原理とメソッド Methods( メソッド ) は数えきれないほど存在するが Principles( 原理 ) はとても少ない 原理をつかむ者は 自身のメソッドを正しく選択できるが 原理を無視しメソッドのみを試みる者は 問題に遭遇する (Ralph Waldo Emerson)

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20 後藤淳 の回転や角加速度の制御ならびに前庭 眼球反射機能をとおして眼球の制御を 卵形嚢 球形嚢により重力や直線的な加速による身体の動きと直線状の頭部の動きに関する情報を提供し 空間における頭部の絶対的な位置を制御しており また 前庭核からの出力により頸部筋群を制御している 2) 頸部筋群はヒト

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Transcription:

動作機能向上の原理原則 u So" Tissue Release ( 軟部組織の適正化 ) u Respira/on( 呼吸の適正化 ) u Joint Centra/on( 関節の中心化 ) u Mobility First( モビリティファースト ) u So" Core&Hard Core( ソフトコア & ハードコア ) u Dissociate( 分離 )&Integrate( 統合 ) u Muscle Recruitment PaBerns( 筋の動員パターン ) u Developmental Kinesiology( 発育発達運動学 ) u Kine/c Chain( 運動連鎖 CKC: クローズド キネティックチェーン ) u 3 Dimension Movement(3 面運動 ) u Loading( 力の充填 )&Unloading( 力の発揮 ) u Movement Based Exercise( 能力の限界で遂行する ) u Adaptability( 適応性 ) u Motor Learning( 運動学習 )

原理とメソッド Methods( メソッド ) は数えきれないほど存在するが Principles( 原理 ) はとても少ない 原理をつかむ者は 自身のメソッドを正しく選択できるが 原理を無視しメソッドのみを試みる者は 問題に遭遇する (Ralph Waldo Emerson)

関節の機能とは? 関節は 2 つの働きがあります 関節 機能 可動性 Mobility 安定性 Stability

ジョイントバイジョイントアプローチ 可動性と安定性は交互になっていて サンドイッチ構造です 頚椎 肩甲上腕関節 安定性 可動性 肩甲胸郭関節安定性 + 可動性 胸椎腰椎 骨盤股関節膝関節足関節 可動性安定性可動性 + 安定性安定性可動性

脊柱の各関節での関節可動域 機能障害 動きの少ない分節を補うために 他の分節が適切な範囲を越えて過剰に動いてしまう 最も柔軟な分節が他の分節と比較してより早く動いてしまうという概念を踏まえながら 多分節器官である脊柱における制限の強い分節だけ可動性を改善するプログラムを開発するのは容易ではない 最も硬い分節が他動的に動かされる場合でさえも 活動中に生じる動きのためには その分節は最も柔軟性のある分節のように容易に動かなくてはならない 回旋が最も大きく生じる部位は 腰椎ではなく胸椎である よって 身体を捻じるエクササイズを行う際は ウェイストではなく 胸郭を捻じるように指導する必要がある

Dissociate ( 分離 )&Integrate( 統合 ) ファンクショナル ムーブメント 関節関節関節 ROM:Hypo ROM:Hyper ROM:Hypo 代償 WEAK PAIN TIGHT MOBILE Motor Control (DMC) STABLE Stability (SMC) MOBILE Mobility

u Func/onal Movement ファンクショナルな動きには 適切な関節が適切な可動域内において適切なタイミングと適切な強度で利用された時に実現する (Gary Gray) u Mostability( ムチの原理 ) 動作における関節の Mobility は 隣り合う関節の Stability が必要である (Gary Gray) u Stability Joint& Mobility Joint 個々の関節では機能性に違いがあり 安定性が要求される関節の機能を促進するエクササイズと可動性獲得を目的とする関節の機能を促進するエクササイズとは異なる (Michael Boyle)

