られる 日本でも消費税に飲食料品に対する軽減税率を導入する方向で作業が進んでいることから 将来的に日本でもゼロ税率が導入される道が開かれつつあると言えるかもしれない 非課税措置については 日本の消費税では図表 1のように分類されている 一般に 非課税措置が導入されるケースは 技術的に消費税を課税でき

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税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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2 営悪化を招くことになる 2.消費税の申告等の状況多くの農業者が売上一千万円以下であり 他業種に比べ 免税事業者が多くなっている 農業者は 他業種に比べ 税務申告割合が低く 納税 税務申告に不慣れといえる 特に 消費税については 所得税に比べ対応している農業者が少なく 事務負担が増す懸念から 有利

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

目次 1. 概要 2. 報告手続について 3.Q&A 参考資料 補助事業に係る仕入税額控除について 報告判定フローチャート 1

債券税制の見直し(金融所得課税の一体化)に伴う国債振替決済制度の主な変更点について

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握の問題 執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する 複数税率の導入について 財源の問題 対象範囲の限定 中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する 施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として 簡素な給付措置を実施する つまり 低所得者対策として 給付付き税額

平成18年度地方税制改正(案)について

6 転嫁カルテル 表示カルテルの独占禁止法適用除外 今般の消費税率の引上げに伴い 消費税を円滑かつ適正に転嫁できる環境を整備するため 消費税転嫁対策特別措置法では 事業者又は事業者団体は 公正取引委員会に事前に届け出ることにより 消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為 ( 転嫁カルテル 表示

市場と経済A

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23-24

218 年分以降の配偶者控除額は夫の年収に応じて減っていきます 217 年分までは が 13 万円 ( 合計所得金額 38 万円 以下であれば 夫の年収にかかわらず 配偶者控除額 38 万円 ( 住民税は 33 万円 を夫の所得から控除できました 218 年分以降は が 13 万円 ( 合計所得金額

2 消費税軽減税率の対象となる新聞 軽減税率の対象は全ての新聞ではなく 一定の要件を満たす新聞のみです ( 図 2) 新聞販売所は定期購読契約の新聞のほか 即売 週 1 回以下の発行などさまざまな形態の新聞を扱っています このため 区分けには慎重な対応が必要です 図 2 軽減税率が適用される新聞の譲

本資料のポイント 平成 29 年度税制改正で 上場株式等に係る配当等 について 所得税 と 住民税 で異なる課税方式を選択することが可能であると明確化されました このことにより 課税所得 900 万円以下の場合 所得税は 総合課税 住民税は 申告不要 を選択することで 納税額を抑えることが可能となり

経済変動論 0

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

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投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

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(消費税)確定申告書作成(簡易課税)編

step.2 課税標準額を計算する ( 申告書 1) step.2-1 課税売上高の合計 ( 表イ 16 欄 ) に 100/108 を掛けます 課税売上高 ( 税込み ) = 1 課税標準額 表イ 17 欄を使用します step.2-2 step.2-1 の計算結果 ( 表イ 17

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金融庁の税制改正要望について(1)

税幅を 1% ずつ小刻みに引き上げるべきであるといった意見も浮上しており 予定通り引上げが実施されるかは 不透明な状況です Q 消費税増税で住宅取得時の税負担は どのくらい増加しますか A そもそも住宅購入にかかる消費税は 土地にはかからず新築物件なら建物部分のみです 仮に図表 1の モデル のよう

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ポイントカードの利用と課税区分〔Profession Journal No

スライド 1

税務調査      業種別・狙われるポイント

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第68回税理士試験 消費税法 模範解答(理論)

1 各調整方式の比較 前提 : 法人実効税率 % 金融所得の税率 20% ( 配当軽課の場合の配当分の法人税率は 30%) 比較のポイント 適用税率 法人税率か所得税率か 金融所得課税一元化にマッチするか( 税率 損益通算 ) 簡素な制度か 特定口座への対応はか 法人の税負担は軽減されるか

平成 27 年度税制改正要望項目 1. 働く者のより豊かな生活の実現に向けて (1) 企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃 (2) 財形非課税限度額の引き上げ等 (3) 給与所得者に対する選択納税制度の導入 2. 損保グループ産業の健全な発展に向けて (1) 損害保険業に係る消費税制上の課題解

