旗影会H29年度研究報告概要集.indb

Similar documents
高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

フレイルのみかた

高齢者の筋肉内への脂肪蓄積はサルコペニアと運動機能低下に関係する ポイント 高齢者の筋肉内に霜降り状に蓄積する脂肪 ( 筋内脂肪 ) を超音波画像を使って計測し, 高齢者の運動機能や体組成などの因子と関係するのかについて検討しました 高齢男性の筋内脂肪は,1) 筋肉の量,2) 脚の筋力指標となる椅子

4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

Ⅰ はじめに

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小学生のカルシウム摂取量に寄与する食品の検討 小川瑞己 1 佐藤文佳 1 村山伸子 1 * 目的 小学生のカルシウム摂取の実態を把握し 平日と休日のカルシウム摂取量に寄与する食品を検討する 方法 2013 年に新潟県内 3 小学校の小学 5 年生全数 3

PowerPoint プレゼンテーション

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

参考1中酪(H23.11)

メ夕ボリック症候群と筋骨格系疾患との関連 ( 日本の研究 2015 年 ) 筋骨格系疾患とメ夕ボリック症候群の関連につき 30~80 歳代の男性 466 人 女性 918 人を対象に検討した 膝関節症があると高血圧 脂質異常になりやすく 高血圧 耐糖能異常があると膝関節症になりやすい また肥満がある

SoftBank 301SI 取扱説明書

東日本大震災被災者し

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 庄司仁孝 論文審査担当者 主査深山治久副査倉林亨, 鈴木哲也 論文題目 The prognosis of dysphagia patients over 100 years old ( 論文内容の要旨 ) < 要旨 > 日本人の平均寿命は世界で最も高い水準であり

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

<4D F736F F F696E74202D AAE90AC94C5817A835F C581698FE39E8A90E690B6816A2E >

14栄養・食事アセスメント(2)

2. 転倒危険者を察知する ナースの直感 の分析研究の説明書 研究実施説明書もの忘れ外来に通院されている 患者様を対象に 転倒を察知する看護師の洞察力に関する研究のご説明を開始いたします 転倒は太ももの付け根 ( 大腿骨頸部 ) 骨折 手首の骨折の 80% 以上の原因です 大腿骨頸部骨折も手首の骨折

0_____目次.indd

<4D F736F F D CB48D655F94928D95445F90488E9690DB8EE68AEE8F802E646F63>

経済学コース論文要約

表 5-1 機器 設備 説明変数のカテゴリースコア, 偏相関係数, 判別的中率 属性 カテゴリー カテゴリースコア レンジ 偏相関係数 性別 女性 男性 ~20 歳台 歳台 年齢 40 歳台

名古屋文理大学紀要第 16 号 (2015 年 ) 論文 地域在住の前期高齢者と後期高齢者の栄養状態と骨密度および握力 Nutrition, Bone Mineral Density and Grip Strength among Young old and Old old in Residents

(別紙様式1)

平成 28,29 年度スポーツ庁委託事業女性アスリートの育成 支援プロジェクト 女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究 女性アスリートにおける 競技力向上要因としての 体格変化と内分泌変化の検討 女性アスリートの育成 強化の現場で活用していただくために 2016 年に開催されたリオデジャネイロ

<4D F736F F F696E74202D E6378D65816A8DC58F498D D8297EE8ED282CC B82C68B8D93FB C B A C CE8DF482CC8ACF935F82A982E7817A95F193B997708AEE91628E9197BF E707

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

さらに, そのプロセスの第 2 段階において分類方法が標準化されたことにより, 文書記録, 情報交換, そして栄養ケアの影響を調べる専門能力が大いに強化されたことが認められている 以上の結果から,ADA の標準言語委員会が, 専門職が用いる特別な栄養診断の用語の分類方法を作成するために結成された そ

宗像市国保医療課 御中

札幌鉄道病院 地域医療連携室だより           (1)

TDM研究 Vol.26 No.2

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2 11. 脂肪 蓄 必 12. 競技 引退 食事 気 使 13. 日 練習内容 食事内容 量 気 使 14. 競技 目標 達成 多少身体 無理 食事 仕方 15. 摂取 16. 以外 摂取 17. 自身 一日 摂取 量 把握 18. 一般男性 ( 性. 一日 必要 摂取 把握 19. 既往歴 図

