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[ 図表 35: 見直しのイメージ ] 質の高い施設 安心安全で コストの最適化 施設を安心安全に利用するため 点検 診断を実施し その結果に基づき 必要な対策を適切な時期に着実かつ効率的 効果的に実施します また これらの取組を通じて得られた施設の状態や対策履歴等の情報を記録し 次の点検 診断等に

(2 管路の耐震性 管路は 配水池などの拠点施設から需要者に水を運搬する機能を有しており 水道の安 全 安定給水において欠かすことのできない重要な施設です そのため 施設の耐震診断と 同様 管路の機能評価を検討し 合理的な管路の更新 改良を実施することが必要です 本市の上水道事業における管路布設延長

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Transcription:

4 章アセットマネジメントと施設整備更新計画 1 アセットマネジメント手法の導入 1.1 水道施設の健全度 蕨市水道事業では 平成元年度以降計画的に石綿セメント管の更新を継続し 平成 19 年度には一定の目途をつけ 平成 2 年度の塚越浄水場の改修に続き 平成 22 年度には中央浄水場の配水池の更新を終えています このため 平成 24 年度から実施している中央浄水場電気機械設備更新事業を除けば 耐用年数を経過した経年化資産や老朽化資産は比較的少なくなっています しかしながら 今後 構造物及び設備 管路の更新を行わなかった場合 健全度は大きく低下するため 計画的な更新が必要となります 資産額 ( 百万円 ) 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, H25 H29 H34 H39 H44 H49 H54 H59 H64 H69 H74 管路延長 (km) 18 16 14 12 1 8 6 4 2 健全資産経年化資産老朽化資産 図 4-1-1 構造物及び設備の健全度 H25 H29 H34 H39 H44 H49 H54 H59 H64 H69 H74 年度健全管路経年化管路老朽化管路 図 4-1-2 管路の健全度 健全資産 ( 管路 ) : 法定耐用年数以内 経年化資産 ( 管路 ): 法定耐用年数の 1.5 倍未満 老朽化資産 ( 管路 ): 法定耐用年数の 1.5 倍以上 法定耐用年数は構造物 6 年程度 建屋 4 年程度 電気機械設備 1~2 年 管路 4 年 84

1.2 法定耐用年数に基づく将来の更新需要 今後 水道施設を法定耐用年数で更新した場合 物価上昇を見込まなくても 5 年間で約 328 億 7, 万円 ( 構造物及び設備 15 億 2, 万円 管路 178 億 5, 万円 ) もの多額な更新需要が想定されます ( 百万円 ) 2,2 2, 1,8 1,6 1,4 1,2 1, 8 6 4 2 塚越機電 中央機電 総額約 15.2 億円 中央構造物 塚越機電 年平均 3. 億の更新が必要 H25 H3 H35 H4 H45 H5 H55 H6 H65 H7 中央機電 建築土木電気機械計装その他 1 図 4-1-3 構造物及び設備の更新需要 塚越機電 中央機電 年度 ( 百万円 ) 1,4 1,2 1, 8 6 4 2 総額約 178.5 億円 年平均 3.5 億の更新が必要 H25 H3 H35 H4 H45 H5 H55 H6 H65 H7 H74 導水管 融通管 基幹管路 重要施設配水管路 年度 主要管路 ループ形成管路 その他 図 4-1-4 管路の更新需要 85

1.3 アセットマネジメント導入の必要性および効果 蕨市水道事業では 水道施設の健全性を維持していくために 将来的に多額な更新需要が見込まれています さらに 給水収益が減少傾向で推移することが予想されることから 非常に厳しい水道事業経営が想定される中で 経営理念 を実現するためには 将来の更新需要や財政状況を正確に把握するとともに 限られた財源の中で水道施設の更新や維持管理を計画的に進めていかなければなりません そのため 費用対効果の高い計画的な投資の実現に有効である アセットマネジメント手法を導入することにより 以下のことを実現していきます アセットマネジメント導入による効果 水道施設の健全性の把握 水道施設が保有する 配水管 ポンプなどの機械設備 機器類を作動させる電気設備などの基礎情報を個別に整理することで 健全性を評価し 安定給水の継続が可能であることを確認します 水道施設の長寿命化 ミクロマネジメントによる施設の予防保全的な補修などを実施したうえで 各施設の健全性を維持したまま長寿命化 ( 耐用年数以上に使用し続ける ) を図り 将来法定耐用年数で更新した場合に想定される約 328 億 7, 万円という多額な更新費用の低減を目指します 予防保全的な補修と計画的な更新による施設事故のリスクの低減 予防保全的な補修により 日々の軽微な故障などの発生リスクを抑えます また 施設の健全度を保つ最適な更新年数を設定し 計画的に更新を継続することにより 大規模な事故発生を未然に防ぎ 災害による被害発生を抑制します 最適な更新時期の決定 水道施設は 予防保全的に補修を行った場合でも 経年化により故障頻度が増え 補修を継続するよりも 更新した方が経済的となる時期を迎えます ミクロマネジメントによる日常点検とその記録を継続することで 個々の施設の故障による補修頻度が把握できるため 各施設の最適な更新時期の決定材料とします 使用者への説明責任 水道事業者として 使用者に事業の必要性などについて 説明責任を果たすための具体的資料として活用していきます 86