特定方向への運動の起こりやすさ u DSM(Direc/onal Suscep/bility to Movemenet) 特定方向への運動の起こりやすさ 持続的な動きや静的な姿勢によって軟部組織が障害を受け 関係した関節が一定の解剖学的な方向だけに動く習慣をつけさせてしまう この関節の動きや動作の習慣が 頻繁に望ましくない方法で行われることによって 軟部組織に損傷を与えると考えられている (Shirley A.Sahrmann) 人は 皆一人ひとりが個別に運動パターンを持っている さらに筋骨格系疼痛患者では その運動パターンが拡張されている (Shirley A. Sahrmann)

相対的柔軟性 相対的筋力による代償運動 1 (compensatory rela/ve Flexibility&Strength) 他の関節でまず起こるべき運動が より柔軟性がある関節において動くべきではない時に動き始める現象 u 肩関節屈曲における代償運動 Case1 肩甲骨 胸椎 胸郭の可動性が低下しているため腰椎を過伸展することで対応 制限の強い肩甲骨 胸椎 胸郭の可動性を改善するエクササイズが必要

Shortened Muscles 腓腹筋ヒラメ筋内転筋群ハムストリングス大腰筋大腿筋膜張筋大腿直筋梨状筋腰方形筋脊柱起立筋大胸筋 / 小胸筋広背筋大円筋僧帽筋上部線維肩甲挙筋胸鎖乳突筋斜角筋群 Lengthened Muscles 前脛骨筋後脛骨筋内側広筋大殿筋 / 中殿筋腹横筋内腹斜筋多裂筋前鋸筋僧帽筋中部 下部線維大菱形筋 / 小菱形筋小円筋棘下筋三角筋後部線維深部頚椎屈筋群

コレクティブエクササイズの大事な要素 呼吸 適切な呼吸パターン 適切な腹腔内圧 (IAP) チョッピング & リフティング フィードフォワードスタビリティ 深部反射スタビリティ トランジションフェーズ PNF パターン デッドリフトバリエーション モビリティ ヒップヒンジ フィードフォワードスタビリティ バランス ローリング 深部反射スタビリティ 低閾値戦略

改善の戦略 コレクティブパターンを識別 呼吸 モビリティ 静的モーターコントロール能力 動的モーターコントロール能力 パフォーマンス

ASLR コレクティブストラテジー スクリーニング モビリティ スタティックモーターコントロール ダイナミックモーターコントロール ストレングス アクティブ SLR 軟部組織リリース トールニーリングセットアップ & ホールド デッドリフトパターニング ケトルベルデッドリフト シングルレッグ トータッチ スーパーバンドストレッチ ハーフニーリングセットアップ & ホールド デッドリフト RNT ダンベルリフトシングルレッグ クロコダイルブリージング レッグロワーリング ハーフニーリングインライン デッドリフト デッドリフト シングルレッグ ASLR コアエンゲージメント ソラシックツイストハーフニーリング デッドリフトシングルレッグ RNT ヒップフレクサーストレッチ / ハーフニーリング チョップ & リフトハーフニーリング デッドリフトシングルレッグシングアームコントラ ストレートレッグブリッジ クックヒップリフト

発育発達に基づいての運動段階

UPPER CROSSED SYNDROME SUMMARY Short Muscles Lengthened Muscles Altered Joint Mechanics Possible Injuries 僧帽筋上部肩甲挙筋胸鎖乳突筋斜角筋広背筋大円筋肩甲下筋大胸筋小胸筋 深層頸部屈筋群前鋸筋菱形筋僧帽筋中部 下部小円筋棘下筋 増加 : 頚椎伸展肩甲骨挙上肩甲骨外転 減少 : 肩関節伸展肩関節外旋 頭痛二頭筋腱炎ローテーターカフ損傷インピンジメント胸郭出口症候群