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

様式 3 論文内容の要旨 氏名 ( 神﨑光子 ) 論文題名 周産期における家族機能が母親の抑うつ 育児自己効力感 育児関連のストレス反応に及ぼす影響 論文内容の要旨 緒言 女性にとって周産期は 妊娠 分娩 産褥各期の身体的変化だけでなく 心理的 社会的にも変化が著しいため うつ病を中心とした気分障害

簿記教育における習熟度別クラス編成 簿記教育における習熟度別クラス編成 濱田峰子 要旨 近年 学生の多様化に伴い きめ細やかな個別対応や対話型授業が可能な少人数の習熟度別クラス編成の重要性が増している そのため 本学では入学時にプレイスメントテストを実施し 国語 数学 英語の 3 教科については習熟

Ⅰ 目的わが国は世界一の超高齢社会を構成しており 筋骨格系の健康を保つことが要介護 要支援を予防するうえで重要となってきている 約 1200 万人といわれる骨粗鬆症は高齢者の疾患であり 1) 骨折は寝たきりにつながる原因疾患であり 骨折患者の介護費 医療費などは年々増加の一途であるばかりでなく 生命

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

1. 事業概要 事業番号04 目指せ職場の総健康 健康推進は一人ひとりから職場で共に 事業 参加人数 計画値 HbA1c6.5%以上 約100名 実績値 HbA1c6.5 以上 85名 HbA1c5.6%以上6.5%未満 39名 コンソーシアム名 健康な企業づくりコンソーシアム 代表団体 一般財団法

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

PowerPoint プレゼンテーション

< 運動指導 その他 > SPS の検査結果に基いて 運動指導および栄養指導を行いました 運動指導は エアロビック ダンス ウォーキング 筋力トレーニング ストレッチ体操を中心に行いました 教室期間中はトレーニングルームとプールが無料で使用でき 各個人に合ったメニューを作成し指導を行いました また

11 平成 21 年度介護予防事業実施状況について 平成 22 年 7 月 大阪市健康福祉局健康づくり担当

Microsoft Word - cjs63B9_ docx

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

2

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー


ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

11.【最終版】プレスリリース修正  循環器内科泉家

QOL) を向上させる支援に目を向けることが必要になると考えられる それには統合失調症患者の生活の質に対する思いや考えを理解し, その意向を汲みながら, 具体的な支援を考えなければならない また, そのような背景のもと, 精神医療や精神保健福祉の領域において統合失調症患者の QOL 向上を目的とした

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx


別紙様式 (Ⅳ) 商品名 : アミノケア ゼリーロイシン 40 健康被害の情報収集体制 健康被害の情報の対応 窓口部署名等 電話番号 1 味の素 KK 栄養ケアお客様係 2 味の素 KK 健康ケアお客様係 3 味の素ニュートリション株式会社

新しい介護食品 の考え方 平成 26 年 3 月 介護食品のあり方に関する検討会議 定義に関するワーキングチーム 平成 25 年 2 月より 介護関係者や学識経験者等による これからの介護食品をめぐる論点整理の会 ( 以下 論点整理の会 という ) を立ち上げ 同年 7 月に論点が取りまとめられた


学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 長谷川智之 論文審査担当者 主査丸光惠副査星治 齋藤やよい 論文題目 Relationship between weight of rescuer and quality of chest compression during cardiopulmonary r

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

【0513】12第3章第3節

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

jphc_outcome_d_014.indd

<4D F736F F F696E74202D202888F38DFC AB38ED28FEE95F182CC8BA4974C82C98AD682B782E B D B2E >

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

スライド 1

平成14年度研究報告

Microsoft Word _nakata_prev_med.doc

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

別紙1 参加医療施設における本研究実施に関する掲示ポスター

Untitled

10051 P1-32 サルにおける選択的アンドロゲン受容体調節薬 SARM-2f のアナボリック作用ポスター発表 (1 日目 ) 薬物療法 11 月 10 日 ( 土 ) 14:10~15:00 ポスター会場 (2 階 ES ホール ) P2-13 運動 栄養介入によってフレイル状態が