1.4 アセットマネジメントの要素 アセットマネジメントは 技術的な知見に基づき 水道施設の状態を把握し 健全度を適切に診断 評価したうえで 長期的な施設更新需要見通しを検討するとともに 財政収支見通しを踏まえた更新財源を確保することにより 施設の健全性を維持した上で事業を継続する必要があり 必要情報の整備 ミクロマネジメントの実施 マクロマネジメントの実施 更新需要 財政収支見通しの活用 の四つの要素で構成されます この場合の マクロマネジメントとは 水道事業施設や設備を グループ毎に体系的に把握 管理することで 長期的な視点で管路や構造物 電気機械設備などの健全性維持と必要な更新需要の見通しを立てるとともに 健全性維持の裏づけとなる財政計画を検討することであり ミクロマネジメントとは 日常点検や定期点検及び修繕履歴などによって得られた個々の施設管理データから 施設の健全性の診断 評価を実施し 必要な補修などの維持管理を行うとともに マクロマネジメントにおける更新の必要性や時期を決定するための検証データとなるものである 検討手法の選定 マクロマネジメントの実施 マクロマネジメントのレベルアップに向けた改善方策の抽出 更新需要見通しの検討 財政収支の見通しの検討 妥当性の確認と検討結果のとりまとめ 蕨市水道ビジョン 更新需要 財政収支見通しの活用 情報提供 更新投資の必要性 資産台帳施設台帳 維持管理 苦情データ 点検データ 診断結果 財政データ 必要情報の整備 更新投資の効果 新設 更新 水道施設の運転管理 点検調査 水道施設の診断と評価 補修 施設整備更新計画管路更新計画施設 設備更新計画 業務指標の活用 ミクロマネジメントの実施 施設 A 施設 B 財政計画 図 4-1-5 アセットマネジメントの四つの要素 87

1.5 アセットマネジメントの実施 1) アセットマネジメントによる水道施設の健全性維持サイクルアセットマネジメントによる水道施設の健全性維持サイクルは 図 4-1-6 のとおりです まず 現在蕨市水道事業が保有する水道施設の資産の設置年や取得価格を詳細に整理します 次に 施設の設置年 現在の稼働状況 ( 更新 補修状況 ) や文献などから 現有施設の物理的機能を評価し さらに 施設の能力 代替施設の有無などにより 施設の重要度を評価して 更新 補修年を設定します 次に 機能評価により設定した施設の更新 補修年から 施設更新需要を算出し 併せて財政収支の見通しを試算したうえで 長期的な水道施設の健全性維持の成否を検証します ここまでが アセットマネジメントとなります 次に アセットマネジメントで得られた健全な施設更新を基本として その時点の対応すべき課題を考慮した より詳細で具体的な 施設整備更新計画 を策定します なお 今後 施設点検項目を増やし 各種データを蓄積することなどにより 個々の施設の健全度をより詳細に把握 ( ミクロマネジメントの充実 ) し 更新 補修の必要性の評価の精度を高め 次回の見直しに反映させていきます 定期的な見直しによる 予防保全的な管理 ライフサイクルコストの最小化 ( 適切な補修による施設の長寿命化 ) 事業経営の健全化 明確化 図 4-1-6 水道施設の健全性維持サイクル 88