Lower CROSSED SYNDROME SUMMARY Short Muscles Lengthened Muscles Altered Joint Mechanics Possible Injuries 腓腹筋ヒラメ筋股関節屈筋群内転筋群広背筋脊柱起立筋 前脛骨筋後脛骨筋大殿筋中殿筋腹横筋内腹斜筋 増加 : 腰椎伸展 減少 : 股関節伸展 ハムストリングス肉離れ膝前側痛腰痛

PRONATION DISTORTION SYNDROME SUMMARY Short Muscles Lengthened Muscles Altered Joint Mechanics Possible Injuries 腓腹筋ヒラメ筋腓骨筋内転筋群腸脛靭帯股関節屈筋群大腿二頭筋短頭 前脛骨筋後脛骨筋内側広筋大殿筋中殿筋股関節外旋筋群 増加 :Knee-in 股関節内旋踵骨回内足関節外反減少 : 足関節背屈足関節内反 足底筋膜炎後脛骨筋腱炎 ( シンスプリント ) 膝蓋靭帯炎 ( ジャンパーズニー ) 腰痛

Func/onal Training Paradox u ファンクショナルトレーニング パラドックス 特にこれらの筋群は機能を改善するために単独で強化す必要がある 1 腹部深層筋 2 股間節外転筋と回旋筋 3 肩甲骨周囲筋 したがって 明らかに非機能的な単関節運動も実は全体の機能性を改善している可能性がある u Isola/on for innorva/on 神経促通を高めるために他の筋と分離して強化する (Mark Verstegen)

Movement Capacity 動作パターン習得のためには反復運動の繰り返しをして習得することが必要になり そのためには Movement Capacity が大きくあることが必要になる Movement Capacity が小さい場合 動作パターン習得にかかる時間にかかる時間に影響する

理学療法の歴史的背景 筋 時代 (1930 1960) 筋力低下ストレッチ 筋力強化徒手筋力テスト 神経 時代 (1960 1980) 運動抑制動きのパターン筋緊張の異常伸張反射感覚不全 関節 時代 (1980 1990) バイオメカニクス関節副運動痛みの原因痛みの対処だけでなく 動き 時代 (1990 ) コンビネーション ( 筋 神経 関節 ) 米国理学療法士協会 (APTA)(2013) 人間の 動作システム は 理学療法士が責任を担う体のシステムであり 理学療法のアイデンティティである

パフォーマンスピラミッド 技術 TECHNICAL ELEMENT 体力 PHYSICAL CAPACITY パフォーマンス向上の為にこの 2 つだけに注目して 強化されてきた 土台となる 動作 を向上させることで上の 2 つの能力が向上する 動作 MOVEMENT

動きを良くするための運動の流れ 関節神経筋肉 最初に関節の機能高める運動を行うとことにより あとがスムーズになる!

関節 モビリティファースト という言葉があり 可動性を先に鍛ることにより安定性も鍛えやすくなります! 可動性 ( モビリティ ) 関節を自在に動かす能力 動ける範囲を 保つべき 関節には 2 つの機能があります 安定性 ( スタビリティ ) 姿勢を保つ 支点を作る

頚椎 CERVICAL SPINE 姿勢に関与 安定性 7 個構造 C3~C7 側屈 35 度 頚椎 C1,C2 回旋 50 度 C3~C7 伸展 40 度 C3~C7 屈曲 65 度

胸椎 THORACIC SPINE 側屈 25 度 12 個の 椎骨 可動性 回旋 30 度 胸椎 24 本の肋骨が付着 伸展 20 25 度 屈曲 30 40 度 頚椎と腰椎の間に存在

腰椎 骨盤 LUMBAR SPINE&PELVIS 緩やかな前弯 安定性 腰椎 = 5 つの椎体 回旋 5 度 腰椎 骨盤 骨盤 = 寛骨 + 仙骨 + 尾骨 伸展 35 度 屈曲 50 度 側屈 20 度