P バーチャル環境でエアロバイクを使用して効率良く身体機能向上と転倒リスクの軽減 P 入院慢性血液透析患者における生活空間の広がりとサルコペニアの関係について P 肝疾患患者の体組成変化と身体機能の関連 :1 年後の縦断研究 P1-19 1

計画研究 年度 定量的一塩基多型解析技術の開発と医療への応用 田平 知子 1) 久木田 洋児 2) 堀内 孝彦 3) 1) 九州大学生体防御医学研究所 林 健志 1) 2) 大阪府立成人病センター研究所 研究の目的と進め方 3) 九州大学病院 研究期間の成果 ポストシークエンシン

学校給食摂取基準の活用 学校給食摂取基準は全国平均を示したものであるから その考え方を踏まえた上で 各学校の実態に応じた摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) 作成する必要がある EER 算出シートに数字を打ち込めば EER( 推定エネルギー必要量 ) は算出できるが 専門職 ( 管理栄養士 栄養士 )

PowerPoint プレゼンテーション

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

表紙.indd

身体福祉論

案 参考資料 1 健康長寿笑顔のまち 京都推進プラン ( 計画期間 : 平成 30 年 ~34 年度 ) 身体活動 運動分野抜粋案 1

宅ベースでの 10 週間のトレーニング ウォーキングのみ 筋内脂肪指標 (a.u.) 80 * ウォーキング群 ウォーキング + レジスタンス運動 * ウォーキング + レジスタンス群 トレーニング前トレーニング後 トレーニング前後の筋内脂肪指標の低下率

Microsoft PowerPoint ⑤静岡発表 [互換モード]

2


2006年7月6日

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word 栄マネ加算.doc

サービス担当者会議で検討し 介護支援専門員が判断 決定するものとする 通所系サービス 栄養改善加算について問 31 対象となる 栄養ケア ステーション の範囲はどのようなものか 公益社団法人日本栄養士会又は都道府県栄養士会が設置 運営する 栄養士会栄養ケア ステーション に限るものとする 通所介護

ⅩⅩⅩ

PowerPoint プレゼンテーション

カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

心房細動1章[ ].indd

Transcription:

高齢者のサルコペニア対策におけるタマゴ摂取の意義 京都女子大学家政学部食物栄養学科 教授田中清 緒言ロコモティブシンドローム ( 以下ロコモ ) は加齢に伴う運動器障害であり 要介護 要支援の重要な原因 健康寿命短縮の大きな要因である ロコモの構成疾患のうち 骨粗鬆症については治療薬が多数開発され 栄養面からの研究も多数存在するが 変形性関節症 サルコペニアに関しては研究報告が乏しい サルコペニアは 転倒リスク増加 日常生活動作低下がさらにサルコペニアを悪化させるという悪循環をきたし 予防の意義は極めて大きい しかし加齢に伴って起こる疾患は対象者が莫大であるため 全例に薬物療法を行うことは不可能であり 栄養 運動を通じての対策を行うしかなく 食品あるいは食品成分によるアプローチが望まれる タマゴは 良質のたんぱく質を豊富に含み 安価で入手が容易であり サルコペニア対策の有力候補となり得る可能性がある そこで本研究ではまず横断調査にて タマゴ摂取と サルコペニア関連指標の関連を検討することを目的とした 方法 A. 高齢者 (1) 対象者対象者は介護付き有料老人ホーム ライフ イン京都 入居者 32 名 ( 男性 8 名 女性 24 名 ) であり 本研究に関する説明は書面及び口頭にて行い 同意は書面にて得た なお本研究は京都女子大学倫理委員会の承認を得た (2) 調査項目身体計測 体組成 下肢筋力 握力 歩行テスト 血液検査 食事調査を行った 1. 身体計測 体組成測定 : 身長 体重 膝高 ふくらはぎ周囲径などの身体計測を行い BMI を算出した またインピーダンス法機器を用いて 体組成を測定した 2. 下肢筋力 : ロコモスキャンを用いて左右の大腿四頭筋を測定した ロコモスキャンは 運動療法の中でも大腿四頭筋筋力増強訓練の一種である 枕つぶし運動を応用した筋力測定方法で 下肢特に大腿四頭筋力を定量的に評価する機器である 握力測定 : 握力計を用いて 左右 2 回ずつ測り 平均値を算出した 3. 歩行テスト :4m の歩行を 2 回行い 歩行時間を測定し 平均値を算出した その結果に基づき 歩行速度 (m/ 秒 ) を算出した 4. 血液検査 : 一般的な検査項目として 肝 腎機能 貧血 脂質 栄養状態の指標となる項目に加えて 血漿アミノ酸濃度も測定した 5. 食事調査 :BDHQ( 簡易型自記式食事歴法質問表 ) を用いた 30 種類の栄養素と タマゴなどおよそ 50 種類の食品の摂取量を算出することができる 6. 統計処理結果は SPSS version 22 にて解析した B. 骨粗鬆症外来受診患者 (1) 対象者神戸労災病院整形外科骨粗鬆症外来受診患者 369 名 ( 男性 30 名 女性 339 名 ) を調査対象とした 本研究に関する説明は書面及び口頭にて行い 同意は書面にて得た なお本研究は神戸労災病院倫理委員会の承認を得た (2) 調査項目 1. 身体計測 体組成測定 : 身長 体重 膝高 ふくらはぎ周囲径などの身体計測を行い BMI を算出した またインピーダンス法機器を用いて 体組成を測定した 2. 下肢筋力 : ロコモスキャンを用いて左右の大腿四頭筋を測定した ロコモスキャンは 運動療 88