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契約をするとき 契約書に貼る印紙税不動産取引で取り交わす契約書は 印紙税の対象となります 具体的には 不動産の売買契約書や建物の建築請負契約書 土地賃貸借契約書 ローン借入時の金銭消費貸借契約書等がこれに当たります 印紙税の額は 契約書に記載された金額によって決定されます 原則として 収入印紙を課税

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

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日本版スクーク ( イスラム債 ) に係る税制措置 Q&A 金融庁

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Giới thiệu tóm tắt CÔNG TY CỔ PHẦN PHÁT TRIỂN ĐẦU TƯ CÔNG NGHỆ - FPT TRUNG TÂM GIẢI PHÁP PHẦN MỀM FPT SOFTWARE SOLUTIONS

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

第1章

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

はじめに 令和元 (2019) 年 10 月 1 日から消費税率が10% に引き上げられることに合わせて 食品と新聞に対して8% の軽減税率が導入されます そのため 消費税率は8% と10% の複数税率になります 食品や新聞を取り扱っている事業者は 軽減税率や複数税率への対応が必要となりますが 売上

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孫のために教育資金を支援するならどの制度?

#210★祝7500【H30税法対策】「登録免許税ほか」優先暗記30【宅建動画の渋谷会】佐伯竜PDF

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

平成 28 年度税制改正要望項目 1. 働く者のより豊かな生活の実現に向けて (1) 企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃 (2) 財形非課税限度額の引き上げ等 (3) 給与所得者に対する選択納税制度の導入 2. 損保グループ産業の健全な発展に向けて (1) 火災保険等に係る異常危険準備金制度

目次 ドイツにおける貸金業等の状況 2 フランスにおける貸金業等の状況 4 米国における貸金業等の状況 6 英国における貸金業等の状況 8 韓国における貸金業等の状況 9 ( 注 1) 本レポートは 金融庁信用制度参事官室において 外国当局 調査会社 研究者等からのヒアリング結果等に基づいて作成した

ニュースリリース 平成 3 1 年 3 月 2 8 日 消費者動向調査 : 軽減税率 株式会社日本政策金融公庫 消費税の 軽減税率制度 消費者の受け止め方を調査 ~ 約 7 割の消費者が制度を認知認知 制度運用には わかりやすさ を求める ~ < 平成 31 年 1 月消費者動向調査 > 日本政策金

2010 年 8 月 9 日発行 消費税増税に伴う低所得者対策の検討 ~ 軽減税率よりも給付付き税額控除単独の導入を ~ 要旨 消費税増税の際に問題となる逆進性への対策として 1 軽減税率 または2 給付付き税額控除 ( 税還付 ) の導入が検討されている 本稿で試算したジニ係数によれば 軽減税率よ

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原則課税申告書本表 ( 原則計算方式 ) 税率が 3% 5% の取引がある場合 項目 金額 課税標準額 1 付表 1 の1[ 課税標準額 (D)] 消費税額 2 付表 1 の2[ 消費税額 (D)] 控除過大調整税額 3 付表 1 の3[ 控除過大調整税額 (D)] 控除税額控除対象仕入税額 4 付

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

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( 平成 3 年 11 月 2 日 ) ユーロ / 円 ワイタ ーハ ント (25 日線 ) 3.% 7/ / ( 円 / ユーロ ) / / /15 7/13 8/1 9/7 1/5 11/

消費税にまつわる諸問題とその後の税制の課題

(消費税)確定申告書作成(一般課税)編

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

平成19年度分から

step.2 課税売上高の合計を計算する します step.21 欄の内容を転記します 表ロ 1~3 欄にそれぞれ記入します step.22 を転記します 表ロ 4~6 欄にそれぞれ記入します step.23 容を転記します 表ロ 7~9 欄にそれぞれ記入します step.24 その他の所得に係る収

海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

GST とは Goods and Service Tax ( 物品 サービス税 ) の略 物品とサービスの供給に課税される国税 地方税を統合した付加価値税 間接税 2017 年 7 月 1 日より施行 ジャンムー カシミール州を除くインド全州で適用 統一税率を適用 税率は 5%,12%.18%.28

