おお航海士 Aは 22 時 00 分ごろ福岡県宗像市大島東方沖で船長から 船橋当直を引き継ぎ レーダー 1 台を 6 海里 (M) レンジとして 電 子海図表示装置及び GPS プロッターを 12M レンジとしてそれぞれ 作動させ 操舵スタンド後方に立って単独で操船に当たった 本船は 航海士 A が

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本船は 船長が1 人で船橋当直につき 主機を回転数毎分約 1,2 00( 出力約 20%) とし 約 5ノットの対地速力で 早岐港南東方沖を手動操舵により南南東進中 11 時 07 分ごろ主機が突然停止した 機関長は 温度計測の目的で機関室出入口の垂直はしごを降りていたところ ふだんと違う同室の音を

その他の事項 約 200 であり 船首の作業灯がついていて 船長が投錨する旨を指 示したので 機関室に移動して発電機を起動し いつでも主機を中立 運転にできるように準備した後 自室に戻った 航海士 A は 20 時 00 分ごろ本船が減速していることに気付いて 昇橋したところ 船長から船位が分からな

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その他の事項 という ) を乗せ ウェイクボーダーをけん.. 引して遊走する目的で 平成 30 年 8 月 13 日 14 時 00 分ごろ土庄町室埼北東方にある砂浜 ( 以下 本件砂浜 という ) を出発した 船長は 自らが操船し 操縦者 同乗者 E の順にウェイクボードに 搭乗させ 本件砂浜北東

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既存の船舶に関する情報 1

側のCO₂ルーム バラストタンク等に浸水したため 右舷傾斜が生じて上甲板の右舷側が没水した状態になったことによりハッチカバー 出入口等から船体内部への浸水量が増加するとともに 風浪を受けて復原力を喪失して横転し 更に浸水量が増加して沈没したことにより発生したものと考えられる MING GUANGが波

スライド タイトルなし

をガス専焼モードとして運転していたところ ガス燃料管のガスリークディテクタがガス濃度上昇の信号を発し LNGの蒸発ガスの燃焼が停止して主ボイラが失火したので 蒸気消費量を減少させようとして2 台のタービン発電機のうちの1 台の負荷をディーゼル発電機に移行させたが 1 台のタービン発電機の気中遮断器を

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5 ii) 実燃費方式 (499GT 貨物船 749GT 貨物船 5000kl 積みタンカー以外の船舶 ) (a) 新造船 6 申請船の CO2 排出量 (EEDI 値から求めた CO2 排出量 ) と比較船 (1990~2010 年に建造され かつ 航路及び船の大きさが申請船と同等のものに限る )

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平成4年第二審第14号

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<4D F736F F F696E74202D A957A A8EC0895E8D7182C982A882AF82E EF89FC915082CC82BD82DF82CC A83808DC5934B89BB A2E >

平成 27 年共同研究の成果について ポイント 以下 1~3 については 平成 27 年 7 月 ~11 月の動向です 1 北極海航路を横断した船舶の航行数 北極海航路( ロシア側 ) を横断した船舶は24 航行 ( 前年は31 航行 ) 前年の航行数はノルウェーの研究機関 CHNLの分析結果 2

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索 引 北 海 道 襟裳岬 5255(T) 5256(T) 本州北西岸 角島 5257(T)- 柴山港 282- 能登半島 5258(T)- 舳倉島 283- 能代港 5259(T) 本州東岸 八戸港 5260(T) 5261(T)- 相馬港 5262(T)- 塩屋埼 5263(T)- 小名浜港 5

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さらに真値よりも遠い方に認識される特性があること などが報告されている (4) しかし 一般的に距離感とは 経験に基づく記憶や 学習に基づいて認知されて得られる認知距離と 単に大きさや物体の形状から得られる知覚距離の両方を総称したものと言え (5)(6) 船上での航海経験の多少や個人の特性によっても

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1 趣旨このガイドラインは 日本国内の公道 ( 道路交通法 ( 昭和 35 年法律第 105 号 ) 第 2 条第 1 項第 1 号に規定する 道路 をいう 以下同じ ) において 自動走行システム ( 加速 操舵 制動のうち複数の操作を一度に行い 又はその全てを行うシステムをいう 以下同じ ) を