2) 蕨市水道事業施設標準更新年数基準アセットマネジメントを実施するにあたり 蕨市水道事業の 管路や構造物 電気機械設備の適切な更新時期を規定した 蕨市水道事業施設標準更新年数基準 を作成しました この基準は アセットマネジメント導入の効果の一つである 施設の長寿命化を実現することによる更新費用の低減化を目的として定めたもので 蕨市水道事業や他事業体の実態 日本水道協会における研究結果などを根拠としています ただし 安心 安全な水を安定的に供給することができる健全な施設を維持するために 更新を単に先送りするのではなく 日々の点検や診断を適切に行うとともに 診断に基づく修繕や補修を適切に実施したうえで この基準を採用します 表 4-1-1 蕨市水道事業施設標準更新年数基準 分類 井戸本体 法定耐本市設定設定根拠用年数更新年数 1 年 4 年実際の使用年数より 更新年数を延長するための点検 調査 補修内容 日々 水位や水質を確認し 約 1 年程度に 1 回井戸内部調査を実施 構造物 設備 土木 RC 構造物地下 RC 構造物 5 年 5 年 6 年 6 年 PC 配水池 6 年 8 年 配水ポンプ 15 年 45 年 一般的に RC 構造物よりも腐食 耐震が強いとされているため RC の法定耐用年数 +2 年とする 15 年間隔で 2 回補修した後に更新 日常点検や定期点検に加え 約 15 年に 1 回補修 機械水中ポンプ 15 年 17 年水道施設更新指針より *1 日常点検や年 1 回定期点検 電気 計装 建築物 6 年 滅菌設備 1 年 2 年 耐用年数を迎えておらず更新実績が少ないため 法定耐用年数とするが 診断結果に応じて補強した場合は +2 年とする 水道施設更新指針の 18 年より *1 受電設備 15 年 23 年水道施設更新指針より *1 発電機 15 年 3 年 1 年間隔で2 回補修した後に更新 流量 水位計 1 年 2 年 水道施設更新指針より *1 水質計 1 年 17 年水道施設更新指針より *1 監視制御 15 年 19 年水道施設更新指針より *1 石綿セメント管鋳鉄管ダクタイル鋳鉄管 ( 耐震継手 PSあり ) 日常の目視点検により ひび割れなどの異常確認に加えて 1-2 年に 1 度 コンクリート劣化程度などの詳細な調査を実施し 調査結果に応じた補修 補強を行うことで更新年数を延ばす 日常点検や定期点検に加え 約 1 年に 1 回補修 日常点検や年 1 回定期点検により 異常あればその都度軽微な補修 日常点検や定期点検に加え 約 1 年に 1 回補修をする 日常点検や年 1 回定期点検により 異常あればその都度軽微な補修 4 年 4 年 法定耐用年数 - 4 年 4 年 法定耐用年数 - 4 年 8 年 e-pipe 報告書より *2 - 管ダクタイル鋳鉄管 4 年 5 年 e-pipe 報告書より *2 - 路 ( 非耐震 PSあり ) ダクタイル鋳鉄管 4 年 4 年 e-pipe 報告書より *2 - ( 非耐震 PSなし ) PE 管 4 年 6 年 - その他 4 年 4 年法定耐用年数 - *1 水道施設更新指針日本水道協会 : 添付資料参照 *2 持続可能な水道サービスのための管路技術に関する研究 (e-pipeプロジェクト) : 添付資料参照 89

3) 蕨市水道事業施設標準更新年数基準に基づく将来の更新需要 蕨市水道事業施設標準更新年数基準 に基づき 管路や構造物及び電気機械設備などの更新を実施した場合 今後 5 年間の更新費用は累計約 172 億円 ( 年間平均約 3 億 4, 万円 ) となります 法定耐用年数どおりの更新費用累計約 328 億 7, 万円 ( 年間平均約 6 億 6, 万円 ) に比べてほぼ半減し アセットマネジメント導入の効果がはっきりと表れています 百万円 3 折れ線グラフ 5 年間の法定耐用年数による更新費用の推移総事業費 : 約 328.7 億円 ( 年平均 6.6 億円 ) 土木 建築電気 機械 計装管路その他 積上げ棒グラフ本市設定の更新年数による総事業費 : 約 172 億円 ( 年平均 3.4 億 ) 25 2 15 1 5 H25 H28 H31 H34 H37 H4 H43 H46 H49 H52 H55 H58 H61 H64 H67 H7 H73 図 4-1-7 将来の更新需要の比較 9