法の中でも大腿四頭筋筋力増強訓練の一種である 枕つぶし運動を応用した筋力測定方法で 下肢特に大腿四頭筋力を定量的に評価する機器である 握力測定 : 握力計を用いて 左右 2 回ずつ測り 平均値を算出した 3. 骨密度測定 :DXA 法により 腰椎および大腿骨の骨密度を測定した 4. 歩行テスト :10m の歩行を 2 回行い 歩行時間を測定し 平均値を算出した その結果に基づき 歩行速度 (m/ 秒 ) を算出した 5. 血液検査 : 一般的な検査項目として 肝 腎機能 貧血 脂質 栄養状態の指標となる項目を測定した 6. 食事調査 :BDHQ( 簡易型自記式食事歴法質問表 ) を用いた 30 種類の栄養素と タマゴなどおよそ 50 種類の食品の摂取量を算出することができる 7. 統計処理結果は SPSS version 22 にて解析した 結果 A. 高齢者 (1) 対象者の基本情報対象者は平均 81.9 歳という高齢者集団であったが BMI の平均は 22.0kg/m 2 と 少なくとも明らかな低栄養ではなかった 年齢には 性差を認めなかった 身長 体重は女性より男性において大きかったが BMI には性差がなかった 体脂肪率は女性において高く 骨格筋率は男性において高いが 生理的な差と考えられた 下肢筋力については 測定値 体重あたりの下肢筋力とも男女差はなかった ( 表 1) (2) 血液中アミノ酸分析血中アミノ酸分析の結果を表に示す 総アミノ酸濃度は男性で高かったが BCAA には差がなく フィッシャー比は女性で高かった ( 表 2) (3) タマゴ摂取量と日常生活動作 血液中アミノ酸濃度の相関タマゴ摂取量は 歩行速度 下肢筋力と有意の正相関 握力とは正相関傾向を示したが 体組成とは有意の相関を示さなかった ( 表 3) (4) 下肢筋力に対する重回帰分析下肢筋力に対する重回帰分析の結果 骨格筋率は有意の正の寄与因子であり タマゴ摂取量は正に寄与する傾向を示した ( 表 4) B. 骨粗鬆症外来受診患者 (1) 対象者の基本情報年齢には 性差を認めなかった 身長 体重は女性より男性において大きかったが BMI には性差がなかった 体脂肪率は女性において高かった 握力は男性で高かったが 下肢筋力については 測定値 体重あたりの下肢筋力とも男女差はなかった ( 表 5) (2) タマゴ摂取量と日常生活機能 筋力の相関タマゴ摂取量は 日常生活機能 筋力とは有意の相関を示さなかった ( 表 6) またデータは示さないが 骨密度とは有意の相関を認めなかった (3) タマゴ摂取量と日常生活機能対象者をタマゴ摂取量によって 2 群に分けて 日常生活機能を比較したが 両群に有意さを認めなかった ( 表 7) またデータは示さないが 骨密度にも差を認めなかった 考察施設入居高齢者においては タマゴ摂取量は歩行速度や下肢筋力と有意の正相関を示し 重回帰分析の結果 タマゴ摂取量は 年齢 BMI 骨格筋率とは独立した 歩行速度に対する寄与因子であった 一方骨粗鬆症外来受診患者では このような関連は認められなかった 栄養素は充足している状態では それ以上摂取してもあまり効果は得られないが 不足している場合 摂取を増やすこと 89

