2018年 租税法基礎答練1回

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1―3

1―3

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損金経理と積立金経理の違い ( 圧縮超過額がない場合の基本構造 ) 例 A 社は 50の国庫補助金を得て 100で機械を取得した なお A 社の経常利益は 100 である * 仕訳の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理積立金経理 補助金受贈と機械取得時の仕訳 ( 両者とも同じ ) 現金預金 50

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実務特集1. 寄附修正 Ⅰ はじめに グループ法人税制 100% グループ内の法人間での譲渡損益の繰り延べ 100% グループ内の法人間の寄附 ( 以上 2010 年 11 月号 ) 100% グループ内の法人間の寄附 ( 寄附修正 ) 支配関係 完全支配関係の判定 100% グループ内の法人のステ

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【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

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目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

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連結の補足 連結の 3 年目のタイムテーブル B/S 項目 5つ 68,000 20%=13,600 のれん 8,960 土地 10,000 繰延税金負債( 固定 ) 0 利益剰余金期首残高 1+2, ,120 P/L 項目 3 つ 少数株主損益 4 1,000 のれん償却額 5 1,1

⑶ 事実関係 損金算入の可否とその理由 商品 A の評価損 4,000,000 円は当期の損金の額に算入されない ❶ 過剰生産による時価の下落は 棚卸資産の評価損の計上が認められる 著しい陳腐化 に該当しない ❷ 1 商品 B の評価損 2,000,000 円は当期の損金の額に算入される ❶ 台風に

〔第一問〕―50点―

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

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投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

貸借対照表 平成 28 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 資産の部 負債の部 流動資産 (63,628,517) 流動負債 (72,772,267) 現金及び預金 33,016,731 買掛金 379,893 売掛金 426,495 未払金 38,59

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

平成23年度税制改正の主要項目

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. 減価償却の仕組みを理解する 60 定率法 定額法など減価償却の方法を理解しましょう. 有価証券の整理をする 68 有価証券一覧表に 購入売却のつど その取引内容を記載していくと 決算業務の際に便利です. 受取配当金を集計する 78 有価証券の整理後 受取配当金と源泉所得税を集計し 申告書作成の準

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128 Z E I K E I T S U S H I N 10. 3

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

第28期貸借対照表

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法人税 faq

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

( 資産の部 ) ( 負債の部 ) Ⅰ 特定資産の部 1. 流動負債 366,211,036 1 年内返済予定 1. 流動資産 580,621,275 特定社債 302,000,000 信託預金 580,621,275 事業未払金 2,363, 固定資産 6,029,788,716 未払

2. 中小企業のための主な優遇制度 注 : 各項目に付記している番号は 関連する参考資料です 番号に対応する資料名などは 5~6 ページに掲載していますのでご参照ください [1] 中小法人等 に適用される主な優遇制度 紙面の都合により ここでは制度の種類と それに関連する参考資料の番号を紹介していま

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

収益事業開始届出 ( 法人税法第 150 条第 1 項 第 2 項 第 3 項 ) 1 収益事業の概要を記載した書類 2 収益事業開始の日又は国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなった時における収益事業についての貸借対照表 3 定款 寄附行為 規則若しくは規約又はこれらに準ずるもの

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

日本基準基礎講座 有形固定資産

第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金

企業中小企(2) 所得拡大促進税制の見直し ( 案 ) 大大企業については 前年度比 以上の賃上げを行う企業に支援を重点化した上で 給与支給総額の前年度からの増加額への支援を拡充します ( 現行制度とあわせて 1) 中小企業については 現行制度を維持しつつ 前年度比 以上の賃上げを行う企業について

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

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Invincible

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

【表紙】

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日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

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利益積立金額第 10 章税法上の資本の部 第 2 節利益積立金額 利益積立金額とは 法人の所得の金額のうち留保されているものをいう ( 法 21 十八 ) この利益積立金額は 法人の所得として課税済みの金額であり それが株主等に配当等された場合には二重課税の調整を要し また 特定同族会社の留保金課税

第6期決算公告

PowerPoint プレゼンテーション

改正法人税法により平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度については法人税率が 30% から 25.5% に引き下げられ また 復興財源確保法により平成 24 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度については基準法人税額の 10% が復興特別法人

Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

第4期電子公告(東京)

