第 章 微分方程式 ニュートンはリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見した という有名な逸話があります 無重力の宇宙船の中ではリンゴは落ちないで静止していることを考えると 重力が働くと始め静止しているものが動き出して そのスピードはどんどん大きくなる つまり速度の変化が現れることがわかります 速度は一般に時間と共に変化します 速度の瞬間的変化の割合を加速度といい で定義しましょう 速度が変化する, つまり加速度がでなくなるためにはその原因があり ニュートンはそれが質量をもつ物質に働く力のせいであることを見抜いたわけです 質量は重さのもとになる量で 同じ大きさの力を受けても質量が大きいと速度は変化しにくく, 質量が小さいと速度はたやすく変化することから 加速度は物体に働く力に比例し 物体の質量に反比例するとニュートンは考えました ここで 比例定数がになるように力の単位をとるとと表されます これが有名な ニュートンの運動方程式 です この式を速度を用いてのように表しましょう 力が既知のとき 未知の関数の導関数を含む方程式 は積分を用いて解くことができます その結果として, 速度は時間の関数として既知になります このような方程式を微分方程式といいます ニュートンはこの方程式を重力に適用して 地球は太陽の周りを楕円軌道を描いて回っていることを力学的に示しました
微分方程式の基礎 原始関数と不定積分 関数 が与えられたとき となるような関数 を の原始関数といいます が の原始関数で が定数のとき も の原始関数となります を の原始関数の つとすれば 任意の原始関数は の形にかけます これを の不定積分といい であらわします したがって 原始関数と不定積分 ( は積分定数 ) 次に重要な初頭関数の積分の公式をあげておきます 初頭関数の積分公式 ( 証明 ) ~ は省略 とおく とおく
例題 次の不定積分を求めよ ( 解答 ) とおく 次の不定積分を求めよ 次の不定積分を求めよ
変数分離形 変数分離形 ( または ) の解は次の不定積分で与えられる ( 証明 ) 解をとする 置換積分法によって この左辺は に等しいから 例題 ( 解答 ) のとき は積分定数 ) は でない任意の定数 ) のとき は微分方程式に代入すると となり成り立つ 以上から求める解は は任意の定数 ) は積分定数 ) は任意の定数 ) 一般に微分方程式の解は なにか条件をつけない限り一意的には定まらなりません このように 任意の定数を含む一般的な解を 微分方程式の一般解といいます これに対してもとの微分方程式に 例えば例題の問題に という条件をつければ となって 解は一意的に定まります このような条件を初期条件といい 初期条件が与えられて一意的に定まる解のことを特殊解といいます
同次形 同次形 の解は従属変数のからへの変換 すなわち ( 同次形の変数変換 ) を行うことで変数分離形の微分方程式に変換される さらに を満たす定数が存在すれば も解となる ( 証明 ) 従属変数のからへの変換すなわちを行えば よって のとき のときは 変数分離形 となる の形の解がある場合 となり は変数変換とみなせない この形の解をうる には 同次形の微分方程式に代入して この方程式を満たす定数が存在すれば そのにたいしても解となる 例題 ( 解答 ) すなわち とおくと
次に は任意の定数での解があるか調べます よって求める解は は任意の定数で すなわち とおくと 次に の解があるか調べる これはにおいて のときにあたる よって求める解は 例題ののように 一般解に含まれない解を微分方程式の特殊解といいます 微分方程式を解け
オランダの数学者 の提唱したロジスティック方程式 を解け は正定数
線形微分方程式 階線形微分方程式 階線形微分方程式 階線形微分方程式 の一般解は ( 証明 ) まず同次方程式 を考える ( ) も の解なので 同次方程式 の一般解は ここで を の関数式 と考えた式 が与えられた微分方程式を満たすように を決定する ( 定数決定法 ) を与えられた微分方程式に 代入すると 例題 ( 解答 ) まず同次方程式 を考える ( ) も の解なので 同次方程式 の一般解は ここで を の関数式 と考えた式 が与えられた微分方程式を満たすように を決定する を与えられた微分方程式に代入すると まず同次方程式 を考える のとき
( ) のとき 与えられた微分方程式を満たす これは において のときである よって同次方程 式 の一般解は ここで を の関数式 と考えた式 が与えられた微分方程式を満たすように を決定する を与えられた微分方程式に代入すると ( 別解 ) ここで とおくと