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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供託者等の住所 氏名または名称および個人番号または法人番 号は 供託者等の口座管理機関から日本銀行に対して 課税事 務のために提供される 2 所得税の徴収 納 入 利付国債の利子または割引国債等 ( 国庫短期証券のうち その銘柄の価格競争入札における募入最低価格 ( 額面金額 100 円当り ) が

相続の基礎 ~ 「相続」を学ぼう!! ~ 生前贈与①有価証券

消費税申告書の計算方法 税率 8% 対応 平成 26 年 4 月 1 日以後終了する課税期間分の消費税申告書の計算方法です 原則課税で申告する方 税率が 3% 5% の取引がある場合 原則計算方式原則課税本表... P.2 原則課税付表 1... P.4 原則課税付表 P

2 その他 H26 中間申告義務のない事業者が 届出 012 書を提出した場合には 自主的に中間申告 納付することができる旨を 検討したか ( 平成 26 年 4 月 1 日以 後開始課税期間より適用 ) 本則課税の場合科目等 No. 主な項目チェック摘要 1 課税事業者 H26 課税期間の基準期間

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資産運用として考える アパート・マンション経営

収用等の特例 1. 収用特例の利用方法 個人が収用や土地区画整理事業で公共事業に不動産を収用された場合は 以下の 2 つの課税の特例があります 法人の場合も ほぼ同様の特例が措置法 64 条と 65 条の 2 に用意されています 類型個人法人 1 収用等の代替資産取得の特例措置法 33 措置法 64

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

産業組織論(企業経済論)

Transcription:

みずほインサイト 政策 2015 年 2 月 27 日 消費税の設計シリーズ 4 非課税とゼロ税率 政策調査部主任研究員鈴木将覚 03-3591-1319 masaaki.suzuki@mizuho-ri.co.jp 消費税を課さない方法として 非課税とゼロ税率がある 非課税では仕入に含まれる税が控除されないが ゼロ税率は前段階までに課された税が全て控除される 日本の消費税では 非課税品目はあるが ゼロ税率品目はない 諸外国では ゼロ税率は食料品等に対する軽減税率として利用されることがある 非課税措置は 中間財に対して適用されるときに税の累積という問題を引き起こす 非課税化に伴う税の累積の問題は現状では納税者に十分に理解されていないが その問題への対応は重要である 1. はじめに消費税は多段階で課税するものであるため 一般に理解されているほど単純な税ではない 消費税を難しくしている要因の1つに 非課税とゼロ税率の区別がある 小売段階である商品が非課税になっていると聞けば その商品に消費税が課税されていないように思われるが 実際はそうではなく その商品には仕入にかかる消費税が含まれている 一方で ある商品にゼロ税率が適用されていると聞けば その商品は消費税率ゼロで課税されているわけだから課税されていないような印象を受けるが これは後述するように正解である このように 非課税とゼロ税率は同じではない また 非課税とゼロ税率は 小売段階ではなく生産 流通の中間段階に導入されたときにその違いがより大きなものとなり 非課税措置は後述するように税の累積 (tax cascading) の問題を引き起こす 税の累積によって 最終的に消費者が支払う税額が大きくなる このため 非課税とゼロ税率という耳慣れない制度がもたらす影響を理解することは 政策当局にとってはもちろん 一般の納税者にとっても重要なことである そこで本稿では 非課税とゼロ税率の違いについて 具体的な数値例を用いて明らかにしていく 2. 日本の消費税における非課税品目現在 日本の消費税には非課税品目はあるが ゼロ税率は導入されていない 日本の消費税にはインボイスが導入されておらず これまで単一税率が維持されてきたことから ゼロ税率の導入が具体的に検討されることはなかった ゼロ税率の例として有名なのは 英国などでみられる食料品等に対するゼロ税率の適用である ゼロ税率は税率がゼロということであり 軽減税率の究極的な姿と考え 1