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船舶事故調査報告書 平成 30 年 11 月 14 日運輸安全委員会 ( 海事専門部会 ) 議決委員佐藤雄二 ( 部会長 ) 委員田村兼吉委員岡本満喜子 事故種類発生日時発生場所事故の概要事故調査の経過事実情報船種船名 総トン数船舶番号 船舶所有者等 L B D 船質機関 出力 進水等乗組員等に関する情報死傷者等損傷気象 海象事故の経過 乗揚 平成 30 年 3 月 30 日 01 時 07 分ごろ うす佐賀県唐津市臼島北東方沖 臼島灯台から真方位 046 130m 付近 ( 概位北緯 33 33.9 東経 129 53.8 ) せいりゅう 貨物船誠隆丸は 南西進中 浅所に乗り揚げた 誠隆丸は 船底外板の破口等を生じた 平成 30 年 4 月 4 日 本事故の調査を担当する主管調査官 ( 長崎事 務所 ) ほか 1 人の地方事故調査官を指名した 原因関係者から意見聴取を行った 貨物船誠隆丸 264 トン 141856 日栄運輸有限会社 (A 社 ) 60.83m 9.80m 6.00m 鋼 ディーゼル機関 735kW 平成 24 年 12 月 6 日 船長男性 53 歳 四級海技士 ( 航海 ) 免許年月日平成 13 年 7 月 30 日 免状交付年月日平成 28 年 12 月 9 日 免状有効期間満了日平成 33 年 12 月 25 日 航海士 A 男性 57 歳 六級海技士 ( 航海 )( 履歴限定 ) なし 免許年月日平成 19 年 9 月 4 日 免状交付年月日平成 29 年 6 月 14 日 免状有効期間満了日平成 34 年 9 月 3 日 船底外板に破口を伴う凹損 両舷ビルジキール 舵及びプロペラ翼に 曲損 気象 : 天気晴れ 風向北 風力 2 視界良好 海象 : 波高約 0.3m 潮汐下げ潮の末期 本船は 船長及び航海士 A ほか 1 人が乗り組み 鋼板約 735t を 積載し 平成 30 年 3 月 29 日 13 時 55 分ごろ長崎県佐世保港に向 けて大分県大分市大分港を出港した - 1 -

おお航海士 Aは 22 時 00 分ごろ福岡県宗像市大島東方沖で船長から 船橋当直を引き継ぎ レーダー 1 台を 6 海里 (M) レンジとして 電 子海図表示装置及び GPS プロッターを 12M レンジとしてそれぞれ 作動させ 操舵スタンド後方に立って単独で操船に当たった 本船は 航海士 A が 船橋当直を交替して間もなく 自動操舵で予 定針路の 236 ( 真方位 以下同じ ) に設定し 約 12 ノット (kn) の対地速力で玄界灘を南西進した 航海士 A は 22 時 30 分ごろ 疲れていたので 背もたれと肘掛 けの付いた椅子を操舵スタンド後方に置き 同椅子に腰を掛けて船橋 げんかい当直を続け 福岡県福岡市玄界島北西方沖で船位が予定針路から左方 に外れていることに気付いたので 自動操舵での針路を 237 に変 更した 航海士 A は 針路を変更後 周囲に他船を認めず 眠気を感じるよ うになり 椅子に腰を掛けた状態で身体を動かすなどしていたが 3 ひめ 0 日 00 時 33 分ごろ福岡県糸島市姫島北西方沖で 臼島北東方沖の 変針予定場所まで約 6M であることを電子海図表示装置で確認したの ち いつしか居眠りに陥った 本船は 潮流の影響を受けながら南西進中 変針予定場所付近を通 過し 01 時 07 分ごろ臼島北東方沖の浅所に乗り揚げた 航海士 A は 衝撃音で目が覚め 本船が乗り揚げたことに気付き 主機を停止した 船長は 自室で休んでいたところ衝撃を感じ 昇橋して乗り揚げた ことを知り 本事故の発生を海上保安庁に通報するとともに A 社に連 絡したのち 損傷状況の確認を行い 船首スラスター室に浸水を認め た 本船は A 社が手配したタグボートによって引き下ろされたのち よぶこタグボートに横抱きされて唐津市呼子港に入港し 仮修理が行われ た ( 付図 1 航行経路図 付表 1 本船の AIS 記録 ( 抜粋 ) 写真 1 本船 写真 2 本船船橋内の状況参照 ) その他の事項 本船の喫水は 船首約 2.8m 船尾約 3.9mであった 本船は 通常 船長及び航海士 2 人が4 時間交替で単独の船橋当直を行っていたが 3 月中旬から 法定の乗組み基準は満たしていたものの 航海士を1 人減員した状態で運航しており 船橋当直を船長及び航海士 Aが航行時間の中で適宜時間帯を割り振って行うようになっていた 航海士 Aは 航海士の減員前 船橋当直を04 時から08 時及び1 6 時から20 時の時間帯に行っていた 本船は 本事故当時 関門海峡及び平戸瀬戸で船長の操船となるよう船橋当直を4 時間交替で割り振り 航海士 Aの船橋当直の時間帯を - 2 -

