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ゴルフ会員権の売却と損益通算 1. 概要 個人で所有する預託金方式のゴルフ会員権の場合 総合課税の譲渡所得として その売却損は損益通算できま す ( 所基通 33-6 の 2) ゴルフ会員権やレジャークラブ会員権は優先的プレー権と預託金返還請求権の 2 要素があり 売却した場合は譲渡所得になります

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

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法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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プルータスセミナー 新株予約権の税務について 株式会社プルータス コンサルティング 平成 18 年 12 月 7 日

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

第28期貸借対照表

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2 その他 H26 中間申告義務のない事業者が 届出 012 書を提出した場合には 自主的に中間申告 納付することができる旨を 検討したか ( 平成 26 年 4 月 1 日以 後開始課税期間より適用 ) 本則課税の場合科目等 No. 主な項目チェック摘要 1 課税事業者 H26 課税期間の基準期間

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6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

Invincible

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

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平成23年度税制改正の主要項目

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公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

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FX取引に係る確定申告について

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2. 改正の趣旨 背景給与所得控除 公的年金等控除から基礎控除へ 10 万円シフトすることにより 配偶者控除等の所得控除について 控除対象となる配偶者や扶養親族の適用範囲に影響を及ぼさないようにするため 各種所得控除の基準となる配偶者や扶養親族の合計所得金額が調整される 具体的には 配偶者控除 配偶

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

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1 仮想通貨の売却問保有する仮想通貨を売却 ( 日本円に換金 ) した際の所得の計算方法を教えてください ( 例 )3 月 9 日 2,000,000 円 ( 支払手数料を含む ) で4ビットコインを購入した 5 月 20 日 0.2 ビットコイン ( 支払手数料を含む ) を 110,000 円で

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

投資主の皆様へ 平成 29 年 3 月 マリモ地方創生リート投資法人 第 1 期分配金の税務上の取扱いに関するご説明 拝啓平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます さて 本投資法人は 平成 29 年 2 月 14 日開催の役員会において 第 1 期 ( 平成 28 年 12 月期 ) の (A)

績が 5 千万ドル以上である企業の送金方式貿易代金の受領及び支払の場合には支払証憑書類を提出しなくてもよい ただし 支払などの証憑書類の免除を受けた企業は関連する証憑書類を 5 年間保管しなければならない また 指定取引外国為替銀行を通じた送金制度が設けられている この制度は 継続的に海外送金を行う

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債務超過会社の吸収合併 1. 会社法の規制債務超過会社を消滅会社とする合併は 旧 商法では 資本充実の原則 に反するとして認められていませんでした つまり 合併登記が受理されませんでした このため実務上は 不動産や有価証券の含み益を計上するか営業権を認識して債務超過を解消する あるいは債務超過の子会

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

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CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

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( 注 3) その他の少額上場株式等の非課税口座制度の詳細については 証券会社等の金融商品取引業者等にお問い合わせ下さ い b. 利益を超える金銭の分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 平成 27 年 4 月 1 日以後開始事業年度に係る利益を超える金銭の分配につ

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d. 少額上場株式等の非課税口座制度 ( 通称 NISA) 少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した非課税口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 26 年から平成 35 年までの 10 年間 新規投資額で毎年 100 万円を上限

5 事業用の車両等を売却 ( 譲渡 ) した場合の売却益 ( 譲渡益 ) 売却損 ( 譲渡損 ) については 事業所得とはならない 総合課税の譲渡所得 ( 土地 建物以外 ) の扱いになり 所有期間 (5 年超か以下か ) によって長期譲渡所得 短期譲渡所得に区分される 6 使用可能期間が1 年未満

て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 役員の債務保証料 保証債務を履行した場合の特例 http://www.up-firm.com 1