られる 日本でも消費税に飲食料品に対する軽減税率を導入する方向で作業が進んでいることから 将来的に日本でもゼロ税率が導入される道が開かれつつあると言えるかもしれない 非課税措置については 日本の消費税では図表 1のように分類されている 一般に 非課税措置が導入されるケースは 技術的に消費税を課税できないか または何らかの理由により消費税を課すべきではないと判断される場合である 日本の消費税法では 非課税品目は税の性格から非課税としているものと 社会政策的配慮から非課税としているものに分けられている 税の性格から非課税とされているものは 土地の譲渡及び貸付 銀行 保険などの金融サービス 切手 外国為替取引などである 土地は それ自体は付加価値ではないため その取引に対して消費税は課されない 銀行 保険などの金融サービスは基本的には消費税が課されるべきものであるが 金融サービスの対価が利ざやの形態をとる場合には 技術的に消費税を掛けることが困難であるため それらについては消費税は課されていない 一方で 社会政策的配慮から非課税とされている品目は主に医療 介護 教育関連品目である 助産 埋葬料 身体障害者用物品なども非課税品目に含まれる また 家賃も貸家に居住する人の方が持家に居住する人よりも所得が低い場合が少なくないこと等を理由に非課税とされている 図表 1 消費税における非課税品目 税の性格から非課税としているもの 土地の譲渡及び貸付け 有価証券 支払手段の譲渡 貸付金等の利子 保険料等 郵便切手類 印紙 物品切手等の譲渡 行政手数料等 外国為替取引 社会政策的配慮から非課税としているもの 医療保険各法等の医療 介護保険法の規定に基づく居宅サービス 施設サービス等 社会福祉法に規定する社会福祉事業及び社会福祉事業に類する事業等 助産 埋葬料 火葬料 身体障害者用物品の譲渡 貸付け等 一定の学校の授業料 入学金 施設設備費 学籍証明等手数料 教科書用図書の譲渡 住宅の貸付け ( 家賃 ) ( 資料 ) 国税庁資料より みずほ総合研究所作成 非課税措置が適用される理由が技術的に課税できないか あるいは社会政策的に必要と判断されるものであることから 諸外国の付加価値税 (Value-Added Tax, VAT) の非課税措置も 日本のそれとあまり変わらない 但し 何らかの理由で課税しない品目に対して ある国は非課税措置を取り 別の国はゼロ税率で対応するということもある 日本でも 今後各品目において非課税とゼロ税率のどちらを選択すべきという問題に直面するかもしれないが その際には非課税とゼロ税率がもたらす経済への影響を十分に考慮した上で判断を下すことが大切である そのためには 次節にみるような非課税とゼロ税率の制度上の違いを理解する必要がある 2

3. 非課税とゼロ税率の仕組み以下では 簡単な数値例を用いて非課税とゼロ税率の違いを説明しよう まず ゼロ税率も非課税措置も存在しない基本ケースから考える 消費税額は 売上にかかる税額 ( 以下 売上税額 ) から仕入にかかる税額 ( 仕入税額 ) を引いたものとして計算される 生産 流通が3 段階に分かれており 各段階に1つずつ企業が存在して1 種類の製品を作っている状況を想定する 各段階では A 企業が20 B 企業が60 C 企業が20( 合計 100) の付加価値をつけるものとし 税率は単一で10% と仮定する ( 図表 2) このときの各段階での消費税額を考えると 各段階の税額は売上税額から仕入税額を引いて計算され その合計は10になる つまり 消費者は税込みで110を支払う 小売段階でゼロ税率が適用されるケースはどうなるであろうか ( 図表 3) ゼロ税率とは 売上に対してゼロの税率を掛けて売上税額を計算することを意味するため 売上税額は文字通りゼロになる 一方で 仕入税額は基本ケースと変わらず 今の数値例ではゼロ税率品目を生産しているC 企業の仕入税額が8となる よって 売上税額から仕入税額を控除して計算されるC 企業の消費税額は-8となる C 企業の仕入には8の税額が含まれるものの 同時に8の税還付を受けられるため C 企業が消費者に転嫁すべき税はない よって 消費者が支払う消費税額はゼロになる 1. 課税売上 20 80 100 2. 売上税額 2 8 10 3. 課税仕入 0 20 80 4. 仕入税額 0 2 8 5. 税額 (2-4) 2 6 2 10 ( 注 ) 消費税率 10% 1. 課税売上 20 80 100 2. 売上税額 2 8 0 3. 課税仕入 0 20 80 4. 仕入税額 0 2 8 5. 税額 (2-4) 2 6-8 0 ( 注 ) 消費税率 10% 図表 2 基本ケース 図表 3 ゼロ税率ケース (C 企業 ) 3

