改正パートタイム労働法 労働契約法 ~ 人事制度整備の取り組み ~ < 内容 > 1 キーワードは 役割明確化 2 貴社は何型ですか?~ パートタイマー人事のパターン ~ 3 パートタイマー ( 非正規社員 ) の雇用体系 4 パートタイマーの戦力化 正社員化ステップ 5 パートタイマーの人事制度 6 採用戦略としてのパート活用 平成 20 年 5 月 29 日 有限責任事業組合人事賃金パートナーズ 理事 : 人事コンサルタント荒谷康文
キーワードは 役割明確化 パートタイマーに期待する役割をなるべく明確にすることが 改正パート法および労働契約法のいずれに対しても重要 パートタイマー人事のタイプ 不連続型ステップアップ型一体型 正社員 正社員 正社員 パート 中間 形態 社員 パート パート パートと正社員の仕事のレベルがまったく異なるパターン正社員への登用はなく ( ほとんど必要性もなく ) パート比率が少ない企業に多い パートと正社員の仕事のレベルに重複があり 契約社員などのグレーゾーンがあるパターン正社員への登用があり パート比率が5 割程度の企業に多い パートの戦力が質的 量的に基幹化が進み正社員と一体化したパターン既に正社員への登用も柔軟に行われており パート比率が非常に大きい企業に多い 1
パートタイマー ( 非正規社員 ) の雇用体系 パートタイマー 雇用期間賃金労働時間賞与退職金人材 有期 ( 実態無期 ) 時給パートなしなし主婦 アルバイト有期時給パートなしなし学生 働く動機など 生活のため時間を柔軟に使いたい責任のある仕事はしたくない専門性がなくてもできる 契約社員有期月給 フルパート 応業績 なし 専門職など 嘱託社員有期月給フルなしなし高齢者 得意分野で活躍したい自分の力次第責任もあるが自由もある経験 能力を活かしたい時間を有意義に使いたい生活の足し 健康にも良い いずれも主な想定 非正規社員の性質 ~ 特にパートタイマー ~ 経営側のニーズ働く側のデメリット有期雇用という側面があり 長期雇用を保証しなくて済む正社員より人員削減の対象になりやすい福利厚生面で適用対象にする必要はない正社員より不利になる補助作業が中心となるため教育研修コストが少なくて済む専門的なスキルが身につきにくい補助作業が中心となるため給与面でも抑制がしやすい昇給 賞与などで評価される機会が少ない 経営側のニーズを活かしながら 働く側のデメリット をケアすること 2
パートタイマーの戦力化 正社員化ステップ パータタイマー雇用を取り巻く労働環境 社会保障制度を維持するために 現役 を増やす方向に法律が改正される将来的には社会保険の適用範囲が拡大し パートと正社員の境界は消滅か? 景気の緩やかな回復 団塊世代の引退などの要因により 新規学卒採用が困難( ただし 一過性との予測もあり ) 雇用の多様化により 働く側のニーズも様々である若年層の勤労意識にも変化がみられ 安定雇用を求めつつも 私生活重視 名ばかり管理職 に見られるように 正社員の働き方にも変化の兆しがある ワークシェア ( 仕事の分配 ) が本格化か? 法律改正 労働力人口減少 パート雇用 働き方多様化 採用難 パートタイマー活用の必要性は高まる パータタイマー活用の必要性 パートタイマーのなかでも優秀でやる気のある人については ぜひ戦力化すべき パートタイマー アルバイトの定着率を高め熟練や経験を流出させず 付加価値アップ 採用費用ダウン 優秀なパートタイマーには基幹業務にも関わらせることで正社員の負担を軽減し 労働リスク ( 名ばかり管理職問題 残業未払いなど ) にも対応 そのためにパートタイマーの適切な人事マネジメントが必要といえる 3
パータタイマー正社員化ステップ いきなり正社員にすると 経営のみならずパートタイマー本人にとっても負担になる ( 例 ) よかれと思い正社員にしたが 責任感の強い主婦 Aさんはかえって負担に感じてしまい退社 様々な人事制度を整理したうえで正社員にする必要がある ( 例 ) 会社も本人も納得し正社員にしたはずが 福利厚生制度 ( たとえば社宅や住宅支援 ) の取扱いで混乱 パートタイマーの正社員化にはある程度のステップ ( 経過的措置 ) があったほうが良い キャリアパターン パート エリア 正社員契約社員 役員 雇用形態人材像労働時間賃金賞与退職金福利厚生教育ありパートタイマーフローパート時給なしなしなし (OJT 中心 ) エリア社員パートあり準コア時給ありなし一部あり ( 契約型 ) ( フル可 ) ( 投資型 ) 月給あり契約社員専門フルなしなしなし ( 昇給なし ) ( 実績次第 ) 月給あり正社員コアフルありありあり ( 昇給あり ) ( 投資型 ) あり役員マネシ メントフル年俸成果配分あり - ( 慰労金 ) 処遇内容は各社ニーズに応じて設定して良い 4
パートタイマーの人事制度 等級制度 役割を明確にしておけば 雇用契約面でも 正社員登用や賃金決定面でも後々に問題にならずに済む 正社員予定パートタイマー か 純パートタイマー かの区別をする経営ニーズを前提に 本人希望 ( 働く動機 ) に配慮するパートタイマーの最高等級が正社員の2~3 年目程度に相当するように設計すると転換がスムーズ 等級例 等級 Ⅲ( エキスパート ) Ⅱ( アシスタント ) 役割の概要エリア社員同等の職務ができるパート ( エリア社員同様の職務を事前にやらせるなどして 適正を見極める ) 概ね一人前の仕事ができるパート 純粋パートタイマー を希望する場合は これ以上の昇格をしない エリアパート社員 Ⅲ Ⅲから転換 Ⅱ 正社員 Ⅰ( フレッシュ ) 採用して間もない新人パート Ⅰ 役割 ( 職務内容 責任レベル 必要な技能など ) を定義して 格付け理由が説明できるようにしておくことが重要 5