14 時から 18 時及び 22 時から 02 時としていた 航海士 A は 本船の航海士が減員となって以降 入出港や荷役作業 の負担が増したことに加えて船橋当直の時間帯が不規則になり 本事 故当時 疲労の蓄積を感じていた 航海士 A は ふだん 船橋当直中に眠気を感じた場合 窓を開けて 外気を取り込んだり コーヒーを飲んだりして居眠り運航の防止措置 を採っていたが 本事故当時 あと 30 分程度で変針なのでそれまで 眠ることはないと思い これらの措置を採らなかった 本船は 第二種船橋航海当直警報装置 ( 以下 居眠り防止装置 と いう ) が船橋前面の棚の右舷側に備えられており 警報の設定時間 を約 4 分としていた 居眠り防止装置は 主機の遠隔操縦装置が前進に操作されたときに 起動し 警報の設定時間内に 船橋天井の右舷船首側に設置されたセ ンサーで当直者の動きを検出するか 居眠り防止装置のリセットボタ ンが押されるかしてリセットが行われない場合 船橋で警報が作動す るようになっており 同警報が 15 秒以内にリセットされなければ 船長の居室等でも警報が作動するようになっていた 居眠り防止装置の警報は 本事故当時 航海士 A が船橋当直中 船 橋 船長の居室等で作動しなかった 本船の運航者は 本事故後 本船の居眠り防止装置の動作確認を行 い 本事故当時 センサーの検出領域内に置かれていた椅子に腰を掛 けて居眠りに陥った航海士 A の身体の動きをセンサーが検出し 警報 が作動しなかったものと判明した 本船の電子海図表示装置は ノートパソコンに電子海図ソフトウエ アをインストールしたもので 浅瀬等に接近した際に警報音を発する 機能を有していた 航海士 A は 乗揚後 目が覚めてから 電子海図表示装置の警報音 に気付いた あふ本船は 乗揚後 浸水した船首スラスター室から溢れ出た海水が中 甲板通路を伝って船倉に至り 積荷の一部に濡損を生じた 分析 乗組員等の関与船体 機関等の関与気象 海象等の関与判明した事項の解析 ありなしなし本船は 姫島北西方沖を自動操舵で南西進中 単独の船橋当直についていた航海士 Aが 居眠りに陥ったことから 変針予定場所付近を通過して航行を続け 臼島北東方沖の浅所に乗り揚げたものと考えられる 航海士 Aは 疲労が蓄積していたこと 周囲に他船を認めなかったこと 居眠り運航の防止措置を採らずに椅子に腰を掛けて自動操舵で - 3 -

原因 再発防止策 船橋当直に当たっていたことなどから 覚醒水準が低下し 居眠りに陥ったものと考えられる 航海士 Aは 本船の航海士が1 人減員した状態となり 入出港等作業の負担が増したことに加えて船橋当直の時間帯が不規則になっていたことから 疲労が蓄積していたものと考えられる 航海士 Aが 居眠り防止装置のセンサーの検出領域内に置いた椅子に腰を掛けて居眠りに陥ったことは センサーが居眠りに陥った航海士 Aの身体の動きを検出して居眠り防止装置の警報が作動しないこととなり 本事故の発生に関与した可能性があると考えられる 本事故は 夜間 本船が 姫島北西方沖を自動操舵で南西進中 単独の船橋当直についていた航海士 Aが 居眠りに陥ったため 変針予定場所付近を通過して航行を続け 臼島北東方沖の浅所に乗り揚げたものと考えられる 本船の運航者は 本事故後 再発防止策として 次の措置を講じた 船橋の椅子の位置を 居眠り防止装置のセンサーの検出領域外に移動し 船橋床面に椅子の位置を指定するマーキングを施した 船橋の椅子を 既存のものよりも 背もたれの角度が垂直に近く 座面が硬いものに交換した 他の運航船舶でも同様の対策を講じることとした 今後の同種事故等の再発防止に役立つ事項として 次のことが考えられる 船橋当直中に眠気を感じた場合は 椅子の使用を控え 手動操舵に切り替えたり 外気に当たったりするなどして居眠り運航の防止措置を採ること 船橋航海当直警報装置は その機能を発揮できるよう適切に運用すること 乗組員を減員した状態での運航は 作業負担の増加等により乗組員に疲労が蓄積する可能性が高いので できる限り避けることが望ましい - 4 -