は大きな効果につながる このような栄養素の特質を考えると 上記乖離の原因は特定できないが おそらく骨粗鬆症外来受診患者に比べて 全般的にたんぱく質低栄養状態にある施設入居高齢者においては タマゴ摂取の多寡が 筋力や日常生活動作に影響を及ぼすものと考えられる 近年分岐鎖アミノ酸 特にロイシンによる骨格筋でのたんぱく質合成促進が注目され ロイシン摂取はサルコペニア対策の有力候補の一つである サプリメントとしての摂取も考えられるが 食品摂取を通じての対策が可能であれば それが最善であろう 当初タマゴの効果の作用機構として 本研究開始前には ロイシンを代表とする分枝鎖アミノ酸 (BCAA) の関与を想定していたが タマゴ摂取量と血液中ロイシン濃度の関連は認められなかった したがって現時点では 施設入居高齢者における タマゴ摂取による筋力や日常生活動に対する望ましい効果の機構は不明であり さらなる研究が必要である 高齢者において タマゴ摂取がサルコペニアに及ぼす影響に関する報告は乏しいが イギリスからの報告において タマゴ摂取のサルコペニア対策に対する効果が報告され 1) またごく最近全卵摂取による骨格筋におけるたんぱく質合成促進が報告されている 2) サルコペニアは社会的にも重要な課題であるにも関わらず 骨粗鬆症とは異なり 有効な治療薬が存在しない したがってサルコペニアの高リスク集団においては タマゴのような良質のたんぱく質を摂取することは 有効なサルコペニア対策となることが示唆された 要約施設入居高齢者 骨粗鬆症外来受診患者を対象に タマゴ摂取量と 筋力 日常生活動作の関連を調査した 施設入居高齢者においては タマゴ摂取量は 歩行速度 下肢筋力と有意の正相関 握力とは正相関傾向を示し 下肢筋力に対する重回帰分析の結果 骨格筋率は有意の正の寄与因子であり タマゴ摂取量は正に寄与する傾向を示した 施設入居高齢者のようなサルコペニアの高リスク集団においては タマゴのような良質のたんぱく質を摂取することは 有効なサルコペニア対策となる可能性が示唆された 文献 1. Smith A, Gray J. Considering the benefits of egg consumption for older people at risk of sarcopenia. Br J Community Nurs. 2016 21:305 309 2. van Vliet S et.al. Consumption of whole eggs promotes greater stimulation of postexercise muscle protein synthesis than consumption of isonitrogenous amounts of egg whites in young men. Am J Clin Nutr. 2017 106:1401 1412 90

表 1 対象者の基本情報 ( 高齢者 ) 表 2 高齢者における血液中アミノ酸濃度 ( 高齢者 ) 91

表 3 タマゴ摂取量と日常生活動作 血液中アミノ酸濃度の相関 ( 高齢者 ) 表 4 下肢筋力に対する重回帰分析 ( 高齢者 ) 92

表 5 対象者の基本情報 ( 骨粗鬆症外来患者 ) 表 6 タマゴ摂取量と日常生活機能 筋力の相関 ( 骨粗鬆症外来患者 ) 表 7 タマゴ摂取量と日常生活機能 ( 骨粗鬆症外来患者 ) 93