教育研修 教育研修が必要なパートタイマーを限定し 効果的な投資を行うパートタイマーの役割が明確になり 期待が高まるほど 教育研修の必要性が増すパートタイマーのやる気を促すためにも教育研修は効果的正社員もパートタイマーも教育研修に対する欲求は同じ 教育研修 自己啓発の目的第 1 位現在の仕事に必要な知識 能力を身につけるため ( 74.5%) 第 2 位正社員将来の仕事やキャリアアップに備えて ( 34.7%) 第 3 位資格取得のため ( 26.7%) 第 1 位現在の仕事に必要な知識 能力を身につけるため ( 61.7%) 第 2 位非正社員将来の仕事やキャリアアップに備えて ( 29.9%) 第 2 位 ( 同率 ) 資格取得のため ( 29.9%) 独立行政法人労働政策研究 研修機構の調査 ( 2006.12) より 行っていない理由第 1 位仕事が忙しくて時間がない ( 49.3%) 第 2 位お金がない ( 28.5%) 第 3 位特に問題や理由はない ( 18.7%) 第 1 位お金がない ( 35.4%) 第 2 位仕事が忙しくて時間がない ( 25.6%) 第 3 位仕事に活かす機会がない ( 22.9%) 正社員予定パートタイマー には教育研修 ( 計画的 OJT や通信教育の補助などの支援 ) を行うことで スムーズな転換が期待できる 6
人事評価 等級格付けを行うためには パートタイマーの役割定義を基準にした人事評価を行うことが求められる 期待される役割にもよるが 基本的には勤務態度や能力水準 ( 対人関係 技能など ) が中心になると考えられる 正社員への登用には 上司推薦や試験 ( ペーパーテスト / 実技 ) などを課すパターンが多い パートタイマーの評価項目事例 ( 経理部門の場合 ) 期待役割および能力要件 1 上長からの具体的指示及び定められたマニュアルに従い遂行する 2 指示事項の結果報告を確実に行う 3 チームワークに貢献する 1 伝票作成業務 ( 入出金伝票 振替伝票の作成 ) 2 証票類のファイリング業務 ( 請求書 領収書等の整理保管 ) 3 来客 窓口応対 4 電話応対 1 ビジネス文書作成技能 2 OA 機器操作技能 3 簿記 ( 日商簿記 3 級程度 ) 知識 他のパートの模範といえるレベル / 他のパートタイマーに教えることができる程度 確実にできるレベル / 単独で業務がこなせる程度 教わりながらできれば良いレベル / 業務に支障がない程度 等級ごとの要求水準 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 上司評価 評価 最終結果 正社員登用 賃金決定根拠の説明義務に対応するためにも なんらかの査定プロセスが必要人材育成の観点からも 一定範囲の人事評価結果のフィードバックが必要になる 7
賃金制度 ( および福利厚生 ) 正社員との均等処遇を検討すべき範囲 ( 対象者 賃金項目 ) を明確にする 基本時給は正社員の基本給をベースに時間単価でバランスをさせて設定し 昇給等の見直しも必要になる 必要によっては正社員の基本給を再設計し パートタイマーとの均等待遇に対応する 正社員を標準にした場合のパートタイマーの均等処遇範囲 給与賞与退職金福利厚生 基本給 職務関連 手当 生活関連 手当 住宅支援慶弔見舞施設利用 正社員 エリア社員 k パートタイマー k k k k k 正社員とパートタイマーの均等待遇について配慮すべきポイント 基本給および職務関連手当 ( 職務手当 精勤手当 など) については 同一労働同一賃金を前提に整理する 生活関連手当は あくまで正社員とパートタイマーでは区別して扱う 基本給に時間外見合金額が含まれる場合など 状況に応じて正社員の賃金の内訳を再整理したうえで考えればよい 賞与 退職金 福利厚生などは 会社任意に決められることなので 目的に応じて決定する ( たとえば 慶弔見舞金 などは世間通念の範囲で考えればパートタイマーにも行うことが多い ) あいまいな部分を残したままでは 正社員にもパートタイマーにも誤解を生むことになる正社員登用をスムーズに進める観点からも 賃金項目ごとの支給目的の再整理が必要 8
採用戦略としてのパートタイマー活用 新しい入職経路としてパートタイマーを位置づける傾向が 近年大手企業を中心に見受けることができる 新卒採用の困難さから 定期採用以外に 通年採用 アルバイトからの繰り上がり採用 など採用方法が多様化している 経営としても 雇用のミスマッチを防ぐためにも パートタイマーを試用期間がわりにできるなどのメリットがある 正社員への登用を前提としたパートタイマー採用のメリット 経営側のメリット意欲 能力の高い人材を 時間をかけて見極めることができるパートタイマーは 新卒入社者よりも人生経験の長いことがあり 人生の良き先輩として期待できる ( 年齢構成バランスが図られる ) 正社員への道を明示することで 学生アルバイトの定着に役立つ 働く側のメリット再挑戦の窓が開かれる ( 就職氷河期世代や子育てが一段落した主婦などには魅力 ) 格差に対する無力感が払拭される就職先選びの方法が増える ( インターンシップや派遣登録と同様の効果 ) 人材見極めが目的なので 正社員登用の機会を無制限に与えるのではなく 応募回数などに制限を設けるなどの対策が必要正社員とパートタイマーの学歴要件等を整理しておく必要がある 9