第4期 決算報告書

所内研修議事録


e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

平成30年公認会計士試験

法人税 faq

法人の減価償却制度の改正に関するQ&A

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

株 主 各 位                          平成19年6月1日

貸借対照表 ( 平成 25 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 14,146,891 流動負債 10,030,277 現金及び預金 2,491,769 買 掛 金 7,290,606 売 掛 金 9,256,869 リ

営 業 報 告 書

(ⅲ) 源泉徴収選択口座への受入れ 源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

( 注 3) その他の少額上場株式等の非課税口座制度の詳細については 証券会社等の金融商品取引業者等にお問い合わせ下さ い b. 利益を超える金銭の分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 平成 27 年 4 月 1 日以後開始事業年度に係る利益を超える金銭の分配につ

第 14 期 ( 平成 30 年 3 月期 ) 決算公告 平成 30 年 6 月 21 日 東京都港区白金一丁目 17 番 3 号 NBF プラチナタワー サクサ株式会社 代表取締役社長 磯野文久

N 譲渡所得は 売却した土地や借地権 建物などの所有期間によって 長期譲渡所得 と 短期譲渡所得 に分けられ それぞれに定められた税率を乗じて税額を計算します この長期と短期の区分は 土地や借地権 建物などの場合は 売却した資産が 譲渡した年の1 月 1 日における所有期間が5 年以下のとき 短期譲

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

第 36 期決算公告 浜松市中区常盤町 静岡エフエム放送株式会社代表取締役社長上野豊 貸借対照表 ( 平成 30 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 資産の部 負債の部 Ⅰ. 流 動 資 産 909,595 Ⅰ. 流 動 負 債 208,875 現金及び預金 508,

平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

第1章 簿記の一巡

第69回取締役会議案書

労働基準法が改正されます

スライド 1

改正 ( 事業年度の中途において中小企業者等に該当しなくなった場合等の適用 ) 42 の 6-1 法人が各事業年度の中途において措置法第 42 条の6 第 1 項に規定する中小企業者等 ( 以下 中小企業者等 という ) に該当しないこととなった場合においても その該当しないこととなった日前に取得又

投資主の皆様へ 平成 29 年 3 月 マリモ地方創生リート投資法人 第 1 期分配金の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます さて 本投資法人は 平成 29 年 2 月 14 日開催の役員会において 第 1 期 ( 平成 28 年 12 月期 ) の (A)

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会社税務のてびき目次 平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 1 1 法人税は何にかかるか? 3 2 収益は どの時点で計上するか? 8 3 配当金を受け取ったときは? 15 4 売上原価を求める方法 19 5 売却した有価証券の損益を求める 24 コラム 1 社長が会社にお金を貸していたら

営 業 報 告 書

平成19年度 法人の減価償却制度の改正のあらまし

計算書類 貸 損 借益 対計 照算 表書 株主資本等変動計算書 個 別 注 記 表 自 : 年 4 月 1 日 至 : 年 3 月 3 1 日 株式会社ウイン インターナショナル

Z-64-A 簿記論〔第一問〕-解 答-

49 年 12 月 31 日までの間 源泉徴収される配当等の額に係るの額に対して 2.1% の税率により復興 特別が源泉徴収されます b. 出資等減少分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 分割型分割及び株式分配並びに組織変更による場合を除く 以下本 1において同じ

会計上の当期利益 + 加算調整項目 - 減算調整項目 = 税法上の課税所得 加算調整項目 : 税法上の課税所得の方が大きくなるため, 会計上の利益に加算する項目 減算調整項目 : 税法上の課税所得の方が小さくなるため, 会計上の利益に減算する項目 < 申告調整項目 > 1 益金算入 会計上は収益とし

第 21 期貸借対照表 平成 29 年 6 月 15 日 東京都千代田区一番町 29 番地 2 さわかみ投信株式会社 代表取締役社長澤上龍 流動資産 現金及び預金 直販顧客分別金信託 未収委託者報酬 前払費用 繰延税金資産 その他 固定資産 ( 有形固定資産 ) 建物 器具備品 リース資産 ( 無形

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科目印収納科目一覧

第10期

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Transcription:

租税法第 1 回基礎答練講評 出題論点 問題 1 法人税法 ( 受取配当等, 所得税額控除, 租税公課, 減価償却, 完全支配関係法人間の取引, 役員給与 ) 問題 2 法人税法 ( 受取配当等, 所得税額控除, 租税公課, 減価償却, 交際費, 役員給与 ) 平均点, 最高点, 合格点 平均素点最高素点最高得点率合格素点合格得点率 合計 24.3 点 42 点 35.9 点 25 点 25.4 点 上記合格素点 (25 点 ) は, 現時点における合格点を示している 仮に本問が論文式試験で出題された場合, 合格素点 は 35 点程度になると予想される 総評 まずは, 初めての租税法の答練お疲れ様でした これまでテキストを中心に講義 復習を進めてきた方々にとっては, 初めての総合問題で困惑した点もあったと思う 本試験の形式 分量に慣れていく必要があるため, 以下の点を意識し, 復習にのぞんでほしい 1. 限られた時間の中で, 得点を最大化するための問題を見極める力 2. 膨大な資料の中から解答に必要な情報を整理する力 1. 限られた時間の中で, 得点を最大化するための問題を見極める力租税法, 特に法人税法の計算は, 他の計算科目に比べ部分点の取りやすい科目であると認識してほしい 形式こそ, 総合問題の形式で出題されるが, 各論点が複合して出題されることはほとんどなく, 個別問題の集合体と捉えてほしい 例えば, 本問の問題 1の見出しをたどってみると 1. 全般的な事項及び注意事項 2. 受取配当等に関する事項 3. 租税公課に関する事項 4. 減価償却に関する事項 5.D 社との取引に関する事項 6. 役員給与に関する事項 となっているが, これらの項目は事実上独立した小問と考えて問題を解いても大きな影響はない したがって, 問題を前から順番に解く必要はなく, 点数の取りやすい論点から手を付けていけばよい では, 点数の取りやすい論点とは何か 点数の取りやすい論点は,1 計算の量から判断して問題を解くのにどれくらいの時間がかかるか,2 自身の理解の習熟度として問題を正答する可能性はどの程度か, の2 点を勘案して判断することとなる 日頃の学習から, この論点は解きに行くべき論点か後回しにした方が良い論点なのかを意識し, 答練で得点を最大化するための勉強を心がけてほしい 2. 膨大な資料の中から解答に必要な情報を整理する力テキストの例題や個別問題集と答練で大きく違う点は, 資料の膨大さによる解きにくさである テキストや個別問題集は, 論点ごとに小問で作られていて, 計算に必要な資料がまとまっていて解きやすく, 計算方法を正しく理解してもらうことを趣旨としたものである 一方で, 総合問題では資料が膨大であり, 計算に必要な資料が散らばっているため, 複数の資料に目をやりながら計算を行う場面も出てくる そのため, テキストの例題や個別問題集と答練で同じ内容が出題されていたとしても, 解きにくさを感じるのである - 1 -

このような解きにくさを解消するためには, 総合問題に慣れることが一番である テキストや個別問題集でインプットするの みではでなく, 答練を繰り返し解き, 総合問題に慣れてほしい 各問題の講評 問題 1 < サンプル答案 ( 水道橋校 20 部 ) の正答率及び重要度 > 解答箇所正答率重要度解答箇所正答率重要度 ( 受取配当等に関する事項 ) (D 社との取引に関する事項 ) 受取配当等の益金不算入額 資産等の譲渡 完全子法人株式等について 90% A 土地 K 85% A 関連法人株式等について 55% A 土地 L 35% A 非支配目的株式等について 65% A 土地 M 60% A 上記以外の株式等について 40% A 製品 N 65% A 法人税額から控除される所得税額 寄附金 85% A 株式出資 15% A ( 役員給与に関する事項 ) 受益証券 5% A 甲に対する給与 75% A その他 65% A 乙に対する給与 25% A ( 租税公課に関する事項 ) 丙に対する給与 10% A (1) に関する調整 80% A 丁に対する給与 65% A (2) に関する調整 90% A ( 法人税額の計算 ) (3) に関する調整 80% A 所得金額 ( 減価償却に関する事項 ) 法人税額 80% A 建物 A 75% A 所得税額控除額及び復興特別所得税額控除額 5% A 建物 B 80% A 中間申告法人税額 35% A 建物 C 80% A 納付すべき法人税額 5% A 建物附属設備 D 65% A 建物附属設備 E 50% A 機械装置 F 85% A 機械装置 G 65% B 機械装置 H 95% A 車両 I 75% A 営業権 J 80% A 重要度は本試験での出題可能性に基づくため, 問題の難易度とは異なる 正答率とは必ずしも一致しない点に留意してほ しい < 受取配当等に関する事項 > 通常, 受取配当等の益金不算入の計算と所得税額控除の計算は同一の資料に基づき行われるが, 対象となる範囲や計算の目的 が異なるため, 両規定をまとめて解くと混乱しやすい そのため, 受取配当等の益金不算入の計算と所得税額控除の計算は別々 に行った方が良いであろう - 2 -