これに対して 非課税措置はその品目が消費税体系から除外されることを意味する C 企業が非課税とされるケースでは C 企業の課税売上及び課税仕入がともに制度の枠外に置かれることからともにゼロになり C 企業の消費税額はゼロになる ( 図表 4) この点はゼロ税率のケースと同じであるが 非課税の場合には ( 制度の枠外になるため ) 仕入税額を控除することができない よって C 企業は仕入にかかる税額 (2+6=8) を製品価格に転嫁することになり 消費者が支払う税額は8になる このように 非課税ではC 企業が仕入に含まれる消費税を控除することができないため 非課税といっても実質的に非課税となるのはC 企業の付加価値に対する消費税だけである 非課税品目における小売業の付加価値が小さければ小さいだけ 非課税化の影響も小さくなる 消費税では医療関連品目が非課税となっているが その意味するところは診療費など病院の付加価値に対しては消費税がかからないということであり 病院の仕入に相当する診療器具やベッドには消費税が含まれている 毎年日本医師会から医療関連品目に対する非課税をゼロ税率に変更すべきとの意見が出されている ( 日本医師会, 2012 等 ) が この背景には非課税では仕入税額控除を用いることができないことがある 家賃も同様である 家賃は非課税であるため 貸主はマンション等の建設に関して仕入税額を控除できず その結果として家賃には実質的に消費税が含まれている このため 消費税率が上がった場合には家賃を引き上げなければならないが 現実には消費税率引き上げに伴って非課税品目である家賃を引き上げることに対して借主が抵抗するかもしれない 次に ゼロ税率及び非課税が生産 流通の途中段階で行われる場合を考える このケースは 小売段階の措置よりも複雑であり 一般的な理解も進んでいない このため 消費税率引き上げ時における価格転嫁の程度に関して混乱をもたらす原因となっている まず B 企業の製品にゼロ税率が適用されるケースを考えよう このケースでは B 企業の売上税額がゼロになる一方で 仕入税額が控除されるため B 企業の段階までの税額がゼロになる ( 図表 5) 中間段階でゼロ税率が適用される場合には それが適用される段階までの税額がゼロになるのである 一方で ゼロ税率が適用されるB 企業の次の段階に位置するC 企業では B 企業からの課税仕入はないので仕入税額がゼロになり 売上税額がそのまま消費税額となる つまり 生産 流通の中間段階でゼロ税率が適用される場合には ゼロ税率が適用される段階までの税額がゼロになるものの 最終的に消費者が払う税額は通常ケースと同じである これは 政府からみれば 中間段階であれば ゼロ税率を適用しても税収は変わらないことを意味する 非課税 ゼロ税率の問題で最も注意すべきなのは 中間段階の非課税措置である 数値例のように B 企業が非課税であるケースでは まずB 企業が消費税の枠外に置かれることからB 企業の課税売上と課税仕入はともにゼロで 消費税額がゼロになる ( 図表 6) この点は 小売業が非課税のケースと同じであるが 中間財に対する非課税措置で重要なのはその次の段階である C 企業では 課税仕入がないので仕入税額がゼロとなり 仕入に含まれる消費税額 2を販売価格に転嫁した102が課税売上 その10% の10.2が売上税額かつ消費税額となる 合計消費税額は A 企業の付加価値に対する税額とC 企業の付加価値に対する税額の合計で12.2となる このように 非解税のケースでは非課税措置が適用される前の段階までに含まれた税をその後控除 4