役員の債務保証料 1. 概要オーナー社長の場合は 自社の銀行借入金に代表者個人が連帯債務保証をしている場合があります このような場合は 法人からオーナー個人に債務保証料 ( 信用保証料 ) を支払うことが出来ます 当然 会社では法人税の計算上で損金計上することが出来ます 2. 注意点 (1) 債務保証料を役員給与として増額すれば 一定条件を満たさないと定期同額給与等に該当せず 損金不算入と なります 書面を作成して 明確に区分して保証料として支払えば法人側で損金算入が可能です (2) 債務保証料は 保証金額 保証料で計算します この保証料は 信用保証協会の責任共有外の保証料率表によるものが合理的です 民間金融機関の系列保証会社 ( ギャランティ 信用保証等 ) の保証料率表では営利行為を目的とするため高額に設定されています 代表者が個人保証するのは経営責任の明確化を目的とするので 信用保証協会の保証料率表によるものが適正です 実際に 20 億円以上の債務につき消費者金融会社の代表取締役会長へ年利 2.0% の債務保証料を損金計上したが 信用保証協会の最高保証料率である 1.0% が適正だと否認された事例があります ( 宮崎地裁平成 12 年 11 月 27 日判決 ) (3) 法人に不動産担保や有価証券担保があってオーナーの個人保証が不要と判断される場合や 保証予約念書 経営指導念書等の保証類似行為では 保証債務の履行とは認められないケースがあります 3. 役員個人の課税関係合理的な理由に基づき相当な金額を受け取った役員等の所得税の取り扱いは 雑所得区分となり総合課税されます オーナーの所得が給与所得だけでその額が 2,000 万円以下の場合は 受け取った信用保証料が 20 万円以下ならば確定申告は不要です 損金計上額について法人が信用保証協会等の債務保証を受けて金融機関から融資を受ける場合 保証期間の最初から最後までの保証料全額を前払いすることになります 保証料率や保証期間によっては 保証料がかなり大きな金額になることもあります 分割納付が認められる場合を除いて 全額前払いが一般的です 全額前払いした保証料は 支払事業年度の損金として税務処理することは出来ません 法人は信用保証協会から保証というサービスを保証期間の始期から満了時まで受けており 翌事業年度以降の期間に係る保証料相当額は支払った事業年度の費用とすべきではないからです 会計上も 翌事業年度以降の期間に係る保証料は 長期前払費用 として会計処理します http://www.up-firm.com 2

保証債務を履行するために個人資産を譲渡した場合の特例 1. 概要非上場企業では会社に担保となる不動産や有価証券が無いため オーナーや代表者個人が銀行に連帯債務保証をしているケースがあります 個人の資産背景が豊富なら 金融機関も担保提供や連帯保証を条件に融資に応じてくれます 任意整理のために自分の個人資産を売却し その譲渡代金で返済に充てた場合には譲渡所得 配当所得等が非課税になる特例があります 譲渡所得や山林所得に限らず 自社に金庫株した場合の配当所得でも利用できます これが 保証債務を履行するための資産の譲渡の特例 です ( 所法 642) これは保証債務を履行するために 個人資産を譲渡した場合の課税の特例です 例えば会社の借入金 2 億円を弁済するために個人所有の不動産を 2 億円で売却した場合に 譲渡所得税が売却益部分に課されると資金不足になります あまりに酷なので 非課税とするものです 必要書類は 保証債務の履行のための資産の譲渡に関する計算明細書 債務保証契約書他です ( 所規 38) ただし税務の取扱いは厳しく 適用要件も細かく定められています この特例を受けるには次の全ての要件に該当する必要があります 1 譲渡代金が債務保証の履行 ( 借金の返済 ) に充てられていること 2 保証債務の履行によって生じた求償権の行使ができなくなったこと 3 求償権が客観的に行使不能であること 1 保証債務 であるかどうか資産の譲渡時には保証債務契約が存在していたこと 仮に倒産ギリギリになった段階で債務保証した場合は 保証 の形式を利用した 贈与 とみなされますので注意が必要です 飲食店オーナーや従業員等 特殊関係にある債務者に対して 事前に求償権の行使は不可能と認識して債務保証する場合は 贈与とみなされます また 銀行等の金融機関は保証人より債務者本人からの回収形式を好みます 連帯保証人が土地を売却して 債務者名義の口座にその売却代金を入金して回収できるようにリクエストします その場合は 銀行の出す領収書は債務者本人宛のものとなります 当然 保証人が債務者に貸付をしたことになるので特例の適用は不可になります この特例を適用するためには 保証人の口座から直接銀行への資金移動が必要です そして 保証人宛の 債務保証履行につき という名目の領収書を金融機関から入手するべきです 2 保証債務を履行するための譲渡 であるかどうかこの特例は 保証債務を履行するために資産を譲渡することが要件になっています よって手持ちの余裕資金や定期預金を解約して保証債務の履行にあて その後に不動産を売却しても認められません 原則として 不動産の売却 その売却代金で保証債務の履行 という事実関係 手順が必要です 逆に 保証債務を履行 不動産の売却の順番では特例が適用できません 例外的に 不動産等の高額物件の売却交渉には時間がかかるので いったん http://www.up-firm.com 3