付図 1 航行経路図 本船 01:04 01:05 01:06 01:07-5 -

付表 1 本船の AIS 記録 ( 抜粋 ) 時刻 船位 対地針路 船首方位 対地速度 ( 時 : 分 : 秒 ) 緯度 ( - - ) 経度 ( - - ) ( ) ( ) (kn) 00:30:45 033-38-08.4 130-01-13.3 234.8 236 11.9 00:31:46 033-38-01.4 130-01-01.9 233.9 236 11.8 00:32:46 033-37-54.2 130-00-50.7 230.6 236 11.8 00:33:45 033-37-46.9 130-00-39.4 232.1 236 11.8 00:34:45 033-37-39.6 130-00-28.1 230.1 236 11.9 00:36:46 033-37-25.2 130-00-05.4 232.0 235 12.0 00:39:39 033-37-04.1 129-59-32.1 232.0 236 12.0 00:40:19 033-36-59.0 129-59-24.1 232.6 235 12.3 00:41:32 033-36-50.2 129-59-10.0 233.1 236 12.3 00:42:32 033-36-42.7 129-58-58.2 233.4 236 12.3 00:43:39 033-36-34.2 129-58-45.0 233.2 236 12.5 00:44:12 033-36-30.0 129-58-38.5 234.6 236 12.3 00:45:45 033-36-18.8 129-58-19.6 236.3 239 12.3 00:46:49 033-36-11.5 129-58-06.7 235.3 238 12.3 00:47:46 033-36-05.0 129-57-54.9 238.1 239 12.4 00:48:46 033-35-58.4 129-57-42.4 238.7 239 12.3 00:49:46 033-35-51.8 129-57-29.9 237.4 238 12.3 00:50:46 033-35-45.4 129-57-17.4 239.6 238 12.1 00:50:59 033-35-44.0 129-57-14.7 236.8 238 12.1 00:51:46 033-35-39.0 129-57-04.9 238.4 239 12.0 00:52:46 033-35-32.7 129-56-52.5 241.1 238 12.1 00:53:46 033-35-26.4 129-56-40.0 239.2 238 12.0 00:54:19 033-35-23.0 129-56-33.2 237.8 239 12.1 00:55:46 033-35-14.0 129-56-15.2 239.9 238 12.0 00:56:39 033-35-08.4 129-56-04.3 236.7 239 12.0 00:57:35 033-35-02.2 129-55-52.5 237.2 238 12.3 00:58:39 033-34-55.1 129-55-39.6 235.1 239 12.4 00:59:46 033-34-47.2 129-55-26.1 232.3 238 12.1 01:00:46 033-34-39.9 129-55-14.3 234.8 238 12.2 01:01:45 033-34-32.9 129-55-02.1 237.1 238 12.5 01:02:32 033-34-27.6 129-54-52.5 238.8 240 12.4 01:03:39 033-34-20.3 129-54-38.5 238.0 238 12.2 01:04:32 033-34-14.6 129-54-27.4 239.4 238 12.1 01:05:46 033-34-06.5 129-54-12.3 237.5 239 12.0 01:06:46 033-34-00.0 129-54-00.1 240.1 239 12.0 01:07:25 033-33-55.9 129-53-51.9 239.9 239 11.4 01:08:19 033-33-55.3 129-53-50.5 273.1 240 0.0 01:09:19 033-33-55.2 129-53-50.5 300.3 240 0.0 01:10:09 033-33-55.2 129-53-50.5 301.6 240 0.0 船位は 船橋上方に設置された GPS アンテナの位置である また 対地針路及び船首方位は真 方位である - 6 -

写真 1 本船 写真 2 本船船橋内の状況 居眠り防止装置のセンサー椅子 ( 本事故当時の位置 ) - 7 -