することができないため 非課税措置の後段階の企業の課税ベースのなかに非課税措置の前段階までの企業に対する消費税額が含まれてしまう その結果 最終的に消費者は標準税率である10% を超える税負担を求められることになる こうした現象は 税の累積 (tax cascadingまたはtax on tax) と呼ばれる 図表 4 非課税ケース (C 企業 ) 1. 課税売上 20 80 100(*) 2. 売上税額 2 8 0 3. 課税仕入 0 20 80(*) 4. 仕入税額 0 2 0 5. 税額 (2-4) 2 6 0 8 ( 注 ) 消費税率 10% (*) は消費税制度の枠外にあることを示す 1. 課税売上 20 80 100 2. 売上税額 2 0 10 3. 課税仕入 0 20 80 4. 仕入税額 0 2 0 5. 税額 (2-4) 2-2 10 10 ( 注 ) 消費税率 10% 図表 5 ゼロ税率ケース (B 企業 ) 図表 6 非課税ケース (B 企業 ) 1. 課税売上 20 (*) 102 2. 売上税額 2 0 10.2 3. 課税仕入 0 (*) 0 4. 仕入税額 0 0 0 5. 税額 (2-4) 2 0 10.2 12.2 ( 注 ) 消費税率 10% (*) は消費税制度の枠外にあることを示す 5

このように 生産 流通段階の途中に非課税措置が入り込むことで 最終的な消費税額が標準ケースよりも大きくなる点は重要である そもそもVATは売上が課税ベースとされる取引高税 ( 売上に対する課税 ) と異なり 仕入に含まれる税額を控除できることで税の累積を防ぐことができることが長所である 生産 流通の中間段階に非課税措置が入ることで こうしたVATの長所が失われてしまう 中間段階における非課税措置の典型は 金融サービスに対する非課税措置である 銀行のATM 手数料など付加価値が明確な金融サービスに対しては現在でも消費税が課されているが 前述のように利ざやの形をとる金融サービスに対する課税は技術的に難しいことから非課税とされている 銀行は企業向けに貸出を行っており その付加価値の大半は利ざやの形で表されるため 税の累積が生じている このため 一般に金融サービスが非課税であるといっても ( 最終的に消費税が転嫁される ) 消費者は金融サービスに対する消費税を実質的にかなりの程度負担している可能性がある 金融サービス課税に伴う税の累積を排除する方法は過去に様々に提案されている ( 鈴木, 2009 等参照 ) が 残念ながら現在に至るまでその決定打はない 税の累積を排除する現実的な方策として ニュージーランドでは企業間の金融サービスに対して ( 非課税ではなく ) ゼロ税率が適用されている 4. 非課税化がもたらす歪み生産 流通の中間段階における非課税措置が引き起こす税の累積は 企業行動に次のような歪みをもたらす 第 1に 非課税措置が企業の仕入に関する選択を歪める 非課税化された製品を仕入れる企業は仕入税額を控除することができないため その企業は仕入を非課税化されていない製品で代替しようとする これは 税がない場合と比べて企業の判断を変えることになるため 税が引き起こす経済活動の歪みと捉えられる 第 2に 非課税品目の販売企業に垂直統合の誘因が生じることである 前述のとおり 非課税品目の販売企業は仕入税額を控除できないため 仕入税額を控除できる方法を考えるはずである その1つの方法が 中間財を他社から仕入れるのではなく 自社で供給することである M&Aによって中間財の製造企業を自社に取り込み 中間財を自己供給することで 税の累積を回避することができる これは 非課税品目の販売企業に生じる 自己供給バイアス と呼ばれる 第 3に VATの仕向地主義が崩れる この点については少し説明が必要であろう VATは 通常仕向地主義を採用しているため 国際貿易については輸出品が免税 ( ゼロ税率適用 ) 輸入品が課税である 非課税措置によって こうした原則が崩れてしまう この点を前述の数値例を拡張したケースで考えると 次のようになる ( 図表 7, 8) C 企業を輸出業者として 外国の輸入者としてD 企業を加える D 企業の付加価値を10 外国のVAT 率も自国と同じ10% とする 基本ケースでは 外国の消費者は商品価格 110の10% である11のVATを支払う 仕向地主義のVATでは 輸入品は課税されるので D 企業は水際で10だけVATを支払う ( 国境税調整 ) その後 D 企業は輸入税に対して仕入税額控除を用いることができ 自身の付加価値に対するVATとして1を支払う 6