銀行や親族から借入をして債務保証の履行をして 1 年以内に不動産を売却した場合は 実質的に保証債務を履行するための売却と認定される可能性があります ( 所基通 64-5) また保証債務履行の為に土地を売却したが 当面は銀行借入金で債務保証を履行して銀行の営業上の要求により土地の売却代金を1 年間定期預金として運用してから借金返済にあてた場合には これは債務保証のための譲渡ではなく預金のための譲渡になりますので認められません 実際にあった事例のため 注意が必要です ( 国税不服審判所平成 2 年 6 月 22 日裁決事例 ) 3 求償権の行使が不能 であるかどうか保証債務を履行しただけでは この特例は適用できません 社長 ( オーナー ) が自社の保証債務を履行すると 社長は自社に対して求償権を有することになります つまり自社に対して 保証債務を履行した分について金銭返還の請求権を持つことになります 求償権の行使が不能であるかどうかの判定についても細かく規定されていますが 債務者の資産状況 支払能力等からみて その債務者に対する債権の全額が回収できないことが明らかになったときには その債務者つまり自社に対してもっている求償権の全額が行使不能として取り扱われます 具体的には以下のケースです ( 所基通 64-1 51-11) A: 会社更生法や民事再生法の規定で債権の切捨てが行われた場合 B: 債権者集会の決定で求償権も含めて債権の切捨てが行われた場合 C: 債務者の債務超過状態が継続して求償権の放棄を書面で通知した場合 D: 保証債務履行後 1 年経過しても弁済の無い場合 つまり実質的には 自社を倒産させないと社長が自社から回収不能とは認められない運用となっています 単に会 社が 10 年間債務超過の状態では 回収不能とは言えないでしょう この 3 の条件について中小企業庁が平成 14 年 に厳格すぎると照会し 国税庁が以下の内容の回答文書を出しました 代表取締役の会社への求償権が 他の債権者の有する債権と同列に扱うことが困難である等の事情により放棄せざるを得ない その求償権の放棄後でも 全ての資産を時価評価すると債務超過になる (= つまり 代表取締役が債権放棄することで債務免除益が計上されるが その場合でも債務超過であること ) しかし 実務の運用基準としては未だ不透明です この特例の適用を考えるなら まずは上記のポイントや金融機 関との調整を含め慎重に検討することが必要です http://www.up-firm.com 4

2. 保証債務特例と相続税の債務控除の関係個人経営の会社の借入金 = 個人事業主の借入金は 返済見込みが無い場合は相続人が債務控除できます そして個人財産の不動産を処分して 保証債務特例を適用することも出来ます 理論的には矛盾していますが 相続税と所得税の計算でダブル適用できます ( 所基通 64 の 5-3) Reference Purpose Only 本レターに掲載している情報は 一般的なガイダンスに限定されています この文書は 個別具体的ケースに対する会計 税務のアドバイスをするものではありません 会計上の判断や税法の適用結果は 事実認定や個別事情によって大幅に異なることがありえます また 解説の前提となる会計規則や税制が変更されている可能性もあります 実際に企画 実行される場合は 当事務所の担当者にご確認ください http://www.up-firm.com 5