肩関節 肩甲骨 SHOULDER JOINT&SCAPULA 内旋 70 度 自由度 高い 可動性 外旋 60 度 5 つの関節で構成 内転 20 40 度 外転 16 0 180 度 肩関節 肩甲骨 肩甲 上腕 リズム屈曲 150 1 70 度 水平伸展 40 50 度 水平屈曲 130 160 度 伸展 40 度

股関節 HIP JOINT 内旋 4 0 度 可動性 + 安定性 6 つの動き 外旋 3 0 5 0 度 内転 2 0 3 0 度 股関節 全身の動作に影響 強い 筋肉 多い 外転 5 0 8 0 度 伸展 2 0 度 屈曲 1 40 度

足関節 足部 FOOT JOINT&FOOT 足部 = 安定性 足関節 = 可動性 体の土台 回内 20 度回外 40 度 足関節 足部 足部 26 個の骨の集まり 背屈 20 30 度 内転 15 25 度 外転 5 15 度 底屈 40 50 度

1[ オーバーパワーピラミッド ] 競技技術 筋力 機能的動作 例 : パワーは強いが 体の動かし方が上手くない方 一部のトレーニング愛好家の方やボディビルダー 2[ アンダーパワーピラミッド ] 競技技術 筋力 機能的動作 例 : 体はきちんと動かせるが パワーが足りない方 一部のスタジオ愛好家やスタジオインストラクター

3[ アンダースキルーピラミッド ] 競技技術 筋力 機能的動作 例 : 体の安定性や柔軟性 筋力も十分な方 ゴルフを始めてまだ 2 ヶ月 4[ アンダーファンクションピラミッド ] 競技技術 筋力 機能的動作 例 : ゴルフはプロ級の腕前 筋力もあるが体の安定性や可動性がない ほとんどのトップアスリート

Movement & Mo/on Mo/on を改善しても Movement を向上させるには不十分である Movement には加えて バランス 姿勢のコントロール 認知 知覚 コーディネーションといった運動制御能力が必要になるからである 部分的な動きの改善だけではなく 動作パターンの改善が必要である つまり Movement を改善してこそ Performance の向上に繋がると考えられる [Movement] [Mo/on]

Movement PaBern 適切な 筋力 と適切な 可動域 によって 適切な 動作 が生まれるとは限らない 適切な タイミング で 適切な 方法 で 適切な 出力 が発揮されなければ 適切な 動作 は生まれない

The Human Movement System 神経系 代謝系 骨格系 肺系 皮膚系 筋系 人間の動作 システム 循環系

The Movement Spectrum 動作の連続帯 リハビリ パフォーマンス Isolated Movement 分離動作 Fundamental Movements 基礎的な動作 Integrated Movements 統合された動作 Ac/vity Specific Movements 活動に特異的な動作

No Movement, No Performance. Know Movement, Know Performance.

パフォーマンス強化の概念 包括的なパフォーマンスの強化 Comprehensive Performance Enhancement Evalua/on( 検査 測定と評価 ) SOAP Note/FMS/SFMA/FCS Performance Training ~Appropriate Exercise~ パフォーマンスには 個々の身体にとって合目的なトレーニングが必要となる Performance Training Func/onal Training とは Evalua/on によって抽出された問題点を Appropriate Exercise( 合目的なエクササイズ ) で是正していくコンディショニングメソッドである

Performance PaBerns Parts スキル Performance Test(FCS) FMS SFMA-Top Tier SFMA- Breakout 機能障害 Screening/Test/Assessment エントリーポイント 疼痛

Func/onal Movement ファンクショナルな動きは 適切な関節が適切な可動域内において適切なタイミングと適切な速度で利用された時に実現する (Gary Gray) Mostability( ムチの原理 ) 動作における関節の Mobility は 隣り合う関節の Stability が必要である (Gary Gray) Stability Joint&Mobility Joint 個々の関節では機能性に違いがあり 安定性が要求される関節の機能を促進するエクササイズと可動性獲得を目的とする関節の機能を促進するエクササイズとは異なる (Michael Boyle)