これに対して B 企業が非課税であるとき 輸出企業であるC 企業にはゼロ税率が適用されるものの C 企業は課税仕入がないため仕入税額控除はゼロである このため A 企業に対するVATが輸出品に含まれてしまう つまり 輸出企業の直前の段階が非課税であるとき 輸出品は非課税の前段階までに課せられたVATが含まれたまま輸出されてしまい 外国で税の累積が発生する こうした状況の下では 非課税措置が自国の輸出企業の競争力を低下させる恐れがある ( 但し 為替レートが柔軟に変動する場合にはその限りではない ) 輸入についても同様に考えることができる B 企業が非課税であるとき 外国に非課税措置がないとすれば C 企業はB 企業から仕入れるのではなく 製品にVATが含まれていない外国企業から輸入しようとする 非課税措置は こうした 輸入バイアス を引き起こす このように 消費税における中間段階の非課税措置は国内の経済活動を歪めるのみならず 輸出入を含めた企業活動全体に悪影響を及ぼすと考えられる 図表 7 輸出ケース ( 基本 ) A 企業 B 企業 C 企業 D 企業 ( 外国 ) 1. 課税売上 20 80 0 110 2. 売上税額 2 8 0 11 3. 課税仕入 0 20 80 100 4. 仕入税額 0 2 8 10 5. 税額 (2-4) 2 6-8 10( 輸入税 )+1 11 ( 注 ) 消費税率 10% 外国 VAT10% 合計 図表 8 輸出ケース (B 企業が非課税 ) A 企業 B 企業 C 企業 D 企業 ( 外国 ) 1. 課税売上 20 (*) 0 112 2. 売上税額 2 0 0 11.2 3. 課税仕入 0 (*) 0 102 4. 仕入税額 0 0 0 10.2 5. 税額 (2-4) 2 0 0 10.2( 輸入税 )+1 13.2 ( 注 ) 消費税率 10% 外国 VAT10% (*) は VAT の枠外にあることを示す 合計 7

5. 非課税措置への対応策では 非課税措置がもたらす歪みにどのように対応すべきであろうか 第 1の方法は 非課税品目を出来る限り少なくすることである 非課税措置そのものを縮小させることで そこから生じる歪みを縮小させるという発想は 各国で検討されているVAT の望ましい姿にも合致するものである 国際的に望ましいとされるVAT の姿は 出来るだけ広い課税ベースに対して単一で課税すべきというものである この実現には 非課税措置をいかにして減らすかという問題への対処が欠かせない 第 2の方法として ゼロ税率の適用が考えられる 前述のように ゼロ税率であれば小売段階での適用品目では税を完全に排除することができ 生産 流通の中間段階における適用でも税の累積が生じない このため 税の累積の解消だけを考えるのであれば ゼロ税率を導入すればよい しかし この際問題となるのは 非課税措置をゼロ税率に変更すると税収が減少することである 非課税措置では それが小売段階で導入された場合にはゼロ税率よりも減収幅は小さくなるが それが中間段階に導入された場合には逆に増収になる ( 対消費者向け取引では減収 対企業向け取引では増収 ) このため 非課税措置を単純に止める場合でさえ その税収効果の符号は理論的には定まらない これに対して ゼロ税率の場合は小売段階の適用の減収効果が大きく 中間段階の適用の減収効果はない ( つまり基本ケースと同じ ) ため 非課税措置をゼロ税率に代えた場合には必ず減収になる また 日本の場合はそもそも消費税ではインボイスが導入されておらず ゼロ税率を導入しようとしても少なくとも現段階ではそれが不可能であるという制度上の問題もある 各品目に対して非課税とゼロ税率のいずれで対応すべきかという問題は 消費税の理想的な設計や税収との関係などから総合的に判断することが必要である 非課税措置がもたらす税の累積問題への対応は技術的な要素も絡むため必ずしもその解決が容易ではないが 消費税率引き上げが確実視されるなかでは少なくとも今後非課税の問題が大きくなっていくとの認識を持つことは大切である その際 税務当局のみならず納税者が非課税の問題を理解していれば 非課税措置を減らして課税ベースを拡大する改革の実現が容易になるであろう 参考文献 鈴木将覚 (2009) VATにおける金融サービス課税 - 非課税化の問題とその対応策 ( みずほ総合研究所 みずほ総研論集 2009 年 Ⅱ 号 ) 日本医師会 (2012) 平成 25 年度医療に関する税制に対する意見 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり 商品の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが その正確性 確実性を保証するものではありません また 本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります 8