集中荷重が作用張試験機を用いた鋼の破断試験を行っている まする場合のせん断力図 曲げモーメント図, などたインストロン型の小型試験機では, 亜鉛メッキの演習を行うことにより, 計算や作図に慣れるが鋼線と銅線,3D プリンタで作製したABS 樹脂できた 製試料の3つについて, 精密な引張試験を行って 3.8. はりの曲げ応力 せん断応力いる 学生は, それぞれの試料の引張強さや応力 第 11 回目の授業内容を以下に示す 第 10 回ひずみ曲線の様子, ヤング率を測定することによ目の授業で, はりに横荷重やモーメントが作用すり, 材料力学で扱った応力, ひずみ, ヤング率なると内部にせん断力や曲げモーメントが生ずるこどのパラメータを実習により実際に導き出した とを学習した ここで, せん断力からせん応力, これらの実習を行うことにより, 材料力学の知識曲げモーメントから曲げ応力を求めることができの定着を図ることができた る 一般にはりにおいては曲げ応力の方がせん断応力よりも大きいため, ここでは曲げ応力について扱う 以下の演習を行うことにより, 学生は, 長方形断面の断面二次モーメントと断面係数, I 型断面の断面二次モーメントと断面係数 などの演習を行うことにより, 計算に慣れるができた 3.9. はりのたわみ第 13 回目の授業内容を以下に示す はりが横荷重を受けると応力が発生し, これと同時に当然たわみ変形も生じる 強度設計において, はりの図 9 様々な材料の応力 ひずみ曲線 19

北村一浩 5. まとめと今後の予定技術専攻の,2 年後期の専門必修科目である 材料力学 の授業内容は, 大学の機械工学科で行なわれている 材料力学 と同様である しかし, 機械工学の科目が少ないため, 工学系の大学の機械工学科で行われているすべての授業内容を半期 (15 回の講義 ) の 材料力学 の授業で行うことは困難である そのため, 材料力学 の授業では, やさしい内容の教科書を使用し, 重要と考えられる部分のみで授業を行うとともに, 演習の時間を多く設け, 確実に内容が身につくような計画で授業を行っている 本授業では, 材料力学の基礎的部分について, 多くの演習を行うことにより計算に慣れさせ, 授業内容を確実に定着させることができた 今後授業内で毎回小テストを行い, 学生の理解度の評価を行う予定である 6. 参考文献 中田政之, 田中基嗣, 吉田啓史郎, 木田外明 : わかりやすい材料力学の基礎 : 第 2 版, (2014), 共立出版社 (2016 年 9 月 19 日受理 ) 20