4) アセットマネジメント手法による財政の見通し施設更新需要の見通しに基づく将来の財政の見通しは 法定耐用年数で更新した場合 現金残高はマイナスとなり その額は徐々に増加すると試算されました 一方 蕨市水道事業施設標準更新年数基準 で更新した場合 現金残高は 平成 35 年度以降上昇を続けますが 管路の更新が本格化する平成 52 年度頃を境に減少に転じ 平成 65 年度以降は微増傾向で推移します また 平成 34 年度までは現金残高が わずかにマイナスとなっていますが この期間の水道施設の更新と財政計画については アセットマネジメントの結果を踏まえて 今後 施設整備更新計画 を策定し対応していきます なお 試算を行うにあたり双方共通の要件として 蕨市水道ビジョン 計画期間後の 平成 35 年度から平成 74 年度の間は 蕨市の水道料金体系の改定による収益の増加と 県水の料金改定に伴う費用の増加を見込むとともに 現状の金融情勢から推測が困難であるため 建設費の物価上昇は見込んでいません また 健全性を維持した施設の更新を進めるために必要な資金のうち 自己財源で賄えない部分は 国などからの借入金である企業債を充当しています ( 億円 ) 15 実績 実績法定耐用年数更新蕨市標準更新年数基準更新 見通し 1 5 H19 H22 H25 H28 H31 H34 H37 H4 H43 H46 H49 H52 H55 H58 H61 H64 H67 H7 H73-5 -1-15 -2 図 4-1-8 将来の現金残高の見通し 91

4 章 2 施設整備更新計画 2 施設整備更新計画 2.1 施設整備更新計画の必要性 水道施設の法定耐用年数は 電気機械設備は 2 年程度ですが 管路で 4 年 構造物では 6 年と長期間にわたり 安心 安全な水の安定給水継続のために使用されます これら水道施設の資産は 蕨市水道事業の総資産のうち約 88.6% を占め 取得や更新に掛かる費用が多額であるとともに 減価償却費は損益に大きく影響を及ぼします そのため 長期的視点で水道施設の取得や更新 維持管理について検証することが重要であり 長期的な見通しに基づく方針を実現するために 中期的視点で より詳細で具体的な計画を作成し 実行することが 蕨市水道事業の安定経営継続と施設の健全性維持のためには必要不可欠となります このため 蕨市水道事業では アセットマネジメントを実施し 5 年という長期間の水道施設の健全度 更新需要及び健全度を維持するために必要となる財源などについて検証した結果 予防保全的な補修等を実施する条件のもとで定めた 蕨市水道事業施設標準更新年数基準 に基づく施設更新を実施すれば 施設の健全性を維持した状態での事業継続が可能であるという成果を得ることができました 蕨市水道事業では このようなアセットマネジメントで得られた長期的な見通しを踏まえ 中期的視点に立脚した計画として 施設整備更新計画 を策定します 2.2 施設整備更新計画の概要 施設整備更新計画 は いつでも安定して使える水道 将来にわたって健全な水道 の二つの基本方針を実現するために アセットマネジメント実施により明らかとなった課題を解決し 将来にわたって安定給水を持続するための具体的な計画として 蕨市水道ビジョン との整合性を図りながら 平成 25 年度に策定します 現在 蕨市水道事業が保有する施設及び設備は 二つに大別されます 一つは市内に 1,5 路線を超える管網として張り巡らされた管路であり もう一つは 配水池や吸水井などの構造物と配水ポンプや受変電などの電気機械設備が主なものです 健全性を維持するための点検整備と法定耐用年数の二つの視点から双方を比較すると 管路は 地中に埋設されていることから点検整備が困難であり 法定耐用年数が 4 年と比較的長期にわたるのに対し 構造物や電気機械設備は 日常及び定期的点検が可能であり 経年化や障害の発生が比較的把握しやすく 電気機械設備の法定耐用年数は おおむね 15 年から 2 年と 管路の約半分の期間であるという特徴があります また 更新費用の視点からは 管路の更新が計画的な実施により費用の平準化が可能であるのに対して 構造物や電気機械設備は 一度に多額な更新費用が必要となる特徴を有しています 92

4 章 2 施設整備更新計画 このため 施設整備更新計画 は それぞれの特徴を踏まえた実効性のある計画とするため 管路更新計画 施設 設備更新計画 財政計画 により構成される計画として策定します また 管路を中心とする水道施設の耐震化については 耐震性が低い管路の存在や 震災発生を考慮すると 単に 蕨市水道事業施設標準更新年数基準 による更新だけでは 施設の健全性を維持できない可能性があります そのため 施設整備更新計画 は 長期的な健全な施設更新を基本としつつ 耐震化に対応すべき課題を考慮して策定します 93