具体的な論点については, 以下を確認してほしい ( 受取配当等の益金不算入 ) 受取配当等に益金不算入の範囲 ( 出資分量分配金, 事業分量分配金 ) 関連法人株式等の継続保有要件 特定株式投資信託の取扱い ( 所得税額控除 ) 元本に基づく分類 原則法と簡便法の計算 ( 有利選択 ) 別表四における調整と別表一における調整 < 租税公課に関する事項 > 最重要論点の一つである 最もオーソドックスな形であるため, 確実に正解してほしい また, 別表一の中間法人税額の金額は租税公課の資料から読み取れるため, 租税公課に関する事項を解答する際に同時に, 別表一の当該金額を解答するようにしてほしい 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 納税充当金に関する調整 ( 納税充当金支出事業税等, 損金経理納税充当金 ) 損金不算入とされる租税公課の種類 < 減価償却に関する事項 > 最重要論点の一つである 償却方法の選定をメインに各種取扱いを問うものであった 全体的によくできていたが, 建物附属設備 構築物の償却方法に関する知識が曖昧だった方が多いようである 平成 10 年 4 月 1 日, 平成 19 年 4 月 1 日,( 平成 24 年 4 月 1 日,) 平成 28 年 4 月 1 日の, 各ターニングポイントにおいて, どのような変更が行われたのかを頭に入れておく必要がある 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 償却方法の選択, 選択した償却方法での減価償却限度額の算定 期中事業供用の場合の償却限度額 定率法において改定償却率を使用する場合 償却費として損金経理した金額の取扱い 繰越償却超過額がある資産を譲渡 除却した場合の取扱い <D 社との取引に関する事項 ( 完全支配関係法人間取引 )> 最重要論点の一つである 完全支配関係を有する他の内国法人に 譲渡損益調整資産 を譲渡した場合に, 譲渡損益の繰延が行われる 譲渡損益調整資産の範囲を抑えるのが最優先である 本問では, 売却手数料が発生している場合の取扱いも問うている 売却手数料については, 完全支配関係法人間ではなくグループ外部との取引になるため, 当該金額は譲渡損益の繰延対象にならない点に留意すること 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 譲渡損益調整資産の範囲 売却手数料等の付随費用の取扱い 寄附金の取扱い < 役員給与に関する事項 > 最重要論点の一つである 定期同額給与の取扱いを中心に出題している 乙に対する土地の贈与に関しては, 会計上帳簿価額で処理されているため, 帳簿価額 12,045,000 円を損金不算入とする解答が散見されたが, 法人税は時価課税を原則とする点に立ち返ってほしい 法人税法では, 贈与の場合でも, 一旦時価で売却したものとして, 時価相当額が給与や寄附金となる また, 丙に対する給与は, 減額改定により定期同額給与に該当しないパターンを出題している 減額改定の場合であっても, 増額改定と同様に超過分のみが損金不算入となる点に留意すること - 3 -