階線形常微分方程式 ( 同次方程式 ) 階線形微分方程式 階線形微分方程式 ( は定数 ) の固有方程式 の つの解を とするとき 一般解は が実数で ならば ならば ならば ( 証明 ) まず微分方程式 を考えると ( は複素定数 ) 固有方程式がつの解をを持つので より は与えられた微分方程式の解である 同様にしても解となる とすると したがって ならば も方程式の解となり これが一般解を与える ならば 一つの解はである もう一つの解を得るために定数変化法を用いる とおいて 微分方程式に代入する ならば オイラーの関係によって ( )
回線形微分方程式に対して 次方程式 を微分方程式の特性方程式 特性方程式の解を特性解といいます 階線形微分方程式 の一般解 は 一般に の形をしています とくに も も の解となります このような解 を一般に基本解といいます 例題 ( 解答 ) よって一般解は よって一般解は よって一般解は
階線形常微分方程式 ( 非同時方程式 ) 定数と関数が与えられたとき を定数係数 階線形常微分方程式といいます 特に のときを同次方程式 一般の場合を非同次方 程式といいます 重ね合わせの原理微分方程式 の解を の解を とするとき は の解である ( 証明 ) 一般に 階線形微分方程式の非同次方程式を求めることは簡単ではありませんが 特定の について は簡単な求め方が存在します 未定係数法 の 次多項式 ( が特性方程式の 重解 ) の場合 次多項式 とおいて 微分方程式を見たすように係数を決定する の 次多項式 または が特性多項式 の 重解の場合 ) 次多項式 とおいて 微分方程式を見たすように係数を決定する 例題 次の微分方程式の一般解を求めなさい ( 解答 ) より 基本解は とおく よって求める一般解は より は特性方程式の 重解と考え とおく
より とおく 次の微分方程式の一般解を求めよ
完全微分方程式 偏微分平面上の点 に対して 実数 が つ定まるような関数 を 変数関数といい で表し ます 変数のグラフは一般的に曲線を表すことになります 上の点 において 次のような極限を考えます を一定にして の関数 が において便可能なとき つまり が存在するとき は点で偏微分可能であるといいます また この極限値をに関する偏微分係数といいで表します 同様にして に関する偏微分可能性 偏微分係数が定義されます また 集合の各点でに関して偏微分可能なとき はで偏微分可能であるといいます の各点に その点におけるに関する偏微分係数を対応させることにより得られる関数をの偏導関数といい で表します 同様にして に関する偏導関数を で表します 偏導関数を求めることを偏微分するといい とも書きます 例題 次の関数を偏微分せよ ( 解答 ) 次の関数を偏微分せよ
全微分 変数関数の微分係数の定義は でした この式を変形すると これを 変数に拡張しましょう 全微分関数 が点 において が成り立つとき は点で全微分可能であるという また 領域 の全ての点で全微分可能であるとき を の全微分という 関数が全微分可能であるとは 点がからまでだけ微小変化した 時のの変化量を と 次近似できることを表しています 例題 関数 は全微分可能であることを示せ また 全微分を求めよ 解答 よって は全微分可能で 次の関数の全微分を求めよ
完全形 完全形 微分方程式 において ある関数 または の全微分として と表せるとき すなわち を満たす関数が存在する ( 完全形である ) とき この方程式の一般解は ( 証明 ) の両辺をについて微分すれば ゆえに をみたすは微分方程式の解である 逆に が完全形の微分方程式の解であれば によって 任意の定数に対してを 満たす 完全形であるための条件微分方程式またはが完全形であるための必要十分条件は ( 証明 )( 必要性の証明 ) 与えられた微分方程式が完全形ならば を満たす関数 が存在するから ( 十分性の証明 ) が成り立つとき より とおくと ( はの任意の関数 ) より となるように を選ぶことができれば 微分方程式は完全形である したがって はに無関係なだけの関数である ゆえに が成り立つように を選ぶことができる
例題 ( 解答 ) とおくと したがって この微分方程式は完全形である ゆえに を満たす関数 が存在する この両辺を について偏微分すれば ( はの任意の関数 ) よって求める一般解は とおくと したがって この微分方程式は完全形である ゆえに を満たす関数 が存在する ( はの任意の関数 ) この両辺を について偏微分すれば よって求める一般解は 例題 ( 解答 ) この方程式にをかける とおくと
この微分方程式は完全形である ゆえに を満たす関数 が存在する この両辺を について偏微分すれば したがって求める一般解は この方程式に をかける とおくと この微分方程式は完全形である ゆえに を満たす関数 が存在する この両辺を について偏微分すれば したがって求める一般解は 例題のように与えられた微分方程式が完全形でなくても 適当な関数 をかけて が 完全形になるとき この を積分因子という ( )
次の関数を偏微分せよ 関数の偏微分係数を求めよ 次の関数の全微分を求めよ