具体的な論点については, 以下を確認してほしい 定期同額給与に該当するもの (3ヶ月以内の改定, やむを得ない事情, 継続的な経済的利益の供与など ) 定期同額給与に該当しない場合の取扱い 役員に資産を贈与した場合の税務上の取扱い < 法人税額の計算 > いわゆる別表一の計算である 公認会計士試験では, 解答用紙に所得金額が与えられていることが多いため, 問題を解き始める前に必ず確認すること 本問のように解答用紙に所得が与えられていれば, 大法人の場合は 23.4% を乗じるのみで点数が取れる 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 税率 ( 中小法人以外 ) 別表一の計算の流れ 問題 2 < サンプル答案 ( 水道橋校 20 部 ) の正答率及び重要度 > 解答箇所 正答率 重要度 解答箇所 正答率 重要度 ( 受取配当等に関する事項 ) ( 減価償却に関する事項 ) 受取配当等の益金不算入額 器具備品 A 60% A A 社株式 ( 確定配当 ) 0% A 器具備品 B 35% C B 社株式 ( 中間配当 ) 45% A 器具備品 C 55% A B 社株式 ( 確定配当 ) 45% A 器具備品 D 35% C 法人税額から控除される所得税額 ( 交際費に関する事項 ) 原則法により計算した額 0% A 支出交際費等の額 0% A 簡便法により計算した額 10% A 接待飲食費の額 15% A 法人税額から控除される所得税額 交際費等の損金不算入額 5% A ( 租税公課に関する事項 ) ( 役員賞与に関する事項 ) 前期確定申告分について 30% A (1) に関する事項 10% B 当期中間申告分について 55% A (2) に関する事項 50% A 当期確定申告分について 75% A 重要度は本試験での出題可能性に基づくため, 問題の難易度とは異なる 正答率とは必ずしも一致しない点に留意してほ しい < 受取配当等に関する事項 > 短期所有株式等の取扱いをメインとして出題している 短期所有株式等については, 租税回避の懸念があるため一定額を受取配当等の益金不算入の対象から除かれている また, 非支配目的株式等の持分比率の算定においても, 当該株式を除外して計算することとなる 正答率は著しく低かったが,2017 年論文式本試験で出題されている論点なので, 本答練を通じておさえること 具体的な論点については, 以下を確認してほしい ( 受取配当等の益金不算入 ) 短期所有株式等に係る配当等の額の取扱い ( 益金不算入の対象から除く, 持分比率の算定から除く ) 関連法人株式等の継続保有要件 ( 所得税額控除 ) 中間配当がある場合の原則法と簡便法の計算 別表四における調整と別表一における調整 - 4 -

< 租税公課に関する事項 > 最重要論点の一つである 事業税の取扱いについて, 外形標準課税を加味した仕訳が会計で行われている点に戸惑ったかもしれない ただし, 費用科目が変わっても税務調整は変わらないため, 通常通り申告調整を行えばよい 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 納税充当金に関する調整 ( 納税充当金支出事業税等, 損金経理納税充当金 ) 過剰引当額が収益に計上されることにより取り崩された場合 損金不算入とされる租税公課の種類 < 減価償却に関する事項 > 最重要論点の一つである 中古資産の取扱いを問うものであった 中古資産については, まず見積残存使用年数が合理的に見積もられるものと見積もることができないものに分けられる そして, 見積もることができない場合には, 改良費の金額の多寡に応じて耐用年数が異なる 本試験での出題実績は 単純見積耐用年数 のパターンしかないが, その他のパターンも余力があればおさえておいてほしい 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 中古資産で見積残存使用可能期間を合理的に見積られる場合 中古資産で見積残存使用可能期間を合理的に見積られない場合 1 改良費 中古資産の取得価額 50% 2 中古資産の取得価額 50% < 改良費 新品資産の再取得価額 50% 3 新品資産の再取得価額 50% < 改良費 < 交際費に関する事項 > 最重要論点の一つである 本問では特に飲食費に関する論点を出題している 飲食費の範囲は複雑であり, 完璧におさえている方は極少数であった 料亭までのお車代 ( 送迎費 ) や社内飲食費, 飲食物の贈答費用は飲食費に該当しないため,1 人当たり 5,000 円超か否かに関わらず交際費となり,5,000 円超の場合でも接待飲食費として 50% 損金算入にもならない 交際費の損金不算入額を計算するにあたり, 飲食費の範囲は重要になってくるので, 本問を完璧に解けるようにしてほしい また, 本問では 23,450,000 円であり, 以下の金額が含まれている という出題形式であるため, 問題文に列挙されているもの以外にも交際費は存在する そのため,23,450,000 円から該当しないものを引き算して支出交際費の額を求める点にも留意すること 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 飲食費の範囲 交際費等の損金不算入額の計算方法 < 役員給与に関する事項 > 最重要論点の一つである 事前確定届出給与の取扱いを中心に出題している 複数回支給を行う場合には, 原則としてすべての支給が届出通りに支給される必要がある そのため, 平成 28 年 6 月 29 日に開催された定時株主総会で常務取締役 Yに支給された賞与は 220 万円,250 万円の双方が損金不算入となる ただし,220 万円の支給は平成 28 年 12 月 8 日であり, 前事業年度であるから, 当事業年度の調整には含まれない点に留意すること また, 事前確定届出給与に該当しない場合には, 支給額の全額が損金不算入となる 超過額を損金不算入とする定期同額給与とは異なるので注意が必要である 具体的な論点については, 以下を確認してほしい 事前確定届出給与に該当するもの ( 複数回支給の場合 ) 事前確定届出給与に該当しない場合の取扱い - 5 -

MEMO - 6 -